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認知症について学ぶ パート4
認知症について学ぶ パート4 ∼認知症高齢者へのケア∼ 目黒医療生活協同組合保健委員会 誰だって認知症にはなりたくない、ボケずに生きていきたい、と思うでしょう。でも、年 を取ればしわも増えるのと同じように、認知症になることも受け入れていかなければならな いことなのだと思います。これから高齢者が増加する社会にあって、認知症高齢者とどう共 に生きていくのか、一人ひとりが問われていると思います。 今回は、認知症高齢者と共に生きていくために、そのケアのポイントを学習したので、ま とめてみたいと思います。 ① 環境を変えない 特別養護老人ホーム入居待機者が目黒区でも1000人近くいるそうです。ご自宅で介護 を受けながら待っている方もいらっしゃるでしょうし、老人保健施設や病院を転々としなが らの方もいらっしゃるでしょう、現実はそうです。しかし、ある日、全く知らない建物、誰 も知らない人の中に放り込まれることを繰り返していたら、認知症の症状は悪化してしまい ます。 転居も同じです。例えば、田舎の親の一人暮らしが無理だといって、子どもの暮らす都会 で同居をすることは、認知症の症状が出現したり、進行してしまうリスクが高いことを知っ ておく必要があります。まずは介護保険等を活用して一人暮らしを支える検討をした方が、 認知症の症状という点では安心と言えます。 施設入所となる場合も、まずは暮らしていた家の近くの施設を検討することが望ましいと 言えます。その際、可能な限り日常で使っていた私物を持ち込むことも大切です。 ② 生活習慣を変えない 枕が変わると寝られない、といって旅行先に愛用の枕を持ってくる友人がいます。ホテル ではなかなか寝付けない、と言う人がいます。それを考えれば、入院や、施設への入所で今 まで布団で寝ていた高齢者がいきなりベッドに寝かされることの違和感が想像できると思い ます。布団のつもりで立ち上がって、ベッドからの転倒事故になってしまうこともあります。 入浴では、一般的な家庭の浴槽で入浴していたのに、リフトでつり上げられる等の機械浴 では、不安になってしまうでしょう。トイレでは、トイレの位置が足下だったか、枕元の方 向だったか、そのくらいの違いでも混乱を招いてしまうことがあります。 その人が生活してきた習慣や環境をなるべく変えない工夫が大切です。どんな部屋でくら していたのか、椅子の生活だったのか、ひとりで寝ていたのか、家族と寝ていたのか、等々、 細かい生活習慣への配慮が必要です。 ③ 人間関係を変えない 人間関係は、わたしたちが生きていく上で欠かせません。高齢者にとっては尚更で、人間 関係の変化が認知症の症状を引き起こすきっかけになります。誰だって、知らない人ばかり のところに連れてこられたら、不安になるでしょう。たとえ認知症の症状が進んでいて家族 の顔すらわからない方でも、人間関係の変化は大きく影響します。 施設に入所することになっても、家族や知人の訪問を頻繁にすることによって、人間関係 の距離が保たれていることを実感してもらうことが必要です。転居する場合でも、転居地が 離れていると、文化やことばも違うため、新しい人間関係をつくることが難しく、家に閉じ こもってしまったり、認知症の症状が出てしまったりすることがあります。難しい問題です が、転居前に、新しく同居する家族がこれまでの高齢者の住まいを訪ねて、試験的に数日間 同居をしておくと、転居後がスムーズになるかもしれません。また、あらかじめ県人会や老 人クラブが中心となって、転居者を歓迎し、新しい人間関係づくりを応援している事例も生 まれています。 ヘルパーやデイサービスの場合でも、職員の交代は、認知症の高齢者にとっては望ましく ないのは言うまでもありません。少なくとも一斉に変わってしまう様なことは避けなければ ならないでしょう。 ④食事・排泄・入浴を大切に 食事・排泄・入浴、この三つは介護の基本です。この三つをおろそかにしないことが、認 知症の高齢者のトラブルを防ぐために大切です。 食事では、おいしいものを食べてもらいたいと思います。老化の過程は発達と逆ですから、 味覚は最後まで残ります。なんでも混ぜこぜにして口に運ぶことはしたくないものです。な じみのある食材の利用や味付けも大切にしたいことです。 認知症の症状が進んでも、尿意や便意が無くなることはないそうです。安易におむつにせ ず、トイレに通う工夫をするか、ポータブルトイレを使うことを追求することが大切です。 入浴は、家庭にある一人用の小さな浴槽が基本です。大浴槽では、足が壁に届かないため、 突っ張ることが出来ず、足が浮いてしまい、頭が沈んで危険です。 高齢者の体調にも注意が必要です。認知症高齢者の「問題行動」の原因の多くが脱水によ るものと言われています。脱水による便秘や発熱が、傾眠やせん妄、不眠や徘徊などの原因 になっている可能性があります。 おわりに 認知症高齢者にとって当たり前の生活を送る、ということの意味をもっともっと、しっか り考えていきたい、と思います。わたしたちみんなが老い、認知症になる可能性があるから です。 参考文献:小澤勲著「痴呆を生きるということ」岩波新書 三好春樹著「痴呆論 認知症への見方と関わり学」雲母書房