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BmHsp90 系 シャペロンタンパク質の探索と BmHSP40 のクローニング

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BmHsp90 系 シャペロンタンパク質の探索と BmHSP40 のクローニング
Entomotech 31, 49-51 (2007)
BmHsp70,BmHsp90 系
シャペロンタンパク質の探索と
BmHSP40 のクローニング
山下 隼 1)・管原亮平 1)・門 宏明 1), 3)・
李在萬 2)・河口 豊 2)・日下部宜宏 2)
1)九州大学大学院生物資源環境科学府
2)九州大学大学院農学研究院
3)日本学術振興会
(2007 年 2 月 27 日受領)
JUN Y AMASHITA, R YOHEI S UGAHARA, H IROAKI M ON, J AEMAN L EE, Y UTAKA K AWAGUCHI and T AKAHIRO K USAKABE :
Searching for cochaperones of BmHsp70 and
BmHsp90,and cloning of BmHSP40.
これまで我々は,BmHsp90 とそのコシャペロン
が精巣でより強く発現していることを明らかとし
た。他の生物において Hsp を中心としたシャペロ
ンタンパク質が精子形成に関わるという報告から,
カイコにおいても精子形成にシャぺロンタンパク
質が関与しているのではないかと推測された。
我々は精子形成に関わるという報告がある Hsp70
系シャペロンタンパク質群の研究を進めることに
した。Hsp70 系シャペロンタンパク質群は Hsp90
にターゲットタンパク質をリクルートすることで
も知られている。今回 Hsp70 のコシャペロン Hsp40
カイコホモログを同定した。他の生物との相同性
で一番高かった種は,コクヌストモドキで Identities
は 73%と非常に高かった。また Hsp70 との結合ド
メインである DnaJ ドメインが保存されており
Hsp40 の機能を有すると考え,我々は今回クロー
ニングした遺伝子を BmHSP40 とした。
キーワード :カイコ,クローニング,シャペロ
ン,Hsp(Heat Shock Protein),精子形成,ホモロ
ジー
緒 言
多くの生物において,生命の維持に関わる体細
胞とは別に種の保存に関わる生殖細胞が存在する。
雄における生殖細胞は,精巣において精子として
形成される。精原細胞が分化し,精母細胞,精子
細胞,そして成熟した精子へと分化するといった
一連の精子形成過程は,種を超えてよく保存され
ていることが知られている。
これまで我々は,ディファレンシャルディスプ
レイ法を用いて,カイコにおける精巣関連新規遺
伝子のスクリーニングを行い,精巣で特異的に発
現する遺伝子として,カイコ AHA1(Activater of
HSP90 ATPase)を同定した。解析の結果,BmAha1
はカイコ精子細胞から精子への形態変化の際に深
く関与する重要なタンパク質であることが明らか
49
となった(MIYAGAWA et al., 2005)。
Aha1 は酵母において,シャペロン Heat Shock
Protein 90(Hsp90)と複合体を形成すると報告さ
れている(PANARETOU et al., 2002)が,カイコ生体
内においても,この関係が保存されていた
(MIYAGAWA et al., 2005)。
Aha1 はシャペロンと呼ばれるタンパク質の補
助因子,コシャペロンとして考えられている
(PANARETOU et al., 2002)。シャペロンとは,未成熟
な状態のタンパク質に一時的に結合し,成熟する
のを介添えするタンパク質(HARTL,1996)である。
現在では,シャペロンが基質となるタンパク質
(client protein; Cp)と,一過的に結合し最終的に
解離するだけではなく,安定な複合体を形成する
場合があることが報告されている。コシャペロン
は,シャペロンの活性を促進したり抑制したりす
るタンパク質(OSTUKA,2001)であり,Aha1 はコ
シャペロンとして, Hsp90 に結合し, Hsp90 の
ATPase 活性を促進し(PANARETOU et al., 2002),そ
のことが Cp の成熟に影響を与えると考えられる
(HARST et al., 2005)。
精子形成に関わるシャペロンタンパク質の機能
については多くの報告があり,中でも Heat Shock
Protein の研究が進んでいる。哺乳類では Hsp が
精細胞の様々な分化段階に発現していることが明
らかとなっている(SARGE et al., 1997, DIX and HONG,
1998)。そこで我々はカイコにおいても BmHsp90
は精子形成において重要な役割を担っており,
BmAha1 はその機能を制御しているのではないか
と推測した。
そこで Hsp90 に Cp をリクルートすると考えら
れている Hsp70 系シャペロンタンパク質のクロー
ニングを行った。ノックアウトマウスを用いた研
究で Hsp70-2 の欠損では減数分裂が停止して精子
形成不全をきたし不妊となることが明らかとなっ
ている(DIX et al., 1997)。
カイコでは既に BmHSP70 がクローニングされて
いる(TITARENKO et al., 1990)ため, BmHsp70 に Cp
をリクルートする機能を有すると考えられる
BmHSP40 のクローニングを行った。
材料と方法
EST クローン fdpe P08–B02 を鋳型に,2 つのプ
ライマー(表 1)を用いて PCR 法 によって増幅
した。増幅された PCR 産物をエントリーベクタ
ーに組み込んだ。組み込まれた配列はシーケンサ
ーによって確認した。
表1 実験に使用したプライマー
プライマー名
配 列
BmHSP40 5’
ATGGGCAAAGACTACTATAAAATATTGG
dt primer
TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTVV
Entomotech 31, 49-51 (2007)
50
結 果
ショウジョウバエの HSP40 のアミノ酸配列を用
いて,EST クローンより HSP40 のカイコホモログ
の探索を行った。その中で EST クローン fdpe
P08–B02 が DmHsp40 に非常にホモロジーを示し
ため,これを BmHSP40 として同定した。塩基配
列をもとに 5’プライマーを設計し,そのベクター
より全長と思われる配列を PCR によって増幅し,
エントリーベクターに挿入した。
BmHSP40 全長の塩基配列を決定した(図 1A,
B)ところ,他の生物と非常に高い相同性を示す
ことが明らかとなった(図 2A)。最も相同性の高
図2A BmHSP40 の他生物との相同性
図2B 系統樹
考 察
図1A BmHSP40 塩基配列
図1B BmHsp40 アミノ酸配列
かった種は,コクヌストモドキで,Identities で 73%,
Positives で 85%と非常に高かった(図 2B)。機能
ドメインも保存されており(図 3),Hsp70 と結合
する DnaJ ドメインがあることから,今回のクロ
ーニングした BmHSP40 は,Hsp40 の機能を持っ
ていると考えられた。
カイコにおいても, Hsp70 系シャペロンタンパ
ク質の構成因子である Hsp40 のホモログが存在し
ていた。機能的なドメインの保存性より,他の生
物と同様に Hsp70 に Cp をリクルートする機能が
あ る と 考 え ら れ る 。 ま た KAIKOBLAST
( http://kaikoblast.dna.affrc.go.jp/ ) よ り 得 ら れ る
gi|56190141 の配列は Hsp70 コシャペロン Hop
(Hsc70/Hsp90 Organizing Protein )のカイコホモロ
グと推測された。Hop は Hsp70,Hsp90 をつなぐ
アダプタータンパク質として知られている。これ
により Hsp70/90 系シャペロンタンパク質がカイコ
においても,相互に影響していると考えられる。
ショウジョウバエでは HSP40 ホモログは多数見
つかっている。カイコにおいて今回単離した
BmHSP40 をもとに探索を行った結果,そのアイソ
フォームが多数存在した。 HSP はそれぞれ熱誘導
性に差が見られるので,これら多くのホモログに
図 3 BmHsp40 の機能ドメインの保存
Entomotech 31, 49-51 (2007)
もその差があるかもしれない。またその誘導性の
違いが,熱ショック時のシグナル伝達の厳密な制
御につながる可能性も考えられる。
カイコのように熱ストレスを受けない環境で飼
われてきた生き物にも熱ストレスに対応できる遺
伝子が保存されていた。このことは他の生物と同
様に,HSP ファミリーが,熱ストレス時だけでは
なく,細胞分化や精子形成など多くの生物に保存
されている,細胞の生理的な現象にも不可欠な機
能を持っていることが考えられる。よってカイコ
において精子形成に Hsp70,90 系シャペロンタン
パク質が深く関わっていることが十分に考えられ
る。
文 献
DIX,
D. J., ALLEN,J. W., COLLINS,B. W., POORMAN-ALLEN,
P., M ORI, C., BLIZARD, D. R., BROWN, P. R., GOULDING,
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