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ー 児童生徒用書の解説
19 黒白二鼠図 】児童生徒用苦の解説 この絵の題材は「二鼠比喩談」です。この故事は「自分から事を起こして心を騒がせ、徒らに命を危く し、日月は刻々と過ぎ去り、死がせまることは鼠が疎みとする革をかみ切るような具合であり、いっま 命ながらえていられようか。月の鼠は命のはかなさを黒白二鼠が樹の根をかじるのに例えたもの」(岩波 古典文学大系より)です。これまでにも色々いい伝えられ、色々解釈されています。児童生徒用書もその 一つです。この「二鼠比喩談」を、更にさかのぼることもできるのです。説教や文章作品を絵画に、絵画 を文章にすることによって、感情や意志を移入することができます。黒白二鼠図の世界にわが身をおい 子どもたちなりに人生を考えさせてもよいのではないでしょうか。 tl道徳内容項目との関係(例) 1(2)より高い目標を立て、希望と勇気をもってくじけないで努力する。 3(2)生命がかけがえのないものであることで努力する。 3(3)美しいものに感動する心や人間の力を超えたものに対する畏敬の念をもつ。 lll補足資料 1荒瀧秀嶺(本名「察喜」)の生涯 荒瀧秀嶺珠玉の日本画展(熊野町郷土館特別展)のパンフレットより 明治38年(1905) 熊野町呉地に生まれる。幼きころより書画に才あり 大正7年(1918) 広島に滞在していた日本画家 林半嶺に才を認められ師事する 大正13年(1924) 京都美術専門学校(京都市立絵画専門学校か)で日本画を学ぶ。 加藤暗彬に師事する 昭和?年 私立山中高等女学校に奉職する 昭和7年(1932) 頼山陽100年祭(記念色紙帖)に揮毒する 昭和18年(1943) 召集される 昭和20年(1945) 広島高等女子師範学校付属山中中学校(安浦町)に復職する (山中中学校は広島大学付属中学校に統合される) この間、 広島県教育委員会に移る 高屋中学校造賀分校に移る 昭和35年(1960) 56歳にて没する 2 二鼠比喩談(「禅と創造」より) 一人の旅人が山道を歩いていた。ふと、うしろから異様な物音がするので振返って見ると、繹猛な大虎 が追っかけてくる。「こりゃ、たいへん」と走り出した旅人は「あっ」と息を呑んだ。前は絶壁である 「もはやこれまで?!」とあきらめかけたら、崖っぷちにある大樹に巻きっいた藤蔓が絶壁の下にのび ているのが眼に入った。「これは天のめぐみ、ありがたい」と、その藤草を「下に降りよう」そう思っ 下をうかがうと、こはいかに、とぐろを巻いた大蛇が口をあけて旅人の落ちてくるのを待っている。「 りゃ、いかん」と近くに足場を探すと、四匹の毒蛇が近寄らば噛み付くゾ、といわんばかりに赤い舌を ロペロ出している。ゾッとして上を見ると、命と頼む藤車を、樹の根元で白と黒のねずみがガリガリか −63− ている。まさに絶体絶命、旅人はブルブルッと身ぶるいした。 そのとき、旅人の頭上ニメートルはどのところにぶら下がっていた蜂の巣から、蜂蜜がポトリと落ちて きて、偶然にも旅人の口に入った。「ああ、うまい!」旅人は陶然として酔ったように、絶望の現実を忘 れてしまう。 注 山道を歩く旅人(起伏重畳の人生を歩む私たち)虎(私たちが背負った重い荷物) 大蛇(蓋を開けている棺おけ) 藤蔓(命の綱・人間の寿命) 四匹の毒蛇(地水火風の不調による病苦 地震・洪水・火事・暴風) 蜂蜜(財欲・色欲・食欲・名誉欲・睡眠欲) 注 欲があるから生き、道を踏みはずすところのある人間。直面する絶望をどうするかが課題でもある0 3 寸描(パンフレットより) 鯉の絵を描かせたら日本一といわれ、その冴えた洞察力は、躍動感溢れた作品となって表現されている0 また、画伯の幅広い自由な表現は、現在でも多くの人に驚嘆されている。 lV 道徳学習指導案 主題名「黒白二鼠図」 1 内容項目 1−(2)よりよい高い目標を立て、希望と勇気をもってくじけないで努力する。 3−(3)美しいものに感動する心や人間の力を超えたものに対する畏敬の念をもつ0 2 資料名 ①写真「黒白二鼠図」(児童生徒用書) ②二鼠比喩談(補足資料2) 3 ねらい 郷土の生んだ日本画家荒滝秀嶺は、その一生を教職に捧げたが、常によりよい絵画を描こうと苦心し ていた。絵画の中に絶えず人生の生き方を探っている。この生き方を学ばせたい0 4 学習過程 支援と指導上の留意点 学 習 活 動 導 入 1白と黒の鼠は何を表しているか、絵から ・「黒白二鼠図」(児童生徒用書)から旅人 がどんな状況になっているかを想像させ 想像して話し合う。 る。 2白鼠が「昼」、黒鼠が「夜」を表している 展 ・この絵は人生の姿を寓話的にとらえてい ことを知り、自分はどのような一日を暮 る。あまり深入りせずに絵のおもしろさ らしているかを考える。 から考える手がかりを与えたい。 ・蜂蜜の滴りをなめる旅人にも自分と同じ (補足資料2を使うとよい) 開 姿で考えさせたい。 3この絵は人間の姿を措いていることに気 づき、自分はどのように生きたらよいか を発表する。 ・芥川龍之介「くもの糸」などと比乾して 終 4この絵のように人生の姿を描いた絵は他 末 読んでいく方法もある。 にないか調べてみる。 −64−