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報 文
汎用土壌流亡予測式による農業流域からの土砂流亡量予測
Prediction of Sediment Yields from Agricultural Watershed
Using the Universal Soil Loss Equation
鵜木 啓二* 古檜山 雅之**
Keiji UNOKI and Masayuki KOHIYAMA
国営農業農村整備事業で整備される沈砂池の容量決定には、経験モデルである USLE(Universal
Soil Loss Equation、汎用土壌流亡予測式)が用いられることが多い。USLE は、降雨や土壌、地形等
に関する6種類の係数の積から土壌流亡量を算出するものである。しかし、これら係数は、長期間で
多数の現地観測データから決定されるもので、独自観測で収集することは困難なものが多い。本稿で
は、現地調査を行わずに入手可能なデータから土地利用や地形等の情報を GIS により整理し、既存
の資料から USLE の各係数の適用方法を検討して、流域からの土砂流亡量の算出を行った。これに
より、流域からの土砂流亡量の推定に USLE を適用する際の留意点などを考察した。
《キーワード:USLE ; GIS ; 土砂流亡ポテンシャル》
The Universal Soil Loss Equation(USLE)is an empirical model often used to determine the
capacity of settlement basins under the national agricultural infrastructure improvement and rural
development project. It enables calculation of sediment yields by multiplying six parameters
related to rainfall, soil, topography and other variables. These parameters is determined by many
field observation data collected over long periods, but it is difficult to collect such data
independently.
This paper summarizes information on land use, topography and other
considerations from data gathered using the GIS without conducting field surveys, outlines the
method of application for each parameter to the USLE using existing data, and describes
calculation of sdiment yields from a catchment area. Based on the study results, precautions to be
taken in applying the USLE to the prediction of sediment yields from a catchment area were
discussed.
《Keywords:USLE;GIS;soil loss potential》
寒地土木研究所月報 №700 2011年9月 13
えることにある。日本においても土壌保全の検討に対
1.はじめに
して「土地改良事業計画指針 農地開発(改良山成畑
北海道では道南や道東を中心として火山性土壌が広
工)」2)(以下、事業計画指針と記す)のなかで適用方
がり、そこでは畑作農業が行われている。これら地域
法が解説されている。USLE は降雨毎の流亡土量を予
の傾斜畑圃場の一部では、降雨や融雪により表面が侵
測するのではなく、長期間の平均的な土砂流亡量を予
食されて土壌流亡が生じやすい状況にある。これによ
測するために用いられる。
り、排水路では土砂が堆積して排水機能が低下し、農
USLE による土砂流亡量の予測は6つの係数の積で
地では浸水や過湿により作物生育の障害となってい
次式のように表される。なお、本稿で示す単位表記は
る。また、排水路に流入した土砂は下流の湖沼や湿地
事業計画指針と同様とした。
等に流出し、土砂に含まれる富栄養化物質とともに水
A = R K L S C P
環境を悪化させ、水生生物の生育環境や漁業への影響
A:単位面積当たり流亡土量(tf・ha -1)
が問題となっている。国営農業農村整備事業では総合
R:降雨係数(tf・m2・ha -1・h -1)
農地防災事業や環境保全型かんがい排水事業など排水
一連降雨(無降雨時間6時間以内)の降水量が12.7
路関連事業において、土砂や栄養塩類の下流への流出
mm 以上、または15分当たりの降雨強度が6.4mm
を抑制するために沈砂池を整備してきた。
以上と定義される侵食性降雨の運動エネルギー E
国営農業農村整備事業における沈砂池の容量決定に
とその降雨の最大30分間降雨強度 I30 の積 EI30 の年
は、 経 験 モ デ ル で あ る USLE(Universal Soil Loss
間合計値である。積雪寒冷地では融雪流出も考慮
Equation、汎用土壌流亡予測式)を用いることが多い。
する。
USLE は、後述するように6種類の係数の積から土壌
K:土壌係数(h・m -2)
流亡量を算出するものである。しかし、これら係数の
単位降雨当たりの流亡土量を与える係数で、その
決定には長期の現地観測データが必要であり、独自観
地域の土壌の受食性を示す指標である。
測で収集することは困難なものが多い。そのため、実
LS:地形係数(無次元)
際の適用の際には、過去のデータにより整理された数
傾斜地における勾配と斜面長の影響を表す係数で、
値が用いられる。また、これら各係数を用いて流域か
基準斜面長、基準勾配からの流亡土量に対する比
らの土砂流亡量を算出するには、流域の土地利用や地
である。斜面長係数 L と傾斜係数 S として設定さ
形、土壌、作付作物などの情報を収集する必要がある
れているが、地形係数 LS として適用されることが
が、すべてを現地調査から得ることは多大な労力を要
多い。
し、得られたデータの整理も煩雑となる。しかし、現
C:作物係数(無次元)
在は既存の資料や市販の地形データ、衛星写真等でこ
作物被覆と営農管理の影響を表す係数で、裸地か
れらを比較的簡易に収集することが可能となり、地理
らの流亡土量に対する比である。作物ごとの標準
情報システム
(以下、GIS と記する)により一括整理す
値が整理されている。
ることができる。
P:保全係数(無次元)
本稿では、複数の畑地流域を対象に、現地調査を行
畝立て方向、等高線栽培など保全的耕作の効果を
わずに入手可能なデータから土地利用や地形等の情報
示す係数で、平畝、上下耕からの流亡土量に対す
を GIS により整理するとともに、USLE の各係数の適
る比である。
用方法を検討し、流域からの土砂流亡量を算出した。
これにより、流域からの土砂流出量の推定に USLE
3.GIS による流域データの作成
を適用する際の留意点などを考察したので報告する。
USLE による土砂流亡量算出の対象は、北海道網走
地方の近接する3流域(A、B、C 流域)とした。この
2.汎用土壌流亡予測式(USLE)の概要
地域は、受食性の高い火山性土壌の農地が広がり、融
1)
USLE は米国農務省を中心に開発され 、同国の農
雪期や降雨時に侵食を受けて土壌流亡が生じやすい地
地保全基準として採用されてきた。USLE による土砂
域である。
流亡量予測の目的は、侵食を引き起こす要因を定量評
土砂流亡量の推定に使用する流域データは GIS に
価し、その地域の圃場に適合する保全方法の指針を与
よって作成した。使用した GIS ソフトウェアは ESRI
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寒地土木研究所月報 №700 2011年9月
社 の ArcView9で あ る。 土 地 利 用 は、 衛 星 画 像
土地利用の境界で区分けした区画は、森林などでは
(QuickBird、分解能約0.7m、トゥルーカラー)から判
複数の集水域を含む大面積となる場合があり、平均的
読し、森林、畑地
(コムギ)、畑地(コムギ以外)、草地、
な地形係数を求めることが困難となる。そこで、GIS
裸地、荒地、人工構造物、ビニールハウス、舗装道路、
の機能を用いてデジタル標高データ(DEM)から小集
未舗装道路、水域の11区分とした(図-1、表-1)。
水域を決定し、10ha 以内の小区画に分割した。
畑地をコムギとコムギ以外に区分した理由は、この地
域の主要な作物であるテンサイ、マメ、タマネギと比
4.USLE の係数の決定
べてコムギの作物係数は半分程度と大きく異なるため
である。また、当該流域の山地では林業が行われてお
4.1 降雨係数( R )
り、森林伐採後の山地斜面は表面の被覆状況から裸地
降雨係数(R)は、夏期の降雨に関する降雨流出係数
または荒地と判定した。
(Rr)と融雪融凍に関する融雪流出係数(Rs)の和で決定
される。
Rr は、降雨侵食指数(EI 値)の合計として算出され
表-1 土地利用割合
න૏䋺㪿㪸
䉦䉾䉮ౝ䈲ว⸘㕙Ⓧ䈮ኻ䈜䉎ഀว䋨䋦䋩
位時間当たりの降雨エネルギー(Eh)を算出し、これを
積算して一連降雨の降雨エネルギー(E)を導く。つぎ
㪘ᵹၞ
䌂ᵹၞ
᫪ᨋ
㪋㪊㪊㪅㪎 㩿㪍㪈㪀
㪏㪐㪇㪅㪏 㩿㪌㪉㪀
㪏㪐㪅㪊 㩿㪉㪊㪀
に、E に最大30分間降雨強度(I30)を乗じて100で除す
⇌࿾䋨䉮䊛䉩䋩
㪉㪉㪅㪉 㩿㪊㪀
㪈㪋㪏㪅㪈 㩿㪐㪀
㪍㪋㪅㪍 㩿㪈㪍㪀
ることで当該降雨の EI30 値が算出される。この EI30 を
㪊㪍㪋㪅㪇 㩿㪉㪈㪀
㪈㪐㪍㪅㪎 㩿㪌㪇㪀
4月1日から11月30日まで積算したものが当該年の
⇌࿾䋨䉮䊛䉩એᄖ䋩 㪈㪊㪇㪅㪇 㩿㪈㪏㪀
䌃ᵹၞ
る。本稿では、10分値降雨データを用いた。まず、単
⨲࿾
㪊㪅㪎 㩿㪈㪀
㪐㪍㪅㪉 㩿㪍㪀
㪈㪌㪅㪊 㩿㪋㪀
ੱᎿ᭴ㅧ‛
㪍㪅㪊 㩿㪈㪀
㪍㪋㪅㪇 㩿㪋㪀
㪈㪍㪅㪊 㩿㪋㪀
ᧂ⥩ⵝ㆏〝
㪐㪅㪋 㩿㪈㪀
㪈㪋㪅㪊 㩿㪈㪀
㪇㪅㪐 㩿㪇㪀
⨹࿾
㪎㪈㪅㪍 㩿㪈㪇㪀
㪐㪍㪅㪈 㩿㪍㪀
㪏㪅㪌 㩿㪉㪀
⵻࿾
㪊㪈㪅㪇 㩿㪋㪀
㪋㪈㪅㪎 㩿㪉㪀
㪉㪅㪎 㩿㪈㪀
᳓ၞ
㪇㪅㪎 㩿㪇㪀
㪈㪅㪐 㩿㪇㪀
㪇㪅㪇 㩿㪇㪀
ว⸘㕙Ⓧ
㪎㪇㪐
㪈㪃㪎㪈㪎
㪊㪐㪋
ੱᎿ᭴ㅧ‛䈮䊎䊆䊷䊦䊊䉡䉴䈫⥩ⵝ㆏〝䉕▚౉
Rr となる。
E =ΣEh =Σ((210+89logI)× r) (m・tf・ha -1)
Rr =Σ(E・I30 ÷100)
(tf・m2・ha -1・h -1)
I:区間雨量の降雨強度(cm・h -1)
r:区間雨量(cm)
I30:最大30分間降雨強度(cm・h -1)
Rs は、USLE の定義では12 ~3月の降水量(cm)を
1.0倍(事業計画指針では0.6倍)して求めることとして
いる。これに対し長沢3)は、USLE の適用条件は凍結
地盤上に表面流出がある場合などを想定しており、気
象・土壌条件の異なる日本では推測値が過大になると
指摘し、北海道で地盤凍結の無い地域では12 ~3月
の降水量(cm)から融雪流出係数への換算乗数として
0.16という値を提案している。本稿の対象地域は自然
条件下で地盤凍結が発生するので、USLE の定義に従
Cᵹၞ
うこととした。
本稿での降雨係数(R)の算出対象期間は、衛星画像
の撮影日が含まれる2006年12月~ 2007年11月の1年
Aᵹၞ
0
500
1,000
Bᵹၞ
2,000
m
᫪ᨋ
⇌࿾䯴䭺䮧䭵䯵
⇌࿾䯴䭺䮧䭵એᄖ䯵
⨲࿾
ੱᎿ᭴ㅧ‛
䮚䮒䯃䮲䮖䭭䮀
⥩ⵝ㆏〝
ᧂ⥩ⵝ㆏〝
⨹࿾
⵻࿾
᳓ၞ
ᦨਅᵹ
図-1 対象流域の土地利用図
寒地土木研究所月報 №700 2011年9月 間とした。上記した手法により、対象地近傍のアメダ
スデータから Rr:69、Rs:18(tf・m2・ha -1・h -1)と算
出され、降雨係数 R は87(tf・m2・ha -1・h -1)と決定さ
れた。
4.2 土壌係数( K )
土壌係数は、試験圃場の実測値から算出する方法、
計算図表により推定する方法、推定式から求める方法
15
が一般的であるが、いずれも現地データが必要であり
係数の決定は簡単ではない。そこで本稿では、簡易な
係数決定方法として、
「国土交通省発行20万分の1土
地分類基本調査
(土壌図)
」4)から流域の土壌分類を把
握し、これに谷山5)が示した日本の土壌統群の土壌係
数を適用させることにした。土壌係数の分布を図-2
㪚ᵹၞ
に示す。
4.3 地形係数
( LS )
地形係数は斜面長係数 L と傾斜係数 S の積で表さ
れるが、流域単位で USLE を適用する場合、様々な
形状の区画を対象とするため、斜面長の計測が困難と
なる。そこで本稿では、Christos ら6)と同様に、ESRI
社から提供されている ArcView 用拡張プログラムで
esri.com/details.asp?dbid=12527)を利用した。このプ
ログラムは、Moore and Wilson
㪙ᵹၞ
㪘ᵹၞ
ある「Topocrop Terrain Indices」(http://arcscripts.
㪇
㪈㪃㪇㪇㪇
㪉㪃㪇㪇㪇
㫄
䋨න૏䋺h䍃m-2 䋩
᷆⦡㤥䊗䉪࿯ფ䌢䋨䊨䊷䊛⾰㤥䊗䉪䋩㪃㩷㪢㪔㪇㪅㪊㪈㪋
Ἧ⦡ૐ࿾࿯ფ㪃㩷㪢㪔㪇㪅㪋㪍㪊
ⶊ⦡ૐ࿾࿯ფ㪃㩷㪢㪔㪇㪅㪌
ⶊ⦡᫪ᨋ࿯䋭㤥䊗䉪࿯㪃㩷㪢㪔㪇㪅㪈㪐㪍
㤥䊗䉪࿯ფ䌢䋨䊨䊷䊛⾰㤥䊗䉪㪀㪃㪢㪔㪇㪅㪈㪇㪏
7)
により提案された
斜面長の代わりに GIS で簡易に計測可能な集水面積
を用いる方法を採用している。使用したデータは10m
メッシュのデジタル標高データ
(DEM)である。地形
図-2 土壌係数の分布
係数の分布を図-3に示す。C 流域に比べて、A・B
流域では濃橙~赤の区画が広く分布しており、地形上
は A・B 流域で土砂が流亡しやすいと判断できる。
4.4 作物係数
(C )
USLE の定義では、生育期ごとの C 値と R 値の分
布データからその地域に対応する年間の C 値を算出
㪚ᵹၞ
することとなっている。我が国では、全国的に作物の
生育期と降雨パターンのそれぞれが類似しているので
各種作物の標準値が事業計画指針 2)に整理されてい
る。本稿では、事業計画指針に示されている値を採用
し、
これに記載されていない土地利用区分に関しては、
渡辺・永塚8)が示した値を用いた。畑地
(コムギ以外)
については、詳細な作付データが無いので、当該地域
の主要作物であるマメ(大豆、小豆、エンドウ)、バレ
イショ、タマネギ、ビートの作付面積比率による加重
平均値0.4を適用した。作物係数の一覧を表-2に、
分布を図-4に示す。畑地が多い C 流域と B 流域下
流部で値が比較的高い橙色の区画が多く広がってい
䋨න૏䋺ήᰴర 䋩
䎓䎃䎐 䎓䎑䎘
䎓䎑䎘䎔䎃䎐 䎔䎑䎓䎓
䎔䎑䎓䎔䎃䎐 䎕䎑䎓䎓
䎕䎑䎓䎔䎃䎐 䎖䎑䎓䎓
䎖䎑䎓䎔䎃䎐 䎘䎑䎓䎓
䎘䎑䎓䎔䎃䎐 䎕䎓䎑䎓䎓
0
㪙ᵹၞ
㪘ᵹၞ
1,000
2,000
m
図-3 地形係数の分布
る。また、
裸地として区分された森林伐採跡が多い A・
B 流域で値の高い赤色の区画が点在している。
されている。しかし、圃場の形状や傾斜により、すべ
ての圃場で横畝が実施されているわけではないため、
4.5 保全係数
(P )
畝立て方向など保全的圃場管理に関する情報を得るに
当該流域では、水質環境保全のために排水路に対し
は現地調査が必要となる。そこで本稿では、横畝が畑
て平行に畝立て
(横畝)することが行政から農家に指導
地(コムギ、コムギ以外)の半分で実施されていると仮
16
寒地土木研究所月報 №700 2011年9月
表-2 作物係数一覧
න૏䋺ήᰴర
࿯࿾೑↪඙ಽ
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᫪ᨋ
㪇㪅㪇㪇㪌
⇌࿾䋨䉮䊛䉩䋩
㪇㪅㪉
⇌࿾䋨䉮䊛䉩એᄖ䋩
㪇㪅㪋
⨲࿾
㪇㪅㪇㪉
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㪇㪅㪇㪈
䊎䊆䊷䊦䊊䉡䉴
㪇㪅㪇㪈
⥩ⵝ㆏〝
㪇㪅㪇㪈
ᧂ⥩ⵝ㆏〝
㪈
⨹࿾䊶䈠䈱ઁ
㪇㪅㪇㪌
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㪈
᳓ၞ
㪇
㪚ᵹၞ
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㪇㪅㪇㪇㩷㪄 㪇㪅㪇㪉
㪇㪅㪇㪊㩷㪄 㪇㪅㪇㪌
㪇㪅㪇㪍㩷㪄 㪇㪅㪈㪇
㪇㪅㪈㪈㩷㪄 㪇㪅㪉㪇
㪇㪅㪉㪈㩷㪄 㪇㪅㪊㪇
㪇㪅㪊㪈㩷㪄 㪇㪅㪌㪇
㪇㪅㪌㪈㩷㪄 㪉㪅㪇㪇
㪘ᵹၞ
㪉㪅㪇㪈㩷㪄 㪋㪅㪇㪇
㪋㪅㪇㪈㩷㪄 㪈㪇㪅㪇㪇
㪈㪇㪅㪇㪈㩷㪄 㪉㪇㪇㪅㪇㪇
0
㪚ᵹၞ
㪙ᵹၞ
1,000 2,000
m
図-5 単位面積当たりの土砂流亡量
䋨න૏䋺ήᰴర 䋩
䎓䎑䎓䎓䎘
䎓䎑䎓䎕䎓
䎓䎑䎓䎘䎓
䎓䎑䎕䎓䎓
䎓䎑䎗䎓䎓
䎔䎑䎓䎓䎓
0
1,000
㪙ᵹၞ
㪘ᵹၞ
2,000
m
図-4 作物係数の分布
5)
定し、谷山 の研究成果である横畝の畑地における P
値の平均値
(0.323)と保全管理をしていない P 値(1.0)
の平均値である0.66をすべての畑地(コムギ、コムギ
以外)に適用した。なお、畑地以外の土地利用では P
=1.0とした。
࿯⍾ᵹ੢㊂䋨t䍃y-1)
䎓䎑䎓䎓䎓䎃䎐
䎓䎑䎓䎓䎙䎃䎐
䎓䎑䎓䎕䎔䎃䎐
䎓䎑䎓䎘䎔䎃䎐
䎓䎑䎕䎓䎔䎃䎐
䎓䎑䎗䎓䎔䎃䎐
⨲࿾
ㄘ࿾䋨⨲࿾䋩
ㄘ࿾䋨ዊ㤈એᄖ䋩
⇌࿾䋨䉮䊛䉩એᄖ䋩
ㄘ࿾䋨ዊ㤈䋩
⇌࿾䋨䉮䊛䉩䋩
᫪ᨋ
࿯⍾ᵹ಴䊘䊁䊮䉲䊞䊦
࿯⍾ᵹ੢䊘䊁䊮䉲䊞䊦
㪋㪇㪇㪇
㪋㪅㪇
㪊㪌㪇㪇
㪊㪅㪌
㪊㪇㪇㪇
㪊㪅㪇
㪉㪌㪇㪇
㪉㪅㪌
㪉㪇㪇㪇
㪉㪅㪇
㪈㪌㪇㪇
㪈㪅㪌
㪈㪇㪇㪇
㪈㪅㪇
㪌㪇㪇
㪇㪅㪌
㪇㪅㪇
㪇
䌁ᵹၞ
䌂ᵹၞ
࿯⍾ᵹ੢䊘䊁䊮䉲䊞䊦 (t䍃y-1䍃ha-1)
⵻࿾
⨹࿾
ᧂ⥩ⵝ㆏〝
ੱᎿ᭴ㅧ‛
䌃ᵹၞ
図-6 土砂流出量と土砂流亡ポテンシャル
(人工構造物にビニールハウスと舗装道路を算入)
5.土砂流亡量の算出結果
前章で決定した USLE の各係数から土砂流亡量を
単位面積当たりの土砂流亡量を表す。土砂流亡ポテン
算出した結果として、単位面積当たりの土砂流亡量分
シャルは A 流域> B 流域> C 流域となり、近傍流域
布を図-5に示す。作物係数の大きい箇所で橙色以上
でも土砂流亡状況は大きく異なっていた。土砂流亡量
の比較的高い値を示している。また、地形係数の大き
に占める各土地利用の割合でみると、A 流域では、面
い 区 画 が 多 く 分 布 す る A・B 流 域 で は 濃 橙 色 以 上
積割合が1割未満の裸地と未舗装道路からの流亡量が
-1
-1
以上)の区画が C 流域に比べて多い。
7割を占めると算出された。これが、A 流域で土砂流
つぎに、流域ごとに流域全体の土砂流亡量を集計し
亡ポテンシャルが大きいと評価される理由である。本
た
(図-6)
。図-6に示した土砂流亡ポテンシャルと
稿では、裸地の大部分が伐採後の森林、未舗装道路の
は、各流域の土砂流亡量を流域面積で除したもので、
大部分が林道であり、これらを森林からの土砂流亡量
(4.01t・y
・ha
寒地土木研究所月報 №700 2011年9月 17
表-3 土地利用ごとの土砂流亡ポテンシャル
㪄㪈
䌁ᵹၞ
᫪ᨋ
㪇㪅㪉㪏
⇌࿾䋨䉮䊛䉩䋩
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の精度が明らかとなり、これら資料の利用方法を確立
できると考えられる。
6.2 各係数の決定方法
ここでは、本稿における USLE の各係数の決定手
法を総括する。降雨係数(R)は USLE の算出手法に従
っており問題はない。土壌係数(K)は、現地データが
無いという条件では妥当な手法と思われる。現地の土
壌データ等が入手できる場合には、適宜、推定式など
により算出する方が精度が高くなるであろう。地形係
数(LS)については、GIS を用いた他の手法9)もあり、
比較検討が必要と考えられる。作物係数(C)と保全係
に算入するならば、森林からの土砂流亡量は A 流域
数(P)については、日本で実際に試験した事例は少な
で7割、B 流域で5割と大きな割合を占めると推定さ
いので、農業農村整備事業に関連した検討では事業計
れることになる。
画指針に整理されている値の採用を基本とし、不足す
最後に、土地利用区別ごとの土砂流亡ポテンシャル
るデータは他の資料を引用する本稿の手法が妥当と思
を表-3に整理した。裸地および未舗装道路は畑地の
われる。なお,土砂流亡量の推定精度を向上させるに
10 ~ 20倍程度、森林および草地の100 ~ 200倍程度と
は,森林の作物係数(C)は伐採後の表面の被覆状況を
大きな土砂流亡ポテンシャルであった。とくに、当該
考慮すること,畑地の保全係数(P)は現地での保全的
流域では裸地が傾斜の急な箇所に多く存在していたこ
圃場管理の実情を反映させることが必要と考えられる。
とから、地形係数が効いて畑地と比較すると、作物係
数の差以上に大きな差となった。
6.3 土砂流亡量と流達率
USLE は土砂流出源からの土砂流亡量を求めるもの
6.流域単位で USLE を適用する際の留意点
であり、土砂流出源から流亡後の排水路等での堆積過
程を考慮できない。そのため、算出された土砂流亡量
6.1 土地利用データの作成方法
は、流域末端への実際の到達量(流域からの土砂流出
前章での検討により、USLE によって流域からの土
量)よりも多い可能性が高い。よって、USLE による
砂流亡量を推定するにあたって、小面積であっても裸
算出結果を沈砂池の容量決定の資料とするためには、
地や未舗装道路からの土砂流亡に対する適正な評価が
流達率を考慮する必要がある。今後、河川における土
重要であることが示唆された。本稿では、解像度の高
砂流出量に関する実測データを収集し、推定値と比較
い衛星画像を利用することで伐採直後で植林の行われ
することで流達率の検討を行う必要がある。
ていない森林を裸地、林道を未舗装道路として判別で
きた。しかし、解像度の良好な衛星画像や空中写真は
7.おわりに
高価であり、かつ手作業による土地利用の判別は煩雑
となる。それゆえ、北海道全体など広域での解析には
本稿では、農業農村整備事業で整備される沈砂池の
適さない。そこで今後は、既存の資料を利用した土地
容量決定に用いられることの多い USLE を用い、現
利用データの作成方法を検討する必要がある。例えば、
地調査を行わずに入手可能なデータにより畑地流域か
国土交通省
(国土数値情報)や環境省(現存植生図)、農
らの土砂流亡量を推定した。その結果、裸地からの土
林水産省
(土地利用基盤整備基本調査データ)が整備し
砂流亡量の評価が重要であること、森林からの流亡土
ている土地利用に関する GIS データがある。これ以
量が多い可能性があること、近接した流域でも土砂流
外にも民間企業が開発・販売しているものもある。本
亡 状 況 が 異 な る こ と を 示 し た。 ま た、 流 域 単 位 で
稿で作成した詳細な土地利用データによる土砂流亡量
USLE を適用する際の留意点として,広域での土地利
が実際の土砂流亡量に近似すると仮定し、これら既存
用データ作成方法の課題,各係数の決定手法の妥当性,
資料に基づいた土地利用データによる土砂流亡量と比
USLE によって算出される土砂流亡量と流域末端まで
較することで、既存資料から作成する土地利用データ
の土砂到達量との差異について記した。
18
寒地土木研究所月報 №700 2011年9月
6) Christos,G.K., Tijana,S. and Georgios,N.S.:
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研究成果)、1992
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図 )、(http://tochi.mlit.go.jp/tockok/inspect/
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html)
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倉力、古谷保、高木東:農地における土壌流出、
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農林水産業及び農林水産物貿易と資源・環境に関
農林水産物貿易と資源・環境に関する総合研究、
する総合研究、農林水産技術会議事務局、pp.146-
農林水産技術会議事務局、pp.149-152、2003
149、2003
鵜木 啓二*
古檜山 雅之**
Keiji UNOKI
Masayuki KOHIYAMA
寒地土木研究所
寒地農業基盤研究グループ
水利基盤チーム
研究員
博士
(農学)
寒地土木研究所
寒地農業基盤研究グループ
水利基盤チーム
研究員
寒地土木研究所月報 №700 2011年9月 19
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