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605 - 熊本県産業技術センター

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605 - 熊本県産業技術センター
注射用タンパク質水溶液からの内毒素選択除去のための
ポリカチオン固定化高分子粒子の設計と応用
○坂田 眞砂代,佐々木 満,國武 雅司(熊本大学工学部)
戸所 正美,中山 実(チッソ)
1.はじめに
エンドトキシン(リポポリサッカライド:
LPS)は自然界に普遍的に存在する発熱有害
物質である。ワクチンや血液製剤などの注射
用タンパク質水溶液から LPS を除去するため
医薬タンパク質(100 μg/ml 100 mg/ml)水溶液中
のエンドトキシン濃度を10 pg/ml 以下に
(処理条件:pH 5 9, イオン強度 (μ):0.05 0.8)
抗原
エンドトキシン
を吸着する
に種々の吸着剤が開発されており、その吸着
すでに橋かけポリ(ε-リジン)球状粒子を開発
し、LPS 吸着剤への応用を試みたが、生体環
境下 (イオン強度μ = 0.17, pH 7.0)で,同粒
子の LPS 吸着能が低下するなどの問題があっ
た[2]。
(排斥効果)
+
の駆動力として静電的相互作用、疎水性効果
などの関与が明らかにされてきた[1]。我々は、
+
+
タンパク質を
吸着しない
+
+
ポリカチオン固定化
エンドトキシン
集合体
+
高分子吸着剤
+
+
カチオン基
+
+
疎水部
タンパク質
図1. 高分子微粒子を用いたタンパク質水溶液から
のエンドトキシン(LPS)の選択吸着
本報告では、セルロース粒子にアミノ基を
有する種々の官能基を化学修飾したアミノ化
セルロース粒子を調製し、得られた粒子の
LPS 選択吸着能に及ぼす緩衝液のイオン強度
Diaminoalkanes
OH
O-CH2-CH-CH2
+NH (CH ) +NH
2
2 n
3
および pH の影響について,バッチ法、及び
カラム法で評価した。
Poly(ε-lysine)
2.実験
OH
アミノ化セルロース粒子は、細孔径の異な
る種々のセルファイン粒子(粒径:46-106
μm,細孔径:Mlim 2x103
1x106,チッソ)を
エポキシ活性化したものに、ジアミノヘキサ
ン (DAH), ポリ(ε-リジン)(PL),ポリエチ
レンイミン(PEI)等のアミノ基を有する官
能基(図2)を化学修飾することにより調製
された。LPS 吸着実験はバッチ法及びカラム
法により行った。吸着処理後の試料中の LPS
濃度はリムルステスト法、タンパク質濃度は
UV 法により定量した。
O-CH2-CH-CH2
C=O
+NH -CH
2
(CH2)4
NH
C=O
+ NH -CH
3
(CH2)4
NH
poly(ethyleneimine)
(PEI)
+
CH2-CH2-NH2-CH2-CH2
HN-CH2-CH2 [ NH-CH2-CH2 ] [ NH2-CH2-CH2
+
m +
図2. LPS吸着のための官能基
] n NH-
3.結果と考察
LPS( 大腸菌 O111:B4)の混合溶液からの LPS
の選択吸着を試みた。緩衝液のイオン強度
がμ = 0.05 から 0.2 に上昇すると DAH 固定
化セルロース粒子の LPS 吸着能は著しく低
下した。また、PEI 固定化セルロース粒子は、
0.25
BSA
0.20
0.15
0.5
0.10
LPS
0.05
0.1
0
50
図3. カラム法によるアルブミン溶液からの
LPS 選択除去
オン強度域(μ = 0.05 1.0)で、LPS ばかり
ルロース粒子は、最も LPS 吸着活性が高か
ったが、幅広いイオン強度域(μ = 0.05
0
150
Effluent (mL)
最も LPS 吸着活性が高かったが、幅広いイ
でなく BSA も同時に吸着した。PEI 固定化セ
100
Concentration of LPS (EU/mL)
と し て 用 い て 、 牛 血 清 ア ル ブ ミ ン (BSA) と
1.0
Concentration of BSA (mg/mL)
種々のアミノ化セルロース粒子を吸着剤
カラムサイズ:1 1.1 cm (I.D.) (1.1 mL)
サンプル:150 mL (BSA: 1mg/mL, LPS: 100 EU/mL)
緩衝液:50 mM-PB, pH 7.0 + 0.15 M-NaCl
流速:0.17 mL/min (10 cm/h)
1.0)で、LPS ばかりでなく BSA も同時に吸着
体環境下(μ = 0.17, pH 7.0)で BSA を吸着す
ることなく LPS を選択的に吸着除去 (残存
濃度<0.1 EU/mL (<10 pg/mL)) することがで
きた。これは吸着剤の官能基である PL のア
ミノ基のカチオン性とアルキル鎖の適度な
疎水性の相乗効果によるものであることが
示唆される。
さらに、図2に示すように、PL 固定化
セルロース粒子充填カラムを用いて、LPS
を含むリゾチーム水溶液からのリゾチーム
25
10
[EU/mL]-●-
において、PL 固定化セルロース粒子は、生
1.8
1.6
1.4
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
5
ET
結果として、図3 に示すようなカラム法
Abs 280nm-○;NaCl[mol/L]-
した。
20
15
0
5
10
15
20
Elution volume [mL]
25
0
30
図4. カラム法によるリゾチームと LPS の
クロマト分離
カラムサイズ:0.9 10 cm (I.D.) (6.3 mL)
サンプル:1 mL (lysozyme: 14 mg/mL, LPS: 100 EU/mL)
緩衝液:1 mM Tris-Hcl, pH 7.3, Gradient 0-1.0 M-NaCl
流速:0.5 mL/min (47 cm/h)
と LPS のクロマト分離を試みたところ、
4.参考文献
イオン強度(μ) 0.05, pH 7.3 の条件下で、リ
[1] M.Sakata,T.Sueda,H.Ihara,C.Hirayama,
Chem. Pham. Bull., 44, 328 (1996).
[2] M. Sakata, M. Todokoro, T. Kai, M. Kunitake, C.
Hirayama, Chromatographia, 53, 619 (2001).
ゾチームのみが溶出し、その後、1 mol/L の
塩化ナトリウム水溶液を同カラムに流すこ
とにより LPS のみを溶出することができた。
以上の結果より、ポリ(ε-リジン)固定化
セルロース粒子充填カラムは、注射用タン
パク質水溶液からタンパク質を吸着するこ
となく、内毒素である LPS を選択的に吸着
除去できるばかりではなく、LPS 分離精製
用カラムとしても大いに期待できることが
わかった。
<謝辞>本研究は新エネルギー・産業技術総合
開発機構 (NEDO)の平成 15 年度産業技術研
究助成により実施された。
[問い合せ先]
坂田 眞砂代
熊本大学工学部物質生命化学科
TEL096-342-3674,[email protected]
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