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拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療
循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009−2010年度合同研究班報告) 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関するガイドライン Guidelines for Management of Dilated Cardiomyopathy and Secondary Cardiomyopathy(JCS 2011) 合同研究班参加学会:日本循環器学会,日本胸部外科学会,日本小児循環器学会,日本心臓血管外科学会, 日本心臓病学会,日本心不全学会,日本内科学会,日本不整脈学会 班 長 友 池 仁 班 員 和 暢 公益財団法人日本心臓血圧研究振興 会附属榊原記念病院 北 泉 今 泉 鎌 倉 史 許 俊 徹 勉 郎 鋭 白 石 公 国立循環器病研究センター小児循環 筒 富 永 協力員 天 井 裕 永 隆 井 良 木 之 治 三 誠 北里大学循環器内科学 久留米大学心臓血管内科 風 政 史 国立循環器病研究センター心臓血管 絹 川 弘一郎 絹 川 真太郎 窪 薗 琢 郎 田ノ上 禎 久 田 原 宣 広 長 山 雅 俊 国立循環器病研究センター不整脈科 東京大学重症心不全治療開発講座 / 東京都健康長寿医療センター心臓外科 器・周産期部門小児循環器科 北海道大学循環病態内科学 九州大学循環器外科 西 野 東京大学循環器内科学 国立循環器病研究センター心臓血管 内科部門心不全科 村 口 暉 内科部門心不全科 東京大学医学部附属病院循環器内科 北海道大学循環病態内科学 鹿児島大学医学部心臓血管内科 九州大学循環器外科 久留米大学心臓血管内科 公益財団法人日本心臓血圧研究振興 会附属榊原記念病院 隆 東京大学重症心不全治療開発寄附講座 夫 国立循環器病研究センター心臓血管 内科部門冠疾患・血管科 伊 東 春 樹 公益財団法人日本心臓血圧研究振興 長谷川 拓 也 国立循環器病研究センター心臓血管 猪 加 神 又 藤 崎 孝 誠 秀 元 北里大学循環器内科学 也 琉球大学細胞病理学 明 国立循環器病研究センター心臓血管 宮 会附属榊原記念病院 内科部門心不全科 内科部門心不全科 本 恵 宏 国立循環器病研究センター生活習慣 閔 庚 徳 国立循環器病研究センター心臓血管 部門予防健診部 内科部門心不全科 吉 川 勉 山 岸 和 金沢大学医薬保健研究域医学系臓器 公益財団法人日本心臓血圧研究振興 会附属榊原記念病院 外部評価委員 北 村 惣一郎 国立循環器病研究センター 砂 川 賢 二 九州大学循環器内科 正 機能制御学・循環器内科 (構成員の所属は 2012 年 2 月現在) 目 次 はじめに…………………………………………………………… 4 1. ガイドライン作成の背景 ……………………………… 4 2. ガイドライン作成の基本方針 ………………………… 4 Ⅰ.病態…………………………………………………………… 5 1. 定義と基本病態 ………………………………………… 5 2. 成因・疫学 ……………………………………………… 9 Ⅱ.診断…………………………………………………………… 12 1. 自覚症状と身体所見 …………………………………… 12 2. 評価法 …………………………………………………… 13 Ⅲ.病態と治療…………………………………………………… 31 1. 急性非代償性心不全 …………………………………… 31 2. ショック・心停止 ……………………………………… 40 3. 収縮不全と拡張不全 …………………………………… 42 4. 不整脈とペースメーカ ………………………………… 45 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 3 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) 5. 6. 7. 8. 9. 貧血 ……………………………………………………… 47 Ⅳ.付記…………………………………………………………… 54 腎機能障害 ……………………………………………… 49 1. その他の心筋症 ………………………………………… 54 2. 最新心不全治療の展望 ………………………………… 58 文 献……………………………………………………………… 60 血栓塞栓症 ……………………………………………… 51 睡眠障害 ………………………………………………… 51 外科手術 ………………………………………………… 52 (無断転載を禁ずる) はじめに 1 ガイドライン作成の背景 (難治性疾患克服研究事業),(2)医療施設等の整備(重 症難病患者拠点・協力病院整備), (3)地域における保健・ 医療・福祉の充実・連携(難病特別対策推進事業など), 我が国では,小児から成人に至るまで,学校,地域, (4)QOL の向上を目指した福祉施策の推進(難病患者等 職域で毎年健康診断が行われている.その中で,胸部レ 居宅生活支援事業), (5)医療費の自己負担の軽減(特定 ントゲン写真が必須検査として撮影されている.心陰影 疾患治療研究事業)がある.このようなことから拡張型 拡大の有無はチェック項目の 1 つであり,心胸郭比(car- 心筋症の診断と治療は,国が行う難治性疾患対策の観点 diothoracic ratio,CTR)が 50 %以上の状態を心陰影拡 からも重要な位置を占めている(難病情報センター 大としてスクリーニングしている. http://www.nanbyou.or.jp).特に拡張型心筋症の終末期 心拡大は, (1)心臓形態の拡大(心房拡大,心筋肥厚, 医療として,2010 年 4 月から植込み型補助人工心臓が保 心室腔拡大),(2)心嚢液の貯留,(3)心臓以外の病変の 険診療に収載された.2009 年には改正臓器移植法が成 存在のいずれかを示唆するものである.この中で拡張型 立し,翌 2010 年 7 月に施行され,重症心不全患者の治 心筋症の形態をとるものは,予後不良で進行性の性質の 療の環境は大きく変化しつつある. ある病因に由来する場合があるので,鑑別診断を慎重に このようなことから,拡張型心筋症の診断と治療のエ 進めてゆくことになる. ビデンスを保険診療や難病対策との関連について再精査 心拡大に関連するガイドラインとしては,「慢性心不 し,より広い視野に立ったガイドラインが求められるよ 全治療ガイドライン(2010 年改訂版)」,「先天性心疾患 うになった. の診断,病態把握,治療選択のための検査法の選択ガイ ドライン」,「急性及び慢性心筋炎の診断,治療に関する 2 ガイドライン作成の基本方針 ガイドライン(2009 年改訂版)」,「肥大型心筋症の診療 に関するガイドライン(2007 年改訂版)」,「心臓血管疾 拡張型心筋症の診断と治療は「心臓移植における移植 患における遺伝学的検査と遺伝カウンセリングに関する 希望者(レシピエント)の適応基準(第 17 回移植関係 ガイドライン」,「成人先天性心疾患治療ガイドライン 学会合同委員会 平成 9 年(1997 年)7 月 29 日)」や前 (2006 年改訂版)」「心臓突然死の予知と予防法のガイド 述した心不全関連のガイドラインに準拠して行われてい ライン(2010 年改訂版)」,「循環器超音波検査の適応と る.本稿では拡張型心筋症に焦点を当ててエビデンスを 判読ガイドライン(2010 年改訂版)」,「慢性心不全治療 収集し,エビデンスレベルの評価を行ったが,あわせて ガイドライン(2010 年改訂版)」,「循環器領域における 保険診療や難病対策といった行政的視点での診断と治療 性差医療に関するガイドライン」,「心疾患患者の学校, の基準がどのように扱われているかについても整理し 職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドラ た. イン(2008 年改訂版)」と様々の角度のものに記述され エビデンスレベルの記載について ACC/AHA またはこ てきたが,拡張型心筋症を包括的に取り扱ったガイドラ れまでの日本循環器学会のガイドラインでは, インは国内・国外にない. 特発性拡張型心筋症は,昭和 60 年(1985 年)に特定 疾患治療研究事業対象疾患の 1 つに取り上げられ,難病 として以下の対策がとられている.(1)調査研究の推進 4 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 レベル A 複数の無作為介入試験またはメタ解析で 実証されたもの レベル B 単一の無作為介入試験または大規模の無 作為でない介入試験で実証されたもの 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン レベル C 専門家および / または小規模の臨床試験 レベル 6: (後ろ向き試験および登録を含む)で意 見が一致したもの 専門委員会の報告や専門家の意見による もの このエビデンスレベルは研究デザインによる分類であ となっており観察研究や登録研究でしかわからない要因 る.複数の文献がある場合は最も高いレベルを採用する. やリスクに関するエビデンスはすべてレベルの低いもの なお,予後や頻度など観察研究によってしか得られない として扱われる.すなわち,治療法に関するものだけが エビデンスはレベル 1 > 4a > 4b > 5 > 6 となる. エビデンスレベルが高いように勘違いされる.そこで観 2.推奨グレード 察研究から得られたエビデンスについてもエビデンスレ グレード A: ベルをつけられるように工夫されたものが今回の分類で ある.ガイドラインの普及と啓蒙を行っている日本医療 勧められる. グレード B: 機構評価機構 医療情報サービス事業 Minds に準拠した る. 【エビデンスレベルと推奨グレード】 1.エビデンスレベル レベル 1: システマティック・レビュー / ランダム レベル 2: 1 つ以上のランダム化比較試験によるも 化比較試験のメタアナリシスによるもの の 非ランダム化比較試験によるもの レベル 4a: 分析疫学研究コホート研究によるもの レベル 4b: 症例対照研究,横断研究によるもの レベル 5: 科学的根拠があり,行うよう勧められ グレード C1: 科学的根拠はないが,行うよう勧めら ものとした. レベル 3: 強い科学的根拠があり,行うよう強く れる. グレード C2: 科学的根拠はなく,行わないよう勧め られる. グレード D: 無効性あるいは害を示す科学的根拠が あり,行わないよう勧められる. 推奨グレードは下記の要素を勘案して総合的に判断す る. (1)エビデンスのレベル,(2)エビデンスの数と数のば らつき,(3)臨床的有効性の大きさ,(4)臨床上の適用 記述研究(症例報告やケース・シリーズ) 性(医師の能力,地域性,医療資源,保険制度など), (5) によるもの 害やコストに関するエビデンス 変の首座がある一連の疾患」と定義され,1995 年の Ⅰ 病態 WHO/ISFC 分類に基づいた分類が用いられているが, (1)拡張型心筋症, (2)肥大型心筋症, (3)拘束型心筋症, (4)不整脈源性右室心筋症, (5)家族性突然死症候群, (6) ミトコンドリア心筋症,(7)心 Fabry 病,(8)たこつぼ心 1 定義と基本病態 筋障害を取り上げた独自の分類が採用された.これに対 して「特定心筋症」とは,原因または全身疾患との関連 が明らかな心筋疾患の総称で,WHO/ISFC 分類の「特 1 定義 ①心筋症の定義 2) 定心筋疾患」に相当する(表 1) .「特定心筋症」のう ち虚血性心筋症,弁膜症性心筋症,高血圧心筋症は,そ れぞれの原疾患による心筋障害の程度が高度な場合をい い,通常の虚血性心疾患,弁膜症,高血圧性心筋疾患と 我が国では 1970 年の日本循環器学会総会で「特発性 心筋症は区別されるべきである. 心筋症」という名称が提唱された.1974 年に,厚生省 アメリカ心臓協会(AHA)が 2006 年に新たな定義と 特定疾患特発性心筋症調査研究班が発足し,1985 年に 分類を提唱した(図 1)3).AHA 分類の定義は,「心筋症 「心筋症の診断の手引き」が作成され,1994 年に一部改 はしばしば(必ずではない)心室の肥大や拡張を示す機 訂され,2005 年に「心筋症,診断の手引きとその解説」 械的および・または電気生理学的機能異常を伴う一群の が作成された 1).この手引きで,特発性心筋症は「高血 疾患である.通常遺伝子異常が原因である.心筋症は心 圧や冠動脈疾患などの明らかな原因を有さず,心筋に病 臓原発性か全身疾患の部分症である.しばしば心臓死や 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) 表 1 特定心筋疾患(1995 年 WHO/ISFC) 虚血性心筋疾患 弁膜性心筋疾患 高血圧性心筋疾患 炎症性心筋疾患(心筋炎など) 代謝性心筋疾患 内分泌性―甲状線中毒性,甲状線機能低下症,副腎皮質不全,褐色細胞腫,末端肥大症,糖尿病など 蓄積性―ヘモクロマトーシス,グリコーゲン蓄積症(ハーラー病,ハンター病) ,レフスム病,ニーマン・ピック病,ハンド・ シュラー・クリスチャン病,Fabry 病,モルキオ・ウールリッヒ病など 欠乏性―カリウム欠乏,マグネシウム欠乏,栄養失調(貧血,脚気,セレニウム欠乏) ,家族性地中海熱など 全身性心筋疾患―膠原病,サルコイドーシス,白血病,肺性心など 筋ジストロフィ―デュシェンヌ型,ベッカー型,強直性筋萎縮症など 神経・筋疾患―フリードライヒ失調症,ヌーナン症候群など 過敏性,中毒性疾患―アルコール性心筋症,薬剤性,放射線性など 産褥性心筋疾患 (文献 2 より引用) 図 1 アメリカ心臓協会(AHA)による定義と分類 一次性心筋症(心筋に主な病変があるもの) 遺伝性 混合性 肥大型心筋症 後天性 拡張型心筋症 不整脈原性右室心筋症 拘束型心筋症 (左室肥大・拡大なし) 左室緻密化障害 糖蓄積病(PRKAG2,Danon 病) 心伝導障害 ミトコンドリア心筋症 イオンチャネル病 炎症(心筋炎) ストレス誘発型(タコツボ型) 産褥心筋症 頻脈誘発型 インスリン依存性糖尿病母から 生まれた小児 QT 延長症候群 Brugada 症候群 QT 短縮症候群 カテコラミン誘発性多型心室頻拍 特発性心室細動 心不全の原因となる.」であり,病変の首座が心臓にあ る心臓原発性と全身疾患の心病変である二次性心筋症に 大別している.心臓原発性心筋症は遺伝性,混合型(遺 伝と後天性),後天性の 3 つに分類され,QT 延長症候群 ②拡張型心筋症の定義 2005 年の特発性心筋症調査研究班の手引きでは,拡 や Brugada 症候群などのイオンチャンネル異常症も遺伝 張型心筋症は,「(1)左室のびまん性収縮障害と(2)左 性に含まれた. 室拡大を特徴とする疾患群」と定義される 1).診断の確 2008 年に発表された欧州心臓病学会(ESC)の分類 定には,基礎疾患ないし全身性の異常に続発し類似した は 1995 年の WHO/ISFC 分類の延長上に位置するもので 病態を示す「特定心筋症」(WHO/ISFC の「特定心筋疾 ある(図 2)4).心筋症の定義は「冠動脈疾患・高血圧・ 患」)を除外する必要がある.ESC の分類でも,拡張型 弁膜症・先天奇形によるものではない,構造的・機能的 心筋症は,「左室拡大と左室収縮能障害を特徴とし,び 異常を伴う心筋疾患」とされた.二次性心筋症という概 まん性の収縮障害を引き起こし得る異常な負荷状況(高 念が排除されている.この分類では AHA 分類と同様, 血圧や弁膜症)および冠動脈疾患の合併がない疾患群」 遺伝性 / 非遺伝性という概念を導入しており,形態・機 と定義されている 4). 能的異常をもとにした分類である. 病因,診断法の進歩は著しく,定義と分類についての 6 る定義・分類にできるだけ準拠した. ③臨床的に類似した心筋症疾患群 見解も変化しており,日米欧それぞれの分類が一定して AHA 分類で示されているように拡張型心筋症は遺伝 いないのが現状である.また,用語の使用方法もまちま 性と後天性の混合した疾患群であり,定義上は形態学的 ちである.本ガイドラインでは,我が国の手引きにおけ および機能学的な分類に基づいている.臨床的には, 「左 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン 図 2 欧州心臓病学会(ESC)の分類 心筋症 肥大型心筋症 拡張型心筋症 不整脈原性 右室心筋症 家族性 / 遺伝性 未同定 遺伝子欠損 遺伝子欠損 の病型 室拡大」と「左室収縮能障害」を来たす類似の疾患は多 く存在する.このように,拡張型心筋症は種々の特定心 筋症を除外する必要がある.また,拡張相へ移行した肥 拘束型心筋症 分類不能 非家族性 / 非遺伝性 特発性 原因が明らかな 病型 図 3 本ガイドラインが対象とした拡張型心筋症ならびに関連 する心筋症 拡張型心筋症 臨床的に類似した心筋症 大型心筋症では拡張型心筋症と鑑別するのが難しいこと ①虚血性心筋症 がしばしば経験される.本ガイドラインでは,臨床的に ②高血圧性心筋症 類似した心筋症疾患群として,図 3 の 15 疾患を挙げた. ③肥大型心筋症拡張相 2 ④心サルコイドーシス 基本病態 ⑤アミロイドーシス ⑥心筋炎 ①拡張型心筋症の基本病態 ⑦不整脈原性右室心筋症 拡張型心筋症は特発性心筋症の中で,(1)心筋収縮不 ⑧アルコール性心筋症 全と(2)左室内腔の拡張を特徴とする疾患群であり,多 ⑨脚気心 くの場合進行性である.このため,拡張型心筋症は慢性 ⑩左室緻密化障害 ⑪筋ジストロフィーに伴う心筋疾患 心不全症状を特徴とし急性増悪を繰り返す予後不良の疾 ⑫ミトコンドリア心筋症 患である.また,致死性不整脈による突然死や動脈の血 栓塞栓症を生ずることがある. ⑬薬剤誘発性心筋症 ②臨床的に類似した心筋症疾患群の基本病態 ⑮産褥心筋症(周産期心筋症) ⑭Fabry 病 1)虚血性心筋症 慢性虚血を原因とする拡張型心筋症に類似した左室の 血管,腎臓など高血圧による他の臓器障害も寄与してい 拡大と収縮機能の低下を特徴とする重症虚血性心疾患で ることが多い. ある.多くは陳旧性心筋梗塞を背景疾患とするが,狭心 3)肥大型心筋症拡張相(拡張相肥大型心筋症) 症を繰り返し発症することによって惹起された重症心筋 肥大型心筋症の基本病態は「左室心筋の異常な肥大に 虚血,貧血や睡眠時無呼吸症候群などによる心筋の低酸 伴う左室拡張期コンプライアンスの低下」である.この 素状態も原因となる.症状や身体所見からは拡張型心筋 肥大型心筋症のなかで,長い経過中に肥大した心筋壁厚 症と鑑別がつかないことが多く,虚血性心筋症の確定診 が次第に薄くなり,左室収縮力の低下,左室内腔の拡大 断には冠動脈造影が必要となる. を来たし,拡張型心筋症に似た病態を呈するものである. 2)高血圧性心筋症 4)心サルコイドーシス 高血圧性心疾患に特徴的な左室肥大および心筋細胞肥 サルコイドーシスは原因不明の全身性肉芽腫性疾患で 大,間質や血管周囲線維化などの組織学的異常とともに あり,肺,肺門リンパ節,眼,皮膚に好発する.病理組 心機能障害として収縮不全を呈した拡張型心筋症類似の 織学は,乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫,間質浮 病態である.左室拡大を伴う遠心性肥大が特徴である. 腫を伴ったリンパ球浸潤,線維化,微小血管病変と多彩 心不全の発症には,心臓の組織学的・機能的障害に加え, な特徴を有する.初期には,肉芽腫性炎症や間質浮腫の 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 7 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) 存在する部位に一致した心室壁肥厚を認め,次第に炎症 が基本病態である.症状の発現には 3 か月以上チアミン が消褪し病変部の線維化が進むと,心室中隔基部にはし 欠乏の持続が必要とされている.高カロリー輸液や成長 ばしば特徴的な壁の菲薄化を生ずる.病変が広範に広が 期の偏食などでチアミン補給が不十分で欠乏を来たしや れば拡張型心筋症様の病態を呈する. すい.チアミンは TCA サイクルの補酵素で糖代謝にか 5)アミロイドーシス かわっており,欠乏するとピルビン酸や乳酸が蓄積し, 全身性アミロイドーシスは,アミロイドと呼ばれる異 代謝性アシドーシスを惹起し,静脈還流増大を起こす. 常な線維性蛋白が心,肺,肝,腎,脾,消化管などの諸 右心不全が優位であるが両心不全を呈することが多い. 臓器に沈着する全身疾患である.心アミロイドーシスは, 劇症型は「衝心脚気」といい,低血圧,乳酸アシドーシ 心臓へのアミロイド沈着に起因する心機能障害を来たし スを伴い重症心不全を呈する. た病態である.主要病態は,アミロイドの沈着による心 10)左室心筋緻密化障害 室壁の肥厚に伴った拡張不全とさらに病期が進行した際 心室壁の過剰な網目状の肉柱形成と深い間隙を基本病 の収縮不全,および進行性かつ難治性の心不全である. 態とする.臨床症候には,(1)拡張型心筋症類似の心不 また,刺激伝導系が障害され種々の不整脈が認められる. 全,(2)壁在血栓による塞栓症,(3)不整脈,特に致死 6)心筋炎 的不整脈がある.新生児期,乳児期に重篤な心不全症状 心筋炎の病因はウイルス感染症が大半を占める.ウイ で発症し,急激な経過をとる例が多い.成人例では,心 ルス性心筋炎の原因ウイルスとしてはコクサッキーウイ 不全で発症したものが過半数を占め重症例が多く,塞栓 ルスが最も頻度が高い.ウイルス性心筋炎が特定心筋症 症と心室性不整脈の頻度が高い. の原因となると考えられる根拠は,(1)臨床的に心筋炎 11)筋ジストロフィーに伴う心筋疾患 から拡張型心筋症へ移行する例があること,(2)拡張型 筋ジストロフィーは遺伝性で進行性に筋力低下を示す 心筋症において心筋炎を示唆する炎症細胞浸潤が認めら 疾患群であり,Duchenne 型,Becker 型,Emery-Dreifuss れること,(3)拡張型心筋症において心筋炎ウイルスに 型,肢帯型筋ジストロフィー,顔面肩甲上腕型,ミオト 対する抗体価が高いこと,(4)拡張型心筋症の心筋から ニー型に分類される.筋ジストロフィーは筋細胞骨格と ウイルスゲノムが検出されるようになったことなどであ 細胞外マトリックスを構造的に結合するジストロフィン る. 蛋白の遺伝子変異が原因となる. 7)不整脈源性右室心筋症(Arrhythmogenic right ven- Duchenne 型筋ジストロフィーに伴う心筋症は,心筋 tricular cardiomyopathy;ARVC) 8 細胞の脂肪 / 線維性置換が左室後壁基部から徐々に左室 ARVC は,右室優位の心拡大と心機能低下,右室起源 自由壁に広がるのが特徴的である.病理組織学的には心 の重症心室性不整脈を基本病態とする.左室は正常ない 筋細胞は萎縮し,細胞質の空胞化や核の変形,間質線維 し軽度異常にとどまる.病理学的には主に右室自由壁に 化が認められる.肥大性心筋症様よりも拡張型心筋症様 おける脂肪浸潤と心筋細胞の脱落ならびに線維化を認め の表現型が多いが,肥大型心筋症から拡張型心筋症へと る.右室の伝導遅延により右側前胸部誘導(V1-3 誘導) 移行する例も認められる.ほぼ全例で僧帽弁逸脱が認め のε波または限局性の QRS 幅延長(> 110ms)が特徴 ら れ る が, そ の 正 確 な 原 因 は 不 明 で あ る. さ ら に, 的所見である.右室起源の左脚ブロック型の心室期外収 Duchenne 型ではジストロフィン蛋白はほぼ欠損してい 縮の頻発や心室頻拍が見られることが多い. るが,心機能異常は骨格筋力低下の程度とは相関しない. 8)アルコール性心筋症 Becker 型筋ジストロフィーでは,Duchenne 型で特徴的 長期かつ多量の飲酒をすることによって発生する中毒 な左室後壁の線維化は通常認められず,肥大型心筋症様 性心筋症の 1 つで,一般的には,1 日 80 ~ 90g の純エタ または拡張型心筋症様の表現型,局所左室壁運動異常, ノール換算量を 5 年以上にわたり摂取すると発症すると 心尖部血栓,僧帽弁閉鎖不全症等が認められる.初期に されている.初期には拡張障害,左室肥大を生じ,進行 右室拡大を来たし,その後に左室拡大と左室収縮不全に すると左室は拡大,左室壁厚は正常ないし減少し,拡張 陥るのが典型的な経過である.Emery-Dreifuss 型筋ジス 型心筋症と同様の基本病態を呈する.組織学的には,細 トロフィーは,X 連鎖劣性遺伝形式または常染色体優性 胞内小器官の構造変化,特にミトコンドリアの大小不同・ 遺伝形式をとるが,骨格筋症状は乏しいにもかかわらず, 増大,心筋内の脂肪滴など特徴的所見が認められる. 高頻度に完全房室ブロックや洞不全などの刺激伝導障害 9)脚気心 を呈するのが特徴である.また右房や左房拡大も認めら 重症のチアミン欠乏により発症する高心拍出性心不全 れる.筋緊張性ジストロフィーでは,心臓刺激伝導障害 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン を来たすことがあるが,典型的な拡張型心筋症を呈する 最終投与日から 10 年を経過しても発症するとされてい ことはまれである.顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーで るが,通常は投与後 3 か月を中央値とした期間内に発症 は,心房性不整脈の頻度が高いが,心筋症の表現型はご することが多い.光顕では心筋細胞の変性,間質の浮腫・ く軽度にとどまる. 線維化がみられ細胞質の空胞変性,ミトコンドリアの変 12)ミトコンドリア心筋症 性が認められる. ミトコンドリア心筋症は,ミトコンドリア病の 1 つで 14)Fabry 病 あり,ミトコンドリアの機能障害によって,心筋症ある Fabry 病は,細胞のリソソームに存在する加水分解酵 いは心伝導障害などの病態を呈する.心筋症のみが前景 素の 1 つであるα-galactosidase A 蛋白をコードする遺伝 に立つ場合と,中枢神経系症状などに合併する,いわゆ 子の異常により生じるα-galactosidase A 酵素活性の低下 るミトコンドリア脳筋症の部分症として出現する場合が に起因する.α-galactosidase A 遺伝子は X 染色体に存在 ある.ミトコンドリア心筋症に関連すると考えられるミ す る た め, 本 症 は X 染 色 体 劣 性 の 遺 伝 形 式 を と る. トコンドリア遺伝子の変異(点変異もしくは欠失)は, Fabry 病では,α-galactosidase A の基質である globotri- 20 種類以上が報告されており,変異の多くが,代表的 aosylceramide,galabiosylceramide などのスフィンゴ糖 な ミ ト コ ン ド リ ア 病 で あ る MELAS(mitochondrial 脂質が進行性に全身の細胞のリソソームに蓄積し, 皮膚, myopathy,encephalopathy,lactic acidosis and stroke- 眼,神経,血管,腎臓,心臓など多臓器の障害が出現す like episodes),MERRF(myoclonus epilepsy associated る.心 Fabry 病は,Fabry 病で認める多臓器障害を欠き, with ragged-red fibers),慢性進行性外眼筋麻痺症候群 心臓の細胞にスフィンゴ糖脂質が進行性に蓄積し心障害 (chronic progressive external ophthalmoplegia; CPEO)あ のみを呈する非典型的な Fabry 病である.心 Fabry 病で るいは Kearns-Sayre 症候群(KSS)の原因となり得,そ は,左室肥大を主とした障害が基本病態である.左室肥 の部分症として心筋症を呈することも多い.また,呼吸 大は進行性で,通常は対称性肥大を示すが,非対称性中 鎖酵素などミトコンドリア内で機能する蛋白をコードし 隔肥大を呈する例もある.左室肥大が主徴である時期の ている核遺伝子の変異でも,ミトコンドリア心筋症が起 病態は肥大型心筋症に類似しており,収縮機能は保たれ こり得る.ミトコンドリア心筋症は,肥大型の病型をと ているが拡張機能障害を認める.病期の進行に伴い左室 ることが多いが,拡張型や拘束型の病型を呈することも 収縮機能障害とともに肥大の退縮や左室後壁基部に限局 ある.初期には,心筋肥厚の程度に比べて収縮能が保た した菲薄化が出現し,拡張相肥大型心筋症様の病態を呈 れていることが多いが,病期の進行に従って急激に収縮 する. 能が低下し,拡張相肥大型心筋症となる場合や,肥大型 15)産褥性心筋症(周産期心筋症) から拡張型へ移行する場合もある. 心疾患の既往がなく,心不全を発症する原因が他に見 13)薬剤誘発性心筋症 当たらない女性が,妊娠後期から分娩後 5 か月以内に新 薬剤によって引き起こされる心筋障害により心筋症を たな心不全症状が出現し,拡張型心筋症様の病態を呈す 呈するのが薬剤性心筋症の基本病態である 5).ドキソル るものである.我が国では「産褥性心筋症」と呼ばれて ビシン心筋症には,急性毒性と慢性(遅発性)毒性が存 きたが,妊娠後期にも発症例を認めることより,「周産 在する.心筋障害を来たす薬剤としては,アントラサイ 期心筋症」と呼ぶことが多い.半数以上は完全治癒する. クリン系のドキソルビシン(アドリアマイシン)やイダ 双胎妊娠や多胎妊娠に頻度が高く,その後の妊娠で再発 ルビシン(イダマイシン),アルキル化剤のサイクロフ 傾向を認めることから,妊娠との関連が示唆されている ォスファミド(エンドキサン)やイホスファミド(イホ が,その発症機序は不明である. マイド),代謝拮抗薬のクロファラミン,微小管阻害薬 のドセタキセル(タキソテール),チロシンキナーゼ阻 2 成因・疫学 1 病因と遺伝 害薬のトラスツズマブ(ハーセプチン) ,スニチニブ(ス ーテント)などがある.心筋に対する障害が強く,広く 使用されている代表的な薬剤はドキソルビシン(アドリ アマイシン)である.慢性毒性は蓄積性の心毒性であり, 総投与量に比例して出現する.体表面積(m2)あたり ①病因 の 総 投 与 量 が 400 mg で 3 ~ 5 %,550 mg で 7 ~ 26 %, 拡張型心筋症の病因は永らく不明とされてきたが,後 700 mg で 18 ~ 48 %の患者が顕性心不全症状を呈する. 述する遺伝的素因とともにウイルス感染と自己免疫異常 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 9 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) が関与することが明らかとなってきた.ウイルス感染の M2 受容体抗体,Na-K-ATPase 自己抗体,トロポニンⅠ 根拠としては,拡張型心筋症患者から採取した心内膜心 自己抗体をはじめとして,少なくとも一部の抗心筋自己 筋生検標本における PCR を用いた検討で,1/3 から 2/3 抗体は何らかの病態生理学的意義を有することが明らか にウイルスゲノムが検出されることが挙げられる 6)-8). にされてきた 11)-17). ウイルスがコクサッキー・アデノウイルス受容体などか ら細胞に侵入すると,まず Toll-like receptor をはじめと ②遺伝子変異と発症機序 する自然免疫系が活性化される.一方ではエンテロウイ 家族性拡張型心筋症患者の約 20 %に何らかの遺伝子 ルスはプロテアーゼ 2A を産生することにより,細胞骨 変異が検出される(表 3).多くは直接心収縮に関連す 格を形成するジストロフィン蛋白を分解し,細胞膜の統 るサルコメア蛋白をコードする遺伝子や心収縮力を伝達 合性を傷害することが明らかにされている 9),10) . する役割を担うジストロフィン関連蛋白をコードする遺 自然免疫系の活性化に引き続いて,獲得免疫系が活性 伝子である.細胞内カルシウム調節に関与する蛋白の変 化され,T 細胞・B 細胞を介する細胞障害が惹起される. 異も報告されている.特徴的な表現型を呈する遺伝子変 急性心筋炎の場面では,ウイルス抗原が主要組織適合抗 異もいくつか報告されている.フォスフォランバンは筋 原(MHC)クラスⅠ分子上に提示され,CD8 + T 細胞 小胞体のカルシウム ATPase を制御する蛋白であるが, を介して産生されたパーフォリンによる感染細胞の傷害 PLN(R9C)変異では家族性拡張型心筋症を呈する.同 が惹起される.引き続いて傷害された標的細胞の様々な 変異をマウスに発現すると,拡張型心筋症様病態・早期 ペプチドが MHC クラスⅡ分子上に抗原提示され,CD4 死亡を来たすことも確認されている.同変異でカルシウ + T 細胞を介した持続的な免疫応答が惹起される.拡張 ム ATPase 活性を抑制するメカニズムとして,PLN(R9C) 型心筋症においても様々な細胞性免疫異常が観察され がプロテイン・キナーゼ A を捕捉し,同酵素によるフォ る.すなわち,拡張型心筋症患者血清において制御性 T スフォランバンのリン酸化が抑制されることが示され 細胞が減少し,代わりにヘルパー T 細胞が増加している た 18). ことや,心筋生検標本を用いた検討で MHC クラスⅡ分 遺伝子変異は拡張型心筋症発症の直接の原因となるだ 子が発現しているとの報告が見られる(表 2). けではなく,発症の遺伝的素地として働くこともある. これに対して,拡張型心筋症患者血清には様々な抗心 その根拠は,拡張型心筋症患者において主要組織適合抗 筋自己抗体が存在することが指摘されてきた.これらの 原クラスⅡ分子を介して心筋炎感染後の持続的な免疫応 自己抗体は急性心筋炎による心筋細胞障害の際に生じた 答に関与するヒト白血球型抗原 DQ/DR/DP 変異と強く ものが血中に残存するだけであり,拡張型心筋症の病態 関連することである 19),20).このような遺伝子変異を有 には関与しないと考えられてきた.しかしながら,抗ミ する場合,ウイルス感染後に持続的な自己免疫機序が作 オシン抗体,β 1 アドレナリン受容体抗体,ムスカリン 動し,拡張型心筋症に移行することが推定される.また, 抗心筋自己抗体は家族性拡張型心筋症患者に多く検出さ 表 2 拡張型心筋症にみられる免疫異常 細胞性免疫異常 CD4 + T 細胞 /CD8 + T 細胞比の増加 HLA-DR 陽性 T 細胞の増加 リンパ球 IL-2 受容体の増加 心筋組織における MHC クラスⅡ分子の発現 心筋組織における細胞間接着分子の増加 液性免疫異常(抗心筋自己抗体) ミオシン G 蛋白質関連受容体(β 1 アドレナリン受容体,ムスカ リン M2 受容体) Na-K-ATPase トロポニンⅠ ミトコンドリア蛋白(アデニン・ヌクレオチド・トラン スロケーター,αケト酸デヒドロゲナーゼ) アクチン 熱ショック蛋白 筋小胞体 ATPase チュブリン 10 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 れることも明らかにされている 21).その一例として,家 族性拡張型心筋症患者のある家系ではムスカリン M2 受 容体の第二細胞外ループの遺伝子変異を有し,同部位に 対する自己抗体が全例にかつ高力価に検出される 22). 2 罹患率と予後 ①有病率 心筋症を仮に拡張型心筋症に限っても有病率を正確に 記述した報告はない.そこで,1 つのアプローチとして 心不全患者のうちの心筋症と記載されている割合からお おまかな患者数を割り出すことにする.しかしながら, そもそも我が国における心不全患者数の正確な報告も未 だない.米国における心不全患者数の統計はここ 50 年 間のものがあるが,年々増加しており 2008 年で 580 万 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン 表 3 家族性拡張型心筋症患者における遺伝子変異 遺伝形式 常染色体優性 常染色体優性 常染色体優性 常染色体優性 常染色体優性 常染色体優性 常染色体優性 常染色体優性 常染色体優性 常染色体優性 常染色体優性 常染色体優性 常染色体優性 常染色体優性 常染色体優性 常染色体優性 常染色体劣性 伴性劣性 伴性劣性 遺伝子 ACTC DES SCCD MYH7 TNNT2 TPM1 TTN VCL MYBC MLP/CSRP3 ACTN2 PLN ZASP/LBD3 MYH6 ABCC LMNA TNN13 DMD TAZ/G4.5 タンパク アクチン デスミン サルコグリカン βミオシン重鎖 トロポニン T αトロポミオシン タイチン メタビンキュリン ミオシン結合蛋白 C LIM 蛋白 αアクチニン 2 フォスフォランバン サイファー αミオシン重鎖 SUR2A ラミン A/C トロポニンⅠ ジストロフィン タファジン 機能 心収縮に関与するサルコメア蛋白 ジストロフィン関連蛋白(収縮力伝達) ジストロフィン関連蛋白(収縮力伝達) 心収縮に関与するサルコメア蛋白 心収縮に関与するサルコメア蛋白 心収縮に関与するサルコメア蛋白 心筋細胞構造の維持 心筋細胞接合部介在板 心収縮に関与するサルコメア蛋白 サルコメア伸展 アクチン蛋白の構造維持 筋小胞体 SERCA2 ポンプ機能抑制 細胞骨格の重合 心収縮に関与するサルコメア蛋白 内向き整流カリウム・チャネル 核膜の安定化 心収縮に関与するサルコメア蛋白 ジストロフィン関連蛋白(収縮力伝達) 不明 表現型 骨格筋ミオパチー 筋ジストロフィー 伝導障害 骨格筋ミオパチー 低身長・好中球減少 表 4 我が国における心不全コホート研究における拡張型心筋症の割合 Fukuoka24) 北里大学 25) CHART26) JCARE-GENERAL27) JCARE-CARD28) 虚血性 35 46 23 30 32 拡張型心筋症 19 20 27 15 24 弁膜症 28 16 34 26 − 高血圧性 20 15 14 35 25 その他 17 6 2 17 18 報告年 2000 2002 2003 2007 2009 人 で あ り, 全 人 口 に 占 め る 割 合 は 約 2 % と な っ て い て年齢については一般の心不全とむしろ逆行して 1 歳未 る 23).この比率で行くと人口千人あたり 20 人の有病率 満で 10 万人あたり 1 年に 8.34 件,1 ~ 18 歳で 10 万人あ となるが,我が国の人口 1 億 2 千万人で考えると約 240 たり 1 年に 0.70 件の発症となっている. 万人の心不全患者がいることになる.我が国における 様々なコホート研究 24)-28)によれば,表 4 に示すように ②予後 およそ 20 ~ 25%が心筋症を基礎疾患としており,無症 心筋症の予後に関しては有病率以上に情報が少ない. 状の心筋症患者については全く分からないが,心不全症 様々な治療法が組み合わされて予後を改善してきている 状を呈する心筋症の有病率はおよそ人口千人当たり 4 ~ ため,心不全患者についても既に自然歴は不明である. 5 人ということになる.平成 11 年厚生省特発性心筋症調 まして,心筋症に限った自然歴は調査不能と思われる. 査研究班による全国調査 29)においては全国の推計患者数 一般の心不全患者においては上記のコホート研究のうち 17,700 名,人口千人あたり 0.14 人となっているが,難 入 院 患 者 を 対 象 と し た も の で 1 年 生 存 率 が Fukuoka 病指定を受けるほどの比較的重症患者を対象としたもの study24) 8.3 %, 北 里 大 学 25) 13 %,CHART26) 7.3 %, であり,一般的なコホート研究との乖離が顕著である. JCARE-CARD28) 8.3 %となっており,比較的最近の治 拡張型心筋症の定義にかかわる問題であり,非常に難し 療のもとで概ね 8%前後で推移している.しかし,これ いところである.フラミンガム研究 30) をはじめとして一 らの研究の後に我が国において心臓再同期療法や補助人 般に発病率も心不全に関しては年齢とともに劇的に増大 工心臓が普及してきたまたは今後普及することなどを考 するが,心筋症に限ったデータはない.18 歳以下の小 えると最新の治療のもとでの生存率とはいえないかもし 児を対象とした登録研究 31)において 10 万人あたり 1 年 れない.拡張型心筋症に関しては平成 11 年の厚生省の に 1.13 件の心筋症の発症をみている.同じ研究におい 調査 29)で 5 年生存率 76%となっていたが,我が国におい 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 11 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) てβ遮断薬の慢性心不全へのガイドラインへの記載が平 1)呼吸困難 成 12 年であるし,保険適応は平成 14 年であるので,現 ◦労作時および安静時呼吸困難:労作時の息切れから始 在の治療のもとでの予後を反映しているとはいえない数 まるが,重症になるとごく軽度の労作や安静時にも呼 字である. 吸困難を生じるようになる. ◦起坐呼吸:肺うっ血が高度になると,呼吸困難が臥位 Ⅱ 1 ~ 2 分で出現するため,患者は水平に寝ることがで 診断 きなくなる.これには,臥位による静脈還流の増加や 横隔膜の挙上が関与する. ◦発作性夜間呼吸困難:夜間就寝数時間後に発症する高 拡張型心筋症および臨床的に類似する心筋症の診断手 度の呼吸困難で,ピンク色泡沫状痰や喘鳴を伴うこと 順を図 4 に示す. もある(心臓喘息).これには,起坐呼吸と同様の機 1 序に加えて,下肢・腹部の間質水分の静脈内への移行 自覚症状と身体所見 や,就寝中の交感神経緊張の低下,呼吸中枢の感度の 低下が関与する. 2)末梢浮腫 ①自覚症状 浮腫は足背や下腿に認めることが多く,体重増加を伴 自覚症状や身体所見は,拡張型心筋症による心不全の う.長期臥床例では,仙骨部や背部に出現する.浮腫が 診断や重症度評価に特に重要である.拡張型心筋症の自 長期間持続すると,皮膚は光沢を帯びて硬化し,赤色の 覚症状は,心不全によるものが主要であるが,不整脈や 腫脹や色素沈着を伴う. 塞栓症によるものもある.不整脈としては,洞性頻脈, 3)消化器症状 心室性不整脈,心房細動が多くみられ,動悸,脈拍欠滞 腸管や肝臓などの臓器うっ血による症状として,食欲 として自覚される.心室頻拍あるいは徐脈性不整脈は, 不振や悪心がみられ,腸管の浮腫が著しいと下痢や嘔吐 めまいや失神をもたらし,突然死もまれではない. をみる.右心不全では,肝うっ血による右季肋部ないし 心不全における症状としては,呼吸困難や浮腫などの 心窩部痛が出現することがある. 臓器うっ血による症状と,全身倦怠感,易疲労感などの 4)全身倦怠感・易疲労感 心拍出量低下にもとづく症状がある. 心拍出量の低下に基づき,骨格筋への血流が低下する 図 4 拡張型心筋症および臨床的に類似する心筋症の診断手順 症状・検診 病歴聴取 身体所見 心電図 胸部 X 線写真 心エコー図 ドプラ法 左室拡大と 左室収縮能障害 心筋症特異的治療 心不全重症度診断・治療 不整脈診断・治療 塞栓症予防 合併症の診断・治療 12 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 血液生化学的検査 CT,MRI 核医学検査,PET 心臓カテーテル検査 冠動脈造影 心内膜心筋生検 遺伝子診断 確定診断 拡張型心筋症と 臨床的に類似する 心筋症の 除外診断 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン ことによる. 5)肝腫大・黄疸 5)尿量減少・夜間多尿 肝うっ血による肝腫大は右心不全の特徴的徴候であ 腎血流の低下は,尿量減少を引き起こす.昼間立位で り,しばしば圧痛や体動時の右季肋部痛,心窩部痛を伴 活動している時は,腎血流が低下するが,夜間臥位をと う.黄疸はうっ血肝による肝機能の障害の他,肺,脾, り安静にすると腎血流が増加するため,夜間多尿が生ず 腎などでの反復塞栓に伴う赤血球の破壊によるビリルビ る. ン生成の亢進が関与する. ②身体所見 6)胸水・腹水・浮腫 右心不全では,静脈圧の上昇に伴って濾出液として漿 身体所見も心不全によるものが主体である. 膜腔内に貯留し,胸水,腹水,心嚢液として認められる. 1)心拡大 胸水は,葉間胸膜や肋骨横隔膜角に少量の胸水貯留像と 心拡大は,視診・触診によっておおよその見当がつく. して胸部 X 線でみられる.同様に,浮腫は一般に表面の すなわち,心尖拍動の左側外方や二肋間に及ぶ移動の場 膨張と緊満,および圧迫した後しばらく続く皮膚陥凹と 合は心拡大があると判断できる.一方で,心拡大を伴わ して認められる. ない求心性肥大では心尖拍動の位置は偏位しない.この 7)脈拍異常 ことから心不全の原因疾患をある程度推定可能な場合が 心不全では,脈拍が微弱で頻脈となり,しばしば交互 ある. 脈や上室および心室性不整脈,頻脈性および徐脈性不整 2)Ⅲ音と心雑音 脈を認める.また,心房細動合併時には絶対性不整とな Ⅲ音は心尖部にて聴取される.奔馬調律(Ⅲ音ギャロ る.脈拍が触れず失神,けいれんや意識障害があれば心 ップ)ともよばれ,心不全の重要徴候の 1 つである.こ 停止である. れは,左室容積が増加することによって,心室拡張早期 8)体液量 に心房から心室へ急速に血液流入が生ずるためとされ, 心不全では体液量の推定が重要である.先に述べた頸 心尖拍動の急速充満波に一致する.拡張型心筋症では, 静脈怒張,肝腫大,胸水・腹水・浮腫の有無とともに, 僧帽弁逆流を合併し逆流性収縮期雑音を聴取することが 舌の乾燥程度や皮膚の緊張感(turgor)で体液量を推定 まれではない. する. 3)異常呼吸音(副雑音,肺雑音,ラ音) 肺うっ血の自覚症状としての呼吸困難および胸部 X 2 評価法 1 心電図 線での肺うっ血所見に伴って出現する.当初は吸気時に fine crackle(捻髪音)として肺底部に聴取されるが,心 不全の進行につれ,吸気・呼気時ともに coarse crackle(水 泡音)として全肺野で聴取される.また,間質性浮腫に よって細気管支浮腫が生じ,気道が狭くなると喘鳴 (wheeze)を聴取することがある. 4)頸静脈怒張 頸静脈が怒張し,ときに拍動も観察される.患者の体 位を水平より 45°の半座位とし,右心房の高さと頸静脈 怒張の最上部との垂直高差から中心静脈圧を推測する. ① 12 誘導心電図とホルター心電図 推奨文 ◦ 12 誘導心電図は病状の進行に伴った心筋の変化や不 整脈を評価しうる簡易検査法として有用である(レベ ル 4a,グレード A) ◦ホルター心電図は拡張型心筋症の予後予測に必ずしも 内頸静脈での怒張が基本であるが,皮膚の揺れとしてし 有用とはいえないが,ICD や CRT-D 植込み決定や上 か観察できない.頸静脈圧上昇が明らかでない場合には, 室性頻脈の心拍数コントロールのためには必須の検査 肝・頸静脈逆流が有用である.患者に静かに呼吸を行わ 法である(レベル 2,グレード B) せ,45 °起坐位で右季肋下の肝を手掌で約 1 分間静かに 圧迫し,頸静脈の拍動性怒張が明瞭となるのを観察する. 頸静脈怒張は,右室拡張期圧の上昇が右房圧,末梢静脈 圧上昇として観察されるもので,右心不全の代表的な身 体所見である. ◦加算平均心電図,TWA は単独での突然死予測法とし て限界がある(レベル 2,グレード C1) ◦運動負荷心電図は心室性不整脈と運動耐容能の評価法 として有用である(レベル 3,グレード B) ◦拡張型心筋症では予後を予測する,または抗不整脈薬 を決定する目的での臨床電気生理検査の施行意義は乏 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 13 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) しいが,デバイス(ICD,CRT-D)の選択に際して施 増加する.拡張型心筋症ではほぼ全例に心室期外収縮が, 行が必要な場合がある(レベル 2,グレード C1) 約半数に 3 連発以上の非持続性 VT が認められ,多源性 1)12 誘導心電図 期外収縮も一般的に認められる 34).拡張型心筋症では非 拡張型心筋症に特異的な心電図所見はない.しかしな 持続性 VT を含めた心室性不整脈の出現例の予後が悪い がら,心筋の線維化,心房心室の拡張,刺激伝導系の障 との報告もあるが 35),ホルター心電図は予後予測の指標 害,心不全等に由来する波形変化,不整脈が認められる. とはならないとする考えが主流である36).しかしながら, 特に左室の拡張,線維化が進行すると,左室高電位~左 植込み型除細動器(ICD)や再同期治療機能付き除細動 室肥大(拡大),r 波減高(特に V1 から V3 誘導の poor r 器(CRT-D)植込みの適応を決定したり,上室性頻脈の progression),異常 Q 波,QRS 幅延長,左側胸部誘導に 心拍数コントロールのためには必須の検査法といえる お け る VAT 延 長, 脚 枝 ブ ロ ッ ク, 心 室 内 ブ ロ ッ ク, ST-T 変化などが出現する.左室の拡張がさらに進行す ると,QRS 幅が 0.12 秒を超え,左脚ブロック所見を呈 ②加算平均心電図と TWA するが,その波形は左室拡大を伴わない中枢性の左脚ブ 1)加算平均心電図 ロックとは異なり,QRS 波に複数の notch を含むような 加算平均心電図(SAECG)は心電図の P 波や QRS 波 異常な波形(末梢性の左脚ブロック)となる.また,左 を数百回加算することにより,主として波形の終末部以 室の線維化が極度に進行すると,左室の起電力が低下~ 降に出現する微小な電位(Late potential: LP)を検出し 消失して,左側胸部誘導の R 波が著明に減高し,S 波が て,脱分極異常(伝導遅延)に基づく不整脈や突然死を 主体の胸部誘導波形を示す(右脚ブロック例を除く)と 予測する検査法である.SAECG には時系列解析法と周 ともに,四肢誘導は低電位化するようになる.一方,右 波数解析法があるが,通常,時系列のベクトルマグニチ 室の拡大,圧負荷が生じると右側胸部誘導で T 波が陰転 ュード法で評価することが多い.指標としては fQRS 幅, 化し,それがより著明になると V4,V5 誘導まで T 陰転 RMS40ms,LAS40μV があり,このうち 2 つ以上の基 が波及するが,同時に左室拡大が存在すると,その変化 準を満たす場合を LP 陽性とする.一般に fQRS ≧ 114 ~ は目立たなくなる. 120ms,RMS40 ≦ 14 ~ 20μV,LAS40 ≧ 38 ~ 42ms が 心房も房室弁の逆流や左室拡張末期圧の上昇に伴って 陽性基準値となっている.SAECG は急性心筋梗塞後の 拡大と線維化が生じ,P 波幅の延長や左房負荷所見を呈 突然死予測に有用とされているが,診断対象から脚ブロ し,心房性期外収縮,心房細動(AF)等の心房性不整 ック例は除外されている.これは QRS 幅の延長した症 脈が出現してくる.心室期外収縮も心機能の低下ととも 例の多くでは,心機能や不整脈の有無に関係なく陽性基 に多発するようになり,連発や多源性期外収縮も出現す 準を満たしてしまうためであるが,拡張型心筋症では伝 る. 導障害を伴うことが多く,必然的に陽性的中率が低くな 拡張型心筋症では主として左室に病変を有するため, る 37).実際に LP 陽性例と持続性 VT 誘発率には強い相 心室期外収縮の波形は右脚ブロックを呈することが多い 関はあるが,自然発症の不整脈事故は LP 陰性例と有意 が,心サルコイドーシスで中隔基部に病変を伴う場合は, 差がなかったと報告されている 38).このため SAECG を 右脚ブロック(または左脚ブロック)+下方軸型の期外 拡張型心筋症の予後予測に用いるには一定の限界がある 収縮~心室頻拍(VT)が生じる. といえる 39).ただし QRS 終末部を明らかに超えて LP が 心不全状態では概ね頻脈となるが,その際に P 波形が 記録される場合は,VT の基盤となる心筋の変化が既に 異所性心房起源を示していたり(洞結節起源=Ⅰ,Ⅱ, 存在していることを示す(加算平均心電図:レベル 3, Ⅲ誘導で P 波が陽性),睡眠中も 100/ 分を超える洞頻脈 グレード C1). を 呈 し て い る 場 合 は, 心 房 頻 拍 や 不 適 切 洞 頻 脈 2)TWA (inappropriate sinus tachycardia)に基づく頻脈誘発性心 筋症を疑う 14 (ホルター心電図:レベル 3,グレード B). 32) TWA(T-wave alternans)は T 波形 が 1 拍ご とに交 代 .心筋の変性により刺激伝導系が傷害され する現象を指す.TWA 法とは周波数解析または時系列 ると,Ⅰ~Ⅲ度房室ブロックを生じるが,心サルコイド 解析で微小な TWA を検出して,主として再分極異常に ーシスでは病初期から房室ブロックを伴いやすい33). (12 基づく突然死の予知を試みる検査法である.TWA は 誘導心電図:レベル 4a,グレード A) FFT(高速フーリエ変換)を用いて周波数スペクトル解 2)ホルター心電図 析で検出するのが主流であり 40),この手法によって得ら 心房性,心室性不整脈は左心機能が低下するにつれて れた TWA をマイクロボルト TWA(M-TWA)と呼ぶ. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン M-TWA 測定時にはトレッドミルや自転車エルゴメータ り誘発された場合は,左脚ブロック型の不整脈誘発例や ーによる運動負荷,または心房ペーシングで規則的に心 非誘発例に比べ有意に予後が悪いことが報告されてい 拍数を一定値(115/ 分以上)まで上昇させる必要がある. る 47)-49). M-TWA では陰性であることに意義があるため,陽性・ CPX では呼気ガス分析を行いながら運動負荷をかけ 陰性基準以外に判定不能の基準が設けられている.近年, るが,心疾患や肺疾患があると運動耐容能の指標である 運動負荷心電図またはホルター心電図の心電波形を時系 最高酸素摂取量と嫌気性代謝閾値が低下する.この指標 列解析することで TWA を検出する手法(TD-TWA 法) は NYHA 心機能分類に比べ客観性に優れ,治療効果や も開発され,臨床で用いられている. 予後判定の評価にも使用可能だが,トレッドミル法と同 これまで M-TWA に関して,低心機能の心筋梗塞例を 様に重症の心不全例では試験そのものが施行困難,また 対象として種々の検討がなされ,不整脈事故や総死亡の は禁忌となる場合があり,指標を測定できないという欠 予測に一定の意義が見いだされている 41) .しかしながら 単独の予知指標としてのエビデンスが乏しいことが指摘 されている 42) .拡張型心筋症や心不全例での検討でもほ ぼ同様な結果が得られており,予後予測に有用ではある ものの,種々の限界が指摘されている 43),44) 点がある. 6 分間歩行法は特殊な装置が不要な運動負荷法であ り,最大努力による 6 分間の歩行距離を測定して,身長, 体重,年齢から設定した基準値と比較したり,治療前後 .これは, での歩行距離を比較したりして,大凡の運動能力 50),51) 低心機能例では,β遮断薬を服用していたり,洞不全, を推定するものである.本法は重症例では予後評価に有 AF,多発性の期外収縮を有していたり,運動負荷不能 用なこともあるが,その変化は臨床的身体状況とは一致 例が多く,それらは M-TWA による解析が困難になると しないこともある 52) (運動負荷検査:レベル 3,グレー いう手法上の問題があるためで,さらには,陽性的中率 ド B). が低いという,今ひとつの限界も指摘されている.一方, M-TWA は感度と陰性的中率が高いという特徴があり, ④臨床電気生理学検査 リスクの低い例の検出に適した指標ともいえる.このた 電気生理学的検査(EPS)では,主として右室から 2 め,2006 年 の 心 臓 突 然 死 の 予 防 に 関 す る ACC/AHA/ ~ 3 連発の早期期外刺激法,または高頻度刺激法を用い ESC ガイドライン 45) では非侵襲的な心電学的予知指標 て心室性不整脈を誘発する.この際,持続性 VT または の 中 で M-TWA の み が ク ラ ス Ⅱ a に ラ ン ク さ れ た が, 心室細動(VF)が誘発された場合を陽性とするが,拡 2009 年に発表された心不全管理の ACCF/AHA ガイドラ 張型心筋症等の心不全症例の予後予測に対する本法の意 イン更新版 46) ではホルター心電図,SAECG とともに, 義に関しては従来から否定的な見解が出されてい ルーチン検査として推奨されていない. た 53),54).これは拡張型心筋症では持続性の単形性 VT が 以上より,心臓突然死を予測するには TWA 単独では 誘発されにくく,非特異的な多形性 VT や VF が一部の 限界があるため,脱分極異常を反映する SAECG や左室 例で誘発されるにすぎないため,少数例の検討では予後 駆出率と組み合わせて陽性的中率を高める試みがなされ 比較が困難であったためである.しかしながら,その後 ている(TWA: レベル 2,グレード C1). EPS は ESVEM 試験 55),CASCADE 試験 56)等の大規模試 ③運動負荷心電図 験で,突然死の一次予防における検査法としての限界が 示 さ れ た. 低 心 機 能 の 虚 血 性 心 疾 患 を 対 象 と し た 運動負荷検査は拡張型心筋症例では主として心室性不 MUSTT 試験においても,3 連発の早期期外刺激を用い 整脈の評価と運動耐容能の評価に用いられる.前者は主 た EPS により抗不整脈薬を決定してその有効薬を投与 としてトレッドミル法で,後者は心肺運動負荷法(CPX) された VT 群の予後が,EPS をせずにβ遮断薬と ACE 阻 や 6 分間歩行法で評価されている. 害薬のみを投与した群よりもむしろ悪い傾向にあること 運動負荷法では不整脈が運動で誘発されるか,どのよ が示された 57).さらに突然死二次予防における EPS の うな種類の不整脈が発生するか,不整脈時の心拍や血圧 有用性を検討するために行われた MAVERIC 試験 58)で がどう変化するかを判断でき,また治療後の場合はその も,EPS で治療法が決定された群と,経験的なアミオダ 効果を判定できる.運動負荷法により重篤な不整脈が誘 ロン投与群とでは,生存率,不整脈再発率に差が認めれ 発された場合は,突然死につながる可能性があり,ICD られなかった.以上より,現在では致死性不整脈の一次, の植込み等の適切な治療を要する.特に,右脚ブロック 二次予防のために,治療法の選択目的で EPS を行う意 型を呈する Lown 分類 2 ~ 4 の心室性不整脈が運動によ 義はなく,経験的なアミオダロン投与か ICD 治療でよ 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 15 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) いと考えられるようになっている.ただし,心機能の良 好な例では,EPS で有効な薬剤を決定する余地があると の意見もある. このため,EPS は予後を予測したり,治療方法を決定 (レベル 4b,グレード C1). ① BNP と NT-proBNP するのではなく,アブレーション治療を前提として,持 ナトリウム利尿ペプチドは,ナトリウム利尿作用と血 続性 VT が誘発されるか否かを判定する,または除細動 管拡張作用,さらには,交感神経系やレニン・アンジオ 機能付きのデバイスを選択すべきか否かを決定する目的 テンシン・アルドステロン系,バソプレッシン,エンド で施行されることが多い.この他に,2008 年のデバイ セリンなど種々の血管収縮因子に対し拮抗的に作用し, ス治療に関する ACC/AHA/HRS ガイドライン 59)では, 心不全の病態下においては代償的に心筋を保護する心臓 原因不明の失神では EPS で持続性 VT/VF が誘発されれ ホルモンである.70 %が心室由来で,残りは心房から ば ICD のクラスⅠ適応とされているため,失神を伴う 分泌される.圧容量負荷に伴う心筋細胞への伸展刺激に 拡張型心筋症例では EPS を施行する意義があると考え より,発現・分泌が亢進すると考えられている.心筋細 られる. 胞内において,preproBNP から proBNP が産生され,さ 一方,我が国の臨床心臓電気生理検査に関するガイド らに蛋白分解酵素である furin によって分解されると, ラインでの,拡張型心筋症に対する EPS の適応基準は 生理活性を有する BNP と有さない NT-proBNP となり, 欧 米 に 比 し て 緩 や か で あ り, 単 形 性 持 続 性 VT, 血液中に放出される 60).BNP と NT-proBNP 分泌量はほ wideQRS 頻拍,原因不明の失神のある非持続性 VT,持 ぼ同等であるが,BNP は半減期が約 20 分と短いため, 続性 VT に対する薬効評価における EPS がクラスⅠであ 半減期が約 120 分である NT-proBNP に比し血中濃度が り,非持続性 VT やカテーテルアブレーション後の VT 低くなる.BNP は血漿のみで測定可能であるが,NT- 評価における EPS がクラスⅡ a となっている(臨床電気 proBNP は血清でも測定可能である. 生理学的検査:レベル 2,グレード C1,D). これらの血中濃度は,心不全の重症度とともに上昇し, 2 バイオマーカー NYHA 心機能分類や各種血行動態の指標と相関する. 日常診療において,心負荷を反映する心不全のバイオマ 推奨文 ーカーとして,診断,治療効果判定,管理指標,予後予 ◦一般集団における心疾患合併の検出には,健常者との 測に汎用される.したがって,拡張型心筋症に心不全が 識別に BNP cut-off 値 50 pg/mL が有用である(レベル 4b,グレード C1). 合併すれば上昇する. BNP,NT-proBNP は,拡張型心筋症の診断に特異的 ◦一般集団において,新規非虚血性心不全発症の予測因 なバイオマーカーではない.しかし,心機能異常,構造 子として,BNP 測定は有用である(レベル 4a,グレ 異常を検出することで,早期発見のスクリーニングとし ード C1). ては有用かもしれない.一般集団における心疾患合併の ◦拡張型心筋症における血中 cTnT 濃度の持続高値(> 検出には,健常者との識別に BNP cut-off 値 50 pg/mL が 0.02 ng/mL) は, 予 後 不 良 因 子 で あ る( レ ベ ル 4b, 有用であった 61)(レベル 4b,グレード C1).一般集団に グレード C1) . おける左室収縮能低下例の検出では,BNP の有用性に ◦血中 cTnI 濃度は,慢性心不全患者では,健常者に比 対する評価は一定しないが,高度な収縮能低下例では高 し有意に高値であり,虚血性心疾患と非虚血性拡張型 値 を 示 す こ と が 多 い. ま た,2,754 人 を 対 象 と し た 心筋症の間で差がなく,予後不良因子としても有用で Framingham Heart Study では,新規非虚血性心不全発症 ある(レベル 4b,グレード C1). の予測因子として,BNP 測定は有用であった 62)(レベル ◦血中 H-FABP 濃度の高値は,心イベント発生に関連す る(レベル 4b,グレード C1). 4a,グレード C1).一方,BNP 値は疾患特異性が低いも のの,虚血性心筋症と特発性拡張型心筋症を比較した検 ◦高感度 CRP(hs-CRP)は冠動脈疾患や心不全イベン 討では,心不全急性期の血漿 BNP 値は,虚血性心筋症 ト発症予測因子として有用である(レベル 4a,グレ で よ り 高 く(776 ± 91 pg/mL vs. 532 ± 85 pg/mL), 予 ード C1). 後 が 不 良 で あ っ た 63) ( レ ベ ル 4b, グ レ ー ド C1).NT- ◦ IL-6,TNF-αは,心不全発症の予測因子として有用で ある(レベル 4a,グレード C1). ◦血中テネイシン C 濃度は,拡張型心筋症患者の心不全 16 重症度,左室拡大の程度,収縮能と相関して上昇する 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 proBNP においては,300 pg/mL 未満では生命を脅かす 心構造異常の可能性は低い 64).急性の呼吸困難を呈した 際の心不全診断には,年齢別に 50 歳未満,50 歳から 75 歳, 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン 75 歳以上で,それぞれ 450,900,1,800 ng/L がカット BNP 値とあわせて層別化すると,両者とも高値の群 オフポイントとして提案されている.一方,BNP と比 (H-FABP ≧ 5.4 ng/mL,BNP ≧ 138 pg/mL)は,最も予 較し,腎機能の影響を受けやすい. ②トロポニン T,トロポニン I,H-FABP 後不良であった.H-FABP の高値は,トロポニンと同様 に心筋の持続的な傷害を反映し,心イベント発生に関連 するが,退院時の cTnT 濃度は予後予測因子にはならず, 心筋トロポニンは,心筋アクチンフィラメント上にあ H-FABP の付加価値が示された 67)(レベル 4b,グレード る構造蛋白であり,トロポニン T,I,C およびトロポミ C1). オシンで複合体を形成し,筋収縮に関与する.トロポニ ンは平滑筋に存在せず,通常心筋細胞外にも認めないた ③ hs-CRP,テネイシン C,サイトカイン他 め,血中への出現は高率かつ特異的に心筋細胞傷害を示 心不全患者では,全身の炎症反応が亢進し,CRP や 唆する.心筋細胞が壊死に陥ると,トロポニン T(cardiac 炎症性サイトカインの血中濃度が上昇する.CRP は急 troponin T,cTnT), ト ロ ポ ニ ン I(cardiac troponin I, 性相反応タンパク質の 1 つであり,肺炎球菌菌体の C 多 cTnI)およびトロポニン IC 複合体が血中に流出する. 糖体と沈降反応をおこすタンパク質として発見された. したがって,急性冠症候群や心筋炎では高率に上昇する. より微量での定量化が可能となり,高感度 CRP(hs-CRP) さらに,トロポニンは壊死した心筋細胞から流出するだ は冠動脈疾患や心不全のイベント発症予測因子として用 けでなく,細胞膜透過性が障害された心筋細胞からも漏 いられる 68).炎症性サイトカインの 1 つである IL-6 は, 出し,微小な心筋傷害も反映するため,急性心不全や重 肝臓における CRP の産生を刺激し,CRP 値と相関して 症心不全の病態でも上昇し,予後や重症度との関連が示 炎症反応の程度を反映する.炎症促進性サイトカインで 唆されている. ある TNF-αは心不全状態で活性化され高値をとるが, cTnT に関し,約 30%の拡張型心筋症例において持続 そ れ 自 身 も 直 接 心 筋 組 織 に 障 害 を 及 ぼ す 69). 的に高値(> 0.02 ng/mL)を示し,進行性の左室拡張末 Framingham Heart Study では,これら IL-6,TNF-αおよ 期径の増大と左室駆出率の低下を認め,予後不良であっ び CRP が心不全発症の予測因子であることが示され た 65)(レベル 4b,グレード C1).cTnI に関しては,慢性 た 70)(レベル 4a,グレード C1).また,拡張型心筋症患 心不全患者の血中濃度は健常者に比し有意に高値であり 者においては,血中の IL-6 および TNF-α濃度が上昇し, (0.66 ng/mL vs. 0.11 ng/mL),また,虚血性心疾患と非 か つ 左 室 心 筋 で IL-6 お よ び TNF-αの 発 現 が 報 告 さ れ 虚血性拡張型心筋症の間で差がなかった.慢性心不全患 た 71),72). 者では,死亡群において生存群よりも血中 cTnI 濃度が テネイシン C は細胞外マトリックス糖蛋白の一種で, 有意に高値であった 66)(レベル 4b,グレード C1).以上 組織発生,創傷治癒や組織再生などの組織リモデリング より,cTnT や cTnI の血中濃度の持続高値は,慢性心不 に伴って発現する.正常の成人における心臓での発現は 全における進行性の心筋細胞死や細胞傷害を反映し,予 ほとんどないが,急性冠症候群や心筋炎などの心筋傷害 後不良因子と考えられる.なお最近,高感度トロポニン に反応して間質の線維芽細胞が産生する.炎症性サイト T の測定が保険適応となった. カイン,成長因子,低酸素,アシドーシス,メカニカル 心筋型脂肪酸結合蛋白(heart-type fatty acid-binding ストレス,アンジオテンシンⅡなどが発現を誘導す protein-FABP)は,心筋細胞内で脂肪酸のエネルギー供 る 73).活動性炎症に伴って特異的に発現し,炎症の沈静 給と貯蔵に関与する低分子蛋白である.FABP は組織ご 化に伴って漸減し,炎症強度と相関を示す.慢性心筋炎 とにアミノ酸配列が異なり,心臓型,肝臓型,小腸型の の炎症部位 74)やサルコイドーシスの肉芽腫に一致してテ 3 種類が存在する.H-FABP は心筋細胞質内に豊富に存 ネイシン C の強い発現を認め,特発性拡張型心筋症の鑑 在するが,骨格筋にもわずかながら存在する.可溶性蛋 別診断に有用である.一方,血中テネイシン C 濃度は, 白で,心筋傷害により容易に血中に漏出するため,心筋 心筋局所のみならず肝臓や肺などの全身の臓器で産生さ 傷害のマーカーとなる.受傷後 30 分から 3 時間で血中 れるため,解釈には注意が必要である.また,テネイシ に逸脱し,急性冠症候群の早期診断マーカーとして汎用 ン C は,マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の される.トロポニンと同様に,急性冠症候群以外の病態 発現と活性を促進し,筋線維芽細胞を動員するが,左室 でも陽性となり,心不全時にも上昇する.拡張型心筋症 リモデリングのマーカーとしても注目されつつある.拡 92 症例の検討では,退院時の H-FABP の血中濃度が, 張型心筋症では,健常人に比し有意に血中テネイシン C 心イベントの予後予測因子となると報告された.血漿 濃度が高値である 75).左室機能障害,cTnT,プロコラ 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 17 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) ーゲンⅢと関連し,心筋細胞傷害後の線維化を反映する. 進行とともに肥大の退縮,左室後壁基部の菲薄化,限 また,血中テネイシン C 濃度は,拡張型心筋症患者の心 局性またはびまん性左室壁運動低下を示す(レベル 6, 不全重症度,左室拡大の程度,収縮能と相関して上昇す グレード A). る 76) (レベル 4b,グレード C1).心不全増悪入院後の退 エコー図・ドプラ法は拡張型心筋症や特定心筋症の診 院時の値は,心事故発生予測因子となり,血漿 BNP 値 断の際に施行すべき検査の 1 つである(推奨グレード A). との併用で有用性が増す 77)(レベル 4b,グレード C1). 心エコー断層像により著明な左室拡大と左室壁運動低下 3 を認めた場合,特発性拡張型心筋症や特定(二次性)心 画像診断 筋症が疑われる. 1)特発性拡張型心筋症と代表的な特定(二次性)心筋症 ①心エコー図・ドプラ法 特発性拡張型心筋症をはじめとする代表的な心筋症の 推奨文 心エコー所見を表5にまとめる.特発性拡張型心筋症は, ◦虚血性心筋症ではびまん性壁運動低下を示す例があ 著しい心室内腔の拡大と高度の収縮不全を特徴とする. り,特発性拡張型心筋症と鑑別困難な場合がある(レ 一方,虚血性心筋症や二次性心筋症は,表に示すとおり ベル 6,グレード A). 壁運動低下の形態など疾患に特徴的所見もあるため,そ ◦肥大型心筋症では,経過中に心拡大および限局性また の特徴を把握しておくことは重要である.しかし,特発 はびまん性壁運動低下を示す一群があり,肥大型心筋 性拡張型心筋症との鑑別が難しい例が少なくないことも 症拡張相と呼ばれる(レベル 5,グレード A) . 留意しなければならない.例えば,虚血性心筋症におい ◦心サルコイドーシスでは,左室または右室の局所壁運 ては冠動脈支配領域に一致した局所的壁運動低下が特徴 動低下,壁肥厚,壁菲薄化,心室瘤を認めるが,びま 的だが,びまん性低下の場合もあり,また特発性拡張型 ん性壁運動低下を示す例もある(レベル 6,グレード 心筋症においても不均一な壁運動低下を認めることもあ A). るため,両者の鑑別は困難な場合も多い 71)-81).高血圧 ◦心アミロイドーシスでは,アミロイドの沈着により, 性心筋症では様々な左室肥大の形態を示す 82).また,病 心室および心房壁肥厚,心筋内顆粒状光輝,心嚢液貯 後期には左室駆出率は正常であっても拡張障害に加え収 留,心房内血栓を認めることがあり,僧帽弁流入波形 縮能低下が共存する病態,拡張心不全が存在する 83).肥 は病変の進行とともに拘束型を示す(レベル 6,グレ 大型心筋症の一部が,経過中に心拡大やびまん性の壁運 ード A). 動低下を来たすものは肥大型心筋症拡張相とされ ◦心 Fabry 病では通常全周性の左室肥大を示し,病期の る 84)-88).心サルコイドーシスの場合は左室および右室 表 5 拡張型を示す心疾患のエコー所見 特発性 拡張型心筋症 虚血性 心筋症 冠動脈支配領域に 一致した壁運動異 びまん性壁運動低 常,菲薄化,輝度 下 上昇 79),80) 左室壁運動 局所壁運動低下を びまん性のことも 示すこともあり 78) 多く,心エコーの みで診断は困難 81) 左室容積 左室駆出率 左室壁厚 その他 18 拡大 低下 拡大 低下 正常─減少 正常─減少 (菲薄化) 高血圧性 心筋症 正常 (病初期) 狭小─軽度拡大 正常─低下 対称性肥大 求心性 リモデリング 求心性肥大 遠心性肥大 82) 拡張障害 肥大型心筋症 拡張相 心サルコイ 慢性心筋炎 ドーシス 局所壁運動低下 ( 心 室 中 隔 基 部, 左室後下壁,乳頭 びまん性壁運動低 筋, 左 室 自 由 壁, びまん性壁運動低 下 84)-88) 下 96)-98) 右室自由壁) 心室瘤形成 びまん性の壁運動 低下例もあり 89)-95) 拡大 正常−拡大 正常─拡大 低下 低下 低下 非対称性肥大 (肥大型心筋症診 断当時と比較する と減少傾向) 心室中隔基部,左 室後下壁の壁菲薄 化,輝度上昇 正常─減少 病初期は壁肥厚 肥大型心筋症の既 心サルコイドーシ 完全房室ブロック 機能性僧帽弁逆流 虚血性(機能性) 病後期に収縮障害 往 スと類似する場合 の合併 僧帽弁逆流の合併 も合併 僧帽弁逆流の合併 機能性僧帽弁逆流 あり 98) 拡張心不全 83) の合併 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン の局所壁運動低下,壁肥厚,壁菲薄化,心室瘤を認める が,びまん性の壁運動低下を示す例もある 89)-95) .慢性 いため拡張能評価は心機能障害の早期検出に有用と考え られる 123)-125). 心筋炎の場合,拡張型心筋症類似の所見を呈し,心エコ 心 Fabry 病 ーのみでの診断は困難である 96)-98). 心筋細胞へのスフィンゴ糖脂質蓄積により全周性の左 これらの心筋症の僧帽弁流入波形や肺静脈血流波形な 室肥大を示し,病期の進行とともに肥大の退縮や左室後 どドプラ所見としては,特に疾患特異性はなく,左室流 壁基部に限局した菲薄化が出現し,左室壁運動の限局性 入障害をおこし,左房圧上昇,左心不全を合併すると僧 またはびまん性低下を生じる.左室,左房拡大,左室拡 帽弁流入波形は偽正常化,さらには拘束型のパターンを 張障害,僧帽弁逆流を合併する 126)-128). 示し,肺静脈血流波形においても S 波の低下を来たす. 産褥心筋症 2)その他の心筋症 妊娠後期から分娩後数か月までに出現する心機能障害 アミロイドーシス で,特発性拡張型心筋症類似の左室の拡大およびびまん アミロイドの心筋間質,心内膜,心房壁,弁膜,刺激 性壁運動低下がみられる 129),130). 伝導系への沈着により,左室および右室壁肥厚,心筋内 顆粒状光輝(granular sparkling sign),弁肥厚,両心房 拡大,心房壁肥厚,心嚢液貯留,心房内血栓など認める ことがある.僧帽弁流入波形は病変の進行とともに拘束 ② CT と MRI 心臓 MRI の役割は,(1)シネ MRI による心機能評価, (2)遅延造影 MRI による虚血性・非虚血性心筋症の鑑別 型を呈する 99)-104). 診断,そして(3)重症度の評価である. ARVC CT は,MRI の遅延造影に比べて正常心筋と異常心筋 右室心筋の脂肪変性,線維化により右室拡大と壁運動 とのコントラストが著しく劣ることから心筋症の診断に 低下を認める 105),106). おける CT の役割は低い. アルコール性心筋症 1)MRI よる心機能評価(シネ MRI) アルコール大量摂取により,病初期は拡張能障害,左 MRI による心機能評価は(1)左室・右室駆出率,(2) 室肥大を認めるのみだが,進行すると左室拡大,壁厚減 心拍出量,(3)左室・右室拡張末期・収縮末期容積,(3) 少,収縮能低下を認める 107)-109) . 心筋重量がある.シネ MRI 検査では,右室 / 左室機能や 脚気心 局所壁運動を正確かつ高い再現性をもって評価でき ビタミン B1 不足に伴う末梢血管拡張と高心拍出性心 ) る 131(レベル 1,推奨グレード A). 不全が特徴.左室および右室拡大,左室の過大な壁運動 2)MRI よる心筋組織性状評価 を認め,高心拍出状態であるが,肺高血圧や心嚢液貯留 ①遅延造影 MRI を認める 110)-112) . 遅延造影 MRI は,MR 造影剤であるガドリニゥム(Gd) 左室緻密化障害 の 投 与 10 ~ 15 分 以 後 の 平 衡 相 に お い て,Inversion- 心筋壁が心内膜側の緻密化障害のある厚い層と心外膜 recovery 法を用いて撮影し梗塞領域を高信号に描出する 側の緻密化した薄い層の二層構造を呈する.左室拡大を T1 強調画像の 1 つの方法である.Gd 造影剤は,ヨード 認め,収縮性の低下を認める 113),114). 造影剤と同様に心筋細胞には分布せずに細胞外液に入る 筋ジストロフィーに伴う心筋疾患 性質をもつ.そのため陳旧性梗塞にみられる線維化や, Duchenne 型,Becker 型など各筋ジストロフィーでは 急性心筋梗塞時の細胞壊死などの細胞外液腔が拡大する 総じて拡張型心筋症様の壁運動低下を認めることが多 病態では,障害された領域が高信号領域として描出され い る 132).この特性を生かして(1)心筋梗塞サイズの定 115)-119) . ミトコンドリア心筋症 量 132),(2)心内膜下梗塞の同定 133),134),(3)血行再建に 肥大型心筋症様所見を示すことがある.また,中には 必要な心筋バイアビリティーの評価 135),136)に有用である 拡張型心筋症(肥大型心筋症拡張相)の形態を示すこと (レベル 2,推奨グレード B).さらに特発性拡張型心筋 もある 118),120)-122) . 症と特定(二次性)心筋症の鑑別,虚血性心筋症と非虚 薬剤性心筋症 血性心疾患の鑑別において,遅延造影の分布様式や形態 薬剤の慢性的な心毒性による拡張型心筋症類似の不可 ) が利用される 132),137)-139(レベル 4b,推奨グレード B). 逆性心筋障害.アドリアマイシンなど抗がん剤によるも ② T2 強調画像 のが多い.拡張能障害が収縮能障害に先行することが多 急性心筋梗塞 140)や急性心筋炎や心サルコイドーシス 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 19 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) では炎症性浮腫の心筋は T2 緩和時間が延長し,T2 強調 延造影を示す 139),142)-145).表 6 には,特発性拡張型心筋 画像において心筋のシグナル強度が増加する.また,こ 症と類似する代表的な特定(二次性)心筋症の遅延造影 の部分は遅延造影でも組織の濃染が見られる. MRI の特徴を示す. 3)遅延造影のパターンによる虚血性心筋症と非虚血性 4)その他の心筋症 高血圧性心筋症 心筋症の同定 遅延造影 MRI は心筋症の原因疾患が虚血性か非虚血 高血圧性心筋症の MRI 所見は少数例の報告のみであ 性かの鑑別に有用である.非虚血性心疾患のなかでの原 る 145).肥大型心筋症では,遅延造影が肥大心筋に 80% 因疾患同定に関しては,遅延造影の分布形式や形態にオ 以上の高い確率で認められるのに反して,高血圧性心筋 ーバーラップが多数あるために遅延造影 MRI 単独での 症の遅延造影パターンは特発性拡張型心筋症に類似して 鑑別は困難な場合が多い. おり頻度も低い.MRI 所見単独での診断は困難である. 心筋梗塞による遅延造影のパターンは,以下の 2 つの 心アミロイドーシス 基準を満たす.(1)心筋梗塞巣は心内膜側から心外膜側 遅延造影は冠動脈支配と一致しない心内膜側に全周性 141) ,遅延造影の分布も心内膜下側から に認められる場合(signet ring サイン)と,心筋全体が 貫壁性に進展する注1).(2)遅延造影の分布は冠動脈支配 びまん性に造影されるパターンがある.遅延造影 MRI に一致して認められる. は,線維化または壊死した心筋を明瞭に描出するために 特発性拡張型心筋症では,遅延造影そのものが認めら 正常心筋の存在を前提としている.このため,心筋にび れない例がある.また遅延造影が存在しても冠動脈支配 まん性に沈着するアミロイドを明瞭に描出することは困 領域に一致しない孤立性の淡い斑状の分布や,左心室壁 難である 146)-149). に進展するため の中層(特に心室中隔の中層)に細く線状に縦走する遅 ARVC(Arrhythmogenic Right Ventricular Cardiomyopathy) 2010 年に ARVC の新しい診断基準が発表された 150). 注釈1) 左室中隔の最基部において冠動脈の潅流は心外膜側のみあるた め,左室中隔の最基部の遅延造影は心外膜側のみに認められ る 2),50). 新基準では,シネ MRI による局所的な右室壁運動消失 または奇異性運動または右室の収縮同期不全に加えて, (1)右室駆出率が≦ 40%,(2)右室拡張末期容積 / 体表面 表 6 代表的な心筋症の遅延造影および T2 強調画像所見 特発性 拡張型心筋症 肥大型心筋症 拡張相 虚血性心筋症パ 心室中隔中層に 冠動脈支配に一 ターンと非虚血 線状に縦走す 心室中隔中層に 致して,梗塞の 性心筋症パター 遅延造影 る. 線状に縦走する 進展に一致して ンが混在する. パターン 右室接合部の中 パターンを呈す 心内膜下から貫 肥大部分および 隔に斑状に出現 る例もある 壁性に分布する 右室左室接合部 する. に多い 急性心筋梗塞で は,area at risk が高輝度に描出 描出されない 描出されない T2 強調画像 描出されない される.陳旧性 心筋梗塞は描出 されない 心サルコイドー シスや肥大型心 遅延造影パター 筋症拡張相と比 ンは心サルコイ その他 べ遅延造影の頻 ドーシスに類似 度は明らかに低 している い エビデンス レベル 4b レベル 4a レベル 5 レベル 5 レベル 推奨 グレード B グレード B グレード C1 グレード B グレード 139,142, 144,166, 文献番号 133,135 145 143,144 167 20 虚血性 心筋症 高血圧性 心筋症 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 心サルコイドーシス 心筋炎 虚血性心筋症パターンと非虚 血性心筋症パターンが混在す る.中隔基部の右室側に認め られる場合や心外膜側のみの 分布が比較的特徴的.右室流 出路単独に認められる場合も ある 1. 心室中隔の中 層に縦走,2. 左 室側壁の心外膜 側,3. 心筋中層 に局所的に多発 する 3 つのパタ ーンがある. 壁運動の低下し 炎症の活動性の高い部位に一 ている炎症性浮 致して高輝度に描出 腫に一致して高 輝度に描出 拡張型心筋症類似の低心機能 症例では,遅延造影の分布は 拡張型心筋症と比べて広範囲 に認める レベル 4b レベル 4b グレード B グレード B 168 − 171 172 − 178 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン 積比が≧ 110mL/m2(男性),≧ 100mL/m2(女性)のい 心 筋 症 に 対 す る 核 医 学, 特 に ポ ジ ト ロ ン 断 層 撮 影 ずれかを満たすことになっている.遅延造影は,拡張/ (positron emission tomography; PET)の有用性について 瘤化した右室に一致して描出され,一部は左室中層に斑 概説する.核医学検査や PET 検査において,拡張型心 状に分布する場合もある(LV involvement).遅延造影 筋症の診断に決定的な所見はないが,病因や病態の補助 の 頻 度 は 右 室 で 60 ~ 70 %, 左 室 で 30 ~ 70 % で あ 診断,治療効果の判定には有用であると考えられる. る 151)- 155). 1)心筋血流イメージング アルコール性心筋症 塩化タリウムとテクネシウム標識製剤を用いた心筋血 本疾患の遅延造影は拡張型心筋症に類似するが,その 流シンチグラムでは,心筋の虚血部位や線維化部位に一 頻度や病期との関係は不明である. 致して血流欠損が認められる. 脚気心(Shoshin beriberi) 安静時心筋血流イメージング 本疾患に特徴的な遅延造影所見はない. 201Thallium や 99mTechnetium のいずれの核種も心筋 左室緻密化障害 組織への集積は生存心筋と心筋血流量に依存する.虚血 左室心尖部の評価にはシネ MRI が有用であり 156),非 性心筋症は心筋梗塞と非梗塞部を含めた心室リモデリン 緻密化層と緻密化層の比が 2.3 以上であることを診断基 グが主因であるが,可逆的な収縮不全心筋が存在する場 準として提唱されている 157) . 合,血行再建術の有用性があり,安静時心筋血流イメー 筋ジストロフィーに伴う心筋疾患 ジングを用いて評価される. 遅延造影は心基部の下側壁に分布し,主に心外膜側ま 負荷心筋血流イメージング たは心室中層に認められる.遅延造影の頻度は 32 ~ 75 虚血性心筋症や高血圧性心筋症では,負荷心筋血流イ %である 158)-160) . メージングにおいて再分布現象や固定欠損などの血流異 薬剤性心筋症 常所見がしばしば認められる.冠動脈病変による心筋虚 ◦抗がん剤のドキソルビシンによる薬剤性心筋症が多い 血を表している場合もあるが,冠血流予備能の低下,心 が,本疾患に特異的な遅延造影所見はない. ◦乳がん治療に使用されるトラスツズマブによる薬剤性 筋細胞の線維化や壊死など様々な病態を反映している. 2)PET イメージング 心筋症の遅延造影は,側壁に分布し心外膜側パターン PET は生体組織の生化学的機能を表す画像を得ること をとる場合がある.左室駆出率が 40%未満の 10 人の ができる.現在のところ,保険が適用されている PET 報告では遅延造影出現率は 100%である 161). 検 査 の tracer は ブ ド ウ 糖 ア ナ ロ グ で あ る 18F 標 識 心 Fabry 病 fluorodeoxyglucose(FDG)のみで,FDG-PET はブドウ 遅延造影は心基部の下側壁に分布し,貫壁性から心外 糖代謝画像として臨床応用されている.FDG は細胞膜 膜側,心内膜側と多彩である.遅延造影の頻度は病期に 上に発現するブドウ糖輸送体(glucose transporter)を介 よって遅延造影の分布は変化すると考えられるが,31 してブドウ糖代謝の盛んな細胞に多く取り込まれる.そ ~ 50%である 162)-164). の FDG 集積を PET により画像化することでブドウ糖代 産褥性心筋症 謝を評価することができる.細胞内に滞留する FDG 量 症例数が 8 人の報告では遅延造影 MRI は認められてい は細胞のエネルギー需要に大きく依存する. ない 165) . ③核医学検査と PET 正常心筋では空腹時におけるエネルギー基質の約 90 %は遊離脂肪酸であるが,虚血心筋や不全心筋では脂肪 酸代謝からブドウ糖代謝へと移行する.心筋細胞の 拡張型心筋症は多くの病因による心筋障害の終末像で FDG 集積は心筋のブドウ糖代謝を反映するものである. ある.しかしながら,病因は異なっても病態には多くの 心筋組織の viability の検出には,心筋血流シンチよりも 共通点が存在する.また,病因によっては,心サルコイ FDG-PET の方が優れている 179). ドーシスのようにステロイド治療が有用な疾患もあり, 特発性拡張型心筋症において,FDG-PET により心筋 病因や病態の診断,治療効果を評価するモダリティの開 のブドウ糖代謝が保持されている場合はβ -blocker への 発が望まれている. 反応が良好であり,治療効果の予測に心筋のブドウ糖代 核医学検査では,最適な tracer を用いることにより細 謝の維持が重要であることが報告されている 180).壊死 胞機能情報を映像化・定量化することができ,組織の分 心筋部位を外科的に切除する左室形成術には心筋組織の 子挙動を把握することが可能である.本稿では,拡張型 viability を正確に評価する必要があり,FDG-PET によ 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 21 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) る評価が適していると考えられる. を規定する最も重要な因子は運動能力である.慢性心不 また,活動性炎症病変には顆粒球・リンパ球・マクロ 全の重症度や予後推定 185)だけでなく,日常活動の許容 ファージ等の炎症細胞が高密度に集族している.それら 範囲,職種や業務内容の選択,手術に際してのリスクの の細胞は大量の酸素やブドウ糖を消費していることか 評価などに運動能力の評価は必須である 186). ら,FDG は活動性のある炎症病変にも集積することが 知られている.FDG-PET は活動性のある炎症細胞を高 感度に検出することができ,この特性を用いてサルコイ ①運動能力の主観的評価法 1)NYHA 心機能分類(表 7) ドーシスの心病変を描出できることが報告されてい 日常生活の身体活動能力に基づいた重症度分類であ る 181)-184).サルコイドーシスにおいて心病変の FDG 集 る 187).この方法は簡便であり,患者の生活の質を反映 積程度が強く 182),184),また,心臓における FDG 集積が している.日本循環器学会の慢性心不全のガイドライン 不 均 一 な 例 ほ ど, 心 臓 へ の 波 及 頻 度 が 高 率 で あ で NYHA 心機能分類に基づいた治療選択が推奨されて り 183),184),FDG-PET によりサルコイドーシスの心病変 いる 188).一方,それぞれのクラスの判断基準となる具 を高感度に検出することが可能である. 体的な日常活動レベルが曖昧であり,検者や被験者の主 心サルコイドーシスにおいて心筋傷害の程度により心 観に左右されやすく,定量性・客観性に乏しい点が欠点 筋の血流異常が生じると考えられるが,FDG の異常集 である.また,Ⅱ度およびⅢ度の幅が広く,軽中等度の 積部位は必ずしも心筋の血流異常部位と一致しないこと 心不全患者の生活指導指標には適さない.さらに,心不 がある.この病態は,心病変に活動性のある炎症が存在 全の病歴が長い患者は,自らの活動を制限していること するが,心筋は傷害・壊死には至っていないと考えられ, があり,注意が必要である. この病態でのステロイド治療が開始されることが望まれ 2) 身 体 活 動 能 力 質 問 表(Specific Activity Scale; る.心サルコイドーシスにおいてガリウムシンチグラフ SAS) (表 8) ィで心臓に集積を認める例では躊躇することなくステロ 日常生活の具体的な活動を特定し,その運動量を イド治療を開始することができるが,ガリウムシンチグ metabolic equivalents(METs)に対応させた指標が SAS ラフィによる診断感度は高くなく,ガリウムの集積を認 である.この指標は心不全症状が出現する最小運動量を めない場合にはステロイド治療を行うか否か治療方針の 酸素消費により定量的に判定しようとするものである. 決定に苦慮することがある.FDG-PET はガリウムシン 心不全治療目標の一つが患者各々の生活レベルを達成さ チよりもサルコイドーシスの心病変を検出する診断感度 せることであるから,この指標は患者の行動様式を詳細 が高く 182)-184) ,ステロイドの治療効果についても評価 に把握する上で非常に有用である.特に日常生活で自覚 が可能であることが報告されている 184). 症状が出現する中等症から重症の慢性心不全の運動能力 また,特発性拡張型心筋症と比べると,心サルコイド 評価に有用である 189),190). ーシスでは心臓における FDG 集積の不均一性が強く, FDG-PET は心サルコイドーシスと特発性拡張型心筋症 との鑑別診断にも有用である可能性がある 183).さらに は,心筋炎の炎症部位を検出することも可能であると考 えられる.現在,FDG-PET の保険適応要件は虚血性心 疾患による心不全患者において,通常の心筋血流シンチ グラフィでの viability 診断の判定困難な場合に心筋組織 の viability 診断が必要とされる患者に限られており,今 後の適応拡大が望まれる. 4 活動能力評価 拡張型心筋症を基礎として慢性心不全状態となると, 活動能力が低下する.活動能力低下は生活の質と充実度 を直接に低下させるため,活動能力の改善は慢性心不全 治療の主要目標である.したがって,慢性心不全におけ る活動能力の客観的評価が極めて重要である.活動能力 22 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 表 7 NYHA 心機能分類 Ⅰ度 心疾患を有するが,そのために身体活動が制限される ことのない患者.通常の身体活動では, 特に疲労, 動悸, 呼吸困難あるいは狭心症状は来たさない. Ⅱ度 心疾患を有し,そのために身体活動が軽度制限される 患者.安静時は無症状である.通常の身体活動で疲労, 動悸,呼吸困難あるいは狭心症状を来たす. Ⅱ s: slight limitation of physical activity(身体活動の軽 度制限) Ⅱ m: moderate limitation of physical activity(身体活動 の中等度制限) Ⅲ度 心疾患を有し,そのために身体活動が高度に制限され る患者.安静時は無症状であるが,通常以下の身体活 動で疲労,動悸,呼吸困難あるいは狭心症状を来たす. Ⅳ度 心疾患を有し,そのために非常に軽度の身体活動でも 愁訴を来たす患者.安静時においても心不全あるいは 狭心症状を示すことがある.少しの身体活動でも愁訴 が増加する. 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン 表 9 Borg スケール 表 8 身体活動能力質問表(Specific Activity Scale; SAS) 夜,楽に眠れますか(1MET 以下) 横になっていると楽ですか(1MET 以下) 1 人で食事や洗面ができますか(1.6METs) トイレは 1 人で楽にできますか(2METs) 着替えが 1 人で楽にできますか(2METs) 炊事や掃除ができますか(2 ~ 3METs) 自分でフトンをしけますか(2 ~ 3METs) ぞうきんがけはできますか(3 ~ 4METs) シャワーをあびても平気ですか(3 ~ 4METs) ラジオ体操をしても平気ですか(3 ~ 4METs) 健康な人と同じ速度で平地を 100 ~ 200m 歩いても平気 ですか(3 ~ 4METs) 12. 庭 い じ り( 軽 い 草 む し り な ど ) を し て も 平 気 で す か (4METs) 13. 1 人で風呂に入れますか(4 ~ 5METs) 14. 健康な人と同じ速度で 2 階まで昇っても平気ですか(5 ~ 6METs) 15. 軽い農作業(庭堀りなど)できますか(5 ~ 7METs) 16. 平地を急いで 200m 歩いても平気ですか(6 ~ 7METs) 17. 雪かきはできますか(6 ~ 7METs) 18. テニス(または卓球)をしても平気ですか(6 ~ 7METs) 19. ジョギング(時速 8km 程度)を 300 ~ 400m しても平気 ですか(7 ~ 8METs) 20. 水泳をしても平気ですか(7 ~ 8METs) 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 21. なわとびをしても平気ですか(8METs 以上) 20 19 18 17 16 15 14 13 12 11 10 9 8 7 6 非常につらい かなりつらい つらい ややつらい 楽 かなり楽 非常に楽 て運動制限されている患者において,その運動制限が心 不全によるものかどうかを鑑別する際に有用である 194). 心不全患者の最も客観的な運動能力の指標である最高酸 素摂取量(peak VO2)は全身の機能(心機能,肺機能, 4 末梢機能,および肺・体循環機能)を統合した指標であ り 194), 予 後 評 価 185),195)-197), 心 臓 移 植 候 補 者 の 決 ②運動能力の客観的評価法 定185),197)-199), 重症度評価200)のための適切な方法である. 1)6 分間歩行 有酸素運動単独から無酸素運動が加わるポイントであ 特殊な設備が不要な簡便法として,最大努力による 6 る嫌気性代謝閾値(anaerobic threshold; AT)も重症度の 分間の歩行距離を測定する最大負荷試験である.6 分間 良い指標である 193),194).最大運動能力のおよそ 50 ~ 55 歩行距離は身長と体重および年齢に関連しており,日本 %にあたり,日常の活動レベルを表す指標として用いら 人の正常域(m)は[454 - 0.87 ×年齢(歳)- 0.66 ×体 れる 193),194).AT レベルの運動は,運動に必要なエネル 重(Kg)]± 82(2 標準偏差)に身長(m)を乗じたもの ギーが有機的代謝で供給されるため長時間運動を継続す とされる 51).この検査で得られた歩行距離と NYHA 心 ることができ,カテコールアミンの著しい上昇がないた 機能分類や最大酸素摂取量は相関すると報告されてい め不整脈や著名な血圧上昇が起こりにくく,心筋酸素消 .また,歩行距離と 1 年後の死亡率が逆相関し,独 費量の増加が少なく,心不全患者において安全に行うこ 立した予後予測因子であることが知られている 191).一 とができる.したがって,AT を知ることによって,心 方,再現性は低く,1 人の患者の運動能の変化をみるに 不全患者の運動許容範囲を設定することができ 201),AT る 50) は不適当であると考えられている 192) . 時の酸素摂取量での運動強度を SAS 表と対応させて日 2)心肺運動負荷検査 常生活の指導を行う.さらに,心不全患者において運動 トレッドミルや自転車エルゴメーターを用い,呼気ガ 療法は予後や運動耐容能を改善する治療法であるが,運 ス分析を併用した心肺運動負荷試験で客観的な運動能力 動処方は AT に基づいてなされる 202).また,Borg スケ を評価する 193).多段階漸増運動負荷法の Bruce 法は, ールの 11 ~ 13 に相当する運動強度は,約 60 %の例で 一段階ごとの負荷量の幅が大きく,第一ステージで既に AT に相当することが知られており,Borg スケールだけ 約 5METs 相当の負荷がかかるので,心不全患者の運動 で運動処方することも可能であるが,心肺運動負荷検査 能力評価には適さず,直線的漸増負荷法が用いられるこ の AT と Borg スケールの 11 ~ 13 が一致することを確認 とが多い.心肺運動負荷検査を行う際に,自覚的運動強 することが望ましい. 度(Borg スケール,表 9)を確認することが重要である. 心肺運動負荷試験から得られる他の指標の中で,心不 客観的に得られた負荷量や酸素摂取量と Borg スケール 全の重症度を示し,生命予後と関連するものがある.二 を対比することによって,得られた結果を日常生活活動 酸化炭素排泄量(VCO2)の増加量に対する換気量(VE) の指導に用いることができる.また労作時息切れによっ の増加率(VE vs. VCO2 スロープ)は換気効率を表し, 4 4 4 4 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 23 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) 心不全が重症になるほど高値を示し,高値の症例ほど生 命予後が不良であることが示されている 203).仕事率増 ①右心カテーテルと左心系圧測定 加に対する VO2 増加の割合(⊿ VO2/ ⊿ WR)は運動中 心不全の病態評価のためのみに,日常診療で肺動脈カ の心拍出量増加の程度を表し,心不全患者の生命予後を テーテル(Swan-Ganz カテーテル)を使用することの有 4 4 .その他には 用性は,証明されていない 205).慢性病態である拡張型 回復期酸素摂取量時定数や酸素摂取量立ち上がり時定数 心筋症では,心エコー図や尿量,身体所見など,非侵襲 なども心不全の重症度と関連することが報告されてい 的なデータに基づいた疾病管理が原則である.しかし, 規定する因子であると報告されている 204) る. ショック例や薬物治療に反応が悪い場合,あるいは,前 負荷減少に伴い低心拍出状態を発症する重症例での,肺 心不全における活動能力評価 動脈カテーテル管理の是非を検討した報告もまた存在し クラスⅠ ない.混合静脈血酸素含有量(SVO2)は,心拍出量の ◦問診:運動能力,心理的状態,認識能力,社会的環 による改善度を見る指標として有用性が高く 206),この 境などの把握 ◦心肺運動負荷試験:心移植やその他の高度な治療適 応を検討するため ような直接的な血行動態の評価をためらうべきでない. なお,熱希釈法による心拍出量測定は,低心拍出状態で ◦心肺最大運動負荷試験:労作時呼吸困難や易疲労性 は血液が加温され過大評価される 207).一方,三尖弁逆 が運動制限因子となっている患者で原因を鑑別する 流(3 度以上)の存在下では心拍出量を過大評価すると ため いう意見が多いが,過小評価するという報告もある 208). ◦最高酸素摂取量測定:予後評価のため 左心系では,左室機能低下に伴って左室拡張末期圧 クラスⅡ a (left ventricular end-diastolic pressure,LVEDP)が上昇 ◦心肺最大運動負荷試験:運動処方を作成するため する.左室圧の上昇勾配の最大値である max + dP/dt は, ◦心肺運動負荷試験:心房細動,ペースメーカ患者の 左心室心筋の収縮特性を表すよい指標である.しかし, 心拍応答や至適プログラム決定,運動時の血圧,不 日常使用には推奨されない.拡張型心筋症における圧測 整脈,身体活動の程度の評価,運動能力の変化と治 定と予後については,LVEDP 上昇と左室収縮期圧の低 療の評価などのため 下,心係数の低下が相関する 209),210). クラスⅢ ②冠動脈造影と左室造影 ◦ルーチン検査として最大運動負荷試験 5 心臓カテーテル検査と心内膜生検 推奨文 冠動脈 3 枝病変のような高度虚血性心疾患では,リモ デリングの進行に伴い左室壁厚の減少や左室腔拡大など の形態的変化を生ずる.心筋虚血への治療介入としては, 診断意義 得意領域 右心カテ 心不全の程度把握(特に LOS の場 ーテル 合) 狭心痛を要し心筋虚血に介入する ことで改善が期待できる場合 冠動脈 造影 虚血を疑う所見を有するが狭心痛 がないもの 左 室 形 態 regioneral asynegy の 評 左室造影 価 心拡大がない患者に新規に心不全 が発症して 2 週間以内 2 週間以内に心不全で発症し,臨 床経過から心筋炎が疑われる例 心筋生検 心エコー図などの画像検査から心 筋炎(特発性,好酸球性,自己免 疫性心筋炎),サルコイドーシス やアミロイドーシスなどを疑う心 不全例 24 低下や組織での酸素摂取を反映し,心不全の状況や治療 レベル 推奨度 (グレード) 2 C1 2 A 3 C2 3 C1 2 A 3 A 冠動脈バイパス手術や経皮的冠動脈形成術が原則であ る 211).一方,拡張型心筋症の診断には,冠動脈造影に よって虚血性病態を除外診断する必要がある.ただし, 拡張型心筋症では,左室の拡張に伴い全体的に引き延ば されたような枯れ枝状の冠動脈所見を呈する場合があ る.また,有意狭窄を認めなくとも,冠血流予備能(安 静時から最大冠血管拡張を生じた際の冠血流増加率)が 低下することが報告されている 215).本来安静時には, 冠循環における自動調節能が働くが,拡張型心筋症では LVEDP の上昇や末梢冠動脈抵抗の増大や微小血管の内 皮機能障害,冠微小循環障害によって冠予備能が低下す る.冠血流予備能の低下は,アデノシンやジピリダモー 3 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 C1 ル投与を用い,冠血管拡張による最大冠血流量が低下す ることによって検出され 215),216),予後推定の一指標とな る 217). 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン 冠動脈造影の適応は,狭心痛を有し心筋虚血に対する 像,間質の線維化を認める(図 5 拡張型心筋炎の組織 介入によって改善が期待できる場合(レベル 2,グレー 像:心筋線維の融解脱落像を認める.線維化が著明であ ド A),虚血を疑う所見を有するものの狭心痛がない場 るが明らかな細胞浸潤は認めない).しかし,拡張型心 合(レベル 3,グレード B)がある.明らかな虚血所見 筋症に「特異的な病理所見」というものがあるわけでは を有さない拡張型心筋症患者では,ただちに冠動脈造影 ない.つまり心筋生検は,あくまでも他疾患を除外診断 を行うべきとはならず(レベル 3,グレード C2),まず するための位置づけに留まる.心筋の脱落,融解像,線 非侵襲的検査にて診断をすすめる 212)-214). 維化の程度が,病態の把握や予後推定の一助となるとの 近年,薬剤抵抗性心不全の拡張型心筋症(特に心室内 報告もある 226). 伝導障害を示す幅の広い QRS 複合例)に対し,心臓再 右室からであれ,左室からであれ,心内膜心筋生検は 同期療法が行われる.この際,ペースメーカリードの先 侵襲的手技であるため,一定の合併症リスクを有する. 端を冠静脈洞の至適部位に留置することが,改善を導く 合併症としては心室穿孔,脚ブロック,脳塞栓,血管損 際に重要である.このため,冠動脈造影の際には,動脈 傷,腱索断裂による弁逆流悪化などが挙げられる.この 相のみでなく静脈相まで長めに撮影する. うち最も重篤な合併症は,心室壁穿孔による心タンポナ 一方,左室造影では左室容積と収縮能を評価する.左 ーデである.我が国では,19,964 例の心臓カテーテル手 室拡張がないにもかかわらず収縮能が低下する例では, 技で穿孔が 0.7 %,死亡は 0.05 %と報告されている 227). 高血圧性心不全や肥大型心筋症の拡張相,さらに,心ア 心エコー図によって心膜液の貯留が観察され,血圧低下, ミロイドーシスや心 Fabry 病などの蓄積性心筋疾患を除 頻脈を伴う際には,速やかにエコーガイド下ドレナージ, 外しなければならない.局所的な壁運動異常を認める場 あるいは直視下心膜切開ドレナージを行う必要があ 合には,虚血性心疾患やサルコイドーシス,それに慢性 る 228).左室壁穿孔では 12.9%,右室壁穿孔では 5.2%の 心筋炎などとの鑑別が必要である.左室駆出率(EF: 死亡率である. Ejection Fraction)が 45%未満では,EF10%ごとに総死 亡に対するハザードリスクが 39%ずつ増加する 218). ③心内膜心筋生検 心筋症の病理 ①肉眼病理所見 心内膜心筋生検は,1962 年今野・榊原によってカテ ーテル法が開発され 6 219) ,以後世界各国に広まった.心 特発性拡張型心筋症では,心臓の外形は大きく球状化 し,壁は柔軟で重量は増加する(平均重量 500 ~ 600g). 筋炎やアミロイド沈着といった確定診断には,心エコー 四心腔の拡大が見られるが,心房に比しより顕著な左心 図や MRI 検査をもってしても拡張型心筋症と鑑別がで 室腔ないし両心室腔の拡大を示し,僧帽弁や三尖弁の弁 きず,組織診断が必須である.また,心臓移植後の拒絶 口周囲径が増大する.心腔内にはしばしば壁在血栓を認 反応を見る上でも心筋生検は欠かせない検査である.さ め,また心筋層内の斑状の線維化や肥厚した心内膜も観 らに,Real-time PCR 法を用いた心筋ウイルスゲノム検 察される 229).壁の菲薄化に伴い網目状の肉柱形成が目 出も可能となった.拡張型心筋症例の心筋からも種々の 立つ症例は,孤立性左室緻密化障害との鑑別が必要であ ウイルスゲノムが検出されている 220). るが,類似した所見は拡張型心筋症をはじめ種々の心筋 心拡大がみられず心収縮能が正常であったにもかかわ 症でもしばしば見られ,特異的な所見ではない 230).な らず新規に心不全が発症した症例では,心筋生検を発症 お高度な左室収縮力低下にもかかわらず左室拡大の目立 から 2 週間以内に施行すべきである(レベル 2 グレー た な い 症 例 も 存 在 し, 軽 度 拡 張 型 心 筋 症(MDCM; 137),220) ド A) .他に心筋生検の有用性が高いと考えられ mildly dilated cardiomyopthy)として知られ注意が必要 るのは,(1)2 週間以内に心不全で発症し,臨床経過か である 231).心室壁における脂肪組織の増生も非特異的 ら心筋炎が疑われる例 (レベル 3,グレード A), (2) 221)-223) に観察されるが,特に右室側に目立つ症例は,ARVC が 心エコー図などの画像検査から心筋炎(特発性,好酸球 鑑別に挙がる 232).一般に拡張型心筋症の病態を示す疾 性,自己免疫性心筋炎),サルコイドーシスやアミロイ 患,例えばアントラサイクリン系抗がん剤等による薬剤 ド ー シ ス な ど を 疑 う 心 不 全 例( レ ベ ル 3, グ レ ー ド 性心筋症 233),産褥性心筋症 234),アルコール性心筋症 235) C1)224),225)である. でも特発性拡張型心筋症と同様の遠心性肥大心を示し, 拡張型心筋症の組織所見としては,心筋細胞の大小不 肉眼病理所見での鑑別は難しい.脚気心については多く 同,核の不整と大小不同,心筋線維の粗しょう化,融解 は併存するアルコール性心筋障害の影響も無視できない 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 25 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) 図 5 拡張型心筋症の組織像(心筋生検組織像) HE 染色,40 倍 HE 染色,100 倍 HE 染色,200 倍 MT 染色,40 倍 MT 染色,100 倍 MT 染色,200 倍 HE:ヘマトキシレンエオジン,MT:マッソントリクローム が,やはり他の拡張型心筋症と同様の形態を示し,時に 右室側優位の心拡大を呈する 236).肥大型心筋症拡張相 ②組織病理所見 の場合も既に非対称性中隔肥厚像は失われ,特発性拡張 特発性拡張型心筋症の組織所見は非特異的であるが, 型心筋症同様の形態を示す 237),238).重症多枝病変を基盤 症例ごとに種々の程度の心筋の変性所見が観察され とする虚血性心筋症でも心内膜側ないし貫壁性にびまん る 121),229).多くの進行した拡張型心筋症では高度な代償 性の線維化と壁の菲薄化を生じ拡張型心筋症様の形態を 性心筋肥大と核変性像(核腫大,核不整,クロマチンの 示す.この場合,心表面を走行する冠動脈の粥状硬化も 濃染像など)が見られ,筋原線維の減少(粗鬆化)や空 .慢性心筋炎については組織学的な検索 胞変性を示す 229).このような核の変性像を伴う高度肥 なしに拡張型心筋症を呈する他の疾患との鑑別は難し 大心筋は,肥大型心筋症をはじめとする種々の心筋症に い 240).心サルコイドーシスでも外観は他の拡張型心筋 共通して出現するものである 244).空胞変性が高度な場 顕著である 239) 症との判別が困難である場合も少なくないが,肉芽腫性 合(例えば network pattern を示す場合)は心 Fabry 病等 病変が黄白色ないし灰白色斑状を示し心筋内に認められ の蓄積病 242)やミトコンドリア心筋症 229)の鑑別が必要で る場合があり,また瘢痕化により中隔前半部に顕著な壁 あり電子顕微鏡(電顕)での検索が望まれる(この場合, の菲薄化を生じる 241) .代謝性異常物質の蓄積による心 検体は事前に通常のホルマリンとは別の電顕用固定液で 筋症のうちヘモクロマトーシスは拡張型心筋症の形態を 処理しておく必要がある).心筋細胞質内のリポフスチ 示すが,アミロイドーシスや心 Fabry 病は,求心性心肥 ンは通常,加齢に伴い増量するが,ヘモクロマトーシス 大を示し肉眼形態ではむしろ高血圧性心臓病や肥大型心 における鉄沈着との鑑別は必ずしも容易ではなく,時に 筋 症 と の 鑑 別 が 問 題 と な る 242).Duchenne 型 な い し 鉄染色が必要である.線維化は,心筋線維間(間質性線 Becker 型の筋ジストロフィー症においても拡張型心筋 維化),心筋の脱落部(置換性線維化)や血管周囲性に 症様の心重量の増加や心腔拡大を見るが,半数以上の症 見られ,心内膜肥厚や脂肪組織の増生(脂肪浸潤)を伴 例で心室壁肥厚を伴い,線維化や瘢痕化が左室後壁ない う 229).境界の明瞭な虚血性瘢痕は虚血性心筋症だけで し側壁に強い点が特徴である 243). はなく microvascular disease にもよっても生じ,例えば 肥大型心筋症拡張相も鑑別にあがる 245).巣状の線維化 は拡張型心筋症の病因,病態における心筋炎の関与を示 26 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン 唆する場合があり 246),またサルコイドーシスを疑うべ 見同様に ARVC との鑑別が重要であるが 232),アルコー き症例ではたとえ典型的な肉芽腫性病変を見ない例で ル性心筋症においても目立つ場合がある 229),235).心筋配 も,瘢痕状線維化が炎症性の瘢痕である場合があり注意 列の乱れも種々の心筋症に見られる.錯綜配列 disarray が必要である 241).心筋間や血管周囲のアミロイド沈着 が高度な場合は,肥大型心筋症拡張相が鑑別にあがるが, が大量の場合はエオジン好性の無構造物として容易に検 その場合は一般に間質の線維症の強い症例が多い 237),238). 出できるが,少量の場合は Congo-red 等の特殊染色や電 その他,薬剤性心筋症 233),産褥性心筋症 234),アルコー 顕での検索が必要となる 242).逆に心内膜肥厚部の線維 ル性心筋症ないし脚気心 235),247)も含め,明らかな二次性 弾性症や血管壁の弾性線維は Congo-red 等のアミロイド 心筋症を除けば,特発性拡張型心筋症とそれ以外の拡張 染色で偽陽性になり注意が必要である.拡張型心筋症で 型心筋症を組織形態学的に判別することは困難であり, は間質に種々の程度のリンパ球浸潤が観察されるが,細 多くの場合は臨床情報を含めた総合判断ないし所見診断 胞浸潤が高度な場合には慢性心筋炎が鑑別にあがる 240) . となる.以上のような拡張型心筋症と主な類縁疾患の病 多核巨細胞の出現についてはサルコイドーシスをはじめ 理組織学的特徴および鑑別点については表 10 をあわせ とする肉芽腫性炎症,巨細胞性心筋炎や非特異的な異物 て参照されたい.なお組織学的な変性所見の多寡と臨床 反応などを鑑別する.脂肪組織の増生については肉眼所 所見との関連について一定した見解は得られていない 表 10 病理組織学的な特徴および主な類縁疾患との鑑別点 肉眼病理所見 特発性拡張型 虚血性心筋症 心筋症 拡張型心筋症 両心腔の拡大 様の心腔拡張 を伴う遠心性 を示すが,高 心肥大.しば 度な冠動脈硬 し ば 壁 在 血 化症や冠動脈 栓,房室弁周 支配領域に一 径の増大が見 致した瘢痕形 られ,肉柱形 成,心室瘤の 成が明瞭化す 形成を伴う場 る(図 6A) 合がある(図 7A) 組織病理所見 拡張型心筋症 様の所見をと り得るが,虚 典 型 例 で は, 血性瘢痕部 心 筋 の 変 性, は,既存の心 脱落と代償性 筋層と境界明 肥 大 の 混 在. 瞭な分布を示 高度な間質 す場合が多 性,置換性の い.また心内 線維化を示す 膜直下数層の (図 6B) 心筋は帯状に 残存する(図 7B) . その他 病理所見は非 特異的であ り,臨床事項 も含めた除外 診断の上,確 定される.軽 度拡張型心筋 症に代表され るように心機 能と形態学的 な異常所見に 解離が見られ る場合もある 心筋虚血に関 連した臨床所 見との照合が 重視される 肥大型心筋症 拡張相 心サルコイ ドーシス 心筋炎 ARVC その他の代謝性心筋症や 2 次性心筋症など 右心腔の拡張と 糖尿病性,アルコール性心 線維脂肪組織へ 筋症(脚気心) ,薬剤性心筋 拡張型心筋症 拡張型心筋症 急性期は,うっ血, の 置 換 が 特 徴 症,産褥性心筋症等で拡張 様の心腔拡張 様の心腔拡張 浮腫ないし炎症性 で,右室流出路 型心筋症様の心腔拡張を示 を示しうる を示し,非対 腫脹を伴い心室壁 漏斗部,心尖部, しうる.ヘモクロマトーシ が,特に心室 称性中隔肥厚 は肥厚する.一方, 下壁に強い変化 スでは肉眼的にも心筋が赤 中隔前半部の 所見も失われ 拡張型心筋症と慢 が見られる.進 褐色調を呈する.アミロイ 菲薄化を特徴 ている場合が 性心筋炎との鑑別 行例は拡張型心 ドーシスが拡張型心筋症様 と す る( 図 多い は難しい 筋症様の心腔拡 の肉眼像を示すことはまれ 9A) 張を示す場合が である ある ヘモクロマトーシスでは鉄 急性心筋炎では, 心筋の変性,脱 染色により心筋内の過剰な 壊死を伴わな 炎症細胞浸潤(通 落と線維脂肪組 鉄沈着を確定する.アミロ い類上皮性肉 常はリンパ球であ 織への置換が特 拡張型心筋症 イド沈着の有無は Congo-red 芽腫とラング るが好酸球性の場 徴 的 で あ る が, 様の所見をと 染色陽性部の緑色偏光像を ハンス型多核 合もある)による 種々の程度のリ り得るが,時 もって確定し,免疫染色等 巨細胞が出現 心 筋 の 融 解 壊 死 ンパ球浸潤や肥 に肥大心筋に によるアミロイド蛋白の同 (図9B) .生検 (近接効果)を証 大心筋に錯綜配 錯綜配列が目 . 定を行う.Fabry 病等の蓄積 等で肉芽腫を 明する(図 10A) 列を示す場合も 立つ場合があ 病やミトコンドリア疾患は, 見いだせない 慢性心筋炎は拡張 あり, heterogenる.また線維 心筋の高度な空胞変性が手 場合は,瘢痕 型心筋症様の所見 ic な病因を反映 化が高度な症 が か り と な る. 糖 尿 病 性, 状の線維化や をとりうるが,活 し,他の心筋症 例が多い(図 アルコール性心筋症(脚気 リンパ球浸潤 動性の炎症細胞浸 で見られる所見 8) 心) ,薬剤性心筋症等の多く が参考所見と 潤の残存や巣状線 がしばしば併存 維化像が手がかり は特異的な組織所見を示さ なり得る する(図 11) となる(図 10B) ない Fabry 病等の蓄積病やミトコ 心筋組織でのリン 特徴的な臨床 心筋組織の線維 ンドリア疾患では,電顕に パ球浸潤は,心筋 肥大型心筋症 像と組織に肉 脂肪組織への置 より心筋内微細構造の異常 炎に特異的ではな として経過観 芽腫を見いだ 換は非特異的で が示される.電顕はアミロ い.急性心筋炎は 察されてこな した場合はほ あるが,顕著な イド細線維の確認にも有用 時にカテコラミン かった症例で ぼ診断は決定 脂肪変性を認め である.その他の特異的な 心筋症やタコツボ は,拡張型心 的.組織像の る場合,本症が 病 因 の 可 能 性 に つ い て も, 心筋症との鑑別が 筋症との鑑別 みでは,他の 疑われる.通常 臨床所見から「まず疑うこ 必要.慢性心筋炎 は難しく,病 肉芽腫性炎症 は,特徴的な臨 と」が重要であるが,病型 と特発性拡張型心 理所見からの 性疾患との鑑 床所見とあわせ によっては,臨床所見との 筋症の一部は,現 推定に留まる 別にも留意す て診断確定し得 照合なしには特発性拡張型 時点では重複する 心筋症と区別できないもの る必要がある る ものと思われる も含まれている 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 27 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) 図 6 特発性拡張型心筋症(剖検例) A;肉眼病理所見(心重量 610g) B;組織病理所見(HE 染色,100 倍) 図 7 虚血性心筋症(剖検例) A;肉眼病理所見(心重量 690g) B;組織病理所見(HE 染色,40 倍) 図 8 肥大型心筋症拡張相(心筋生検組織像) A;HE 染色,100 倍 28 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 B;Azan 染色,100 倍 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン 図 9 心サルコイドーシス(剖検例) A;肉眼病理所見(心重量 330g,心体重比 0.94%) B;組織病理所見(HE 染色,100 倍) 図 10 心筋炎(剖検例組織像)(いずれも HE 染色,100 倍) A;急性(劇症型)心筋炎 B;慢性心筋炎 図 11 ARVC(剖検例組織像) A;HE 染色,40 倍 B;HE 染色,200 倍 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 29 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) が,心筋生検組織を用いた組織学的変性度の定量的解 析 248) ,剖検例を用いた線維化様式の分類の試み 249) ,あ ど様々な病因が考えられているが約 20 ~ 30%は家族性 である.家族性拡張型心筋症の研究により病因遺伝子が るいは電顕的微細構造の検索から予後等の臨床病理相関 判明してきている 252),253). に言及した報告 250)が為されている.拡張型心筋症は我 拡張型心筋症は不均一な疾患であり,表現型が同じで が国の心移植医療上,最も重要な対象疾患であり,平成 も異なる様々な遺伝子の異常が病因となる.また同一の 22 年の改正臓器移植法の施行に伴い我が国における移 遺伝子の異常で異なる表現型が異なることもあ 植医療も一層の展望が期待される状況にある.心移植後 る 252),253).拡張型心筋症には多数の病因遺伝子があるこ の経過観察には心筋生検による拒絶反応の評価が不可欠 とが判明しており,それぞれが比較的長い塩基配列を持 であるが,組織所見の判定法については既に刊行されて っているため,遺伝子診断ができる施設は現在のところ, いる日本移植学会,日本病理学会合同によるヒト移植臓 一部の研究的な施設に限られている.しかし遺伝子診断 器拒絶反応の病理組織診断基準が,いわゆる取扱い規約 がなされた症例では予後の予測ができることより管理に に相当するものであり参照されたい 251). 有用である.また遺伝子診断がなされた家系では,適切 7 な遺伝カウンセリングや発症前診断が可能となる.した 遺伝子検査 がって拡張型心筋症の遺伝子異常を明らかにしていくこ 拡張型心筋症は,左室または両心室の拡張と収縮の低 とは臨床的に重要であると考えられる. 下を特徴とする疾患であり,ウイルス感染,自己免疫な 拡張型心筋症の遺伝的な病因を表 11 に示す 254)-260). 表 11 拡張型心筋症の主な病因遺伝子 遺伝形式 名称 常染色体性優性 CMD1A CMD1B CMD1C CMD1D CMD1E CMD1F CMD1G CMD1H CMD1I CMD1J CMD1K CMD1L CMD1M CMD1N CMD1O CMD1P CMD1Q CMD1R CMD1S CMD1T CMD1U CMD1V CMD1W CMD1X CMD1Y CMD1Z 常染色体性劣性 CMD2A X 染色体性劣性 CMD3A CMD3B CMD3C 遺伝子座 1p1-q21 9q13 10q22-q23 1q32 3p 6q23 2q31 2q14-q22 2q35 6q23-q24 6q12-q16 5q33 11p15.1 17q12 12p12.1 6q22.1 7q22.3-q31.1 15q14 14q12 12q22 14q24.3 1q31-q42 10q22-q23 9q31 15q22.1 3p21.3-p14.3 19q13.4 Xq28 Xp21 Xp21.2 CMD: cardiomyopathy, dilated. 30 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 遺伝子 ラミン A/C ─ サイファー 心筋トロポニン T 心筋 Na チャンネル ─ タイチン ─ デスミン Eya4 ─ δサルコグリカン 筋 LIM 蛋白 テレトニン KATP チャンネル フォスフォランバン 心筋αアクチン β心筋ミオシン重鎖 ラミナ関連蛋白 2 プレセニリン 1 プレセニリン 2 メタビンキュリン フクチン αトロポミオシン 心筋トロポニン C 心筋トロポニン Ⅰ タファジン ジストロフィン ─ 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン る 常染色体性優性遺伝を呈する家族性拡張型心筋症の大家 系 の 連 鎖 解 析 な ど に よ り, 現 在 ま で に CMD (cardiomyopathy,dilated)1A か ら CMD1Z,CMD2A, CMD3A から 3C の遺伝子座が報告されており,ラミン A/C 遺伝子をはじめ様々な遺伝子異常で拡張型心筋症の 病態を呈することが明らかになっている.X 染色体性劣 ◦家族性であるが表現型から遺伝子型が予測できない場 合(エビデンスレベル 6) ◦孤発性でも表現型から遺伝子型が推測される場合(エ ビデンスレベル 6) 〈遺伝子検索による遺伝子異常確定の可能性は不確実〉 性遺伝を呈する拡張型心筋症においてはジストロフィン 遺伝子などが病因となる. まず dystrophin,lamin A/C,TnT 遺伝子の検索を行う. ジストロフィン,アクチン,デスミンなどの細胞骨格 比較的頻度の高い上記の 3 つの遺伝子でも遺伝子異常が 分子の遺伝子,ラミン A/C などの核膜蛋白の遺伝子,さ 確認できなかった場合,検索可能な環境の場合のみ,上 らにはサルコメア蛋白の遺伝子や心筋 Na チャンネルな 記の 3 つの遺伝子以外の疾患遺伝子の検索が勧められ どのチャンネルの遺伝子など様々な遺伝子変異が拡張型 る. 心筋症の病態の原因となる.肥大型心筋症の病因遺伝子 と重複するものも多く存在し,同一病因遺伝子のなかで グレード C2:科 学的根拠はなく,行わないよう勧めら も,その変異の部位により表現型が異なる. れる ◦孤発性で表現型から遺伝子型が推測できない症例(エ ビデンスレベル 6) 遺伝子検査の推奨グレード 〈遺伝子検索による遺伝子異常確定の可能性は非常に グレード A:強い科学的根拠があり,行うよう強く勧め 低い〉 られる ◦なし(エビデンスレベル 6) グレード D:無効性あるいは害を示す科学的根拠があり, グレード B:科学的根拠があり,行うよう勧められる ◦なし(エビデンスレベル 6) 行わないよう勧められる ◦家族性で表現型より遺伝子型が推測できる場合(エビ デンスレベル 6) 〈遺伝子検索による遺伝子異常確定の可能性が高い〉 家族性で X 染色体劣性遺伝形式の場合には Dystrophin Ⅲ 病態と治療 遺伝子の検索 家族性で常染色体優性で伝導障害を伴う場合には, Lamin A/C 遺伝子の検索 遺伝子異常が確認できなかったときには,検索可能な 環境の場合のみ,上記の 2 つの遺伝子以外の疾患遺伝子 の検索が勧められる. 1 急性非代償性心不全 1 重症度分類 ① Killip 分類 ◦発端者の遺伝子異常が判明している家系内の拡張型心 筋症の成人例(エビデンスレベル 6) 急性心筋梗塞直後の血行動態を身体所見により分類す ることにより,その重症度を表したものに Killip 分類 261) がある.表 12 に示すようにクラスⅠからⅣに分類され, グレード C1:科 学的根拠はないが,行うよう勧められ 再灌流療法導入以前のこととはいえ,死亡率はクラスⅠ 表 12 Killip 分類 クラスⅠ クラスⅡ クラスⅢ クラスⅣ ポンプ失調なし 軽度~中等度の心不全 重症心不全 心原性ショック 肺野にラ音なく,Ⅲ音を聴取しない 全肺野の 50%未満の範囲でラ音を聴取,あるいはⅢ音を聴取する 肺水腫,全肺野の 50%以上の範囲でラ音を聴取する 血圧 90mmHg 未満,尿量減少,チアノーゼ,冷たく湿った皮膚,意識障害を伴う 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 31 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) 6%,クラスⅡ 17%,クラスⅢ 38%,クラスⅣ 81%と 報告されており 261),予後と相関した重症度分類と考え ③ Nohria-Stevenson 分類 られる.今日では再灌流療法が一般的となり,急性心筋 Nohria-Stevenson らが 2003 年に提唱した理学的所見 梗塞直後の院内死亡率は東京都 CCU ネットワークの報 による急性心不全患者の分類 267)である.この考え方は 告では平均 6.4%であるが 262),来院時にクラスⅣであっ 前述の Forrester 分類と比較的似ており,縦軸に心拍出量 た患者の 24 時間以内の死亡は 40%,院内死亡率は 75% を取る代わりに低潅流所見の有無をとり,横軸に肺毛細 という報告もあり 263),いまだに心原性ショックを合併 管圧を取る代わりにうっ血所見の有無を取るものであ した急性心筋梗塞の救命は困難を伴うことが示唆され り,ほぼ同様の分類と考えられる(図 13).身体所見上 る.急性心不全一般にもこの Killip 分類を適用すること 重要なものを下記に列記する. は可能であるが,欧米では急性冠症候群後のデータがほ 1)‘Wet’(うっ血所見) とんどである.我が国でのデータで Killip Ⅲ~Ⅳの急性 起坐呼吸,頸静脈怒張,ラ音,肝頸静脈逆流,腹水, 冠症候群を除く急性心不全症例において院内死亡率が高 浮腫,Ⅱ音肺動脈成分の左方向への放散,バルサルバ操 いという報告がある 264). 作による矩形波反応. 2)‘Cold’(低灌流所見) ② Forrester 分類 Forrester 分類 脈圧狭小,交互脈,症候性低血圧(起立性を除く), 265),266) も急性心筋梗塞後の血行動態の分 四肢冷感,意識障害. 類であるが,これは右心カテーテルを挿入して血行動態 プロファイル B と C において死亡または緊急心移植をエ 測定を施行した際に有用である.図 12 のように肺うっ ンドポイントとしたハザード比が高いと報告されてい 血の有無(肺毛細管圧 18 mmHg 以上か以下か),心拍出 る 267). 量のレベル(心係数が 2.2 L/min/m 以上か以下か)でⅠ 2 ~Ⅳ群に分類される.急性心筋梗塞後の院内死亡率は再 ④クリニカルシナリオ 灌流療法導入以前ではⅠ群 2.2 %,Ⅱ群 10.1 %,Ⅲ群 最近提唱されてきたさらに簡便な急性心不全患者の病 22.4%,Ⅳ群 55.5%と報告されており 265),266),重症度と 態分類にクリニカルシナリオ(CS)という考え方 268)が 予後との相関がやはり示されているが,今日では Killip ある.これは基本的には来院時の血圧で病態を分類しよ 分類の項で述べたように予後そのものの数字は改善され うというものである.CS1 ~ 5 に分類されるがこのうち ている.再灌流療法を積極的に施行している現在でも CS4 は急性冠症候群であり,CS5 は右心不全なので,一 Killip 分類クラスⅣに類似する Forrester 分類Ⅳ群での死 般的な急性左心不全の分類は CS1 ~ 3 となる.このうち, 亡率はなお高いと考えられるが,明確なデータはない. CS1 は収縮期血圧 140 mmHg 以上で来院するもので一般 急性冠症候群以外の急性心不全においても Forrester 分 には著明な肺うっ血を伴うが,末梢の浮腫は少ない.基 類を適応することは可能であるが,急性心不全における 礎疾患としては虚血や高血圧性が多く,いわゆる「電撃 予後と Forrester 分類との相関を示したデータはない.な 的肺水腫」と呼ばれる超急性の経過をたどるものが多い. お,各群において推奨される治療法が古くから併記され 治療としては酸素化と血管拡張薬がメインであり,比較 ており,図 12 に挙げておく. 的予後はよいと考えられる.Vascular failure とも呼ばれ, 血 管 内 volume の central shift が 主 た る 病 態 で あ り, 図 12 Forrester 分類 心係数 (L/min/ ㎡) 2.2 Ⅰ群 安静 一般療法 Ⅱ群 利尿薬 硝酸薬 心房性利尿ペプチド なし Profile A Profile B Dry & Warm Wet & Warm 低潅流所見 Ⅲ群 Ⅳ群 輸液 カテコラミン ホスホジエステラーゼ阻害薬 機械的補助 18 32 図 13 Nohria-Stevenson 分類 肺毛細管圧 (mm Hg) 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 あり Profile L Profile C Dry & Cold Wet & Cold なし あり うっ血所見 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン afterload を軽減すればある程度のコントロールが可能な し心不全症例では既にフロセミド等の利尿剤内服例,ま 病 態 で あ る.CS2 は 来 院 時 収 縮 期 血 圧 が 100 ~ 140 た腎機能障害合併例が少なくなく,治療には通常より高 mmHg の間の患者であり,比較的亜急性に徐々に浮腫や 用量を必要とすることがある 271).1 回静注投与で満足な 肺うっ血を生じ,全身的に体液貯留が進行した状態であ 利尿効果が得られない場合には,むしろ持続静注のほう る.酸素化や血管拡張薬も有効であるが,多くの場合利 が有効である場合がある 272). 尿薬が必要である.この病態の基礎疾患にはほとんどす ◦トラセミド べての慢性心不全を来たすものが含まれるが,心筋症の 慢性心不全を対象とした臨床試験でフロセミド群に比 慢性期急性増悪はこのパターンを取ることも多い.日常 べ,ループ利尿薬な利尿効果に加え抗アルドステロン効 のコンプライアンスの改善なども重要な要素になる. 果を有するトラセミドは心臓死や心不全再入院率などが CS3 は来院時収縮期血圧が 100 mmHg 以下の心不全であ 少なく,長期予後良好との報告があり 273),急性心不全 り,多くの場合低潅流所見を伴う.ショック状態の患者 から慢性期管理に移行する場合の利尿薬選択の際に有用 もこの中に含まれ,CS1 ~ 3 の中ではもっとも予後が悪 である 274).ただし抗アルドステロン薬の使用時と同様 いと推定される.Forrester Ⅲ群や Dry & Cold であれば 腎機能障害, 高カリウム血症時は慎重な使用が望まれる. 輸液も治療のオプションになり得るが,うっ血を伴う場 2)抗アルドステロン薬 合には(すなわち Forrester Ⅳ群や Wet & Cold)強心薬 心不全の増悪因子として交感神経系や RAA 系の亢進 が必要となる.多くの末期重症心不全の増悪期はこの病 など神経体液性因子の関与が明らかになっており,抗ア 態であり,強心薬に反応しない場合には機械的補助や心 ルドステロン薬は心不全の予後改善をもたらすことが期 臓移植などその患者の背景に応じてオプションを考慮す 待される.ただし重要な副作用として高カリウム血症, る必要がある. 利尿剤と血管拡張剤(モルヒネ) 2 ①利尿剤 腎機能の悪化が指摘されており,血清カリウムが 5.0 mEq/L を超えている例では使用せず 275),276),腎機能障害 例や高齢者では減量投与などが望まれる. ◦スピロノラクトン 1999 年慢性心不全 NYHA Ⅳ(Ⅳを経緯したⅢ)を対 急性心不全の治療における利尿剤は,早期に前負荷軽 象とした大規模臨床試験(RALES 試験)で,スピロノ 減し,体液貯留過多を改善する.高血圧性緊急症や,弁 ラクトンが全死亡率,心不全死亡率,突然死のいずれを 膜症における著明な体液貯留を来たさない肺うっ血の場 も減少させる長期予後改善効果が示された 276).本剤が 合においても,症状や酸素化改善に寄与する.また慢性 ナトリウム貯留や心筋線維化を抑制したことで心不全の 期に際しても浮腫,胸水管理を改善させる. 増悪を抑止し,心筋でのノルエピネフリンの取り込みの 1)ループ利尿薬 抑制,また血中カリウムの保持が突然死の減少をもたら 肺うっ血や浮腫などの心不全症状を軽減させ,前負荷 したことで総死亡の抑制効果を示したものと考えられ 軽減,左室拡張末期圧を低下,特に静注薬の効果は即効 る 277).以後,現在まで心不全の慢性期標準治療薬とし 性がある.なおループ利尿薬にサイアザイドを少量加味 て使用されている(レベル 2,グレード A). すると利尿がより増幅されるが,過度の利尿によってカ ◦エプレレノン リウム,マグネシウムなどの電解質異常に伴う不整脈や スピロノラクトンよりも選択的な抗アルドステロン薬 ジギタリス中毒,また血液 BUN や血清クレアチニン値 としてのエプレレノンは,急性心筋梗塞後に左心機能不 上昇,さらには脱水,低血圧や脳血栓症の誘因となり得 全および心不全を合併した患者で死亡および心血管イベ 269) ので副作用に留意することが大切である.急性期 ントの発生リスクが抑制されることが報告され を改善できたら早朝時排尿後体重,胸部単純 X 線や血漿 278) (EPHESUS 試験) ,さらに 2010 年には軽症心不全患 BNP 値,さらに心エコーや各種電解質を参照し,経口 者(NYHA Ⅱ)に用いることのベネフィットを明らか 剤へ切り替えて慢性期も体液管理 ・ 維持に努める. にした大規模臨床試験が発表された(EMPHASIS-HF 試 ◦フロセミド 験)279) (レベル 2,グレード B).今後エプレレノンの急 2009 年に改訂された ACC/AHA 心不全診療ガイドラ 性心不全への導入が期待される. る イン 270) においても,症候性左室収縮不全に対し標準的 3)バゾプレシン受容体拮抗薬(AVP 拮抗薬) 治療として提示されており,通常まず 5 ~ 10 mg 単回静 アルギニンバゾプレシン(AVP)分泌亢進は腎臓集合 脈内投与を試み,利尿効果をみて用量を調節する.ただ 管における水の再吸収を亢進し,口渇感を亢進するため 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 33 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) 著明な低ナトリウム血症の原因となる.低ナトリウム血 また,比較的高用量の静注投与に伴って早期(24 時間) 症は予後規定因子の 1 つで,これを抑制するバソプレッ から耐性が発現といわれており,予防としては間歇投与 シン拮抗薬は難治性心不全治療薬として期待される.バ や投与量を減じる,また SH 基を補充する(グルタチオ ソプレッシン V1 受容体は血管平滑筋,血小板などに存 ンなど)ことなどが挙げられる. 在し,AVP はこれを介し血管収縮,心肥大を引き起こす. バソプレッシン V2 受容体は腎臓集合管に存在し,水の 再吸収をもたらす.V2 拮抗薬は,腎集合尿細管細胞の ANP,BNP はナトリウム利尿に加え動静脈拡張,さ V2 受容体に対する AVP 結合を特異的に阻害し,AVP の らに ACE 阻害薬や ARB,または抗アルドステロン薬と 水透過性亢進作用に拮抗する.溶質クリアランスの増加 似て RAA 系抑制し心筋肥大抑制,心筋線維化抑制作用, により利尿を引き起こすループ利尿薬とは作用基序が異 また交感神経亢進抑制作用など 283),多彩な薬理作用が なり,純粋な自由水クリアランスの増加による.V1/V2 ある.拡張型心筋症における心不全の増悪因子として 拮抗薬(コニバプタンなど,未認可)や V2 拮抗薬(ト RAA 系や交感神経系の亢進など神経体液性因子の関与 ルバプタンなど,同)の浮腫を伴う心不全症例を対象と が明らかになっており,ナトリウム利尿ペプチドは急性 した臨床試験(EVEREST)が行われたが 280),281),体重 心不全における臓器保護の概念をもたらす薬剤として注 改善や浮腫以外に明らかな予後改善のエビデンスは未だ 目される. 得られておらず,今後の有用性に対するさらなる検討が カルペリチド(遺伝子組み換え hANP)は,1993 年に 待たれる(レベル 2,グレード C1). 我が国で開発されたナトリウム利尿ペプチドファミリー ②硝酸薬 34 ③カルペリチド の 1 つで,1995 年より我が国で急性心不全治療薬として 臨床使用されている 284).カルペリチドは前・後両負荷 硝酸薬は NO を介して,血管平滑筋細胞内のグアニル 軽減に有効であり,血管拡張作用と利尿作用の両者を併 酸シクラーゼを刺激し,低用量では静脈系容量血管を, せ持つため,特に肺うっ血を伴う血行動態に対して有効 高用量では動脈系抵抗血管も拡張する.これにより前負 である.難治性心不全に対しては強心薬と併用される場 荷軽減(肺毛細管圧低下)さらに後負荷軽減(末梢血管 合もある(レベル 3,グレード B).肺毛細管圧を低下し 抵抗低下に伴う心拍出量の軽度上昇)が得られる.また, 心拍出量を増加するが他の血管拡張薬や強心薬と異なり 冠動脈拡張作用があることから虚血性心疾患を基礎疾患 心拍数は増加しない 285),286)のは,交感神経抑制作用と考 とする,または虚血性心疾患を合併した急性心不全に汎 えられ心不全での有用性は高い.副作用として起こり得 用される(レベル 3,グレード B). る投与時血圧低下のため,特に収縮期血圧が 120 mmHg ニトログリセリンまたは硝酸イソソルビドのスプレー 以下の場合は低用量(0.0125 ~ 0.025μg/kg/min)より は初期治療法として迅速・簡便に使用でき,肺うっ血, 持続静脈内投与し,循環動態をモニターしながら投与量 特に著明な高血圧を伴う急性肺水腫の軽減(血圧低下が を増減することが望ましい.心筋症や高血圧性心疾患で ない場合)に有効である.さらなる前負荷軽減には硝酸 有効性が高いが重篤な低血圧,心原性ショック,急性右 薬の静脈内投与,また利尿剤との併用も有効である. 室梗塞症例,脱水症では禁忌である. ただし副作用として血圧低下と肺内シャント増加に由来 カルペリチドと類似作用を有する BNP(Nesiritide, する動脈血酸素飽和度の低下が挙げられる.このため使 我が国未承認)の効果と安全性をニトログリセリンと比 用時には循環動態のモニタリングが重要である.特に過 較した米国の臨床試験(VMAC)成績が 2002 年発表さ 剰な血圧低下をもたらすため,シルデナフィルなど れ,ネシリチドは速やかに,かつより肺毛細管圧を低下 PDE-5 阻害剤との併用は禁忌である 270).硝酸イソソル させることが示された 287).さらにドブタミン投与に比 ビドは高用量でニトログリセリン同様の効果が得られる 較して短期予後は良好で催不整脈性が少ないとする報告 が,半減期が長く(4 時間,ニトログリセリンは約 5 分) もなされるが 288),289),最近の ASCEND-HF などの大規模 低血圧発症時には注意が必要である. 臨床研究ではその非劣性が証明される程度である.腎保 循環器救急の場で重症肺水腫症例を対象に実施された 護については動物実験での BNP 過剰発現で糸球体の肥 高用量硝酸薬静注反復投与+低用量フロセミド投与の併 大などの改善に寄与する 290).一方,ヒト非代償性慢性 用と高用量フロセミド投与+低用量硝酸薬持続静注の併 心不全を対象とした試験でネシリチド投与は GFR およ 用の比較試験では,前者が,人工呼吸管理導入の頻度が び尿量を増加させず 291),むしろ腎機能悪化に到ったと 低く AMI 発症の頻度も低いことが報告されている 282). の報告も示されており 292),293),今後カルペリチドはネシ 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン リチドとの違いも踏まえ,適切な基礎疾患および投与量 ル 3,グレード B).心不全治療としての至適投与量は や投与期間の選択,またどの程度心腎保護作用を有する 1.0μg/kg/ 分であり,病態に応じて 0.5 ~ 2.0μg/kg/ 分の のかといったエビデンスを構築する必要がある. 範囲で調節と報告されているが 307),308),半減期が長いた め急速投与は行いにくい.副作用として血圧低下,肺内 ④ニトロプルシドとニカルジピン シャント増加に由来する動脈血酸素飽和度の低下が挙げ ニトロプルシドは動脈静脈拡張作用から肺動脈楔入圧 の低下,心拍出量の増加をもたらし,他の硝酸薬と比較 し動脈系抵抗血管拡張作用が大きい 294)-296).一酸化窒 素ラジカルを介して血管平滑筋細胞内 cGMP レベルを上 昇させ,血管平滑筋を弛緩させ血圧低下をもたらす 297) . られる. ⑤ ニコランジル ニコランジルは 1984 年より狭心症治療薬(経口薬) として,1993 年より不安定狭心症治療薬(注射薬)と .2009 して臨床使用されている.また 2007 年 10 月には注射薬 年 ACC/AHA ガイドライン(クラスⅡ a,レベル C)270) において急性心不全に対する追加効能を取得した.本剤 また心筋酸素消費量を低下させる作用を持つ 298) において,症状を伴う低血圧がない場合には速やかに心 は構造中に硝酸基を有し,硝酸薬様作用と ATP 感受性 K 不全症状を緩和するため利尿薬に加え,血管拡張薬の静 チャネル開口作用を併せ持つ.NO を介し cGMP 産生亢 注が提示され,2008 年 ESC ガイドライン(クラスⅠ, 進による静脈拡張作用,冠動脈拡張作用,KATP チャネ レベル B) においても,収縮期血圧> 90mmHg の急性 ル開口による血管平滑筋弛緩作用から動脈拡張作用,さ 心不全の初期治療として推奨されている.ニトロプルシ らに冠抵抗血管等の細動脈拡張効果による血流の増加, ドは 30 ~ 40 秒で効果発現がみられ,1 ~ 4 分で最大効果 心内膜下の微小循環の改善 309),310),薬理学的なプレコン となり,作用時間も最大で 10 分と短い.即効性,短時 ディショニングによる心筋保護効果 311)をもたらす.直 間作用性と強力な降圧効果が特徴である.初期投与量は 接的な心臓に対する変力・変時・変伝導作用はないが, 5 ~ 10μg/ 分,5 ~ 15 分ごとに 5 ~ 400μg/ 分まで増量可 動静脈をバランスよく拡張させることにより前負荷軽減 能であり,投与期間中の持続的血圧のモニタリングおよ 効果および後負荷軽減効果を発現する. び副作用回避のため,24 時間から 48 時間までの使用が 急性心不全におけるニコランジルの臨床研究での有用 望ましい. 性の検討はまだ殆どなく,心筋症のみを対象とした臨床 硝酸薬共通の副作用として血圧低下,反射性頻脈,肺 試験の報告はない.急性心不全患者に対し,0.2 mg/kg/5 内シャント増加があり,ニトロプルシドは血中で還元物 分かけて静脈内投与後 0.2mg/kg/Hr 持続投与によるニコ 質により代謝されシアンを遊離するため,特有の副作用 ランジルの効果をプラセボと比較した多施設無作為プラ としてシアン中毒が挙げられる 300),301).シアン中毒は時 セボ対照二重盲検比較試験の結果では,心拍数,収縮期 に致死的であり,乳酸アシドーシス,意識障害を生じ, 血圧は変えることなく,肺動脈楔入圧・全末梢血管抵抗・ 299) 特に 48 時間以上の投与,腎機能障害が併存する場合に 肺血管抵抗の有意な低下と心拍出量の有意な上昇,心不 は注意が必要である.また虚血が存在すると,冠盗血現 全症状の改善,Forrester 分類の subset Ⅱ,ⅣからⅠへの 象により虚血部位の拡大を起こす可能性があるため使用 移行を認めた 312).また対象例は少ないものの,実臨床 は避けるべきであり 302) ,ホスホジエステラーゼⅤ阻害 においてもこの効果は容量反応性にみられ,血圧に関し 作用の薬剤投与中では禁忌である.適応としては,特に ては低値の場合には,それほど低下せず,血圧が高い場 高血圧症,急性大動脈弁逆流症,急性僧帽弁閉鎖不全症 合には十分な降圧作用を示すことが報告されてい による急性心不全ではニトロプルシドによる後負荷軽減 る 313)-316).推奨用量としては,治験にて 0.2 mg/kg/5 分 作用が有効であり 303),最近では低心拍出性の急性心不 かけて静脈内投与後 0.2mg/kg/Hr 持続投与と示されてい 全に対しても長期予後を改善したと報告されている 304) (レベル 3,グレード B). るが,心疾患併用薬剤は中止した上での推奨投与量であ り,実臨床において併用薬を継続した場合の持続継続量 ニカルジピンは,血管平滑筋細胞への Ca イオンの取 は低量での 0.05 ~ 0.2 mg/kg/Hr での使用が好ましいと考 り込みを抑制することにより血管拡張作用を示し,心筋 えられる 316),317). より血管平滑筋への選択性が高いため心筋抑制作用が極 硝酸薬との相違点は,ニコランジルでは血圧低下作用 めて少ないことを特徴としている 305) .心不全症状の改 が 弱 く, 心 拍 数 へ の 影 響 や 薬 剤 耐 性 が 認 め ら れ な 善,右房圧・肺動脈楔入圧の低下,動脈拡張作用により い 318)-320).したがって過度の血圧低下をもたらす危険 後負荷を軽減し心拍出量増加の作用を持つ 306),307) (レベ 性が少ないため初期負荷投与および長期持続投与も可能 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 35 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) である.現在のところニコランジルは急性心不全に有効 モルヒネ使用により 30 ~ 40%の患者で,吐気・嘔吐 と考えられ(レベル 3,グレード B),虚血性心不全,心 が出現する.これにより,交感神経系が緊張しカテコラ 内膜下虚血を誘発するような warm and wet 症例の急性 ミン産生が増加する可能性があり,制吐剤の使用も考慮 心不全症例には有効であると推測される.これに対し, する. 心原性ショック,急性右室梗塞症例,脱水症,ホスホジ エステラーゼⅤ阻害作用の薬剤投与中では禁忌であり, 低血圧症例では慎重に投与する. 心ポンプ機能は,心拍数,前負荷,後負荷および心筋 ニコランジルでは副作用として血圧低下と頭痛が挙げ の収縮性より規定される.これらの因子を客観的に把握 られる.しかし,副作用発現頻度と累積投与量との関連 することが,心不全の病態を把握し,治療を進めていく 性は認められず,薬物血漿中濃度は個体間差が大きいこ ことにおいて重要である. とが示されている 321),322) Frank-Staring 曲線(図 14)で表されるように,心拍 . 出量は左室拡張末期容量に依存する.左室拡張末期容量 ⑥モルヒネ または左室拡張末期圧は前負荷の指標となり,静脈灌流 モルヒネの心不全での使用は,肺水腫による呼吸困難 (循環血液量,心房収縮など)によって規定される.左 が強い場合,不安が強い場合,安静が保てない場合に用 室拡張末期圧は,Swan-Ganz カテーテルで得られた肺動 いる.中枢神経系では,呼吸中枢における呼吸困難の感 脈楔入圧から推測することが可能であり,心エコーでも 受性低下と抗不安作用を示し,呼吸困難を緩和させる. 三尖弁逆流血流速,肺動脈弁逆流血流速,左室流入血流 この抗不安作用により,交感神経系の緊張を緩和し,カ 速波,肺静脈血流速波形などから推測できる.心収縮力 テコラミン産生を抑制することで後負荷を軽減する.心 が低下している場合,前負荷増大に対する心拍出量の増 臓においては心筋抑制作用を示さず,比較的安全に使用 加は少なく,また前負荷がある一定レベルを超えると, できる.モルヒネはヒスタミン遊離作用を持ち,ヒスタ 心筋の収縮性が低下し心拍出量は減少する. ミンが H1 受容体に結合すると NO が放出される.これ 後負荷は,左室壁応力,左室収縮期圧,心室容積,動 により,末梢の動脈・静脈系の血管拡張を来たし,前負 脈の弾性で規定され,臨床的には体血圧,末梢血管抵抗 荷と後負荷が軽減するといわれているが,Swan-Ganz カ で表現される.後負荷が増大すると,左室の収縮性が低 テーテルや超音波などの検査でこれを直接立証したデー 325) 下し心拍出量が減少する(図 15) . タはない. 利尿剤の投与は,前負荷の軽減に即効性があり効果的 予後に関する多施設後ろ向き研究 323) では,モルヒネ である.カルペリチドは利尿作用と血管拡張作用を持ち, 投与群では有意に人工呼吸の導入と入院・死亡率が増加 前負荷・後負荷をともに軽減する.硝酸薬は,血管拡張 し,モルヒネは独立した予後規定因子であることがいわ 作用により前負荷・後負荷をともに軽減し,肺うっ血に れている(レベル 4b,グレード C2).心不全での使用に 効果を示す.ニカルジピンは高血圧を伴う心不全に効果 ついてはエビデンスがなく,ESC 2008 年のガイドライ があり,血管拡張作用により後負荷を軽減する.PDE ンでは注意して使用するよう記載されており 324) ,また ACC/AHA 2009 年のガイドラインには記載されていな い 36 ⑦前負荷と後負荷の管理 270) . Ⅲ阻害薬は,強心作用と血管拡張作用を併せ持ち,前負 荷と後負荷を軽減させ,心不全を改善させる. これらに加え,前負荷・後負荷の管理には,症状や身 使用方法は,5 ~ 10 mg/A を点滴するか,10 倍に希釈 体所見の評価も合わせて,心不全の治療方針を立てるこ して 2 ~ 5 mg をゆっくり静脈内に投与する.これを, とが重要である 325).肺うっ血(+)・末梢低灌流(-) 必要に応じて 15 分ごとに投与を繰り返す. の症例では前負荷の軽減が治療の主体であり,利尿剤と 注意点としては,呼吸機能の抑制のために,アシドー 硝酸剤が有効である.肺うっ血(-)・組織低灌流(+) シスに陥っている患者では pH の急激な低下をもたらす の症例では,輸液にて前負荷を増加させ心拍出量を増や ことがある.また,高炭酸ガス血症が存在し,CO2 感受 し,血管拡張薬の併用により後負荷を軽減させる.肺う 性の低下した慢性閉塞性肺疾患の患者では,呼吸抑制に っ血(+)・組織低灌流(+)の症例では,カテコラミ より CO2 ナルコーシスを発生させるので,十分に呼吸状 ン製剤を使用し,心収縮力を増加させ末梢循環の改善を 態をモニターする必要がある.モルヒネはヒスタミンを 図るとともに,適宜,利尿薬や血管拡張薬を使用する. 遊離させるため,喘息患者での使用は控える.血管拡張 また,PDE Ⅲ阻害薬は,カテコラミンと異なる強心作 による過度の血圧低下にも注意する. 用を持ち,ドブタミンの反応が不十分な症例やβ遮断薬 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン 図 14 Frank-Starling の心機能曲線 図 15 後負荷と心拍出量の関係 正常 心不全非代償期 心拍出量︵1回拍出量︶ 心拍出量︵1回拍出量︶ 心不全代償期 正常 心不全代償期 心不全非代償期 左室拡張末期圧(拡張末期容量) 後負荷 内服例に有効である.治療抵抗性の場合は,大動脈内バ 止を心がけるのが望ましい. ルーンパンピング,経皮的人工心肺,左心補助循環,人 静注強心薬,昇圧薬の作用は細胞内 cAMP 濃度の上昇 工心臓などを考慮する. 3 によって発揮され,その主な薬理学的機序は,cAMP の 産生増加と分解抑制の 2 つである.ドブタミン,ドパミ 静注強心薬と昇圧薬 ン,ノルエピネフリン,エピネフリンなどは,主として 静注強心薬は,収縮力低下により血圧低下や末梢循環 β 1 受容体を介し cAMP の産生を増すことで強心作用を 不全,低心拍出症候群を来たし,かつ前負荷(Cardiac 発揮する.一方で PDE Ⅲ阻害薬は cAMP の分解を抑制 filling pressure)が増した状態にある急性心不全に対し し強心作用と血管拡張作用を示す.本稿ではこれらの薬 て有効である.拡張型心筋症では高度な収縮力低下が見 剤に加え,血管収縮作用ならびに抗利尿作用から前負荷・ られ,慢性心不全の急性増悪時には静注強心薬の使用が 後負荷を増加させるバソプレッシンについて記述する. 血行動態の改善に不可欠なことが多い.2009 年に改訂 された AHA のガイドラインでは,頸静脈怒張や肺動脈 楔入圧上昇などの所見を伴う低潅流,低血圧に対しては, 静注強心薬の使用が推奨されている 270) .臨床的には, Forrester 分類の Profile Ⅲ・Ⅳ,もしくは Nohria 分類の ①ドブタミン ドブタミンはカテコラミン受容体に対するアゴニスト で,β 1,β 2,α1 受容体に作用するが,主たる効果は β 1 刺激による.心臓での作用は主にβ 1 刺激によるも Profile L(dry-cold)・C(wet-cold)が投与の主たる対 ので,細胞内 cAMP 産生を増加させ,PKA のリン酸化 象となる.静注強心薬の拡張型心筋症における急性心不 を介した心収縮期の細胞内 Ca 濃度の上昇により心収縮 全への有用性は直接示されてはいないが,一般に左室拡 力を増大させる.また末梢血管においてはβ 2 刺激によ 大および左室駆出率低下のある心不全患者の末梢循環不 り末梢血管を拡張させ,体血管・肺血管抵抗の減少を介 全や臓器低潅流に対しては静注強心薬の使用が推奨され し血行動態の改善に寄与する 328),329).したがって,心拍 ている 326).しかしながら静注強心薬の投与はなるべく 出量が減少し,かつ前負荷の低下がない急性心不全がよ 短期間とすべきであると考えられており,持続的な強心 い適応となる(グレード B,レベル 3).ドブタミンは, 薬の投与には注意が必要である.ADHERE レジストリ ドパミンやノルエピネフリンに比べて心筋酸素消費量の の後ろ向き解析では,急性心不全の治療としてニトログ 増加が少なく心拍数の増加も緩やかで,不整脈や心筋虚 リセリンもしくは BNP を用いた群に比べ,ドブタミン 血などを招きにくいと考えられている. もしくはミルリノンを用いた群では入院中の死亡率が有 しかし一方でドブタミン単独で血圧が維持できない場 327) .急性心不全に対する静 合は,ドパミンやノルエピネフリンの併用が必要となる 注強心薬の投与にあたっては血圧や心拍数,心エコー所 ことが多い(グレード B,レベル 4b).また既にβ遮断 見などから血行動態をモニタリングし,適切な漸減・中 薬が投与されている場合や,長期カテコラミン使用によ 意に高いと報告されている 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 37 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) りβ受容体のダウンレギュレーションがある場合では投 る 333),334).またカテコラミンと比較すると肺動脈楔入圧 与量が多くなる傾向があり,機序の異なる PDE Ⅲ阻害 の低下が得られやすいとされる 335).血行動態の改善効 薬の併用を考慮する 330) .ドブタミンの効果は用量依存 性が生じにくいことも特徴である.他の静注強心薬同様, タリング下に漸増する.急性期の血行動態改善には有効 心収縮能低下から心拍出量が減少し,かつ前負荷の増し な こ と が 多 い が, 持 続 投 与 に は 注 意 が 必 要 で あ る. ている急性心不全が適応となる(グレード B,レベル FIRST 試験のサブ解析ではドブタミン持続投与群での心 4b)我が国では現在ミルリノン,オルプリノンが心不 事故発生率増加,6 か月死亡率の上昇がしめされてお 全治療に対し承認されている.投与に際しては 50μg/kg り 331),急性心不全に対するルーチンでの使用や漫然と を 10 分以上かけて静注したのち,血圧や不整脈の有無 した長期投与は避けるべきと考えられる.血行動態の評 に注意しながら維持量として 0.25 ~ 0.75μg/kg/min を投 価から離脱可能と判断されれば漸減の上で投与中止する 与する. ようにする. 拡張型心筋症では慢性期からのβ遮断薬投与が推奨さ ②ドパミン ドパミンはノルエピネフリンの前駆物質であり,同時 れており,心不全の急性増悪期においてもβ受容体がブ ロックされていることが多い.β遮断薬の経口投与は続 行することが原則であることから,β受容体を介さずに に心臓交感神経終末からのノルエピネフリン分泌を亢進 cAMP を増加させる PDE Ⅲ阻害薬は,ドブタミンに比 することで強心作用を示す.ドパミンは用量に応じて異 べて速やかな血行動態の改善に有効なことがある 336). なる薬理学的特性を示す.2μg/kg/min 以下の低用量で しかしながら PDE Ⅲ阻害薬による血行動態改善は, は,ドパミン受容体(D1 受容体)に作用して腎動脈や かならずしも予後を改善するとは限らないとした報告も 腸間膜動脈の拡張を招き,特に腎血流増加作用を持つた ある.左室駆出率の平均が 23%の 949 人の慢性心不全急 め臓器低潅流時に糸球体濾過量を確保する目的で使われ 性増悪患者を対象にした OPTIME-CHF 試験では,急性 る.3 ~ 10μg/kg/min の中用量からはβ 1 刺激作用が発 期に 48 ~ 72 時間ミルリノンもしくはプラセボが投与さ 現し,心拍出量と心拍数を増加させる.また用量が上が れたが,入院中もしくは入院 60 日後の予後に有意差は るにつれてα1 受容体刺激作用も現れ,末梢の動静脈を 見られず,逆に低血圧や心房性不整脈の発症が有意に多 収縮させ血圧上昇を来たす(グレード B,レベル 4b). かった 337).その後のサブ解析においては,冠動脈疾患 拡張型心筋症の心不全急性期のみを対象とした研究はな を有する患者群においてプライマリーエンドポイント いが,左室駆出率が 24 ± 2%の高度な収縮能低下を伴う (入院期間)および複合エンドポイント(再入院および NYHA Ⅲ,Ⅳ群の心不全患者 13 人(うち拡張型心筋症 死亡)のおいてミルリノン投与による有意な悪化を認め は 8 人)を対象にした研究では,ドパミンは少なくとも たが,冠動脈疾患のない患者群でも有意な改善を認めな 10μg/kg/min までは腎動脈拡張作用および心拍出量増加 かった 338).したがって急性心不全に対して漫然と投与 作用を示した 332).ドパミンはドブタミンと比べて心筋 することは避けるべきであり,適応の選択と適切な中止 酸素消費量の増加と頻拍を招きやすく,不整脈や心筋虚 時期の判断を心がけるべきである. 血を来たしやすいため注意を要する.投与時には血圧モ ニタリング下に漸増,漸減する. ③ PDE Ⅲ阻害薬 PDE 阻害薬はホスホジエステラーゼを選択的に阻害 38 果は概ね用量依存的と考えられており,硝酸薬よりも耐 的で,投与は 2.5 ~ 3μg/kg/min から開始し,血圧のモニ ④ノルアドレナリンとアドレナリン ノルアドレナリンは交感神経終末から分泌される内因 性カテコラミンで,β 1 およびα刺激作用と,弱いβ 2 刺激作用を持つ.その作用は主に末梢におけるα刺激作 する.心筋にはホスホジエステラーゼは少なくとも 4 種 用(血管収縮)と心臓におけるβ 1 刺激作用(心収縮力 類存在し,中でもホスホジエステラーゼⅢは選択的に 増強)であるが,臨床的には強い末梢血管収縮作用を期 cAMP の分解を抑制する.このため,PDE Ⅲ阻害薬は細 待して用いる.通常,心不全急性期には末梢血管抵抗は 胞内 cAMP 濃度を選択的に上昇させ,心臓では収縮力の 上昇しているため,ノルアドレナリンを第一選択として 増加を,末梢では血管拡張をもたらす.その特徴から 用いることはない.ドブタミンやドパミン,PDE Ⅲ阻 inodilator とも呼ばれる.末梢血管抵抗を減らしつつ心 害薬など,その他の静注強心薬を使用してもなお血圧維 収縮力を増すため,一回拍出量の増加が見込まれ,これ 持が困難な場合や,敗血症を伴う心不全で末梢血管抵抗 に比して心筋酸素消費量が上がりにくい利点があ の維持が不可欠な場合にのみ用いられる.ノルアドレナ 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン リン使用時には,収縮力の低下した心臓に対してさらに 高い末梢血管抵抗を負荷することとなり,腎血流も減少 するため,使用開始後に血行動態が改善されない場合に は補助循環装置への移行も考慮すべきである. 4 呼吸管理とその他 ①酸素投与 アドレナリンも内因性カテコラミンであるが,β 1 刺 急性非代償性心不全の症候のうち,急性肺水腫は最も 激作用とβ 2 刺激作用を同程度にもち,α1 刺激作用も 典型的かつ重症な病態の 1 つである.その発症には,肺 有す.0.01μg/kg/min 以下の低用量時は血管拡張作用を 毛細管圧,血漿膠質浸透圧,肺間質静水圧,肺間質膠質 示 す が,0.2μg/kg/min 以 上 の 投 与 で は 血 管 収 縮 作 用, 浸透圧,肺毛細管血管透過性,肺胞内圧,肺胞表面張力, 心収縮力増加,心拍数増加を来たす.ノルアドレナリン リンパドレナージ等の因子が関連する. 同様,急性心不全治療の第一選択薬にはなり得ず,強い 正常状態では,肺間質静水圧は陰圧なので,血漿膠質 陽性変力作用,陽性変時作用を急速に得なければならな 浸透圧と肺胞内圧,肺胞表面活性物質のみが血漿成分を い心肺蘇生時などに用いられる. 血管内に保持するように作用しているが,急性非代償性 ⑤ バゾプレッシン 心不全では肺毛細管圧が上昇し,高度の肺うっ血,ある いは肺水腫を来たす.血漿蛋白濃度が正常な場合には肺 バゾプレッシンは視床下部で産生され下垂体後葉から 毛細管圧が 24 mmHg 以上になると肺胞への血漿成分漏 分泌される内因性ホルモンである.血行動態への作用と 出が出現し,以後,圧上昇とともに直線的に肺水腫は増 しては,血管の V1a 受容体を介した血管収縮作用と,腎 悪する.しかし,血漿蛋白濃度が正常の半分まで低下す 臓の V2 受容体を介した水再吸収増加作用があり,後負 ると,肺毛細管圧 11 mmHg のレベルから肺水腫が発症 荷,前負荷をともに増加させる.我が国では合成バゾプ する 342).肺水腫では,直面する呼吸不全と低酸素血症, レシッンが,下垂体性尿崩症,腸内ガスの除去,食道静 末梢組織への酸素運搬を改善することが急務となる. 脈瘤出血の緊急処置に対して適応を認められている. 酸素療法としては,まず鼻カニューレ,フェースマス 近年ではその強い血管拡張作用,抗利尿作用から,特 クなどで 2 ~ 6 L/min の酸素吸入を開始する.PaO2 80 に敗血症などの血管拡張性の血圧低下に対し有用との報 mmHg(SpO2 95%)未満,または PaCO2 50 mmHg 以上 告が多い.心血管手術後もしくは全身性炎症症候群 の場合,あるいは頻呼吸,努力性呼吸,起座呼吸などの (Systemic Inflammatory Response Syndrome,SIRS) に 臨床症状の改善が見られない,もしくは悪化する場合に より 0.5 μg/kg/min 以上のノルエピネフリンを要する血 管拡張性ショックを呈した 48 症例を対象としたランダ ム化研究では,アルギニンバソプレッシンの併用により 有意に血行動態の改善が得られると報告されている 339). は,速やかにさらなる治療に移行する 343). ② NIPPV(noninvasive positive pressure ventilation)と気管内挿管 また血管拡張性ショックの患者 50 例を対象にしたラン 酸素投与によっても前述の動脈血液ガス検査結果や臨 ダ ム 化 研 究 で は,0.067 IU/min の 高 容 量 群 の ほ う が, 床症状が出現する場合には,速やかにマスクや加圧バッ 0.0333 IU/min の低用量群に比して血行動態を有意に改 グを用いた NIPPV を開始する.フェースマスクを密着 善し,副作用の頻度は変わらなかったと報告されてい し,リザーバーバッグと水バルブにより 5 ~ 10 cmH2O る 340) .バソプレッシンのアナログである Terlipressin を の 呼 気 終 末 陽 圧 呼 吸(positive end-expiratory pressure; 用いた小規模な研究報告では,敗血症性ショックにおい PEEP)を加えた CPAP を施行することにより動脈血液 て Terilipressin は血行動態を改善しカテコラミンを使用 ガスや血行動態の改善(前負荷軽減による肺毛細管圧低 せずに済んだ症例が多かったとされた.現在のところ, 下,心拍出量増加)が得られ,自覚症状改善に有効であ バゾプレッシンの効果は主に血管拡張性ショックにおい る.また,密着型の鼻マスクやフェースマスクを用いた て検討されており,拡張型心筋症のような重度の収縮不 CPAP や bilevel PAP(BiPAP:吸気・呼気両相に別々の 全による心不全を対象にした研究はない.ドパミンやノ 陽 圧 を 加 え る ) な ど の よ う に, 非 挿 管 で 実 施 す る ルアドレナリンの使用にもかかわらず血圧が保持できな NIPPV も導入され活用されており,急性心原性肺水腫 い心不全症例において,特に末梢血管抵抗が維持できず に対して最初に実施すべき大事な治療法である 344)-346). に血行動態が悪化している際には有効である可能性があ NIPPV および肺うっ血に対する処置にも治療抵抗性 るが,その使用や有用性に関するさらなる検討が必要で で,呼吸状態や動脈血液ガスの改善が認められない場合, ある 341). あるいは意識障害,咳反射や喀痰排出困難な症例に対し 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 39 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) ては,気管内挿管による人工呼吸管理の適応となる.こ また,重炭酸イオンは細胞膜を通過して拡散しないので の方法は,肺内ガス交換の改善,呼吸筋労作の軽減によ 細胞内アシドーシスは修正されず,追加された重炭酸イ る自覚症状軽減,胃液逆流による誤嚥防止などに有効で オンの一部が CO2 に変換されて細胞内に入り,加水分解 ある.しかし,気道損傷,出血,肺過膨張による肺損傷 されて H +および HCO3 -になるので,逆説的に細胞内ア など合併症のリスクを伴うこと,気管内挿管や人工呼吸 シドーシスは増悪する可能性がある 347)-349). 管理において麻酔薬や筋弛緩薬など循環器系に不利な影 重炭酸イオンの経静脈的投与が推奨されるのは重度の 響を与える薬剤の使用が必要になること,挿管中の栄養 代謝性アシドーシス(pH が 7.20 未満)の場合のみである. 管理,抜管までの離脱過程に時間を要することなどの問 重炭酸イオンの投与量は以下の式によって求められる. 題があることを念頭におくべきである. 必要とされる NaHCO3(mEq)= ( 目標[HCO3 - ]-観察さ 通常の気管内挿管下での呼吸管理は間歇陽圧換気 れた[HCO3 -])× 0.4 ×体重(kg) (intermittent positive pressure breathing; IPPB) で あ り, 基本的な換気条件としては,1 回換気量 10 ~ 15 mL/kg, 呼吸数 10 ~ 20 回 /min(PaCO2 30 ~ 40 mmHg を目標), 吸気:呼気比 1 ~ 1.5:2 とし,動脈血液ガス分析結果を 血清 pH および HCO3 -濃度を投与の 30 分~ 1 時間後に測 定し,血管外 HCO3 -と平衡させる. 2 ショック・心停止 1 救急蘇生 見ながら調節する.挿管直後は FiO2 1.0 から始め,PaO2 80 mmHg 以上に維持されるよう FiO2 を設定する.酸素 障害の予防のために FiO2 は 0.5 以下にすることが望まし く,FiO2 0.5 で PaO2 60 mmHg 以下の場合には PEEP の 拡張型心筋症の急性増悪では,心原性ショック,とき 適応と判断する.IPPV では吸気時に陽圧をかけ,呼気 に,心肺停止に陥り,的確な救急処置が要求される.心 時には平圧に戻るのに対して,PEEP は呼気終末を陽圧 原性ショックの時は,病態に応じ,日本循環器学会の循 に保つことにより,呼気吸気の両相にわたって気道内圧 環器病の診断と治療に関するガイドライン,急性心不全 を陽圧に保ち,血液の酸素化をより促進する.自発呼吸 治療ガイドラインに基づいた治療を行う 343).心肺停止 下 に 圧 補 助 + PEEP を 用 い る か, 機 械 的 人 工 呼 吸 + 時には,「AHA 心肺蘇生と救急心血管疾患治療のための PEEP の 持 続 陽 圧 換 気(continuous positive pressure ガイドライン 2005」350)に基づいた心肺蘇生を行う. ventilation; CPPV)を用いる. 呼吸管理,薬物治療で改善の見込みのない症例では, ③電解質とアシドーシスの補正 Pumping; IABP)351),経皮的心肺補助装置(Percutaneous 動脈血液ガス分析は,呼吸不全や電解質異常,アシド Cardiopulmonary Support; PCPS)352), 補 助 人 工 心 臓 ーシスの把握に有用である.一般的な急性心不全では動 (Ventricular Assist System; VAS)353)の機械的補助循環治 脈血酸素分圧(PaO2)は低下し,同時に動脈血二酸化 療の導入を考慮する.循環動態が破綻した状態での機械 炭素分圧(PaCO2)は低下しているが,高度の肺うっ血 的補助循環の導入は予後不良であり,導入のタイミング では PaCO2 が上昇してくる.これによる呼吸性アシド を逃さないよう注意する必要がある.日本循環器学会の ーシスを呈する場合もあるが,多くの症例では末梢循環 循環器病の診断と治療に関するガイドライン,「循環器 の悪化による代謝性アシドーシスとなり,乳酸アシドー 医のための心肺蘇生・心血管救急に関するガイドライン」 シスを呈する. にも詳述されている 354). 乳酸はブドウ糖代謝およびアミノ酸代謝の正常な副産 物であるが,酸素欠乏中に ATP を産生するために,相 対的虚血組織で乳酸が過剰に産生されたときに生じる. 過剰産生は,組織灌流が低下している間に生じ,灌流の 40 大 動 脈 内 バ ル ー ン パ ン ピ ン グ(Intra-aortic Balloon 2 IABP と PCPS 351) ① IABP(Intra-aortic Balloon Pumping) 不十分な肝臓での乳酸代謝低下によって増悪する. IABP は簡便な機械的循環補助装置であり,内科的治 炭酸水素ナトリウムを用いたアシドーシス治療は代謝 療に抵抗する急性心不全,心原性ショックでまず試みら 性アシドーシスが重炭酸イオンの喪失である場合におい れるべきものである.IABP の効果はカウンターパルセ てのみ明確に適応となる.循環不全の治療に伴い,乳酸 ーションの原理に基づき,大動脈内に挿入されたバルー は代謝されて重炭酸イオンに戻り,過剰な外因性重炭酸 ンを拡張期に膨張させ,収縮期に収縮させ,圧補助とし イオンは逆に代謝性アルカローシスを引き起こし得る. ての補助循環作用を発揮する.心収縮期にはバルーンの 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン 収縮による吸引効果を介した駆出量増加,および後負荷 いては,PCPS 補助により上昇した後負荷のために,左 の減少による心筋酸素消費量減少(systolic unloading) 室から,左房圧が上昇し,肺うっ血が急激に進行する. を,心拡張期には拡張期圧の上昇によって冠動脈血流を このような場合は,左室を直接減圧するために,時期を 増加させる(diastolic augmentation).圧補助手段であり, 逸せずに左心補助人工心臓(LVAS)を導入する.大動 補助効果は自己心機能に依存しており,限界がある.効 脈弁閉鎖不全症を合併している場合は,大動脈弁置換術 果が不十分であれば,PCPS の導入,VAS への移行を検 を同時に施行する.一時的な補助により状態の改善が期 討する. 待できない場合は,LVAS 装着までのつなぎとして用い 中程度以上の大動脈弁閉鎖不全を合併する症例,大動 られる. 脈解離,大動脈瘤を有する症例では禁忌である.バルー 合併症として,下肢の虚血が問題で,その予防のため ンの挿入法は外科的挿入法と経皮的挿入法があり,最近 には,送血カニューラの遠位側に別個にシース等を挿入 は主として経皮的挿入法が用いられる.合併症として, し,送血管の側枝からの下肢の灌流を行うことが有効で 特にバルーン挿入側の下肢の虚血に注意する.その他, ある.他に,動静脈の損傷,出血,感染症が問題となる. 動脈損傷,神経障害,バルーンの損傷がある.離脱は, 離脱は,心機能の回復に伴い,徐々に補助流量を減少さ 心機能の回復を確認後,バルーンの補助回数を下げてゆ せてゆく.補助流量が 1.0 ~ 1.5 L/min 以下にまで減少で き,循環動態が安定していることを確認後に抜去する. きれば,離脱の可否を判断する.5 分間ほどの補助停止 バルーンの抜去は通常,圧迫止血で可能であるが,VAS で,血圧,中心静脈圧,肺動脈楔入圧,心拍出量,血液 埋込後,心臓移植施行後は外科的に血管を露出し,抜去 ガス分析結果,心エコー所見などを総合的に判断し,離 後止血する. 脱を行う.本疾患の患者は,PCPS 離脱後,将来的に, ② PCPS(Percutaneous Cardiopulmonary 352) Support) 時などの開心術に,大腿動静脈を送脱血路として使用す PCPS は簡易人工心肺システムとして開発された装置 にカニューラを抜去し,血管形成を行うべきである. で,動静脈の経皮的カニュレーラと遠心ポンプ,および, 膜型人工肺からなり,心臓の働きを肩代わりするポンプ 再び PCPS が必要になる可能性,VAS 埋込時,心臓移植 る可能性を考慮し,カテーテルの抜去は,血管を露出後 3 低体温療法 と し て だ け で な く 呼 吸 補 助 効 果 も 兼 ね 備 え て い る. 心肺停止後,心肺蘇生が成功し,心拍が再開しても, IABP を用いても循環補助が不十分な症例や,心停止あ 脳機能が回復しなければ,大きな問題である.蘇生成功 るいは心原性ショック症例に対する緊急心肺蘇生に適用 後 の 治 療 と し て, 中 等 度 低 体 温 療 法 が 提 唱 さ れ 355), され,最長 7 日から 10 日間の短期間の機械的補助循環 2002 年 に 多 施 設 共 同 無 作 為 試 験 の 結 果 が 発 表 さ を目的に使用する.大腿静脈より脱血,酸素化血液を大 れ 356),357),2005 年に European Resuscitation Council のガ 腿動脈に返血することにより右室左室両心の補助を行う イドラインが示された 358).自己心拍が再開するも意識 もので,迅速にかつ比較的簡便に導入可能で,ヘパリン のない成人では,32 ~ 34 度の冷却を開始し,12 ~ 24 時 コーティングシステムの普及により,出血傾向のコント 間継続するべきと推奨されている.しかし,至適症例, ロールも容易になった.抗凝固薬療法のために,ヘパリ 温度,導入時期,復温時期等,未解決の問題が多く,低 ンを用いて活性凝固時間(accelerated coagulation time; 体温療法は普及するまでには至っていない.我が国で ACT)を 250 ~ 300 秒に維持するが,ヘパリンコーティ 2005 年から 2009 年に多施設共同登録調査(J-PULSE- ング回路を用いる場合には,ACT を 150 ~ 200 秒に維持 hypo: Japanese Population-based Utstein-style study with する. defibrillation and basic/advanced Life Support Education 動脈硬化性病変が強い症例,小体格で大腿動脈が細く and implementation-Hypothermia)が実施され,2010 年 カニュレーションができない症例,また両側の大腿静脈 の日本循環器学会総会において中間解析結果が報告され が閉塞している症例には適応が困難である.このような ている 359).解析は進行中であり,そこから得られる治 症例では開胸手術により,直接右心房と上行大動脈にカ 験が期待される. ニュレーションする. 中等度以上の大動脈弁閉鎖不全症を有する症例では, PCPS による流量補助により左室負荷が増大し,左心機 能が悪化する.左室収縮機能が極度に悪化した症例にお 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 41 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) 3 し,低血圧例や血清クレアチニンおよびカリウム高値例 収縮不全と拡張不全 では,初期投与量に注意する. 2)アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB) 推奨文 ARB の臨床試験では,カンデサルタンが ARCH-J 試 ◦ ACE 阻害薬は,心不全症状の有無にかかわらず左室 験 364)において,NYHA Ⅱ~Ⅲ度,左室駆出率 45%以下 収縮不全患者の予後を改善する(レベル 1,グレード の心不全患者を対象に,心不全の進行および心血管イベ A). ントを抑制した.また,CHARM alternative 試験 365)にお ◦ ARB は,ACE 阻害薬と同等の心イベント抑制効果を 有する(レベル 1,グレード A). いて,心血管死または心不全悪化による入院を有意に減 少させた. ◦アルドステロン拮抗薬は,心不全症状を有する左室収 縮不全患者の予後を改善する(レベル 2,グレード B). ACE 阻害薬と ARB の比較試験として,カプトプリル 対ロサルタンの比較が行われた.ELITE- Ⅱ試験 366)では ◦β遮断薬は,心不全症状の有無にかかわらず左室収縮 NYHA Ⅱ度以上,左室駆出率 40 %以下の心不全患者を 不全患者の予後を改善する(レベル 1,グレード A). 対象に,OPTIMAAL 試験 367)では左心機能低下を伴う急 ◦カルベジロールは,用量依存性に予後改善効果が大き 性心筋梗塞患者を対象に行われ,いずれも生命予後や心 い.ただし,我が国では低用量であっても予後改善効 血管イベントは両群で同等であった.ただし,咳嗽など 果が認められる(レベル 1,グレード A). の有害事象はロサルタンに少なく,忍容性は ARB が優 ◦ジギタリスは,心不全症状を有する左室収縮不全患者 れていた.VARIANT 試験 368)では,左心機能低下を伴 の心不全悪化による入院を減少させる(レベル 2,グ う急性心筋梗塞患者を対象とし,バルサルタンとカプト レード B). プ リ ル の 効 果 は 同 等 と 結 論 づ け ら れ た.Val-HeFT 試 ◦短時間作用型カルシウム拮抗薬の長期投与は,心不全 の予後を悪化させる(レベル 2,グレード D) . 験 369)では,ACE 阻害薬を含む標準治療を受けた NYHA Ⅱ~Ⅳ度,左室駆出率 40 %以下の慢性心不全患者を対 ◦経口強心薬の短期投与は,ACE 阻害薬やβ遮断薬な 象に,バルサルタンの追加投与による効果が検討された. どの薬物療法に抵抗する難治症例において,自覚症状 総死亡率に改善はなかったが,心不全症状が有意に改善 や生活の質を改善させる(レベル 2,グレード C1). し, 心 不 全 の 悪 化 に よ る 入 院 が 減 少 し た.CHARM- Added 試験 370)では,ACE 阻害薬が投与された慢性心不 拡張型心筋症では,収縮不全と拡張不全は個別に存在 全患者において,カンデサルタンの追加投与は心血管死 する病態でなく,両者が重複して存在する.現在までに 亡と心不全による入院を減少させた. 得られたエビデンスは,主に左室収縮不全に伴う慢性心 以上より,ARB はエビデンスのレベルは ACE 阻害薬 不全が対象である. に劣るものの,ACE 阻害薬と同等の心血管イベントの 抑制効果を発揮した.また,両者の併用により,さらな RAA 系阻害剤 1 るイベントの抑制効果が期待される. ① ACE 阻害薬と ARB 心不全症状の有無にかかわらず,左室駆出率 40 %以 1)アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE 阻害薬) 下の収縮不全に対しては,禁忌がない限り ACE 阻害薬 ACE 阻害薬は,多くの大規模臨床試験で左室収縮不 を投与する(レベル 1,グレード A). 全(左室駆出率 30 ~ 40%以下)に対する予後改善効果 が実証されている.エナラプリルは,CONSENSUS 試 験 360) では NYHA Ⅳ度を対象に,SOLVD 試験 361),362) では 軽症~中等症の慢性心不全患者を対象に,生命予後を有 意に改善させた.さらに,無症状の左室収縮機能障害患 (レベル 1,グレード A). ②アルドステロン拮抗薬 者に対しても,心不全死や心不全による入院を減少させ スピロノラクトンは RALES 試験 276)において,NYHA る効果が SOLVED prevention 試験 362)で実証された. Ⅲ~Ⅳ度,左室駆出率 35 %以下の重症心不全患者を対 一方,ATLAS 試験 42 ACE 阻害薬に忍容性がない患者には ARB を投与する 363) では,高用量群のリシノプリル 象に,全死亡,心不全死亡,心不全による入院を有意に が低用量群に比べて死亡や入院を抑制した.したがって, 減少させた.また,エプレレノンは EPHESUS 試験 371) 忍容性がある限り,高用量に近づけるべきである.ただ において,心不全もしくは左室駆出率 40 %以下の急性 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン 心筋梗塞患者を対象に,生命予後を有意に改善させた. CIBIS- Ⅱ 381)ではビソプロロールが,そして,MERIT- さ ら に,EMPHASIS-HF 試 験 で は, 比 較 的 軽 症 の HF382)ではメトプロロールが,NYHA Ⅱ~Ⅲ度を中心と NYHA Ⅱ度,左室駆出率 35 %以下の心不全患者を対象 した左室駆出率 40 %以下の慢性心不全患者を対象にし として,エプレレノンの追加投与により死亡および心不 て,35 ~ 65%もの死亡率を減少させた.COPERNICUS .ACE 阻害薬や 試験 383)では,NYHA Ⅳ度,左室駆出率 25%以下の重症 ARB との併用投与の際には,腎機能や血清カリウム値 心不全患者を対象に,カルベジロールが死亡率を 35 % に注意して投与する.アルドステロン受容体への選択性 減少させた.一方,NYHA Ⅰ度,つまり症状を有さない, 全による入院を有意に減少させた 372) が高いエプレレノンでは,女性化乳房がより低頻度であ 左室駆出率 40 %以下の患者を対象にした CAPRICORN る. 試験 384)では,カルベジロールは死亡率を 23%低下させ た. 心不全症状を有する左室駆出率 35 %以下の収縮不全 現在,慢性心不全に対する予後改善効果のエビデンス に対しては,高カリウム血症や著明な腎機能の悪化がな が得られているβ遮断薬は,カルベジロール,ビソプロ い場合,少量のアルドステロン拮抗薬を追加投与する(レ ロール,メトプロロールの 3 つである.我が国ではカル ベル 2,グレード B). ベジロールが保険承認され,さらに先頃,ビソプロロー ルも追加承認された.薬剤間での比較は COMET385)でな ③レニン拮抗薬 され,カルベジロール群がメトプロロール群に比し,死 アリスキレンは ALOFT 試験 373)において,NYHA Ⅱ 亡率が有意に低かった. ~Ⅳ度,平均左室駆出率 31 %の慢性心不全患者を対象 薬剤用量の問題に関しては,US Carvedilol 試験にお に,3 か月投与で有意に血漿 BNP 値を低下させた.心エ ける量設定プロトコール(MOCHA 試験 386))において, コー図では左室駆出率は改善しなかったが,左室拡張早 用量依存性に予後改善効果が大きかった.我が国で行わ 期流入血流速(E),E と拡張早期僧帽弁輪運動速度の比 れた MUCHA 試験 387)では,カルベジロール 5 mg 群と 20 (E/e’),僧帽弁逆流量を減弱させた.現在,NYHA Ⅱ mg 群とが比較され,左室駆出率改善作用は 20 mg 群で ~Ⅳ,左室駆出率 35 %以下の慢性心不全患者を対象と 有意に大きく,一方で,全死亡または全心血管系の原因 して,アリスキレンによる予後改善効果を検討する大規 による入院は同等であった.低用量であってもβ遮断薬 模臨床試験(ATMOSPHERE)が進行中である. は有効であり,心拍数や BNP 濃度を指標にしながら増 量を試みることが推奨される. ④拡張障害に対する治療効果 CIBIS Ⅲ試験 388)では,ACE 阻害薬とβ遮断薬のどち 心筋の拡張不全の主病態は左室肥大と線維化と考えら らの投与を先行させるべきかが検討された.NYHA Ⅱ れ,アンジオテンシンⅡと心筋細胞での AT1 受容体の ~Ⅲ度の慢性心不全患者を対象に,ACE 阻害薬エナラ 活性化が大きく関与する 374),375) .拡張機能低下型心不全 の予後を検討した臨床試験には,ARB カンデサルタン 376) プリルとβ遮断薬ビソプロロールのいずれを先に投与し ても,全死亡+入院の発生率には差がなかった.ただし, と ACE 阻害薬ペリ 死亡はβ遮断薬先行群に少なく,心不全悪化による入院 ンドプリルを用いた PEP-CHF 試験 377)がある.いずれも は ACE 阻害薬先行群に少なかった.β遮断薬は,初期 死亡率に差はないものの,心不全による入院は減少した. 導入段階で心不全を悪化させたが,一方では,突然死を を用いた CHARM-Preserved 試験 一方,イルベサルタンを用いた I-PRESERVED 試験 378) 減少させた. では,長期予後は改善しなかった.また,アルドステロ β遮断薬の導入はごく少量から開始し,心不全の増悪 ン拮抗薬は,抗炎症作用により間質の線維化を抑制し, がないことを確認しながら,徐々に増量する.自覚症状, 拡張機能を改善させるかもしれない.現在,拡張機能低 血圧,心拍数,尿量,体重,身体所見(ギャロップリズ 下型心不全を対象とした大規模臨床試験 TOPCAT379)が ム,頚静脈怒張,浮腫,四肢の冷感)などの変化に注意 進行中である. を払う.増量の過程で心拍数や血圧の低下が顕著な場合 2 は,薬剤の一時減量を考慮する.また,Ⅱ度またはⅢ度 β遮断薬 の心ブロックが生じた場合は薬剤の減量,または中止を 拡張型心筋症を含む慢性心不全患者を用いた大規模臨 要する.うっ血の増悪を来たした場合は,利尿薬の増量 床試験において,β遮断薬の予後改善効果が実証されて や薬剤の一時減量にて対処する.我が国での一般的な初 380) 期投与量と目標用量はそれぞれ,カルベジロールで 1.25 き た.US Carvedilol 試 験 で は カ ル ベ ジ ロ ー ル が, 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 43 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) ~ 2.5 mg お よ び 10 ~ 20 mg, ビ ソ プ ロ ロ ー ル で 0.625 頻脈性心房細動を有する心不全患者に,レートコント mg および 5 mg である.開始の時期は体液貯留がなく, ロールを目的としてジゴキシンの投与を行う(レベル 1, 安定した時期が望ましい 389) .また,長期にβ遮断薬を 服用中の患者がうっ血の増悪を来たした場合,利尿薬の 調整にて対処し,極力β遮断薬を継続させる 390).ただし, グレード A) ②カルシウム拮抗薬 重篤なポンプ失調を来たし,強心薬の静注を要する場合 短時間作用型カルシウム拮抗薬の長期投与は,心不全 には,減量または一次中止を考慮する. の予後を悪化させる 393),394).長時間作用型のアムロジピ 拡張不全に対しては,降圧効果,肥大退縮効果ととも ンは,PRAISE 試験 395)や PRAISE2 試験(学会発表のみ) に心拍数抑制効果にて拡張期充満を改善させるが,予後 において,収縮機能の低下した心不全患者の予後を少な に関し確率されたエビデンスは存在しない. くとも悪化させなかった. 心不全症状の有無にかかわらず,左室駆出率 40 %以 縮効果 396),397)や徐拍化による拡張充満時間延長から良好 一方,拡張不全に対する効果としては,左室肥大の退 下の収縮不全に対しては禁忌がない限り,β遮断薬を投 な作用が期待される.長時間作用型のニフェジピンが 与する(レベル 1,グレード A). ACTION 試験のサブ解析 398)において,左室駆出率の保 3 ジギタリスとカルシウム拮抗薬 ①ジギタリス たれた安定狭心症患者の心不全の新規発症を有意に抑制 した. 狭心症,高血圧を合併していない収縮不全に対しての ジギタリスは古くから慢性心不全の治療薬として用い カルシウム拮抗薬の投与は,レベル 2,グレード D であ られてきた.しかし,現在は強心薬というよりも,迷走 る. 神経を活性化し,洞結節の自動能抑制や房室結節の伝導 遅延による徐拍化作用,微弱ではあるが交感神経抑制作 用による血管拡張作用,心不全で低下した圧受容体の感 4 経口強心薬 慢性心不全における大規模臨床試験において,経口強 受性を改善し,さらには,活性化した RAA 系を是正す 心薬の投与は生命予後という観点からは否定的であっ る作用などが期待される. た 399),400).しかしながら,ACE 阻害薬やβ遮断薬など DIG 試験 391)は,NYHA Ⅱ~Ⅳ度,左室駆出率 45%以 の薬物療法に抵抗する難治症例に対し,自覚症状や生活 下の慢性心不全患者を対象に,ジゴキシン投与による予 の質の改善を目的とした使用,カテコラミン薬の持続静 後改善効果を検討した.ジゴキシン投与群はプラセボ群 注から離脱困難時での短期併用の橋渡し的な使用,β遮 に対し,総死亡や心血管死亡を減少させなかったが,心 断薬導入時の補助薬としての有用性が否定されたわけで 不全の悪化による入院を 7.9%減少させた.さらにサブ はない 401),402). 解析 392)では,ジゴキシンの血中濃度が 0.5 ~ 0.8 ng/mL PDE Ⅲ阻害薬であるピモベンダンは,高用量では Ca2+ で死亡率がいちばん低く,逆に 1.2 ng/mL 以上ではプラ 感受性増強作用を併せ持つ経口強心薬である.PICO 試 セボ投与群より死亡率が増加した. 験 403)では,ピモベンダン 2.5 mg,5.0 mg/ 日投与群でプ また,心房細動を有する左室収縮能低下を伴う不全患 ラセボに対し運動持続時間の延長が示されたが,総死亡 者には,心室レートコントロール,十分な左室充満時間 率は増加した.一方,EPOCH 試験 404)では,左室駆出率 のためにも,ジギタリスが良い適応である.ただし,心 45 %以下,NYHA Ⅱ m ~Ⅲ度の 306 例の慢性心不全患 房細動を伴う左室収縮不全患者に限って,ジギタリスの 者を対象に,ピモベンダンは予後を悪化させることなく, 予後効果を検討したエビデンスはない. 自覚症状や運動耐容能を有意に改善した. β 1 受容体刺激薬のデノパミンはドブタミンに類似 利尿薬,ACE 阻害薬(または ARB),β遮断薬などの し,心収縮力を増強させる.ドパルパミンはドパミンの 標準的心不全治療を受けているにもかかわらず,心不全 プロドラックである.これら 2 剤の長期投与による生命 症状の残存する駆出率が低下した洞調律慢性心不全患者 予後を検討したデータは存在しない. に対して,ジゴキシンの追加投与を検討する(レベル 2, グレード B). 生活の質の改善,経静脈的強心薬からの離脱を目的と した経口強心薬の短期投与は,レベル 2,グレード C1 44 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン β遮断薬(メトプロロール,カルベジロールなど),Ca である. 4 拮抗薬(ベラパミル,ジルチアゼム),アミオダロンが 不整脈とペースメーカ 用いられる.ただし,ジギタリス薬は即効性がなく,陰 性変力作用を有する Ca 拮抗薬も心不全例に用いる場合 は注意が必要である.リズムコントロール目的では心抑 ①抗不整脈薬 制作用の少ないアミオダロン,ベプリジル,アプリンジ 推奨文 ンが用いられる.特にアミオダロンは米国,欧州の心房 ◦アミオダロンは低心機能例で心室性不整脈と心房細動 細動管理ガイドラインでは低心機能例の第一選択薬にな を抑制して生命予後を延長させる(レベル 1,グレー っている 410),411). ド A) 2)心室性不整脈 ◦カルべジロール,メトプロロール,ビソプロロールは 心室性不整脈を伴う低心機能例にⅠ群薬や d- ソタロ 心室性不整脈を抑制し,心房細動における心室拍数を ールを投与すると,プラセボ群よりむしろ生命予後が悪 低下させると共に,低心機能例の予後を改善させる(レ 化することが知られていたが,アミオダロンは,CHF- ベル 1,グレード A) STAT 試験と GESICA 試験で,低心機能の非虚血性心疾 ◦カテーテルアブレーションにより心房細動例の洞調律 患の総死亡率を有意に減少させる,またはその傾向が見 が維持されれば,左心機能,運動耐容能の改善が期待 られ 412),413),かつ SCD-HeFT 試験 414)でもプラセボ群と できる(レベル 3,グレード B) ほぼ同等の総死亡率であった.このため,アミオダロン ◦ CRT,CRT-D は NYHA Ⅱ,Ⅲで QRS 幅の延長した拡 は致死性不整脈とともに AF を抑制して生命予後を延長 張型心筋症の生命予後を延長させる(レベル 1,グレ するとして,拡張型心筋症等の低心機能例では最もよく ード A) 用いられている.またカルべジロール,メトプロロール, 1)心房性不整脈 ビソプロロールなどのβ遮断薬も低心機能~心不全例の 拡張型心筋症では心房細動(AF),心房粗動,心房頻 予後を改善することが種々の大規模臨床試験で確認され 拍などの心房性不整脈と,心室頻拍などの心室性不整脈 ている 415),416).一方,ICD の効果には劣るものの,アミ の両者が生じる.中でも AF は心不全例の 20%に認めら オダロンとβ遮断薬とを併用すると,単独使用よりも致 れ,年齢,NYHA 心機能分類のクラスが上がるにつれ 死性不整脈の発生が有意に低いと報告されている 417). て頻度が増加する 405).AF は一旦それが持続し始めると, 以上より,2006 年の心室性不整脈患者の管理および心 電気的リモデリング,機械的リモデリング,構造的リモ 臓 突 然 死 の 予 防 に 関 す る ACC/AHA/ESC ガ イ ド ラ イ デリングが促進されてさらに持続しやすくなる.AF に ン 418)では,心不全例において,アミオダロン,dl- ソタ より心房収縮が消失し,頻脈が生じると低心機能例では ロール,β遮断薬は,症候性の心室性の頻脈性不整脈を 容易に心不全となるが,一方でそれによりリモデリング 抑制するための ICD の補助療法として選択されるなら, が進行し,ますます AF が生じやすく,持続しやすくな クラス 1 の適応であるが,代替療法とする場合はクラス るという悪循環も生じ得る 406).このため AF では早く洞 2b であるとされている. 調律に復帰させるのがよいとする,リズムコントロール 治療の必要性が強調された時期があった.しかしながら ②カテーテルアブレーション AF では心拍数を調節するレートコントロールも重要で 高周波を用いたカテーテルアブレーションは頻脈性不 あり,AFFIRM 試験,AF-CHF 試験等でリズムコントロ 整脈の根治療法として 1980 年代後半から急速に発展し, ールとレートコントロールの比較が行われた 407),408) .そ 2000 年代前半までに心室細動を除くほとんどの不整脈 の結果,レートコントロール治療は低心機能例において へ の 治 療 法 が 確 立 し た. ま た,2000 年 頃 か ら は も,リズムコントロールと同等に総死亡を減少させるこ CARTO,Ensite などの種々の 3 次元マッピングシステム とが判明した.また当初はレートコントロールは安静時 が導入され,電位や解剖学的情報に基づいて,不整脈基 に 80/ 分 未 満,6 分 間 歩 行 検 査 時 や 中 等 度 の 運 動 時 に 質,起源,リエントリー回路,緩徐伝導路などを正確に 110/ 分未満の心拍数を保つのがよいとされたが,安静時 かつ立体的に把握できるようになった.拡張型心筋症で においても 110/ 分を目標とする程度のコントロールで は合併する AF,心房粗動,心房頻拍と心室頻拍(VT) よいと報告されている 409). へのアブレーションが行われる. このため,レートコントロール目的ではジギタリス薬, 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 45 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) 1)心房細動 を根治できるのは一部の例に限られる 426).このため, 1998 年に,AF のトリガーの多くが肺静脈入口部周辺 アブレーション施行後も,突然死の予防には未だ ICD で発生する巣状興奮であることが Haissaguerre らにより や CRT-D に頼らざるを得ない現状がある. 報告されて以来 419),種々の施設で AF に対するアブレー ションが試みられている.現在では CARTO などを用い て,上下肺静脈を一括して隔離する解剖学的肺静脈環状 拡張型心筋症などの低心機能例では,心室内伝導障害 隔 離 法 が 主 流 と な っ て い る が, こ の 他 に 左 房 内 の に伴って心室の非協調的収縮が生じる.特に左脚ブロッ complexed fractionated atrial electrogram(CFAE)や 420) , ク(LBBB)をはじめとする左室の伝導障害が生じると, 左右肺静脈への通電ラインを結ぶ線状焼灼,僧帽弁峡部 右室や左室中隔の興奮に比べて左室自由壁の興奮が遅延 への線状焼灼も追加的手法として施行されている.ただ するため,収縮開始にタイミングのずれを生じる.この し,これらが成功して AF が消失しても,数か月以内に ように心室収縮の同期性が崩れた状態を心室同期不全 20 ~ 50%の例に AF の再発や心房頻拍の出現が認められ (ventricular dyssynchrony)という.心室同期不全には るため,根治には複数回のアブレーションを必要とする 左室内同期不全と心室間同期不全があるが,これらのも ことが少なくない.現在肺静脈隔離法によるアブレーシ たらす不均一な収縮により,LVEF が低下し,左室収縮 ョンでは,発作性 AF を抑制できる確率は初回で 60 ~ 末期容積が増加して心拍出量が低下する.一方で,前後 80%,2 回目で 80 ~ 90%と報告されている 421),422) .左房 乳頭筋の収縮時相のずれや,等容性収縮期の左室圧上昇 拡大を伴う低心機能例や慢性 AF 例では初回成功率がや 不全などが生じて僧帽弁閉鎖が不十分になり,僧帽弁逆 や低くなるが,アブレーションによる洞調律維持により, 流が起こりやすくなる.また,PQ 時間が著明に延長し 左心機能,運動耐容能の改善が期待できる 423) . て房室ブロックが生じると,心房と心室の収縮の同期が アブレーションで治療困難な心房頻拍や心房細動例に とれなくなり(房室間同期不全),僧帽弁閉鎖不全や心 は房室結節へのアブレーションが時に施行される.しか 拍出量の低下を来たす. しながら房室結節アブレーションは不可逆的で,恒久的 DDD ペースメーカは VVI ペースメーカに比べて房室 なペースメーカ植込みが必須である上,抗凝固薬を継続 間同期不全を改善し得るため,心不全への効果が期待さ して服用する必要がある.かつ低心機能例に右室ペーシ れる.しかしながら右室ペーシングの行われる比率が高 ングを行うと,心室の同期不全をもたらし,さらに心機 まると,心室の不同期のためかえって心不全や AF が増 能が低下する可能性がある.肺静脈隔離例と,房室結節 加することが DAVID 試験や MOST 試験で明らかになっ アブレーション+両室ペースメーカ植込み例を比較した た 427),428).また,正常の LVEF を有する例であっても, PABA-CHF 試験では,肺静脈隔離群が両室ペーシング 右室心尖部ペーシングを続けていると左室のリモデリン 群よりも,6 分間歩行距離が長く,左室駆出率が良好で, グが進んで LVEF が低下すると報告されている 429).さ QOL も改善していた 424) . ら に 両 室 ペ ー シ ン グ に よ る 再 同 期 治 療(cardiac 現在,低心機能例の AF に対するアブレーションの有 resynchronization therapy = CRT)を行っても,正常心室 用性に関しては大規模臨床試験が進行中であるが,これ 興奮に優る心機能改善効果は得られない.このため,低 までの報告のメタ解析では,再発率はやや高いもののア 心機能ではあるが,房室伝導が保たれ,QRS 幅の狭い ブレーションにより左室駆出率(LVEF)が改善すると 例では,できるだけ右室ペーシングを避け,心房ペーシ の結果が出ている 46 ③ペースメーカと CRT 425) . ングを維持するモードが用いられている. しかしながら, 2)心室頻拍 一方で PQ 時間が延長すると,AF のリスクが増え,死 拡張型心筋症に伴う VT は,その多くがリエントリー 亡率もわずかながら増加する事実も認められている 430). 性であるが,回路が心外膜側にある場合が少なくない. このため,収縮遅延部位である左室自由壁(左室後側 また頻拍中に血圧が容易に低下しやすく,起源や回路も 壁基部)を,心室中隔側(右室心尖部)と同時にペーシ 変化するので,至適通電部位の同定が困難となりやすい. ングすることにより左室収縮の同期性を高めて,心機能 現在,多くの頻脈性不整脈ではカテーテルアブレーショ の改善を図る治療法である CRT が 1990 年代半ばから行 ンで 90 %以上の根治が期待できるが,器質性 VT では, われるようになった.CRT により,LVEF,1 回心拍出 以上のような理由から基質マッピングやペースマッピン 量が増加し,収縮期圧,脈圧が上昇するとともに僧帽弁 グで通電部位を決定せざるを得ず,冷却機能付きカテー 逆流が減少するが,実際に MIRACLE 試験,CARE-HF テルを用い,心外膜アプローチを行ったとしても不整脈 試験,COMPANION 試験等の大規模臨床試験において, 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン CRT または再同期治療機能付き除細動器(CRT-D)は, に生命予後を改善するとの結果が出ている.一方,非虚 薬物治療や植込み型除細動器(ICD)治療よりも心不全 血性心疾患では,二次予防において有用との結果が出て 指標や生命予後を改善することが確認されてい いるが,一次予防では LVEF ≦ 35%の低心機能例を対象 る 431)-433). とした DEFINITE 試験 437),SCD-HeFT 試験 414)において, 現在 CRT の適応として広く受け入れられているのは ICD が薬物治療に優る傾向が認められたにすぎない.ま (1)適切な内科的治療が行われているにもかかわらず, た NYHA Ⅲ,Ⅳで QRS 幅≧ 120 msec の例を対象とした NYHA Ⅲ~Ⅳの症候性心不全を認め,(2)左室駆出率が COMPANION 試験 433)では CRT,再同期治療機能付き除 35 % 以 下 で,(3)QRS 幅 が 130 msec( あ る い は 120 細動器(CRT-D)植込み群が薬物治療群より有意に総死 msec)以上で,VT を有さない症例である.また徐脈の 亡を減少させたが,NYHA Ⅳ例に限るとその差は認め ためにペーシングが必要な低心機能例も適応と考えられ られなかった 438).このため,2008 年のデバイス治療に る. し か し な が ら,NYHA Ⅰ ~ Ⅱ で LVEF ≦ 40 %, 関する ACC/AHA/HRS ガイドライン 439)において,非虚 QRS 幅 ≧ 120 msec の 例 を 対 象 と し て 施 行 さ れ た 血性心疾患では,NYHA Ⅱ,Ⅲで LVEF ≦ 35 %の拡張 REVERSE 試験で,CRT を on にした際には初回入院ま 型心筋症例と,原因不明の失神があって,EPS で VT/ たは死亡までの時間が有意に延長し,左室のリモデリン VF が誘発される例はクラス 1 の ICD 植込み適応だが, グが改善したことから 434),435),より軽症例への CRT の 失神があり左心機能が低下している拡張型心筋症例では 適 応 拡 大 を は か る 動 き が あ る. 一 方,QRS 幅 は クラス 2a で,NYHA Ⅰで LVEF ≦ 35 %の例は 2b となっ RETHINQ 試験で,120 msec 未満の症例に最大酸素摂取 ている. 量,QOL score,6 分間歩行距離などの指標に改善が見 ICD に対する CRT-D の優越性は NYHA Ⅲ,Ⅳ,LVEF られなかったことから,120 msec 以上の症例を適応と ≦ 35%,QRS 幅≧ 130 msec の例を対象とした MIRACLE- する考えが主流である 436). ICD 試験 431)で証明されていたが,NYHA Ⅰ,Ⅱで LVEF このように CRT は QRS 幅の延長した拡張型心筋症で ≦ 30 %,QRS 幅≧ 130 msec の例を対象とした MADIT- は有用な治療法となるが,前述の如く拡張型心筋症では CRT 試験 440)でも CRT-D 群は ICD 群に比べ心不全による 心室性不整脈を合併する頻度が高いために CRT-D が主 入院を減少させた.本試験では総死亡は 2 群間で差がな として植込まれている.このため,我が国での CRT(-P) かったが,NYHA Ⅱ,Ⅲで LVEF ≦ 30%,QRS 幅≧ 120 植込み数は全再同期治療数の約1/4を占めるにすぎない. msec の例を対象とした RAFT 試験 441)では心不全入院, ④ ICD と CRT-D 総死亡ともに CRT-D 群で有意に減少していた.この他 に MADIT-CRT 試 験 の サ ブ 解 析 で は,(1)LBBB 例 で 植込み型除細動器(ICD)は 1980 年に初めて臨床応 CRT-D 群の心不全入院が減少するが,non-LBBB では減 用された致死性不整脈の治療機器で,当初は開胸手術に 少しない 442).(2)CRT-D 群で心房,心室の容積減少と より体内に植え込まれ,除細動機能のみを有していた. LVEF の改善がある 443).(3)冠静脈洞内に挿入された LV その後,小型化,軽量化,長寿命化が図られ,経静脈的 リードが心尖部側に留置されると心不全 / 死亡のリスク な植込みが可能になっている.機能に関しては,心室性 が増大する 444).等の結果も得られている. 不整脈を自動的に認識して,除細動または抗頻拍ペーシ 2006 年の不整脈非薬物療法のガイドライン 445)におけ ングで停止させる機能,徐脈性不整脈に対するペースメ る CRT-D 適応は,十分な薬物治療を行っても改善しな ーカ機能に加え,心房性不整脈の認識・停止機能,心房 い NYHA Ⅲ,Ⅳの慢性心不全で,LVEF ≦ 35 %,QRS 細動抑制機能,心不全予防機能,心不全監視機能,遠隔 幅≧ 130 msec 以上の症例で,ICD 植込み適応のクラス 1, モニタリング機能などを備えている.これらの機能は未 2a を満たす場合となっているが,今後 CRT と CRT-D 植 だ不十分なものもあるが,それを補うために,不整脈の 込みにおいても,より軽症例に適応が拡大されると考え 診断・記録機能を高め,不適切作動,心室ペーシング, られる. 除細動などを減少させる様々な改善が随時加えられてい る. 5 貧血 虚血性心疾患における,心室頻拍(VT)/ 心室細動(VF) 既往例や低心機能例に対する ICD の有用性に関しては, 推奨文 1997 年以降に発表された種々の大規模臨床試験で,突 ◦鉄欠乏性貧血を合併した心不全患者への鉄剤投与は推 然死一次,二次予防ともに,薬物治療より ICD が有意 奨される(レベル 2,グレード B). 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 47 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) ◦腎性貧血を合併した心不全患者へのエリスロポエチン は推奨される(レベル 2,グレード B). 貧血患者では組織の低酸素化とそれに伴い末梢血管抵抗 が低下し,代償機転として高拍出状態となる.この状態 ◦貧血を合併した心不全患者への輸血は心不全を悪化さ が長期間持続すると左室は拡大し,左室拡大は壁応力を せる可能性もあり,慎重に投与すべきである(レベル 増加させ心肥大を促進させ心不全を誘発する 458)と考え 4a,グレード C1). られている. このように貧血が心不全と密接な関係を持つことは知 拡張型心筋症の病状進行に影響を与える因子のうちの られているが,治療に関しては十分なエビデンスがそろ 1 つに貧血があげられる.大規模臨床試験での心不全患 っているわけではない. 者における貧血の新規発症は年間約 17 %で,心不全全 体の貧血合併頻度も約 15 ~ 30 %と報告され 446),447),貧 鉄剤 血は心不全に高頻度に合併することが知られている.慢 鉄欠乏性貧血を合併した心不全に対して,鉄剤投与に 性の貧血は,酸素運搬率を低下させ代償性に 1 回拍出量 より症状および心機能が改善することが報告されてい 448) .貧血の る.鉄欠乏性貧血を合併し収縮能の低下した安定心不全 進行は左室心筋重量の増加,再入院の増加や予後の悪化 患者 16 例(LVEF26 ± 13 %,NYHA Ⅱ~Ⅲ)に経静脈 と心拍数を増加させ,心負荷を増大させる などとも相関があるとされ 448)-451) ,予後を規定する独 的に鉄剤を投与した結果,Hb の上昇に比例して症状の .ヘモグロビン(Hb)が 1g/ 改善および 6 分間歩行距離の延長がみられた 459).また dL 低下するごとに死亡率が 16%も上昇するともいわれ 心不全患者 40 例(Hb < 12.5 g/dL,LVEF ≦ 35%)を経 立した危険因子である ている 452) 451) .また,NYHA 分類の重症度に比例して貧血 静脈的鉄剤投与群およびプラセボ投与群の 2 群に分け, の合併率が増加し,貧血の程度は心不全の重症度も反映 二重盲検試験が行われた結果,鉄剤投与群はプラセボ群 している 453),454). に 比 し NT-proBNP 低 値 お よ び LVEF,NYHA class, 運 心血管病における貧血には慢性腎臓病が悪影響を及ぼ 動耐容能の改善を伴い,さらに入院率も低下してい していることが多く,心不全,貧血および腎機能障害は た 460).また,鉄欠乏性貧血(Hb < 12.5 g/dL)ならびに 互いに悪循環を形成していることから,心腎貧血症候群 非貧血性(12.5 < Hb < 14.5 g/dL)心不全患者 35 例(LVEF (Cardio-Renal Anemia Syndrome)という概念が提唱さ < 45%,NYHA Ⅱ~Ⅲ)に対し経静脈的に鉄剤投与を 4 れている 453).貧血,心不全,腎障害の何れもない例の 2 か月間行い,Hb は増加しないにもかかわらずフェリチ 年死亡率は 7.7 %に対して,貧血単独で 16.6 %,心不全 ンと NYHA クラスは改善し,特に貧血群では peak VO2 単独で 26.1%,腎障害単独で 16.4%と悪化する.さらに も改善した 461).これらの研究から心不全に対して鉄剤 重複すると死亡率は上昇し,貧血と腎障害では 27.3%, 単独投与が有効である可能性が示された.ただしすべて 貧血と心不全では 34.6 %,心不全と腎障害では 38.4 %, 少数例での研究の為,より多くの症例での検討が必要で 心不全,腎障害,貧血全て合併すると 45.6%に及ぶと報 ある. 告されている 453).また,心腎貧血症候群では心不全に よる再入院率が高く,かつ入院日数も長い 455). 48 1 4 2 輸血 心不全における貧血の原因については明らかにはされ 急性心不全の患者で輸血を必要とする患者は,輸血が ていないが,いくつかの機序が考えられている.不全心 必要のない患者に比較して予後不良であることが知られ では心拍出量減少から腎血流が減少し,レニン・アンジ ている 462),463).患者背景をマッチングさせた場合,輸血 オテンシン系が亢進する.また交感神経活性も亢進し, した患者のほうが,輸血しない患者より短期予後が改善 腎血管収縮をきたし更に腎血流は低下する.このため腎 されている傾向を認めていたという報告もある 462)がそ 機能障害は進行し,循環血液量は増加し血液希釈の末, の差は統計学的に有意ではない.また,輸血を行った重 貧血を呈するようになる.また不全心からは TNF- αや 症な心疾患で,制限をかけた輸血(Hb < 7g/dL で輸血, IL-1 などの炎症性サイトカインが分泌され,これが腎臓 目標値 Hb7 ~ 9g/dL)と十分な輸血(Hb < 10g/dL で輸血, でのエリスロポエチン(EPO)産生や骨髄でのエリスロ 目標値 Hb 10 ~ 12g/dL)では予後の差がなかったとされ ポエチン活性を阻害し,赤血球産生低下および貧血が進 ている 464). 行するともいわれている 456).そのほか,心不全患者で 最近では,後ろ向き解析だが心不全患者の死亡に輸血 は鉄の吸収阻害による鉄欠乏性貧血も多い 457). が独立した因子で関与しているとの報告もあるため 463), 一方,貧血が心不全を悪化させることも知られている. 輸血に対しては慎重に判断すべきである.また,心不全 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン での不全心では体液貯留による希釈性影響による見かけ 上の貧血もあり,利尿剤投与のみで改善する場合もある である(レベル 2,グレード B). ◦経口または間歇的静脈内投与フロセミドは腎不全を合 ため,不必要な輸血を避ける注意が必要である. 併した心不全の治療に推奨され,また効果が不十分な 重症の貧血や,消化管出血などで急速に貧血が進行し 場合サイアザイドなどの併用も推奨される(レベル 2, た場合,早急な貧血の是正のため輸血を必要とする場合 グレード B). があるが,低左心機能患者で急速な輸血は容量負荷とな ◦大量の利尿剤投与は腎機能悪化させる可能性がある. りうっ血や肺水腫を助長する可能性があるため,血管内 ◦カルペリチドには腎髄質への血流を増加させる作用が 容量の評価を十分に行った上で,できる限り緩除に投与 あり,腎機能低下を伴う心不全症例での効果が期待さ する必要がある. れている(レベル 2,グレード B). 3 ◦腎機能低下で利尿が得られないと,静脈うっ血から腎 エリスロポエチン 機能を再増悪させ悪循環に陥るため,急性血液浄化が 1980 年代に遺伝子組み換えエリスロポエチンが開発 され輸血をせずに慢性腎臓病による貧血の治療を行うこ とが可能となった.2002 年 Silverberg らは貧血を合併し た心不全患者にエリスロポエチンを投与した無作為二重 盲検試験を行った.結果,コントロール群(Hb10.9 → 必要となる場合がある(4b,グレード C1). ◦高カリウム血症例での抗アルドステロン薬は中止すべ きである(レベル 3,グレード C2). 1 心不全と腎機能障害 10.8g/dL)の死亡率 25%に対して,エリスロポエチン製 心不全では,高血圧や糖尿病を合併した高齢者が多い 剤(epoetin alfa)と鉄剤の静注投与した治療群(Hb10.3 ため,腎機能が低下している場合が多い.腎機能障害は → 12.9g/dL)では 0%であったと発表した 465) .その後も 心不全を悪化させる一因であるだけでなく,心不全の予 慢性心不全患者を対象に epoetin alfa と鉄剤内服と葉酸 後を規定する独立した危険因子であると考えられてい 補充群とプラセボ群を比較し Hb,peak VO2 および QOL る 470),471).また,貧血との関連も前述したとおりである. 4 の改善が治療群で有意に良好との報告もされた 466) . 腎機能は通常,入院時の血清クレアチニン値で評価され 一方,エリスロポエチン製剤の有効性に疑問をとなえ るが,高齢者,特に筋肉量の少ない女性では,血清クレ る研究も発表されている.無作為化二重盲検プラセボ対 アチニン値の割に腎機能が低下している症例が少なくな 照試験により 9.0 < Hb < 12.0 g/dL の心不全患者に対し い.そのため入院時には,下記のような計算式や 24 時 てエリスロポエチン製剤(darbepoetin alfa:長時間作用 間蓄尿によるクレアチニンクリアランスなどを用いて, 型のエリスロポエチン)の有効性を検討したところ,プ 腎機能を評価すべきである. ラ セ ボ 群 に 比 し darbepoetin 群 で Hb は 有 意 に 増 加 し QOL も改善したが,運動時間,peak VO2,QOL,BNP 4 血清クレアチニンからの GFR 推算式 .加えて,darbepoetin と 推算糸球体濾過量(eGFR)= 194 ×血清クレアチニン値 鉄剤投与は placebo と比べて Hb 値は増加したが,運動 (mg/dL)- 1.094 ×年齢- 0.287(女性は,男性 eGFR × は両群に差を認めなかった 467) 時間,NYHA クラスおよび QOL などの改善は認めなか 0.739) った 468). このような結果をうけて,近年心不全にエリスロポエ Cockcroft の計算式(成人男性)472) チンを投与したランダム化比較試験 12 研究のメタ解析 クレアチニンクリアランス(mL/min)=〔(140 -年齢) が発表された.その結果,貧血を伴った心不全患者にエ ×体重(kg)〕/〔72 ×血清クレアチニン値(mg/dL)〕 (女 リスロポエチンを投与することにより,運動耐容能は向 性は上記の式より 15%減らす) 上し,症状が改善し,臨床転機を改善すると結論づけら れている 468). 6 腎機能障害 治療に関しては,心拍出量の低下に伴う腎前性の腎障 害であれば,減塩治療や水分制限などの入院安静のみで 血清クレアチニン値の低下が得られる場合がある.しか し腎実質性障害を合併した症例では腎機能の改善は期待 推奨文 できないばかりか,心不全の治療によりむしろ腎機能を ◦ ACE 阻害薬および ARB は長期的には腎保護的に作用 悪化させる可能性がある. するため腎不全を合併した心不全の治療に投与すべき カルペリチドはヒト心房性ナトリウム利尿ペプチドの 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 49 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) 薬理作用をもった心不全治療薬である.輸入細動脈の拡 不全関連の合併症を改善しないという報告されてい 張と輸出細動脈の収縮により糸球体濾過量(GFR)を増 る 476).慢性期に投与した場合の効果は不明なため,今 加させ,レニンの分泌抑制,集合管でのナトリウム再吸 後の研究結果が待たれる.初回投与時には血清ナトリウ 収,およびアンジオテンシンⅡにより刺激された近位尿 ム濃度が急激に上昇することがあり,神経障害(橋中心 細管でのナトリウム水再吸収を抑制し利尿効果を表 髄鞘崩壊症)を来す可能性がある.初回投与では入院下 す 473).心不全では心拍出量の低下に伴い GFR が低下し で投与を開始し,投与後 4 ~ 6 時間後,および 8 ~ 12 時 て腎髄質の血流が低下するが,カルペリチドには腎髄質 間後に血清ナトリウム濃度を測定することが推奨されて への血流を増加させる作用がある 473) .そのため腎臓が ACE 阻害薬やアルドステロン受容体拮抗薬は,腎機 心不全症例での効果が期待されている.しかしながら, 能が低下した症例でも長期的には腎保護的に作用すると 腎不全では内因性のナトリウム利尿ペプチドの血中濃度 考えられており,少量より慎重に投与すべきである.た が増加していること,およびカルペリチドの腎からのク だし,血清カリウム値,クレアチニン値の急激な上昇を リアランスも低下して 474) ことから,腎不全の程度によ っては,カルペリチドの点滴静注による血圧低下や血清 クレアチニン値の上昇に十分に留意して,極少量からの 使用(0.0125 ~ 0.025μg/kg/min または場合によっては 50 いる. 虚血に陥りにくいと考えられており,腎機能低下を伴う 認める症例もあるため,血液検査などを観察しながら, 徐々に増量する必要がある. 2 透析と持続濾過透析 それ以下)とすべきである. 心不全の急性期では,過剰な体液の貯留に伴う肺うっ ループ利尿薬は,肺水腫を伴う重症心不全の治療には 血,うっ血肝や浮腫が生じ,体液除去が求められる.し 必須の薬剤であるが,高容量利尿剤投与は腎機能を悪化 かし腎機能が低下し利尿が得られないと,さらなる静脈 させる可能性もあるため,使用する際には注意が必要で うっ血を来たし,腎機能を再増悪させる 477).このよう ある.効果が不十分な場合,サイアザイド系利尿薬と併 な悪循環を断ち切るために急性血液浄化が必要となる場 用することにより,利尿効果が増強する場合がある.ま 合がある. た,間歇的静脈内投与で効果がない場合には,フロセミ 心不全に対する急性血液浄化法の主な目的として, ドの持続点滴投与が有効な場合がある.フロセミドの使 (1)肺水腫の治療,(2)アシドーシスの改善,(3)電解質 用により貯留した体液が減少した際には,投与量を減量 異常の補正,(4)輸液スペースの確保,(5)体液性の介 する.長期間連用すると神経体液性因子を亢進させ低ナ 在物質(humoral mediator)の除去などが挙げられる. トリウム血症を来たすため注意が必要である.腎機能の 一般的な血液透析は間欠的に行われるが,心不全では 低下や利尿薬の長期連用により,心不全では血清ナトリ 血行動態への影響が少ない持続性静脈・静脈血液濾過や, ウム濃度が低下する例が多い.低ナトリウム血症は,心 簡便で濾過液を用いない体外限外濾過法(extracorporeal 不全の独立した危険因子であることが最近報告されてい ultrafiltration method:ECUM)が用いられていることが るが 475),心不全患者における低ナトリウム血症の補正 多い. は容易ではなく,治療に難渋する症例が多い. 急性心不全の状態では,IL-6 や TNF- αなどのサイト 近年,低ナトリウム血症をきたしにくいバソプレシン カインが増加しており,これらが心不全の予後を悪化さ V2 受容体拮抗薬が注目を集めている.利尿薬の多くは, せる一因であると報告されている 478).そのためサイト ナトリウムと水双方の排出を促すが,トルバプタンはバ カインなどを除去する機能を兼ね備えている持続的血液 ソプレシンと拮抗して水の再吸収を抑制し,水分のみを 濾過透析(continuous hemodiafiltration:CHDF)が用い 体外へ排出する為ナトリウムなどの電解質量に影響を与 られる場合もある 479).また最近の血液浄化装置は,ス えない.重症心不全では腎機能も低下して,ループ利尿 イッチ 1 つで血液透析(HD),血液濾過(HF),血液濾 薬やサイアザイド系利尿薬でも体液貯留のコントロール 過透析(HDF),ECUM などの切り替えが可能であり, 不良な患者に遭遇する.特に末期心不全患者では,右心 病態を見ながら適宜設定を変更することができるため, 不全症状が有意になり,腸管浮腫による利尿剤吸収が拒 血行動態の変化にも対応しやすい. まれ,さらなる体液貯留を引き起こす悪循環となる.こ 血管アクセスに関しては,急性期のみの血液浄化であ のような末期患者においての治療効果が期待されてい れば,頚静脈よりダブルルーメンカテーテルを挿入し確 る.ただし急性心不全患者に対しての検討では,プラセ 保する.腎不全の進行に伴い維持透析が必要とする場合, ボ群に比較してトルバプタン群で,1 年後の死亡率や心 外科的に動静脈シャントを造設する必要がある.しかし 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン 低左心機能患者では動静脈シャントが,心臓への容量負 荷となり血行動態を悪化させる場合があるので注意が必 ②抗凝固療法と抗血小板療法 要である.このような患者では,長期留置型血管内カテ 推奨文 ーテルや動脈表在化などを考慮する. ◦心房細動,あるいは血栓塞栓症の既往のある症例に対 7 するワルファリンの投与(レベル 1,グレード A) 血栓塞栓症 ◦心腔内壁在血栓を有する場合の抗凝固療法(レベル 6, グレード C1) 1 ◦心房細動を有するがワルファリン禁忌である場合のア 心不全と血栓塞栓症 スピリン,またはアスピリン禁忌症例に対するチクロ 収縮機能不全による心不全患者では,心機能低下に伴 う血流速度低下 480) ,凝固線溶系異常 481) ,血管壁性状の 変化 482)により血栓形成されやすい環境ができると考え られる.一般的に心不全症例における脳卒中の発症頻度 ピジン(クロピドグレル)の投与(レベル 6,グレー ド C1) ◦洞調律で血栓塞栓症の既往がない症例に対する抗血小 板薬および抗凝固療法(レベル 2,グレード C2) は,年間 1.3 ~ 3.5 %といわれている 483).しかし,洞調 律の左室駆出率低下症例での脳卒中の発症頻度は年間 1 %との報告がある 484) .抗凝固療法,抗血小板療法施行 心房細動などの併存疾患,血栓塞栓症の既往がある場 合は,抗凝固療法,抗血小板療法の適応が明らかである. 中には出血性合併症が起こる可能性があるため,血栓塞 一方,血栓塞栓症リスクが高くない群に対して薬物療法 栓症発症のリスクが高くない場合には,発症予防目的に による介入により脳卒中の発症頻度が十分抑制されるか 抗凝固療法,抗血小板療法を開始するかどうかを十分検 どうかは現在のところ強力なエビデンスがない.洞調律 討する必要がある. の心不全患者における抗凝固療法による血栓塞栓症予防 2 予防 ①ヘパリン 効果をみた無作為試験では WASH 試験 485),WATCH 試 験 486),HELAS 試験 487)があるが,いずれの試験におい ても対照群に対してワルファリン投与群が血栓塞栓症を 有意に予防できなかった.特に HELAS 試験は虚血性心 推奨文 筋症を除外して拡張型心筋症(左室駆出率< 35 %)症 ◦心房細動,あるいは血栓塞栓症の既往があるにもかか 例において検討しているが,約 2 年間の観察期間におい わらず抗凝固療法が十分でない症例に対するヘパリン てワルファリンによる抗凝固療法による血栓塞栓症予防 の使用(レベル 1,グレード A) 効果はなかったとしている. ◦長時間の床上安静を必要とする心不全急性期におけ 我が国で用いられる主な抗血小板薬は,アスピリン, る,深部静脈血栓症,肺血栓塞栓症を予防する目的で チクロピジン,クロピドグレル,シロスタゾールである のヘパリンの使用(レベル b,グレード C1) が,これまでの臨床研究では血栓塞栓症予防目的で有効 性を証明されたものはない 485)-487).抗凝固療法とアス 心房細動などの併存疾患,血栓塞栓症の既往がある場 ピリンの血栓塞栓症予防効果をみる前向き研究である 合は,抗凝固療法,抗血小板療法の適応が明らかであ WARCEF(Warfarin versus Aspirin in Reduced Cardiac る.抗凝固療法の適応があり,急速に抗凝固作用を得 Ejection Fraction)は現在進行中である 488).治療推奨レ たいときにヘパリンを用いて抗凝固療法を行う.急性 ベルは,「循環器疾患の診断と治療に関するガイドライ 心不全の急性期において,心腔内血栓形成の予防目的 ン 循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関する の抗凝固療法については明らかなエビデンスはない. ガイドライン(2009 年改訂版)」を参考とした. しかし心不全増悪急性期には長時間の床上安静が必要 となり,下肢静脈血栓,肺血栓塞栓症発症の可能性が 8 睡眠障害 ある.「循環器疾患の診断と治療に関するガイドライ ン 肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療, 推奨文 予防に関するガイドライン(2009 年改訂版)」を参考 ◦心不全患者に対する簡易モニターによる睡眠時呼吸障 にグレード C1 とした. 害のスクリーニング(レベル 6,グレード B) 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 51 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) 1 心不全と睡眠障害 睡眠呼吸障害は,無呼吸低呼吸指数(apnea hypopnea index: AHI)15 以上を睡眠呼吸障害とすると慢性心不全 患者に対する夜間在宅酸素療法(レベル 1,グレード B) ◦中等度以上(AHI ≧ 15)の CSR-CSA を有する心不全 患者に対する CPAP(レベル 3,グレード B) ◦中等度以上(AHI ≧ 15)の CSR-CSA を有する心不全 患者の約 50 %に認められる.睡眠呼吸障害には,呼吸 患者に対する二相性気道陽圧(bi-level PAP),順応性 運動は保たれているものの,軟口蓋から舌根の間の閉塞 自動制御換気(ASV)(レベル 4b,グレード C1) により鼻,口の気流が停止する閉塞性睡眠時無呼吸 (OSA)と,呼吸運動そのものが停止する中枢性睡眠時 OSA に対する治療は心不全の有無に関係なく確立さ 無呼吸(CSA)がある.また,心不全患者ではチェーン れている.上気道の閉塞を来たす機能的要因(肥満,飲 ス ト ー ク ス 呼 吸 を 伴 う 中 枢 性 無 呼 吸(Central sleep 酒,睡眠薬など),器質的要因の除去,持続陽圧呼吸 apnea with Cheyne-Stokes respiration: CSR-CSA)が出現 (continuous positive airway pressure: CPAP) で あ る. することが多い.OSA は 11 ~ 37 %,CSR-CSA は 29 ~ OSA を有する心不全患者において CPAP により,無呼吸 40%に認められる の改善,左室駆出率の改善が報告されている 492),493).た 489),490) .OSA と CSA は単独ではなく, 混在していることも少なくない.また OSA 治療中に だし,OSA を合併する心不全患者における CPAP の長期 CSA が出現するようになる病態(複合型睡眠時無呼吸) 予後に対する効果についての報告は十分ではない. もある. これに対し,CSR-CSA を有する心不全患者に対して OSA が心不全発症,病態の進行に関係する機序とし は,まず心不全に対する適切な薬物療法(β遮断薬, て,睡眠中に繰り返される低酸素血症と中途覚醒による ACE 阻害薬など)を行う.それにより血行動態,心機 夜間,日中の交感神経活性の亢進,血圧の上昇,肺血管 能が改善するのと平行して CSR-CSA の重症度も改善す 攣縮に伴う肺血管抵抗の増大,静脈還流の増大などが考 ることが多いが 494),495),それでもなお CSR-CSA の重症 えられる.OSA は他の危険因子と独立して心不全発症 度が十分(AHI 15 未満)に改善しない症例に対して酸 のリスクとなることが示されている.左室駆出率< 45 素療法,陽圧呼吸治療を検討する.陽圧呼吸治療のうち, %の心不全患者において,AHI 15 以上であることが未 強制換気によって無呼吸を改善する二相性気道陽圧(bi- 治療の OSA の独立した予後規定因子であった(平均観 level positive airway pressure: bi-level PAP),患者の呼吸 察期間 2.9 年)491). に同調して陽圧をかける順応性自動制御換気(adaptive 心不全患者において低酸素血症,交感神経緊張などに servo-ventilation: ASV)が CSR-CSA に関しては有効で より呼吸中枢の CO2 化学感受性が亢進し,また循環時間 あると考えられる.特に ASV は CPAP よりも忍容性が の延長(心拍出量の低下)により PaCO2 の呼吸中枢へ 高く,AHI の低下,左室駆出率の改善,QOL の改善が の伝達が遅れている.これらにより呼吸調節システムが みられたと報告されている 496),497).しかしながらこのよ 不安定化することが周期性呼吸(CSR-CSA)の原因と うな症例においても,ASV の長期予後に対する効果は 考えられている.このため,CSA の重症度は心不全の 現在のところ明らかではない.また CPAP に比して,bi- 重症度と相関し,心不全治療により CSA の重症度も変 level CPAP,ASV は費用がかかることもあり,CPAP に 化する.CSA では,OSA と異なり無呼吸中の胸腔内圧 対する忍容性がない例,CPAP では AHI が十分に改善し の過度の低下が生じないため前負荷,後負荷の増大を介 ない例で適応を検討するのが妥当であると考えられる. したポンプ機能の障害は生じにくい.しかし無呼吸によ OSA,CSR-CSA に対する治療の推奨レベルは「循環 る低酸素血症から引き起こされる交感神経活性の亢進が 器疾患の診断と治療に関するガイドライン 循環器疾患 起こり,慢性心不全の病態の増悪に関与すると考えられ における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライ るため,CSA の改善も心機能増悪の抑制に有用である ン」も参考とされたい. と考えられる. 2 治療 推奨文 ◦中等度以上(AHI ≧ 15)の OSA を有する心不全患者 に対する持続陽圧呼吸(CPAP) (レベル 3,グレード B) ◦中等度以上(AHI ≧ 15)の CSR-CSA を有する心不全 52 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 9 外科手術 1 左室縮小手術 左室部分切除術(Partial left ventriculectomy)は,末 期的心不全に対する外科的治療法として,ブラジルの 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン Batista が始めたもので,拡張した左室心筋の一部を tear プに接続する.この血液ポンプは駆動チューブにより駆 drop 型切除し,拡張した心臓のサイズを小さくするこ 動装置につながれるため,VAS 装着患者の活動は制限 とにより,心機能の回復を図る手術である 498) .適応は, 拡張末期径が 70mm 以上と著明な左室拡張と内科治療に されるが,リハビリも施行でき,長期の施行が可能で, 3 年以上の補助例もみられる.1 台の駆動装置で左心補 反応しない重症心不全の存在である.術後の左室形態を 助,右心補助のどちらかしかできず,両心補助の場合は, より生理的な回転楕円形に保つように工夫された septal 2 台の駆動装置が必要である.抗凝固療法は,外科的な anterior ventricular exclusion(SAVE)法 499)や左室壁を 出血のコントロール後,ヘパリンで行い,経口摂取可能 等の術 となってからは,PT-INR 値 3.0 ~ 4.0 を目標にワーファ 式も開発されている.ほとんどの症例で,僧帽弁形成術 リンを投与する.血栓形成の問題でやむを得ず 4.0 以上 を同時に施行される.その治療効果に関しては,疑問点 にせざるを得ない場合もあるが,脳出血などリスクが高 もあり,限られた症例に行うべきである.また,左心補 くなるので注意を要する.必要に応じ,抗血小板薬を併 助人工心臓(left ventricular assist system; LVAS)が装着 用する.なお,このニプロ社製 VAS は 30 日使用で製造 できる体制にある施設で行われることが望ましい(レベ 販売承認されており,それ以上の長期使用は病院および ル 6,グレード C2/D). 医師の責任で行われている. 切除せずに残すことを工夫した overlapping 法 2 500) 僧帽弁形成術 BVS5000 は,左心補助では右側左房脱血,上行大動 脈送血,右心補助では右房脱血,主肺動脈送血で,血液 本疾患の僧帽弁閉鎖不全症は左室のリモデリングによ ポンプを体から離れてベッドサイドに設置する.一台の る心拡大が原因であり,機能的なものである(functional 駆動装置で,両心補助が可能で,通常 2 週間程度の補助 MR).正常より小さいリングを用いた僧帽弁輪縫縮術 に用いられる.今後,同 Abiomed 社製 AB5000 が臨床 や後壁の拡大を縮小する乳頭筋接合術が術式として行わ 使用可能になる予定である. れる.上述の左室縮小手術と同時に施行されることもあ る.僧帽弁の逆流を止めることで,心不全症状が改善し, ②植込型補助人工心臓(Implantable VAS)353),501)-504) 左室機能障害の進行を防止することができる可能性はあ 長期(数か月以上)の使用を想定して開発が進められ るが,左心機能が高度に低下した症例では,LVAS を準 たシステムで,ポンプを体内に設置し,ドライブライン 備した状況での手術が望ましい(レベル 6,グレード を体外に導き,コントローラーとバッテリーに接続して C1). 使用する.在宅プログラムが可能で,体外設置型補助人 3 LVAS と心臓移植 工心臓と比べて,患者の QOL は極めて高いものとなる. 植込型補助人工心臓の実施基準を表 13 に示す. 補助人工心臓(ventricular assist system; VAS)は,内 現在,我が国で開発された植込型 LVAS であるサンメ 科的治療,IABP,PCPS による補助を行っても改善がみ デ ィ カ ル 社 製 の EVAHEART られなくなった時点で施行する.循環動態が破綻した状 DuraHeart 態での VAS の導入は予後不良であり,導入のタイミン に軸流ポンプを留置する Jarvik 2000 グを逃さないよう注意する必要がある. も 使 用 さ れ て い る 軸 流 ポ ン プ で あ る Thoratec 社 製 の ①体外設置型補助人工心臓(Paracorporeal VAS)353) 一時的使用を目的として開発された VAS で,我が国 501) とテルモ社製の 502) が臨床使用可能になり,今後,左室心尖部 503) ,世界でもっと HeartMate Ⅱ 504)が臨床使用可能になる予定である. ③心臓移植 505) で,保険適応となっている体外設置型補助人工心臓とし 適応基準は,心臓移植以外に有効な治療手段がなく, て, ニ プ ロ 社 製( 旧 東 洋 紡 製 ) の 国 循 型 VAS と 患者・家族が移植治療を理解し,免疫抑制療法など移植 Abiomed 社製 BVS 5000 がある. 後の治療を一生涯継続することができることである.日 国循型 VAS による左心補助の場合,左室心尖に逢着 したカフに脱血管を挿入し,送血管の人工血管を上行大 本循環器学会心臓移植委員会の心臓移植の適応 http:// plaza.umin.ac.jp/~hearttp/ に詳述されている. 動脈に喘側吻合する.右側左房から脱血も可能であるが, 患者が心臓移植を受けるためには,日本臓器移植ネッ 現在はほとんど用いられていない.また,右心補助では トワーク http://www.jotnw.or.jp/index.html に登録する必 右房脱血,主肺動脈送血となる.送脱血カニューラ他端 要がある.そのためには,施設内の心臓移植検討会と日 を肋骨弓下から体外へ導き,腹壁上に設置した血液ポン 本循環器学会心臓移植適応検討会との 2 段階審査にて, 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 53 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) 表 13 「植込型補助人工心臓」実施基準 [1. 適応基準] 対象 選択基準 除外基準 疾患・病態 心臓移植適応基準に準じた末期的重症心不 全で,対象となる基礎疾患は,拡張型およ び拡張相肥大型心筋症,虚血性心筋疾患, 弁膜症,先天性心疾患,心筋炎後心筋症な どが含まれる. 心機能 NYHA: クラスⅢ~Ⅳ(Ⅳの既往あり) ステージ D(重症の構造的疾患があり,最大限の内科 治療にもかかわらず,安静でも明らかな心 不全症状がある患者) 薬物治療 ジ キ タ リ ス・ 利 尿 薬・ACE 阻 害 薬・ARB・ 硝酸塩・β遮断剤などの最大限の治療が試 みられている 強心薬・補 ドブタミン・ドーパミン ・ エピネフリン・ノ 助循環 ルエピネフリン・PDE Ⅲ阻害薬などに依存, または IABP,体外設置型補助人工心臓など に依存 年齢 65 歳以下が望ましい(身体能力によっては 65 歳以上も考慮する) BSA システムにより個別に規定 血行動態 stage D, NYHA クラスⅣの既往 条件 他 の 治 療 で は 延 命 が 望 め ず, ま た 著 し く QOL が障害された患者で,治療に参加する ことで高い QOL が得られ,長期在宅治療が 行え,社会復帰が期待できる患者 治療の理解 補助人工心臓の限界や併発症を理解し,家 族の理解と支援が得られる 感染症 重症感染症 呼吸器疾患 重度の COPD 高度の肺高血圧症 30 日以内に発症した肺動脈塞栓症 循環器疾患 開心術後早期(2 週間程度) 治療不可能な腹部動脈瘤や重度の末梢血管 疾患 胸部大動脈瘤,心室瘤,心室中隔破裂 中等度以上の大動脈弁閉鎖不全症 胸部大動脈に重篤な石灰化 神経障害 重度の中枢神経障害 薬物中毒またはアルコール依存の既往 プロトコールに従えない,あるいは理解不 能と判断されるほどの精神神経障害 その他の 重度の肝臓疾患 臓器不全 重度の出血傾向,高度慢性腎不全,慢性腎 不全による透析症例,癌などの生命予後不 良な悪性疾患,膠原病などの全身性疾患, インスリン依存性重症糖尿病 妊娠 妊娠中 その他 著しい肥満,輸血拒否など施設内適応委員 会が不適当と判断した症例 的緊急度,待機期間が長い順,および,心臓の摘出から 移植までの時間が 4 時間以内で可能なことが考慮され, 選択される.医学的緊急度は(1)VAS を必要とする状態, (2)IABP を必要とする状態,(3)人工呼吸を必要とする 状態,もしくは, (4)ICU,CCU 等の重症室に収容され, かつ,カテコラミン等の強心薬の持続的な点滴投与が必 要な状態のステータス 1 が優先され,我が国ではそれ以 外のステータス 2 の緊急度で選択されることはほとんど ない.拡張型心筋症の病態は進行性であるので,このよ うな状況を踏まえ,可能な限り,患者の状態が安定して いる間に,心臓移植認定施設にコンサルトをすることが 望ましい. Ⅳ 付記 1 その他の心筋症 1 先天性心疾患に関連した心筋症 ①病態 近年先天性心疾患の救命率は著しく向上したが,先天 性心疾患の一部の重症例では,経過中もしくは手術後遠 隔期において慢性心不全から拡張型心筋症様の病態を呈 することがある.この項では,先天性心疾患に関連して 発症する二次性心筋障害の病態を,(1)左心収縮不全, (2)解剖学的右室(体心室)収縮不全, (3)体心室拡張 不全,(4)単心室循環における心不全(Fontan 手術後), に分けて記載する.詳細は,日本循環器学会「慢性心不 全治療ガイドライン(2010 年改訂版)」188),もしくは小 児期の心不全に関する欧米のガイドラインおよび総 説 506)-508)を参照されたい. ②診断 1)左室収縮不全 先天性心疾患における病態として,(1)左-右短絡疾 患や弁閉鎖不全による容量負荷,(2)大動脈狭窄や大動 54 心臓移植の適応決定後に,心臓移植認定施設の日本臓器 脈縮窄などによる圧負荷,(3)チアノーゼによる低酸素 移植ネットワーク連絡係を通してネットワークに登録し 血症,(4)以上の組み合わせによる心機能障害,が原因 てはじめて移植患者待機リストに載ることになる.心臓 となる.診断には,心電図,胸部レントゲン,断層心エ 移植レシピエントの選択基準は,ABO 式血液型の一致 コー,BNP や NT-proBNP などの心不全バイオマーカー あるいは適合,サイズ(体重差:- 20 ~+ 30%),医学 を中心とし(グレード A,レベル 5),年長児や成人では 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン 心臓核医学検査,心肺運動負荷検査などが行われる(グ レード B,レベル 5).心臓カテーテル検査は,心臓大血 管の構造異常や肺血管抵抗値を含む血行動態の正確な判 定が必要な症例,外科手術やカテーテル治療を前提とす 2 リウマチ性心筋障害 ①病態 る症例,心臓移植の適応判断が必要な症例,などを主な リウマチ熱は A 群溶血性連鎖球菌感染症(GAS)合 対象とし(グレード B,レベル 6),それ以外の症例では 併症で,心炎,多関節炎,小舞踏病,皮下結節,輪状紅 基本的に対象としない(グレード C,レベル 6). 斑を主症状とする(Jones 診断基準 518)).GAS 細胞壁の 2)右室(体心室)収縮不全 M 蛋白が心筋 myosin や弁基底膜 laminin と共通抗原性を 完全大血管転位における心房内血流転換手術 持つため,M 蛋白抗体が自己心筋細胞や弁組織に炎症 (Mustard,Senning 手術)後,もしくは修正大血管転位 を惹起する 519)-521).心臓病変は心筋障害,心内膜炎(弁 における心室中隔欠損閉鎖術(conventional repair)後 膜炎),心外膜炎に及ぶ.急性リウマチ熱では,間質血 では,構造的に脆弱な右心室が体心室として機能する. 管周囲に Aschoff 結節(fibrinoid 壊死を中心とした組織 このような血行動態では,三尖弁閉鎖不全や不整脈が合 球浸潤の肉芽腫)が心臓全層に見られ,弁尖や腱索には 併すると血行動態がさらに悪化し,術後遠隔期に右心(体 fibrin 疣贅が形成される 519),520).再発による炎症の増悪 心室)不全に陥りやすい.1)の検査に加えて,MRI 検 を繰り返すと,弁尖の破壊が生じて慢性リウマチ性心病 査による右心室容積および収縮能の計測,24 時間心電 変に移行する 521). 図,運動負荷心電図,また必要に応じて電気生理学的検 査を行い,右心房負荷や右心不全に伴い出現する不整脈 ②診断 の正確な診断を行う(グレード B,レベル 5). 急性リウマチ性心炎は GAS 感染 2 ~ 3 週間後に全身倦 3)左室(もしくは体心室である右室)拡張不全 怠,胸痛,頻脈などで発症し,急性炎症反応の持続,弁 左室収縮不全の際の検査に加えて,左房径の計測,ド 膜症による心雑音や心音異常,心電図で PR 時間延長や ップラー法による左室流入血流速波形,肺静脈血流速波 ST 変化,心エコーによる僧帽弁 / 大動脈弁閉鎖不全で診 形,組織ドップラー法による僧帽弁輪部運動速波形など 断される 519),520). 拡張機能の検査を加える(グレード B,レベル 5). 4)単心室循環における心不全(Fontan 手術後) ③病態と治療 一般に単心室疾患における Fontan 手術後の患者では, 急性期には GAS 感受性の抗生物質(PCG や AMPC) 体循環と肺循環が直列関係となり,肺循環は中心静脈圧 を十分に投与するとともに,心炎合併例ではアスピリン および吸気時の胸腔陰圧により維持される.特に内臓錯 とステロイド剤の投与を行い,炎症所見が改善すれば 2 位症候群に伴った右室型単心室では,房室弁閉鎖不全, ~ 3 週間後より漸減する 519).再発予防として日本では 心房性不整脈,房室伝導障害,体肺側副動脈,静脈短絡 ペニシリン G を 20 ~ 40 万単位 1 日 1 回内服が推奨され 血管,血栓塞栓症,胸水貯留,うっ血肝,肝硬変,糖代 ている 522).弁膜症を残した症例では 10 年,40 歳まで, 謝異常,蛋白漏出性胃腸症,感染性心内膜炎などを合併 もしくは生涯内服が必要となる 523).慢性リウマチ性心 しやすく,先に述べた 1)~ 3)の検査に加えて,血液凝 臓病の治療は成人の慢性心不全治療に準ずる 519),520). 固機能検査,肝臓超音波もしくは CT 検査,肺血流シン チなどを定期的に行う(グレード B,クラス 5).心機能 の低下した症例,中心静脈圧の高い症例,有意な房室弁 閉鎖不全を伴う症例,多数の側副動脈や静脈短絡を伴う 3 心内膜線維弾性症 ①病態 症例などでは,心臓カテーテル検査や造影検査を含む定 心室(および心房)の心内膜の弾性線維および膠原線 期的な心機能精査が必要になる(グレード B,クラス 6). 維の増成による心内膜の肥厚により心機能障害を呈する ③病態と治療 表 14 を参照 188),506)-517) 疾患 524)-526).原発性と二次性(重症先天性大動脈弁狭窄, 大動脈縮窄,左心低形成,左冠動脈肺動脈起始(BWG 症候群)など)526),527)がある.成因には胎生期のウイル ス感染,特に Mumps ウイルスとの関連 528)が示唆され, ワクチン接種の影響で近年発症が激減した 526).母親の SSA/SSB 抗体陽性も原因となる 526).本疾患は乳児期よ 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 55 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) 表 14 先天性心疾患に関連した心疾患の治療(エビデンスレベル 4a-6) 先天性心疾患病態 グレード A グレード B ACE 阻 害 薬,ARB β遮断薬(Stage C 以上に少量 (Stage B 以上に少量 より開始,血圧低下および心 構造異常 より開始,血圧低下 不全の増悪に注意しながら漸 を伴わな に注意し漸増) , 増) い左心不 PDE Ⅲ阻害薬(Stage 利尿薬,抗アルドステロン薬 全(主に C 以上) (Stage B も し く は C 以 上 に う 術後) っ血症状の改善を目的に使用) 左室収縮不全 2心 室 循 環におけ る慢性心 不全 容量負荷 を伴う左 心不全 圧負荷を 伴う左心 不全 構造異常を伴 わない左室拡 張不全(主に 術後) 解剖学的右心 (体心室)収 縮不全 単心室循環における慢 性心不全(Fontan 術後) グレード C1 グレード C2 ~ D ジギタリス(Stage C 以上に低 用量を使用.血中濃度をモニ ターし,徐脈や不整脈の出現 に注意) 経口強心薬(Stage C 以上で, カテコラミンからの離脱時や β遮断薬導入時などで使用を 検討) 利尿薬,抗アルドス ACE 阻 害 薬,ARB(Stage B 以 ジギタリス(Stage C 以上に低 テ ロ ン 薬(Stage B 上に少量より開始,血圧低下 用量を使用.血中濃度をモニ に注意し漸増),PDE Ⅲ阻害薬 ターし,徐脈や不整脈の出現 以上) (Stage C 以上) に注意) 経口強心薬(Stage C 以上で, 外科治療,カテーテ カテコラミンからの離脱時や ル治療(血行動態の β遮断薬導入時などで使用を 異常を伴い,治療適 検討) 応のある症例に対し て) 外科治療,カテーテ β遮断薬(左室流出路狭窄症 ジ ギ タ リ ス, 経 ル治療(血行動態の 例に対して) 口 強 心 薬,PDE 異常を伴い,治療適 利尿剤,抗アルドステロン薬 Ⅲ阻害薬は左室 応のある症例に対し (肺うっ血を伴う症例に使用) 流出路狭窄例に て) は使用しない 利尿薬,抗アルドス ACE 阻 害 薬,ARB(Stage B 以 抗血小板薬もしくは抗凝固薬 拡 張 不 全 に お け テ ロ ン 薬(Stage B 上に少量より開始,血圧低下 (心房拡大の著しい症例におけ る β 遮 断 薬 お よ び Ca2+ 拮抗薬の 以上) に注意し漸増),PDE Ⅲ阻害薬 る血栓形成予防に使用) 効果は十分明ら (Stage C 以上) かでない 外科治療,カテーテ ACE 阻 害 薬,ARB(Stage B 以 ジギタリス(Stage C 以上に低 ル治療(血行動態の 上に少量より開始,血圧低下 用量を使用.血中濃度をモニ 異常を伴い,治療適応 に注意し漸増),PDE Ⅲ阻害薬 ターし,徐脈や不整脈の出現 のある症例に対して)(Stage C 以上) に注意) 抗不整脈薬,カテー 利尿薬,抗アルドステロン薬 β遮断薬(Stage C 以上に少量 テ ル ア ブ レ ー シ ョ (Stage B も し く は C 以 上 に, より開始し,血圧低下および ン,ペースメーカー うっ血症状の改善を目的に使 心不全の増悪に注意しながら 植え込み(血行動態 用) 漸増.洞機能不全や房室伝導 に悪影響を及ぼす重 障害の患者では徐脈に注意) 篤な不整脈の合併例 経口強心薬(Stage C 以上で, に対して) カテコラミンからの離脱時や β遮断薬導入時などで使用を 検討) 外科治療,カテーテ ACE 阻 害 薬,ARB(Stage B 以 β遮断薬(Stage C 以上に少量 末梢血管収縮作用 ル治療(重篤な血行 上に少量より開始,血圧低下 より開始し,血圧低下および心 の強い強心薬の使 動態の異常を伴い, に注意して漸増.エビデンス 不全の増悪に注意しながら漸 用は,血管抵抗を 治療適応のある症例 に乏しいが,心機能の改善が 増.洞機能不全や房室伝導障 増大させ,Fontan に対して,心機能に 期 待 で き る ),PDE Ⅲ 阻 害 薬 害の患者では徐脈に注意.エ 循環に悪影響を及 十分に留意して実施 (Stage C 以上) ビデンスに乏しいが,症例によ ぼ す 可 能 性 が あ する) り心機能の改善が期待できる) り,注意を要する. 抗不整脈薬,カテー 利尿薬,抗アルドステロン薬 経口強心薬(Stage C 以上で, 陽圧人工換気は, テ ル ア ブ レ ー シ ョ (Stage C 以上にうっ血症状の カテコラミンからの離脱時や 肺 血 管 抵 抗 上 昇 ン,ペースメーカー 改善を目的に使用.ループ利 β遮断薬導入時などで使用を さ せ て Fontan 循 環に悪影響を及 植え込み(血行動態 尿薬の長期使用は RAS 系を賦 検討) に悪影響を及ぼす重 活化させる可能性があり,注 抗血小板薬および抗凝固薬(特 ぼ す 可 能 性 が あ 篤な不整脈の合併例 意する) に心機能の低下した Fontan 循 り, 短 期 間 に 留 に対して,心機能に 環において,血栓形成の予防 める努力をする. 十分に留意して実施 に使用) する) 注:1)小児ではランダム化比較試験は極めて少ないため,表のエビデンスレベルは記述研究を中心としたレベル 4a から専門家の 意見によるレベル 6 に基づく.2)抗不整脈薬,カテーテルアブレーション,心臓再同期療法(CRT)の適応は,日本循環器学会「慢 」およびその他のガイドラインや文献を参考にし,各々の患者の血行動態を考慮して判断 性心不全治療ガイドライン(2010 改訂版) するのが望ましい.3)先天性心疾患における心臓移植の適応は,日本小児循環器学会「小児心臓移植の適応判定ガイダンス」を参 考にされたい. 56 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン り重度の心不全を来たし, 通常予後は不良である524)-526). い.またステロイド長期投与,長期罹患期間が動脈硬化 から心筋梗塞発症の危険因子であった.上記の心筋炎, ②診断 弁膜症,心筋梗塞から拡張型心筋症様の病態を呈するこ 胸部 X 線での心拡大,心電図では左室肥大と左胸部誘 とが報告されている 530)-532).抗リン脂質抗体症候群は 導での T 波陰転,心エコー検査で左室収縮能の著名な低 20 %以上に合併し,血栓傾向から,肺高血圧,流産の 下と心内膜輝度の上昇が認められる.拡張型心筋症(心 原因となる.また微小冠動脈塞栓から拡張型心筋症様の 筋生検で診断),BWG 症候群(断層心エコーもしくは 病態を呈したとの報告もある 533). 冠動脈造影で左冠動脈の起始を確認する),心筋緻密化 SSc は皮膚や内臓のびまん性血管病変と線維化を特徴 障害などとの鑑別が必要である 524),526). とする結合織病である.しばしば心病変を合併し,剖検 症例において約 80%に認めたとの報告もある.SSc の心 ③病態と治療 病変はたいてい無症状であるが臨床的症状が出現した場 他の拡張型心筋症に準じ,利尿剤および ACE 阻害剤 合(20 ~ 30 %未満)は予後不良である.心病変として やβ遮断剤などの抗心不全療法を血圧低下に注意しなが は心嚢水貯留,不整脈,伝導障害,弁膜症,虚血,心肥 ら慎重に投与する.内科的治療に反応しない重症例は心 大などが認められる.剖検心では斑状の線維化,収縮帯 臓移植の適応となる 4 524),526),529) . 膠原病その他 の壊死が両心室に認められる.これらは主要冠動脈の支 配領域と一致しない.冠動脈造影にて主要分枝に狭窄が 認められない場合でも心筋血流シンチグラフィにて固定 膠原病は結合組織の炎症,変性を特徴とする全身性慢 血流欠損を認め,また病理組織にて微小冠動脈の内膜肥 性炎症性疾患である.その機序としては自己免疫機序が 厚を認めることから,微小冠血管攣縮による局所的な虚 関与している.膠原病はしばしば臓器障害を来たし,心 血の繰り返し(cardiac Raynaud`s phenomenon)が心筋 筋障害が進行した場合には拡張型心筋症様の病態を呈す 線維化を来たし,結果的に不可逆性の心筋障害の原因と ることがある.以下全身性エリテマトーデス(systemic なると考えられている.心筋の血流障害から左室の収縮 lupus erythematosus; SLE), 強 皮 症(systemic sclerosis; 能,拡張能だけでなく,右室も障害される.負荷心筋血 SSc), 多 発 性 筋 炎 / 皮 膚 筋 炎(polymyositis/ 流シンチグラフィは早期診断に有用とされている.治療 dermatomyositis; PM/DM), 結 節 性 多 発 動 脈 炎 としては Ca 拮抗薬,ACE 阻害薬等の血管拡張薬が挙げ (polyarteritis nodosa; PAN),Churg-Strauss 症候群(CSS) られる.心臓超音波の組織ドプラ像や MRI を用いた検 および Marfan 症候群(MFS)に関して概説する. 討では心筋の血流障害だけでなく機能不全も改善したと SLE は血管壁,心筋,心外膜への免疫複合体と抗核抗 の報告がある.またプロスタグランジン製剤の有用性を 体の沈着を特徴とした自己免疫疾患である.心病変は 示唆する報告もある 534)-537). 50 %以上に合併すると報告されている.腎炎の合併が PM/DM は横紋筋の全身性炎症性疾患で特に近位筋が ない SLE では心病変が主要な死因である.心外膜炎が 障害される.骨格筋だけでなく心筋も障害され心不全を 最も頻度が高い(11 ~ 54%).SLE に合併する特徴的な 発症することがあるが,重症化するのはまれである.心 心筋病変は心筋炎である.無症状のことが多く臨床的に 病変を合併すると予後不良である.伝導障害,動脈硬化, 心筋炎と診断されることはまれである(10%).過去の 冠攣縮性狭心症,ステロイド合併症,高血圧,心筋炎か 剖検例の検討では 57 %と報告されており,ステロイド ら心不全を発症する.病理では心筋線維化,炎症性心筋 治療の導入にて減少したと考えられている.免疫蛍光検 炎,血管炎を認める.治療としてはステロイド,免疫抑 査で剖検心の冠動脈壁や血管周囲組織に免疫複合体や補 制剤が推奨される.診断と治療の効果判定のために心筋 体の沈着を認め,これらが心筋障害の原因であると考え 生検が有用である 538),539). られている.心筋生検では間質のリンパ球浸潤,斑状の PAN は全身の中等大の動脈の系統的な壊死血管炎で 線維化,心筋細胞壊死を認める.MRI,Ga シンチグラ ある.心外膜下の微小冠動脈病変が認められる.その結 フィは心筋における炎症の診断に有用である.心筋炎の 果,うっ血性心不全,心筋梗塞,心筋炎,心膜炎が発症 治療には高用量のステロイドが推奨されている.弁膜炎 する 539),540). から大動脈弁閉鎖不全,僧帽弁閉鎖不全も報告されてい CSS はアレルギー性肉芽腫性血管炎とも呼ばれ,好酸 る.冠動脈病変は 6 ~ 10%に合併する.特に疾患活動性 球増加,気管支喘息,壊死性肉芽腫性血管炎による多発 の高い若年者で血管炎から心筋梗塞発症のリスクが高 神経炎を特徴とする疾患である.心外膜炎,心筋炎,冠 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 57 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) 動脈炎などの心病変は 15 ~ 55%に合併し主要な死因で 度であることから,和温療法は心臓に対して負荷のない, ある.うっ血性心不全は 15 ~ 30%に発症する.好酸球 むしろ減負荷治療法である 547).また,和温療法前後に の直接浸潤,肉芽腫浸潤,冠動脈炎が心筋炎を来たしう 体重を測定し,体重差を発汗量とし,それに見合った量 っ血性心不全の原因となる.ステロイド,免疫抑制剤は (約 150 ~ 300 mL 程度)の飲水をすることで,脱水の予 病初期には有効である 540),541). 防に努める. MFS は骨格筋,眼球,心血管病変を合併する結合織 和温療法の心不全に対する急性効果として,温熱性血 病で,fibrillin 1(FBN1)を原因遺伝子とした常染色体 管拡張作用により心臓に対する前・後負荷が軽減し,心 優性遺伝を呈する.心血管病変をしばしば合併し,主要 拍出量が増加する.さらに,肺血管および全身静脈の拡 な死因である.重度の大動脈弁閉鎖不全,僧帽弁閉鎖不 張に伴う前負荷の軽減により,僧帽弁逆流の減少および 全を合併した場合には左室の拡大,収縮不全を認める. 肺動脈楔入圧の減少がもたらされる 547). しかしながら非常にまれではあるが心筋障害のみを認め 和温療法の心不全に対する慢性効果として,心機能・ ることがある 542).心筋内の FBN1 の障害,大動脈壁の 血管内皮機能および自律神経機能の有意な改善,心不全 スティフネスの上昇による後負荷増大が原因と考えられ 症状の軽減,酸化ストレスや脳性ナトリウム利尿ペプチ ている.最近の MRI を用いた報告では 25 %に左室収縮 ド(BNP)の有意な減少が認められる 547)-552).また,心 不全を認めたとされている.また左室拡大,右室機能障 室性不整脈は2週間の和温療法により有意に減少す .これらの心筋障害の大部分は軽度であ る 553).退院後も外来で週 2 回程度,和温療法を継続す り拡張型心筋症の基準は満たすことはまれであり,無症 ることにより,心不全患者の死亡や心不全による再入院 害も認める 543) 状であることが多い 544) . を有意に減らし,予後を改善させる 554).前向きの多施 以上,結合織病では原疾患により一次性に心筋障害を 設共同研究により,和温療法の心不全患者に対する有用 来たすもの,二次性に心筋障害を来たすものがあり,進 性と安全性が確認された 555)(図 16). 行した場合には拡張型心筋症様の病態を呈すると考えら れる.心筋症を合併した膠原病患者[SSc,SLE,分類 図 16 和温療法(4 週間)の慢性効果 (多施設共同研究の結果) 不能結合織病(undifferentiated connective tissue disease, UCTD)]と特発性拡張型心筋症の間で原疾患の差異と 血漿 BNP 左房径 予後の違いを比較検討したところ,特発性拡張型心筋症 p<0.0001 p<0.05 と比べて UCTD は有意に予後不良,また SSc は予後不良 (pg/dL) の傾向を示し,SLE は予後不変であったとの報告がある. 1000 原疾患別に合併心筋症の予後が異なると考えられる 545). 800 近年の治療の進歩にかかわらず,心筋症を有する膠原病 600 患者の予後は不良である.心筋障害による心不全が初発 症状である場合もあり,拡張型心筋症の原疾患の鑑別疾 患として膠原病は重要である.現時点では膠原病と心筋 1 最新心不全治療の展望 40 400 200 症に関しては報告が少なく,さらなる検討が望まれる. 2 (mm) 45 和温療法 和温療法 前 後 35 和温療法 和温療法 前 後 左室拡張末期径 (mm) 65 p<0.0001 左室駆出率 (%) 40 p<0.0001 和温療法 和温療法は,乾式遠赤外線均等低温サウナ装置を用い 60 35 55 30 た心不全に対する非薬物治療である.その方法は,60 ℃ の均等乾式サウナ浴を 15 分間施行した後,出浴後 30 分間の安静保温を行う 546).加温により,患者の深部体 温は約 1.0℃上昇し,出浴後の安静保温により温熱効果 が持続する.さらに,その間の心拍数の増加や体血圧の 変化はわずかであり,酸素消費量の変化は 0.3 METs 程 58 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 50 和温療法 和温療法 前 後 25 和温療法 和温療法 前 後 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン 和温療法による慢性効果発現の機序の 1 つとして,血 いることから,単純に本自己抗体の除去が効果の発現に 管内皮における一酸化窒素合成酵素(eNOS)の発現亢 主たる意義を有すると信じられていた.しかしながら, 進を介した血管内皮機能改善効果が挙げられる 556) . この固定概念を覆すいくつかのデータが報告されつつあ ただし,和温療法は,急性効果として心拍出量を有意 る.吸着カラムの抽出液を用いて同自己抗体の有無を検 に増加させるため,高度の大動脈弁狭窄症や閉塞性肥大 討すると,本自己抗体陽性患者と同様に陰性患者におい 型心筋症の重症例に対しては慎重に施行すべきである. ても免疫吸着療法による循環動態と心機能の改善が得ら 感染症がコントロールできていない患者や高熱患者には れることがわかった.本治療法終了後の吸着カラム抽出 禁忌である. 液から IgG 分画を精製し,成熟ラット心筋細胞に添加す ると,細胞収縮は低下し,カルシウム・トランジエント は減弱した 565).このことは,β 1 受容体抗体はアゴニ 心不全に対する非薬物治療としての和温療法: (エビデンスレベル:3,推奨グレード:B) 2 スト様作用を有することと矛盾する結果である.免疫吸 着によりβ 1 受容体抗体が除去されてはいるが,実は混 免疫吸着療法 在する何らかの自己抗体が治療効果の鍵を握っている可 拡張型心筋症の成因の 1 つとして,自己免疫機序が古 能性も考えられる.Staudt らはこのような未同定の抗体 くから指摘されている.イムノブロット法,蛍光免疫染 を“心抑制性抗体”とし,本治療法の効果を予測する上 色法,ELISA 法などを駆使すると,拡張型心筋症患者 で重要な意義を有するとしている 566). の 85%に何らかの抗心筋自己抗体が検出される 海外における免疫吸着にはプロテイン A カラムと抗 557),558) . 本自己抗体のうち少なくともいくつかは病態生理学的意 IgG カラムが主に使われている.プロテイン A は IgG サ 義を持ち,その病態の増悪因子になることが明らかにさ ブクラス 1,2,4 に親和性が強いが,クラス 3 には親和 れてきた 12)-14),17).このような抗心筋自己抗体を除去す 性は低い.プロテイン A カラムを用いた 5 日間連続の吸 る方法が免疫吸着療法である. 着療法では,IgG 全体では 95 %の除去率であったが, 本治療法は拡張型心筋症による難治性心不全例を対象 IgG3 に限ると除去率は 61%であった.IgG3 はウイルス に,1996 年以降ドイツを中心に臨床応用が始まった. 抗原の中和,抗体による細胞傷害,補体の活性化など免 小規模ながら無作為割り付け比較試験も行われ,その効 疫反応において中心的役割を担い,抗ミオシン抗体など 果が検証されてきた.1 週間に 4 ~ 5 回連日の免疫吸着 本治療の標的となる重要な自己抗体がこのサブクラスに 療法あるいは 4 か月間にかけて反復する方法により,概 属することが知られている.海外での成績においても, ね心機能・血行動態が改善し,血中のβ 1 アドレナリン IgG3 に属する抗体の除去が治療効果の鍵を握ることが 受容体に対する抗体価は低下するとの結果が得られ 明らかにされている 567).我が国においては IgG3 に選択 た 559)-562). 性の高いトリプトファン・カラムの使用が可能である. 我が国では,2006 年から重症拡張型心筋症患者を対 本カラムは抗 IgG カラムのように抗原性に乏しく,安全 象とする免疫吸着療法の臨床応用が始まった.16 例に 性に富む.IgG の低下の程度が少なく済むので,終了後 施行したパイロット試験の結果では,血漿 BNP 濃度は の免疫グロブリンの補充も不要である.現在,5 回の吸 752 ± 156 pg/mL から 432 ± 96 pg/mL に低下し,6 分間 着と 10 回の吸着の無作為割り付け比較多施設共同臨床 歩行距離は延長した.左室駆出率は 3 か月後に有意に増 試験(Randomized, Self- and Parallel Group-Comparative 加した.本治療施行前後において,血圧低下,ショック, Trial using Immunoadsorption Plasma-apheresis of Dilated 出血,感染など重篤な有害事象を認めなかった 563),564). Cardiomyopathy; RESCUE-DCM; UMIN #000003106) 初期の臨床成績では心機能・血行動態の改善とともに が進行中である. β 1 アドレナリン受容体に対する自己抗体価が低下して 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 59 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告) 文 献 1. 厚生労働省難治性疾患克服事業 特発性心筋症調査研究 班.心筋症,診断の手引きとその解説.北畠顕他編.かり ん舎,札幌 2005. 2. McKenna WJ, et al. Report of the 1995 World Health Organization/International Society and Federation of Cardiology task force on the definition and classification of cardiomyopathies. Circulation 1996; 93: 841. 3. M a r o n B J , e t a l . C o n t e m p o r a r y d e f i n i t i o n s a n d classification of the cardiomyopathies. Circulation 2006; 113: 1807-1816. 4. Elliot P, et al. Classification of the cardiomyopathies: a position from the european society of cardiology working group on myocardial and pericardial diseases. Eur Heart J 2008; 29: 270-276. 5. Ng R, Better N, Green MD. Anticancer agent and cardiotoxicity. Semin Oncol 2006; 33: 2-14. 6. Bowles NE, Ni J, Kearney DL, et al. 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