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2.市場実態 (1) 消費動向

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2.市場実態 (1) 消費動向
2.市場実態
(1) 消費動向
スペインは欧州最大の水産物市場の一つであり、水産物の消費に関しては長い歴史を
有する。消費者は水産物の選択・調理法などに関しての知識に富んでおり、冷凍ものよ
りも、生鮮水産物が好まれる傾向にある。地方ごとに独特の食文化を有しており、水産
物に関しては、アンダルシア、マドリッド、バスク、ガリシア、カタロニアといった地
域で特に好まれる傾向にある。
スペインにおける1人当り水産物消費量は年間 46 キロで、ポルトガルに次ぎ、欧州
では最も多い国の1つである。水産物は、スペインで消費されるタンパク質の 11.5%を
占める。消費量は近年増加傾向を続けており、1996~2002 年間の増加率 26%、2002
~2006 年間の増加率 24%となっている。この拡大の主因は付加価値産品(冷凍、燻製、
缶詰、外食等)の販売増加が大きく寄与している。また、甲殻類・貝類への需要が増加
傾向にあり、一般の生鮮魚類は概ね伸びが鈍っている。
スペインにおける食品市場全体は消費者価格で約 780 億ユーロ(12 兆 6 千億円)で
あり、うち約 13%、103 億ユーロ(1 兆 7 千億円)が水産物に費やされる。消費チャネ
ルは以下のとおりであり、小売部門を通じての家庭内消費が 77%、フードサービス等
を通ずる形態が 23%となっている。家庭内消費が、総消費の 46%である英国に較べ、
スペインでは小売分野が極めて重要である。
表1
水産物消費チャネル(2005 年)
金額
百万€
量
比率
百万 kg
比率
家庭内消費
7,922
77%
1,219
78%
フードサービス
2,411
23%
354
22%
10,332
100%
1,572
100%
計
出典:MAPA, Panel de Consumo Alimentario
消費者サーベイによると、水産物の購入頻度は週に 2、3 回が最も多く 40%、週に 1
回がそれについで 37%、となっており、これらの層で、約 8 割を占める。
89
表2
水産物の購入頻度
2005 年
毎日
3% 月に 1 回
4%
週に2,3回
40% 2,3ヶ月に 1 回
4%
週に1回
37% ほとんど、又は全く買わない
2%
2,3週間に 1 回
11%
総
計
100%
出典:MAPA, Panel de Consumo Alimentario
消費者は概して価格に敏感であり、スペインの水産物価格は概ねEUの最下限で、他
の欧州諸国と対比すると 10%程度下回る水準にある。一方、消費者は鮮度と味覚の差
異はよく理解しており、同じ品目でも鮮度と質で顕著な価格差がある。裕福な人々は、
より良い水産物には喜んで多くを支払い、これら良質の水産物を供給する専門の小売業
者も存在する。これは英国市場と比較して特徴的である。
全体に冷凍または調理済のものより生鮮魚が好まれる傾向にある。しかし近年、冷凍
魚が急速に拡大しており、1996~2002 年間には 36%伸張した。一方、その間の生鮮魚
の伸びは 17%にとどまっている。小売分野での生鮮ものも、実際は解凍された冷凍魚
といったケースもあると言われる。
また、上記のとおり、フードサービス分野(レストラン、バー、ホテル等)のウェイ
トは比較的小さいが、近年拡大傾向にあり、1995~2005 年の間に、水産物総消費の 16%
から 23%%に増加している。
これらの冷凍品、フードサービスの拡大は、女性の社会進出等による生活習慣の変化
が大きく影響しているものといえる。一方、伝統的な食習慣も根強く残っており、水産
物消費は季節的で、夏期には低下し 10~12 月期にピークとなり、月別には 12 月が最
大となる。これは復活祭、クリスマス時期に魚を食べるというカソリックの伝統を反映
したものである。
総じて、スペインの食品消費のスタイルは保守的だが、この 10 年で変化しつつある。
水産物についても、インタビューを受けた多くの人が、スペインの消費が以前より新し
いものに開かれてきた、との印象をもっている。
水産物の内訳をみると、魚が 70%を占め、甲殻類と軟体動物(貝類等)が 30%とな
っている。生鮮水産物は販売の 53%を占めて最もポピュラーであり、冷凍 24%、缶詰
13%等であるが、冷凍と缶詰の伸びは生鮮水産物より高い。
90
表3
水産物消費の内訳(量ベース)
魚
甲殻類・貝類
計
生
鮮
45%
18%
53%
冷
凍
12%
12%
24%
缶
詰
13%
-
13%
総
計
70%
30%
100%
出典:MAPA, Panel de Consumo Alimentario
スペインで消費される水産物は約 200 品目あり、主なものは以下のとおりである。魚
の上位3品目が水産物消費の 33%を占めるが、極めて多様な水産物が消費されている。
・ メルルーサ
15%
・サケ
3%
・ イワシ
10%
・タラ
2%
・ マグロ
9%
・マス
2%
・ ソール(カレイ)3%
最も急成長しているのはメルルーサ(冷凍)と缶詰のマグロである。
表4
主な魚の消費形態
生
鮮
冷
凍
缶
詰
メルルーサ
21%
47%
Na
イワシ/アンチョビー
21%
Na
6%
マグロ
4%
Na
53%
マス
4%
Na
Na
その他
50%
53%
41%
合計
100%
100%
100%
出典:MAPA, Panel de Consumo Alimentario
消費される生鮮魚の約 80%は小売チャネルを通じて購入され、家庭で下拵えされ、
消費される。冷凍魚の場合は 48%である。
近年、冷凍水産物はキーとなる成長カテゴリーであり、将来的にも成長が見込まれて
いる。消費者はその簡便さを重視し、他のものより「健康的」とみなすようになっている。
ホテルやレストランは、これら産品の重要なユーザーであり、自らのニーズ(サイズ、
品質、パッキング等)に適合するものを要求するようになっている。このチャネルは、
冷凍水産物の生産者と流通業者にとって、将来キーとなるクライアントである。
91
スペインは、これらの産品について、海外諸国への依存を強めつつあり、スペインの
会社は自らの競争力を維持し、自らの構造を再編するための新投資をしつつある。近年
の業界における動き(海外の会社との合併、吸収、パートナーシップ等)は、これらが
発展しつつある市場であり、生産者と流通業者が、より競争力をつけるための位置を確
保しようとしていることを物語っている。
冷凍水産物加工業者は、その産品を①簡便性の強調、②健康に良いことの強調、とい
う二つの手段で促進しようとしている。スペイン最大の水産加工会社 PESCANOVA は
広報キャンペーンを展開し、メルルーサを「オメガ3」(不飽和脂肪酸の一種)の供給
源として宣伝し、また健康によいからと水産物の摂取を促進するレシピを提供している。
(2) 生産動向
スペインは欧州水産物の主要プレイヤーであり、北欧諸国に次ぐ主要生産国である。
かつ輸出入も多い。2006 年の生産高等は以下のとおりである。
・ 年間水産物生産高
1,397 千トン(活魚重量)
・ 年間輸入量
1,818 千トン(活魚重量)
・ 年間輸出量
1,128 千トン(活魚重量)
・ 年間総供給量
1,840 千トン(活魚重量)
2006 年漁獲量は世界の 0.85%を占め、世界第 25 位である。養殖量は世界の約 0.8%
を占め、世界第 15 位となっている。スペインの水産業は 2005 年で 39,595 人を雇用す
る。
カナリア諸島を含む主要漁場は、ガリシア、パバスコ、アンダルシアである。ガリシ
ア最大の漁港はビガで、魚 37 百万キロ、約 100 百万ユーロの水揚げを行っている。
主要な水産物漁獲の内訳をみると(2004 年)以下のとおりである。
カツオ
93千トン
キハダマグロ
86千トン
イワシ
64千トン
マアジ
40千トン
ブルーホワイテイング
32千トン
以上5品目は 2004 年漁獲総量の 34%を占める。養殖は全水産物の約 28%を占め、
イガイ類が中心となっている。EUの養殖イガイのうち 65%はスペイン産である。そ
の他の主要養殖品目はニジマス(31 千トン、EUの 15%)、金頭タイ<gilt head
seabream>(14 千トン、EUの 22%)等である。
92
(3) 輸出入
表5
水産物輸出入量の推移
(千トン)
輸
入
輸
出
バランス
2000
1,265
794
-471
2001
1,438
910
-528
2002
1,385
802
-583
2003
1,514
843
-671
2004
1,422
828
-594
2005
1,622
935
-687
2006
1,818
1,128
-690
出典: MAPA, GTA, USDA, UK Seafood Authority
スペインは主要な水産物生産国・輸出国だが、需要が国内供給を上回り、市場の約
30%を輸入しており、スペインの貿易赤字の約 10%に相当する。主要輸入先は中国、
ノルウェー、アイスランド、チリ、カナダ等である。近年輸入の増加傾向が続いている。
冷凍魚と貝類がスペインの水産物輸入の 65%を占め、近年最も伸張しているのはフ
ィレと冷凍水産物である。一方、スペインは冷凍水産物の輸出国でもあり、冷凍分野は
水産物輸出全体の過半を占める。
スペインはEUで最大の水産物加工国で、欧州水産加工産業の創出価値全体の 23%
を占め、英国と並んで最も統合化が進んでいる。
図1
種類別水産物輸入
22%
30%
生鮮魚類
甲殻類
貝類
冷凍魚類
13%
35%
出典:MAPA, GTA, USDA, UK Seafood Authority
93
(4)
日本の位置と参入の可能性
a.スペインでの日本食
健康的イメージと世界的なブームのおかげで、日本式食品は、英国・フランスほどで
はないが、スペインでも急速に拡大している。
主要な品目は、フードサービス市場での寿司であるが、その他テンプラなども、多様
な水産物のフライを伝統的に食するスペイン人には非常にポピュラーである。
日本レストランの数を正確に把握することは難しく、その定義等により様々な回答が
あり得るが、一説ではスペイン全土で約 270 の日本式レストラン、うち 120 がマドリ
ッドにあり、イエローページに掲載されているとのことである。また、ある日本食流通
業者によれば、500 以上の日本式レストランが、スペイン全土にあるとされていた。依
然規模は小さいものの、日本式レストランのいくつかはチェーン展開をしている。
これらのうち、日本人経営のレストランはかなり少数であり、中国人、韓国人が所有
しているケースが多いといわれる。中国食品はスペインでは「安い」料理とみなされ、
中国レストラン経営者が、近年ブームとなり、利益の上がる日本食提供を始めるという
ケースも相当多いと言われている。
日本食ブームは、マドリッド、バルセロナ等の主要都市で始まり、地方にも拡大中で
ある。より若い世代が、このブームの牽引者である。日本料理の価格は、一般の料理よ
り高目であり、比較的裕福な人々を顧客層としている。
注目すべき動きとして、日本食がスペインレストランに対しても影響を与えつつある
点が指摘される。フュージョンスタイル(スペインと日本の融合)は、トレンドとして
ポピュラーになりつつある。インタビューした何人かは、現在最も注目を集めているシ
ェフとして、Diverxo 氏を上げていたが、彼はロンドンで日本食を学び、マドリッドで
フュージョンレストランを開いている。彼のレストランは、現在、El Bulli(世界的に
著名なスペインのレストランで、そのレシピは世界中のシェフの注目を集める)に次ぐ
とさえ言われる。
インタビューしたレストラン関係者は、相当数のスペインレストランがすでに日本ス
タイルの食材や味付けを自らのメニューに取り入れていると語った。近年特に注目を集
めている食材はマグロである。
小売の分野においては、しょうゆと寿司関連材料は都市中心部の主要スーパーで一般
的に手に入るが、それ以外は一般的小売店で日本食を見つけるのは容易でない。いくつ
かの高級デパートで、調味料やドライフード等の日本食関連商品を手広く扱っている。
94
寿司は、この6-7年で、持ち帰り食品の重要品目になっている。スーパーやコンビ
ニでは、サンドイッチやトルティーラの傍に寿司が置かれている(VIPS や OPENCAR
といったブランド)
。
日本食材の物流チャネルは限られている。
・ フードサービス分野では、COMINPORT 社が日本食材物流の 80%以上のシェアを
持っている。日本食材に特化した物流業者であり、スペイン人の所有である。彼等
は直接、日本やオランダ等の他の国の物流業者から仕入れている。
・
魚産品は主に地元の魚物流業者が扱い、上位のいくつかは、日本式レストラン
でニーズのあるような高品質の魚産品を提供している。
・ EL CORTE INGLES のようなデパートで販売される産品は、G COSTA &CO(英国
の物流業者でアジア食産品ブランドの BLUE DRAGON も所有する)が扱っている。
b.日本産水産物の輸入と市場シェア
日本産水産物のスペインに対する輸出は、表 6 のとおり、現状極めて限られている。
年間 100-400 トンで、輸入水産物市場のシェアとしては 0.1%にも満たない。
表6
スペインへの日本の水産物輸出実績
2007
2006
類
90
サメ類 (冷凍・切り身)
26
冷
凍
甲
殻
(トン)
2005
2003
135
100
81
マグロ (冷凍・ 切り身)
233
211
71
(
10
87
80
( 冷 凍 )
サ ー デ ィ ン
イ
カ
そ
の
他
171
2004
冷
冷
凍
凍
23
)
8
魚
加 工 済 み 魚 製 品
1
そ
他
3
計
120
の
総
8
9
1
2
1
3
5
1
3
205
392
401
245
出典:日本 通関統計
継続的に輸入されているのは、スペインで伝統的に食する小型サメ類のみで、切り
身・下拵えして小売店で販売されるが、スペイン自身も小型サメ類の生産国であり(年
間 51 千トン・2004FAO)、他国に輸出しており、市場での日本のシェアは微小である。
その他産品は、価格や利便性により、ときどき交易されるといった状況で、本プロジェ
95
クトのターゲット産品(サケ、サバ、ブリ、タイ、スリミ等)は、日本からスペインに
輸出された実績はない。インタビューによれば、少量ながら、日本産ブリがオランダを
通してスペインで流通しているとのことであった。
c.消費者における日本産品のイメージ
スペイン人の日本に対する印象は、モダンで、極めて高いレベルの文化と伝統を持つ
という、総じて良好なものである。特に日本食品は、既述のように一層ポピュラーにな
りつつあり、
「トレンディ」で「ヘルシー」というイメージを強く持たれている。
しかし水産物そのものについては、市場に殆ど日本産品がなく、インタビューした多
くは、一般の消費者は日本の水産物にいかなるイメージも持ち得ていないと言う。
d.水産物供給者としての日本のイメージ
日本の水産物産品の市場プレゼンスが殆どないため、日本の供給業者や水産物との体
験は、スペインのサプライチェーンにおいては、極めて限定的である。
・ 「プロの水産物流業者として、日本が大変重要な魚市場であり、その産業と産品は
高度にプロ用であるのは知っている。しかし日本は世界最大の魚輸入国で、いつも
世界中から最上のものを買い付けている。日本が他国に輸出できるとは単純にはイ
メージできない」(魚の物流業者)
・ 「スペインはある程度のマグロ・カツオを日本に輸出しているが、日本はマグロに
最高値を払い、タコにも良い値を付け、鮮度と質がよくわかっている」
(魚の輸出入
業者)
・ 「高品質。日本の顧客は、日本向け水産物を取るスペインの船に乗り、詳細と処理
方法をチェックするのを知っている」
(政府関係者)
・ 「日本は水産物の顧客であり、輸入国で大手の輸出国ではない」
(魚の流通業者)
・ 「スペインの流通業者から日本の魚産品のことを聞いたことはない」
(魚のレストラ
ン向け流通業者)
・ 「日本産品を扱ったことはないが、
「高品質」と「均一の」イメージがあり、インド
やベトナムの産品とは大きく違っている」
e.日本の市場位置の評価
スペインの水産物市場は極めて競争が激しく、日本が参入をするには、以下の点が課
題となっている。
・ EUの証明を得ている日本の水産物会社の数は極めて限られる。
96
・ 冷凍産品はあまり認知されていない。
・ 高い空輸代金
・ 日本からの輸入は、開発途上国に較べて、より高い関税が課せられる。
・ 現在、日本からスペインへの直接物流チャネルは殆どない。
・ 日本が供給できる品目の大部分は既にスペイン市場に供給されている。
一方、日本が保持しているポジティブな点は以下のとおりである。
・ スペインの水産物市場は拡大を続けており、EU 内の生産の制約から大量の輸入を
行っている。
・ 日本食はトレンディかつ健康的であるというイメージを持たれている。
・ 日本産品は概して高品質であるというイメージを持たれている。
・ 消費者はその高品質と鮮度を理解し、それに対し一定のプレミアムを支払う。
f.品目別参入機会
以下の品目が今回主要なターゲットとした品目である。
・ マダイ
・サケ
・ サバ
・ホタテ
・ ブリ
・スリミ(カニカマ)
・ イクラ
英国の消費者に較べ、スペインの消費者は魚の多様性を楽しんでおり、スペインは既
に多様な魚の供給があるので、上記の大部分、少なくとも同様のものは既に利用できる。
「魚の品目の多くはスペインで利用でき、新たに導入される品目はそう多くない」(主
要水産物流通業者)
現在のスペイン市場の状況を勘案した場合、対象品目のターゲットとするマーケット
は以下のように分類される。
・ 現状、既にかなり大規模・低価格のマーケットが存在している品目
・カニカマ
・サケ
・サバ
・ 現状一定規模のマーケットが存在するが比較的高価格でニッチな品目
・ホタテ
・イクラ
97
・ 類似品目は入手可能だが、まだ一般消費者にはなじみが薄く、現在は非常に小さい
市場
・ブリ(類似した魚種をスペイン周辺で入手可能)
・真鯛(類似した魚種をスペイン周辺で入手可能。ギリシアで養殖されるものとも
類似)
以下の表は、スペインの水産物市場の中心的プレイヤーのインタビュー結果から得ら
れた、各品目の主要なメリット・デメリットを示す
表7
魚種別のメリット・デメリット
メリット
サケ
サバ
デメリット
主要競合先
既存の大きな市場が存
生鮮物が市場の中心
ノルェー
在
日本産は脂の乗りが劣る。
スコットラン
天然物の高評価
コスト
ド
既存の大きな市場が存
生鮮物が市場の中心
ノルウェー
在
種類がやや異なる
イングランド
スコットランド
スリミ
ホタテ
イクラ
既存の大きな市場
極めて競争的
スペイン・東南ア
低価格
ジア・EU
高級フードサビスマー 消費量は仏に対比すると比 フランス・イタリア
ケットに機会
較的少量
英国
高価格
小規模ニッチマーケット
カナダ
アラスカ
真
鯛
風味はスペイン人に好 類似した魚種が一部地域で スペイン
まれる
ブリ
消費されている
ギリシア
風味はスペイン人に好 類似した魚種が一部地域で スペイン
まれる
消費されている
出典:ヒアリング結果による
サ
ケ
・大変ポピュラーな魚種で、通常焼くか、燻製で食される。
・輸入が主要な供給源―年間約30-40千トン輸入
・ノルウェーが最もポピュラーな供給源、スコットランドも一般的だが、ノルウェー産
98
より多少高価。
・仏のスーパーは、下拵えし、真空パックした中国産サケを、かなりの量で買い付ける
が、もともとは日本からのもの(日本の取引業者)。しかし下拵えし、真空パックし
た産品を売るスペインのスーパーはあまり多くなく、生鮮フィレの方が好まれる。
小売価格は比較的安価であり、下表のとおり。
表8
サケの店頭価格
店舗
形態
価格
サイズ
(€/kg)
(ユーロ)
(円/kg)
Eroski Center
切り身
-
-
10.95
1,772
Alcampo
切り身
-
-
8.95
1,448
400g
3.58
8.95
1,448
NA
3.75
-
-
-
-
8.95
1,448
切り身・パック
392g
3.90
9.95
1,610
切り身・パック
822g
4.94
6.01
972
-
-
7.81
1,264
ステーキ・パック
切り身・パック
El Corte Ingles
Ernesto
切り身
切り身
出典:小売店頭価格調査結果による
(注) Eroski Center 、Alcampo 、El Corte Ingles はデパートメントストア、Ernesto は高級鮮魚専門店
日本の強みの1つは、「天然物」だが、インタビューした人々は、この点にあまり関
心を持たなかった。そのままの状態で冷凍した市場への参入はかなり難しく、小売やフ
ードサービス分野に対し、加工した形態(西京漬け、味噌漬けの切り身等)での販売と
いったことも検討の余地があろう。
サバ
・マリネ、燻製、焼き魚等で食される。
・主要供給源は輸入で年間約10-15千トンだが、その多くは再輸出される。最もポ
ピュラーな供給源はノルウェー
・生鮮の、まるごとの魚が小売店では主流である。
・
「ノルウェー産サバは日本産より肥えており、味もよく、日本料理(しめ鯖、焼き鯖)
に適している」
(日本式レストラン)
99
イクラ
・スペインにおいて、イクラは比較的一般化しているが、主にトッピングやデコレーシ
ョンとして使用され、使用単位は少量(50~100グラム)。
・カナダが最もポピュラーな供給源
・我々が調査した4つの小売業者のうち2つは取り扱い
・「一般的なレストランには高価すぎ、売るのは高級レストランだけ、ニジマスの卵は
よりポピュラー」(レストラン向け流通業者)
・「カナダ産は日本食には塩がききすぎているので、日本産品を使いたい(刺身や寿司
向け)。現在は一晩塩抜きをして使っている」
(日本レストラン)
小売価格は1キロ70-150ユーロで以下のとおり。
表9
イクラの店頭価格
店舗
Alcampo
Ernesto
形態
サイズ
価格
(ユーロ)
(€/kg)
(円/kg)
瓶詰め
100g
7.25
72.5
11,732
瓶詰め
50g
4.25
85.0
13,755
瓶詰め
100g
9.02
90.2
14,597
瓶詰め
100g
15.00
150.0
24,275
出典:表 8 に同じ
高価だが、市場規模は小さく、量をこなすユーザーは現状日本レストランのみ。量的な
拡大を図るためには、レストラン、家庭向けの新たな利用法の提案が必要。
ホタテ
・主要供給源は輸入で、年間約10千トン程度。フードサービスが主要市場、訪問した
4つの小売業者のうち2つが扱い、多くは冷凍である。
・「我々の扱い量は増加しており、生鮮だけ使い、多ければ多いほど良い。卵があるの
も扱うが、客は卵が無い方に慣れている。卵はソース用である」(レストラン向け卸
業者)。
・ 小売価格はキロ35-50ユーロ程度
100
表 10
ホタテの店頭価格
店舗
Alcampo
形態
サイズ
価格
(ユーロ)
(€/kg)
(円/kg)
250g
12.29
49.16
7,955
225g
7.99
35.51
5,747
1 piece
3.95
冷凍パック
殻無し
El Corte Ingles
冷凍パック
殻無し
真空パック
殻付き
出典:表 8 に同じ
小売市場は比較的小規模であり、日本が市場参入する場合は、フードサービスを主な
ターゲットとするのが効率的であろう。
スリミ(カニカマ)
・小売とフードサービスの分野では極めて一般的であり、小売店の加工魚産品コーナー
では、沢山のすり身のパックが見られる。主にサラダ、サンドウイッチ等において使
用される。
・国内での生産と輸入品がある。
・小売では、200-400gのパックで売られ、KRISSIAが最もポピュラーな
ブランドであるが、多くのスーパーチェーンが自らのブランドを持つ。
・「大変安価で、競争も激しい。スペインには5-6ブランドがある」
(レストラン)
小売価格はキロ5-14ユーロと廉価である。
表 11
スリミの店頭価格
店舗
Eroski
Alcampo
形態
サイズ
価格
(ユーロ)
(€/kg)
(円/kg)
PB
200g
2.25
11.25
1,820
Krissia
400g
5.15
12.88
2,084
na
200g
0.95
4.75
769
Krissia
200g
2.75
13.75
2,225
Krissia
400g
3.99
9.98
1,615
101
Corte Ingles
Krissia
200g
2.65
13.25
2,144
Krissia
400g
4.65
11.63
1,882
PB
400g
4.30
10.75
1,740
出典:表 8 に同じ
日本が高価格のままで、この市場に参入するのは難しいだろう。日本産品の品質は大
変高いが、すり身はすでに安価な産品として定着しており、新たなマーケットの発掘が
必要であろう。
マダイ
・同様の魚種はスペイン、モロッコの海域で取れるが、雑魚扱いである。
・我々調査チームは、数量は少ないものの、市場で同種の魚を見た。
・現段階では、日本式レストランのみが市場である。
・「我々は、モロッコ近海で取れたマダイを買える(厳密にはマダイでないがそっくり
の魚)。かつては沢山取れたが、最近は買うのが難しい」
(日本式レストラン)
・
「我々はスペイン近海で同様の魚を取れるが、一般的には流通していない」
(流通業者)
・
「我々はしばしばマダイを買うが、日本式レストラン向けである」
(レストラン向け流
通業者)
ブリ
・ インタビューした何人かは、スペイン近海で同様の魚が入手可能とコメントしたが、
我々は市場で見つけることはできなかった。雑魚扱いで、少量であり、地元で流通
しているケースが多い。
・ 日本式レストランは、さしみや寿司向けに、日本のブリを使っているが、オランダ
経由で入ってくる。
「我々は、オランダ経由で冷凍の日本のブリを買っているが、もっとあぶらののった
ものが欲しい」
(日本式レストラン)
「我々は、オランダから日本の冷凍ブリを輸入している」
(日本食品流通業者)
「マドリッドでは流通していないが、スペイン近海でも、季節によっては、取れる」
(流通業者)
よく脂ののったブリはスペインでは好まれ、使い方を提案すれば市場拡大のチャンス
はある。マイナス点は、スペイン人が冷凍ものを好まないこと。
102
f.日本が市場参入する際の障壁
スペインにおいて日本産水産物の市場を開発するためには、5つの主要な障壁がある。
①
冷凍・生鮮
スペインの消費者は、より生鮮を好む傾向がある。冷凍ものの消費は拡大しているが
依然「安物」とみなされている。インタビューした人の多くが、スペインの消費者は、
他国に較べて歴史的に生鮮ものを好み、この点に非常に敏感であると指摘している。
・「主要な国内港から24時間以内に生鮮ものを入手でき、地元産品が好まれる」
・「生鮮と冷凍では40%以上の価格差があり、メルルーサの場合(冷凍では味と歯ご
たえがなくなる白身魚)、冷凍はわずかキロ5ユーロ、生鮮は25-35ユーロ、冷
凍と生鮮ではまったく異なり、比較できない」
(流通業者)
・「プロとして、日本の技術なら高品質の冷凍ものを作れるのを知っているが、消費者
が未だ理解しない」
(流通業者)
② コスト・収益性
スペインにおける水産物価格は比較的安価であり、日本産品が価格競争力を持ちうる
かについては、より詳細なバリューチェーンの分析が必要となる。また、高価な生鮮も
のの輸出は、運賃と通関のコストが極めて高価格となる。加えて、日本からの輸入は、
開発途上国に較べより高い関税レートとなる。モロッコや他のアフリカ諸国、東南アジ
ア諸国は有利な、割引された関税レートが適用され、スペインはこれらの開発途上国か
ら多くの産品を購入している。
③ 流通
現在、日本からスペインへの直接の流通チャネルは殆ど無い。数量と通関の問題によ
り、日本産のブリはオランダを経由して流通している。日本人が所有する日本産品流通
業者がいて、日本産品を扱っている英国と較べ、スペインでは、地元の流通業者を見つ
けることから始める必要がある。英国では、英国市場に水産物産品を供給する日本の商
社があるが、これら商社のスペイン支店は日本産品を扱っていない。現状では、水産物
分野で地元の小売業者とリレーションのある日本の商社は殆ど無い。
冷凍ものは、大規模な、統合された漁業会社(PESCANOVA等)を通じて流通
している。
103
④ EU法制
EU証明を有する日本の水産会社の数は現状極めて限られており、この制約は、英国
同様、スペインでも解決すべき最初の問題となっている。
⑤ 持続性・環境問題
持続性、捕鯨問題等はスペインにおいても意識され、日本のイメージの改善にとって
の課題となる。しかし、この点に関する消費者の関心は、英国の消費者に較べれば高い
ものではない。
3.流通実態
(1)
概況
他の多くの市場と同様、水産物についても国内生産(漁獲と養殖)、輸入の2つの流
れから国内流通経路に供給が行われる。国内で水揚げされた水産物は、全国 291 の地
方市場を経由して、全国 16 箇所に設置された中央卸売市場に集められる。ただし、後
記のとおり、養殖もの、缶詰、冷凍ものについては、垂直統合した大手水産加工会社の
市場支配力が非常に強い。
図2
水産物流通市場の構造
国内漁獲
輸入
小規模独立系水産会社
大手水産会社
冷凍
卸売り市場
加工
フードサービス
出典:Pro-Intal
専門小売店
輸出
大手小売チェーン
Counsulting
合理化されたサプライチェーンへの集中の動きが見られ、恒常的に一定の、量、質、
価格を供給できる供給者への需要集中といった動きが生じている。
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