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作=常児と自閉症児の アタッチメント行動の比較

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作=常児と自閉症児の アタッチメント行動の比較
健常児と自閉症児の
アタッチメント行動の比較
兵庫教育大学大学院
学校教育研究科 障害児教育専攻
M97321B
高橋 正泰
目次
頁
1章 序論
1節 自閉症児におけるアタッチメント研究の意義・・・・・…
1
2節アタッチメントの定義・・・・・・・・・・・・・・・… 2
3節 アタッチメントの評価方法・・・・・・・・・・・・・…
3
4節 健常母子を参加者として行われた研究結果・・・・・・…
5
5節安定したアタッチメントを形成するための要因・・・・… 11
6節安定したアタッチメントを形成するための要因と
社会性との関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 14
7節 自閉症児の乳児期の特徴・・・・・・・・・・・・・・… 20
8節 自閉症児のアタッチメントに対する理論的仮説・・・・… 21
9節 自閉症児を参加者として行われた研究結果・・・・・・… 23
10節 過去の研究の問題点・・・・・・・・・・・・・・・・…
28
11節本研究の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・… 0・28
2章 方法
1 調査日時および回収率・・・・・・・・・・・・・・・・…
31
2 参加者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
32
3 調査器具・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
33
頁
4 手続き・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
33
5 結果の処理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
36
3章 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 40
4章 考察
1節 本研究における結果の考察・・・・・・・・・・・・・…
55
2節本研究の問題点・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 64
3節 今後の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
66
5章要約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 71
引用文献
付録
1章 序論
1節 自閉症児におけるアタッチメント研究の意義
我々は社会的な存在であり、他者との関係を形成することなしに生活を送る
ことは困難である。しかしながら、自閉症児者は対人関係をうまく形成できな
いという問題(Rumsey, Rapoport&Sceery,1987)を抱えている。この対人
関係障害、つまりは社会性の障害については多くの研究がなされてきたが、い
まだに有効な治療方法の確立はなされていないという問題がある。このような
問題が生ずる背景として、自閉症という障害の持つ特性が挙げられる。自閉症
とは、脳に何らかの生物学的な基底障害の存在は推測されているが行動障害で
あり、行動上に現われた特異性をもって診断がなされる。また、診断に訪れる
のは言語の遅れが主要な動機であり、3歳児検診で診断されることが多い(小
泉・薄田・今成・高波,1985)。そのために、自閉症児の乳児期の行動に関する資
料が乏しく、最も早期の対人関係学習の場である母子相互交渉(川上,1989)
についての研究は母親のRetrospectiveな報告やVTRに頼らざるを得ないと
いう状況である。
また、過去に多くの研究において自閉症児の早期発見・早期療育に関する研究
が行われてきた(Adrien, Lenoir, Martineau, Perrot, Hameury, Larmande&
Sauvage,1993;Baron−Choen, Cox& Baird,1996;Baron−Choen, A睡en,
Gillberg,1992;藤居・中塚,1988;Gmberg, Ehlers&Schaumann,1990;星野・
八島・金子・橘・渡辺・上野・高橋・古川・熊代,1980;伊藤・野村・伊藤・松田・長瀬・
高橋・斎藤・尾形・木原,1991;小泉・薄田,1980;小泉他,1985)。これらの研究
によって多くの知見が得られているが、自閉症児の早期発見・早期療育に関する
研究は始まったばかりである(中根・市川・内山,1997)ということに加えて、
自閉症児の早期兆候と早期療育との関係が明確ではない。
そこで本研究では、子どもの発達に影響を及ぼす社会一文化的環境要因の代
1
表的存在である母親(田島,1990)との関係を調べることで自閉症児の早期兆
候と早期療育との関係について考察を加えることとする。自閉症児を参加者と
した研究は少ないが、健常児については多くの研究が行われ、乳児期の母子相
互交渉とその後の発達に関する多くの資料が得られている。アタッチメントを
乳児期の母子相互交渉の結果として産出されるものであると捉えると、現在の
自閉症児のアタッチメントを調べることによって、ブラックボックスとなって
いた乳児期に関する理論的な示唆や、早期療育に関する示唆が得られるのでは
ないかと思われる。
2節 アタッチメントの定義
アタッチメントとは、Homes(1996)によれば、個人の愛着との状態と質に
関する包括的な用語であり、一般的には「ある特定の人間もしくは動物との間
に形成されている情愛のきずな(affectional tie)」(Ainsworth, Blehar, Waters
Wall,1978)と定義される。この定義からも明らかであるが、アタッチメント
は実際に観察できるものではない。そこで、母子間にアタッチメントが形成さ
れていることを確認するためにはアタッチメント行動を観察するという方法が
とられる。
アタッチメント行動とは「ある特定の弁別された好ましい人物に対する接近、
または接近を維持しようとする何らかの行動様式」 (Homes,1996)と定義さ
れる。具体的には、泣き、探索行動、微笑、発声、凝視などの行動を介して、
接近・接触を求める行動、接触を維持する行動、抵抗行動、回避的行動、離れた
場所からの相互作用行動などが挙げられる(Ainsworth, et al.,1978)。
これらのアタッチメント行動をどのような場面でどのように評価を行うのか
ということに関しては、次節で簡単に説明を加える。
2
3節 アタッチメントの評価方法
アタッチメントを評価する方法は多く開発されているが、本研究と関連の深
い2つの代表的な方法を紹介し、次にそれらの方法を用いて行われた研究をみ
てみる。
1)Strange Situation法
Strange Situation法とは、 Ainsworthら(1978)がバルチモアで行った乳児
の行動観察から、アタッチメントの評価に重要である行動をより統制された場
面で観察できるように一般化した方法である。エピソードは全8場面で構成さ
れており(図1,4頁参照)、母親との分離・再会場面を含む1連の文脈の中で
アタッチメント行動が観察され評価される。この方法は多くの研究で用いられ
ている手続きであり、子どもの新奇性不安や分離抵抗という情緒的不均衡が、
母親との接触によって解消され安定化していくダイナミズムを8つのエピソー
ドを通じた実際の子どもの行動を手がかりに評価できる点において、独創的か
つ実用的な方法として評価されている(久保田,1995)。
Strange Situationにおいてなされる評価は、大別して以下の3つのグルー
プに分けられる(Ainsworth, et aL,1978;久保田,1995)。
A型(回避型:Avoidant Type)
母親との分離に対しても、悲しみ・苦悩・抵抗を示すことなく、またストレンジ
ャーとも容易に交流する。母親との再会時には、母親を無視・回避し、一人遊び
などが見られる。
B型(安定型:Secure Type)
分離前には、積極的に探索行動を展開することができ、母親の存在があればス
トレンジャーに対して親和的に接することができる。母親との再会時には、母
親へ積極的に接近・接触を求めて安らぎを得ることができる。そして、探索・遊
3
びや母親との相互交渉にスムーズに移行することができる。
C型(抵抗型=Resistant Type)
分離前も泣きが激しく、母親の存在によっても気持ちの安定化をはかることが
できず、探索行動も乏しい。分離時にも激しく泣き、容易になだめられない。
母親との再会時にも、抱き上げられても抵抗行動を示し、気持ちの安定がはか
れない。
⑤幹轟
h
F
7
H砧
1回目の母子梶会。栂概が入
廠,ストレンジャーは遮嵐◎
(3分)
②
⑰
訟8.、
響’。o
鶉
h
月ム
h
6
日島
母親は梅子にすわり9子ども
2略図の母子分離.三親も巡
はオモチャで遊んでいる卿
鐵。子どもはひとり観される。
(3分)
(3分)
③ 尽・
h
とストレンジャ』一はそれぞれ
の二子にすわる.(3分)
④
H
a
ストレンジャーが入墜。子ど
もを慰める。(3分)
』影歯
⑱鉢邑・
日島
卜
1團目の傑予分離。慨親は退
童..ストレンジャーは遊んで
日易
2囮目の母子稗会。母親が入
いる子どもに・やや近づき,は
たらきかける。(3分》
思しストレンジャーは退童◎
(3分)
繁多(1995)
4
2)アタッチメントQ分類法
アタッチメントQ分類法とはWaters(1985)によって開発された方法であ
り、行動の出現する文脈を含めたアタッチメントに関する具体的なカードを分
類し、その分類によって対象の特徴を記述する(近藤,1993)というものであ
る。具体的な行動としては、母親が頼めば物を貸してくれるといった母親との
相互交渉行動、遊ぶときは身体接触を持ちながら遊ぶというような母親に対す
る身体接触行動、母親がいなくなると探して近づいてくるなどの母親に対する
接近行動、お客さんと話しができるなどの他者との相互交渉行動などがある。
この方法の持つ利点としては、比較的操作を加えない場面での観察からアタッ
チメントの評価が可能であるという点と、Strange Situation法よりも適用で
きる年齢が広いということが挙げられる。
アタッチメントQ分類法で最も多く用いられる評価の方法は、標準分類
(criterion sorting)による分析である。この分析は、アタッチメント研究の専
門家が最も安定したアタッチメントを示す子どもを想定してカードを分類し、
その分類と個々の参加者の分類のパターンの相関を求めるというものである。
そのようにして得られた相関値はアタッチメント安定性得点として扱われる。
過去の研究により、アタッチメント安定性得点が高い子どもはStrange
Situationによって安定していると評価されるということが示されており、ア
タッチメントQ分類法とStrange Situation法での評価は一致するということ
が確認されている(Posada, Gao, Wu, Posada, Tascon, Schoelmerich, Sagi,
Kondo−lkemura, Haaland&Synnevaaget,1995;Sagi, van Ijzendoorn,
Aviezer, Donnell, Koren−Karie, Joels&Harel,1995;Strayer, Verissimo,
Vaughn&Howes,1995)。
4節 健常母子を参加者として行われた研究結果
健常母子を参加者として行われたアタッチメント研究は様々な分野において、
多く行われている(図2,10頁参照)。それらの研究結果を概観し、アタッチ
5
メント研究の動向を見るとともに、本研究との関連が深い社会性の発達との関
係に関して詳細に見ていく。
アタッチメント研究は大きく分けて、アタッチメントの形成要因に関するも
の、アタッチメントの評価とその後の発達に関するもの、介入によってアタッ
チメントの変化をみる臨床的な研究に分けられる。
a)アタッチメントの形成要因
形成要因に関しては、母子相互交渉における母親の敏感性、適切な反応、身
体接触の有無、感情的な関わりなどの要因が挙げられている。これらについて
は次節で詳細に見ていくが、それ以外の要因について簡単に見ていきたい。
まず、アタッチメントの形成に及ぼす文化差(Posada, et aL,1995;Robin,&
Joan,1991;Sagi, Donell, van ljzendoorn, Mayseless&Aviezer,1994;
Schlmerich, Lamb, Leyendecker&Fracasso,1997;Strayer, et al.,1995;
Wartner, et al.,1994)の影響が挙げられる。アタッチメントの評価と文化の違
いに関して多くの研究が行われている背景には、アタッチメントの評価方法と
してのStrange Sltuation法の信頼性や妥当性を検証するという目的と文化に
よってアタッチメント行動の捉え方に違いがある(Robin&Joan,1991)ため
に、文化差とアタッチメントの評価方法を考察していく必要があるためである
と考えられる。現在の所、アメリカや西欧では回避型と評価されるのは一般的
な傾向(Wartner, Grossmann, Fremmer−Bombik&Suess,1994)であるのに
対して、日本やイスラエルでは抵抗型と評価されることのほうが一般的である
(Sagi, et al.,1994)ということが言われている。しかしながら、現在でも議
論の余地は残した大きな問題であって、アタッチメントの評価に関する考察を
加える際には考慮すべき問題である。
次に、出産状態に関する要因が挙げられる(Crawford,1982;Frodi&
TQmpson,1985;Goldberg, Perotta&Minde,1986;Mangelsdor£Plunkett,
Dedrick, Berlin, Meisels, Mchale&Dichte囲miller,1996;Plunkett, Meisels,
Stiefel, Pasick&Roloff,1986;氏家,1990;Wille,1991)。これらの研究のほ
6
とんどは、未熟児出産に関して行われており、未熟児と母親はリスク要因が高
いために安定したアタッチメントの形成が困難であり、サポートの重要性が指
摘されている。また、出産状態とも関係しているのであるが、Klaus&Kennell
(1970)に代表される出産直後の母子分離の影響も指摘されている(Anisfeld
&Lipper,1983;Curry,1979;Kontos,1978;Sostek, Scanlon&Abramson,
1982)。これらの研究によって初期の接触を経験した母親は、経験しなかった
母親よりも子育てに対して高い有能感(Sostek, eta1.,1982)を示すというこ
とが示されている。
最後に、最近の動向として、従来の研究では母親の役割を重視しすぎるとし
て、養育者の1人である父親の役割に関する研究(Belsky,1996;Cox, Owen,
Henderson&Margand,1992;Main&Weston,1981;Mercer&Ferketich,
1990)が行われている。これらの研究によって、母親とは異なる父親の役割が
いくつか示されているが明確なものは少ない。
b)アタッチメントの評価とその後の発達
アタッチメントの評価とその後の発達に関して行われた研究では、概して安
定したアタッチメントを形成している子どもの方が、その後の発達において不
安定なアタッチメントを形成している子どもよりも優れているという結果が示
されている。例えば、安定していると評価を受けた子どもは自己効力感が高い
(Berlim, Cassidy&Belsky,1995)ということや、学業成績や注意集中力など
の成績が高い(Jacobsen&Hofmann,1997)ということが示されている。逆
に、安定していない子どもは、問題行動を多く示すことも示されている(Erlcson,
Sroufe&Egeland,1985;Lyons・一Ruth, Alpern&Repacholi,1993) 。
また、近年非常に盛んに行われている研究として、アタッチメントの世代間
伝播(Fonagy, Steele&Steele,1991;Posada, et al.,1995;Sagi, van
ljzendoorn, Scharf, Joels, Koren−Karie, Mayseless&Aviezer,1997;Steele,
Steele&Fonagy,1996;Ward&Carlson,1995)の研究がある。これらの研究
の多くは、初期の母子関係がその後の人間関係に影響をあたえるという
7
Prototype Theoryに対する検証が主な目的で行われている。
C)臨床的な研究
臨床的な介入研究の対象としては、養子縁組みをした家庭(Juffert,
Hoksbergen, Riksen−Walraven&Kohnstamm,1997)、不安定なアタッチメ
ントを形成している母子(Barnett, Schaafsma, G uzman&Parker,1991;
Barnett, Blignault, Holmes, Payne&Parker,1987;Lieberman, Weston&
Pawl,1991;Lyons−Ruth, Connel&Grunebaum,1990)、lrritabilityの高い子
どもの母親(Van den Boom,1994)、発達障害児やアタッチメント障害の子
ども(Chinitz,1995)などであり、介入方法はSocial Supporヒや社会的資源
の利用を教示したり、本やVTRなどで理想的な母子相互交渉に関する知識を提
示したりするなど方法が用いられている。結果としては、介入を行った方が、
安定したアタッチメントを形成しやすいということが示されている。しかしな
がら、臨床的な研究は始められたばかりであり、介入方法として確立されてい
るものはないと思われる。
d)社会性に関する研究
Pastor(1981)が18ヵ月の時点でStrange Situationによってアタッチメ
ントの評価を行い、20カ月および24ヵ月の時点での自由遊び場面における社
会性、社会的反応性との関係を調べた結果によれば、18ヵ月の時点で安定型と
いう評価を受けていた子どもは、回避型、抵抗型に比較して仲間に対する働き
かけや、仲間の働きかけに対する受け入れが高かったということが示された。
また、Cassidy, Kirsh, Scolton&Parke(1996)がアタッチメントの評価と
仲間関係の表象との関係に関して行った研究では、アタッチメントの安定性の
低いものは仲間に対して攻撃性が高く、高いものは仲間関係の表象が肯定的で
あるということを示した。これらの結果よりCassidyらは、母親との関係が対
人関係の基本となっていて、それが仲間関係を形成するときにも影響を与えて
いると述べている。さらに、仲間との自由遊び場面における行動観察において
8
社会性とアタッチメントの関係を調べたLaFreniere&Sroufe(1985)の研究
においても、女子のみではあるがアタッチメントの安定性が高い子どもは仲間
の評価や担任の先生の評価が高いということが示されている。
その他にも多くの研究がアタッチメントの評価と社会性の発達に関して行わ
れている(Berlin, et al.,1995;Easterbrooks&Lamb,1979;LaFreniere&
Sroufe,1985;Oppenheim, Sagi&Lamb,1988)が、アタッチメントの安定性
の高い子どもはその後の発達において社会性の発達が良いということが示され
ており、アタッチメントの安定性は社会適応の予測子として用いることが可能
である。
9
人格
Social SUPP◎rヒ
父親
子育ての経験
友人
祖父との関係
祖母
母子相互交渉
経済状態
感情
乳児の気質
↓
アタッチメントの評価
Strange Situation
世
Attachment Q−sQrt
代
物語構成法
Adu忙Attachment hterview
など
↓
自殺
人格
少年・青年期
友人関係
学業成績
兄弟関係
図2 アタッチメント研究の略図
10
間
伝
播
5節 安定したアタッチメントを形成するための要因
前節においてアタッチメントの安定性の高い子どもはその後の発達において
社会性の発達が良いということが示された。次に、アタッチメントの安定性の
高い母子関係を形成するための要因とはどのようなものであるのかについて行
われた研究を見ていく。
安定した母子関係を形成するための要因は過去の研究によって多く示されて
いるが、大別すると母子相互交渉に関する要因とそれ以外の要因とに分けられ
る。
1)母子相互交渉に関する要因
まず、母子相互交渉に関する要因としては、乳児の発する信号に対する敏感
性が挙げられる(Blehar, Lieberman&Ainsworth,1977;Egeland&Faber,
1984;Lewis&Feiring,1989;lsabella,1993;lsabelIa&Belsky,1991;lsabelIa
&Eye,1989;Nicholls&Kirkland,1996;Seifer, Schiller, Sameroff, Resnick&
Riordan,1996;Smith&Pederson,1988;Verejiken, Riksen−Walraven&
Kondo−lkemura,1997)。
Belsky, Rovine&Taylor(1984)は、家庭における母子相互交渉観察と
Strange Situationにおけるアタッチメントの評価との関係を調べた結果、1
ヵ月、3ヵ月、9ヵ月の家庭観察において子どもの発する信号に対して敏感な
母親の子どもはより安定しているという評価を受けたということを示している。
また、同様の手続きで行われたlzabella(1993)の研究でも、安定した母子
関係を形成している母親は乳児期の母子相互交渉において乳児の発する信号に
対する敏感性が非常に高いということや、安定していないという評価を受けた
母親は敏感性が低く、それと関係して拒絶などの拒否的な反応が多かったとい
うことが示されている。
次に、母子相互交渉において重要な要因として適切な対応が挙げられる。
11
Smith&Pederson(1988)が母親に質問紙に回答を求め、回答している間の
子どもとの相互交渉を観察するという質問紙場面法を用いて母子相互交渉を観
察した結果、安定した母子関係を形成している母親は子どものDistressに対し
て、なだめや注視、言葉かけを多く行うが、抵抗型の母親は子どものDistress
にきついてはいるが反応をしない、回避型の親は抵抗型よりも子どもの方を見
たり、言葉かけを行うが身体接触は伴わないということが示された。これらの
研究結果から、Smithらは子どもの発する信号に対する反応の質によってアタ
ッチメントの質が決定されると述べている。また、乳児期の母子相互交渉にお
ける行動観察と1歳の時点でのアタッチメントの評価との関係を調べた
lsazella&Eye(1989)の研究でも、1歳の時点で安定した母子関係を形成し
ていた母親は他の評価を受けた母親よりも多くの言葉かけを行っていたり、適
切であると評価される反応が多かったということが示されている。
その他の要因としては、身体接触の重要性が指摘できる(Brown, Pipp, Martz
&Waring,1993;Cox, et al.,1992;Gottfried, Seay&Leake,1994;Lowinger,
Dimitrovsky, Strauss&Mogiher,1995)。
Tracy&Ainsw◎rth(1981)が生後1年間における母子相互交渉を観察した
結果、回避型の母親は子どもを抱き上げるという行動が安定型や抵抗型に比較
して少なく、密接な身体接触を避ける傾向が観察された。また、日常生活にお
ける行動観察を行った結果、身体接触の頻度とAttacmentの評価に強い関係が
みられた(Pederson&Moran,1996)という結果も得られている。
さらに、厳密な統制はできてはいないのだが、出産直後に胸と胸があわさる
Soft Baby carriesを渡す実験群とInfant seatを渡す比較群を設けて、身体接
触の量とその後のアタッチメントの関係を調べたAnisfeld, Casper, Nozyce&
Cunningham(1990)の研究によれば、実験群のほうが比較群と比べて安定し
たアタッチメントを形成している母子が多かったという結果も示されている。
その他にも、母子相互交渉における感情の役割が重要である(Connell&
Tompson,1986;Egeland&Farber,1984;lzard, Haynes, Chisholm&Baak,
1991;Tracy&Ainsworth,1981)ということも示されている。
12
2)母子相互交渉以外の要因
次に母子相互交渉以外にアタッチメントの形成に影響を及ぼすとされる要因
として、乳児の気質が挙げられる(Calkins&Fox,1992;Crockenberg,1981;
Donovan&leavitt,1989;Seifer, et al.,1996;Stillman, Kalkoske&Egeland,
1996;Tompson, Connell&Bridges,1988;Vaughn, Stevenson−Hinde,
Waters, Kotsaftis, Leferver, Shouldice, Trudel&Belsky,1992)。しかしなが
ら、乳児の気質がアタッチメントの評価に影響を与える(Miyake&Chen,
1983;Tompson, et al.,1988)という立場と乳児の気質はアタッチメントの評
価に直接影響を与えるのではなく、母親の敏感性に影響を与えそのことによっ
てアタッチメントの評価に影響を与える(Stillman, et aL,1996)という立場が
あり、アタッチメントの評価に及ぼす乳児の気質の影響については一致した見
解が得られていない状況である。
その他の要因としては、母親の受けているSocial Supportについて質問紙を
施行してアタッチメントとの関係を調べたCrockenberg(1981)の研究によ
って、Social Supportを多く受けている母親は、少ない母親よりも安定した母
子関係を形成するものが多かったという結果が得られている。その他にも多く
の研究がアタッチメントとSocial Supportの関係について行われたが、母親に
対するSocial Supportが重要である(Crockenberg,1981;Jacobson&Frye,
1991;Shaw&Vondra,1993;Zeachariah,1996)ということが示されている。
また、経済状態が悪く栄養失調などの問題が生じている母子の9割が安定し
ていないという評価を受けたという研究結果(Valenzuela,1990)が示されて
おり、経済状態なども影響を与える(Valenzuela,1990;Vaughn, Egeland,
Sroufe&Waters,1979;Wille,1991)ということが過去の研究によって示され
ている。
13
6節 安定したアタッチメントを形成するための要因と
社会性の発達との関係
前節では、過去の研究から安定したアタッチメントを形成するための要因を
いくつか示した。しかしながら、安定したアタッチメントを形成するための要
因とその後の社会性の発達との関係に関しては体系的な研究がなく明確にはな
っていない。そこで、安定したアタッチメントを形成するための要因と社会性
の発達との関係に関してモデルを図に示す。
1)母子相互交渉
母子相互交渉というのは非常に範囲の広い問題であるので、ここでは、乳児
が生きていくために最{邸艮必要な相互交渉(以後、Survival lnteraction)とそ
れ以外の社会的な相互交渉(以後、Social lnteraction)に分けて考察を行う。
a) Survival Interaction
Surviva目nteractionというのは、授乳や排泄といった行動を介して行われる
ものであり主として乳児が何らかの要求を満たすために何らかの信号を発する
ことによって生じてくる母子相互交渉である。
この母子相互交渉を示したモデルが図3(次頁参照)である。確立操作条件
というのは母親が乳児と相互交渉を行うことができる状況を変化させる要因の
ことであり、経済状態やSocial Supportの有無などが要因として挙げられる。
例えば、経済状態が悪く母親が外へ働きに出かけなければならないような状況
であれば、育児行動に専念することができないということになる。
14
確立操作条件
↓
Tm 2
行動
母親馨ξ懸一灘国里[詞一
乳児は行動Aを
行っていない
∴鼈黶c・一↓一…讐
一一一……一一・
糊 案騨一レ[二三二]一
.
直前条件
b2 蓋\
不快刺激除去
行動
丁3
直後条件
図3 Surviva目nteraction
まず、直前条件(T1)において乳児は空腹などの不快刺激があると設定する。
そのときの母親の状態としては、乳児は何ら行動を生起していないという状態
である。
次にTn2において乳児は持っている行動レパートリーの中から行動Aを起
す。母親はその行動Aを弁別刺激として行動Bを行うのだが、乳児の行動レパ
ートリーが少ない時期には、行動Bは文脈刺激によって規定されている。例え
ば、乳児が食物を摂取してから時間が経っていれば、母親はお腹がすいている
と推測して授乳行動を行うと考えられる。しかしながら、授乳直後であれば機
嫌をとるためにあやしたり、だっこしたりすると考えられる。そして、母親の
行動Bが乳児の行動Aを生起させていた要因を取り除くものであれば、乳児の
行動Aは終結する。そのことによって母親の行動Bは強化され生起頻度が増大
することが考えられる。しかしながら、母親の行動Bが乳児の行動Aを生起さ
せていた要因を取り除くものでなければ、乳児の行動Aは継続して行われる。
15
そのために母親は行動Bではなく別の行動を行うことになる。その際に、母親
のとる行動が少なければ、反応コストも大きくならず負担が少ない。さらに、
母親のとる養育行動は強化をうけ、乳児の行動に対する反応性がより高くなる
と考えられる。しかしながら、母親のとる行動が多ければ、反応コストは増大
し、母親の養育行動は即時強化を受けられず乳児の行動に対する反応性は低く
なることが考えられる。このことについてはBates(1987)が「過敏でなだめ
にくい気質の子どもは、ある期間を経た後に、母親の行動を“感度が悪く応答
性の低い養育行動”へと変化させていく」と述べているように、子どもの気質
というものが大きく関与してくることになる。
このInteractionにおいて、図3(15頁参照)における乳児の行動Aを弁別
刺激として母親が行動Bを生起させる随伴性の程度と時間的な接近が母親の乳
児の信号に対する敏感さである。また、適切な反応というのは文脈刺激や乳児
の行動Aから何が乳児の行動Aを生起させている要因であるかを弁別すること
ができ、それに対応した反応を行うことである。母親の行動Bが、随伴性が高
く、時間的な接近が早く、しかも適切な反応であるということは、乳児にとっ
て自分の行動とその結果事象の学習が容易であることを意味する。つまり、敏
感性の高い母親の子どもは、何らかの不快な状態を快適な状態にするために自
らが行動を生起し環境を操作することの学習が容易なのである。このことは、
Cassidy(1986)が見知らぬ環境におかれた子どもの行動を観察した結果、安
定型の評価を受けていた子どもが最も適応的な行動を行ったという研究結果と
一致する。また、その環境操作は主に母親が行うため、母親は乳児にとって不
快な状態を快適な状態にしてくれるComforterの役割を果たすのである。母親
がComforterとして機能するようになり、子ども自身の移動能力が発達すると、
図4(次頁参照)に示すように、子ども自身が母親に対して接近や接触行動を
生起することによって不快刺激を除去することができるようになる。母親との
接近や接触によって容易に不快刺激から回避することのできる子どもは、母親
がいれば外界に対して働きかけを行うことができると考えられる。すなわち、
探索行動を多く生起するのである。
16
確立操作条件
↓
Tm 2
行動
母親
………一
乳児
_・/4一…一………一……
[空腹などの不快刺激]一[重]斎…一
T1
Tn 2
直前条件
行動
T3
直後条件
図4 Survival lnteraction ll
b) Social lnteraction
Social Interactionとは前述のSurviva目nteraction以外の相互交渉をさす。
図5(次頁参照)に示すように、確立操作条件として乳児と関わりたいという
動機づけ要因が重要になる。
動機づけ要因に影響を与える要因として考えられるのは、経済状態、Social
Supportの有無、母性準備性(青木,1988;戸田,1990;大日向,1981,1982,
1988)など様々なものが考えられる。例えば、母親になることを望んでいるか
どうかによって大きく変わるであろうし、初期の身体接触によって母親として
の実感や有能感をもつ(Sostek, et al.,1982)ことによっても大きく変化する。
そして、この要因の高低によって乳児に対する働きかけ行動の生起頻度が増減
すると考えられるが、ここでは、確立操作条件として乳児と関わりたいという
動機づけが高い場合を想定して考察する。
17
確立操作条件
↓
Tm 2
行動
母親
轡わ・一「行動B]一口轡わ・
^一/一一一一一…戦一…一
一……
乳児
T1
直前条件
Tn 2
行動
τ3
直後条件
図5 Social lnteraction
まず、T1の時に母親は乳児との関わりがないという状態である。そしてTm2
において子どもに対する働きかけ行動Bを行う。その際の行動Bの弁別刺激は
T1における乳児の行動Aである。つまり、乳児が眠るという行動を行ってい
れば行動Bの生起頻度は下がると考えられ、覚醒状態であったり、手足をばた
ばたさせていたりすれば行動Bの生起頻度は増大するということである。乳児
の状態がT1からTn2へ変化した結果として生じる乳児の行動Cが母親から見
て正の強化刺激であれば以後、母親の行動Bの生起頻度は増大する。また、乳
児の行動Cが母親から見て負の強化子であれば母親の行動Bの生起頻度は減
少し、動機づけ条件に変化を及ぼすまで、別の行動を行うであろうと考えられ
る。
このlnteractionにおいて、図5における乳児の行動Aを弁別刺激として生
起する母親の働きかけ行動Bが乳児にとって正の強化刺激である場合に乳児は
T1における行動Aと母親の行動Bとの随伴の程度によって、行動Aと行動B
18
の関係を学習する。そして、T1において母親の存在を弁別刺激として自らが行
動Aを行うようになると考えられる。
社会性の発達とは、社会的な刺激を求めることである。そして、社会的な刺
激というのは他者から刺激を受けることであるので、母親の行動Bが正の強化
刺激として機能し、乳児がその刺激を求めるようになるということは社会性の
始まりであると考えられる。そして、Socia目nteractionを多く経験することに
よって、社会性の発達が促進されると考えられる(図6)。
確立操作条件
↓
Tm 2
行動
母親
母親がいる
行動B
一レ
\5一一/一・/画ピ
乳児
社会的刺激
なし
T1
直前条件
→
行動D
Tn 2
行動
図6 Social lnteraction
19
→
社会的刺激
あり
T3
直後条件
7節 自閉症児の乳児期の特徴
安定したアタッチメントやアタッチメント行動の成立過程は乳時期の母子相
互交渉であると考えられる。健常児に関してはモデルを示し、安定したアタッ
チメントを形成するための要因と社会性の発達との関係を示唆した。それでは、
自閉症児の乳児期の母子相互交渉はどのようなものであるのか、また、その結
果として形成されるアタッチメントはどのようなものであるのかという点につ
いて考察していく。
自閉症児が乳幼児期にどのような母子相互交渉を行っているのかという研究
は生物学的な原因の見つかっていない現在の状況では不可能であり、母親に対
する質問紙などの調査で得られたRetrospectiveな情報やVTR録画によって
残されていた記録に頼る他に方法はない。そこで、過去に行われた自閉症児の
乳時期の特徴に関する研究結果をもとに自閉症児の乳時期の母子相互交渉につ
いて分析を行う。
星野ら(1980)が、自閉症児の母親を対象に乳児期の様子に関する質問紙を
実施し、健常児と精神遅滞児を比較群として自閉症児に出現しやすい早期兆候
を調査した結果、59項目のうち27項目に有意な差が認められた。その27項
目には、話しかけても目線が合わなかったなどの視覚刺激に関する反応や、抱
き癖がつかなかった、抱きにくかったといった身体接触に関する反応、話しか
けても反応がなかったので聾と間違えたなどの聴覚刺激に対する反応などの感
覚刺激に対する反応の異常に加えて、周囲の人に関心がなかったとかあやして
も微笑まなかった、一人でおかれても平気であったなどアタッチメントの形成
にとって重要と思われる行動の異常が含まれている。このような結果は、Prior
&Gajazago(1974)が自閉症児の早期診断の基準としてあげた、抱かれたり、
可愛がられたりすることへの抵抗、あたかも聾のように行動する、感覚刺激に
過剰に反応する、抱かれることを期待しないし、抱かれ易いような姿勢をとら
ないという5つの指標と一致したものである。
20
また、母親にRetrospectiveな調査を行うという方法とは異なり、限られた
場面ではあるが乳児期の自閉症の実際の行動を評定している研究もある
(Adrien, et aL,1991,1993;Osterling&Dawson,1994)。
Adrienら(1993)は、自閉症児の家庭で撮影されたVTRにおける行動を年
齢を合わせた健常児の行動と比較した。その結果、1歳の時点で、自閉症児は
健常児に比較して社会的な相互交渉の乏しさ、社会的微笑の欠如、不適切な表
情の表出、過緊張状態、注意集中の欠如などの特徴が観察された。さらに、2
歳の時点では人を無視する、1人でいることを好む、不適切なジェスチャー、
おとなしすぎる、感情表出の欠如などの特徴が明確になってくるということが
示された。
8節 自閉症児のアタッチメントに対する理論的仮説
本説では、自閉症児の乳時期の特徴と前述した安定したアタッチメントを形
成するための要因とを合わせて考察し、自閉症児の示すアタッチメントに関す
る理論的な仮説を立てる。
まず、Survival Interactionであるが、この母子相互交渉は生存するために最
低限必要なものであり、自閉症児であっても乳時期に行っていたと考えられる。
しかしながら、乳児期の特徴に視覚刺激や聴覚刺激、触覚刺激に対する異常な
反応が示されていることから、母親を弁別するために利用できる刺激は健常児
と比較して少なかったということが推測される。このことから、母親を
Comforterとして利用することは健常児と比較して少ないのではないかとい
うことが推測される。
Social lnteractionについては、話しかけても反応しないということや、目線
が合わないなど母親からの社会的な働きかけ行動に対して反応していないとい
うことがアンケートから示されていたり、Adrienら(1993)の研究で、自閉
症児は乳幼児期に健常児と比較して乏しいSocial lnteractionしか行っていな
21
いということが示されている。このような研究結果から、自閉症児は乳児期に
おいて乏しいSocial Interactionの経験しかなく、他者からの刺激、つまりは
社会的な刺激をうける機会は少なかったと考えられる。
なぜ、乏しいSocial lnteractlonしか生起しないのかという点については、
健常児における研究で乳児期においてNBAS(Neonatal BehavioraI
Assessment Scale)で高い得点を示すもの、すなわち被刺激性の高いものは安
定したアタッチメントの形成が困難である(Spangler, Fremmer−Bombik&
Grossman,1996;Waters, Vaoughn&Egeland,1980)という研究結果が示さ
れているということや、星野ら(1980)や0’Neill&Jones(1997)の研究で
示されているように、自閉症児は乳児期に何らかの感覚異常を示しているとい
うことが大きな要因として考えられる。つまり、図7(23頁参照)に示すよう
に、自閉症児は何らかの感覚異常があるために母親からの刺激を受け入れるこ
とが阻害されているのではないかと思われる。
聴覚刺激に対する異常があれば、名前を呼ぶなどの母親の働きかけ行動は働
きかけ行動としての機能を有することはなく、母子相互交渉は成立しないであ
ろうと考えられる。また、身体接触は子どもの泣きを最も効果的に鎮める(BelI
&Ainsworth,1978)ということや、身体接触を多く行った母子は安定したアタ
ッチメントを形成する(Lowinger, et al.,1995)ということが示されているこ
とから、身体接触は生得的にビルトインされた強化子であると考えられる。し
かしながら、自閉症児は抱き癖がっかなかった、抱きにくかったといったとい
うことが報告されていることから、身体接触が強化子として機能しない状況に
置かれていると考えられる。そのために、触覚刺激を介しての母子相互交渉も
困難な状況ではないかと思われる。また、視覚刺激に関する異常があれば、母
親と他者との弁別は困難であり、母親の表情などの社会的な刺激によって自分
の行動を統制することは困難であると考えられる。
22
以上のことから、自閉症児は乳児期に何らかの感覚異常を有しているために
母子相互交渉によって社会的な刺激を受ける経験が乏しいと考えられる。そし
て、アタッチメントは、見ること、聞くこと、つかむことによって媒介される
(Homes,1997)ために、自閉症児のアタッチメントは健常児と比較して乏し
いものになることが予測される。
確立操作条件
篭
Tm 2
行動
母親
乳児と
関わりなし
→
行動B
__↓__.____.一___
犠感覚幾
SD
▼
社会的刺激なし
乳児
社会的刺激なし
T1
→
行動A
Tn 2
直前条件
行動
図7 自閉症児におけるSocia目nteraction
23
→
Qr
過剰刺激入力
T3
直後条件
9節 自閉症児を参加者として行われた研究結果
自閉症児を参加者として行われたアタッチメント研究について、参加者の年
齢、手続き、結果についてまとめたものをTable 1(26頁参照)およびTable
2(27頁参照)に示す。
参加者の月齢は40ヵ月から51.9ヵ月までの範囲であり、用いられた手続き
のほとんどはStrange Situation法を改良し、母親との分離と再会を1回づっ
含むものであった。また、行動指標としては健常児の研究と同様にアタッチメ
ント行動が観察された。その結果、自閉症児であってもアタッチメント行動を
示すが健常児と比較して高い認知能力をもっていないとそれらの行動は示され
ない(Sigman&Ungerer,1984)ということや、分離の後に母親への接近が見
られるということやアタッチメントの評価において安定型と評価されるものも
多くいたことから、自閉症児であっても健常児と変わらないアタッチメント行
動を示す(Shapiro, Sherman, Calamari&Koch,1987)ということが示され
た。また、自閉症児と健常児の改良版Strange Situation場面における行動パ
ターンを詳細に分析を行ったDissanayake&Crossy(1996、1997)らの研究
でも自閉症児が改良版Strange Situationで示すアタッチメント行動はダウン
症児、健常児の示すアタッチメント行動と非常によく似たパターンであるとい
うことが示された。
自閉症児であってもアタッチメント行動は存在しそのパターンも健常児と変
わらないものであるという研究結果が多くの研究によって得られているが、
Sigman&Ungerer(1984)は高い認知能力が必要であるとしているし、Rogers,
Ozonoff&Maslin−Cole(1991)も、自閉症児についてはアタッチメントの安
定性の得点と言語能力、認知能力、粗大運動レベルとの間に相関がみられるこ
とから、母親の内的ワーキングモデルを理解するために高い認知能力が必要で
あると述べている。
24
まとめると、我々のたてた仮説とは異なり、高い認知能力が必要であるとい
う条件がついてはいるのだが、自閉症児にも健常児と変わらないアタッチメン
ト行動があり、Shapiroら(1987)が示すところによれば母親との間に安定し
たアタッチメントを形成していることが示された。
しかしながら、Hoppes&Harris(1990)が、母親の感じるアタッチメント
や子どもとの関係の満足度に関して、自閉症児の母親とダウン症児の母親に質
問紙を施行した結果、母親の感じるアタッチメントは自閉症児の母親よりもダ
ウン症児の母親の方が高く、子どものとの関係の満足度に関しても同様の結果
が得られた。つまり、自閉症児の母親は子どもとの関係に満足しておらず、少
ないアタッチメントしか感じていないということが示された。また、自閉症児
のほとんどの親が乳幼児期において、自分に対する子どものアタッチメントに
ついて心配したという報告もある(Le Counter, Rutter, Lord, Rios, Robertson,
Holdgrafer&Mclennan,1989;Ohta, Nagai, Hara&Sasaki,1987)。さらに、
自閉症児が母親との間に安定したアタッチメントを形成しているのであれば、
Pastor(1981)が指摘するように社会性の発達がみられるのではないかと推測
される。しかしながら、自閉症児の特徴的に障害は社会性の障害であり、実際
には社会性の発達は乏しいことが示されている(Rumsey, et aL,1987)。この
ように、矛盾した結果が得られた理由に付いて次節で考察を加える。
25
Tab短1自開痙児を参加者として行われたアタッチメン.ト研究
研究者
年
D蜘ayake
&
1997
参加者
自閉症兜一日名
(平均月齢:5、,6;範固:43−7①
健常兜一16名
Cmssk埋
結晶
手続き
⊂平均月鰍51識範囲:42−7の
改良飯
分離/蒋会場颪に
S魯ange S掩陥tion おける反応
群麗に有意な差は見られなかった
ダウン症児一16名
(寧均月齢:55.1;範囲;39−70)
Dissa鰍e
&
Cros団ey
自門症児一1銘
1996
(平均月齢:51,6;範囲:43−70)
健常児一1銘
改良賑
(二二月齢:5穏;二丁:42・一70)
S繋ange S詮u謝on
分離/再会場面に
おける反応
(身体接触注裡,
自論症児は、明らかに母親に対して
アタッチメントを示していた
⑩
接近ε鳳3
ダウン症児一16名
e頑
(鴨月齢:55.1;軸:30−70)
袋。罎e踏,Ozon㎡釜
&
1993
麟aslin−Cole
R㎎㎝≦,◎z㎝繍
&
1991
Maslin−Cde
手職一21名
接近/接触を求める行動
{平均月鰍42」57;範囲:27−59)
改良販
∼御睡を維持する行勤
広範性理遅障平群一n名
S甘a㎎eS詑u幽㎝
接触拒否行動
回避的行動
など
(平均月齢=5a55;範囲:35−73)
自閉症児一1、名
広範性発遣瞳害児一6名
{平均月齢47.6;SDI沁.2)
他の績神門理を持つ毘童畦1名
(平均月齢:50訟SD=11.0)
自閉症児であっても…職との間に安定
したアタッチメントを形成しているが、
’発遷の逢れが見られる子どもも存在す
る。
捜近/接触を求める行動・
改良飯
S㎞nge S勘欲bn
接蝕を維持する行動
接触陶製行動
回避酌行動 など
群聞に有意な差は見られなかった
Tabk…2自閉症児を参二者として行われたアタッチメント研究
繍
Sigman
&
参加者
年
1989
Mundy
特需症児一璃名
(平均月齢:513;SD:112)
精神遅滞兜一14名
手続き
観察行動
改良叛
社会的行動
s伽ge S燃io匹
{加鵬hes,微笑など)
糊
接近行動
結果
舞闘に有意な差は見られなかった
(平均月齢:59.9;SD:13.3)
自閉症泥一15名
Sha朗ro,
Sherma馬
Cdama鵬
(平均月齢:⑳;範協:25−59}
柏87
広範牲発達陣害児一10名、
{平均月歯緊44;範囲:34三5の
&
K㏄h
S論nge S轍1◎鶉
言語障害究一8名
行動の変化
自己刺激行動
濤聞に有意な差は見られなかった
Mood c為a駒ge
(平均月齢:40;範囲:30−45}
精紳遅滞兇一3名
卜
㎝
(平均月齢魚範囲:38−63)
Sigman
&
自閉症児一14名
1984
{平均月齢:51。9;S翫11.2)
健常児一刑名
u㎎erα
改良版
Sセange S圃on
(平均月齢:46.6;SD=Z5)
Hoppes
&
Ha所s
自閉症毘の母親一21名
!990
(平均年齢:35」9;SD:5.11)
ダウン症児の母親一16名
(平均年齢=42.77;SD:5.81)
自b聞ches, snmi騒ng etc■.)
群薗に有意な差は見られなかった
が自閉症児は健常児と比較して、
遊び行動
アタッチメントを即するのに高
∈F宙認㎝aしsymbo髄。》
い認知能力が必要である
母親の感Oるアタッチ
親に比べて、少ないアタッチメン
トしか感じていなかった
母親としての満足度も自閉症児の
母親の方が有窟に低かった
社会的行動
自閉症児の母親はダウン症児の母
The l賦¢md
P㎝診epヒionαf Ch耐
A慧ac鳳
酬蹴em副
Gr繍碗cation s醜
メント
穏親としての満足度
10節 過去の研究の問題点
矛盾した結果が得られた理由として、まず用いた手続きの問題があげられる。
自閉症児におけるアタッチメント研究のほとんどにおいて、改良を加えている
とはいえ、もともとはアメリカの1歳児を対象として考案された方法である
Strange Situation法(Ainsworヒh, et al.,1978)が採用されている。自閉症児
のアタッチメント研究で用いられた参加者の年齢が、平均4歳から5歳である
ということを考えれば、Strange Situationにおける行動をそのままAinsworth
らの定義にあてはめることには問題があると考えられる。さらに、Strange
Situation法を用いることの問題点として、「日常生活における行動とStrange
Situationでの行動との対応を無視し、特別に設定されたストレス場面におけ
る母子再会反応がアタッチメントの評価の全てになっている」 (近藤,1993)
ということが挙げられる。この近藤の指摘は、母親の感じるアタッチメントは
低いにも関わらず、Strange Situationにおける行動のみで自閉症児にもアタ
ッチメントがあるとしている自閉症児のアタッチメント研究にも当てはまるも
のである。
以上の手続きの問題点に加えて、高い認知能力が必要である(Sigman&
Ungerer,1984)という研究結果や、 Rogersら(1991)が自閉症児にもアタ
ッチメントはあるが普通とは異なった処理過程を経て形成されていると述べて
いるように、自閉症児のアタッチメント行動が健常児のそれと同じであると結
論づけるには疑問が残る。そこで、以上の問題点を踏まえて本研究の目的に移
る。
28
11節 本研究の目的
過去の研究の問題点として示したように、自閉症児に本当にアタッチメント
はあるのかということに関しては、Strange Situation法以外の手続きで研究
が行われる必要がある。そこで、本研究はアタッチメントを評価する方法とし
て、日常生活でのアタッチメント行動を見るためのアタッチメントQ分類法
(Waters,1985)を用いてアタッチメントの評価を行い、自閉症児にアタッチ
メントはあるという過去の研究結果の検証を目的として行われた。
この方法を用いることの利点としては、家庭場面を含めて、比較的操作を加
えない場面での行動観察からアタッチメントが評価されるということや、比較
的幅広い年齢に対して適用することが可能であるということが挙げられる。
また、観察されるアタッチメント行動についても、Strange Situation法で
は、新奇でストレスフルな場面での泣き、微笑などの行動や母親に対する接近
/接触行動、抵抗行動など限られた行動しか観察されないのに対して、アタッ
チメントQ分類法においては、日常生活場面における様々な文脈において観察
される母親との接触/接近行動や母親や他者との相互交渉行動など多くの行動
の観察が可能である。
アタッチメントQ分類法は、健常児を参加者として行われた研究では多く用
いられており、Strange Situationによって得られた評価と一致する(Posada,
et aL,1995;Sagi, et aL,1995;Strayer, et aL,1995)という研究結果や、文化
によって違いはない(Posada, et aL,1995)ということも示されている。また、
最も重要なことであるが健常母子を参加者として、アタッチメントQ分類法に
よって得られた得点は母子関係を反映するものであるということも示されてお
り (Pederson, Moran, Sitko, Campbell, Ghesquire&Acton,1990;Teti&
McGourty,1996;Vaughn&Waters,1990;Vereijiken, et aL,1997)、本研究
の目的と合致する方法であるといえる。
通常、アタッチメントQ分類による評定は専門的な観察者が行うということ
になっている。しかしながら、観察者が家庭に入り観察を行うという場面は自
29
然な場面であるとは思われないし、特に自閉症児の場合において見ず知らずの
観察者が家庭にいるということは大きなバイアスとして機能すると考えられる。
また、母親と専門家の評価が一致しているということを示した研究(Teti,&
McGourty,1996)もあることから、親を観察者とすることの問題点(近藤,1993;
Verejiken,1995)よりも利点の方が大きいと思われるので、本研究では、アタ
ッチメントQ分類による評定を母親に行ってもらった。
また、自閉症児のアタッチメントに関する理論的仮説として、乳児期に示す
感覚異常によって母子相互交渉が阻害され、安定したアタッチメントの形成は
困難であると仮説をたてた。そこで、本研究では乳児期の感覚異常に対する
Retrospectiveなアンケートを母親に対して施行し、感覚異常とアタッチメン
トの関係を検証することも目的として行われた。
本研究の仮説として、以下に示す3つの仮説が立てられた。
1)Strange Situation法に比べてアタッチメントQ分類法の方が社会的な文
脈における行動を調べるには適していると考えられるために、アタッチメント
安定性得点において自閉症児は比較群よりも低い得点になる。
2)自閉症児は母親とのSocial lnteractionが乏しいことが予想されることか
ら、アタッチメントQ分類に含まれる項目の下位分類のうち、母親との相互交
渉行動、他者との相互交渉行動などのSocial lnteractionを反映する項目にお
ける得点は比較群よりも低い得点である。逆に、Survival Interactionを反映す
ると思われる、母親との接触行動、母親への接近行動などの項目における得点
は比較群と差はみられない。
3)乳児期の感覚異常に関するアンケートの得点とアタッチメント安定性得点
との関係については、感覚異常の得点が高いものは、乳時期の母子相互交渉が
阻害されていたと考えられる。そのために、アタッチメント安定性得点が低く
なる。
30
第2章 方法
1調査日時および回収率
〈アタッチメントQ分類法〉
健常乳幼児については、1998年7月から8月、および11月にかけて施行され
た。また、障害児については、1998年9月、および11月に調査を実施した。
健常乳幼児に関しては95部配布し、90部回収された。そのうちに、フェイ
スシートの記述もれなどによって利用できない資料が5部あり、有効回収率は
89%であった。
障害児に関しては49部配布し、46部回収された。そのうちに、フェイスシ
ートの記述もれなどによって利用できない資料はなく、有効回収率は94%であ
った。
〈感覚異常アンケート〉
健常乳幼児、障害児ともに、1998年11月に行われた。
感覚異常のアンケートは、アタッチメントQ分類に参加した健常児に対して、
95部配布し、85部回収された。そのうちに、記述もれや名前の記述がなくア
タッチメントQ分類との対応がとれないものが17部あったため、有効回収率
は72%であった。
障害児に関しても健常児と同様に、アタッチメントQ分類に参加した児童に
対して46部配布し、44部回収された。そのうちに、記述もれや名前の記述が
なくアタッチメントQ分類との対応がとれないものが2部あったため、有効回
収率は91%であった。
31
2 参加者
本研究における参加者は、健常乳幼児50名(平均月齢;42.38、範囲;15
∼103)、自閉症児20名(平均月齢;61.62、範囲;39∼90)、精神遅滞児
23名(平均月齢;60.11、範囲;40∼110)であった。健常乳幼児については、
自閉症児群との比較を行うために、生活年齢を合わせた群25名(以後、CAマ
ッチング群と記す)と発達年齢を合わせた群25名(以後、DAマッチング群と
記す)を設けた。しかしながら、精神遅滞児群は被験者数が少ないために完全
にCAマッチング群20名とDAマッチング群20名について分けることができ
ず、多くの参加者がCAマッチング群とDAマッチング群に重複して含まれて
いる。なお、健常乳幼児に関しては発達検査を行っておらず、発達年齢は生活
年齢に従った。各条件における平均月齢、範囲をTable3, Table 4(次頁参照)
に示す。
また、自閉症児に関しては幼時期自閉症診断尺度(CARS)を用いて、自閉
性得点を算出したところ平均37.5点(範囲;34.5∼53.5)であり、全ての参加
者が自閉症児の判定基準を満たしていた。
Table 3 CAマッチング条件における参加者
精神遅滞児
自閉症児
人数
男=女
平均生活月齢
(範囲)
平均発達年齢
(範囲)
母親の平均年齢
(範囲)
20名
2:18
61.6ヵ月
25名
13:12
40∼110ヵ月
22.3ヵ月
11∼42ヵ月
28。42ヵ月
61.2ヵ月
43∼100ヵ月
61.2ヵ月
16∼57ヵ月
32歳11ヵ月
43∼100ヵ月
33歳2ヵ月
24.6歳∼40.8歳
18歳∼44.8歳
34歳8ヵ月
29.52歳∼46,2歳
20名
6:14
60.11ヵ月
39∼90ヵ月
健常児
32
Table 4 DAマッチング条件におげる参加者
精神遅滞児
自閉症児
20名
人数
男:女
平均生活月齢
(範囲)
39∼90ヵ月
22.3ヵ月
11∼42ヵ月
母親の平均年齢
(範囲)
8:12
54.0ヵ月
24∼77ヵ月
25.2ヵ月
12∼57ヵ月
32歳9ヵ月
2:18
61,6ヵ月
平均発達年齢
(範囲)
20名
34歳8ヵ月
29.52歳∼46.2歳
24.6歳∼40、8歳
健常児
25名
12:13
23.6カ月
15∼32ヵ月
23,6ヵ月
15∼32カ月
28歳7カ月
25.1歳∼36.2歳
3 調査器具
本研究で用いられた調査器具は、Waters(1985)の開発したアタッチメン
トQ分類を近藤,Verijikenが相互翻訳を施し、日本語に訳された項目(詳細は
付録参照)であった。それらの項目をケント紙にコピーし、適当な大きさに切
り取ってカードとして使用した。
本研究で使用された感覚異常に関するアンケート(付表,38,39頁参照)は、
過去の研究(星野ら,1980;伊藤ら,1991;小泉ら,1980,1985;Volkmar,
Choen&Paul,1986;Wing,1969)によって自閉症児が乳児期に示していると
されている感覚異常に関する項目を参考にし、26の項目で構成された。回答は、
よく当てはまるから全く当てはまらないまでの5件法によって行われた。
4 手続き
〈アタッチメントQ分類〉
本研究では、乳幼児の行動観察を最も身近な存在である母親にアタッチメン
トQ分類を施行した。
33
go枚のカード
お子さんの行動の
特徴をよく表さない
最も
やや
少し
10枚 10枚 10枚
どちらでもない
一一
十
十
少し
特徴を表わす
やや
最も
10枚 玉0枚 10枚 10枚 10枚 10枚
図3 アタッチメントQ分類法の流れ
そのために、フェイスシートと障害児については乳幼児発達スケール(KDS)
の記述に関する教示を行った後、図3に示すアタッチメントQ分類の実施手続
きの流れを研究者およびその協力者によって母親に対して教示がなされ、実際
の分類は家庭で行われた。
母親に対して行われた教示は以下に示す通りである。
1)お子さんのEI頃の行動を思い浮かべながら以下の手続きを行ってください。
まず、・1つ1つのカードをよく読んで、お子さんの行動特徴を最もよく表わし
ていると思われるカードを右側に、最も当てはまらないと思われるカードを左
側に、また、そのどちらでもないカードを中央に置いてください。各場所に何
枚のカードがきても構いません。
2)右側に置いてあるカード(子どもの特徴をよく表わす)について、その中
でも、お子さんの行動の特徴に近いものを右側に、あまり当てはまらないカー
34
ドを左側に、その中間位のものを中央においてさらに3つの山を作ってくださ
い。各面に、何枚のカードがきても構いません。
3)左側に置いてあるカード(子どもの特徴を表わさない)についても同様に、
お子さんの行動に最も当てはまらないカードを左側に、それほどではないカー
ドを右側に、その中間位のものを中央において、さらに3つの山を作ってくだ
さい。記田に、何枚のカードがきても構いません。
4)中央に置いてあるカード(どちらともいえない)についても同様に、比較
的お子さんの行動を表わしていると思われるカードを右側に、その反対のもの
を左側に、どちらともいえないものを中央に置いてください。各山に何枚のカ
ードがきても構いません。
5)以上の手続きによって9つのカードの山ができました。次に、各山のカー
ドの枚数を調整します。まず、最も右側にあるカードの中からお子さんの行動
特徴に最もあうカードを10枚選び、余ったカードは左側に置いてください。
もし、カードの枚数が10枚に足りなければ、左側からお子さんの行動特徴に
最もあうものを選んで10枚にして下さい。
6)次に、右から2番目の山の中で、お子さんの行動特徴に最も近いものを10
枚選び、余ったカードは左側に置いてください。もし、カードの枚数が10枚
に足りなければ、左側からお子さんの行動特徴に最もあうものを選んで10枚
にして下さい。
7)右から3番目の山、4番目の山についても各山のカードが10枚になるよ
うに同様の手続きを行って下さい。
8)次に、最も左側にあるカードの中から、お子さんの行動特徴を最も表わさ
35
ないカードを10枚選び、余ったカードは右側に置いてください。もし、カー
ドの枚数が10枚に足りなければ、右側からお子さんの行動特徴を最も表わさ
ないものを選んで10枚にして下さい。
9)左から2番目の山も同様に、お子さんの行動特徴を最も表わさないものを
10枚選び、余ったカードは右側に置いてください。もし、カードの枚数が10
枚に足りなければ、右側からお子さんの行動特徴を最も表わさないものを選ん
で10枚にして下さい。
10)左から3番目の山、4番目の山についても各山のカードが10枚になるよ
うに同様の手続きを行って下さい。
11)以上の手続きを行うと、お子さんの行動特徴を表わすとも表わさないとも
いえない中央の山には10枚のカードが残っているはずです。枚数を確認して
ください。
12)最後に、各山に置かれたカードをそれぞれの袋にいれて下さい。どの山が
どの袋と対応しているのか間違わないようにご注意下さい。
〈感覚異常アンケート〉
感覚異常アンケートに関しては、本研究の協力者によって母親に配布された。
その際に、2歳ぐらいまでの子どもの状況をできるだけ正確に思い出すとい
うこと、質問塩出に対する回答はよく当てはまるから全く当てはまらないまで
の5件法で回答することなどの教示がなされた。
5 結果の処理
くアタッチメントQ分類〉
結果の処理は、アタッチメントQ分類法における標準分類(criterion
36
sorting)による分析を行った。また、アタッチメント安定性得点だけではなく、
アタッチメントQ分類における下位分類として、Posadaら(1995)の用いた
分類をもとに、母親との相互交渉行動、母親との接触行動、他者との相互交渉
行動、母親への接近行動における得点も算出し、分析を行った。
なお、標準分類における得点、および母親との相互交渉行動、母親との接触
行動、他者との相互交渉行動、母親への接近行動に分類される項目に関しては
付録に記載した。
〈感覚異常アンケート〉
感覚異常のアンケートに関しては、よく当てはまるを5点、やや当てはまる
を4点、どちらともいえないを3点、あまり当てはまらないを2点、全くあて
はまらないを1点というように得点化を行った。その際に、下に記す5項目に
関しては、全く当てはまらないを1点、よく当てはまるを5点というように得
点化を行った。
・人の声に対して特定の反応(声のほうを向く、笑う)を示していた
・特定の人の声(お母さん、お父さん)に対して特に敏感に反応していた
・くすぐるなどの身体接触を伴う遊びをすると喜んでいた
・人の顔を見ると特定の反応(目で追う、微笑む)を示していた
・特定の人(お母さん、お父さん)の顔をみると、他の人とは違った反応(笑
う、目で追う)を示していた
37
(附表1本研究において使用された感覚異常アンケート)
あ
全
ま
ど
く
り
ち
当
当
ら
て
は
て
と
奪
ま
言
ら
え
な
な
な
い
い
い
も
や
や
よ
く
当
て
は
て
は
る
る
ま
1.周囲の人の声が聞こえていないかのようにふるまうことがあった・・・・・・…
2.ガラガラなど音が出る玩具を提示するとぴっくりしていた、あるいは泣き出した・・
a突然予期せぬ音に対してびっくりしていた、あるいは泣き出した・・・・・・…
へ人の声に対して特定の反応(声のほうを向く、笑う)を示していた・・・・・…
5.特定の人の声(お母さん、お父さん)に対して特に敏感に反応していた・・・…
6.語しかけても無視されているように感じることが多かった・−・・・・・・・・…
7.体に触るとぴっくりしていた.あるいは泣き出した.りすることがあった・・・…
&抱き上げようとしても抵抗することがあった・・・・・・… 一・・・・・…
駄くすぐるなどの身体接融を梓う遊びをすると喜んでいた・一・・・・・・・…
10.服や靴下などの身につけるものを蝶がつたりした・・・・…
ゼ・・・・…
判.抱きやすい姿勢をとらなかった(抱きにくかった) r・・・・・・・・・・…
12.人の顔を見ると特定の反応(臼で逼う、微笑む》を示していた一・・・・…
13.人や者をじっと見ないでちらっとだけ見ていた・・・・・・・・・・・・・…
14、話しかけても視線が合わない時があった・・・・・・・・・・・・・・・・…
憶.目線をそらすことが多かった・・・・・・・・・・・・・・…
一’・・…
OD
oり
(附表2 本研究において使用された感覚異常アンケー,ト)
全
く
当
て
は
ま
ら
な
あ
ま
り
当
て
は
ま
ら
な
ど
ち
ら
と
も
言
え
な
や
や
当
て
は
ま
よ
く
当
て
は
ま
16.特定の人(お母さん、お父さん)の顔を見ると、他の人とは違った反応
(笑う、目で追う)を示していた・・・・・・・・・・・・・… ’・・・・…
17.巫触りに異常に興味を持つことがあった・・・・・・・・・・・・・・・・…
18.水遊びが大好ぎであった… .・・・・・・・・・・・…
一∴・・…
19.手や指などを目の前でひらひらさせるなどの行動があった・・・・・・・・…
20.食べ物の味には敏感であった(絶対に食べないものがあった)・・・・・・…
2呈.食べる前に食べ物の臭いをかぐなどの行動があった・・・・・…
∵・…
22.痛み1;対して鈍感であった{あまり泣かなかった) ・・・・・・・・・・・…
23.意昧もなく奇声を発することがあった・・・・・・・・・・・・・・・・・…
24.あやしても微笑むことが少なかった・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
25.嫌なことがあると決まってする行勤があった(耳をふさぐ体を慈らすなど)・・
26.つまさき立ちで歩くなどが見られた・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
①
◎Q
第3章 結果
〈事前分析〉
本研究によって得られたデータの分析を行う前に、事前分析として参加児の
年齢の違いと、男女によるアタッチメント安定性得点の違いと、母親の年齢に
よるアタッチメント安定性得点の違いについて分析を行った。
まず、参加児の年齢に差があるのかどうかを検定するために、群を要因とし
て1要因の分散分析を行った結果として、群間に有意な差はみられなかった。
次に、アタッチメント安定性得点における男女差について、自閉症児群を除
く健常児群と精神遅滞児群について、対応のないT検定を行った。その結果
CAマッチング条件とMAマッチング条件のそれぞれについて晶群ともに有意
な差は見られなかった。
さらに、母親の年齢によるアタッチメント安定性得点の違いについて分析を
行った。群を要因とする1要因の分散分析を行ったところ、CAマッチング条
件については有意な差がみられなかった。しかしながら、DAマッチング条件
においては有意な差がみられた(F(2,62)=14。73,p<.000)。そこで、母親の
年齢と子どものアタッチメント安定性得点との相関値を算出したところ、一
〇.113であり、有意な相関ではなかった。
以上の結果から、男女における差異や母親の年齢の差異は考慮せずに、今後
の分析を行っていく。
〈アタッチメント安定性得点〉
Figure 1に示しているのは、各参加者のアタッチメントQ分類法において
得られたカードの得点と標準分類における得点との相関値を算出して得られた
アタッチメント安定性得点である。縦軸にはアタッチメント安定性得点が、横
40
軸には群が示されている。アタッチメント安定性得点は標準分類との相関値で
あるため、最高得点は1点、最低得点は一1点である。
Figure 1を見ると、 CAマッチング条件、 DAマッチング条件ともに、自閉症
児群が他の比較群に比べて、アタッチメント安定性得点が低いということが分
かる。このことについて、群を要因とする1要因の分散分析を行ったところ、
CAマッチング条件において有意な差が見られた(F(2,62)ニ19.48, p<.
000)。その結果について、下位検定としてTukeyのHSD検定を行ったとこ
ろ、自閉症児群と健常児群(p<.000)および自閉症児群と精神遅滞児群
(p<.000)との間に有意な差が検出された。
また、DAマッチング条件についても同様な分析を行ったところ、群間に有
意な差がみられた(F(2,62)=7.95,p<.001)。さらに、下位検定を行った
ところ、自閉症児群と健常児群(p<.001)および自閉症児群と精神遅滞児群
(p<.004)との間に有意な差が検出された。
囲安定性得点
0,6
0,38
0.4
蒙
0.31
0.26
0.25
0.2
相i
三
§
鍛
一〇.01
群
0
重
自閉症児 健常児(CA) 健常児(DA)
精神遅滞児
(CA)
一〇.2
一〇.4
一〇.6
Flgure 1 群別にみたアタッチメント安定性得点
41
精神遅滞児
(CA)
<母親との相互交渉行動>
Figure 2に示しているのは、アタッチメントQ分類の項目の中から、
母親との相互交渉に関する項目を選びだし、相互交渉得点を算出したものであ
る。縦軸には母親との相互交渉得点が、横軸には群が示されている。
Figure 2を見ると、 CAマッチング条件、 DAマッチング条件ともに、自閉症
児群が比較群に比べて母親との相互交渉得点が低くなっていることが分かる。
このことについて群を要因とする1要因の分散分析を行ったところ、CAマッ
チング条件において有意な差が見られた(F(2,62)=15.69,p<.000)。この結
果について、下位検定としてTukeyのHSD検定を行ったところ、自閉症児群
と健常児群(p<.000)および自閉症児群と精神遅滞児群(p<.OOO)との間に
有意な差が検出された。
また、DAマッチング条件についても同様な分析を行ったところ、群間に有
意な差がみられた(F(2,62)ニ7.50,p<.001)。さらに、下位検定の結果、自閉
症児群と健常児群(p<.014)および自閉症児群と精神遅滞語群(p<.001)と
の間に有意な差が検出された。
0.6
0.53
0.51
0.42
0.4
茎
0.29
磁
旧1 0.2
竃
一〇,05
稼
盟 o
芹
磁.0.2
穫
自閉症児
鑓
群
健常児(CA) 健常児(DA)
(CA)
精神遅滞児
(DA)
一〇.4
一〇.6
Figure 2群別にみた母子相互交渉行動得点
42
精神遅滞児
<母親への身体接触行動>
Figure 3にはアタッチメントQ分類の項目の中から、母親との身体接触行
動に関する項目を選びだし、母親との接触行動得点を算出したものを示してい
る。縦軸には母親との接触行動得点が、横軸には群が示されている。
Figure 3を見ると、自閉症児群の身体接触行動得点はCAマッチング条件、
DAマッチング条件ともに、比較群と比べてやや低い得点になっている。この
結果について、群を要因とする1要因の分散分析を行ったところ、CAマッチ
ング条件、DAマッチング条件ともに群間に有意な差は見られなかった。
1團身体接触得点
0,6
0.38
Q.36
0.4
0.29
0.25
極
0.24
醸
0.2
蕪
謹 薫
轟》㌔
に
自閉症児
磁 一〇.2
群
繋
0
健常児(CA) 健常児(DA) 精神遅滞児
(CA)
(DA)
一〇.4
一〇.6
Figure 3群別にみた母親との身体接触行動得点
43
精神遅滞児
<母親への接近行動得点>
Figure 4にはアタッチメントQ分類の項目の中から、母親への接近行動に
関する項目を選びだし、母親への接近行動得点を算出したものを示している。
縦軸には母親への接近行動得点が、横軸には群が示されている。
Figure 4を見ると、 CAマッチング条件、 DAマッチング条件ともに、自閉
症児群が比較群と比べてやや低い得点になっていることが分かる。この結果に
ついて群を要因とする1要因の分散分析を行ったところ、CAマッチング条件
DAマッチング条件ともに群間に有意な差はみられなかった。
0.6
0.4.
0.21
0,20
0.21
0.2
に
0.13
0.07
旧{
0
薫 華
自閉症児
健常児(CA) 健常児(DA) 精神遅滞児
(CA)
(DA)
一〇,2
一〇.4
一〇.6
Figure 4群別にみた母親への接近行動得点
44
精神遅滞児
<他者との相互交渉行動得点>
Figure 5にはアタッチメントQ分類の項目の中から、他者との相互交渉行
動に関する項目を選びだし、他者との相互交渉行動得点を算出したものを示し
ている。縦軸には他者との相互交渉得点が、横軸には群が示されている。
Figure 5を見ると、 CAマッチング条件、 DAマッチング条件ともに、自閉
症児群が比較群と比べて顕著に低い得点になっていることが分かる。この結果
について群を要因とする1要因の分散分析を行ったところ、CAマッチング条
件において群間に有意な差が見られた(F(2,62)=19.94,p<.000)。この結果
について、下位検定としてTukeyのHSD検定を行ったところ、自閉症児群と
健常児群(p<.000)および自閉症児群と精神遅滞児群(p<.000)との間に有意
な差が検出された。
また、DAマッチング条件についても同様の分析を行ったところ、群間に有
意な差がみられた(F(2,62)=10.21,p<.000)。さらに、下位検定を行ったと
ころ、自閉症児群と健常児群(p<.000)および自閉症児群と精神遅滞児群
(p<.OO1)との間に有意な差が検出された。
国他者相互交渉得点
0,6
0.42
0.4
0.28
相i
O.24
0.2
虚
勢
0.27
自閉症児
0
群
健常児(CA) 健常児(DA) 精神遅滞児
睾
(CA)
一〇.2
(CA)
一〇.17
一〇.4
一〇.6
Figure 5群別にみた他者との相互交渉行動得点
45
精神遅滞児
〈アタッチメント安定性得点と下位分類の関係〉
Figure 6は、アタッチメント安定性得点とアタッチメントQ分類における下
位分類の得点との相関値を表わしたものである。それぞれの軸は、相関値を示
しており、最大値は1で最小値は一1である。しかしながら、負の相関を示す項
目はなかったため、最小値をOで表わしている。また、健常児群と精神遅滞児
群に関しては、各下位分類の得点についてCAマッチング条件とDAマッチン
グ条件との間で丁検定を行った結果、差がみられなかったために同一の群とし
て扱う。
Figure 6をみると、3群ともに各下位分類における得点はアタッチメント安
定性得点と正の相関があるように思われる。このことについて、相関値の危険
率を算出したところ、3群ともにアタッチメント安定性得点と全ての下位分類
における得点との間で有意な正の相関を示していた。
+自閉症児一一つ一一健常児一一▲一一精神遅滞児1
母子相互交渉行動得点
1
!
!
ρ
!
、、
、\
他者相互交渉行動得点
母親への接触行動得点
、
!
7
\
ノ
、、、
母親への接近行動得点
Figure 6 アタッチメント安定性得点と下位分類における得点との関係
46
<母子相互交渉行動得点と他者相互交渉行動得点の関係>
Figure 7は、母子相互交渉行動得点と他者相互交渉得点との関係を散布図に
よって示したものである。縦軸には母子相互交渉行動得点が、横軸には他者相
互交渉行動得点が示されている。
Figure 7をみると、健常児群においては特定の傾向がみられないが、自閉症
児群と精神遅滞児群については、母子相互交渉行動が高い得点であると他者相
互交渉行動における得点も高いという傾向がみられるように思われる。このこ
とに関して、相関値を算出したところ全体としてはr瓢.53(p<.000)という
有意な比較的高い正の相関が得られた。また、各群についてそれぞれ算出した
ところ、自閉症児群と精神遅滞児群についてはそれぞれ、r=.56(p<.019)、
r=.40(p<.011)という有意な比較的高い正の相関が得られた。しかしながら、
健常児に関してはr=.15というほとんど相関はみられないという結果であっ
た。
◆健常児(CA)◇健常児(DA}▲精神遅滞児(CA)△精神遅滞児(DA)×自閉症児
1
ρ。
〈〉《〉
〈〉
@〈〉 《〉
◆ 9
◇
@0.5
◆
遷
歴
;K
《〉
栫メt
@ム
@△ ◆米
◇ ◎<
竅 ▲
d◇♂
×
◆
叢
睾”1
栫掾
レ△ 96》
◇×
◆
「心・5漁
−0.5
×
宙
××
×
◇
◇x
〇.5
1
他者相互交渉行動得点
igure 7母子相互交渉行動得点と他者相互交渉行動得点との関係
7
堰「6皇 ◆ 亀 ◆ ◆
〈項目分析〉
アタッチメントQ分類に含まれる90項目について各項目ごとに、CAマッ
チング条件とDAマッチング条件のそれぞれについて、群を要因とする1要因
の分散分析を行った。その結果、自閉症児群と比較群との間に有意な差の見ら
れた項目は、CA年齢マッチング条件では37項目、DAマッチング条件では30
項目であった。そのなかでも、自閉症児の特徴を最も表わしていると考えられ
る健常児群と精神遅滞児群の両方において有意な差のみられた項目について、
CAマッチング条件をTable 5(49頁参照)に、 DAマッチング条件をTable 6
(50頁参照)に示した。
このTable 5を見ると、自閉症児群が比較群に比べて有意に得点が異なって
いる項目の特徴として、お客さんなど母親以外の他者が含まれる項目やお母さ
んの指示やお願いに対する遂行、社会的強化子に対する反応などの項目が挙げ
られる。
また、Table 6に示されている項目の多くはTable 5に示されている項目と
一致しているものであることが分かる。DAマッチング条件においてみられる
がCAマッチング条件においてはみられない項目としては、母親に自分の真似
をさせたがるという項目のみであり、Table 7(51頁参照)に示す自閉症児に
特徴的な項目は一貫して継続するものであるということが伺える。
48
Table 5 CAマッチング条件において自閉症児と比較群との間に有意差のあった項目
下位検定
項目
自閉健常
MR F値
自一健
自一精
精一健
自分からお母さんとものを分け合ったり、貸してくれたりする
4.207.406。0012.54pく.000 p<.026
新しくおもちゃになるものを見つけると、お母さんに見せに来たり、離れた所から見せたりする
2,356.725」523.86P〈.000 Pく.000
お母さんが促すと、初めて会った人に喜んで話したり、自分のできることを見せたりする
2.605.805.0510、34Pく.OOO Pく.006
お母さんが物を渡したり持ってきてくれるように言うと、従う
5.607.647.55 6.83 Pく.004Pく.009
お母さんの見えない所で遊んでいる時、お子さんは口分で好きな所へ行ってしまう
6.654.324。60 6,10 Pく.004 Pく.022
休憩はお母さんの膝の上でする
5.202.843.50 8.64 Pく.000Pく.020
お母さんも笑って面白そうであることを示すと、遊びの中の木きな音や振り画されることを受け入れ楽しむ
5.607,127.25 5.45 Pく.0潅6Pく.016
家に来たお客さんとその内に打ち解けるかも知れないが、初めはお客さんを無視したり避けたりする
5,203.㍉23.50 5.80 Pく.OO5 Pく,036
家を訪れるたいていの大人を無視する。自分自身の活動の方に興味を示す
5.402.443.0510.56Pく.000 Pく.OO4
家にくるお客さんで、お子さんに親しく接する人とはすぐに仲良くなる
5.056.886,75 4.67 pく.018 pく,042
家にお客さんいると、皆の注意を自分に集めたがる
2.354.92430 6.90 Pく.OO2 Pく.030
お母さんが部屋に入ってくると、自分の方から徴笑みを浮かべて語りかけたり、手を振ったりする
3.806,486100 9.36 Pく.000 Pく.006
お子さんがしたことをお客さんが面白がつたり褒めたりすると、何度も繰り返してする.
2。906.445.5017.20pく、000 p<.OOO
すぐにお母さんに腹を立てる
4・002・52琴255・。6P・・03。P・・013
お子さんがしたことをお母さんが面白がうたり褒めたりすると、何度も繰り返してする
4.507.486、8510.82Pく.000 Pく.OO3
①
寸
Table 6 DAマッチング条件において自閉症児と比較群の間に有意差が見られた項呂
下位検定
項目
自閉健常 MR F埴
自一健
自一精
精一健
庭s
新しくおもちゃになるものを見つけると、お母さんに見せに来たり、離れた所から見せたりする
2.356.725、{523.86 Pく.000Pく.000
お母さんが促すと、初めて会った人に喜んで話したり、自分のできることを見せたりすう
2.605。805.05唯O.34Pく.000 Pく.006
NS
家を訪れるたいていの大人を無視する。面分自身の活動の方に興味を示す
5.402.443,0510。56p<。000 p<.004
NS
家にお客さんいると、皆の域恵を自分に集めたがる
2.354.924.30 6.90 p<.002p<.030
NS
お母さんが部屋に入ってくると、白分の方から微笑みを浮かべて語りかけたり、手を振ったりする
3・806・486・009136Pく0。。P・・0。6
NS
お子さんがしたことをお客さんが面白がつたり褒めたりすると、何度も繰り返してする
2.906.445.5017.20p<.OOO p<書OOO
NS
お母さんに自分の真傑をさせようとする
3.905.845.75 6.66 p<.004p<。010
NS
お子さんがしたことをお母さんが面白がつたり褒めたりすると、何度も繰り返してする
4,507.48・6.8510.82pく.000 p<.003
NS
o
め
Table 7 CAマッチング条件とDAマッチング条件の両方において自閉症児と比較群との間に有意差のあった項目
下位検定
項目
自閉健常 MR F値
自・健
自一精
精一健
新しくおもちゃになるものを見つけると、お母さんに見せに来たり、離れた所から見せたりする
2.356.725』523.86pく.000 p〈,000
’NS
お母さんが促すと、初めて会った人に喜んで話したり、自分のできることを見せたりする
2.605.805.0510β4p<.000 pく006
NS
家に来たお客さんとその内に打ち解けるかも知れないが、初めはお客さんを無視したり避けたりする
5203.123.50 5.80 pく.005p〈.036
NS
家を訪れるたいていの大人を無視する。自分自身の活動の方に興味を示す
5.402.443.0510.56ρく.000 pく,OO4
NS
お子さんがしたことをお客さんが面白がつたり褒めたりすると、何度も繰り返してする
2,906.445.5017。20Pく.000 Pく,000
NS
お子さんがしたことをお母さんが颪白がつたり褒めたりすると、何度も繰り返してする
4,507.486.8510.82p<,000 pく,003.
NS
回
め
〈感覚異常アンケート〉
Figure 8は、感覚異常アンケートによって得られた結果を得点化し、群別に
示したものである。縦軸には感覚得点が、横軸には群が示されている。
Figure 8をみると、自閉症児の感覚得点が比較群よりも高い得点であるとい
うことが分かる。このことについて、群を要因とする1要因の分散分析を行っ
たところ、有意な差がみられた(F(4,81)=3.37,p<.013)。この結果について
下位検定としてTukeyのHSD検定を行ったところ自閉症児と健常児のCAマ
ッチング条件(p<.043)においてのみ有意な差が検出された。
犀感覚得魚
100
80
75.47
58.64
旧{ 60
蒙
66.47
65.77
63.61
、、
灘
鍛 40
謬 輪
悪
饗
懇
20
餐
0
自閉症児
遮霞
健常児(CA)健常児(DA)
精神遅滞児 精神遅滞児
(CA)
Figure 8 群別にみた感覚得点
52
(DA)
群
〈アタッチメント安定性得点と感覚得点〉
Figure 9は、感覚得点とアタッチメント安定性得点との関係を散布図で示し
ている。縦軸にはナタッチメント安定性得点が、横軸には感覚得点が示されて
いる。感覚得点は最も低い得点が26点であり、最も高い得点は130点である。
Figure 9をみると、全体として感覚得点が高いとアタッチメント安定性得点
が低くなっているという傾向が見られる。このことに関して、感覚得点とアタ
ッチメント安定性得点の相関値を算出したところ、r=一.51(p<.OOO)という
有意な比較的高い負の相関が得られた。また、各群についてもそれぞれ相関値
を算出したところ、自閉症児と精神遅滞児に関・してはそれぞれ、rニー.47
(p<.060)とF一.49(p<。002)という有意な比較的高い負の相関がみられた。
しかしながら、健常児に関しては、rニー.17というほとんど相関がみられない
という結果であった。
◆健常児(CA)◇健常児(DA)▲精神遅滞児(CA)△精神遅滞児(DA)×自閉症児
1
▲
◇ ▲
な全蟻条;∵∵△
0.5
叢
生
0
2
40
…陳、×・・.▲×1・・
×米
×
×
一〇.5
一1
感覚得点
Figure 9感覚得点とアタッチメント安定性得点の関係
53
120
Table 8感嵩得点
互六;押 得占、
互六ご・’一 得占との
母子相互交渉行動
一.47†
他者相互交渉行動
一.66★★
i犀=世旧’
当旧 ’
旧 も
一.27
一.49六六
.01
一.57★★
★索
@p<.01, † p<,10
Table 8には、感覚得点と母子相互交渉行動得点、および他者相互交渉行動
得点との相関値を算出し、各群ごとに示したものである。
Table 8をみると、健常児群は感覚得点と母子相互交渉行動、他者相互交渉
行動との間に有意な相関はみられなかった。しかしながら、自閉症児群につい
ては感覚得点と母子相互交渉行動得点の間に有意傾向がみられる比較的高い負
の相関が、他者相互交渉行動得点との間には有意な比較的高い負の相関がみら
れた。また、精神遅滞豆単については、母子相互交渉行動得点と他者相互交渉
行動得点との間に有意な比較的高い負の相関が得られた。
54
第4章 考察
1節 本研究における結果の考察
本研究における仮説は、自閉症児は乳児期に示す感覚異常のために、母子相
互交渉が阻害され、その結果としてアタッチメントの形成が困難であるという
ものであった。結論からいうと、本研究結果により得られた結果は仮説を支持
する結果であり、従来の自閉症児を参加者として行われた研究によって示され
た「自閉症児にもアタッチメントはある」 (Dissanayake&Crossley,1996,
1997;Roger’s, et aL,1991,1993;Shapiro, et aL,1987;Sigman&Mundy,
1989;Sigman&Ungerer,1984)という結果とは矛盾したものであった。そこ
で、過去の研究結果と本研究によって得られた結果の矛盾している点や、本研
究によって新しく示された点をみることによって自閉症児にアタッチメントは
あるのかという問題と、アタッチメントと社会性の発達に関して考察を加える
ことを本章の目的とする。
〈自閉症児にアタッチメントはあるのか?〉
本研究は、過去の研究のほとんどがStrange Situation法を用いて行われた
という問題点をふまえ、アタッチメントQ分類法を用いてアタッチメントの評
価を行った。その結果、Figure 1(41頁参照)に示されているように、自閉症
児のアタッチメント安定性得点は、健常児群と精神遅滞立山と比較して低い得
点であった。つまり、自閉症児は日常生活場面においては、アタッチメント行
動をあまり示しておらず、母親との間に安定したアタッチメントを形成できて
いないということが示された。この結果は、自閉症児の母親はあまりアタッチ
メントを感じていないというHoppes&Harris(1990)らの研究結果を支持す
るものであり、従来の自閉症児を参加者として行われたアタッチメント研究の
結果は支持しないものであった。このような結果が得られた理由としては、用
55
いた手続きの違いが挙げられる。
図9(次頁参照)に示したように、Strange Situation法とアタッチメントQ
分類法において観察されるアタッチメント行動は、母親への接近や接触行動、
母子相互交渉行動などであり、方法によって大きな違いはみられない。しかし
ながら、それらの行動が観察される文脈は大きく異なっている。Strange
Situation法においては、新奇な場面設定において見知らね人(Stranger)が
現われるという乳児にとって非常にストレスフルな状況において観察される。
それに対してアタッチメントQ分類法は日常生活場面という自然な文脈状況
において、アタッチメント行動が観察される。
このように観察される文脈が異なることによって、アタッチメント行動の生
起要因に大きな違いが生じてくることが考えられる。嫌悪的な状況におけるア
タッチメント行動の生起要因としては、嫌悪的な状況を少しでも快適な状況に
変化させるという要因が大きいと考えられる。また、非嫌悪状況におかれてい
る場合には、アタッチメント行動の生起要因としては母親との相互交渉や他者
との相互交渉においてどの程度強化を受けてきたのかという過去の強化歴が重
要であると考えられる。つまり、Strange Situationにおいて観察されるアタ
ッチメント行動は、母子相互交渉におけるSurvival lnteractionを反映する行
動であり、アタッチメントQ分類によって観察されるアタッチメント行動は
Social lnteractionを反映する行動であると言える。
56
Strange Situation
探索行動
Strangerとの相互交渉
Survival Interaction
母親との相互交渉
泣きの程度
嫌悪的状況
接近行動
接触行動
Social Interaction
母親との相互交渉
他者との相互交渉
非嫌悪的野況
探索行動
アタッチメントQ分類法
図9 Strange Situation法とアタッチメントQ分類法の違い
このように考えると、過去の研究においては自閉症児の嫌悪状況における行
動からアタッチメントを評価し、本研究においては非嫌悪状況における行動か
ら評価を行ったという違いがあるのである。この違いが本研究結果と過去の研
究結果が矛盾した大きな要因であると考えられる。本研究においても、Figure
3(43頁参照)、Figure 4(44頁参照)に示されるように、母親がいなくなる
というような嫌悪状況における行動である母親に対する接近行動や接触行動に
関して自閉症児群と比較群の間に差がみられなかった。つまり、嫌悪的な状況
における行動のみをみると「自閉症児にもアタッチメントがある」ということ
ができるのである。
しかしながら、Figure 2(42頁参照)やFigure 5(45頁参照)に示される
ように、社会的な行動である母子相互交渉行動や他者相互交渉行動に関しては
自閉症児群と比較群との間に大きな差がみられた。アタッチメントの評価を行
う際には日常生活場面における行動観察が非常に重要である(Ainsworth,
57
1987;近藤,1993)ということを考えれば、自閉症児にアタッチメントはある
とは言い難い。
以上の考察から、自閉症児のアタッチメントは健常児と比較して、安定して
いないという結果が得られた。しかしながら、嫌悪状況においては母親に対す
る接近行動や接触行動などのアタッチメント行動を示しうることが示された。
〈アタッチメントと社会性の発達〉
過去の研究結果から、Rogersら(1991,1993)は自閉症児の社会性のなさ
とアタッチメントは関係がないとしている。しかしながら、アタッチメントQ
分類の下位分類の母子相互交渉行動や他者相互交渉行動に関しては自閉症児群
と比較群との間に大きな差がみられた。この結果はアタッチメントと社会性の
なさとの関係を示唆する結果である。
このような矛盾する結果が得られた理由については、前述したようにアタッ
チメントの評価方法の違いが挙げられる。社会性の発達は母子相互交渉におけ
るSocial Interactionによって促進されると考えられるために、非嫌悪状況に
おける行動観察が重要となる。それにも関わらず、Rogersら(1991,1993)
は嫌悪状況における行動観察しか行っていないために矛盾した結果が得られた
と思われる。
しかしながら、自閉症児のアタッチメントが健常児とは異なった処理過程を
経て形成される(Rogers, et al.,1991)のであれば、自閉症児の示す社会性の
なさとアタッチメントは関係がないのかもしれない。そこで、自閉症児のアタ
ッチメントの形成に関する問題について考察を加える。
アタッチメントの形成過程については、健常児についても明確な研究はなさ
れていない。しかしながら、アタッチメントQ分類の下位分類としては、母子
相互交渉行動、母親への身体接触行動、母親への接近行動、他者相互交渉行動
がある。これらの行動は、健常児の研究においてアタッチメントの形成におい
て重要であるとされる行動であり、下位分類と安定性得点との関係を分析する
ことによって、何らかの示唆が得られるのではないかと思われる。もし、自閉
58
症児が健常児と異なった処理過程を経てアタッチメントを形成するのであれば、
アタッチメント安定性得点と下位分類の得点との関係は、比較群と異なるもの
になることが予想される。また、下位分類のなかでも最も社会性に関連してい
る他者相互交渉とアタッチメント安定性との関係をみることによってアタッチ
メントと社会性の発達との関係がみられると考えられる。
Figure 6(46頁参照)に示すように、自閉症児の下位分類における得点とア
タッチメント安定性得点との相関値は有意な比較的高い正の相関を示している。
このことによって、自閉症児は健常児と同様に母子相互交渉や母親への接触な
どを介してアタッチメントを形成するということが示唆される。また、他者相
互交渉得点とアタッチメント安定性得点との関係をみると、自閉症出面も比較
群と同様に有意に比較的高い相関が示されている。つまり、自閉症児であって
もアタッチメント安定性得点の高い者は他者相互交渉における得点が高い、つ
まりは社会性が高いということが示唆される。
さらに、Figure 7(47頁参照)に示されるように母子相互交渉行動と他者相
互交渉行動の得点の間において、自閉症児群は有意な比較的高い正の相関を示
している。この結果のみでは、母子相互交渉行動得点が高いと他者相互交渉行
動得点が高くなるのか、あるいはその逆であるのかについては明確ではない。
しかしながら、乳幼児期における母子関係を改善することによって自閉症児に
特徴的である社会性の障害(Rumsey, et aL,1987)の軽減が可能であるという
示唆は得られたのではないかと考えられる。
そこで、自閉症児のアタッチメント形成を妨げる要因について考察を加える。
〈アタッチメントの形成を妨げる要因〉
本研究では、自閉症児のアタッチメントに関する理論的仮説として、感覚異
常によって母子相互交渉が阻害され、その結果としてアタッチメントの形成が
困難であるという仮説を立てた。その仮説を検証するために、母親に対して乳
児期に示す感覚異常に対するRetrospectiveなアンケートを施行し、アタッチ
59
メント安定性得点との関係を調べた。その結果、Figure 9(53頁参照)に示し
たように自閉症児に関しては、r=一。47という有意な比較的高い負の相関が得
られた。つまり、母親が乳児期に多くの感覚異常を示していたと報告した子ど
もは、アタッチメント安定性得点が低いという仮説を検証する結果が得られた
のである。
また、Table 8(54頁参照)に示されるように自閉症児群と精神遅滞児群に
ついては、感覚得点と母子相互交渉行動得点および他者相互交渉行動得点との
間に有意、あるいは有意傾向のみられる比較的高い負の相関がみられた。
この結果から、乳児期に多くの感覚異常を示していたものは、その後の発達
において母子相互交渉や他者相互交渉を適切に行えないということやアタッチ
メントの形成が困難であると言える。
また、乳児の気質(Calkins&Fox,1992;Crockenberg,1981;Donovan
leavltt,1989;Seifer, et aL,1996;Stillman, et al.,1996;Tompson, et aL,
1988;Vaughn et aL,1992)、家庭の経済状態の悪さ(Valenzuela,1990;
Vaughn, et aL,1979;Wille,1991)、夫婦関係(Eiden&Leonard,1996;数井・
無藤・園田,1996)、被刺激性の高さ(Spangler, et aL,1996;Waters, et aL,
1980)などの過去の研究によって示されているアタッチメントの形成を困難に
する要因については本研究では検討することができなかった。今後の課題であ
るといえる。
〈アタッチメント形成のための援助〉
自閉症児のほとんどの親が乳幼児期において、自分に対する子どものアタッ
チメントについて心配したという報告がある(Le Counter et al.,1989;Ohta
et aL,1987)。また、障害を持つ子どもの母親はDistressを示しやすく安定し
たアタッチメントを形成するために、サポートを行う必要性が指摘されている
(Marvin,&Pianta,1996)ことから、自閉症児の母子関係を安定させるため
の援助に関して考察を加える。
60
過去の臨床的な介入研究においては、参加者は養子縁組みをした家庭
(Juffert, et al.,1997)、不安定なアタッチメントを形成している母子
(Barnett, et al.,1991;Barnett, et al,1987;Lieberman, et al.,1991;Lyons−
Ruth, et a1.,1990)、lrritabilityの高い子どもの母親(Van den Boom,1994)、
発達障害児やアタッチメント障害の子ども(Chinitz,1995)などである。介入
方法としてはSocial Supportや社会的資源の利用を教示したり、本やVTRな
どで理想的な母子相互交渉に関する知識を提示したりするなど方法が用いられ
ている。そのような介入の結果、健常児においてはアタッチメントの形成が促
されるなどの効果が得られている。
健常児における介入研究の結果を自閉症児のアタッチメント形成に適用する
場合に、大きな問題となるのが乳幼児期における自閉症の診断が困難であると
いうことである。この問題は乳幼児の介入研究における妥当性の問題(Bijou,
1998)でもあり、アタッチメントの発達と関連させた指標が必要である。
このような問題を考える際に、本研究によって得られたアタッチメントQ分
類の項目分析の結果は示唆に富むものであると考えられる。
Table 5,6,7(49,50,51頁参照)に示されるように、いくつかの項目におい
て自閉症児に特徴的な項目が見い出された。それらの項目には、DSM一川や
lCD−10などに記載されている自閉症児の診断基準と一致するものが多くある。
それらの関係を簡単に示すと次のようなものがある。
1)アタッチメントQ分類に含まれる、家に来たお客さんにすぐに慣れること
ができるという項目や、家を訪れるたいていの大人を無視し、自分自身の活動
の方に興味を示すという項目などは、他者の存在、または感情に気付くことの
著しい欠陥(DSM−lll)と一致している。
2)アタッチメントQ分類に含まれる、お母さんが物を渡したり持ってきてく
れるように言うと従うなどの項目やお母さんが部屋に入ってくると、自分の方
から微笑みを浮かべて語りかけたり手を振ったりするなどの項目は、視線表
61
情・身振りなどを適切に使用して、相手とのやりとりを調整することができない
(℃D−10)という基準や、相手の感情に対する反応が乏しかったり異常だった
りすることで示される社会一跡緒論相互関係の欠如(ICD−10)と一致するもの
である。
3)アタッチメントQ分類に含まれる、お母さんの見えない所で遊んでいる時、
子どもは自分の好きな所へ行ってしまうという項目や新しく玩具になるものを
見つけるとお母さんに見せにくるなどの項目は、自閉症児は分離不安を示さな
い(Freeman,&Ritvo,1984)という特徴や、後者については喜び、興味、達
成感を相手と自発的に分かち合おうとしない(ICD−10)と一致するものである。
上述のアタッチメントQ分類に含まれる項目は、DSM−lllやICD−10などに
含まれる診断基準に比べて行動や行動の出現する文脈が詳細に記載されており、
判別が容易であるという利点があり、自閉症児の確定診断がなくても、アタッ
チメントに関するハイリスク児のスクリーニングが可能である。
また、本研究では乳幼児期に示す感覚異常とアタッチメントの関係が示唆さ
れた。健常児についても、被刺激性が高いと安定したアタッチメントの形成が
困難であるという結果(Spangler, et al.,1996;Waters, et al.,1980)が得られ
ていることから、NBAS(Neonatal Behavior Assessment Scale)やその他の
一般化された感覚異常に関するテストを用いて、アタッチメントに関するハイ
リスク児のスクリーニングを行うことの有用性が伺える。
本研究によって、アタッチメントに関するハイリスク児のスクリーニングは
可能であるということが示された。次に、安定した母子関係の形成を援助する
ための方法にはどのようなものがあるのかについて考察を加える。
過去の研究によって多く用いられている介入方法は、Social SupPortの充実
(Barnett, et aL,1987;Lyons−Ruth, et al.,1990)や、母親に対するカウンセ
リング(Van den Boom,1994;Lieberman, et aL,1991)など主に母親のサポ
ートに重点がおかれたものである。これらの介入を、母子相互交渉の際の母親
62
の動機づけ要因を高めるための手段として用いることは重要である。特に、自
閉症児に関しては、アタッチメントについてほとんどの親が心配したという研
究結果もあることから、母親のサポートを充実させていくことが必要である。
それに加えて、アタッチメントの形成にとって最も重要である母子相互交渉
を円滑に進めるための援助が必要である。現在の段階では、母子相互交渉その
ものに焦点をあてた研究は少なく、明確な方法はないといえる。この問題はア
タッチメント研究の大きな課題であり、今後の研究結果の集積が待たれるが、
本研究結果からいくつかの示唆は得られたと考えられる。
まず、自閉症児や精神遅滞児については感覚異常とアタッチメントの安定性
との間に関係がみられたということである。本研究結果では、どのような感覚
異常がどのようにアタッチメントの形成に影響を与えるのかということは明確
ではなく、今後の課題である。しかしながら、感覚異常とアタッチメントに関
係があるということが分かっていれば、母親の母子相互交渉に対する動機づけ
の低減を防ぐ方法も考えられる。また、乳児の母親からの刺激に対する敏感性
を最も高めるための環境調整を行うことが可能であると考えられる。
さらに、項目分析の結果からアタッチメントに関するハイリスク児のスクリ
ーニングが可能であり、自閉症児に特徴的な項目もいくつかみられた。今後の
研究で項目の精緻化を行うことにより、今までブラックボックスとなっていた
自閉症児の乳児期の母子相互交渉の研究が可能になるのではないかと考えられ
る。
アタッチメントに関する臨床的な介入研究は始まったばかりの分野であり、
特に障害を持った子どもに関する研究は少ない。今後、障害を持つ子どもの親
に対するサポートを充実させていくことはもちろんのことであるが、障害を持
つ子ども自身に焦点を当てた研究が多くなされ、適切なサービスの提供がなさ
れる必要があるであろう。
63
2節 本研究の問題点
本研究は、自閉症児にもアタッチメントはあるのかどうかを検証するために
アタッチメントQ分類法を用いてアタッチメントの評価が行われた。その結果、
自閉症児は日常生活においてはアタッチメント行動をあまり生起しておらず、
アタッチメントの形成が困難であるということが示された。
しかしながら、本研究においてはアタッチメントQ分類を専門家が分類する
のではなく、母親が分類を行った。過去の研究で、専門家の分類結果と母親の
分類結果が一致していたということを示す研究もある(Teti&McGourty,
1996)が、母親の子どもに対する知覚が結果に影響を与えている可能性は否め
ない。本来ならば、実験者が実際に子どもの行動観察を行い、信頼性を測定す
ることが望ましいが、本研究においては行えなかった。今後、専門家など第3
者の分類との一致率を算出していく必要がある。
また、自閉症児の特徴をより明確化するためには比較群の選定が非常に重要
である(Sigman&Mundy,1989)ということが指摘されている。本研究にお
いては、アタッチメント行動を調べるという目的のために、最低必要であると
思われる生活年齢と発達年齢を統制するのみであった。そのために、過去の研
究で指摘されている認知能力とアタッチメントの関係性(Rogers, et a1,1991;
Sigman&Mundy,1989)については明確な回答を示すことはできなかった。
今後の課題として、言語能力や認知能力との関係も明確にしていかなければな
らないと考えられる。
本研究では、上記の目的に加えて、自閉症児の示す感覚異常とアタッチメン
トに関する仮説をたて、それを検証するという目的があった。そこで、母親に
乳児期の感覚異常に関するRetrospectiveなアンケートを施行した。その結果、
乳児期に示す感覚異常とアタッチメント安定性得点との関係が示された。しか
しながら、本研究で用いた方法はRetrospectiveなアンケートであり、参加児
の生活年齢が平均5歳であるということを考えると2年から3年前のことを思
64
い出して回答をするということになる。つまり、前述したアタッチメントQ分
類と同様に、母親の子どもに対する知覚が結果に影響を与えている可能性は否
めない。
また、本研究によって得られた結果の多くは相関値によって示されている。
そのために、アタッチメントと社会性や感覚異常などとの関係性が示されたの
みであり、感覚異常がどのようにアタッチメントに影響を与えているのかとい
うような因果関係は示されていない。本研究によって示されたいくつかの関係
性について、明確にしていくということが今後の課題である。
65
3節 今後の課題
今後の課題としては、方法論的な課題と研究課題とに分類される。
1)方法論的な課題
方法論的な課題としては、問題点として指摘した比較群の統制を行うという
ことや信頼性を高めるということが挙げられる。
比較群の統制を正確に行うことによって、心の理論課題(Attwood, Frith&
Hermelin,1988;Baron−Choen,1988,1989a,1989b,1989c;別府,1997;
Boucher,1989;Charman&Baron−Choen,1992;Happe,1995,1997;K龍n,
Volkmar&Sparrow,1992;Perner, Frith, Leslie&Leekam,1989;Ozonoff&
Miller,1995;Ozonoff, Pennington&Rogers,1991;Prior, Dahlstrom&
Squires,1990;Tager−Flusberg,1992)に代表される認知の問題(大浜,1988)
や、感情(Baron−Choen,1991;Bormann−Kischkel, Vilsmeier&Baude,1995;
Braverman, Fein, Lucci&Waterhouse,1989;Hobson,1986a,1986b,1989,;
Hobson&Lee,1989;James&Tager−Flusberg,1994;Kasari, Sigman,
Baugar士ner&Stipek,1993;Kasari, Mundy&Yirmiya,1990;Lainhart&
Folstein,1994;Ozonoff, et al.,1990;Sigman, Kasari, Know&Yirmiya,1992;
Snow, Hertzig&Shapiro,1987)などのアタッチメントと関連があると思われ
る分野との関係も明確にしていくことができると考えられる。
また、自閉症児のアタッチメントを調べる方法としてのStrange Situation
法やアタッチメントQ分類法の妥当性に関する研究が必要であると思われる。
健常児に関しては、Strange Situationにおける行動と日常生活場面での行
動との間に対応関係がある(Posada, et aL,1995;Sagi, et al.,1995;Strayer,
et aL,1995)ということが確認されている。そのために、 Strange Situation
法によってアタッチメントの評価が可能なのである。しかしながら、自閉症児
に関しては対応関係に関する研究がなされていない。本研究においても、アタ
ッチメントQ分類法を行ったのみであり、Strange Situation法における行動
66
との対応関係については明確になっていない。今後の課題として、様々なアタ
ッチメントの評価方法を検討し、自閉症という障害特徴も考慮した方法の確立
がなされなければならない。
さらに、本研究においては自閉症児であっても母親への接近行動や接触行動
などのアタッチメント行動は生起しているという結果が得られた。しかしなが
らそれらの行動の生起要因や生起後の結果については明確ではなく、健常児と
全く同じ行動であるとは言えない。アタッチメント行動の生起要因や生起後の
結果についての研究は、行動観察のみでは困難である。その際に、利用できる
方法として生理的な指標が挙げられる。過去に健常児を参加児として、心拍数
やコルチゾールという生理的な指標を用いた研究において、接近行動や接触行
動を伴わない不安定型の子どもは、安定型に比べて強いストレスを感じている
ということが示されている(Calkins&Fox,1992;Hertsgaard, Gunnar,
Erickson&Nachmias,1995;Nachmias, Gunnar, Mangelsdorft, Parri廿z&
Buss,1996;Spangler&Grossmann,1993)。つまり、母親との分離に際して
Distressをあまり示さず、行動観察のみでは不安を感じていないように思える
不安定型の子どもであるが、実際には強い不安を示していることが示されたの
である。このように、行動観察のみでは測定できないRespondent行動を生理
的指標を用いることによって観察することによってより重要な知見が得られる
と考えられる。
2)研究課題
今後の研究課題としては、アタッチメントに対する臨床的な研究が挙げられ
る。現在のアタッチメントに関する臨床的な研究は、Social Supportや社会的
資源の利用を教示したり、本やVTRなどで理想的な母子相互交渉に関する知識
を提示したりするなどの介入方法が用いられている(Barnett, et aL,1991;
Barnett, et al,1987;Chinitz,1995;Jufferヒ, et al.,1997;Lieberman, et al.,
1991;Lyons−Ruth, et al.,1990;Van den Boom,1994)。その結果として、介
入による効果はある程度上がっている。しかしながら、研究がはじまったばか
67
りの分野であり、まだ明確な介入方法はないという状況である。明確な介入方
法を確立するために最も重要であると考えられるのは、乳児期における母子相
互交渉や身体接触の頻度などアタッチメントの形成にとって重要であるとされ
る要因(Blehar, et aL,1977;Egeland,&Faber,1984;Brown, et al.,1993;
Cox, et al.,1992)とその後の発達における特徴(Lyon−Ruth, et aL,1993;
Rothbaum, et aL,1995)との関係を明確にしていくということであると考えら
れる。現在のアタッチメント研究においては、図10(次頁参照)に示すように
アタッチメントの評価に影響を与えている要因に関する研究は多く行われ、
様々な要因が挙げられている。また、アタッチメントの評価とその後の発達に
関する研究も多くなされおり、社会性の発達(Berlin, et al.,1995;
Easterbrooks,&Lamb,1979;LaFreniere,&Sroufe,1985;Oppenheim, et
aL,1988)や学業成績(Jacobsen,&Hofmann,1997)などとの関係が示され
ている。しかしながら、アタッチメントの評価で安定している子どもはなぜ、
社会性の発達がよいのかという問題については明確な回答はない。つまり、図
10に示すA−B間とB−C間の研究は多く行われているが、A−C間の研究が少
ないのである。乳児期における母子相互交渉でどのようなことが学習され、そ
のことが発達にどのような影響を与えるのであるのかという問題に関する体系
的な研究を行う必要があると考えられる。このような問題を明確にすることに
よって、乳児期におけるアタッチメントに関する臨床的な研究の発展が望める
と考えられる。
68
A
アタッチメントの
形成要因
ウ
B
アタッチメントの
評価
ウ
C
一一一
、レ
その後の発達
図10 アタッチメント研究の問題点
また、本研究によって得られた感覚異常とアタッチメントの関係に関しても
今後の研究課題である。健常児については、NBASなど一般化されたテストを
用いて行われた研究から、被刺激性が高い子どもは安定したアタッチメントの
形成が困難である(Spangler, et aL 1996;Waters, et aL,1980)ということが
示されている。本研究における結果から、自閉症児についても感覚異常とアタ
ッチメント、母子相互交渉行動、他者相互交渉行動の関係が示唆された。また、
母子相互交渉能力が高いと他者相互交渉能力が高いということも示唆された。
このような結果から、感覚異常によって母子相互交渉が阻害され、その結果と
して社会性の発達が損なわれるという仮説はある程度立証されたといえる。し
かしながら、相関関係が示されたのみであり今後の研究によって因果関係を立
証するとともに、臨床的な知見を見い出す必要がある。
さらに、本研究で用いたアタッチメントQ分類法をアタッチメントの評価を
行うための道具ではなく、臨床的に活用していく方法が考えられる。アタッチ
メントQ分類に含まれる項目には、自閉症児の障害特徴を示す項目が多く含ま
69
れている。しかも、具体的な文脈における具体的な行動が記されているために、
DSM−lllやICD−10よりも判別が容易である。すなわち、本研究によって得ら
れた、自閉症児に特徴的なアタッチメント行動の項目をさらに精緻化していく
ことで、早期の母子関係改善のための指標が得られるのではないかと思われる。
まとめると、アタッチメントQ分類法などを利用して,自閉症児のみならず、
アタッチメント安定性が低いアタッチメント・ハイリスク児の早期発見を行い、
健常児のアタッチメントと発達に関するデータの集積から臨床研究を行う必要
がある。そのことによって、アタッチメントに関する母親の不安(Le Counter
et aL,1989;Ohta et al.,1987)を低減し、よりよいアタッチメントを形成する
ための援助を行っていくことが今後のアタッチメント研究に課せられた課題で
あると考えられる。
70
5章要約
1.問題と目的
2.方法
過去に自閉症児を参加者として行われた研
(1)参加者
究(D鵬nayake,&C【D$le弘1996,1997;
本研究における参加者ば健常孚拗児85名
S守戦r◎,et aL,1987;Sigman,&Mundy,1988;
(平均月齢;42.42、範囲;15∼100)、自閉
S㈱n,&U㎎ere,1984;Rog鴫et創。1991,
症児20名(平均月齢;61.62、範囲;39∼90)、
1993)によって、自閉症児にもアタッチメント
精神遅滞児23名(平均月齢;42.65、範囲;
はあるという結果が得られている。しかしなが
12∼110)であった』
ら、自閉症児の母親まあまりアタッチメントを
感じていない(Hoppes&Har臨1990)とい
(2)手続き
う磁課もある。また、自明胡のほとんど
本研究でてよ母親にアタッチメントQ分類と
の親が乳幼児期において、自分に対する子ども
感覚異常に関するアンケートを施行した。
のアタッチメントについて尤・配したという報
3.燈明および考察
告もある(Le Cour忙er et aL,1989;Ohta et a翫,
1987)ことから、過去の研究によって得られた
自閉症児にアタッチメントはあるという結果
<アタッチメント安定性得点>
には疑問が残る。そこで本研究で怯過去の研
Rgure 1に示すように、アタッチメント安定
究のほとんどがStrange S忙ua目on法
性得点{よ比較群と±ヒベて自閉症シ見が有意に低
《Ar酬orth et aL,1978)を用いてアタッチメ
い得点であった。この結果は、自閉症児にアタ
ントの評面を行っていたことを問題点として
ッチメントはあるという過去の研究結果とは
指摘し、アタッチメントQ分類去(Wεte塙
矛盾するものであった』このような結果が得ら
1985)を用いて評価を行っ島また自閉症児
れた理由については、用いた手続きの違いによ
が乳児期に多くの感覚異常を示す(σneil,
って考察がなさ檎
1997)ことに注目し、母親に乳児期における感
覚異常に関するRetK)spectiveなアンケートを
施行した。
0.6
本研究における仮説としては、自閉症児は乳
0蕪
幼児期に示す感覚異常によって母子相互交渉
蓄.。.2
・0.01
自閉症児 健常児(CAI 健常児〔DA} 精神遅滞児 精神遅滞児
(CAI
いうものであった』
0.26
0.2
韮。
が阻書され、アタッチメントの安定性は低いと
0.31
(CA)
Flgure 1 群別にみたアタッチメント安定性得点
71
〈下位分類の結果〉
◎健常児{CAI O健常児〔DA;‘精神運滞児〔CAIム精神遅滞児(DAl潔自閉症児
下位分類の結果として母子相互交渉そ「動や
O.5
他者相互交渉行動における得点(Figure 5参
篶
照)では、自閉症児群は比較群よりも有意に昔
噺尋点であった。しかしながら、母親に対する
一G.5
接近行動や接触そ『動については自閉症児群と
比較群の間に差はみられなかっ島このことに
Figure 9感覚得点とアタッチメント安定性得点の関係
よって、自閉症児であっても母親に対する接近
や接触そ「動などのアタッチメントそ『動を示し
ているということ力沫された』
〈項目分析〉
アタッチメントQ分類の項目分析によって、
口他者相 交渉得点
自閉症児に特徴的な項目が縛し¥出されためこれ
0.6
らの項目と自閉症児の診断基準との関係力、ら、
0.42
0,28
曇
霧
0.27
G24
アタッチメントのハイリスク児のスクリーニ
0.2
ングの可能性について考察が加えられた。
自閉症児
0
群
健常児〔CAI 健常児〔DA) 精神遅滞児
鐘
一〇.17
{CA)
精神遅滞児
〔CA)
4.今後の課題
・0.4
Figure 5 群別にみた他者との相互交渉行動得点
今後の課題としては、方法論的には、自閉症
児のアタッチメントを評価する力法の検討や、
ぐ感覚異常とアタッチメントの関係〉
統謳麟の選定などが挙げられるまた、研究課
題としては、本研究ではアタッチメントと社会
Irgure 9に示すようにアタッチメント安定
性やアタッチメントと感覚異常との関係性が
’鵬点と感覚異常得点との間に有意な比較的
示されたのみであるために、関係をより明確に
高い負の相関がみられたことにより、アタッチ
していくことが挙げられたおそれらに加えて、
メントと感覚異常との関係が示唆された』さら
自閉症児やその他の障害を持つ子どもと母親
に、アタッチメント安定性得点と社会性を示す
に対して、どのような援助を行う必要があるの
であろう他山匪校瀕「動得点との間には、有
かを明確にしていくことによって、臨床的な研
意な比較的高い正の相関が得られた』こ(厩課
究の発展が望まれる。
は、自閉症児のアタッチメントと社会性の発達
の関係を示すものであると考えられる。
主任}旨導教官
72
藤田継道
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127−140.
付録
頁
1.配布資料
フェイスシート・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
1
手続きの教示文・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
2
2.アタッチメントQ分類項目カード原本・・・・・・・…
5
3.標準得点と下位分類・・・・・・・・・・・・・・・・…
15
以下の質問にお答えください
1,
爽施‘鶴月田
年
2、
お子さんの生年月日
イ1三
3,
お子さんの年齢
4.
お母さんの年齢
(満
5,
お子さんの性別
(男『●女.)
6,
凍族構威
7,
最近趨った特筆すべき出来事
月
{満
日
月
歳
歳
日
月)
月)
)
(
(例、・引っ越しをしたなど)
)
(
1
お子さんの行動に関するアンケートのための手続き
最初に、90枚のカードをよくきっで下さい。あなたにして頂く作業は、この90枚のカードをお子さん
の行動の特徴に従って9つに分類していただくことです。作業のあらましは、以下の図を参照してください。
90枚のカード
お子さんの行動の
特徹をよく表さない
お子さんの行動の
/↓\
最も
/↓\
やや’少し
↓・
↓
↓
特徴を表わす
どちらでもない
土
」
/↓\
少し
+
\
↓
↓
やや
↓
最も
↓
10枚 10枚 10枚 10枚 10枚 10枚 10枚 10枚 10枚
1) お子さんの日頃の行動を思いうかべながら以下の王統きを行なってく・ださい。,1先ず、一つ一つのカー
ドをよく腕んで、お子さんの行動の特徴を最もよく表していると思われるカードをあなたの右側に、最もよ
く表していない、或は、その反対の特徴を表していると思われるカードをあなたの左側に、また、そのどち
らでもないカードを中央に置いて下さい。各場所に何枚のカードがきても構いません。
これはカードの例です。
34. お母さんが立ち表ることで機嫌が悪くなった
一一 pこの記述がお子さんの行勤の特徹に合えば、
時、.その場に座り込んで泣く。お母さんの彼を追うこ
カードを右側に置いてください。合わなけ
とはない。
ければ、佐田に置いてください。
逆) 機嫌が悪くなったり、泣いたりすると、必死に
一一一 アれは、二間事項の逆の場合を示します。
この記述にお子さんの行動の特徴が合う場
に後追いをする 。
合に左側においてください。
(注意1母親が立ち去っても機嫌が悪くならなければ、 一一一 アれは、どちらとも貫えない場合で、カー
中央に置く。,
ドを中央に置く場合を示しています。
2
2)あなたの右側に慨いてあるカードについて、その中でも、お子さんの行動の特徴に近いものを右側に、
あまり当てはまらないものを左側に、その中間位のものを中央に置いて、さらに3つの山を作って下さい。
各山に、何枚のカードがきても構いません。
3)1)であなたが左側に置いたカードについて、その中でも、お子さんの行勘の特徴に最も旨く当てはま
らない、或1ま、その反対の特徹を表しているカードを左側に、それほどでもないものを右側に、その申間ぐ
らいのものを中央に置いて、さらに3っの山を作って下さい。各山に、何枚のカードがきても構いません。
4)1)で申央に撮いたカードについて、2)や3)と同様に3つの山を作って下さい。つまり、中央に置
いたカードの中で、比較的お子さんの行動の特徴に近いものを右側に、その反対のものを左側に、そして、
どちらとも言えないものを中央に置いて下さい。各山に、何枚のカードがきても構いません.
5) 以上の手続きによって、次図の様に9つのカ}ドの山が出来ました。
90枚目カード
お子さんの行動の
特徴をよく裟さない
/↓\
最も
やや
少し
お子さんの行動の
どちらでもない
特徴を衷わす
/↓\
/↓\
一
土
+
少し
やや
最も
さて、次に、各山のカー’ドの数を即断します.まず、最も右側にあるカードの申からお乎さんの行動の特
徴に最も合うカードを10枚選んで下さい。それ以外のカードを左隣に置いて下さい。もし、カードの枚数
が10枚に足りなければ、左隣からお子さんの特徴に最も合うものを選んで10枚にして下さい。
6) 次に、右から2番目の山の中で、お子さんの行動の特徴に最も近いものを10枚迦んで下さい。そ
れ以外のカー’ドを左隣の山に鷹いて下さい。もし、10枚に足りなければ、左隣から選んで下さい。
7) 右から3番目の山の中で、お子さんの行動の特徹に最も近いもの10枚選んで下さい.それ以外⑳カ
ードを左隣の山に置いて下さい。もし、10枚に足りなければζ左隣から選んで下さい。
8) 右から4番目の山の中で、お子さんの行動の特徴に最も近いものを10枚遷んで下さい。それ以外の
カードを左隣の山に憶いて下さい。もし、10枚に足りなければ、左隣から瀕んで下さい。
9) 左の方に山についても以上の手纏きと同様のことを行い、各山のカードの数をずべて10枚に照節し
ます。まず、最も左側にあるカードの中からお子さんの行動の特徴に最も合わないカードを10枚選んで下
さい。それ以外のカードを右隣に置いて下さい。もし、10枚に足りなければ、右隣から選んで下さい。−
10) 次に、左から2番目の山の中で、お子さんの行動の特徴に最も合わないものを、1,0枚選んで下さ
い。それ以外のカードを右隣の山に麗いて下さい。もし、10枚に足りなければ、右騨から遺んで下さい。
3
工1) 左から3番目の由の申で、お子さんの行動の特徹に最も合わないものを10枚選んで下さい。それ
以外のカードを右隣の山に置いて下さい。もし、10枚に足りなければ、右隣から遡んで下さい。
12》 左から4番目の山の申で、お子さんの行動の特徽に最も合わないものを10枚選んで下さい。それ
以外のカードを右隣の山に置いて下さい。もし、10枚に足りなければ、右隣から選んで下さい。
13) 以上の手纏きを行うと、お子さ々の行動の特徴に合うとも合わないとも言えない中央の山には10
枚のカードが残って.いるほずです。枚数を確認して下さい。
以上の手続きは、下の図で表されます。うまくできたでしょうか。
90枚の肉一ド
お子さんの行動の
特徴をよく表さない
特徴を衰わす
どちらでもない
〆1\㍉
/!\
/↓\
(1各肉を3つに分「ナる)
最も
、
やや
少し
↓
一
↓
=ヒ
十
少し
やや
/1 、
(舎凶を10枚にそろえる)
〆
10枚 10枚 10枚
↓
彰
最も
↓!↓
10枚 10枚 10枚 10枚
10枚 10枚
どの山がどの袋の表示と対応するのか、問
14) 掌中に鷹かれたカードをそれぞれの襲にいれて下さい。
違わないようにご注意下さい。
4
愛着行動に関するQ技法のための90項目
第3版
訳=近藤濾輿、C,ヴニレイケン
。 1987 Evor6tt w8terβ
r
〒
1.白分からお母さんとものを1分け合ったり、お
5,物よりも人に対して興味を示す。
母さんが言うと貸してくれた.りする彫
逆》人よりも物に対して興味を示す。
遡)お母さんが頼んでも拒否する。
ト
→
十
6.お母さんがそばにいて何か遊びたい物を見
つけた時、ぐずぐず書つたりお母さんに敢っ
2.遊びの後お母さんの方へ戻ってきた時、理
由もないのにぐずぐず言うことがある。
てもらおうとする◎
逆)遊びの遡中や遊びの後、お愚さんの方に
戻ってきた蒔、嬉しそうにずる。
逆》ぐずぐず言ったりお母さんに敢ってもら
うことなく、自分で欲しい物の方へ行く。
十
ト
→
7,誰に対してもすぐ笑ったり微笑んだりする。
3.怪我をしたり機嫌が悪くなった時、お億さ
ん以外の大人がなだめても受け入れる。
逆)なだめることのできるのはお母さんだけ
である。
遡)誰よりもお母さんに対して替ったり微笑
んだりする。
←
→
十,
4.おもちゃやペットをやさしく大切に扱う。
8.いったん泣き回すと、激しく泣く。
逆)涙を流すだけだったりすすり泣く穆度で
激しく泣くことがない。または、たとえ激し
く泣いても長く続かない。
L
↓
」
5
T
r
9,ほとんどいつも陽気で快活である。
14.新しくおもちゃになる物を見つけると、
お母さんに見てもらいたくて、持ってきたり、
離れたところがらお母さんに見せる。
逆》ぐずったり、いらいらしたり、真面目く
さっていることが多い。
逆)その新しいおもちゃと静かに遊んだり、
妨害されない所に持って行く。
卜
十
→
‘15,謝母さんがうながすと、初めて会った人
に宴んで医したり、おもちゃを見せたり、自分
10,昼寝や夜寝る時、お母さんが寝かせよう
とすると、泣いたりいやがることがよくある。
ト
の出来ることをやって見せたりする。
十
→
11,お母さんが求めたり身振りで促したりし
なくても、自分からお母さんに抱きついたり甘
16,人形やぬいぐるみのような生き物を型ど
ったおもちゃを好む。
えたりする。
逆)お母さんが先ず抱いたり求めたりしなけ
れば、めったにお母さんに抱きついたり甘え
逆)ポ」一ノレ・や積木、’膚動:車:とレ、つたおもちゃ
を好む。
たりしない。
ト
十
→
12,初めにはずかしがっていた人や恐がって
17.軸客さんが何か気に入らないことをする
いた物に慣れるのが早い。
と、すぐお客さんの相手をやめる。
(注意1初めからはずかしがったり恐がること
がなければ申央に億く)
十
卜
,→
13,お母さんが立ち去ったために機嫌が懇く
なった時、お母さんがいなくなった後でも泣き
18. 「∼しなさい」と命令として言われなく
ても、 「∼したらりと提案として言われただけ
で、すぐにお母さんの貫うことに従う。
続けたり、時には怒ったりする。
逆)お母さんが見えなくなると、泣きやむ。
逆)命令されない限り、無視したり撞否する
(注意1お億さんが立ち去っても機嫌が懸くな
らなければ中央に置く)
L
山
」
6
r
19,お母さんが物を渡したり持ってきてくれ
〒
るように言うと、従う。
(注意:明らかに反抗しているのではない限ワ、
「
24.お母さんが厳しく言ったり声を上げると
機嫌が悪くなったり、お母さんを怒らせたこと
で、すまない気持ちや恥しい気持ちになる。
ふざけたり、遊びで従わない場合は噂えにい
(油意=単に、声を張り上げたことで機嫌が懸
くなったり、叱られるのを恐れている場合に
は、お子さんに椅徴的であるとは見なさない)
れなくてよい)
逆)お子さんから物を得るには、お母さんが
物を取り上げたり、厳しく言う必要がある。
卜
十
→
25,お母さんの見えないところで遊んでいる
20.ぶつけたり、転んだり、びっくりしても
時、お子さんは自分で好きな所に行ってしまう。
迦)お母さんの見えないところへ行くと、話
しかけたり呼んだりする。お母さんにとって
お子さんを見つけるのはたやすく、いつも何
たいてい平気である。
逆》ちょっとぶつけたり、転んだり、びっく
をしているか分かる。
りしただけで泣く。
(注意=お母さんの見えないところで遊ぶこと
がなければ中央に置く)
ト
十
→
21.家で遷んでいる時、お舟さんの居所に
絶えず注窓している。時々お働さんを呼んだり
お母さんが居三所を変えたり活動を変えると気
26.お母さんがお子さんをお父さんやおじい
さん、おばあさん、よく知っている人に託して
がつく。
外出すると、泣く。
逆》お母さんの居場所や行動に注意しない。
逆)このような人と一緒なら泣かない。
(注意言お母さんから離れて遊ばせることがな
かったり、三所がない場合には中央に置く)
卜
十
→
22、人形やペット、小さな亭に対して、世晒
27,お母さんがいじわるを書つたり、ふざけ
をしたり、かわいがったりという様に親がする
するようなやり方で遊ぶ。
たりレてお子さんをからかうと、おもしろがっ
て笑う。
逆)他のやり方でそれらの物と遊ぶ。
逆)お母さんがからかうといやがる。
(注意:人形やペット、小さな子と遊ぶことが
なかったり、まわりにそうした物がない場合
(注意:遊びや会語中にお母さんがお子さんを
からかうことがない場合には中央に置く)
には中央に置く)
十
ト
23.お母さんが白分以外の三族の窓と一緒に
座ったり仲良くしたりすると、自分の方にお母
→
28,休憩は、お母さんの藤の上でする。
さんの愛情を向けようとする。
逆)休憩は、ひとりで、床やソファーの上で
する。
逆)お母さんが他の入に愛情を向けても構わ
ない。お子さんも仲閲に加わることがあるが
(注意=じっとしていることがなければ中央に
やきもちのためではない。
し
置く),
↓
7
J
甲
「
・2.9.時々、誰かが賭しかけても気づかないほ
ど物事に熱中していることがある。
「
a4,お母さんが立ち芸つたことで機嫌が惹く
なった時、その場に座り込んで泣く。お母さん
の後を遮うことはない。
逆)機嫌が悪くなったり泣いたりすると、必
遡)たとえ、迦びに熱中していても、誰かが
死に後追いをする。
脂しかけると気がっく。.
く注意:お母:さんが立ち去っても機嫌が悪くな
らなければ中央に慨く)
→
十
ト
35.お母さんに対して独立.している。一人で
遊び、遊びたい.ときには容易に需母さんから離
30.』おもちゃに腹を立てることがよくある。
れる.
逆》お母さんと遊んだり、お傷さんの近くで
遊ぶ方が好きである。
(注意雪お母さんから離れて遊ばせることがな
かったり、離れて遊ぶ場所がない場合には中
央に置く)
ト
十
→
36,探索のための安全基地としてお母さんを
31.お母さんの注意を独り占めにしたがる。
もし、お母さんが忙しかったり、誰かと話して
利用するパターンをはっきり示す。
遊びに出かけ、またお母さんの方へ戻って、
近くで遊び、次に再び避びに出かけるという
いると邪魔をする。
ようなことを繰り返す。
逆)遮れ戻さない限り、いつもお母さんから
離れている。或は、いつもお母さんのそばに
逆)お母さんの注意の中心になっていなくて
も気がっかなかったり、平気である。
いる。
→
十
ト
32.お母さんが「ダメjと言ったり、叱った.
りすると、少なくともその鍋ではしていること
3『
V.たいへん活動的で、いつも動き回っでい
る。静かな遊びより活勘的な遊びを好む。
をすぐに止める。
(繰り返して言う必要はない。)
ト
十
→
38.お母さんに対して我がままで気が短い。
自分の盟むことをお母さんがすぐにしないと、
ぐずぐず張ったり頑固に要求し続ける。
33.お栂さんに抱かれている時、降ろして欲
しいと合図するので降ろすと、ぐっずたり、ま
たすぐ抱いて欲しいと要求する。
逆)降ろして欲しいという合図を示した時
には、遊びに出かける心準備ができている.
し
↓
8
」
T
「
「
44.網母さんが抱き上げたり、抱き繍めたり、
かわいがると喜び、自分からもそれを要求す6。
39.お母さんから離れて遊んだり、一人でお
もちゃと遊んでいる時、事務的で淡々としてい
る。
逆)お栂さんから離れて溢んだり、一人でお
もちやと遊んでいる時、ふざけたり笑ったり
逆)こうしたことが特別好きではない。受け
入れるが自分から要求しないし、すぐに降ろ
することが多い。
してもらいたがる。
十
卜
→
40,薪しいおもちゃや新奇な物を非常にデ寧
に調べる.それらの物彬様々なやり方で使って
45,脅楽に合わせて、歌ったり踊ったりする
みたり発解してみようとする。
のが好きである。
逆)初めて新しいおもちゃや新奇な物に取り
組む時、通常、鯉時聞で済ま’せる。
逆)とりわけ音楽が好きでも嫌いでもない。
(注意=後に、それらの物に戻ってくるか
しもれないが、初めての時を闇題とする)
十
卜
→
41.お母さんがついてくるようにいうと、そ
46層 Dつまずいたり、転んだり、ぶつかったり
のようにする。
しないで走ったり歩いたりする。
(注意=明らかに反抗しているのではない限り、
ふざけたり、遊びで従わない場合は考えにい
逆》怪我にまでは至らない』が、一β中、つま
れなくてよい》
ずいたり、転んだり、ぶつかったりが絶えな
い。
ト
十
→
42.お母さんの機嫌が悪くなると、それに気
づく。
47.お母さんも笑っておもしろそうであるこ
とを添すと、遊びの中の大きな音や振り回され
子供自身も静かになったり、機嫌が悪くなつ
たり、また、お母さんをなだめようとしたり
ることを受け入れ楽しむ。
どうしたのか聞くなどする。
逆)気がつかないで遊び続けたり、お母さん
逆)お母さんがそうした音や活動が安金でお
が大丈夫であるかのように対応する.
もしろそうであることを示してもいやがる。
十
卜
→
43,単に、お母さんの居所に注意を払ってい
るばかヴでなく、お母さんの近くに貿まったり
たびたび御重からお母さんの方に戻ってくる。
48,頼まれれば、初めての人にでも物を渡し
たり物を分け合う。
逆)お母さんに近づいて、お母さんの層所や
活動を確かめることはない。
(注意:お母さんの居所や活動に注意しない場
L
合には中央に置く)
山
9
49,初めての人が家を訪問すると、はにかん
7
「
54,お母さんがちょっと手伝おうとしただけ
でも、していることを邪魔されたかのように摂
だ微笑を浮かべてお母さんのもと駆けて行く。
逆)最後にはお客さんと打ち解けるとしても
初めは泣いたりぐずってお偲さんのもとへ駆
舞う。
けて行く。
逆)お母さんが実際に邪鷹しない限り、お母
さんの手肋けを快く受け入れる6
(注意:お客さんが来た時、お母さんの方へ駆
けて行くというようなことが全くないなら申
央に置く)
→
十
卜
50,家に来たお客さんとその内に打ち解ける
65.お母さんの行動を見ることによって、お
かもしれないが、初めはお客さんを無視したり
母さんの様々な行動や物のやり方を真似る。
避けたりする。
逆)お母さんの行劾を真似ることは:目だつほ
どではない。
→
ト
516お客さんと遊ぶ時、お客さんの背によじ
登ったり、膝に座ったりして、お客さんと身体
56,難しそうだと見て取ると、ためらったり
接触を持ちながら遊ぶ。
興味を失っだりする。
逆).お客さんと遊んでも身体擦触を求めるこ
逆》難しいことでも出来ると考えでいる。
とはない。
(注慧=お客さんと遊ぶことがなければ中央に
置く)
十
ト
52,小さな物を扱ったり、小さな物どうしを
→
57。恐い物知らずである。
くっつけだりすることが旨くできない。
逆)用心深く、恐がりである。
逆)小さな物や鉛筆などをとても器用に扱う。
53.お母さんが抱き上げると、お母さんに腕
58.家を訪れるたいていの大人を無視する。
を間したり湘母さんの濡に夢をのせだりする.,
自分自身の活勘の方に興味を示す。
逆)お母さんが抱き上げるのを受け入れるが
とりわけて抱かれやすくなったり、自分から
逆》最初ははにかんでいても、お客さんの方
にとても興味を示す。
しがみつくことはない。
L
→
十
ト
よ
10
T
r
69.一つの湘もちゃや活動を終えても、活鋤
「
64。お母さんと遊ぶ時.お母さんの背によじ.
登ったり、謄に座ったりして、お母さんと身体
接触を持ちながら遊ぶ6
の合間にお母さんの方に戻ることなく、.たい
てい自分で次にすることを見つける.
逆》一つのおもちゃや活動を終えると、遊ん
でもらったり、甘えたり,次にすることを見
つけてもらう海ゆにお母さんの方に戻る。
逆)お母さんと遊ぶ陣、とりわけて親密な
身体接触を求めることはない。
十
ト
→
65,お穏さんが㌧お子さんの饗している活動
60,お母さんが「大丈夫よ」とか「何もしな
いわよ1鱗と鴛って安心させると、初め用心し
たり恐がっていた物に近づいたり遊んだりする
を止めさせ、次の活動をさせようとすると、す
ぐに機嫌が悪くなる。
(たとえ、新しい活動がお子さんのいつも喜ぶ
(注意:初めから用心したり恐がることがなけ
ものであった場合でも)
れば中央に置く》
十
卜
→
61。お母さんと荒っぽく遊ぶ。活発な遊びの
中で、たたいたり、ひっかいたり、かみついた
66.家に来るお客さんで、お子さんに親しく
りナる。 (必ずしも、お無さんを傷つけようと
撲する人とはすぐに仲よくなる。
レ、うっもり書まなレ、)
逆)お母さんを傷つけることなく活発に遊ぶ。
逆)お客さんとはなかなか仲よくならない。
(注意=遊びがそれほど活発にならなければ中
央に億く)
十
←
→
6葛。機嫌のよい時には、一日中、その状慧で
67、家にお啓さんがいると、皆の滋意を臼分
いることが多い。 ‘
に集めたがる。
逆)糠嫌がだいへん変わりやすい.
十
ト
→
63.自分でしてみる前に、先に誰かに手伝う
68.だいだい、お母さんより活動的なタイプ
てもらおヲとする。
である。
逆)だいだい、お母さんほど活動的ではない
タイプである。
L
よ
11
T
r
69.滅多にお母さんの手助けを求めない。
逆)しばしば、お母さんの手助けを求める。
「
74.お母さんがして欲しいことをすぐにやら
ないと、あたかもお母さんはして欲しいことを
全くやらないと予測しているかのように振卿う
(ぐずったり、悪つたり、立ち去って他のこと
をしたり等する》
(注意1幼な過ぎてことばや身ぶりで褻求がで
逆)お働さんが自分のして欲しいことをその、
内にしてくれると予想しているらしく、しば
きない時は中央に鷹く》
らく待つ。
十
ト
→
70.お母さんが部屋に入ってくると、自分の
75.家にいる時,お母さんが部麗から出ると
方から大きな微笑みを浮かべてお母さんに盛り
かけたり、手を振ったり、おもちゃを見せたり
機嫌が葱くなったり泣いたりする。
(後追いするかしないかは悶題としない)
する。
巡)お毘さんが先にしない限り、自分からは
逆)お母さんが立ち去ることに気がつき、後
追いすることもあるが、機嫌は感くならない。
何もしない。
十
ト
→
プ1.恐がったり機嫌が悪くなっても、お母さ
76.もし選べるなら、大人よりもおもちゃと
んが抱くと、すぐに泣くのを止め落ち着く。
遊ぶ。
逆)お母さんが抱いてもなだめるのが難しい。
逆》おもちゃよりも大人と遊ぶ。
十
ト
→
72,お子さんがしたことをお客さんがおもし
77,お母さんがお子さんに何かするように書
ろがつたり誉めたワすると、何度も繰り返して
うと、お母さんが何をして欲しいかすぐに理解
する。
する。
(従うか従わないかは問題としない)
逆)お客さんが何をしてもお手さんの活動に
(注意=幼な過ぎてお母さんの醤っている事が
理解できないなら中央に置く》
影響すること‘まなレ、●
十
卜
→
73.いつも持ち歩いたり、寝床に持って入っ
78,両親やおじいさん、おばあさん、保母さ
ん以外の人に抱かれたり、抱き締められるのを
たり、機嫌が懸くなると抱き締めたりするぐら
い大好きな特定のおもちゃやタオル辱がある。
喜ぶ。
逆}そうしたものを全く持っていない。或は、
持っていても、取り上げられても平気であっ
たり、自分から放すことが患来る.
(注慧=お子さんが2職来満の場合、哺乳瓶や
おしゃぶりは含まれない)
し
逆γ知らない人に抱かれても喜ばない。
よ
12
r
〒
79.すぐにお母さんに腹を立てる。
、
84.身ぎれいにしていたり、家の中をきちん
としておくことに幾らか努力する。
逆》お母さんがひどく邪魔をしたり、お子さ
んがたいへん疲れたときでない限り、お母さ
んに腹を立てるごとはない。
ト
逆)いつも、服や床の上にごぼしたり、擦り
つけたりしている。
→
十
85.新しい活動やおもちゃに独く引きつけら
80.危なそうに見えたり、恐そうに=見えると・
お母さんの裟情を見て状況を判断ずる。
れる。
逆)お母さんの鞭情を確かめることなく自分
.逆)慣れた活動やおもちゃにもまして、新し
いものに引きつけられということはない。
で何をすべきか決める。
卜
十
81,璽むことをお蝕さんにやってもらう奉段
→
86。お母さんに自分の真似をさせようとする。
”或は、お母さんが自分の真似をすると、すぐに
として泣いたり、ぐずったりする。
気がつき審ぶ。
逆》泣いたりぐずるのは、疲れたり、悲しか
ったり、恐がったり等、それなりの理由があ
った時だけである。
十
←
82.たいていの場合噛遊びに便うおもちやや
→
87,お子さんがしたことをお母さんがおもし
ろがつたり誉めたりすると、何度も繰り返しで
迦び方は特定の阻られたものである。
する。
逆)様々なおもちゃを便って遊び、遊び方も
逆}お保さんが何をしてもお子さんの活動に
様々である。
影響ナることはない。
十
ト
83,退屈すると、お母さんの方に来て、何か
88,何かで機嫌が懸くなると、その場に座っ
することを見つけてもらおうとする。
て泣く.
逆)何か趨らない限り、しばらくうろうろし
たり、ただ何もせず座っているだけである。
し
→
逆)泣くと自分からお母さんの方へ行き、お
母さんがそばに来るのを特たない。
↓
13
」
r
〒
89・,侮かで塑んでいる時・表情が豊かではっ
90。お母さんがかなり遠くに行くと、後を追
きりしている。
ってお母さんのいる所で遊びを続ける撃
(呼んだり1遅んでやる必要はなく、また、遊
びを止めたり機嫌が怒くなることもない)
(注意ε遠くに行かせる事がな。かたり、行く
余地がない場合には中央に置く)
L
↓
14
標準得点と下位分類
項目番号
1
標準得点
8
Posada, et al, AQS Scale
2’
1。8
母子相互交渉行動
母子相互交渉行動
3
4.8
母親に対する接触行動
4
5
6,2
6
2.2
7
8
6,3
.4.3
3,3
9
6.5
10
2,3
11
7.5
12
6
13’
母子相互交渉行動
母親に対する接近行動
他者相互交渉行動
2.7
14
15
16
17
18
19
20
4.2
21
8.8
22
23
24
6.5
翠5
2
26
27
28
29
30
3T
32
33
母子相互交渉行動
他者相互交渉行動
7.8
母親に対する接近行動
7.7
他者相互交渉行動
5.2
3.5
8.5
7.7
他者相互交渉行動
母子相互交渉行動
母子相互交渉行動
母親に対する接近行動
2,7
4.5
母子相互交渉行動
母親に対する接近行動
3.3
6,3
7.5
母親に対する接触行動
43
2、3
2.5
7,2
1.3
母子相互交渉行動
母親に対する接触行動
15
項目番号
標準得点
34
35
36
37
38
39
40
t2
母親に対する接近行動
4.3
母親に対する接近行動
母親に対する接近行動
41
42
43
44
45
46
47
48
49
8.8
4.8
4.7
6,5
8,2
4.7
母親に対する接近行動
7.7
母親に対する接触行動
5.2
5.7
7.2
6
4.7
65、
66
67
68
69
他者相互交渉行動
6.3
51
62
63
64
母子相互交渉行動
8,5
3.5
61
母子相互交渉行動
1.2
・50
52
53
54
55
56
57
58
59
60
Posada, et al, AQS Scaie
他者相互交渉行動
他者相互交渉行動
3,8
8.5
1,5
母親に対する接触行動
母子相互交渉行動
7
2.7
4
3、2
3,8
8.5
他者相互交渉行動
母親に対する接近行動
他者相互交渉行動
1.8
母子相互交渉行動
5、5
2
7
1.8
母親に対する接触行動
7
母子相互交渉行動
他者相互交渉行動
4
他者相互交渉行動
5
2.3
母親に対する接近行動
16
項目番号
70
標準得点
8
71
8.8
72
73
74
75
76
77
78
79
80
81
82
83
84
85
86
87
88
89
90
Posada, et al, AQS Scale
母子相互交渉行動
母親に対する接触行動
4.5
5.2
母子相互交渉行動
1.5
1.2
他者相互交渉行動
3,2
7,7
4、5
他者相互交渉行動
1
母子相互交渉行動
8.5
母子相互交渉行動
1.8
4
6.5
.5
7、5
6.5
5.8
1,2
6.5
8.3
17
Fly UP