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個に応じる算数科の複式学習指導の工夫
個に応じる算数科の複式学習指導の工夫 − ワークシートとコンピュータ活用( 第4・5学年)を通して − へき地教育研究室研究主事 <研究協力委員> 勝連町立比嘉小学校教諭 豊見城村立伊良波小学校教諭 佐敷町立村佐敷小学校教諭 はじめに 亀 川 盛 敏 佐久川 政 昭 平 良 淳 我如古 忍 個に応じる学習指導を工夫していけば,このような 課題が解決できるのではないかと考え,本テーマを 設定した。 本県の複式学級設置校は,へき地校や平地校を合 わせて 63校で,小学校全体( 228 校)の22.5 %に当たる。 <研究仮説> ( 1) 類似内容の指導計画のもとで,ワークシートと 特に,少子化により小規模・複式学級は増える傾向 にあり,平成 12 年度では中3と小1の児童・生徒の コンピュータを併用して個に応じる学習指導をす 人数を比較すると約三千人の減少が見られた。平成 れば,間接指導においても自主的に学習が進めら 10年度のへき地研究室の調査で,複式学級は 128学級 れるであろう。 ( 2) ありそのうち6名以下の複式学級が 82 学級,単学級 一人一人の個性を多様に把握し,動機づけや発 で3名以下の学級が 17学級,合計 99 学級が極少人数 表の仕方を工夫すれば,学習に進んで参加できる の学級で学習している現状である。これらの少人数 ようになるだろう。 ・複式学級においては,学習集団による練り合いが 1 個に応じる指導 十分できず,多様な考えにふれたり一人一人の思考 の深化を図ったりすることやコミューニケーション 等の表現力を育成することが課題である。 (1) 個に応じる指導とは 少人数・複式学級においては,児童一人一人に応 少人数・複式学級においては,年間指導計画や複 じた学習指導が行き届きやすいという利点がありそ 式指導,集合学習や交流学習など,へき地三特性か れを生かすことが必要である。 らくる特異な学習指導がある。初めて赴任した教師 個に応じる指導では,児童一人一人の多様な個人 は,しばしばパニック状態に陥ることがある。この 差(興味・関心,態度,ものの見方・考え方等)を ような中にあってもねばり強く地道に複式学習指導 よさと捉える。したがって,基礎的・基本的な学習 を,本県教師も積み上げてきている。短所を長所に 内容を習得する過程においては,児童の個性的で多 変え,児童に主体的な学習態度が育成されるように 様な学習活動を認める。個に応じる指導は,このよ 取り組まれるガイド学習やリーダー学習,基礎・基 うに児童一人一人の多様な個に応じて指導法を工夫 本的な学力を身につけさせるためのワークシートや ・改善することにより,自ら考え自ら問題解決する コースウェアの開発,さらにインターネットを活用 児童を育成するとともに,基礎的・基本的な内容を した情報教育の推進等である。これまでの取り組み 確実に身につけさせることを目指す指導法である。 (2) の良い点を生かしながら,算数科で個に応じる学習 指導を考えてみたい。 個人差の捉え方 個に応じる指導をするには,児童一人一人の個性 少人数・複式学級においては,人数が少ないため や諸能力,すなわち個人差を把握し学習指導に生か に普通学級の児童に比べ学習指導が行い易い。また , すことが必要である。個人差には,表1のようなも 児童一人一人に多様な学習の機会が与えられている のがあり,これらを意欲検査や学力・知能検査,学 ため,児童は自己の可能性を見つけたり伸ばしたり 習成績,日常の観察記録から多様に個を把握して指 することに恵まれている。ところが,少人数・複式 導に生かすようにする。 形態により直接指導と間接指導が生じるため,問題 表1 解決的な学習過程に沿って一人一人の能力や個性, 学習状況に応じた意図的な学習指導を受けることが 困難である。また,多様な思考にふれ,自ら考え自 ら問題を解決する態度を育てることも十分ではない 。 そこで,ワークシートとコンピュータを併用して -1- 学習の到達度の差 学習スタイルの差 学習速度の差 学習意欲の差 学習態度の差 学習の仕方の差 生活経験の差 個人差の種類 学習者が持つ技能・知識・理解面の学力差 情報を処理する方策に現れる個人の特徴 学習者が習熟するまでにかかる時間 学習内容や活動に対する興味・関心 学習に自主的に取り組む態度 学習の仕方,学習計画の立て方,自己評価 自然的・社会的・文化的な背景の違い ① ② ③ (正) ④ ⑤ 自 力 解 決 集 団 解 決 ② ③ ④ ⑤ ⑥ 多様な解決が可能な問題の開発 主体的な学習の仕方(ガイド学習など) 自力解決能力を高める問題解決的な学習 多様な個の把握と共感的な支援 自力解決学習を支援するワークシート,コン ピュータ,具体物など ⑦ 基礎的・基本的内容の精選 ⑧ 成就感や達成感を味わわせる指導と評価 小集団指導 課 題 自 力 解 決 机間指導 反応分類 座席表 指示カー ド,助言, ヒント,ワ ークシート 否 自力解決への支援 (コンピュータ) 練り上げの構想 練り上げの支援 簡潔なまとめ ⑦ ⑧ ⑥ 図1 (3) 2 (1) 個に応じる指導場面 類似内容の年間指導計画 算数科における類似内容指導とは 異単元 学習過程に対応した個に応じる指導 同単元 個に応じる指導の場面は,問題解決の学習過程に 沿って,つかむ段階①では,学習意欲を喚起する問 同単元指導は,複式学年を同じ単元で指導するこ 題提示の工夫や学習課題を把握させる工夫をする必 とで指導の効率化を図り,同内容で指導することに 要がある。特に,算数について好意度が低い児童や より学習の深化をねらう指導法である。算数科にお いては,それは同内容,類似内容として指導されて 問題場面の状況を理解できない児童に対して支援の 準備をする。 いる。すなわち,両学年とも同じ領域の内容を同じ 予想を立て自力解決する段階②③においては,パ 素材や題材で扱い , 「領域を貫く数学的な考え方」を ワーポイントの動画機能を活用して動的に図形の変 繰り返して学習することにより指導の効率を高めよ 形の様子を視覚で捉えさせたり,具体物を活用して うとする」指導法である。しかし,そのための「共 既習の図形に変形できないか示唆したりする⑥。さ 通場面の設定」は難しいとされている。また,算数 らに,多様な考え方で問題を解くことができるよう に,児童の個人差に応じて適切に指導する。例えば , 三角形の公式を容易に理解させる必要のある児童に 科の特性である系統性や順次性から,同単元であっ ても異程度で学習が進められる場合が多い。 (2) は倍積変形による操作活動を支援し,上位の児童に 類似内容の年間指導計画の留意点 類似内容の年間指導計画の作成にあたっては,教 は等積や倍積の変形,平行四辺形や長方形の変形も 科の特性を踏まえ,共通場面の設定により学習の深 できるように支援する。自力解決できない児童につ 化が図られるように配慮する必要がある。 いては,コンピュータを活用させたり小集団指導に より効率よく支援する③。 まとめの段階④⑤においては,話型表を活用して 自分の考えを発表できるように支援する。さらに, 練り合いの発表順番を考え,集団思考により一人一 人の思考が深められるように支援する⑦。 最後に,練り合いで得られた考えがいつでも簡単 に使えるように簡潔にまとめ,その習熟を図る。次 に,児童の学習の努力を褒め,成就感が味わえるよ ① 両学年同領域で同教材,類似教材であること 。 ② 両学年とも共通のねらいに貫かれていること 。 ③ 指導内容に共通性や類似性があること。 ④ 共通の考えが含まれていること。 ⑤ 指導の系統性を崩さない配列にすること。 過程 下学年 上学年 つ か む 直接 (共通) 個に応じる指導により児童一人一人に基礎的・基 本的な内容を身につけさせるためには,①∼⑧の指 導を明確に持ち,個に応じて指導を行うことである 。 個に応じる指導工夫例 けさせるには,個に応じて学習を支援することであ り,その指導法には次の工夫が考えられる。 児童が自ら進んで学習に取り組める問題提示 の仕方(内発的学習意欲の重視) -2- 模にすること。 (3) 類似内容の指導過程 考えで学習できるために,共 通場面の設定ができる。した っがって,学習過程のずらし がない同時導入や同時のまと 直接 (共通) めで学習指導がしやすい。特 図3 ずらしなし は,少人数なのでお互いに聞 4段階指導 ① 単元,題材の移動を小規 似教材なので共通のねらいや 練 り 合 う ま と め る 基礎・基本的内容や自力解決能力を児童に身につ ⑥ 類似内容の指導過程は,類 調 べ る うに学習評価を工夫する。 (4) 異内容 同内容 (異程度,同程度) 類似内容( 異程度) 異内容 図2 複式指導の類型 に,練り合いの段階において き合って学習することにより, 多様な思考にふれたり共通の考え方に気づいたりし ものである。ワークシートには , 「① て学習を深めることができる。 (4) 第4・5年の単元配当例 (三角形を動かす) 4年単元 時数 ●ジャンケンゲーム 1 をしよう! 1 大きな数 10 一 ●九九さがし 1 整数のわり算 ●とんだ長さ 14 1 角 およその数 期 ●どんなところでが い数が使われているの かな? 3 しりょうの整理 5 折れ線グラフ ○ふくしゅう① 9 式と計算 二 11 小 数 12 小 数 の か け 算 と わ 学り算 ○ふくしゅう② 14 分 数 期 10 面 積 (本単元 ) ●サッカー場で 7 7 1 7 垂直と平行 三 8 いろいろな四角形 *図形の相互関係への 学着目は省略 15 2つのかわる量 ●正三角形の中に正 期三角形がいっぱい 16 4年のまとめ 総 時 数 7 11 学 4 2 6 図4 5年単元 整数と小数 8 2 小数のかけ算 7 5 4 11 11 2 13 11 (13 ) 1 6 1 8 9 144 小数のわり算 ●高さくらべ 図形の合同と角 体積と容積 ●ジャングルジムの算 ○復習① 方形にする)④ 1 1 数 5 5 1 9 時数 ●8けたの数作り 3 予想に基づいた解決の方 解決した結果(動かして長 結果から導き出される結論 。 (全部 2 で 12㎝ で 同 じ 面 積 ) ⑤ 質問を促す項目 。(質問は ありませんか ) 」を挿入する。しかし,練り合いを深 めるには,よい質問の仕方を指導することが必要で 9 2 12 12 1 1 ある。そのためには学習のめあてに沿った質問がで き,共通部分や一人一人のよさを見つけられるよう に指導することが必要である。 (4) 6 さ 8 9 ② 法。 (三角形を切る)③ 予想を立てる。 ヒント画面 単位量あたりの大き 15 ワークシート(図5)の左側にパソコンの絵を挿 10 12 入してある。それは予想を立てる段階や自力解決の 倍数と約数 分 数 10 分数と小数・整数 ○復習② 7 図形の面積(本単元 ) ●キャンプへ行こう 13 文字と式 11 正多角形と円 ●ふしぎなかけ算 12 割合とグラフ 7 2 15 2 5 13 1 12 14 8 5年のまとめ 総 時 数 段階において,児童が自力解決して学習できるよう に,コンピュータにパワーポイントを活用して作成 されたヒントがあることを示している。これによっ て複式学習指導の間接指導では,児童の特性に応じ た学習支援が可能である。 (5) ① 155 ガイドの挿入とガイド学習 ガイド学習とは ガイド学習は,小集団学習の一形態で,児童の中 算数第4・5学年同単元配当表 から学習の案内役のガイドが選定され,教師の指導 3 ワークシートの工夫 の下に立てられた学習進行計画を参考に学習を進行 複式学習指導においては,間接指導が生まれそこ し,児童同士が共同で学習するという形態である。 で学習が停滞することがある。ワークシートを工夫 通常,ガイド役は日直など全員の児童が当たる。そ することにより,このような課題が解消できる。 の役割は ,「学習の準備,学習進行,学習の規則の遵 (1) 守,学習のねらいの達成」があり,自己学習能力や ワークシートの利点 ① 自主的・主体的な学習態度が育つ。 学習意欲,集団による課題解決力も高めることがで ② 基礎的・基本的な内容の定着を図りやすい。 ③ 個々のスピードで学習ができ,学習の仕方も きる。 ② ワークシートのガイド ガイドが学習進行のために使う台詞の台本のよう 身につけやすい。 ④ 問題解決的な学習の仕方が身につく。 なものがガイドである。そのガイドをワークシート ⑤ 学習課題の把握が容易にでき,1時間の学習 の中に挿入して,児童が主体的に共同でガイド学習 ができるように工夫した。 の見通しを持つことができる。 ⑥ (2) ガイドの言葉には,学習の進行や練り合いでの司 学習を振り返ることができる。 会などがある 。 (表2参照,図5) 学習流れ 表2 ワークシートには,児童に学習の流れが分かるよ ○ 今日の勉強を始めます。 ○ 学習の準備はできましたか。 ○ 今日の学習について,先生にお話をお願いします。 ○ 問題を読みましょう。 ○ 分かったことやたづねているところを発表して下さい。 ○ 学習のめあてを書きましょう。 ○ 予想を立てて自分の考えたやり方で問題を解きましょう。 ○ 発表の準備をしてください。 ○ 自分の考えを発表してください。 ・ 質問はありませんか。 ・ 付け足しはありませんか。 ・ 違う考えはありませんか。 ・ よい点に気づきませんでしたか。 ・ 共通点はありませんか。 ○ 学習のまとめを先生お願いします。 うに , 「つかむ→自力解決→練り合い→まとめ」の4 つの段階を挿入する。このことにより問題解決的な 学習に慣れ自己学習能力を育てることができる。 (3) ガイドの言葉例 話型表(図5参照) 話型表は,児童が自分の考えを筋道立てて発表で きるようにするものである。また,何をどのように 発表してよいか分からない児童にその方法を示し, 発表不安を取り除き安心して発表できるようにする -3- (6) ワークシートの工夫 ワークシートは,第4・ 5学年の「面積」1単元分 を図5のように作成した。 ヒント画面 ワークシートには,以下 学習の流れ の欄を設定した。 ① めあて,問題 ② 操作活動 ③ 多様な解決 ④ 話型表 ⑤ ガイドの言葉 ⑥ 学習の流れ ⑦ 友達の考え ⑧ まとめ 話型表 ガイドの言葉 〈留意点〉 ○ カラーで印刷配布し楽しく 学習に取り組ませる。 ○ コンピュータと併用できる ようにする 。 ○ 書くスペースを確保する。 ○ 興味・関心が持てる問題作 成や成就感が味わえるような 図5 ワークシート例 ワークシートにする。 4 パワーポイントを活用した学習支援 児童の学習を支援する CAIソフトにはいろいろあ もどる 次へ 動かすやり方へ つけくわえるやり方へ おわる るが,小規模・へき地校ではそれを購入し,各教科 ボタンは,上記のようなものを作成し,操作はマウ に使えるコースウェアを揃えるのも費用面から困難 スの左クリックで簡単にできるよう作成した。 である。そこで,Microsoft ① Powerpointを活用して 児童の学習を支援できるヒント画面を作成してみよ < 画 面 画 うと考えた。 (1) 作成のための留意点 ① 面 たし算を使ったやり方② の 言 葉 をた しし っ か ん で 算り②読 − 2ク リ ッ たし算を使ったやり方③ ク ! > < 画 面 の 言 葉 をた しし っ 算 か り③読− ん2 で ク リ ッ ク ! > 長 方 形 や 正 方 形 の 面 積 の 公 式 をつかってもとめられるね! 長 方 形 や 正 方 形 の 面 積 の 公 式 をつかってもとめられるね! 黄色の面積 + 青色の面積 黄色の面積 + 青色の面積 + 桃色の面積 予想を立てるためのヒント画面を作成する。 ② 多様な解決方を図るヒント画面を作成する。 ③ 面積の変形を動画機能を活用して,視覚で分 はじめ に < 画 面 の かるようにする。 ④ 児童が簡単に操作できるようにする。 ⑤ 興味・関心が持てる画面構成にする。 もどる おわる ひき算を使ったやり方 言 葉 をひ しき っ 算 か り①読ー ん3 で ク リ は じ めに ッ ク ! > (2) ヒント画面 ① ボタンの作成 はじめ に もどる -4- − 長 方 形 や 正 方 形 の 面 積 の 公 式 をつかってもとめられるね! 黄色の面積 おわる 図7 おわる < 画 面 の 言 葉 を移 し っ動か① りー 読 ん 2で ク リ ッ ク ! > 長 方 形 や 正 方 形 の 面 積 の 公 式 をつかってもとめられるね! 大きな図形の面積 もどる 図形を移動させるやり方① は じ め に も ど る 4年ヒント画面 お わ る 表4 第5学年の単元計画(省略) 5年算数 「図形の面積」 単元指導計画(全15時間) 時 目 標 問 題 めあて・まとめ 動機づけ 間 ○いろい○いろい(めあて) ○板チョコ1枚 ろ な 四 角 ろ な 図 形 ○ 工 夫 し て 図 形 を大小2つに分 形 や 三 角 が あ り ま の 面 積 を 比 べ る けた時,どちら 1形を正方す。面積ことができる。 を と る で し ょ 形や長方の大きい(まとめ) う。 形 を も と 順 に 番 号 ○ い ろ い ろ な 図 ○目ではっきり にしたり, をつけま 形の面積は,正 大小を比較でき 正 方 形 や し ょう。 方形や長方形に ないときは,式 長方形に 形を変えて,面 を使って計算で 変形した 積の公式で求め 面積を求める必 りして面 る こ と が で き 要がある。 積を求め る。 る。 ○三角形○三角形(めあて) ○平行四辺形の の 面 積 の の 面 積 を ○ 三 角 形 の 面 積 面積を求めたと 求 め 方 を い ろ い ろ は ど の よ う に し きと同様に,形 6考える。 な方法で て 求 め ら れ る を 変 え た り , 部 求めまし か。 分的に付け加え 本 ょう。 (まとめ) たりすることで 時 ○既習の図形で 三角形の面積も ある長方形や平 求められるであ 行四辺形に変形 ろうと考えるよ して,面積を求 うにさせる。 めることができ る。 図8 5年ヒント画面 4年のヒント画面は,L 字型・複合図形の求積の 方法をたすやり方,ひくやり方,動かすやり方でそ れぞれ動画機能を駆使して作成したヒント画面であ る。 指導計画では,目標を押さえそれを達成する問題 5年のヒント画面は,三角形の求積を倍積,等積 を設定した。児童がどのようなめあてをもって学習 で長方形か平行四辺形に変形して求める方法を示し し,何を学習したかをまとめられるように,児童の たヒント画面である。児童は,これらの画面を手が かりに多様な変形方法で面積を求めることができる 。 5 指導の実際 (1) 視点から「めあて・まとめ」を設定した。さらに, 児童が内発的に学習できるように,どのような動機 づけを行うか問題提示を工夫してみた。 指導計画 (2) 指導計画は,第4学年 14 時間,第5学年15 時間計 児童の実態 児童の多様な個を以下のように把握し,学習指導 画した。 (表3,表4) に生かすようにした。学習の基礎的・基本的内容の 表3 定着とともに,学習意欲や認知スタイルなど多様な 4年算数:面積 第4学年の単元計画(省略) 単元の指導計画(全15時間) 時目標 ○広さの単 位面積(ブ ロックを1 1辺とする正 方形)のい くつ分かで 測れること を知る。 問題 ○長方形と 正方形の花 壇がありま す。どちら かの花壇を 耕して花を たくさん植 えます。ど ちらが広い 花壇でしょ うか。 ○きちんと した長方形 や正方形で 6ない形の面 積は,いく 本 つかの長方 時 形・正方形 に分けて求 積公式を使 えば求めら れることを 理解する。 ○食べかけ のチョコの 面積は何平 方センチメ ートルでし ょうか。 個に対する指導法を工夫することが必要である。 表5 個人差のタイプ分け めあて・まとめ 動機付け (めあて) ○長方形と正方 ○広さはどのよ 形を直観で比較 うに比べればよ させた後,2つ いか。 の花壇を比べさ (まとめ) せる。児童は苗 ○広さは,比べ をたくさん植え るもとになる他 てきれいな花を の何かを使うと 咲かすために大 比べやすい。 きな花壇を選ぼ ○比べるもとに う と す る だ ろ なるものは,き う。そこに面積 まった単位の大 を求めようとす きさの正方形が る意欲が喚起さ よい。 れる。 (めあて) ○みんなで1枚 ○きちんとした の板チョコレー 正方形でない図 トを分けて食べ 形の面積はどの ようとしたら, ように求めれば 一部欠けていま よいかが分かる。 した。さあ,一 (まとめ) 人分の分け前が ○きちんとした 減りますが,い 調歩受けや正方 ったいどのくら 形でない形の面 い残っているで 積は大きさを変 しょう。全体の えないで,長方 面積が分からな 形や正方形に分 いと公平に分け けて求積公式で ることができま 求める。 せんね。 同じように公 平に分けたいで すね。 児 知 学 診 成績 断 偏 差 童 能 力 テ ス 値・1 ト 学期 T S H G J K M M L H M H L L L H L M 52 28 24 80 26 66 57.1 45.7 38.2 60.9 45.2 60.0 学 習 意 意欲 欲 の タ イ 段 プ 階 ML MH HH HL HH HH 3 2 3 5 2 3 学 習 速 度 L L L H L M 課 題 解 決 のスタイ ル HL ML LL HH LL MH a: 抽 象 言 学 語 型 b:感 習 覚運動型 タ イ c:バランス型 プ a b b c b c 知能・学力・速度(H高い,M普通,L 低い) 学習意欲(促進・抑制)HH意欲は高く不安も高い LL意欲は低く不安も低い ○ 診断テスト 既習事項の定着度(100点満点) ○ 意欲の段階 4・5:高い,3:普通,1・2:低い ○ 認知スタイル a: 言語による抽象的な理解が優れている b:具体物による理解が優れている ○ 課題解決(問題解決の速さ・正答率) HH問題を速く解き,正答率も高い HL問題を速く解くが,正答率が悪い ○ 学習タイプ A:補助を必要とするタイプ B:試行錯誤して学習を進めるタイプ C:自力解決して学習するタイプ ○ ○ -5- B A A C A C 複式第4・5学年算数科指導案 1 単元 4年「面積」 2 本時 6/15時間 3本時のねらい ( 1) 必要な辺の長さを測り,複合図形の面積を求めることができ る。 (2) 既習事項の理解を図ることができる。 1 単元 5年「面積」 2 本時 6/15時間 3本時のねらい (1 ) 三角形を既習の学習図形(長方形,平行四辺形)に変形する ことができる。 (2 ) 等積変形や倍積変形の仕方を工夫して,三角形の面積を計算 で求めることができる。 4 授業仮説 (1) 算数の授業において,学習の進め方やガイドを示したワークシートを活用し,パワーポイント(PP)のヒントを用いて学習支援 を行えば,自主的に学習が進められるであろう。 (2) 算数の授業において,多様な個を把握しそれに対応した指導を工夫すれば,学習に進んで参加するであろう。 個に応じる支援 学習活動と教師の発問 位置 学習活動と教師の発問 個に応じる支援 ○ 課題把握ができな 1 学習の導入をする。 1 学習の導入をする。 ○ 課題把握ができな いときは,再度支援す 「みなさんにチョコレートをあげよう 「昼食が近くなりました。形がちょっ いときは,補説する。 る。 と思っていたら,先生の子供が食べて と違うローソンのサンドイッチが2つ ○ 予想が立てられな 2 ○ 予想が立てられな しまいました。残りは何㎝でしょう あります。どっちを食べますか。 」 いときはコンピュータ いときはコンピュータ か 。 」 *動機付け,課題把握の工夫 や具体物を活用させ や具体物を活用させ *動機付け,課題把握の工夫 る。 る。 2 本時の学習課題を確認する。 2 本時の学習課題を確認する。 2 食べかけのチョコレートの面積は,何㎝でしょうか。 底辺と高さが同じサンドイッチがあります。面積の大 (L字型) きいのは,どのサンドイッチでしょう。 (鈍角・直角) 3 学習のめあてを確かめる。 3 学習のめあてを確かめる。 「工夫して図形の面積を求めることが 「工夫して面積の大きさを比べること できる」 ができる」 ○ 図形を分けるな 4 問題を解く。 4 問題を解く。 ○ 長方形や平行四辺 ど,変形すれば長方形 〈予想される反応〉 〈予想される反応〉 形に等積・倍積の方法 の公式が使えることを (1 )図形を2つの長方形に分ける。 (1 )切って,長方形や平行四辺形に変 で変形できるように支 つかませる。 ( 2)図形を補って大きな長方形を作 形して比べる。 援する。 ・自力解決や多様な る。 (2 )同じ三角形を2つ重ねて,長方形 ・自力解決や多様な 考えに気づかせる ( 3)図形の一部を動かして長方形を作 や平行四辺形に変形して比べる。 考えに気づかせる ためのコンピュー る。 (3 )2つの三角形を重ねて大きさを比 ためのコンピュー タによる支援 べる。 タによる支援 ・L字の色画用紙 「他の考え方もあるか,考えてみよ 「他の考え方もあるか,考えてみよ ・色画用紙 (方眼) う。 」 「パソコンも見ていいよ。 」 う。 」 「パソコンも見ていいよ。 」 (三角形) *個に応じた自力解決の支援 *個に応じた自力解決の支援 ・方眼図 5 自分の考えをワークシートにまと 5 自分の考えをワークシートにまと ○ 発表の話型を活用 ○ ワークシートの発 める。 める。 して発表できるように 表話型を活用して,発 「5年生が学習している間,発表の仕 「友達に分かりやすい説明を工夫しよ アドバイスする。 表できるようにアドバ 方を考えましょう。 」 う。 」 イスする。 *多様な考えにふれさせるための構想 *練り合いの構想を立てる ○ 発表の仕方を参考 6 5年生の発表を聞く。 6 自分の考えを発表する。 ○ 発表に対して不安 にさせる。 7 自分の考えを発表する。 7 4年生の発表を聞く。 を持っている児童に ○ 簡単な図形に直し 8 学習のまとめをする。 8 誰の考えが分かりやすいかガイド は,教師がサポートし て考えることの大切さ *練り上げの支援 を中心に話し合う。 て恐怖心を取り除く。 をつかませる。 9 学習のまとめをする。 ○ いつでもどこでも きちんとした長方形や正方形でない形の面積は,正方形 *練り上げの支援 使える考えに着目させ や長方形に分けたり,変形したりすれば,公式で求められ る。 ます。 三角形の面積は,長方形や平行四辺形に直すと今まで ○ 独立的多様性のよ 「今日の学習の大切なポイントです。 」 習った公式で求めることができます。 さに気づかせる。 「今日の学習の大切なポイントです。」 ○ 統合可能な多様性 にふれさせる。 ○ 自分ができそうな 「今日の学習で分かったことを,もう 「三角形を別の形に変える方法を使っ ○ 自分ができそうな 問題に挑戦させる。 一度確かめましょう。 」 て練習問題を解きましょう。 」 問題に挑戦させる。 ・具体物 9 練習問題を解く。 10 練習問題を解く。 ・教師が直接支援す (3種類の問題) (3種類の問題) る。 10 次時の予告をする。 11 次時の予告をする。 「正確に面積を求めることができる 「三角形の面積を求める公式を考えま か,チェックテストをします。 」 しょう。 」 ( 1) 必要な辺の長さを測り,複合図形の面積を求めることが ( 1) 三角形を既習の図形に変形することができたか。 できたか。 評価 ( 2) 等積変形や倍積変形の仕方を工夫して,三角形の面積を ( 2) 既習事項の理解を深めることができたか。 計算で求めることができたか。 -6- H)4人,低いのが4人となている。したがって, 指導の工夫 6 (1) 学習意欲の段階は相殺されて,2・3 の段階が5人, 動機づけ 4年生では「みなさんにチョコレートをあげようと思っ て,長方形の板チョコレートを買ってきました。そしたら 表7 意欲の段階 5の段階が1人となり,全体的には 段階 人数 学習意欲は低くなっている。このこ ね,先生の子供がこれを食べちゃいました。これだけ食べ 2 2 とから学習不安を取り除くことや学 ちゃいました。(L字のチョコ)さあ,これだけあったらみ 3 5 3 1 習意欲を向上させる手立てが必要で ある。 んなチョコレートを何個もらえるかな。どのくらいもらえ るか分かるためには,この広さが分かっていないとだめだ ね。この広さは6名で割れないね。今日は,T君にこの広 ③ さを求めてもらいます。 」と児童と会話しながら,問題に 学習の速度が速いものと普通の児童が各1人,遅 課題解決のタイプや学習速度から 対する動機づけを行い楽しく学習に取り組めるようにした。 い( L)のが4人となっている。課題解決の正答率の 5年生では,鈍角三角形と直角三角形の2つの三 高いのが2名で,誤答率が高いのが4人となってい 角形を提示して,どちらの面積が大きいか問うと, る。したがって,全体では学習の速度は遅く解決し 前者が0人後者が5人となった。しかし,直感だけ た後に正答かどうかきちんと診断しながら指導する の判断であり何も根拠がない。そこから「本当にど ことが必要である。 ④ ちらが大きいか」と児童の知的好奇心を喚起するこ 認知スタイルから とができる。さらに,どちらの面積が大きいかとい 知能テストから抽象言語による理解に優れた児童 う問題を児童自身の問題,あるいは児童の内発的な が1人,具体物による理解に優れた児童が3人,バ 意欲による問題解決にするために「給食時間が近づ ランス型が2人となっており,全体的にb型で対応 いてきました。味が同じならどの三角形のサンドイ した方が学習効果が期待できる学級である。 ⑤ ッチが食べたいですか 。 」と問題提示する。すると, 児童は「大きい方」と「大きい方を食べるために面 自力解決能力 多様な資料から児童一人一人の自力解決能力をあ 積を求める」と自己課題を設定して問題に自発的に る程度判断することができる。自力解決して学習で 取り組むことができるようになる。 きるタイプCが2人,試行錯誤して解決できるタイ (2) 多様な個の把握 プBが1人,補助を必要とするタイプAが3人とな (表5参照) っている。 個に応じる指導を十分達成するには,児童一人一 人の個性や学級全体の特性を多様な観点から理解す ⑥ る必要がある。 多様な個の把握から,児童一人一人の指導目標を ① 下表のように設定した。そのことにより児童一人一 人の特性に応じた指導が一層可能になる。 学力の観点から 知能では高い( H)が2人,普通(M )が3人,低い 表8 ( L)1人となっている。しかし,学力テストの結果 T を見ると,高い(H)1人,普通(M )1人,低い(L )4 かる。知能・学力・1学期の成績の偏差値の相関関 係が認められる。知能に比べ学習成績がふるわない のが2人( S ,J ) ,向上しつつあるのが1人( T),同 程度なのが3名。診断テストの結果からは,1人 ( G)以外はレディネスの引き上げが必要である。 学習指導の工夫によって,学 ② 表6 意欲のタイプ 学習意欲のタイプから タイプ 人数 「島根式学習意欲検査」による HL 1 と,学習意欲が高い(前項H )のが HH 3 4人,普通(M )が2人となってい る。学習不安が高いのが(後項 MH ML 1 1 個の特性例 児 3年間一人学びで学習してきたこともあり,静かで黙々と課 題に取り組む姿が見らる。本人の達成意欲は5とかなり高い。 しかし,達成活動の傾向や外からの働きかけによる成功への欲 求がやや低めであることから,本人の内発的な学習への意欲を 喚起する必要がある。そのためにも,課題提示における動機づ けが大切なポイントとなる。 算数の授業への参加や発表に不安を感じているので,緊張感 を取り除いたり,上位学年と交流しながら発表の場を設けるな どの工夫が要求される。そのためにも,コンピュータの画面か らヒントをもらえること,それでも分からない場合にも,先生 の説明や具体物のヒントで支援する。そのことにより安心して 学習に取り組むことができるように配慮する。 ヒントは,具体物よりも言語によるアドバイスの方がすんな りと受け入れられるようであるが,両方で支援する。 人となり,知能に比べて学力が低調であることが分 力の向上が可能である。 個の把握 H 児 学習に際しては,知能・学力面から見ても厳しい状況がある が,本人のまじめな学習態度のおかげで,少しずつ学習パター ンを掴んできている。 算数に関する達成動機の項目は,いずれも4∼5に該当して おり,本人の学習への欲求が表されている。学習不安や授業参 -7- 加・発表への不安が大きいので,①課題をしっかり掴ませる② 学習の仕方を身につけさせる③ヒントを活用できるようにする 等の他に,意識的な声かけによる具体的な説明が必要である。 ヒント(PP・カード)の意味なども細やかに押さえておかな ければならない。 G 児 知能・学力とも高く,学習態度も積極的である。ヒントなし でも課題を解決できる直感型のタイプである。学習が行きづま ったときのヒントも,効率よく活用し自分の考えに結びつける ことができる。 学習における達成志向・自主的学習態度も高い数値を示して いるので,一歩踏み込んだ学習の工夫をさせる必要がある。 ①課題に対しても何通りもの解き方を考えたり,②説明・発 表の仕方を工夫させるなど,現状にとどまらない学習活動を意 識させたい。 (3) ① 個に応じる学習指導 多様な問題解決ができる問題提示 児童の学習能力によってどの児童も学習に参加で きるように,1つの三角形の面積を求積させるので なく,2つの三角形の求積を求めさせたい。遅れた 児童は直角三角形の求積のみでもよい。進んだ児童 は鈍角三角形の求積をした後,さらに,倍積変形や 等積変形,長方形や平行四辺形に変形にも挑戦させ 多様な変形方法に気づかせるようにする。 ② ヒントカード 児童が三角形の面積を求めるのに,パワーポイン トの動画機能を活用してコンピュータによる学習支 援を試みた。しかし,中にはその画面による支援で 図9 は自力解決して学習できない児童が予想されたので , (4) 4年の練習問題 多様な思考 「同じ三角形を2つ使ってこれまで習った図形にで 独立的多様性・・第4学年では,L字型の面積を きないか 。 」と考えさせるために,直角三角形と鈍角 分割・移動して加法で求める方法と全体から部分を 三角形を2組用意した。さらに,児童が三角形を操 引いて求める方法がある。それぞれの考えのよさに 作して求められるように,方眼図や三角形の色画用 紙を準備した。 ふれさせたい。 統合可能な多様性・・第5学年では,三角形の面 ③ 話型表 積を倍積・等積いずれであれ,長方形に直したり平 問題解決的な学習の仕方や練り合いでの発表の仕 行四辺形に直して面積を求めることができる。 方に,児童は慣れていない。そこで,話型表を活用 共通思考・・面積は正方形や長方形の簡単な図形 した発表の仕方や筋道だった考え方を個別指導して , (5) 児童が安心して発表できるようにした。 ④ に変形して求めることができる。 練習問題 自己評価ノート 自己評価は,児童が自己の学習を振り返り自己の 学習したことを定着させるには,学習したことを 学習状況を理解し成就感を持ったり,次時への学習 活用して同じような問題を解いたり発展問題を解い 意欲を高めたりするために有効である。また,指導 たりすることにより,児童に自信をつけることが大 者の側から目標の達成状況を確かめたり指導の手立 切である。そのために , 「広げる」段階でホップ・ス てが有効であるか探ったりして授業改善に役立てる テップ・ジャンプの3種類の問題を作成した。 ことができる。そのために,①動機づけ,②コンピ 練習問題は,たす方法や動かす方法,引く方法を ュータの支援,③ガイドとワークシートの有効性, 活用して面積を求められるように問題作成してある 。 ④発表話型,⑤多様な解決,⑥成就感,⑦類似内容 一つの方法ばかりでなく,問題状況に応じて解決方 指導での学習,以上の項目を設定して,児童に自己 法を選択できるようにすることが大切である。 評価させ,指導の手立ての有効性を児童の側から問 うことにした。 -8- コンピュータと教師の支援で,三角形を等積変形し 自己評価ノート とても だいたい て長方形にする方法を選ぶことができた。 少し まったく ① 学習問題をやってみたいと思いますか。 ② パワーポイントは役立ちましたか。 ③ ガイドを取り入れたワークシートで学習が 進めやすかったか。 ④ ワークシートの発表例を参考に発表できま 図10 (2) したか。 等積変形 事前事後のアンケートから 表 10 ⑤ いろいろなやり方で解決できましたか。 ⑥ 学習に満足できましたか。 ⑦ 似たようなところを学習して役立ちまし ① 算数の問題をやってみたいと思います。 たか。 表9 事前 自己評価ノート コンピュータでの支援 0.2 ② 算数の問題を自分の力で解決できます。 2.7 3.2 0.5 2.5 2.8 0.3 ④ 複式学習でためになることがありますか。 2.8 3.5 0.7 ⑤ コンピュータを活用した学習は役立つか。 3 4 1.0 ⑥ 自分の考えを進んで発表できますか。 予想を立てる段階で両学年全員が,コンピュータ 事後 差 3.2 ③ いろいろな考えで問題解決できますか。 7 児童の変容 (1) 事前と事後のアンケート比較 3 3.3 3.2 -0.1 に向かい予想のヒントを得た 。「図形を動かす」(4 ⑦ 自分たちで学習を進めることができるか。 3 3.3 0.3 年)「動かしてやってみる」1人 , 「長方形に直す」 ⑧ ワークシートを活用して学習できるか。 3 3.3 0.3 3人 , 「動かしてマスを数える」1人(5年)とそれぞ ⑨ 友達の考えを聞く学習は楽しいか。 2.8 3.2 0.4 れ予想を立てることができた。しかし,予想を立て る学習が定着していないことから , 「どの方法がやり ⑩ 自分にあった学習ができますか。 2.8 3.3 0.5 やすいか 」 「どんな形になっているかな」と教師の支 事前と事後のアンケートから,特に変容が大きか (4点尺度式,全員の平均) ったのは ,「コンピュータを活用した学習は役立つ 援で予想を立てた児童もいた。 <5年生H児の支援> か。 」で全員が「とても役立つ」を選択し,パワーポ コンピュータ画面に向かい,じっと画面を見る。等 イントを使った学習が役だったと支持した。また, 積変形の画面を2回見る。しばらくして席に戻るが, 類似内容指導での学習により共通思考や多様な思考 教師と共に再びコンピュータに向かう。 にふれたことが「複式学習でためになった」 3.5 と肯 これはさっき見たかな。じゃ,次ぎ進んで。比べるや 定されたと考える。その他に,個に応じる指導によ り「自分にあった学習ができた 」 「自分の力で解決で り方だね。そこ押して。もう1回・・・。予想してみ きる」ようになったと,自己学習能力の高まりも見 よう,画面を指しながら「これかな 。 」 「これかな。 」面 られるようになってきた。 「さあ見てみようか。予想だからこっちを見ようか 。 積を求める方法が分かれば,自分でできるでしょう。 しかし,動機づけや練り合いによる学習を深める これを2つ重ねたんだね。さっき緑の三角形だから二 ための話し合いの仕方については,課題を残した。 (3) つ重ねたらどっちが大きいか分かる 。 (分からないと意 児童の自己評価から 志表示する。 )鈍角三角形と直角三角形のどっちか見て 表 11の自己評価から,やはりパワーポントによる から・・・これだったらできる。長方形。これだった 支援が「大変役立った」と評価された。児童はコン ら前やったことがあるね。見たことがあるね。付け加 ピュータを使って楽しく学習できたようである。し えるやり方と動かすやり方ってどういうやり方かね。 かし,ヒントの内容やヒント画面をどこで活用する 「動かすやり方」では長方形にするのと,平行四辺形 か等,検討課題も残された。本研究では,パワーポ にするのとどっちが求めやすい 。 「長方形」 。三角形を イントによる支援が効果的であるか試験的に実施し 2つ持ってきて長方形にするのと,三角形を二つに分 てみた。結果的には,これに工夫・改善を加えれば けて長方形にするのと,どっちが求めやすいかね。 「動 十分活用できるものと考える。当へき地教育研究室 かして長方形にすれば比べられるのではないか 。 」これ が予想だね。 には,それを活用した「算数の合同学習 」 (平良 淳)や「5・6年の説明文 」 (佐久川政昭)の実践例 がありCD-R で資料を作成している。今回の研究はこ -9- 表 11 児童の自己評価の推移(6時間分) (ガイド) :自分の考えがかけた人は説明の準備をしてください。発表 1時2時3時4時 6(本時)平均 したい人はいませんか。 ①学習問題をやってみたいと思うか。 3.2 ②パワーポイントは役に立ちましたか。 3.7 3.8 3.7 3.7 3.7 3.7 にすればいいと考えました。まず,横のとがっているとこ ③ガイドを入れたワークシートで学習できたか 3.3 3.3 3.5 3.7 3.8 3.5 ろを切りました。次に,合うところにくっつけました。す 3 3.5 3 3.5 3.2 (5年生) :発表してもいいですか。三角形の面積を求めるのに長方形 ④ワークシートの発表例は参考になりますか。 3.3 3 3.5 3.3 3.7 3.4 ると,12個になったので,答えは12平方センチメートルです。 ⑤いろいろなやり方で解決できましたか。 2 分かりましたか。何か質問はありませんか。 ⑥学習に満足できましたか。 3.2 3.2 3.7 ⑦類似内容の学習は役に立ったか。 3.3 3.2 3.5 2.8 3.5 3.3 2.5 3.5 2.8 3 3 2.8 3.7 3.4 (5年生) :両方同じ面積ですか。 (5年生:はい,そうです。 ) (4点尺度式,全員の平均) 表12 れらを基礎礎にさらに積み上げてみた。 話形表を使った発表事例 ガイドを挿入したワークシート3.5 や話型表 3.4 ,類 んと発表できてよかった 」「楽しかった」と書いた児 似内容指導による学習3.3 ,動機づけ3.2 などは,自己 童が多かった。しかし,発表内容に児童自身の考え 評価において児童の支持を得ている。このことから があまり記入されていなかったり練り合いでの話し 児童は ,「学習に満足」3.4 (4点尺度・平均値)で 合いが深まらない反省点があった。 きたものと推測する。 8 成果と課題 しかし,多様な思考にふれるための練り合い学習 の仕方や個人内での多様な解決について課題を残し (1) ① 成 果 ワークシートとパワーポイントのヒントを活用 たので,いろいろな解決については 2.8とあまり良い することにより,児童は自力解決して学習したり 結果が得られなかった。 間接指導時に主体的に学習したりすることができ (4) 多様な考え方 児童一人で三角形を何通り変形したしたかについ た。 ② 個の多様な把握により,児童一人一人の特性に ては,4通り2人,3通り2人,2通り1人である 。 応じた学習指導ができ,児童の学習を支援するこ 4年生では,L字型の複合図形を一部切って「動か とができた。 して」長方形にする1つの方法しかできなかった。 ③ 個に応じる指導により,発表の仕方,学習意欲 , 三角形の変形方法は,等積変形で以下の図の通り 自力解決力について,一人一人の学びを支援しそ である。全体では5通りの変形方法ができた。 れぞれ伸ばすことができた。 4年生は,長 ④ 方形の面積を6 ×5の長方形の 類似内容の指導計画により,多人数化を図るこ とで学習集団での練り合いができた。また,共通 思考により数学的考えのよさに気づくようになっ 公式を活用して てきた。 面積を求めるこ とができた。 図11 (5) (2) ① 課 題 予想や多様な解決を支援しながら,自力解決力 図形の変形種類 を高めることができるパワーポイント画面の内容 話型表を活用した発表 になるよう検討する。 自分の考えを発表するのに不安を持っている児 ② 類似内容指導における共通思考の設定や錬り合 童が多い。そこでワークシートの話型表を活用さ いによる話し合いの進め方・思考の深め方の指導 せて発表させたところ,表 12のように全員が発表 を児童の実態に即して具体化する必要がある。 することができた。さらに授業の感想では「きち <参考文献> 全国へき地教育研究連盟研究委員 1998 年 『学習指導の工夫・改善』 21 世紀を開く教育シリ−ズ Ⅰ 伊藤説郎 1991年『算数科・新しい問題解決の指導』 東洋出版 杉山・清水編著 1989 年『個人差に応じる算数の指導法』 東洋館出版 伊藤俊彦 「算数における学意欲の測定用具( AMIM) 」 『小学校算数教師用指導書』 - 10- 学校図書(第2部)