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低環境負荷型外航船(グリーンシップ)の研究開発

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低環境負荷型外航船(グリーンシップ)の研究開発
「低環境負荷型外航船(グリーンシップ)の研究開発」成果概要
Ⅰ.ノンバラスト船等の研究開発
(目
的)
平成 16 年2月、国際海事機関(IMO)において「船舶のバラスト水及び沈殿物の
規制及び管理のための国際条約」が採択され、条約発効後は船舶はバラスト水管理(バ
ラスト水洋上交換又はバラスト水処理)を実施することになった。
このため、バラスト水 ( 注 ) を移送しない船の開発「ノンバラスト船の研究開発」を行
うとともに、条約が求めるバラスト水の排出基準を満たす設備の開発「船舶搭載型高速
バラスト水浄化システムの試験研究」を行うこととした。
注)バラスト水とは、船舶の空荷状態における安全確保のため、重しとして積載する海水のこと。
1.ノンバラスト船の研究開発
(1)研究内容
在来船には、バラスト水は空荷時に絶対必要なものであるが、本研究開発では経済
性にも留意しつつ、バラスト水の海域間移送を伴うことなく安全航行が可能な船型
(ノンバラスト船型)を開発することとしている。
(2)研究成果
①船型試験の実施
本年度は、スエズマックスについて在来船型とノンバラスト船型(1隻目)の船型
試験を実施し、ノンバラスト船型の性能を在来船型と比較して、ノンバラスト船型
の問題点、改良すべき課題を摘出した。
②基本計画の問題点の抽出
スエズマックス及びVLCCのノンバラスト船型について、中央断面形状、一般
配置、トリム/スタビリティ等の基本計画上の問題点や、SOLAS、MARPOL 等の規制要
件及び Air Draft、中央平行部長さ等の運航のための制約条件を抽出整理した。
③規制要件等の対応
統計解析によりスラミング発生確率と衝撃圧を求め、この衝撃圧に対応した船首
船底補強に関して現船級規則をベースに検討した。
主要な積付状態についてトリム・縦強度計算を実施し、必要な補強重量を求めた。
要求性能を満たす船型の基本計画を策定した。スエズマックスについて機関室、ポ
ンプ室として必要な区画を検討し、上記主要寸法からタンク配置を決定した。
現行規則に関して、ノンバラスト船型が規則を満たせるか否か、ないし規則適用
の前提条件がノンバラスト船型でも成立するか否かについて検討した。
④その他
スラミングによる衝撃荷重を推定するプログラムを整備して荷重を推定し、模型
試験結果と比較した。
プロペラ没水深度の諸影響を把握するとともに主機関に及ぼす影響を調査した。
可変レーキプロペラの模型を試作し、その単独性能の模型試験を実施した。
2.船舶搭載型高速バラスト水浄化システムの試験研究
(1)研究内容
本研究では、低イニシャルコスト、低ランニングコストでなおかつ既存船にも容易
に装備が可能な凝集ろ過・磁気分離技術を応用したバラスト水浄化処理装置を開発し
ている。
バラスト水を漲排水する海域の海水を採水して 浄化機能基礎実験を実施した。8
月∼12月の海水を毎月採水して、ビーカーを用いた浄化試験を実施して原水と
処理水に残存する植物及び動物プランクトンをサイズごとに計数した。
(2)研究成果
本実験の結果、本浄化基礎実験で実施した凝集条件、浄化方法で処理すれば、
海水中のプランクトン及びバクテリアを高い除去率で除去でき、新基準値を達成
できる見通しを得ることができた。 磁性フロック形成槽の小型化を検討し、浄化シ
ステムの小型化の見通しを得た。
なお、本バラスト水浄化装置用の動揺安定台の試設計を行った。また、東京海洋大
学が所有するパラレルリンク型動揺安定台を用いて実験を行った。
Ⅱ.次世代型帆装船の研究開発
(目
的)
気候変動枠組条約第3回締約国会議(京都議定書)において温室効果ガスの排出の抑
制・削減が決定した。このため、海上輸送分野における温室効果ガスの抑制又は削減を
めざし、「次世代型帆装船の研究開発」を行うこととしている。
(1)研究内容
外航船舶について、風をエネルギー源とする次世代型帆装船の研究開発に取り組
んだ。
本研究では、帆装システムとして硬帆、軟帆、スラットからなる高揚力複合帆シ
ステムで、デッキクレーンと兼用型のものを検討して、帆形式としてはスラット付
円弧翼型硬帆と軟帆の組み合わせで、クレーン形式としてはシリンダータイプのも
のを試設計した。
基本設計さ れた高揚力 複合帆の空 力特性を確 認するため に縮尺率3/100 の模型
を製作して風洞試験を実施した。その結果、単独の高揚力複合帆として最大揚力係
数 2.15、最大推力係数 2.46 という値を得た。また、当初の基本設計に比し、マス
トとスラットやファーラーの距離を離すこと、及び硬帆取り付け角を大きめとする
ことが有効であることが判明し、この結果は基本設計にフィードバックされる。
軟帆単体に対する流体/構造連成計算コードを高揚力複合帆に対応した流体/構
造連成計算コードに改良し、計算に用いた各要素技術について個別に検証した。
さらに 3 種類の 3 次元揚力体で構成される複合帆形状を正確にモデル化し、風洞
試験で高い揚力が得られたケースについて計算を行った。風洞試験結果との比較は
定性的によい一致を見せ、設計支援ツールとしての有効性を確認した。
(2)対象船舶
次世代型帆装船の対象としてハンディバルカーを選定した。主要目は、全長:
187.00m、幅:32.26m、深さ:17.00m、計画喫水:10.70m、載荷重量:43,200MT、
航海速力(主機のみ)約 14.5 ノットとした。その他特徴としては、ハッチカバーは
サイドローリング型、荷役用デッキクレーンは複合帆装置と一体型、クレーンマス
ト高さ:水面から 41.1m以下等である。
本船の復原性能についてIMO基準に適合するか計算を実施した結果、満足した。
航路選定アルゴリズムに非線形計画法を取り入れ、与えられた航海スケジュールの
中で CO2 排出量を最小とする航路を選択できるアルゴリズムを構築した。基本的
なロジックの確立と、結果の有効性を実証できた。
(3)研究成果
短期的最適データとモデル化された低気圧データベースを使用して、自船の1∼
2日先の航行予定海域における風向・風速、波浪を予測するコース選定支援システ
ムの基本概念を設計した。
今回開発したウェザールーティングシステムを用いて、次世代型帆装船を北太平
洋航路に投入した場合の年間平均 CO2 削減効果を従来船の場合と比較した。その
結果、高揚力複合帆による CO2 削減:10.1%、新しいウェザールーティングシステ
ム採 用に よ る効 果: 6.5%、 両者 によ る総 合 効果 : 15.9%と なり 、 目標 の「 年 平 均
15%以上の CO2 排出量の削減」という目標が達成できた。
この燃料削減に見合う適切な設備投資額(メンテナンス費を含む)を評価すると、
燃料価格を$200/t、帆装効果 15%の場合には、帆装費用が約1.2億円程度であ
れば 15 年以内に回収が可能であり、帆装効果が 20%の場合には、帆装費用として
1.7億円程度まで許容されるとの結論になった。
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