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社会保障審議会企業年金部会の動向について

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社会保障審議会企業年金部会の動向について
【年金制度トピックス】社会保障審議会企業年金部会の動向について
ペンション・リサーチ・センター 主任研究員 藤本 裕三
図1 審議の流れ
【ヒアリング】
○労使代表
・日本経済団体連合会
・日本商工会議所
・日本労働組合
総連合会
○企業年金の関係団体
・企業年金連合会
・企業年金連絡協議会
○金融機関関係団体
・信託協会
・全国銀行協会
・日本証券業協会
・生命保険協会
【課題抽出】
【論点の提示】
【議事・議論】
厚生労働省
より各課題
に対して論
点(対策案)
が提示され
る。
企業年金部
会の委員に
より提示され
た対策に対
して議論が
行われる。
(※)
各項目のフ
ロー図等参
照
(※)
各項目のフ
ロー図等参
照
○企業年金等の普及・拡大
・一般企業向けの取組
・中小企業向けの取組
○ニーズの多様化への対応
・柔軟で弾力的な制度設計
・ライフコースの
多様化への対応
○ガバナンスの確保
○その他
・現行制度の改善
・公的年金制度や
税制との関係
【結論】
平成27年1月16日
の企業年金部会に
「社会保障審議会
企業年金部会にお
ける議論の整理
(案)」が厚生労働
省より提示され、一
部加筆・修正の上
確定版が公表され
た。
(※)
各項目のフロー図
等参照
1.はじめに
老後所得保障の柱である公的年金制度が中長期的に給付水
2.企業年金等の普及・拡大
準(所得代替率)を低下させること、働き方の多様化が進む
(1)一般企業向けの取組
中で個々人のライフスタイルに合わせた老後の生活設計を支
図2 一般企業向けの取組に関する議論のフロー
える仕組みが必要となっていること、諸外国でも老後の所得
【課題】
確保の柱に私的年金を位置づける潮流があること、企業年金
・DB・DCのイコールフッティングの確保
・制度間移行に係る手続きのあり方やポータビリティの向上等
2法(DB法及びDC法)成立時からの状況変化、さらに、
厚生年金基金制度の見直し等、企業年金制度を巡る社会経済
【論点】
情勢について大きな変化が見られます。
・柔軟な掛金拠出
・拠出限度についてDB・DCの一体化等
・給付時規制をDB・DCで共通化
それらを踏まえ、社会経済情勢の変化に対応すべき全体的
な見直しを行う時期が来ていることに鑑みて社会保障審議会
【議論】
企業年金部会においては、平成26年6月4日に開催された
柔軟な掛金拠出には賛成する意見があり、他方、DB・DCの一
体運営については規制強化であるとする懸念も表明された
第4回会合以降、
「企業年金制度のあり方」について議論が行
われました(
「図1審議の流れ」参照)
。
【結論】
具体的には第5回、第6回会合において労使を代表する団
「DBの拠出弾力化」:税務当局と調整すべき
「企業年金制度における拠出時・給付時の仕組みのあり方」
:今後の検討課題
体、企業年金の運営に携わる団体、企業年金を受託する金融
機関等の団体よりヒアリングを行い、第7回会合において同
部会で検討を行う企業年金制度の課題を抽出しました。第8
(a)課題と背景
回以降は、それぞれの課題に対して、事務局である厚生労働
DB・DC創設から10年余りが経過しましたが、適格退
省より論点(施策案)が順次提示され、それに対して委員の
職年金の廃止や厚生年金基金制度の抜本的見直しが行われる
方々より意見を聴取し審議会としての結論の方向を探るとい
など、企業年金制度を取り巻く状況は大きく変化しました。
うプロセスにより平成27年1月16日の第15回会合に
DBについては、持続可能な制度としてより幅広い企業の労
「社会保障審議会企業年金部会における議論の整理(案)
」が
使が導入しやすい制度としていくべきとの指摘がある一方、
提示され、一部加筆・修正されたものが確定版として公表さ
DCについては現行の仕組は老後所得である年金としての性
れました。
格に重きを置いて設計されているため従業員の退職への柔軟
本稿では、抽出された課題の論点(図1審議の流れの「課
な対応が困難との指摘があります。そこで従業員の退職への
題抽出」に記載)毎に、その企業年金部会が想定した背景、
柔軟な対応に配慮しつつ「国民の老後生活を支えるものとし
厚生労働省が提示した論点(施策案)
、委員による議論、
「議
て公的年金を補完する役割をどのように果たすか」という視
論の整理」で整理された位置付け(結論)を整理・解説して
点から拠出時や給付時の仕組のあり方について全体的な見直
いきたいと思います。
しが必要となっています。
1
企業年金部会は上記のような背景(部会資料より要約)を
が負担になっているとされています。このため、DBにおい
想定した上で次のような課題を整理しました。
ては簡易基準DBや受託保証型DBといった対策がなされて
■各企業の実情に応じた多様な制度設計を可能とするための、
きましたがDCについては特段の対策がなされていないなど、
DB・DC制度間のイコールフッティングの確保
中小企業における企業年金の普及拡大を促進するための施策
■企業の組織再編等に対応するための制度間移行に係る手
が必要となっています。
続きのあり方やポータビリティの向上等
企業年金部会は上記のような背景(部会資料より要約)を
(b)論点(施策案)
想定した上で次のような課題を整理しました。
(a)に挙げられた課題を解決する方策として次のような
■中小企業が企業年金を実施・継続する際の負担を軽減する
論点(施策案)が提案されました(原文より要約)
。
ための新たな仕組み
■DBの健全性維持のための事前積立や積立不足解消のた
■労使の継続的な関与・監視を前提とした、DB・DC双方の
めの拠出方法について柔軟な掛金拠出を可能とすべき
特長を併せ持つ制度設計のあり方
■拠出限度については、①DB・DCを合わせた水準とするこ
図3 中小企業向けの取組に関する議論のフロー
と、②年単位とすること、また、給与の一定割合とすること、
【課題】
③現在の企業の退職給付水準を勘案して設定すべき、④将
・負担軽減のための新たな仕組み
・DB・DC双方の特長を併せ持つ制度設計
来の公的年金の給付水準の調整を考慮した改定ルールを
検討
【論点】
■給付時については、①DB・DCの支給開始を65歳を基本
・更なる受託保証型DB普及のための手続きの緩和等(DB)
・投資教育の共同実施、簡易型DCの導入(DC)
・個人型DCへの小規模事業主掛金納付制度の創設
としつつ繋ぎ年金の役割も考慮して60歳以上とすること(D
Cの加入期間に応じた制度の見直し含む)、②原則として中
【議論】
途引出を認めない或いはペナルティを課す、③DB・DCの
「例え、投資教育の共同実施が出来るようになったとしても、事
業主が従業員に投資教育を受けさせる責務は変わらないように
すべき」「要件を満たせば中小企業以外でも簡易型DCとして取
り扱うべき」「個人型DCの小規模事業主掛金納付制度について
は中小企業の従業員の老後所得確保という本来の目的にかな
う施策と言える」といった意見があった
加入可能年齢を一律70歳で統一すること、④年金支給を更
に促進する仕組みを設けることを検討
(c)審議の経過
厚生労働省から提示された施策案に対して、委員からは拠
【結論】
出の柔軟な対応については賛同する意見がありました。
他方、
■DB制度:更なる受託保証型DBの普及・拡大のための手続き
の緩和等
■DC制度:①投資教育の共同実施(企業年金連合会等への委
託)、②簡易型DC制度の創設、③個人型DCへの小規模事業
主掛金納付制度の創設
DB・DCの規制を一体化することについては「歴史的な経
緯が異なるDB・DCを将来を見据えて統合するという方向
性は良い」という意見がありつつも、拠出について「現状上
限のないDBの制約とならないのか」
、給付について「規制強
(b)論点(施策案)
化に繋がりDBから退職一時金への退行を招くのでは」とい
(a)に挙げられた課題を解決する方策として次のような
った懸念も表明されました。
論点(施策案)が提案されました(原文より要約)
。
(d)「議論の整理」における位置づけ
■DB制度:更なる受託保証型DBの普及のための手続きの
「DBの拠出弾力化」について今回の制度の見直しと合わ
緩和等
せて実施できるよう税務当局と調整すべきと位置づけられま
■DC制度:①投資教育の共同実施(企業年金連合会等への
した。また、
「企業年金制度における拠出時・給付時の仕組み
委託)や②制度導入手続きが簡便で運営も容易な簡易型D
のあり方」は、今後の検討課題と位置づけられました。
Cの導入、③個人型DCへの小規模事業主掛金納付制度の
創設を検討
(2)中小企業向けの取組
なお、簡易型DCについては、米国のシンプル401K1等
(a)課題と背景
を参考に検討してはどうかと提案されました。
中小企業の企業年金実施割合は低下傾向にあり、厚生年金
(c)審議の経過
基金制度の見直し等を踏まえますと、今後、中小企業の企業
厚生労働省から提示された施策案に対して、
委員からは
「例
年金実施率はさらに低下する可能性があることから、中小企
え、投資教育の共同実施が出来るようになったとしても、事
業向けの支援策が急務になっています。また、ヒアリング等
によるとDBは中小企業にとって負担が重く実施のハードル
1
米国で導入されている通常の民間企業従業員向け確定拠出年金制度(4
01K)の手続き等を簡便化した中小企業向け制度。
が高く、DCは負担は比較的軽いが設立手続きや運営コスト
2
業主が従業員に投資教育を受けさせる責務は変わらないよう
■制度設計の選択肢の多様化を図る場合における労使の関
にすべき」
「要件を満たせば中小企業以外でも簡易型DCとし
与・監視のあり方及び関係者の役割と責任のあり方
て取り扱うべき」
「個人型DCの小規模事業主掛金納付制度
(b)論点(施策案)
については中小企業の従業員の老後所得確保という本来の目
(a)に挙げられた課題を解決する方策として次のような
的にかなう施策と言える」といった意見がありました。
論点(施策案)が提案されました(原文より要約)
。
(d)「議論の整理」における位置づけ
■DB制度:あらかじめ約束した給付に積立水準(剰余・不足)
「中小企業向けの取組」については、概ね意見が一致した
の状況を一定程度給付にも反映させることのできるより弾力
ものとして以下の見直しを行うものと位置づけられました
的な給付設計の導入を検討
(原文より要約)
。
■DC制度:労使の判断のもと、資産を集団で運用する仕組み
■DB制度:更なる受託保証型DBの普及・拡大のための手続
や、これにDB制度からの保証を組み合わせる仕組みの導
きの緩和等
入について検討
■DC制度:①投資教育の共同実施(企業年金連合会等への
具体的な導入事例としては、オランダの集団型DC制度
委託)、②簡易型DC制度の創設、③個人型DCへの小規模
(Collective DC)2やカナダの目標給付プラン(Target
事業主掛金納付制度の創設
Benefit Plan)3、英国のDA(Defined Ambition)制度4、
米国のフロア・オフセットプラン5、ターゲット・ベネフィッ
3.ニーズの多様化への対応
トプラン6などが紹介されました。
(1)柔軟で弾力的な制度設計
(c)審議の経過
図4 柔軟で弾力的な制度設計に関する議論のフロー
厚生労働省から提示された施策案に対して、
委員からは
「現
行のDBとDCの組み合わせで対応可能ではないか」
「中間
【課題】
的な制度は却って複雑化を招きかねないのではないか」
「余
・DB・DC双方の特長を併せ持つ制度設計(再掲)
・労使の関与・監視のあり方及び関係者の役割と責任のあり方
りに柔軟すぎる設計は給付抑制に繋がらないか」といった意
見がありました。
【論点】
(d)「議論の整理」における位置づけ
・積立水準の状況を給付に反映できる弾力的な給付設計(DB)
・資産を集団で運用する仕組み、保証を組合せる仕組み(DC)
「柔軟で弾力的な給付設計」については制度導入も視野に
【議論】
入れて引き続き検討すべきと位置づけられました。
「現行のDBとDCの組み合わせで対応可能ではないか」「中間
的な制度は却って複雑化を招きかねないのではないか」「余りに
柔軟すぎる設計は給付抑制に繋がらないか」などの意見があっ
た
(2)ライフコースの多様化への対応
(a)課題と背景
人生の中で複数の会社を経験する者が増加するとともに、
【結論】
「柔軟で弾力的な給付設計」
:制度導入も視野に入れて引き続き検討すべき
2
DC制度の要素を取り入れたDB制度。掛金水準を一定期間固定し、その
間は、年金債務に対する積立水準に応じて年金額のスライド等を調整する
仕組み。企業会計上は、確定拠出年金として取り扱われている。(部会資料
より引用)
3 あらかじめ労使で定められた計画に基づき、積立状況に応じて掛金・給
付の調整を行う仕組み。給付は、受給権の保護レベルに差のある二層の構
造で設定。掛金は、事業主負担を固定しても変動させてもよい。(部会資料
より引用)
4 労使で柔軟にリスクシェアを図るための設計として提案。①平均余命の伸
びに応じて支給開始年齢を変化させる等のDB制度の柔軟化、②保証要素
を加えたDC制度、③オランダを参考とした集団型DC制度などを提案。(部
会資料より引用)
5 DB制度とDC制度を組合せた仕組み。あらかじめ最低保証額(フロア)を
設定し、DC制度からの給付が当該額を上回った場合はDC制度からのみ
支給、下回った場合はその差額をDB制度から補填(オフセット)する仕組み。
(部会資料より引用)
6 あらかじめ給付額の目標を設定し、その給付額から数理計算により逆算し
た拠出額を積み立てる仕組み。実際の給付額は拠出した掛金とその運用実
績の合計額となり、運用成果が目標から乖離しても企業による差額補償はな
く、加入者が運用リスクを負う。(部会資料より引用)
(a)課題と背景
我が国の企業年金制度は、DB法とDC法に基づき、基本
的には「給付と拠出のどちらを先に決めるか」という考え方
に基づき運営されていますが、運用等のリスクがDB制度で
は事業主に偏る一方、DC制度では加入者に偏ることとなり
労使のいずれかにリスクが偏る構造になっています。こうし
た偏りへの対応として平成14年度にキャッシュバランスプ
ランが導入されましたが、よりリスクを共有化する制度の導
入を求める声が挙げられています。
企業年金部会は上記のような背景(部会資料より要約)を
想定した上で次のような課題を整理しました。
■労使の継続的な関与・監視を前提とした、DB・DC双方の
特長を併せ持つ制度設計のあり方(再掲)
3
生涯の中で第3号被保険者の期間が短くなることが見込まれ
加入できることは分かりやすい制度になるとともにライフス
るなど、就労の有無も含めた就労形態の多様化が進んでいま
テージの変化にも対応できて良い」
とする意見もありました。
す。公的年金の中長期的な給付水準の低下が見込まれる中で
(d)「議論の整理」における位置づけ
公的年金を補完する役割として位置付けられるべきDBやD
「個人型DCの加入対象の拡大(企業型DCのマッチング
C(企業型、個人型)の重要性が高まることが想定されます。
拠出を整合的に見直し)
」が検討課題として、
「ポータビリテ
このうち、個人拠出の仕組みについては個々人の就労形態に
ィ(制度間の資産移換)の拡充」が実施すべき課題として位
よって老後に向けた自助努力を行う環境に差がある状況であ
置づけられました。
り、就労形態の多様化に柔軟に対応できるよう、老後に向け
て切れ目なく個人の自助努力を可能とする環境整備が求めら
4.ガバナンスの確保
れています。
図6 ガバナンスの確保に関する議論のフロー
企業年金部会は上記のような背景(部会資料より要約)を
【課題】
想定した上で次のような課題を整理しました。
・労使が継続的に関与・監視する仕組みのあり方
・積立不足を速やかに解消できる弾力的な運営ルールのあり方
・リスク共有に際しての関係者の役割と責任のあり方等
・制度設計のあり方に応じた効果的な投資教育のあり方
■各制度間のポータビリティの拡充や、資産移換時のコスト軽
減
■企業年金等における個人単位で加入する仕組みの位置付
【論点】
けや個人型DCの適用範囲のあり方
・資産運用委員会の設置の促進・専門家の理事への登用
・加入者がリスク分担に見合う形での意思決定への関与
・外部の専門家による会計監査・資産運用ルールの見直し
図5 ライフコースの多様化への対応に関する議論のフロー
【課題】
【議論】
・ポータビリティの拡充、資産移換時のコスト軽減
・企業年金等への個人単位での加入、個人型DCの適用範囲
「ガバナンスのルールも基金型・規約型のイコールフッティングを
考えるべき」「単独事業主・複数事業主によって規制が分かれて
も良いのでは」「外部監査を行う場合のコスト面も検討すべき」
「代議員以外の者からの理事への選任は困難では」「情報開示
に関するガバナンスの強化に賛成」などの意見があった
【論点】
・個人型DC:3号被保険者、企業年金・共済加入者の加入
・個人型DC:共通した考え方で年単位の拠出限度額の設定
・マッチング拠出の規制緩和
・現在ポータビリティ制度がない部分のポータビリティの容認
【結論】
【議論】
■DB資産運用関連:資産運用委員会の設置を促進:専門家を
含めることや議事概要の代議員会への報告等について明確化
■基金型DB:代議員でない運用等の専門家から理事を選任す
ることについて引き続き検討
■柔軟で弾力的な給付設計を行う場合:リスクの負担度合いが
変化する加入者の関与のあり方について検討
■基金型DB:公認会計士等の外部の専門家による監査を活用
することも考えられる
■DB:厚生年金基金の資産運用ルールを参考に資産運用
ルールについて一定の見直し
■DB:加入者への情報開示を拡充
「第3号被保険者の加入については女性の社会進出に逆行す
る」「個人型DCにすべての人が加入できることは分かりやすい
制度になるとともにライフステージの変化にも対応できて良い」
などの意見があった
【結論】
「個人型DCの加入対象の拡大」:検討課題
「ポータビリティ(制度間の資産移換)の拡充」:実施すべき課題
(b)論点(施策案)
(a)課題と背景
(a)に挙げられた課題を解決する方策として次のような
企業年金制度の目的は、公的年金と相まって加入者等の高
論点(施策案)が提案されました(原文より要約)
。
齢期の所得保障を充実することにありますが、運営に係る期
■個人型DC:①第3号被保険者の個人型DCへの加入、②
企業年金・公務員等共済加入者の個人型DCへの加入、③
間が長期におよぶことから将来の給付を確実に実行するため
すべての加入者に共通した考え方で設定した、また、年単
には制度を健全に運営するための体制の整備が不可欠です。
企業年金部会は上記のような背景(部会資料より要約)を
位の拠出限度額を検討。
想定した上で次のような課題を整理しました。
■マッチング拠出:規制緩和を含めてあり方を検討
■企業年金の運営全般について、労使が明確な運営方針を
■ポータビリティ:現在ポータビリティ制度がない部分につい
示し継続的に関与・監視する仕組みのあり方
て原則としてポータビリティを認めることを検討
■一定の積立目標に対する積立不足を速やかに解消できる
(c)審議の経過
など制度のリスク等に応じた弾力的な運営ルールのあり方
厚生労働省から提示された施策案に対して、
委員からは
「第
3号被保険者の加入については女性の社会進出に逆行する」
■制度設計の選択肢の多様化を図る場合における労使の関
という意見がありました。他方、
「個人型DCにすべての人が
与・監視のあり方及び関係者の役割と責任のあり方(受託者
4
責任等)
債券といった運用商品を選択した上で運用し、その運用結果
■制度設計のあり方に応じた効果的な投資教育のあり方
に基づく年金を老後に受け取る制度ですが、老後までの運用
(b)論点(施策案)
の成否が将来給付を左右することとなるため、個々人の運用
(a)に挙げられた課題を解決する方策として次のような
商品の選択が重要です。ところがDC創設から10年を経過
論点(施策案)が提案されました(原文より要約)
。
し、運用商品の選択に関する加入者の意識や運用商品の選択
■基金型DBの運営体制(意思決定・執行体制の仕組)・規約
状況・運用結果等に関する課題が顕在化しています。
型DBの権限・責任分担体制ともに基本的な仕組みとしては
また、DB、DC等の現行制度の現場の運営の中で出てき
一定の整備が行われている
た手続き等の制度改善事項や規約改革実施計画(平成26年
■DB:資産運用委員会の設置を促進(専門家を含める、議事
6月24日閣議決定)で指摘されている事項等についても企
概要の代議員会への報告、加入者への周知等)
業年金制度の利便性向上・普及・拡大を図る上での課題です。
■基金型DB:代議員でない専門家から理事を選任
企業年金部会は上記のような背景(部会資料より要約)を
■柔軟で弾力的な給付設計:加入者がリスク負担に見合う形
想定した上で次のような課題を整理しました。
で業務決定に関与
■DCの運用資産選択について、個々人のニーズ等を踏まえ
■基金型DB:外部の専門家による会計監査を促進
た適切な運用資産選択に資する措置
■DB:厚生年金基金の資産運用ルールの見直しを参考に資
■DB・DCの申請諸手続等の簡素化
産運用ルールについて一定の見直し
■中退共等の他制度との関連について、制度間の連携強化
(c)審議の経過
やポータビリティの向上等を通じた企業年金等を継続しや
厚生労働省から提示された施策案に対して、
委員からは
「ガ
すい措置
バナンスのルールも基金型・規約型のイコールフッティング
■マッチング拠出の取扱
を考えるべき」
「単独事業主・複数事業主によって規制が分か
図7 現行制度の改善に関する議論のフロー
れても良いのでは」
「外部監査を行う場合のコスト面も検討す
【課題】
べき」
「代議員以外の者からの理事への選任は困難では」
「情
・適切な運用資産選択に資する措置
・DB・DCの申請諸手続等の簡素化
・制度間の連携強化やポータビリティの向上
・マッチング拠出の取扱
報開示に関するガバナンスの強化に賛成」など多岐に渡る意
見が出されました。
(d)「議論の整理」における位置づけ
【論点】
「企業年金のガバナンス」については、概ね意見が一致し
・投資教育の要求水準アップ(継続教育等)
・運用商品提供数の上限の設定
・運用商品除外に関する規制緩和
・リスクリターン特性の異なる商品の提供の明確化
・デフォルト商品の非元本確保型化等
・DCの各種手続きの簡素化、手数料の低廉化等
・DBの掛金未納時の給付のあり方に関する検討
・その他の現行制度の改善事項の促進
たものとして以下の見直しを行うものと位置づけられました
(原文より要約)
。
■DB資産運用関連:資産運用委員会の設置を促進:専門家
を含めることや議事概要の代議員会への報告等について明
確化
■基金型DB:代議員でない運用等の専門家から理事を選任
【議論】
することについて引き続き検討
規制強化についての懸念や規制緩和についての賛意などが表
明された
■柔軟で弾力的な給付設計を行う場合:リスクの負担度合い
が変化する加入者の関与のあり方について検討
【結論】
■基金型DB:公認会計士等の外部の専門家による監査を活
■加入者の投資知識等の向上:①継続投資教育について「努
力義務」とすること、②投資教育全体の内容の見直しおよび継
続教育の基準の明確化、③広く一定水準以上の投資教育が可
能な環境の整備の検討、④DC資産額通知の内容理解のため
の教育の明確化および関心を高めるための措置
■運用商品:①提供数の一定の範囲内への抑制の検討、②よ
り実効性のある運用商品除外規定の整備、③リスク・リターン特
性の異なる商品の提供を促進する趣旨を明確化(元本確保型
商品の提供を非義務化)
■デフォルト商品:①デフォルト商品による運用方法に係る規定
の法律上の整備、②分散投資効果が見込まれる商品をデフォ
ルト商品と設定することを努力義務とすること
■「その他の改善事項等」:速やかに実施すべき
用することも考えられる
■DB:厚生年金基金の資産運用ルールを参考に資産運用ル
ールについて一定の見直し
■DB:加入者への情報開示を拡充
5.その他
(1)現行制度の改善
(a)課題と背景
DCは、事業主等が拠出した掛金を個々の加入者が株式や
5
(b)論点(施策案)
力義務」とすること、②投資教育全体の内容の見直しおよび
(a)に挙げられた課題を解決する方策として次のような
継続教育の基準の明確化、③広く一定水準以上の投資教育
論点(施策案)が提案されました(原文より要約)
。
が可能な環境の整備の検討、④DC資産額通知の内容理解
■投資教育:①現在「配慮義務」とされている継続投資教育に
のための教育の明確化および関心を高めるための措置
ついて「努力義務」とすること、②継続教育の基準を明確化
■運用商品:①提供数の一定の範囲内への抑制の検討、②よ
すること、③投資教育等の中でDC資産に関する通知の内
り実効性のある運用商品除外規定の整備、③リスク・リターン
容理解や関心を高めるための措置を検討
特性の異なる商品の提供を促進する趣旨を明確化(元本確
■運用商品:①提供数の上限を設定すること、②運用商品の
保型商品の提供を非義務化)
除外を労使の合意でできるようにする等の規制緩和、③リス
■デフォルト商品:①デフォルト商品による運用方法に係る規
ク・リターン特性の異なる複数の商品の提供の義務付けを検
定の法律上の整備、②分散投資効果が見込まれる商品をデ
討
フォルト商品と設定することを努力義務とすること
■デフォルト商品:①デフォルト商品による運用方法に関する
規定を法令で明記すること、②元本確保型ではない適切な
(2)公的年金制度や税制との関係
デフォルト商品とすることを促進すること、③元本確保型に
(a)課題と背景
ついては本人がリスクを把握しその上で決定した場合のみ
老後所得保障の柱である公的年金制度が中長期的に給付水
選択できるようにすることを検討
準(所得代替率)を低下させること、働き方の多様化が進む
■DCの各種手続きの簡素化、手数料の低廉化、自動移換者
中で個々人のライフスタイルに合わせた老後の生活設計を支
の資金が現金化された後に手数料によって目減りすること
える仕組みが必要となっていること、諸外国でも老後の所得
への対応、個人型の手数料に関する情報開示、運営管理機
確保の柱に私的年金を位置づける潮流があること等の本議論
関の定期的な見直しを促す措置
の出発点となった社会経済情勢の大きな変化に鑑み企業年金
■DBの掛金未納時の給付のあり方に関する検討(但し、給付
部会は次のような課題を整理しました。
減額は認めるべきではないのではないか)
■公的年金の給付水準を前提とした、老後の所得確保のため
■その他の現行制度の改善事項の促進
の制度としての企業年金の位置付け及びこれに対応した税
(c)審議の経過
制のあり方
厚生労働省から提示された施策案に対して、運用商品数の
■各制度間のポータビリティの拡充や、資産移換時のコスト軽
制限については考え方に賛成する委員の意見もあれば、商品
減(再掲)
本数そのものは労使で決めるものであり、制度として国が上
■企業年金等における個人単位で加入する仕組みの位置付
限を設定すべきでないという意見もありました。運用商品の
けや個人型DCの適用範囲のあり方(再掲)
除外規制の緩和については実現性向上に賛成する意見があり、
(b)論点(施策案)
また、デフォルトファンドについては労使が決めるべき事項
企業年金部会の議論の中では「公的年金制度や税制との関
であり国が制限を加えるものではないという意見がありまし
係」というタイトルでの審議は行われませんでしたが、平成
た。
26年10月31日の会合において厚生労働省から「これま
また、
手続き等に関する部分については、
「自動移換者を増
での議論を踏まえた方向性」として税制に関連する事項につ
やさない対策を考えるべき」
「個人型の手数料の開示につい
いての施策提案が示されました。
ては賛成」
「運営管理機関の定期的見直しについてはコスト
■個人型DCへの小規模事業主掛金納付制度の創設
アップにつながるため反対」
「DBの掛金未納時の給付のあ
■DCの拠出限度額の年単位化
り方については給付減額を行わないことに賛成」といった意
■個人型DCの加入可能範囲及び拠出限度額の見直し
見が出されました。
■企業型DCのマッチング拠出の見直し(個人型DCに整理
(d)「議論の整理」における位置づけ
統合)
「確定拠出年金の運用改善」については、概ね意見が一致
■企業年金等のポータビリティの拡充
したものとして以下の見直しを行うものと位置づけられまし
(c)審議の経過
た(原文より要約)
。また、現行制度の改善などのその他の見
(b)に提示している論点については、委員からは細かい
直しについてもできるものから可能な限り速やかに実施すべ
注文はあったものの大筋で承認され、事務局が若干の修正を
きと位置づけられました。
加えた上で税当局との調整を行っていくこととなりました。
■加入者の投資知識等の向上:①継続投資教育について「努
6
(d)「議論の整理」等における位置づけ
(b)で提示している論点については税制関係の具体的要
望事項として整理されました。さらに、
「議論の整理」におい
ても提示されたままの形で見直す方向性(ただし、企業型D
Cのマッチング拠出については、引続き議論を行うとされま
した。
)となりました。また、
「企業年金制度の課税関係」お
よび「私的年金の自動加入制度等の方策の導入」について今
後の検討課題と位置づけられました。
6.まとめに代えて
これまで企業年金制度に関する議論は社会保障審議会年金
部会の中で行われてきましたが、今般、年金部会とは別の専
門の部会が設置され一年弱にわたって今後の企業年金制度の
見直しに関する総合的な審議が行われました。
これらの議論は、企業年金制度の課題について包括的に取
り扱われてきたものと考えており、今回の議論の整理が、今
後ますます我が国の高齢者の老後の生活を支える上で重要性
を増す企業年金制度の発展に資するものとなることを期待し
ております。
■
(
「三井住友トラストペンションジャーナル No.4(2015 年
3 月)
」より転載。
)
(参考資料)
・厚生労働省HP:社会保障審議会企業年金部会資料
・厚生労働省HP:社会保障審議会企業年金部会議事録
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho.html?tid=163664
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