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ひとりごと『母と合唱』 HP用⑥
ひとりごと『母と合唱』 HP用⑥ 私 は 、「 合 唱 」 が 大 好 き で す 。 し か も 、「 合 唱 」 の 取 組 は 、「 学 級 づ く り 」 や 「 学 年 づ く り 」 の 大 き な チ ャ ン ス で も あ り ま す 。 そ ん な 私 が 、「 合 唱 」 に つ い て よ り 深 く 考 え 、 思い入れがより深くなったのが、ちょうど10年前です。そのとき私は2年生の担任 で し た 。「 春 に 」 と い う 曲 で し た 。 実 は 、 前 回 の 「 ひ と り ご と 」 に 載 せ て い ま し た が 、 母 の ガ ン が 肺 に 転 移 し 手 術 を す る こ と が 決 ま っ た の が 1 0 年 前 の 9 月 で し た 。「 転 移 」 という言葉に、私は恐れていたことが起きたと思い、かなりショックを受けました。 その数日後の道徳の時間に、私は、合唱の練習があるのだけれど、母の手術のために どうしても学校を休まないといけないことを、子ども達に告げました。その中で自分 の母への思いを子ども達に話しました。何人もの子ども達が泣いていました。 休 み を と る 前 日 の 帰 り の 会 で 、「 明 日 、 先 生 は 休 む け れ ど 、 担 任 が い な い と き こ そ 、 しっかりと自分たちで頑張りなさい!」と私は言いました。帰りの会が終わり、最後 の 挨 拶 を し よ う と 思 っ て い た ら 、 一 人 の 女 の 子 が 、「 先 生 、 ち ょ っ と 待 っ て 下 さ い ! 」 と 前 に 歩 み よ っ て き ま し た 。 そ し て ・・・「 先 生 、 こ れ み ん な で 先 生 の お 母 さ ん の 手 術 が 成功するように書きました」と言って、一人一人のメッセージカードがきれいに貼ら れ た 色 画 用 紙 2 枚 を 私 に く れ た の で し た 。私 は 、嬉 し く て 思 わ ず 泣 い て し ま い ま し た 。 次 の 日 、 私 は そ れ を 手 に 病 院 に 行 き ま し た 。 母 は そ の メ ッ セ ー ジ カ ー ド を 見 て 、「 も う読む前から涙が出てきた。手術が終わってから読むから」と目に涙をいっぱいにた め、手術室に入っていきました。手術は無事に成功しました。 学 校 に 行 き 、無 事 に 手 術 が 成 功 し た こ と を 伝 え る と 、子 ど も 達 は 嬉 し そ う に 微 笑 み 、 拍手をしてくれました。ある生徒が「先生、退院はいつになりそうですか?」と聞く の で 、「 う ま く い け ば 2 週 間 後 く ら い だ ろ う と 、 病 院 の 先 生 は お っ し ゃ っ た よ 」 と 答 え ま し た 。 数 日 後 の 生 活 ノ ー ト に は 、「 先 生 、 私 達 の ク ラ ス の 目 標 が 決 ま り ま し た 。 金 賞 を と っ て 、 先 生 の お 母 さ ん に 春 日 市 の 合 唱 祭 (春 日 市 で は 、 各 中 学 校 の 金 賞 受 賞 ク ラ ス が 集 ま っ て 合 唱 を 披 露 す る 場 が あ り ま し た )に き て も ら い 、 私 達 の 歌 を プ レ ゼ ン ト す る こ と で す 」 と 何 人 も の 子 が 書 い て く れ て い ま し た 。 黒 板 に も 、『 先 生 の お 母 さ ん に 合 唱 祭 に 来 て も ら う ! 絶 対 、 金 賞 ! 』 の 文 字 が ・・・。 正直、私のクラスは、上手な方ではなかったのですが、それからの子ども達の練習 の姿は真剣そのものでした。私もできることはしてあげたいと、国語の先生から教科 書に載っている「春に」について教えてもらい、さらにネットなどでも調べ、私なり に 詩 の 意 味 を 解 釈 し て み ま し た 。「 詩 の 意 味 に つ い て 考 え よ う 」 と い う こ と で 、 合 唱 練 習の時間を使って、みんなで詩の勉強会もしました。合唱は日毎によくなりました。 私は、子ども達の言葉や行動に励まされ、子ども達の素晴らしさを感じ、感謝の気 持ちでいっぱいでした。学級通信も毎日発行して、合唱の様子、私の思い、子ども達 の思い、親の思いを載せ、みんなで気持ちを共有しました。私は、母へのメッセージ カードへのお返しにと、子どもたちにメッセージカードを渡すことにしました。合唱 コンクール前日の夜、それまでの練習の様子を思い出しながら、一人ずつ、全員に私 の思いを書きました。全部のカードができあがったのは朝でした。コンクールの朝、 それを子どもたち一人一人に渡しました。子ども達はとても嬉しそうでした。それを 大 事 に 胸 ポ ケ ッ ト に し ま い 、私 に「 あ り が と う ご ざ い ま し た 。絶 対 金 賞 、と り ま す ! 」 という子ども達を、心から誇らしく思いました。 そして、私を驚かせたのが、パートリーダーの一人の女の子が、私と同じように徹 夜をして、全員にメッセージを書いてきていたのです。子どもってすごいな~と改め て思いました。 本 番 前 の「 春 に 」を 聴 い た と き 、私 は 胸 が い っ ぱ い に な り ま し た 。も う 十 分「 金 賞 」 以上の歌になっていました。いや、これだけ全員が素敵な表情で心を込めて歌ってい るのだから、もう賞は関係ないと思いました。そして、本番はさらに心のこもった素 敵な「春に」を歌ってくれました。歌い終えてステージから降りてくる子ども達の多 くが泣いていました。歌いきった満足感、この仲間と歌えたことの幸せを感じての涙 で し た 。 結 果 は 「 金 賞 」。 歓 喜 と 涙 の 閉 会 式 で し た 。 そ の 日 の 帰 り の 会 、 私 が 教 室 に 行 く と 子 ど も 達 が 私 の 周 り を 取 り 囲 み 、「 先 生 を 胴 上 げ し よ う ! 」 と 言 っ て 私 は 生 ま れ て 初めての胴上げまでしてもらいました。 (次 ペ ー ジ へ 続 く ) その後の合唱祭。私の両親は、この素敵な「春に」を聴くことができました。子ど も 達 は 、『 今 日 は 先 生 の お 母 さ ん の た め に 、 み ん な で コ ン ク ー ル の と き 以 上 に 、 素 晴 ら しい「春に」を歌います』と言って、ステージにあがってくれました。本当に一体感 のある素敵な合唱でした。席に戻ってきた子ども達が私の母に「私達の歌、どうでし たか?」と聞く表情は、満足感でいっぱいでした。母は、終わってから「素敵な子ど も達やね~。あんた、こんな子ども達に出逢えて幸せやね。感謝しないとね」と、私 に笑顔で言いました。私もまさにその通りだと思いました。改めて出逢いの大切さと 子ども達の素晴らしさを感じることができました。 母 が 亡 く な っ た 年 の 学 級 は 、「 時 の 旅 人 」 と い う 曲 に 取 り 組 ん で い ま し た 。 私 は 、 母 が亡くなってから1週間仕事を休みました。合唱コンクール前の大事な時期に休んで しまい子ども達に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。私は、合唱コンクールの前々 日にやっと学校に行きました。そして、生活ノートや班ノートなどに書かれた子ども 達の優しさ溢れるメッセージに心震えました。 ◇先生へ・・・先生が悲しくなるような、後悔するような合唱は絶対につくりません!!指揮者として、 クラスの一員として精一杯素晴らしいものをつくりあげてきます。お願いですから、先生自身を責める こ と な ど し な い で 下 さ い 。そ の た め に も 頑 張 り ま す の で 、そ れ だ け は や め て 下 さ い 。合 唱 の こ と を 通 し 、 たくさん先生から学びました。それだけで十分だと思います。先生から学んだことを生かし、素晴らし い 合 唱 を つ く り あ げ ま す 。 絶 対 に ・・! ! 心 を 一 つ に 。 そ の あ と 、私 は 母 親 の こ と 、命 の こ と 、そ し て 様 々 な 思 い を 子 ど も 達 に 話 し ま し た 。 子 ど も 達 は と て も 真 剣 に 私 の 話 を 聞 い て く れ ま し た 。 そ し て 、「 ど れ だ け 練 習 し て 歌 え るようになったか、聴かせてくれないか?」と言うと、大きくうなづき歌ってくれま した。その眼差しの真剣さと私に伝えようとする姿勢が私の心に突き刺さりました。 私は涙が止まりませんでした。賞はとれませんでしたが、本番も心震える合唱となり ました。保護者の方々も大変喜んで下さいました。 ◆素晴らしい合唱でした。心が震える合唱でした。今、そこに至るまでの子ども達の気持ちの動き、決意 を改めて知り、今日の合唱は「つくりあげられるべくして、つくりあげられた」のだと感じました。娘 がこのクラスの一員で本当によかったと思いました。同じクラスの子ども達にそして先生に心から感謝 しています。あと半年、よろしくお願いします。 ◆先生,お寂しくなりましたね。素晴らしいお母さんだったんだなと感じました。子どもには「先生がい ないときこそ、頑張って練習せんといかんよ!そして、先生が来られたときにこんなに上手になってる とびっくりされるように・・」そしたら、子どもが帰ってきて「今日,先生が僕たちの合唱聴いて泣い てたよ!」って言ってました。今日の合唱も、きっとみんな先生のことを思いながら歌っていたと思い ます。素晴らしかったです!! 次の年は、3年生で「花をさがす少女」という曲に取り組みました。戦争をテーマ にした曲です。詩の意味をしっかりと理解し、感情を込めないと歌えない曲です。曲 の中に「ブーゲンビリア」という花が出てきます。副任の先生が教室にこの花を飾っ てくれました。なかなな本気になれない子ども達もいました。何度も話し合いをしま した。私は、ベトナム戦争や沖縄戦について子ども達と一緒に勉強しました。詩の意 味 や 情 景 を 深 く 深 く 考 え ま し た 。 そ し て 、「 命 の 大 切 さ 」 に つ い て の 話 を し ま し た 。 そ のときに母の話もさせてもらいました。インフルエンザによる学級閉鎖になり、本番 前に練習できない時期もありましたが、子ども達は、心をこめて歌ってくれました。 聴いて下さったたくさんの方が感動して涙して下さいました。そして、歌い終えてス テ ー ジ を 降 り る と き に は 、 涙 し て い る 子 ど も 達 の 姿 が あ り ま し た 。 結 果 発 表 ・・・賞 を と ることはできませんでした。でも、子ども達は満足していました。このかけがえのな い仲間と歌えた幸せを身をもって感じたのです。平和の尊さや命の大切さ、人とのつ ながりや仲間の大切さをこの曲を通して学んだからです。本番前に子ども達は「天国 にいる先生のお母さんに届くように歌います」と言ってくれました。 毎年毎年の合唱の取組の中で、子ども達の優しさや素晴らしさをたくさん感じるこ とができました。そして、保護者の方の優しさと温かさ、我が子への想いをたくさん 知ることができました。 私の中で「母と合唱」は切り離せないものになっています。この時期になると、母 の笑顔と子ども達の一生懸命に歌う姿がリンクして、なんとも言えない気持ちになり ま す 。「 歌 は 心 」 ・・・大 利 中 の 子 ど も 達 は 、 そ の 「 出 逢 い 」 に 感 謝 を し 、「 命 」 に 感 謝 を し、多くの人やものに感謝をしながら素晴らしい合唱にしてくれると思います。 10月20日、40周年記念文化祭。世界にひとつだけしかない、それぞれのクラ ス の 素 晴 ら し い 歌 声 が ホ ー ル い っ ぱ い に 響 い て く れ る こ と で し ょ う ・・・