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和牛シバ草地化技術実証試験

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和牛シバ草地化技術実証試験
和牛シバ草地化技術実証試験
1. 目的
耕作放棄地対策の一手法として、黒毛和種を用いた放牧が注目され、全国的に実施されてい
る。その結果として、景観保持や獣害防止効果などがあげられている。
本県でも中山間を中心に耕作放棄地が多く、その解決策が検討されている。そこで、黒毛和種
繁殖牛(繁殖牛)を放牧し、荒廃防止や景観保全効果を検討するとともに、牛の蹄耕法によるシ
バ草地化の実証試験を実施した。
2. 試験の方法
県下4地区において放牧実証を行い、草生調査と放牧牛の健康状態を調査した。
実証1)放棄みかん園での放牧
越智郡上島町の耕作放棄みかん園約2ha とし、繁殖牛2頭を周年放牧した。放牧開始約1年
後、放牧地の一部にバミューダグラスとカーペットグラスを播種してシバ型草地の造成状況につい
て調査した。
実証2)くり園及び耕作放棄水田での放牧
西予市城川町のくり園約0.5ha と耕作放棄水田
約0.8ha とし、繁殖牛2頭を放牧した。これら2
箇所で約4ヶ月間放牧した。
実証3)耕作放棄果樹
園及び水田での放牧
今治市大西町の耕作放棄果樹園及び水田約 140aにおいて、繁殖牛2頭を放牧した。放牧期
間は約5ヶ月とした。
実証4)耕作放棄
水田での放牧
鬼北町の耕作放棄水田
約90a において、繁殖牛2 頭を放牧した。初年度は放牧による景観改
善効果を調査した。放牧終了後、イタリアン牧草を播種し、次年度は草地化について検討した。
3. 成果の概要
実証1)バミューダグラス、カーペットグラスを播種した後、順調に生育が見られて草地化が進んで
いた。しかし、17 年度は放牧圧が低下して適正な放牧管理が行えなかったため、セイタカアワダ
チソウの繁茂が目立つ結果となった(図1、2、3)。周年放牧を行っていたため場内で2回分娩を
行ったが、介助の必要も無く事故も起らなかった。
図1.放牧開始直後
図2.刈り払い後播種
図3.シバ型草地
実証2)放棄水田における前植生は、主にススキとセイタカアワダチソウ等であったが、放牧中及
び放牧後に牛が食べ残した茎や株を刈り払うことで、省力的な景観改善が認められた(図4、5)。
実証3)放牧により出来た牛道を利用することで、今まで人が立ち入れなかった放棄地内に入っ
図4.放牧直後
図5.放牧1ヶ月後
て刈り払い作業することができ、景観改善の省力化が図られた。また、今までは手をつけなかった
園主が、放牧終了後にキウイのワイヤーを除去するなどの意識変化も見られた。
実証4)放牧による景観改善効果は認められたが、一度放牧を終了して牧草播種までの間に再
び景観が悪化した。牧草播種を行う際に、下草刈りを実施した区の方が順調に生育した。
全ての実証区において、景観改善効果は認められた。また、放牧牛の健康状態に異常は認め
られず、疾病も認められなかった。その他、繁殖牛の飼養に係る費用(飼料費や敷料、排せつ物
処理にかかる費用、管理に係る労力など)の節減は可能であると考えられた。
4. 普及上の留意事項
・
耕作放棄地の状態により雑草量が異なることから、各地区において放牧期間が異なる。その
ため牛の個体管理が必要となる。
・
牛による景観改善は、地面から2m程度が限界であることから、雑木等は残存する。そのため、
放牧だけで全ての景観が改善されない、万能ではないことの認識が必要となる。
・
水田等に放牧した場合に石垣や畦の崩壊が危惧される。そのため、放牧を行う際には電気
牧柵の張り方を工夫する必要がある。
5. その他
耕作放棄地対
策のための「放牧マニュアル」を策定した(畜産試験場HP に掲載)。
(畜産試験場 主任研究員 檜垣邦昭)
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