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e デモクラシーの動向と展望 〜再び注目が集まるe
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研究ノート Research Note
研究ノート
e デモクラシーの動向と展望
〜再び注目が集まる e デモクラシー〜
米山 知宏
要 約
インターネットが一般的になってきた 1990 年代後半、政治や行政に対する不信
感も重なり、ICT を活用して住民が行政や政治に参画する e デモクラシー(電子
民主主義)の必要性が叫ばれるようになった。1990 年代後半から 2000 年代初頭に
かけて、多くの地方自治体では続々と電子会議室が開設され、一方で政治の分野で
は、選挙運動においてインターネットを活用することの是非が検討されるなど、e
デモクラシーに注目が集まっていた時期といえる。
それから約 10 年経った今、e デモクラシーという言葉はほとんど耳にすること
がなくなったが、行政における地域 SNS の活用や、政治における Twitter の活用
など、新しい動きが出てきたのも事実である。このような動きは、e デモクラシー
の実現に近づくものなのであろうか。
本稿では、民主主義に関する理論的研究を踏まえた上で、現在の e デモクラシー
の動向を整理し、あわせて e デモクラシーの今後のあり方について考察する。
目 次
1.背景と目的
1.1 ソーシャルメディアへの期待
1.2 本稿の目的
2.e デモクラシーの定義
3.民主主義の変遷
3.1 民主主義の形態の変遷
3.2 複数の民主主義形態、政治空間が混在する新しい民主主義
3.3 メディアの変遷と政治的コミュニケーションのコスト
4.e デモクラシーの新たな動き
4.1 民主主義の機能分類
4.2 e デモクラシー化に向けた動き
5.今後の e デモクラシーについての考察
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Research Note
Trend and Prospects of E-Democracy
– E-Democracy Gaining Attention Again –
Tomohiro Yoneyama
Summary
In the latter half of the 1990s when the Internet began to spread, there was
distrust of politics and administration and an urgent need for e-democracy
(electronic democracy) where citizens’participation in administration and
politics using ICT began to arise. In the period from the latter half of the 1990s
toward the early 2000s, many local governments opened electronic forums
in succession and the rights and wrongs of use of the Internet in election
campaigns were argued in the field of politics. At that time, e-democracy gained
attention.
About 10 years later, now we hardly ever hear the word“e-democracy”
any more, but it is a fact that new trends such as the use of local SNS in
administration and use of Twitter in politics have been increasing. Are such
trends leading to the realization of e-democracy?
In this report, based on theoretical research about democracy, the current
trend of e-democracy is organized and considerations about what should
constitute future e-democracy are presented.
Contents
1.Background and Purpose
1.1 Expectation on Social Media
1.2 Purpose of This Report
2.Definition of E-Democracy
3.History of Democracy
3.1 Change of Forms of Democracy
3.2 New Democracy where Multiple Democracy Forms and Political Spaces
Co-Exist
3.3 Change of Media and Political Communication Cost
4. New trend of E-Democracy 4.1 Function Classification of Democracy
4.2 Movement toward Promotion of E-Democracy
5.Consideration of Future E-Democracy
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研究ノート Research Note
1. 背景と目的
1.1 ソーシャルメディアへの期待
2009 年 8 月末に行われた衆議院選挙は、政権交代が実現するかどうかが最大の争点とな
り、選挙前から多くの人々の注目を集めた。そのことは、投票率が 1993 年の衆議院選挙以
降最も高い約 69%だったことにも表れている。
また、今回の選挙は、2008 年のアメリカ大統領選でオバマ陣営が各種のソーシャルメディ
ア(SNS、Facebook、Twitter など)を活用して話題となったこともあり、国民のソーシャ
ルメディア(特に「Twitter」)を通じた政治への参画にも関心が集まった。
「Twitter」とは、ミニブログと呼ばれるシンプルなコミュニケーションツールである。
津田 1)によれば、
「インターネットを通じて 140 文字の『つぶやき』を不特定多数にリア
ルタイムに発信し、自分で選択した他人の『つぶやき』を受信するサービス」
(1)
,p.12)
で、日本では 2009 年から利用者が急増したコミュニケーションツールである。選挙の何か
月も前から、Twitter を活用することで政治のあり方も変えられるのではないか、と大きな
期待が集まっていた。特に、民主党の逢坂議員が 2009 年 6 月に議員勉強会や党首討論の様
子をご自身の感想を交えながら Twitter 上で情報発信したことが、大きなターニングポイン
トになったといえる。逢坂議員は、ネットと政治のあり方について以下のように語っている。
ネット上のコミュニケーションツールを万能とは思ってはいないが、生まれた時から携
帯やパソコンがある世代が育って来ている中で、政治をもっと身近に感じてもらうために
活用すべき有効な道具と捉えています。Twitter での呟きも、政治への関心の度合いが少
しでも高まってくれればという想いがある。また、いつどのようにして会議開催の日程や
内容が決まるのかなど、“国会の作法”のような表に現れにくい部分について、ネットで
どんどん答えていくことで、実際の国会を知ってもらえれば、より政治が身近に感じられ
。
自分のことになっていくのではないかと思う (2))
パンフレットなどの紙の広報物について、ネットにはない良さもあるので否定はしてい
ない。しかし、ネットと併用することによって、さらに相乗効果が高まるのではないか。
有権者にとってはチャンネルが広がることが大事で、また意見が述べやすくなるために、
政治に参加しやすくなるといったメリットもあるだろう。ネット上での炎上を心配する声
が大きいが、それはパソ通時代からも起こっていたこと。今の時代、こそこそ隠れてやる
よりも、バシッとやって「炎上したら仕方がない」という覚悟でやるしかない。マニフェ
ストも配る場所を決められているので、選挙期間中こそネット閲覧を可能にして、政策に
ついての論議がされるべきではないか。イラン大統領選挙でのネットや Twitter での動
きを見ていても感じることだが、社会運動をやる上で欠くべからざるツールとなっている
。
ネットの活用を止めるというのは、もはや非現実的だと思っている (2))
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1.2 本稿の目的
インターネットのコミュニケーションツールを使って政治をよいものにしていくという動
きは、今回の Twitter に始まったことではない。今から約 10 年近くも前になるが、2000 年
前後に注目が集まっていた「e デモクラシー」は、まさに今回の Twitter と同じ期待を抱い
ていたものといえる。
「ICT(インターネットなどの情報通信技術)を使うことで政治・行
政と住民とのあり方を変えられるのではないか」「もっと質の高い民主主義が実現できるの
ではないか」と、大きな期待が集まっていた。しかし、それから 10 年が経ち、「e デモクラ
シー」という言葉はほとんど聞かなくなった。「e デモクラシー」というキーワードで本や
雑誌を検索してみても、2004 年辺りを境にほとんど出版されていない。これはどういうこ
となのだろうか。10 年前に期待していた「e デモクラシー」が実現されたということなのだ
ろうか。それとも、実現できていないままなのであろうか。
本稿では、上記の背景を踏まえ、ブームから約 10 年を経た現在の e デモクラシーの状況
を整理した上で、今後の方向性について提言を行う。
2.e デモクラシーの定義
「e デモクラシー」とは何なのか。e デモクラシーは、「e」と「デモクラシー」が組み
合わされた造語である。「e」は「electronic」の略であり「電子的な」という意味である。
「デモクラシー」は、第一義的には「民主主義」を意味している。単純に考えれば、e デ
モクラシーは「電子的な民主主義」ということになる。では、「電子的な民主主義」とは
何なのか。この言葉を漠然とした概念として捉えることは可能だが、同様の概念(サイ
バーポリティクス、e ガバメント、e ポリティクスなど)が数多く提起される中で、同様
の概念との関係性を含め、「e デモクラシー(電子的な民主主義)」という概念は必ずしも
明確な定義付けが行われてこなかった[1]。そのような状況の中で、岩崎[2]は、政治
システムにおけるインプットが e デモクラシーに、アウトプットが e ガバメントに対応す
るとして、政治システムのモデルを整理している。
図 1.政治システムの単純モデル
環境
インプット
国民や住民からの
要求・支持
意思決定
(インプットをもとに
アウトプットを生成)
環境
政策や法律の
決定、行為
アウトプット
環境
環境
作成:参考文献[2]をもとに三菱総合研究所
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研究ノート Research Note
本稿では、岩崎の定義を踏襲した上で、e デモクラシーとは、「ICT を活用して、立法・
行政・司法における『インプット機能(意思決定機能及び意思決定に必要な情報共有機能)』
をより民主的なものとすること」と定義する。ICT を活用することで、立法・行政・司法
の活動や情報がよりオープンになり、その情報をもとに国民が意見を言う場があり、さらに
は意思決定に積極的に関与できる機会が与えられていることが、e デモクラシーの理想的な
姿である。
定義の中で司法を対象に含めているのは、立法・行政・司法が国家の権力として規定され
ていることによる。もちろん、立法・行政・司法という 3 権力の中にも、民主主義の対象と
して馴染むものと馴染まないものとがあるのは当然だが、本稿の定義では、この 3 権を対象
としたい。
ところで、e デモクラシーのあるべき姿を考えるためには、民主主義に関する議論をしな
いわけにはいかない。e デモクラシーは、あくまでもデモクラシー(民主主義)の 1 つの実
現形態に過ぎない。民主主義が求められるのは、現在の ICT 時代が初めてではなく、過去
の歴史の中で何度もあった。本稿では、e デモクラシーを考えるにあたって、これまでの民
主主義の理論等も踏まえながら検討する。
3.民主主義の変遷
3.1 民主主義の形態の変遷
まず、これまでの民主主義の変遷について整理したい。民主主義については、長い間議論
されてきた実に多様な概念であり、画一的な整理は難しいが、本稿では、以下の岩崎[3]
の整理をもとに議論を進めたい。
表 1.民主主義の形態の変遷
時期
政体の種類
古代
現代
現在
民主主義の形態
政治空間
ポリス(都市国家)
直接民主主義
リアルスペース
メトロポリス
メガロポリス
議会制民主主義
リアルスペース
サイバーポリス
議会制民主主義
+
直接民主主義
リアルスペース
+
サイバースペース
出所:参考文献[3]
岩崎によれば、ポリスは古代の都市国家であり、メトロポリス・メガロポリスは現代の都
市国家とそれぞれ定義され、ポリスでは、「人々のフェース・トゥ・フェイスによるコミュ
ニケーションを前提とした直接民主主義」(3),p.19)が採用されていた一方で、メトロポ
リス・メガロポリスでは、
「選挙を通じて選ばれたエリートたちが国民を代表し政治的決定
を行う議会制民主主義」(3),p.19)が採用されてきた。
ここで、「直接民主主義」と「(上記の議会制民主主義を含む)間接民主主義」の定義につ
いて確認したい。本稿では「直接民主主義」を「コミュニティメンバー自身による意思決
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定」とし、「住民投票や国民投票など、政策決定を投票によって行う意思決定」だけでなく
「討議を通じた(投票によらない)意思決定」もその対象とする。一方「間接民主主義」は
「コミュニティメンバーの代表者による意思決定」とし、代表者(議員、首長など)による
政策選択の意思決定に加え、コミュニティメンバーが代表者を決定する意思決定も含めたも
のと定義する。
現在の日本では、議会制をベースとした間接民主主義が取り入れられている。国民が議員
を選出し、選出された議員が議会の中で政策を決定する。しかし、この間接民主主義が、民
主主義を実現していく上で完璧なものではないことは明白である。まず、国民がある政党・
候補者を選択する際に、その政党・候補者の主張する政策すべてに同意できるケースはきわ
めて希である。多くの場合、この政策については賛成だが別の政策については反対という中
で、妥協的な意思決定をしているというのが実情である。また、国会議員の任期も問題にな
る。衆議院は 4 年、参議院は 6 年の任期だが、この間も社会情勢は刻々と変化している。国
民の代表者である政党や議員が、当初約束していた政策とは別の政策を実現してしまうケー
スもあるし、国民側のニーズが変化しているのに、政府側が選挙時のマニフェストに固執す
ることで民意とのずれが生じるケースもあり、「適切な民意の反映」という点で問題がある。
今井 4)は、このような問題を解決するものとして、「直接民主主義」の意義を以下のよ
うに主張する。
本来、民主主義は、市民が自分たちに関わることを自分たちで決めるという自己統治を
意味する。だから、市民が自ら考え、議論をした上で、事がらの決定をする直接民主制こ
そが、民主主義の基本なのである (4),p.184)。
これまで、直接民主主義に関する議論には、賛否両論さまざまな意見があった。今井に代
表されるような直接民主主義を肯定する意見もあれば、一方でその制度的な問題を指摘する
ものもある。イアン・バッジ[4]も、直接民主主義に対する擁護論/反対論を「参加」「実
現可能性」「多数派の専制」「一般市民の能力」「一般市民と専門家とのバランス」「少数派へ
の対応」などの観点で整理しているが、どの観点においても明確に優劣をつけられてはいな
い。結局、制度とその制度が引き起こす結果との因果関係を立証することは非常に難しく、
理念的な正しさをもって戦わせることしかできないのである。
3.2 複数の民主主義形態、政治空間が混在する新しい民主主義
岩崎は、古代のポリスにおける「直接民主主義」、現代のメトロポリス/メガロポリスに
おける「間接民主主義」に続く新しい政治形態を「サイバーポリス」と名付け、リアルス
ペースとサイバースペースという 2 つの空間が存在する中で(それらはそれぞれ独立し、自
己完結的に存在しているのではない)、間接民主主義と直接民主主義とが両立した政治形態
と位置付けている。それは、直接民主主義と間接民主主義のどちらがすぐれているかという
議論を超えた、新しい政治形態の実現につながる可能性があるものである。
イアン・バッジ[4]は、以下のように、直接民主主義と間接民主主義とが両立できると
した上で、直接民主主義が実現した場合、議会が新しい役割を担うようになる可能性がある
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ことを指摘する。
直接民主政* 1 の本質的な特徴は、現存する代表民主政も含めて、多くの種類の制度配
置と両立する (5),p.47)
最も重要な決定を直接投票によって行うということが、議会が廃止されなければならな
いということを必ずしも意味しないことである。議会はさまざまな役割をなお保持するで
あろう。議会は、市民による投票に付される政策選択肢の文言を議論し、それを起草する
機関として存在することもあるであろう (5),p.46)。
つまり、直接民主主義の実現は、議会による間接民主主義を否定するものではなく、両者
が両立することでより質の高い民主主義が実現できる可能性を示している。
長い間、シュンペーターに代表される「競合」をベースとした民主主義理論と、ルソーに
代表される「参加」をベースとした民主主義理論は議論を戦わせてきた。「競合」を重視す
る民主主義論者は、選挙の機能を重視し、国民が参加できる手段は代理人たる議員を選択す
る投票のみとなる。一方で、「参加」を重視する民主主義論者は、「競合」を重視する民主主
義がエリート主義的であり、国民の政治参加の機会が限定されている点を批判してきた。し
かし、間接民主主義と直接民主主義が両立する新しい民主主義は、リアルスペースとサイ
バースペースとが混在する空間において、「競合」か「参加」かという二者択一の議論を超
越することが期待される。まさに、政治参加の多様化につながるものである。実際、既存の
民主主義の形も、必ずしも競合民主主義と参加民主主義のどちらかに二分されるものではな
く、各社会の特性に応じて、適宜、両者を融合させながら、自らの民主主義を作っている。
日本においても、議会による間接民主主義をベースとしながらも、憲法改正時における国民
投票や地方自治体における住民投票にあるように、直接民主主義の機能も盛り込んだ制度設
計となっている。もちろん、住民投票に関しては、制度としては構築されているものの、住
民投票を実現するハードルの高さなどを理由として、住民の民意を反映できる仕組みになっ
ていないという指摘もある。そのため、十分な「参加」が保証されているかといえば疑問は
残るが、国民投票・住民投票が制度としてあるという点においては、直接民主主義の要素も
ゼロではない。まさに、政治参加の手段と場所の多様化を進めるものとして、複数の政治制
度(間接民主主義と直接民主主義)、複数の政治空間(リアルスペースとサイバースペース)
が融合する新しい民主主義は期待されているのである。
3.3 メディアの変遷と政治的コミュニケーションのコスト
このように、時代によって形を変えてきた民主主義だが、民主主義制度を含む社会制度を
コミュニケーションの視点から考えれば、社会的制度はいかに社会にもたらされる便益を低
* 1
引用文献 5)の中では『民主政』と記載されているため、引用部分はそのままの記載とするが、本稿の
中では『民主主義』と記載している。
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下させることなく、またはその低下を最小限に食い止めながらも、社会において増大するコ
ミュニケーションコストを軽減するかという目的で設計されたものといえる。言語ルール、
法制度、組織、慣習など各種の社会制度が社会の中で共有されることで、ある存在がある存
在に対して意思を伝えたり、行動をしたりする際のコミュニケーションコストが軽減され
る。直接民主主義と対比される形で批判されることの多い間接民主主義も、まさに、政治の
質を維持しつつ、政治的コミュニケーションのコストを軽減させることを目的とした制度で
ある。もちろん、そのような純粋な目的だけではなく、権力者側が自分達の権力を維持した
いがために間接民主主義を構築しているという可能性も否定はできないが、コミュニケー
ションコストの軽減につながることは事実である。
現代の社会全体において、政治的コミュニケーションのコストが増大した要因としては、
メディアの発達によるところが大きい。人間が発明してきたメディアには、「情報を運ぶメ
ディア」と「ヒト・モノを運ぶメディア」の大きく 2 つがある。新聞、ラジオ、テレビ、イ
ンターネットという「情報を運ぶメディア」の発達により、人が認知する社会の範囲はます
ます広大になるとともに、情報が伝達されるスピードは早くなる一方である。また、道をは
じめ、車、電車、飛行機という「ヒト・モノを運ぶメディア」の発達は、広範囲での人と人
との交流、モノの行き来を容易にした。この結果、人が認知する社会は広大になり、人と人
とのコミュニケーションパスを増大させる。
宮本[5]が書いているように、以前の村では、村の取り決めを行う場合に、参加者が納
得いくまで数日間続けて話し合いが行われるというが、少ない関係者によって固定化された
コミュニティだったからこそ、一同が 2 〜 3 日間ずっと時間を共有し、コミュニティ内の課
題について議論することが可能であった。そこが彼等にとってのコミュニティ全体だったの
である。直接的な討議をベースにした民主主義は、まさにそのような条件においてのみ実現
し得るものであった。しかし、ヒトが認知するコミュニティが広域になるとともに、多様な
組織・コミュニティが複合的に重なり合う現代においては、もはや、そのような姿を望むの
は現実的ではない。直接的な討議をベースにした民主主義が政治的理念として正しいもので
あるとしても、社会全体としての政治的コミュニケーションのコストを軽減できない限り、
実際の政治制度としては定着し得ない。
「情報を運ぶメディア」と「ヒト・モノを運ぶメディア」は今後も発達し続け、ヒトが認
知するコミュニティは広まり続けるだろう。複数の課題はますます複雑に絡まり合い、社会
全体におけるコミュニケーションパスは増大し続ける。ICT の発達により、コミュニケー
ションコストが劇的に低下するだけでなく、個人々々が容易に情報発信を行えるようになっ
た。e デモクラシーに対する期待は、このような ICT の利点を生かすことで、政治の「質」
と「効率性」という、これまでトレードオフの関係にあると考えられてきた両者を両立でき
る可能性があるということに他ならない。
4.e デモクラシーの新たな動き
本章では、これまで整理した理論的研究をベースにして、「e デモクラシー」に注目が集
まっていた 10 年前から現在までの具体的な動向を整理する。
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4.1 民主主義の機能分類
これまでの e デモクラシーの動きを振り返るにあたって、民主主義の機能を具体化する。
富山[6]は、Astrom が提唱する民主主義の 3 要素(Quick democracy,Strong democracy,
Thin democracy)を表 2 のように整理している。
表 2.民主主義の 3 要素
モデル
Quick democracy
Strong democracy
Thin democracy
目的
人々への権力付与
コンセンサス
効率性/選択
合法性の基盤
多数決原理
公的ディベート
説明責任
市民の役割
意思決定者
意志形成者
消費者
代表者の権限
拘束的
相互作用
オープン
焦点となる ICT 使用
決定
討議
情報
作成:参考文献[6]をもとに三菱総合研究所
表 3 は、上記の 3 要素にもとづいて、民主主義における具体的機能を「立法・行政・司
法」の観点で整理したものである。なお、表 3 では、Astrom の「Quick democracy」を
「代理人の選出」と「政策の決定」に分けている。これは、同じ意思決定においても、代理
人選出の意思決定と政策決定の意思決定とでは、大きくその性質が変わってくるためであ
る。前者は間接民主主義における意思決定、後者は直接民主主義における意思決定にそれぞ
れ対応している。
表 3.民主主義の機能分類
1)情報
Thin democracy
2)討議
Strong democracy
3-1)決定(代理人の選出)
Quick democracy
立法
行政
・争点に関するメディア報道
・議員や立候補者からの情報発信
・行政活動に関するメディア報道
・行政側からの情報発信
・情報公開請求
・裁判等に関するメディア報道
・司法側からの情報発信
・政治家と国民との討議、討論
・行政と住民との討議、討論(パ
・国民同士での討議、討論
ブリックコメント、公聴会など) ・裁判員制度
・議員(立候補者)同士での討議、
・住民同士での討議、討論
討論
・国政議員選挙
・地方自治体における地方議員選
挙
・議員立法
3-2)決定(政策の決定) ・予算審議
Quick democracy
司法
・議会による施策決定
・国民投票による憲法改正
・首長選挙
・最高裁判所裁判官国民審査
・行政による施策立案
・住民投票
・裁判における判決
作成:三菱総合研究所
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e デモクラシーの動向と展望 〜再び注目が集まる e デモクラシー〜
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4.2 e デモクラシー化に向けた動き
e デモクラシー化に向けたこれまでの動きを、上記の 3 機能ごとに整理する。
1 )情報−Thin democracy
民主主義を実現するためには、「情報」は必須のものである。間接民主主義にせよ直接民
主主義にせよ、有権者が適切な判断をするためには欠かせない。
行政においては、国民・市民への情報提供を目的として、1990 年代前半からホームペー
ジの開設を進めてきた。市区町村におけるホームページ開設率も、1998 年度には 39.9%で
あったが 2002 年度には 95.6%となり[7]、現在ではすべての市区町村自治体においてホー
ムページが開設されている[8]。
政治の世界も、同様に情報公開が進展してきている。国会議員のホームページ開設率は
2001 年 10 月時点で 78%の開設率であったが[9]、現在では、ほぼすべての国会議員がホー
ムページを開設している状況である。議員だけでなく国会における会議録もインターネット
上で公開されており、また、司法においても、判決例などが公開されており、容易に情報を
得られるようになっている。
一方で、立法機関、行政機関、司法機関からの情報提供以外にも、メディアを通じた情報
発信も民主主義実現のためには重要である。これまでマスメディアは、政府・行政などと国
民との間に位置し、双方の意思の代弁者として機能してきた。政府・行政から得た情報を国
民に伝える一方で、国民の中に醸成される世論を報道するという行為を通して、国民のニー
ズを政府・行政に届けてきた[9]。しかし、ICT の普及が、まさにメディア(仲介者)と
して機能してきたマスメディアのあり方をも変えようとしている。大臣の記者会見や事業仕
分けの様子を一市民がインターネットを介して中継した事例が示すように、ICT を活用す
ることで、これまでマスメディアが担ってきた役割を一般市民が実現できるようになったの
である。上杉 6)は、メディアの機能を「ワイヤーサービス」と「ジャーナリズム」に分け、
「ワイヤーサービスとは、(中略)速報性をその最優先業務とするメディア」(6),p.19)で
あり、一方ジャーナリズムについては「解説や批評を加える活動」(6),p.19)と定義する
が、特にメディアにおけるワイヤーサービス機能については、Twitter や Ustream などの
ICT が普及したことで、一般市民が担える状況になっている。誰もが、低コストで瞬時に
情報を配信できるのである。
間接民主主義の問題点として、特に参加民主主義論者からは、市民の政治参加の機会が投
票行為だけに限定されていることが指摘されるが、Twitter、ブログ、SNS 等による情報発
信が一般的になった今、一般市民が個人メディアとして機能することで投票時以外にも政
治・行政に参画できる機会となる。権力側からの情報発信を一方的に待つだけでなく、国
民・市民自ら権力を監視し、他の国民のために情報を発信していくことが民主主義の実現に
おいては非常に重要なポイントである。
2 )討議−Strong democracy
ICT を活用して討議の場をどのように構築するかというのは、約 10 年間の e デモクラ
シー化の動きにおける最大のテーマであった。「討議」を広義の意味で考えれば、メールに
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研究ノート Research Note
よる意見募集やパブリックコメントも e デモクラシーに向けた動きの 1 つと捉えることも可
能であるが、狭義の意味で考えれば、直接的で双方向のコミュニケーションを行うことを目
的として構築された「電子会議室」「地域 SNS」が、行政と住民との間の討議空間として位
置付けられてきたといえる[10]* 2。
●市民と行政をつなぐ「電子会議室」
電子会議室は、Web における掲示板機能を利用したコミュニケーションツールである。
1997 年に開始した藤沢市市民電子会議室をきっかけとして広まり、2004 年 4 月時点の調査
では全国で約 900 の電子会議室が設置されていたというが[11]、これまで閉鎖した事例も
少なくない。仮に今でも残っているとしても、ほとんどコミュニケーションが行われていな
い電子会議室も多い。電子会議室が活性化しない原因としては、匿名性/実名性の問題、議
題テーマの問題などがあげられるが、金子 7)によればソーシャルキャピタル(社会関係資
本)の有無によるという。藤沢市市民電子会議室は、市役所エリアと市民エリアの 2 種類に
分かれて電子会議室が用意されているが、市民エリアがソーシャルキャピタルを醸成する場
として機能している可能性を以下のように指摘する。
『市民エリア』の存在こそ、藤沢市市民電子会議室を巡るネットワーク・コミュニティ
のソーシャル・キャピタルを豊かなものにしている原動力であると言えるのではないだろ
うか。そして、そのことを通じて、市政への市民参加を促進する関係性の共通資源を作っ
。
ていると言えないだろうか (7),p.176)
藤沢市市民電子会議室の場合、市役所エリアは、市政への提言を目的とした場として位置
付けられており、基本的には市が提示するテーマについて実名で議論するルールになってい
る。一方で市民エリアは、その運営ルールを会議室ごとに定めることができるようになって
おり、会議室のテーマもグルメ、子育て、バリアフリー、歴史文化など、実にさまざまであ
る。ニックネームでの発言も認められており、市役所エリアに比べて、フレンドリーなコ
ミュニケーションが行われている。金子が指摘するように市民エリアがソーシャルキャピタ
ルを醸成しているのか、それとも、ソーシャルキャピタルがあるからこそ市民エリア、市役
所エリアで活発なコミュニケーションが行われているのかということはここでは検証できな
いが、いずれにしても、パットナム 8)が指摘するように信頼、規範、ネットワークといっ
たソーシャルキャピタルが「民主主義がうまくいくための鍵となる重要な要素」(8),p.231)
であることは間違いない。
ところで、前述の市役所エリアでは、市政への提言を目的とした議論が行われているが、
その議論は必ずしも電子会議室内だけに閉じているわけではなく、適宜、フェース・トゥ・
フェースで対面の議論を行う場が設けられている。e デモクラシーといっても、インター
ネット上のやり取りだけに限定する必要はない。対面でのコミュニケーションとネットでの
* 2
電子会議室や地域 SNS が討議空間として位置付けられてきた一方で、中川は匿名性の高いコミュニティ
として批判的な見方がされることが多い 2ch などでも政策形成過程への参加があったことを指摘する。
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e デモクラシーの動向と展望 〜再び注目が集まる e デモクラシー〜
133
コミュニケーションが互いのデメリットを補いながら実現される民主主義こそが、e デモク
ラシーである。この「ネットとリアルの相互補完」は、次の地域 SNS でも頻繁に見受けら
れた動きである。
●住民と地域をつなぐ「地域 SNS」
2005 年から普及した「地域 SNS」は、一定の地域をターゲットとして設置された SNS
(Social Networking Service)のことである。利用者と利用者とのつながり(友達関係)を
ベースにした上で、日記やコミュニティ(掲示板)でのコミュニケーションを行うツールで
ある。プロフィール情報、日記などの情報が公開されていることに加え、他の利用者の友人
関係もが公開されているため、電子会議室と比べてより安心感を持ってコミュニケーション
が行えるようになっている。2004 年 10 月に開始された「ごろっとやっちろ(熊本県八代市
の地域 SNS)
」をきっかけとして、全国で約 400 もの地域 SNS が存在している(2009 年 2
月時点)[12]。
地域 SNS の最大の特徴は、ソーシャルキャピタルが醸成しやすい場の設計になっている
ということである。藤田ら 9)は、以下のように述べる。
地域 SNS には、個と個をつなぎ、深め、広げる機能がある。SNS とは、そのような社
会的機能の実現を容易にし増幅することを意図して設計された、「場」としてのソフト
ウェアという意味である。いわば、ソーシャル・キャピタルを醸成し、地域のガバナンス
(共治)の基盤を強める機能がある。これが、ある触媒のようなきっかけ(問題や課題、
テーマ)が注がれた時に凝集し、コミュニティ(共同体)や組織、団体の構築、形成に繋
。
がることがある (9),p.47)
もちろん、これは地域 SNS の一側面に過ぎず、地域 SNS を構築したからといって、必ず
しも「ソーシャル・キャピタルが醸成され、地域のガバナンスの基盤が強められる」とは限
らない。活発に活用されている地域 SNS も、最初からソーシャルキャピタルが醸成されて
いたからこそ有効に活用されている、という可能性もある。しかしながら、地域 SNS が地
域のコミュニケーションプラットフォームとなり、人と人との交流、地域と地域との交流を
サポートする場として機能してきたことは紛れもない事実である[13]。
それでは、ソーシャルキャピタルを醸成し得るといわれるこの地域 SNS は、e デモクラ
シーにおける討議空間としてはどのように機能してきたのだろうか。行政が運営する地域
SNS をみると、地域 SNS を「市政への提言の場」や「地域住民と行政との討議の場」とし
て活用しているケースはあるものの、それを主目的にしているところはみられない。地域
SNS は、基本的には利用者が自由に使える場である。市政に関することを日記やコミュニ
ティに書き込んだことをきっかけに議論が発生することはあるものの、地域 SNS 全体のデ
ザインとして、住民と行政の討議の場と位置付けるケースはほとんど見受けられず、どの地
域 SNS も地域活動などを通じた住民同士のゆるやかな交流を中心的な目的としている。
実は、政府の『e-Japan 重点計画 -2003』では、
「行政への住民参画」として、自治体の施
策等について住民が意見を言える場を作ることが施策として掲げられていたのにも関わら
ず、実際の地域 SNS ではその点はあまり強調されていない。これはどのように考えればよ
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研究ノート Research Note
いのだろうか。実は、この「行政への住民参画」から「地域への住民参画」への変化につい
て、当時総務省で地域 SNS 事業を推進した牧 10)は、電子会議室ではインターネット上で
行政と住民が対峙関係に立ってしまいがちであった状況を踏まえ、行政と住民、地域団体、
NPO などが「同じ目線で、職員の顔が見える形で、住民の皆さんと共に地域社会をよくし
ていこうという姿勢」
(10),p.59)が必要だと指摘している。つまり、行政課題などについ
て議論するにしても、その前提として、人と人とのつながり(ソーシャルキャピタル)の必
要性を認識していたといえる。
地域 SNS は、自由なコミュニケーションが行える場である。運営をする行政側が仮に
「行政への提言をする場」と位置付けたとしても、住民側はそのように使うとは限らない。
趣味の仲間を集めるために使う住民もいれば、地域活動のために使う住民もいる。もちろん
日記で友達との会話を楽しむ住民もいる。運営者側のねらいとは違うが、このようなさまざ
まな活動やコミュニケーションを通じて地域のソーシャルキャピタルが醸成され、行政への
提言・討議をする土台となるのではないだろうか。
●国民と政治をつなぐ「Twitter」
これまでは行政を対象としてみてきたが、政治の分野における「討議」はどのような状況
なのだろうか。まず、討議を行うための場の設置状況を確認したい。
各政党の WEB サイトを見ると、電子メールでの意見募集は行われているものの、電子掲
示板などは構築されておらず、オープンな議論を行う場にはなっていない。政治家個人の
WEB サイトを見ると、メールでの意見募集だけの WEB サイトもあるが、議員によっては、
民間企業が提供するブログや SNS 等のサービスを利用しているケースもある。しかしなが
ら、ブログや SNS に関していえば、それらの多くは議員の書き込みに対してコメントがで
きない設定になっており、国民と議員とのコミュニケーションは決して生まれやすい状況で
はない。また、電子掲示板を設置し、政策課題などについての議論がオープンに行われる環
境を整備しているケースもあるが、その実態をみると、行政における電子会議室と同様、有
効に活用されている状況とはいえない* 3。その状況を大きく変えたのが、Twitter の普及で
ある。Twitter が国民と議員(政治)との距離を一気に縮めた。
政治における Twitter の活用に可能性を感じることになったのは、前述の 2009 年 6 月に
民主党の逢坂議員が、議員の勉強会や党首討論の様子を本人の感想を交えながらリアルタイ
ムに発信した時である。多くの Twitter ユーザは政治が身近なものに感じられたのではな
いだろうか。他のユーザも逢坂議員のコメントに触発されるように、逢坂議員宛てにコメン
トを発信した。国民と議員とが直接コミュニケーションをすることができる討議空間として
大いに期待が集まった。その後 Twitter を活用する議員は増え、政治家の Twitter が一覧
できる WEB サイト「ぽりったー」* 4 によると、現在(2010 年 4 月 12 日時点)、国会議員
79 名、地方議会議員・首長 359 名が「ぽりったー」に登録している。2010 年 1 月 1 日には、
* 3
例えば、
「e- 国会」
(http://www.e-kokkai.com/)などのように、市民自ら政治のための討議空間を構
築するケースもある。
* 4
所報53号.indb 134
http://politter.com/
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e デモクラシーの動向と展望 〜再び注目が集まる e デモクラシー〜
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鳩山総理も Twitter を開始したが、政府としてもソーシャルメディアを活用していこうと
いう意図が表れているといえる。
●議論をコーディネートする議員
Twitter を場として議員と国民とのコミュニケーションが生まれる中で、議員が「コー
ディネーター」という新しい役割を担うようになったのは、今後の e デモクラシーを考える
にあたって重要な点である。
前述の通り、これまでは議員がブログや SNS などを活用する場合でも、一方向のコミュ
ニケーションになりがちであった。それが、Twitter が広まったことで双方のコミュニケー
ションが生まれやすい状況になったが、さらに、議員がある政策についての問いかけをし、
他の Twitter の意見を募集するという新しい討議の形も現れ始めている* 5。前述のように、
イアン・バッジは、仮に直接民主主義の政治体制になったとしても議会の存在意義がなくな
るわけではなく、さまざまな役割があることを示唆しているが、「討論コーディネーター」
として国民を交えた政策議論のコントロールをすることも、その 1 つになるのではないだろ
うか。国民と議員との直接的なコミュニケーションが現実味を帯びてきた今、
「コーディ
ネーター」として機能する意義は、先に記載した間接民主主義の課題を一部解決する可能性
があるという点で、国民側にとっても議員側にとっても大きいものである。
●電子会議室、SNS、Twitter の討議空間としての違い
次に、これまで e デモクラシーの討議空間として期待されてきた「電子会議室」「SNS」
「Twitter」の違いについて整理したい。下表はその概要を整理したものである。
表 4.電子会議室、SNS、Twitter の討議空間としての違い
ツールの種類
構成される空間
特徴
電子会議室
パブリック空間
・パブリック空間しか存在しないために、自分の考えを主張することで、場が荒れ
やすい。
・また、各利用者のプライベート空間がないために、利用者に関する情報が少なく、
匿名性が高くなる。
SNS
パブリック空間
+
プライベート空間
(分離型)
・コミュニティというパブリック空間だけでなく、日記というプライベート空間が
あるために、自由に持論を述べやすい。
・ただ、パブリック空間(コミュニティ)での発言とプライベート空間(日記)で
の発言は別々の場に分かれている。
・プロフィール情報をはじめ、日記の内容や友達関係の情報がオープンにされてい
るため、電子会議室より、実名性の高い空間が構築される。
Twitter
パブリック空間
+
プライベート空間
(混在型)
・SNS と同様、プライベート空間があるために、自由に持論を述べても場が荒れに
くい。
・SNS との最大の違いは、他の利用者宛ての発言やコミュニティ(ハッシュタグを
介した疑似コミュニティ)における発言が、プライベート空間における発言と混
在していること
作成:三菱総合研究所
* 5
例えば、山本一太 参 議 院 議 員(http://twitter.com/ichita_y/status/7070360334、http://twitter.com/
ichita_y/status/7083041378)
。
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136
研究ノート Research Note
機能的な違いはいろいろあるものの、一番の違いは、電子会議室はパブリック空間だけで
構成されるが、SNS や Twitter にはパブリック空間だけでなくプライベート空間も存在す
る点である。パブリック空間とは複数の利用者で書き込むことができるページで、電子会議
室や SNS におけるコミュニティが該当する。一方、プライベート空間は、各利用者専用の
ページで、SNS におけるプロフィールページや日記、Twitter における各利用者の発言一覧
が該当する。利用者がある主張を展開するにしても、SNS や Twitter は自分専用のプライ
ベート空間であるがために、パブリック空間しか存在しない電子会議室に比べて問題になり
にくいという特性を持っている。
ところで、電子討議においては、しばしば「実名/匿名」が問題になる。行政による電子
会議室も、匿名による議論の難しさが指摘されている[14]。しかしそれは、実名表記にす
れば解決されるというような単純な問題ではない。そもそも、実名/匿名は明確に二分でき
るものではなく、「実名(匿名)性の度合い」というような程度を持った概念である。実名
性(匿名性)の程度は、実名かどうかという名前表記だけではなく、コミュニケーションの
内容、コミュニケーションが行われている状況、コミュニケーションの相手との関係性な
ど、さまざまな要素をもとに総合的に判断されるものである。先程、電子会議室と SNS・
Twitter の大きな違いとしてプライベート空間の有無をあげたが、実名性を高める要素とし
て、プライベート空間の意義は大きい。個人々々が日々書き込む内容が実名性を高め、安心
感を生む。
森尾[15]は、匿名性の水準として、「1)視覚的匿名性」「2)アイデンティティの乖離」
「3)識別性の欠如」をあげる。現在のインターネットコミュニケーションにおいては、1)
の視覚的匿名性は解決が難しい問題であるが、一方で、3)の識別性については匿名性が排
除 さ れ る よ う な シ ス テ ム 設 計 に な っ て い る ツ ー ル も 増 え て き て い る。 ま さ に SNS や
Twitter は、各自の発言が各ユーザ ID と常に紐付いていることで匿名性が軽減される。
しかし、常に実名性の高いコミュニケーションが行われる必要はない。現実社会でのコ
ミュニケーションにおいても、実名を名乗る場合、名乗らない場合、社会的属性(例えば、
学生、社会人というレベルの属性)だけを伝える場合など、適宜、状況に応じてオープンに
する実名性の度合いをコントロールしている。現実社会で、「実名/匿名」がそれほど問題
になることがないのは、社会の共通認識として、どのような場面でどの程度の実名性が必要
とされるかという認識が共有されているからだと考えられる。インターネットにおけるコ
ミュニケーションでは、まだその認識が社会の中で共有されていないために「名前・属性を
どの程度明らかにすべきか」という議論が常に起こり得るが、徐々に共通認識も作られてい
くのではないかと考えられる。
3 )決定−Quick democracy
代理人の選出、つまり議員選挙や首長選挙における ICT 活用という点では、インターネッ
トによる選挙運動を解禁する流れがこの 10 年における一番大きな動きといえる。e デモク
ラシーの実現にとって、公職選挙法の規程により認められていないインターネットを活用し
た選挙運動の解禁は重要なテーマの 1 つである。2001 年から 2002 年にかけて行われた「IT
時代の選挙運動に関する研究会(座長:蒲島郁夫東京大学教授、事務局:総務省)」は、「イ
ンターネットを用いた選挙運動の可能性と問題点及び公職選挙法に規定する選挙運動手段に
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e デモクラシーの動向と展望 〜再び注目が集まる e デモクラシー〜
137
ついて IT 時代に即して見直すべき点についての調査研究を行う」ことを目的として設置さ
れた。約 1 年間の議論を経て、2002 年 8 月に報告書が公表された。結局、その研究会での
議論を踏まえて実際に公職選挙法が改正されることはなかったが、今、再び改正に向けた動
きが起こっている。民主党は「民主党政策集 INDEX2009」の中で、インターネット選挙運
動を解禁することを政策に掲げているが、実際に 2010 年夏に行われる予定の参議院選挙に
間に合わせる形で、公職選挙法の改正に動き出している。ネットを活用した選挙運動という
ものは、民主主義や e デモクラシーにおける一機能に過ぎず、ネット選挙が解禁されたから
といって民主主義が実現されるとはいえないが、e デモクラシーにおける大きな側面の 1 つ
であることは間違いなく、現在の社会環境に整合する形で早急に改正されることが望ましい。
一方、投票行為における ICT 活用という点では、「投票所による電子投票」の実施が唯一
の事例である。電子投票は、これまで全国の市長選、町長選、市議選など 10 の自治体で計
20 回実施されてきたが[16]、電子投票を実施した選挙での開票時間を見ると大幅に短縮さ
れており[17]、効率化という観点での成果が現れている。
電子投票は、集計作業の負担軽減や集計時間の短縮など「効率化」という視点から語られ
ることが多いが、民主主義の質を向上させる可能性があるという点も重要なポイントであ
る。電子投票システム調査検討会の報告書が指摘しているように、無効票の削減や音声案内
などによる投票などにより、投票機会の拡大につながるメリットもある[18]。
さらに、インターネットを介して有権者が所有する端末から投票できるようになれば、技
術的課題を含めさまざまな課題を解決する必要はあるが、さらに投票機会は拡大する。エス
トニアでは、2005 年の選挙をきっかけに、すでに 4 回の選挙でインターネット投票が実施
されている。2009 年に行われた選挙では、全体の投票数のうち、約 15%の投票数がイン
ターネットから行われた[19]。インターネットを介した投票の問題点として、本当に本人
の意思にもとづいて投票しているかどうか確認できないという指摘がある[20]。つまり、
本人自身が投票行為を実施していることは事実だとしても、第三者から脅迫を受けている状
況下で、第三者の意思にもとづいた投票行為が行われている可能性を排除できない、という
ものである。エストニアでは、この問題の対策として、投票期間中であれば何度も投票をす
ることができ、最後に投票した内容が投票結果として認められる仕組みを構築している。投
票内容を訂正する機会を与えることで、本人の意思による適切な投票が行われることを担保
しようとするものである。しかし、この対処は新たな問題も生み出す。後から投票内容の修
正が可能になるということは、本人識別情報と投票内容とが結び付かなければならず、非常
にリスクの高い情報となる。システムの技術面のみならず、投票所による投票とインター
ネットによる投票をどのように位置付けるのか(投票所での投票に優位性を持たせるのか)
など、運用面での課題も多い。
国民投票や住民投票などに代表される「政策の決定」に関しては、電子投票などの ICT
が活用されたことはない。「政策の決定」に関しても、「代理人の選出」と基本的なメリット
や課題は変わらない。ただ、仮に日本の民主主義が現在より直接的な形で行われることが増
え、国民投票や住民投票などの機会が増大する場合には、投票行為を電子化するメリットは
大きい。
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138
研究ノート Research Note
5.今後の e デモクラシーについての考察
以上、民主主義や e デモクラシーに関する研究等も踏まえながら、これまでの e デモクラ
シーの動向を整理した。本章では、今後の e デモクラシーの方向性について、課題等を踏ま
えながら記述したい。
●政治的コミュニケーションにおけるジレンマ
すでに述べたように、ICT を含むメディアの発達は、人が認知できるコミュニティを広
範囲化するとともに、コミュニケーションの直接性、即時性を強化してきた。以前では、相
当のコストをかけなければ知り得ない情報も今では簡単に入手できるようになり、場所や時
間を気にせずコミュニケーションをとることも非常に容易になった。まさにこの点こそが e
デモクラシーが期待されている点である。しかし、コミュニケーションの直接性、即時性が
強化されることと、直接的な討議をベースにした民主主義が実現するかどうかは、まったく
別の問題である。例えば、一国の首相、大臣などと ICT を通じて直接コミュニケーション
がとれるようになったからといって、討議をベースにした直接的な民主主義が実現しないこ
とは明白である。多くの国民が意見を投げかければ投げかけるほど、首相や大臣等は意見に
目を通すことすら難しくなり、最終的に双方向のコミュニケーションは成立しなくなる。結
局、コミュニケーションにおける両者の非対称性はどのようなメディア(手段)を活用しよ
うと存在する。もちろん、これは直接的なコミュニケーションの意義を否定するものではな
い。民主主義の本質は「討議などを通じた意思決定プロセスへの直接的な参加」であり、イ
ンターネットによって実現される直接性は積極的に活用されるべきものである。現に多くの
人が経験しているそのメリットを今さら放棄するのも現実的ではない。しかし、現実問題と
して、人が認知するコミュニティが広域化すればするほど、そして、直接的なコミュニケー
ションが行われれば行われるほどコミュニケーションが成立しなくなるというジレンマが発
生する以上、そのジレンマを解消するような新たな意思決定モデルの構築が必要となるのは
いうまでもない。
●求められる新たな意思決定モデル
表 5 は、意思決定モデルのパターンを「意思決定方法(討議/投票)」と「意思決定者
(直接/間接)」の 2 軸で整理したものである。
表 5.意思決定モデルのパターン
直接的な意思決定
間接的な意思決定
討議
【①討議をベースにした直接的な意思決定】
・ 民主主義の理想的な意思決定モデル
【③討議をベースにした間接的な意思決定】
・ パブリックコメント、議員や行政職員との会合
・ 街角で行われる「署名活動」
投票
【②投票をベースにした直接的な意思決定】
・ 日本では「住民投票」や「国民投票」として制度化
されている意思決定モデル
・ 投票によって、政策等の意思決定に直接関与する。
【④投票をベースにした間接的な意思決定】
・ 現在の民主主義における中心的な意思決定モデル
・ 投票により代表者(議員、首長)を決定し、政策等
に関する最終的な意思決定は代表者が行う。
作成:三菱総合研究所
所報53号.indb 138
10.5.18 1:43:24 PM
e デモクラシーの動向と展望 〜再び注目が集まる e デモクラシー〜
139
①の「討議をベースにした直接的な意思決定モデル」は、民主主義における理想的なモデ
ルである。コミュニティメンバーが直接討議をしながら、コミュニティとしての意思決定を
していくというものであり、コミュニケーションコストの問題が解決でき、実際に実現でき
るのであれば、このモデルをベースとした意思決定がなされるべきものと考える。その対極
にあるのが、④の「投票をベースにした間接的な意思決定モデル」である。これは、国民・
住民が選択した代表者が意思決定を行うものであり、現在の政治制度で基本となるモデルであ
る。前述で整理した通り、④のモデルに対する批判が集まる一方で、①のモデルも、理念上は
支持されるとしても、現代社会においてその実現性は非常に低いという問題をかかえている。
では、残りの②「投票をベースにした直接的な意思決定モデル」と③「討議をベースにし
た間接的な意思決定モデル」はどうなのだろうか。②のモデルは、「住民投票」や「国民投
票」のように、コミュニティメンバーが投票を介して政策への直接的な意思決定に参加する
というモデルである。一方、③のモデルは、コミュニティメンバー全員が直接的な関与はで
きず、あくまでも意思決定主体は代表者ではあるが、代表者との討議を通じて意思決定に関
与しようというモデルである。①と④のモデルに多くの問題がある以上、民主主義の質は、
これら②と③のモデルにおける意思決定の質をどれだけ向上させることができるかというこ
とにかかっている。特に、e デモクラシーの特徴を生かすことができる③のモデルが、今後
の民主主義のキーポイントになると考える。
もちろん、③のモデルは真新しいものではなく、これまでもパブリックコメント、行政・
議員との会合という形でそのモデルは実現されてきた。街角で行われる「署名活動」も、こ
のモデルに含まれる。しかし、ICT を活用することで、課題やテーマに応じて、より流動
的にコミュニティが形成でき、各コミュニティの中で討議が行われることが可能となる。先
程紹介したように、Twitter 上で議員が議論をコーディネートするのも 1 つの実現手段であ
り、パブリックコメントを提出する際に 1 企業が意見の取りまとめを行うというのも 1 つの
やり方である。実際に、ケンコーコム* 6 は、医薬品ネット販売の規制に関して厚生労働省
に対して意見を提出する際に、国民の意見を集約する役目を担った。個人がばらばらに意見
を提出するより、その後の意思決定という点では効率的だろう。コミュニケーションコスト
を考えれば、「間接的な意思決定」は真っ向から否定されるべきものではないし、批判が集
まる④のモデルに関しても、①や②や③に完全に移行するということは現実的ではなく、こ
れからも民主主義の 1 つのモデルとして生き続けるだろう。
本項のタイトルで「求められる新たな意思決定モデル」と記載したが、それは、今後の意
思決定モデルをどれか 1 つにすべきということではなく、あくまでもこれら 4 つのモデルの
バランスを再構築することに他ならない。いずれか 1 つのモデルで対応できるほど現代社会
が単純なものではないことが明白である以上、複数の意思決定モデルのバランスを再構築す
ることでしか、新たな意思決定モデルは構築できない。言い換えれば、民主主義の質を高め
るには、効率的に質の高いコミュニケーションが実現されるように、適切な場面で適切なモ
デルを適用できるかどうかということにかかっている。
そして、結局は、国民・住民がどのような意識で意思決定プロセスに参加するのかという
* 6
所報53号.indb 139
http://camp.kenko.com/signature/form.html
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140
研究ノート Research Note
ことが、一番大きな問題であることはいうまでもない。集団で意思決定をするということ
は、自分の意見を主張することだけではなく、時に妥協的な判断をも求めるものである。e
デモクラシーは、より広範囲でより大勢でのコミュニケーションを可能とするが、これまで
以上に個人的な要求は通りにくくなり、妥協的な判断が必要となる。国民一人ひとりがコ
ミュニケーションの限界を理解した上で、より質の高い民主主義を実現するための意思決定
モデルを構築する必要がある。新たなモデルを構築していく上で、e デモクラシーの果たす
べき役割は今まで以上に大きい。
参考文献
[1]
岩崎正洋編:『サイバーポリティクス –IT 社会の政治学』,一藝社(2001).
[2]
岩崎正洋編:『e デモクラシー』,日本経済評論社(2005).
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財団法人国際通信経済研究所:『海外における電子政府・電子自治体の動向』(「第 1 章 e ガ
バメントから e デモクラシーへ」)(2005).
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イアン・バッジ著,杉田敦他訳:『直接民主政への挑戦 – 電子ネットワークが政治を変える』,
新曜社(2000).
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[6]
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都市情報学会)第 17 回全国大会研究発表論文集)』,45-50(2002).
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総務省:
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蒲島郁夫他:『メディアと政治』,有斐閣(2007).
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総務省:『住民参画システム利用の手引き』(2006).
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財団法人地方自治情報センター:『地域 SNS モデルシステム 運用の手引き』(2008).
[14]
総務省:『住民参画システム利用の手引き』(2006).
[15]
森尾博昭他編:
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[16]
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[17]
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(http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/touhyou/
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[18]
総務省 電子投票システム調査検討会:『電子投票システムの信頼性向上に向けた方策の基本的
方向』(2006).
[19]
Estonian National Electoral Committee:「Internet Voting in Estonia」(http://www.vvk.ee/
index.php?id=11178).
[20]
電子機器利用による選挙システム研究会:『電子機器利用による選挙システム研究会 報告書』
(2002).
所報53号.indb 140
10.5.18 1:43:25 PM
e デモクラシーの動向と展望 〜再び注目が集まる e デモクラシー〜
141
引用文献
1)
津田大介:『Twitter 社会論 – 新たなリアルタイム・ウェブの潮流』,洋泉社(2009).
2)
マイコミジャーナル:
「日本の政治と Twitter – 党首討論ライブ中継の逢坂誠二議員に聞く(後
編)」(http://journal.mycom.co.jp/articles/2009/06/30/pol_twitter/index.html).
3)
財団法人国際通信経済研究所:『海外における電子政府・電子自治体の動向』(「第 1 章 eガバ
メントから e デモクラシーへ」)(2005).
4)
今井一:『住民投票 – 観客民主主義を超えて』,岩波書店(2000).
5)
イアン・バッジ著,杉田敦他訳:『直接民主政への挑戦 – 電子ネットワークが政治を変える』,
新曜社(2000).
6)
上杉隆:『ジャーナリズム崩壊』,新曜社(2008).
7)
金子郁容,藤沢市市民電子会議室運営委員会:『e デモクラシーへの挑戦 – 藤沢市市民電子会
議室の歩み』,岩波書店(2004).
8)
ロバート・D・パットナム著,河田潤一訳:『哲学する民主主義 – 伝統と改革の市民的構造』,
NTT 出版(2001).
9)
藤田忍他:「地域 SNS とは – まちづくりにおける可能性を展望する」『まちづくり』24 号,
45-51(2009).
10)
所報53号.indb 141
牧慎太郎:「行政から見た地域 SNS の可能性」『まちづくり』24 号,58-61(2009).
10.5.18 1:43:25 PM
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