...

地元の土地のつくりと変化を理解できるモデルの活用

by user

on
Category: Documents
28

views

Report

Comments

Transcript

地元の土地のつくりと変化を理解できるモデルの活用
誰でもできる観察・実験講座
地元の土地のつくりと変化を理解できるモデルの活用
5年「流れる水のはたらき」で「左手モデル」を使って地域の浸食地形を理解
6年「土地のつくりと変化」で「凹モデル」をシンボルとした認識への理解
鷲山龍太郎
れる水の働きと土地の変化の関係についての考
1
立体地図を活用しよう
えをもつ」ことが実現したことになる
5年「流れる水の働き」の目標は、「地面を流
2
れる水や川の様子を観察し,流れる水の速さや
図1は横浜市をこの「左手モデル」で表現した物
量による働きの違いを調べ,流れる水の働きと
である。このモデル化はおそらく日本全国かなり
土地の変化の関係についての考えをもつことが
できるようにする。」である。
左手モデルでとらえさせる地域の地形と流水
の地域であてはめて活用することができる。先生
この「考えをもつ」こととは、自分が住んで
の教材研究として、モデル化をしながら地域の地
いる土地、日々目にしている地形が流水の芸術
形を観察し、授業では、子どもの気づきを導き出
作品であるということを認識し、過去の出来事
していきましょう。
を説明できるようになることを意味している。
3
リアリティーのある流水実験で町の地形をつ
くろう
流水実験は最低でも2回はやりたい。一回は流
水の速さと浸食、運搬、堆積との関係をしっかり
観察させる。
二回目は、地域の地形(県、市、町)を流水で
作ってみる実験である。この場合、
「学校」や「駅」
などのランドマーク(目印とする地理上の特徴
物)を用意すると効果的である。ランドマークは
5年「流れる水のはたらき」6年「土地のつ
割り
くりと変化」では、資料室に眠っている県や市、
で十分である。下流域に海のエリアを用意すれば、
地域の立体地図を教室に持ち込もう。山があり、
下流から海にかけて砂と泥が堆積して土地がで
谷があるが、谷の中心には川があることに子ど
きることが観察できる。
もが気づくようにしよう。流水実験をした時に
それが子どもの中で立体地図の形と結びつき、
自分の言葉やイメージで説明できたとき、「流
4
に正方形の付箋をセロテープでつけた物
6年「土地のつくりと変化」で使うモデル
Q 5年「流れる水のはたらき」では、学校のすぐ近くに川がないですし、15分歩いて川にたどりつ
いても、護岸されており、川が土地を削っていく様子や、石や砂が運ばれていく様子が観察できないの
で、学習を進めにくいと感じています。また、それが土地のできかたとの関係というところで、学習の
展開の難しさを感じます。
また、6年「土地のつくりと変化」では、学校のボーリング資料を読ませても、地域の地形との関係
がうまく結びつきません。
A 流水と土地の変化との関係は、教材観としてモデルを活用するとよいでしょう。ここでは、「流水と
土地のつくりとの関係左手モデル」と、「地域の土地のつくりを考える凹モデル」をお示しします。
これもほとんどの地域で当てはまると思うが、
ここに至るまでは、地域の地層の見学や屋上か
日本の学校は必ず「谷の中にあるか谷の上にあ
らの富士箱根の眺望、さらにビデオ(横浜の土地
る」はずである。又は東京都のように扇状地か三
の作りについての教育委員会教材・鷲山が企画監
角州の部分に場合もあるが。すこし上流には谷が
修)の視聴などの積み重ねがある。
あり、そこからはき出された物の上にあるという
教材観をもちたい。
「土地のつくりと変化」の学習では、地域の露
この図は私が板書したモデルを元に描かせたも
のであるが、授業の焦点は、学校の真下の地層に
は、関東ローム層があるのか?」という推論にな
頭を十分に観察させたい。その上に立って、谷の
った。
それぞれの部分がどのような地層でできている
● 「学校の地下に関東ローム層がある」説
のかを調べていく。
図3は、今年度私が6年生のクラスで授業をさ
せていただいた時の子どものノートである。
「学校の近くの山の上にも関東ローム層があ
るのだから、学校の下にもあるはずだ。」
● 「学校の地下には関東ローム層はない」説
「ここには早渕川が流れていたはずだから、火
地形である。平野の地下の地層は関東地方ならば、
山灰であるローム層は流れてないはずだ。」
海盆という地形にたまった膨大な泥であり、最終
二つの見解に分かれ、これまで自分たちが学ん
的には三角州のような部分での堆積物になる。
できた証拠をもとに熱心な議論になった。
台地、丘陵の地層はかつての「海の地層であるこ
かくなる上は、「実際にボーリング資料で確か
とは貝化石からもわかる。
めるしかない。」ということになる。果たして学
山間部も同じで、隆起したか、火山噴出物が盛
校の地下の地層からは、レンガ色のローム層は出
られた山を流水が浸食していく。
てくるのか?子ども達は明確な問題意識を持っ
● 富士と箱根に見る火山の浸食
てボーリング資料の木箱を開けた。
2万年前の噴火で美しいシンメトリーとなっ
「ローム層はない!」それが確かめられた。
た富士山ですら、西側では「大沢崩れ」という
ここでも川の働きと地形、地層についての考えを
浸食が始まっている。65万年もの噴火史をも
もつことができたのである。ある子どもはこのこ
つ箱根火山は、「千尋の谷」と「箱根八里」に
とを家に帰って父親に説明していたと母親から
読まれたように浸食が進んだ複雑な山容を呈
聞いた。
する。
ここで子ども達の思考を助けているのは凹モデ
● 山道のカーブとは何か?
ルである。地学の研究には、正確な地図と、これ
山道はなぜくねくねと曲がり続けるのだろ
に重なる先人が調べてきた地質図を参照するこ
う?そこに斜面の凸と凹を読めばそれがわか
とが欠かせない。しかし、研究の推移で地質図も
る。凹のカーブには沢があり、排水路があるこ
かなり変わっていく。これが地学のおもしろいと
とに注目しよう。凹のカーブは、山体を浸食し
ころでもある。複雑な地質図に代わる物として、
ている沢のラインなのだ。
地形、地層を単純化して表す「凹モデル」は子ど
● 高速道路の連続するトンネルや切り通し
もの推論を助けるのに効果的である。
高速道路は人工密集地を避け、山裾を貫いてい
5
る場合が多い。かなり規則的にトンネルや切り
教材研究「楽しい流水と地形の関係」
●日本の地形のすべては流水の芸術
通しを繰り返す場合、それは山から放射状、あ
大きなスケールでは地形は一つとして同じ物
りは
はなく、複雑な物であるが、基本は同じである。
である。
地上に持ち上がっている部分がたちどこころに
状に流れる谷地形の連続を見ているの
● 渋滞の原因は谷?東名、関越など渋滞にうんざ
流水の侵食を受けて変化していくと言うことで
りする高速道路では、カーナビを見て楽しもう。
ある。
わけのわからない渋滞の原因は谷を越すため
●平野とは何か
のアップダウンで車が減速することが連鎖す
平野部は低地、台地、丘陵からなる東京、横浜
などのエリアは隆起した海底面を川が浸食した
ることにあることがほとんどだ。
● 浸食地形と都市発達・土地利用を見る
あなたの周囲の「山」と言われる高い土地が
あれば、学校があるような住宅地は、谷底にあ
ることも多く、川の周囲の氾濫原であったか、
扇状地であったか、沖積低地であるはずです。
あなたの学校が高台にあれば、川を挟んで対岸の
山を眺望することができ、そこに「谷」を見いだ
すことができるはずです。
そして、隣の町や区というのは、川伝いに上流
か下流にあるか、又は一山越えた向こうの谷にあ
るはずです。
雨水は流れ下るときに集まり、集まった部分
はV字型に土地を浸食しながら毛細血管状に流
路を作って沢に、支流に、本流に集まり海を目
指す。こうして土地は大小の川が谷を作り、そ
の谷沿いの低地を中心に交通が発達し、産業や
住宅、地方であれば田畑として利用されている。
このことは、3年生の社会科でも気づかせたい
ことです。
(横浜市立北綱島小学校
校長)
Fly UP