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乳がん術後のケア~用手的リンパドレナージの手技
乳がん術後のケア ~用手的リンパドレナージの手技~ 平成27年3月9日 急性期病棟看護師 ◎リンパ系の機能 ①リンパ液・ウイルス・細菌の通過路 ②リンパ球の産生 ③抗体産生および細胞性免疫による身体全体 の防御 ④食作用(細網内皮系) ⑤微小血管からの漏出液を血管系に循環する ⑥腸管からの脂質や脂溶性物質の吸収 ◎浮腫とは • 浮腫とは皮下組織内に水分が過剰に貯留し た状態である • 浮腫には全身性浮腫と局所性浮腫があり、リ ンパ浮腫は局所性浮腫に分類される • 局所性浮腫には、遺伝血管性浮腫、アレル ギー性浮腫、炎症性浮腫、静脈血栓症、麻痺 性浮腫、一次性リンパ性浮腫、二次性リンパ 浮腫がある。 ◎二次性リンパ浮腫 • 二次性リンパ浮腫は何らかの後天的な原因 で、リンパ管が障害されて浮腫が生じるもの で、悪性腫瘍手術に伴うリンパ節切除後に圧 倒的に多い。 • その他の後天的原因として、悪性腫瘍のリン パ管およびリンパ節への転移がある。 ◎発症リスク • リンパ節郭清をしていると、リンパ浮腫の頻 度が高くなる • リンパ節郭清の程度とリンパ浮腫の発症には 強い相関がみられる • リンパ節郭清とともに、放射線治療を行うと、 リンパ浮腫の発症の可能性は高くなる • ホルモン剤の使用による体重増加は、リンパ 浮腫の発症や悪化の要因になる ◎二次性リンパ浮腫の治療 • 二次性リンパ浮腫の治療には、効果的な薬物や完治 を目指す外科的治療はなく、貯留した浮腫液を静脈 へ還流する保存的治療が選択される • 保存的治療の考え方は、リンパ節切除後に形成され るリンパ管のバイパスを活かし、患部から浮腫液を排 除するものである • 基本となるのは、患肢挙上である。次いで用手的リン パドレナージの施行、弾性着衣の着用、圧迫下の運 動療法、スキンケア、弾性包帯などである • 退院後もセルフケアが全く不要になる事はなく、一生 付き合っていくものと考え、良い状態を維持する為の 正しい自己管理とセルフケアの指導が重要となる ◎リンパドレナージとは ・用手的リンパドレナージは患部に貯留した浮 腫液を、障害のない他の領域のリンパ節を介 して、皮膚表面をゆっくり、ずらしながら。深部 リンパ系に送り込む手技である。 ・用手的リンパドレナージの効果は、組織液の 流れを促し、リンパ液の生成を増大し、リンパ液 流量が増え、リンパ管分節の動きが活発化する 事により、皮下組織の線維化の改善が期待さ れる。 ◎三州病院でのケア ・対象:リンパ節生検を行った患者 リンパ節郭清を行った患者 ・時期:術後~退院まで ドレナージ指導はドレーン抜去後開始 ・指導内容:患肢の観察方法、患肢測定方法 生活の中で注意点の説明 浮腫、ドレナージとは何か説明 セルフリンパドレナージ指導 ◎セルフリンパドレナージ指導 • 注意点 ①強くもまない ・手指、手のひらを皮膚に当て、軽く、 ゆっくり、優しく皮膚を動かす様にずらす ・強くもむ事で炎症が起こる場合がある ・リンパ管は真皮に存在する為、軽く、優しく 皮膚を動かすだけでリンパ液は流れる ・特に浮腫が気になる部分は強くもむのでは なく回数を増やす様にする ②炎症がある時には行わない ・発赤、熱感、悪寒などがある際にドレナー ジを施行する事で、悪化させることがある ③うっ血性心不全患者には行わない ・循環血液量を更に増し、心不全の悪化、肺 水腫に至る可能性もある ④ドレナージ時には、衣類の上からではなく 直接皮膚に手を密着させ行う ◎セルフリンパドレナージ指導手順 ①肩を後ろ回し (10回) ②腹式呼吸 (10回) ③健側の腋窩 ④鎖骨の前 ④鎖骨の前 (繋げる) ⑤患側鼠径 ⑥患側体幹 ⑥患側体幹 ⑦患側上肢 肘~肩:上腕外側 ⑦患側上肢 肘~肩:上腕内側 ⑦患側上肢 肘~肩:上腕後側 ⑦患側上肢 手首~肘:外側・内側 ⑦患側上肢 手首~肘:外側 ⑦患側上肢 指先~手首 手背・手掌 • これで全ての道が完成しました ⑧上肢指先~手首→上肢手首~肘 →上肢肘~肩→体幹→鎖骨の前 の順番で戻る。 ※ここからは家族へ指導 ⑨背部 (10回) 患側腋窩後側~健側腋窩後側へ ⑩体幹 (10回) 患側腋窩後側~患側鼠径へ ◎まとめ • 用手的リンパドレナージ手技を入院時に習得 し退院する事で、浮腫出現時に自宅で自己に て対応できる為、安心感が得られる。 しかし、その反面手技が多く、時間もかかる 為、負担やプレッシャーに感じる患者もいる。 そのため、患者の生活背景や、器用さ、年 齢等を考慮し、段階を追って指導していく事 が大切である。