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展 示 資 料
展 示 資 料
NHK放送技術研究所
ごあいさつ
日頃より、公共放送NHKに、ご理解とご支援をいただき厚く御礼申し
上げます。
このたびの東日本大震災において被災されました皆様に心よりお見舞い
申し上げます。皆様のご無事と一日も早い復興をお祈り申し上げます。
NHK放送技術研究所(技研)は、放送技術分野を専門とするわが国
唯一の研究機関として、また、公共放送 NHK の一員として、わが国の
放送技術を先導して豊かな放送文化を築くために、研究開発の立場から
貢献するという役割を担っています。
この役割を果たすために、技研では直近の経営課題を解決するための
短期的研究と、次の時代の新しいサービスを創造するための長期的研究
の両面を並行して進めています。
65 回目となる今 年 の「技 研 公 開」では、こうした研 究から生まれた
成果のうち、最新の研究成果 36 項目を展示します。
「あなたに伝えたい、
デジタル放送の未来」というテーマで、テレビ放送の完全デジタル化の
先にある未来を目指して進めている、ハイブリッドキャスト、スーパーハイ
ビジョン、インテグラル立体テレビ、そして、人にやさしい放送技術などの
研究成果をご紹介します。
放送と通信の融合時代にも視聴者の皆様の役に立つ、豊かな放送を
お届けするために、技研ではこれからも幅広い研究開発を進めてまいり
ます。今後とも、技研の活動に対して、より一層のご支援を賜りますよう、
お願い申し上げます。
2011 年 5 月
NHK放送技術研究所
所長 久保田 啓一
会場 案 内
7階
講演・研究発表
モニター会場
1階
1階から
1階へ
食堂
地下1階へ
地下1階から
7階へ
7階から
+
-
ガイド
ツアー
受 付
(土、日)
講堂
講演・研究発表(木,
金)
イベント(土,
日)
出口
入口
エレベーター
トイレ
進化し続けるデジタル放送
スーパーハイビジョン単板撮像装置
Hybridcast
次世代衛星放送に向けた大容量伝送技術
放送とソーシャルネットワークの融合teleda
次世代地上放送に向けた大容量伝送技術
次世代TV スーパーハイビジョン
スーパーハイビジョンシアター
家庭で楽しむスーパーハイビジョン
- デジタル放送受信相談コーナー
TM
+ 非常災害時に役立つ放送技術と東日本大震災等での活用例
地下
1階
書籍
アンケート
1階から
1階へ
7 7
7
7
体験型展示
ポスター展示
休憩所
ポスター展示
テレビ視聴インターフェースUTANの提案
超解像技術を利用した画像復元型符号化
インテグラル立体テレビ
番組映像検索システム
用例翻訳による手話CG
現場で活躍するエコな番組制作設備
視覚障害者向けデジタル放送受信機
リアルアピアランスモニター
やさしい日本語によるニュースサービス
気象通報自動読み上げシステム
P2P型ライブ映像配信技術
放送博物館コーナー
次世代CAS技術
電荷蓄積型シリコンマイク
コネクティッド スタジオ
冷陰極HARP撮像板
22.2マルチチャンネル音響再生技術
磁気記録デバイスの高速化技術
スーパーハイビジョン用広ダイナミックレンジプロジェクター
プラズマディスプレイの省電力技術
新型スーパーハイビジョンプロジェクター
フレキシブル有機ELディスプレイ
撮影情報を利用した映像制作
3 ポスター展示
移動中継用MIMO受信システム
7 うつってあそぼ!
3次元ミリ波イメージング技術
7 超スローモーションの世界を体験
ミリ波モバイルカメラ
7 しゃべってあそぼ!
NHK技術の活用と実用化開発の紹介
7 EN-Vision
エレベーター
トイレ
デジタル放送・放送通信連携
1
進化し続けるデジタル放送
デジタルの機能を活かし、より使いやすく便利に
展示概要
日本のテレビ放送がすべてデジタル化される時代を迎えます。ここでは、デジタル放送の魅力
を実感していただくとともに、それを支える技術、アナログ終了後に予定されているVHF帯
マルチメディア放送などを紹介しています。
展示項目
□ハイビジョンの魅力をさらに充実
衛星デジタル放送が開始されて10年、地上デジタル放送が開始されて7年が経過し、今年の4月からは、衛星
デジタル放送もNHK BS1、BSプレミアムの2つのハイビジョン番組となりました。地上デジタル放送とあわせ、
ハイビジョンの魅力を堪能してください。
□ネット展開も充実
データ放送と連携した双方向番組により、視聴者の皆様も参加できる番組を拡充するとともに、NHKオンデマンド
で見逃し番組をご覧いただけるようにするなど、ネット展開もさらに充実させています。テレビだけではなく、
パソコンでもNHK番組をご覧いただけます。
□エリアも充実、新たな展開へ
2010年末までに、当初計画していた2070局の送信所の設置が終了し、全世帯の約98%で地上デジタル放送波を
受信できるようになりました。残りは共同受信や衛星放送によるセーフティーネットの利用により全世帯で地上
デジタル放送番組を視聴できるようになりました。
□VHF-Low帯マルチメディア放送
アナログテレビ放送終了後、VHF帯を利用したマルチメディア放送が開始される予定です。このうちVHF1∼3
チャンネル(90∼108MHz)を利用したVHF-Low帯マルチメディア放送のサービスイメージを展示しています。
VHF-Low帯マルチメディア放送では、蓄積サービスなど、新しい放送サービスも開始される予定です。
□地上デジタル放送の安定受信技術
地上デジタル放送では、別の地域からの電波が混信したり、建造物等に反射した電波の影響により、番組を正しく
受信できなくなることがあります。NHKでは、これらの干渉を解消するための技術開発を行いました。既に、
多くの中継局で使用されており、家庭用としての実用化も進めています。
□日本の地上デジタル放送方式の海外普及
日本の地上テレビ放送のチャンネル帯域幅は6MHzですが、世界的には7MHz、8MHzの地域もあります。日本が
開発し実用化した地上デジタルテレビ放送方式ISDB-T※は、6MHzの南米の国々で採用されていますが、ISDB-T
は7MHz、
8MHzの地域でも対応可能です。今回、アジア、アフリカなどの7MHz、8MHzの国々での採用を目指し、
6, 7, 8MHzのいずれの帯域幅でも送受信可能なマルチバンドISDB-T変復調器を開発しました。
※ ISDB-T:Integrated Services Digital Broadcasting
今後の予定
新しい技術を導入することにより、デジタル放送を受信しにくい地域の改善を図るとともに、マルチメディア放送や
放送通信連携サービスによりデジタル放送を一層進化させていきます。
VHF-Low帯
(1ch∼3ch)
1セグメント
蓄積サービス
蓄積サービス
高音質の
音声サービス
音声サービス
音声サービス
音声サービス
音声サービス
音声サービス
音声サービス
音声サービス
周波数
複数の
音声サービス
高音質の
音声サービス
最新情報の
蓄積サービス
‫ݛݞݝݜ‬
VHF-Low帯マルチメディア放送
干渉波
GI越え
マルチパス
山岳
希望波
異なる番組を放送する
送信所
希望波
希望波
干渉波
干渉除去機能内蔵
ヘッドエンド
共同受信施設
希望波
共同受信施設
GI越えマルチパス
等化機能付き
ヘッドエンド
見たい番組を放送する
送信所
GI越えマルチパス
等化機能付きSTB
地上デジタル放送の安定受信技術
家庭用
ブースター型
干渉除去装置
デジタル放送・放送通信連携
2
HybridcastTM
放送・通信連携サービスを目指して
展示概要
放送と通信を連携させることで、より魅力的なサービスを提供可能とするHybridcastの研究
開発を進めています。今回は、新たに開発したプロトタイプの受信機とともに、Hybridcast
を支える技術、実現可能となるサービスの例を紹介しています。
特 長
□放送と通信を連携させた新しい放送サービス
放送の特徴である同報性、高品質、高信頼性と、個別の要求に応えることができる通信の特徴を生かすことにより、
より豊かな放送サービスを実現します。
□放送と通信の正確な同期合成技術
放送と通信で送られる映像や字幕データなどのコンテンツを正確に同期合成させることができるため、多言語字幕
やマルチビューサービス(ピクチャーインピクチャー)など様々なサービスを実現することができます。
□TV、携帯端末、パソコンなど様々な端末同士の連携
テレビと各種端末同士の連携技術により、視聴者それぞれの要求に応じた便利なサービスが実現します。例えば、
視聴中の番組に関連する情報を必要に応じて携帯端末などで利用できます。
今後の予定
放送通信事業者や受信機メーカーなどとも協力し、個人のニーズや技術の進展に応えられる放送サービスの実現を
目指します。
◆Hybridcast™は、
(財)NHKエンジニアリングサービスの商標です。
◆この研究の一部は、ソニー(株)、日本電信電話(株)、パナソニック(株)と個別に、共同で進めています。
アプリ
:放送
:通信
サービス制作事業者
アプリケーション管理技術
番組に関連した情報
コンテンツ配信技術
アプリ、コンテンツ
放送局
クラウド技術
ソーシャルネット活用技術
同期合成技術
番組
端末連携技術
セキュリティー技術
Hybridcast™の概要
視聴者
デジタル放送・放送通信連携
3
放送とソーシャルネットワークの融合teleda
新しい番組視聴スタイルの実現を目指して
展示概要
放送局の新しいサービスとして提案しているteledaを体験していただきます。teledaは、
従来の視聴者と放送局間のサービスに加えて、番組を通じて視聴者間の「横のつながり」を
構築するサービスです。視聴者の皆様が安心して情報発信、意見交換できる場や、これまで
気づかなかった新しい番組との出会いを提供します。
特 長
□視聴者の横のつながりの構築
VOD※などの普及により便利な視聴スタイルが提供される一方で、それに伴うテレビ視聴の個人化は「個人に
閉じた視聴」や「共有体験の減少」といった課題が懸念されます。視聴者間の横のつながりを構築することで、
それらの課題が克服できると考えられます。
□ 公共の広場 の実現
NHKは経営計画の中で「さまざまなメディアで人と人、
人と社会を結ぶ 公共の広場 の役割を果たす」としています。
公共の広場 の形成に求められる「横のつながり」を生みだすため、番組への書き込み機能などを備えたteleda
を構築し、実証実験を行いました。
□進化するサービスプラットフォームの実現
コミュニケーションを介して利用者の要望をいち早く把握し、迅速に新しいサービスを提供できるプラットフォーム
の実現を目指しています。
今後の予定
実証実験の結果を解析して、インターネットを活用した放送局のサービス要件を明確にしていきます。さらに、
外部のインターネットコミュニティーサービスと連携する実験を行うなど、実現に向けた検証を行います。
◆実証実験は、放送文化研究所、視聴者事業局(NHKネットクラブ)と連携して実施しました。
※ VOD:Video On Demand、ネットワーク等を利用した視聴者が観たいときに観たいコンテンツを視聴できるサービス。
従来のサービスモデル
放送、
VOD、
番組Webサイト
新しいサービスモデル
視聴機会の拡大
放送+
ソーシャルサービス+VOD
他者の意見を介した
新しい番組との出会い
他者との
接触機会減少
個人に閉じた視聴
視聴者ー放送局間の縦のつながりを構築
視聴者間の横のつながりを構築(=公共の広場)
インターネットを利用した公共放送サービスモデルの遷移
スーパーハイビジョン
4
次世代TV スーパーハイビジョン
研究開発のこれまでとこれから
展示概要
スーパーハイビジョンは、あたかも自分が映像の中の世界にいるような「臨場感」や実際の
物がそこにあるかのような「実物感」を目指した次世代の放送方式です。このコーナーでは、
スーパーハイビジョンの概要を紹介しています。
特 長
□人間科学面からの研究に基づく映像・音響システム設計
スーパーハイビジョンは、高い臨場感や実物感など、これまでのテレビを越えた映像・音響体験を実現します。
そのため、視聴覚特性や認知などの人間科学面からの研究の積み重ねからスーパーハイビジョンの映像・音響形式
を定めました。
□スーパーハイビジョン放送の実現に向けた幅広い研究開発と国際標準化
スーパーハイビジョンは、ハイビジョンの16倍の画素数を有する超高精細映像と、22.2マルチチャンネルの
3次元音響からなるシステムです。これを実現するため、映像・音響、符号化、伝送の技術開発だけでなく、材料・
デバイスなどの基礎的な研究にも取り組み、基盤技術から応用まで幅広い研究を進めています。スーパーハイビジョン
放送の実現に向けて国際標準化にも取り組んでいます。
□これまでの歩みと今後のロードマップ
超高精細映像の研究は1995年に開始し、2005年の愛知万博での展示や2008年の国際伝送実験など、放送の
実現に向けて研究開発を進めてきました。カメラなどの機材開発のこれまでの歩みと今後のロードマップを紹介
します。
今後の予定
研究開発ロードマップに沿って、スーパーハイビジョンを家庭に届けるための技術開発を進めるとともに、多様な
コンテンツの開発やパブリックビューイングなどのスーパーハイビジョン技術の応用展開にも取り組みます。
目標とするスーパーハイビジョンの仕様
パラメーター
値
空間解像度(水平 × 垂直)
7680 × 4320
映 像
時間解像度(フレーム周波数)
階調(ビット数)
120 Hz
12 bit
音 響
表色系
広色域 RGB
方 式
22.2 チャンネル
サンプル周波数
ビット数
48、96kHz
16、20、24 bit
スーパーハイビジョン
5
家庭で楽しむスーパーハイビジョン
スーパーハイビジョンをより身近に
展示概要
スーパーハイビジョンを家庭で楽しんでいただくための研究を進めています。ここでは、
スーパー
ハイビジョン放送の家庭視聴のイメージを、直視型のスーパーハイビジョンディスプレイと、
ディスプレイ一体型のスピーカーシステムによる3次元音響再生で体験していただきます。
特 長
□直視型超高精細ディスプレイ
スーパーハイビジョンの超高精細映像(画素数7680×4320)を表示する、世界初の85インチ液晶ディスプレイ
によりスーパーハイビジョン映像の素晴らしさをご覧いただきます。直視型のディスプレイの実現により、明るい
室内でも高い臨場感や質感のあるスーパーハイビジョンを好みの視距離で楽しむことができるようになります。
□家庭用3次元音響再生システム
新たに開発したディスプレイと一体のスピーカーシステムにより22.2マルチチャンネル音響を再生します。この
スピーカーシステムと音響信号処理により、音に包み込まれる感じや、画面上やいろいろな方向から音が聞こえる
高臨場感音響の魅力を家庭で体感できます。
□スーパーハイビジョンが変える視聴スタイル
リビングに調和した大型ディスプレイにより、家庭でスーパーハイビジョンの臨場感、実物感、没入感を感じて
いただきます。これまで経験したことのない映像音響体験を家族全員で楽しんだり、
貴重な美術品を間近で見るなど、
好きな見方で楽しむことができます。
今後の予定
スーパーハイビジョン放送の実現を目指して、機器の開発や放送方式の標準化を進めます。家庭視聴に適した
ディスプレイや音響再生技術の研究開発、コンテンツ開発などを進めます。
◆85インチ液晶ディスプレイは、シャープ(株)と共同で開発しました。
◆ディスプレイ一体型のスピーカーシステムは、フォスター電機(株)と共同で開発しました。
スーパーハイビジョンの家庭視聴イメージ
スーパーハイビジョン
6
スーパーハイビジョン単板撮像装置
コンパクトなスーパーハイビジョンカメラの実現に向けて
展示概要
単板カラー撮像方式 ※1によるコンパクトなスーパーハイビジョンカメラの実現を目指した
研究を行っています。今回、カラーフィルターを搭載した3300万画素撮像素子を用いて小型
撮像実験装置を試作し、スーパーハイビジョン映像の撮像実験を行いました。
特 長
□単板カラー撮像方式によるカメラヘッドの小型化
オンチップカラーフィルター※2を用いて、1枚の撮像素子で撮影する方式による撮像装置を開発しました。色分解
プリズムを用いて4枚の撮像素子で撮影する従来方式(4枚画素ずらし撮像方式)に比べ、カメラヘッドを小型化
できる利点があります。
□多様なレンズを利用可能
今回試作した撮像素子の光学サイズは2.5インチで、一眼レフカメラなどに採用されている35ミリフィルムサイズ
のレンズを使用することができます。このため、
安価でバリエーションが豊富な市販カメラのレンズが活用できます。
□4板画素ずらし撮像方式との互換性
ベイヤー配列※3のカラーフィルターを用いることで、従来の800万画素・4板画素ずらし撮像方式のスーパー
ハイビジョンカメラと同じ画素数・信号形式となります。そのため、これまでに開発された4板画素ずらし撮像
方式のスーパーハイビジョン機材をそのまま利用することができます。
今後の予定
実用的なカメラ開発に向けて、感度や色再現特性など撮像素子の性能向上を図ります。また、単板カラー撮像方式
に適した信号処理方法についての検討を進めます。
※1 単板カラー撮像方式:1枚の撮像素子でカラー画像を取得する方式。
※2 オンチップカラーフィルター:撮像素子の画素上に直接形成されたカラーフィルター。
※3 ベイヤー配列:2×2画素を1組として、一つの対角2画素に緑のフィルターを、残りの対角2画素に赤と青のフィルターを1画素ずつ搭載するカラー
フィルター配列の方式。市販のデジタルカメラの多くに採用されている。
4板画素ずらし撮像方式(従来方式)
SHV専用レンズ
B
単板カラー撮像方式
オンチップカラーフィルター
色分解プリズム
G1 R G1 R
B G2 B G2
G1 R G1 R
G1
カラーフィルター配列
3300万画素撮像素子
G2
R
800万画素撮像素子
35mmフィルムカメラ用
レンズ
4板画素ずらし撮像方式と単板カラー撮像方式
スーパーハイビジョン
7
次世代衛星放送に向けた大容量伝送技術
スーパーハイビジョンの衛星放送を目指して
展示概要
スーパーハイビジョン放送の実現に向けて、大容量伝送が可能な次世代の衛星放送方式を研究
しています。 21GHz帯を使用する新しい衛星放送の実現に向けた機器開発、衛星中継器で
ひずみ
生じる歪を補償することにより伝送信号の品質を改善する技術を紹介しています。
特 長
□21GHz帯放送衛星中継器エンジニアリングモデル
21GHz帯衛星放送に割り当てられた600MHzの帯域幅(21.4-22.0GHz)を2分割することを想定し、
約300MHzの帯域幅を利用して信号を伝送する放送衛星搭載機器を研究しています。過酷な宇宙環境における
機器の機械性能および電気性能を地上で検証するためのエンジニアリングモデルを開発しています。
ひずみ
□衛星中継器歪補償装置
衛星中継器を通過した伝送信号は中継器の伝送特性に起因する歪が発生します。予め中継器で発生する歪ベクトル
を推定し、その逆ベクトルをベースバンドで加えてから変調することにより歪を補償する装置を開発しました。
歪補償はアップリンク地球局に置いた補償装置で行います。この装置を使用することで、伝送信号の品質を改善する
ことができます。
今後の予定
2020年のスーパーハイビジョン試験放送を目指し、21GHz帯衛星放送システムの開発を進めていきます。
送信信号(アップリンク)
Q
送受信共用
鏡面修整反射鏡アンテナ
Q
歪補償装置
なし
ダイプレクサ
受信信号(ダウンリンク)
分波器
コマンド テレメトリ
信号
信号
受信器
入力
フィルター
増幅器
I
合波器
出力
フィルター
アップリンク ダウンリンク
18GHz帯
I
21GHz帯
Q
Q
歪補償装置
あり
I
中継器による
歪が発生
ひずみ
21GHz帯放送衛星中継器エンジニアリングモデル
衛星中継器歪補償装置による歪改善
I
スーパーハイビジョン
8
次世代地上放送に向けた大容量伝送技術
地上放送のさらなる進化を目指して
展示概要
地上放送のさらなる進化を目指して、次世代地上放送に向けた伝送技術の研究を行っています。
固定受信向けの技術ではスーパーハイビジョンなどの大容量サービスの実現を、移動受信向けの
技術ではハイビジョンの安定受信を目指しています。
特 長
□固定受信向け大容量伝送技術
大容量伝送を実現する上での課題を明らかにするため、1つのキャリアシンボルで12ビットの情報を伝送する
4096QAM※1-OFDM※2の偏波MIMO※3伝送に挑戦しました。また、変調多値数を増やすことで上昇する所要
C/Nを少しでも低減するため、誤り訂正にLDPC※4符号を適用しました。
□移動受信向け高信頼伝送技術
送信アンテナ2本、受信アンテナ2本を使用する2×2のMIMOにおいて時空間符号の一種であるSFBC※5を適用
することにより、ハイビジョン放送1番組を、受信環境が時々刻々と変化する携帯・移動体での受信においても、
より安定に受信できる高耐性な伝送技術を展示しています。
今後の予定
雑音や歪に対する耐性をより一層高める技術を開発するとともに、変調多値数を含め、実際に放送システムを構築
することが可能な伝送パラメーターの検討を進めていきます。
※1
※2
※3
※4
※5
Q A M:Quadrature Amplitude Modulation、直交振幅変調
OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing、直交周波数分割多重
MIMO:Multiple-Input Multiple-Output、マルチ入力・マルチ出力
LDPC:Low Density Parity Check 符号、低密度パリティー検査符号
SFBC:Space Frequency Block Code、空間周波数ブロック符号
移動体受信
固定受信向けに
スーパーハイビジョンなどの
大容量サービス
携帯、移動体受信端末でも
ハイビジョンの安定受信
携帯受信
スーパーハイビジョン
9
スーパーハイビジョンシアター
コンパクトになったスーパーハイビジョン番組制作
展示概要
スーパーハイビジョン番組を機動的かつ効率的に制作するための機器開発を進めています。
今回は、コンパクトで長時間収録可能な記録装置と実用型カメラを用いたスーパーハイビジョン
海外ロケと、22.2マルチチャンネル音響収音したオーケストラ音楽による番組を上映しています。
特 長
□コンパクトなスーパーハイビジョン番組制作設備・表示装置
2時間記録可能な小型記録再生装置など機動性の高い番組制作設備を開発しました。また、設置調整が容易な
上映設備(展示番号20)を開発し、スーパーハイビジョンのパブリックビューイングの実施を容易にしました。
□スーパーハイビジョン番組制作技術
スーパーハイビジョンの番組制作では、膨大な映像データ(例えば10分番組の場合、現在使用している信号形式では
約1.5TB)の加工や並べ替えと、多チャンネル音響信号による三次元音響操作を行う必要があります。このため、
自動映像編集装置、22.2マルチチャンネル音響制作システムなどを開発して、効率的に制作を進めています。
□多彩で魅力的な番組の制作
スーパーハイビジョンの特徴を引き出すためには、様々な番組を制作して、それらによる観客への心理効果を
調べていく必要があります。今までに、自然、スポーツ、祭り、コンサートなどの番組を制作してきました。
これからもパブリックビューイングなどを目指し番組制作を続けていきます。
今後の予定
大規模スポーツイベントなどでのパブリックビューイングのほかに、手術撮影などの医療、所蔵品アーカイブなどの
美術を始めとした様々な応用検討を進めていきます。
10m
映像
フル解像度液晶プロジェクター
画素数:7680×4320
光出力:9000ルーメン
コントラスト比:5000対1
5.6m
スクリーン:対角450インチ
ゲイン 約1.5
音響
22.2マルチチャンネル
スーパーハイビジョンシアターの概要
デジタル放送・放送通信連携
10
テレビ視聴インターフェースUTANの提案
視聴状況に合わせて番組に関連した情報を提供
展示概要
テレビをよりやさしく便利にするテレビ視聴インターフェースUTAN※の研究を進めています。
UTANは、誰がどのようにどの番組を見ているかの視聴状況を推定して、状況に合った情報
を提示することにより、テレビ視聴をきっかけとして多様なコンテンツを提供します。
特 長
□誰がテレビを見ているかを認識して情報提示用タブレット端末の表示を切り替え
わかりやすく有用な情報を提示するため、UTANは顔認識技術によって、テレビを家族で見ているのか、子供が
一人で見ているのかなどを識別し、その視聴者の好み等に合わせて、端末に提示する情報の内容を切り替える
ことができます。
□興味を持って見ているかどうかを手がかりに番組に関連した情報を提供
番組の視聴中や視聴後に、興味のある場面の関連情報が簡単に取得できると便利です。UTANは、視聴者の行動や
顔表情の変化を検出することによって、興味を持ったと思われる番組の場面を識別して、関連情報の提供に利用
します。
今後の予定
テレビをもっとやさしく便利に活用できるように、視聴者とその周辺の状況を推定して端末の振る舞いや表示を
適応させる、テレビ視聴インターフェースの研究を進めます。
※ UTAN:User Technology Assisted Navigation
視聴状況の推定
各種認識
顔
誰がどのようにテレビを
見ているのか推定
・複数の視聴者も識別可能
・視聴者の興味の状態を推定
表情
動作
視聴中のユーザー
音量
Aさん
Bさん
視聴状況に応じた
見やすい情報提示・推薦
・視聴者に合わせた内容画面の構成
・興味を持っている場面に関連した
情報を提示
Aさんのお薦め
興味区間番組情報
サッカーブラジル戦
2010×月×日放送
韓国食べ物紀行
2011×月×日放送予定
A選手:○×登場
DF得意
B選手:1990年生まれ
GK △所属
テレビと
タブレット端末
の連携
タブレット
テレビ
テレビ視聴インターフェースUTANの仕組み
インテグラル立体テレビ
11
インテグラル立体テレビ
自然で魅力のある立体映像を目指して
展示概要
将来の立体テレビを目指し、インテグラル立体方式※1の研究を進めています。スーパーハイ
ビジョンの技術を基本にさらに画質を改善した表示装置、および多視点映像からインテグラル
立体コンテンツを生成する技術を展示しています。
特 長
□メガネのいらない立体テレビ
特殊なメガネが不要で、観察者が左右だけでなく前後、上下のどの方向に動いても、その位置に応じた立体像を
見ることができます。
□走査線8000本級映像技術を応用
※2
フル解像度スーパーハイビジョン用の映像素子に画素ずらし技術
を適用した走査線8000本級映像に、立体像
ひずみ
を見やすくするための信号処理(空間高域成分の補償、歪の補正など)を組み合わせることにより、ぼやけを改善し、
画質を向上させました。
□多視点映像からのインテグラル立体コンテンツ生成
多視点映像から被写体の3次元モデル※3を生成し、そのモデルからインテグラル立体コンテンツを生成する技術を
開発しました。
今後の予定
さらなる画質向上に向けて、撮影、表示技術の改善、コンテンツ生成技術の高度化など、実用化に向けた研究を
進めます。
◆この表示装置の開発は、JVC・ケンウッド・ホールディングス(株)と共同で進めています。
◆この研究の一部は、(独)情報通信研究機構(NICT)の委託研究「多並列・像再生型立体テレビシステムの
研究開発」および「革新的三次元映像技術による超臨場感コミュニケーション技術の研究開発」、文部科学省
研究開発事業「デジタル・ミュージアムの展開に向けた実証実験システムの研究開発」を受託して進めています。
※1 インテグラル立体方式:微小レンズ群からなるレンズアレーを撮影・表示の双方に用いて立体像を再現する方式。
※2 画素ずらし技術:撮像および表示において、2枚の緑用の素子を斜め方向に1/2画素ずらして合成することにより、水平および垂直解像度を高める技術。
※3 3次元モデル:複数のカメラで被写体を撮影し、その映像から生成した被写体の形状情報と色情報で構成される3次元データ。
スクリーン 表示用レンズアレー
撮影用レンズアレー
走査線8000本級
カメラ
走査線8000本級
プロジェクター
被写体
再生立体像
展示部分
インテグラル立体テレビシステム
人にやさしい放送
12
用例翻訳による手話CG
手話放送番組の拡充を目指して
展示概要
手話放送番組の拡充を目指し、
日本語を手話に変換し、
手話CG(コンピューターグラフィックス)
を生成する技術の基礎研究を行っています。日本語を入力すると対訳用例を使って手話の文に
変換し、これを表す手話CGを自動生成するシステムを展示しています。
特 長
□対訳用例による日本語から手話への変換技術
手話は日本語とは異なった言語ですので、日本語を手話に翻訳するためには語順の変換が必要となります。日本語
と手話の対訳用例を使うことで語順の変換を行い、手話に自動翻訳するシステムを開発しました。
□手話の単語間をつなぐCG生成技術
手話の文をCGで制作するためには手話単語間の遷移動作「わたり」を生成する必要があります。手話単語の
モーションデータから「わたり」を自動合成するCG技術を開発するとともに、手話のさまざまな動作を表現
できるようにTVML※を拡張しました。
今後の予定
多様な日本語を翻訳するために、文より小さい単位である節や句で翻訳し文として再構成する技術や、文として
より自然な手話CGを生成する技術の開発を進めていきます。
◆この研究は、工学院大学と共同で進めています。
※ TVML:TV program Making Language、NHK放送技術研究所が開発した番組制作記述言語、http://www.nhk.or.jp/strl/tvml/
用例を使って日本語の文を手話CGに翻訳する例
人にやさしい放送
13
視覚障害者向けデジタル放送受信機
放送のバリアフリーを目指して
展示概要
視覚に障害のある人がデジタル放送を楽しめるバリアフリーの実現を目指した情報提示の研究
を行っています。ユーザーがデータ放送やEPG※の情報に容易にアクセスし、音声や点字で
内容を理解できる、セットトップボックス(STB)型の受信提示装置を開発しました。
特 長
□障害に適応した情報提示とユーザビリティー
障害のタイプと程度に応じ、音声や点字・指点字、拡大・反転表示の提示方法を選択できます。また、ナビゲーション
ガイドやサイン音・振動で情報へのアクセスやテレビの操作をサポートします。
□盲ろう者向けに字幕放送を点字表示
ニュースや番組の字幕放送を点字で楽しめます。ユーザーは触読速度に応じて、リアルタイムに読む、あるいはデータ
を蓄積して読む、の二つの方法を選択することができます。
□統一的なユーザーインターフェースで操作できる多機能なSTB型受信提示装置
実用を目指したSTB型の受信提示装置です。少ないキーでテレビを操作したり設定できるソフトリモコン機能や、
録画再生を簡単にできる機能があります。これらの操作のインターフェースは、データ放送やEPGへのアクセス
と共通にしました。これにより、ユーザーは負担なく受信機の機能を利用することができます。
今後の予定
今後、試作した装置の実用化を推進するとともに、触覚や力覚により図や立体形状を表示する技術など未来の
「触れるテレビ」に向けた研究を進めていきます。
◆この研究の一部は、
(独)情報通信研究機構(NICT)の委託研究「視覚障害者向けマルチメディアブラウジング
技術の研究開発」を東大と受託して進めました。
※ EPG:Electronic Program Guide、電子番組表
メディア・コンテンツ
情報の提示(誰にも)
字幕放送
字幕データ
点字・指点字装置
音声合成
拡大・反転表示
盲ろうの人に
弱視の人に
全盲の人に
表
データ放送
EPG
操作・アクセス(やさしく)
弱視向け
表示切替
図・グラフ
テキスト
STB型
受信装置
番組データ
ソフトリモコン
音声切替 録画操作
CH選択
テレビの
各種設定
音量調整
視覚に障害のある人のための情報バリアフリー受信提示システムの仕組み
ガイド
情報探索支援
サイン音
振動
人にやさしい放送
14
やさしい日本語によるニュースサービス
外国人住民へのサービスに向けて
展示概要
日常会話はできても、ニュースの日本語は難しいと感じる外国人住民は多くいます。ここでは、
このような人々への新たなサービスとして「やさしい日本語」で書き換えたニュースをテキスト
で提供するための研究を紹介しています。
特 長
□やさしい日本語ニュースの作り方と特徴
できるだけ日本語初級終了レベル※程度の文法と単語を使って書き換えます。ただし、地名・人名・専門用語・頻度
の高い単語などはそのまま使います。このような書き換えを行うことで外国人にとってわかりやすく、日本人に
とってほとんど違和感のない自然なニュースとなるようにします。
□サービスの考え方
書き換えたニュースに残っている地名・人名・専門用語などの難しい単語については、意味をやさしく説明した
辞書にまとめて提供します。これにより、難しい単語の意味を確認しながら、ニュースが読めるようになります。
また、漢字にはふりがなをつけて提供します。
今後の予定
やさしい日本語への書き換えを支援するツールを開発して、効率的な書き換え作業を実現します。
※ 初級終了レベル:日本語学習者が受験する「日本語能力試験(1∼4級)」の3級レベル
に ほ ん ご
やさしい日本語ニュース
きしょうちょう
し
おお
ふんせき
気象庁からのお知らせです。大きな噴石
と
やさしい
日本語ニュースは
分かりやすい!
きけん
が飛んでくる危険があります。
か こ う
い な い
ばしょ
はい
火口から4キロ以内の場所には入らない
ようにしてください。
じ し ょ
ふんせき
かざん
と
いし
〈辞書〉噴石:火山から飛んでくる石
文が長くない!
やさしい日本語
漢字には
ふりがなが
付いている!
分かりにくい語には
説明がある!
デジタル放送・放送通信連携
15
P2P型ライブ映像配信技術
インターネットでの低コスト・大規模な配信を目指して
展示概要
通信網を利用して大規模かつ安定な映像配信を低コストで実現することを目指して、ピアツーピア
技術※を用いたライブ配信技術を研究しています。個々の端末の送受信状態やネットワーク環境
を考慮して安定性の高い配信経路を構築する技術を開発しました。
特 長
□メッシュ型の配信経路構築による耐障害性の向上
複数の端末と接続してメッシュ型の配信経路を構築することにより、経路の途中に位置する端末が突然視聴を
止めてしまっても、途切れのない安定した配信を実現します。
□端末が接続するネットワーク環境を考慮した配信経路構築による安定性の向上
接続する回線の上り帯域が大きい端末ほど配信経路の上位に配置し、多くの端末へデータを中継するとともに、
個々の端末の配信状態に応じて自律的に配信経路を組み替えることにより大規模かつ安定性の高い配信を実現します。
□公開イベントのライブ配信への活用
開発したシステムは、NHK学校音楽コンクール(四国大会)の動画配信に利用されました。今年の技研公開の講演
や研究発表も、本システムを用いてライブ配信を実施しています。パソコンのWebブラウザ上で、新たなソフトウェア
をインストールすることなく動作します。下記のURLにアクセスしてご利用いただけます。
http://www.nhk.or.jp/strl/open2011/index.html
今後の予定
多様な放送通信連携サービスの実現に向けて、さらなる大規模かつ安定性の高い番組配信技術の研究開発を進めて
いきます。
※ ピアツーピア(P2P)技術:端末間で信号を中継する形でネットワークを構成する技術
映像データ
イベント会場
配信サーバー
インターネット
視聴端末
P2Pライブ配信
デジタル放送・放送通信連携
16
次世代CAS技術
ダウンロードによるCAS機能の向上
展示概要
より安全で柔軟性があり、かつ利便性にも配慮した次世代のCAS※ 技術を研究しています。
今回、放送や通信経由でCASのセキュリティー機能(CASプログラム)を安全に追加・更新
できるダウンローダブルCAS技術を開発しました。
特 長
□ICカードのいらないダウンローダブルCAS
開発した方式を受信機のLSIに組み込むことで、これまでのようなICカードが不要になるとともに、安全性を
維持したままダウンロードできます。
□さまざまなサービスモデルに対応可能なCAS
受信機の中に異なる複数のCASプログラムを持つことができ、さまざまなビジネス要件に対応することができます。
今後の予定
さまざまな実際のLSIに組み込めるように研究を進めるとともに、Hybridcast™などの認証機能としての展開を
検討していきます。
※ CAS:Conditional Access System、アクセス制御
CAS
CAS
プログラム
プログラム
1
2
放送局
放送によるダウンロード
受信機のLSIにダウンロード
CAS
CAS
プログラム
プログラム
2
1
CAS
プログラム
1
インターネット
通信によるダウンロード
CASプログラム
サーバー
ICカード不要
ダウンローダブルCAS技術
高度コンテンツ制作
17
コネクティッド スタジオ
あなたもCGキャラクターで簡単に番組に出演
展示概要
TVML※によるCG映像コンテンツ制作を中心に、放送と通信が連携した新しい番組サービスの
研究をしています。ここでは視聴者の方が番組を視聴しつつ、手軽に自分の代わりのCG
キャラクターで、その番組への出演を体験できるサービスを展示しています。
特 長
□視聴者端末からの入力情報をサーバー側でリアルタイムに番組内で映像化
テキストから映像を生成するTVML技術を使って、多人数の視聴ユーザーのコメントや反応を、各々の視聴
ユーザーの代わりのCG出演者の発言や動きとして、サーバー側でリアルタイムに番組映像化して放送します。
これにより、視聴ユーザーによる番組への仮想的な出演を実現しています。
□同一番組の異なる視点からの映像生成
サーバーは、サーバー側で生成された共通の番組映像の他に、番組と連携したユーザーごとの映像を生成するための
個別映像生成情報を配信します。ユーザー端末では、この情報を用いて、ユーザーの好みの視点による個別映像を
生成することもできます。
今後の予定
映像生成技術の高機能化を進め、多くの人が映像コンテンツを使って自由にコミュニケーションできるサービスの
実用化に向けて研究していきます。
※ TVML:TV program Making Language、NHK放送技術研究所が開発した番組制作記述言語、http://www.nhk.or.jp/strl/tvml/
スタジオ映像
ユーザーがバーチャル出演する
全ユーザー共通の番組映像を生成
・コメント
・反応
ネットワーク
・番組映像
・個別映像生成情報
個別映像
番組映像
インターネットを介した多人数バーチャル番組出演サービス
スーパーハイビジョン
18
22.2マルチチャンネル音響再生技術
前方スピーカーだけで高い臨場感を再現
展示概要
ディスプレイと一体型のスピーカーにより、家庭で22.2マルチチャンネル音響を手軽に楽しむ
ための研究を行っています。ここでは、スピーカーアレーと音の方向感を再現する信号処理を
組み合わせ、3次元音響再生を行う技術を紹介しています。
特 長
□直視型ディスプレイ一体型スピーカー
家庭で22.2マルチチャンネル音響を再生するためのディスプレイ一体型スピーカーを開発しました。これにより、
あらゆる方向からの音と広がり感を再現し、高い臨場感のスーパーハイビジョン番組を手軽に楽しむことができます。
□スピーカーアレーによる前方チャンネル再生
多数のスピーカーユニットで構成されたスピーカーアレーにより、画面上の任意の位置からの音を再生します。
□音の伝搬特性を利用する側方・後方チャンネル再生
音の伝搬特性を模擬する信号処理により、前方のスピーカーだけで横や後ろからの音を再生します。
今後の予定
22.2マルチチャンネル音響を、家庭の環境にあわせて様々な方式で楽しめるよう、音の再生技術や信号処理方式
を開発していきます。リスニングエリアの拡大や音質改善など、スピーカーアレーによる3次元音響再生技術の
向上を目指して研究を進めていきます。
◆この研究は、フォスター電機(株)と共同で進めています。
ディスプレイ一体型
スピーカー
あらゆる方向からの音と
広がり感を再現
直視型ディスプレイ一体型スピーカー
スーパーハイビジョン
19
スーパーハイビジョン用広ダイナミックレンジプロジェクター
スーパーハイビジョンの高質感視聴
展示概要
スーパーハイビジョンのフル解像度(7680×4320画素)と、非常に広いダイナミックレンジ
(約110万:1)を持つプロジェクターです。今回、質感豊かな映像を22.2マルチチャンネル音響
とともにご覧いただきます。
特 長
□広ダイナミックレンジ・高画質
色変調された光を輝度用素子に投射して、さらに輝度変調させて出力する2重変調方式により、黒をより暗く再現
できます。その結果およそ110万:1の非常に広いダイナミックレンジを実現しています。また、投射レンズを改
良し解像度特性を向上させました。
□人間の視覚特性に基づく構成
人間の視覚特性では輝度に比較して色の解像度は低いため、第1変調部のRGB用素子は3840×2160画素とし
第2変調部の輝度用素子をスーパーハイビジョンの画素数7680×4320画素にすることで、効率的にスーパー
ハイビジョン映像を表示します。
□信号処理装置のハードウエア化
2重変調方式では、入力映像の輝度信号を2分割し、それぞれの変調部用に信号を生成する複雑な処理が必要です。
これまではソフトウエアによる事前処理が必要でしたが、この処理を行うハードウエアを開発することでリアル
タイム表示を実現しました。
今後の予定
スーパーハイビジョン映像の魅力を最大限に引き出す表示装置として、更なる画質改善を目指します。
第1変調部(色変調)
第2変調部(輝度変調)
R用素子
白色光
色分解
+
G用素子
B用素子
スーパー
ハイビジョン映像
(7680×4320画素)
信号処理
装置
リレー
レンズ
輝度用素子
輝度変調信号
色変調信号
(7680×4320画素)
ハードディスク (3840×2160画素)
ハードディスク
レコーダー
レコーダー
広ダイナミックレンジプロジェクターの構成
投射
レンズ
スーパーハイビジョン
20
新型スーパーハイビジョンプロジェクター
フル解像度並みの画質をコンパクトに実現
展示概要
スーパーハイビジョンの実用化に向け、さまざまな機器開発を進めています。ここでは、フル
解像度並みの画質を、これまでよりも低コストでコンパクトに実現したスーパーハイビジョン
プロジェクターを展示しています。
特 長
□フル解像度並みの画質
800万画素の表示素子をR,G,B各1枚の計3枚と新開発のe-Shiftデバイス※ を用いて、R,G,Bの3原色すべてに
おいて画素ずらしを行うことでフル解像度並みの画質を実現しました。
□低コストでコンパクト
すでに発売されている4Kプロジェクターに機能を追加して実現することにより、低コストでコンパクトな
プロジェクターを実現しました。
今後の予定
2020年スーパーハイビジョンの試験放送を実現するため、より実用的なスーパーハイビジョン機器の研究開発を
進めていきます。
◆本プロジェクターは、
(財)NHKエンジニアリングサービス、JVCケンウッドホールディングス(株)と共同で
開発しました。
※ e‒Shiftデバイス:画像シフト切り替え電気信号により光の屈折率が変化するデバイス
項 目
内 容
解像度
7680 x 4320 画素相当
ダイナミックレンジ
光出力
10000 : 1
3000 ANSI lumen
本体寸法
(W)660 x (H)342 x (D)783mm
本体重量
約 50.5kg
(投射レンズ含まず)
新型スーパーハイビジョンプロジェクター
高度コンテンツ制作
21
撮影情報を利用した映像制作
簡易な指示で高度な映像加工を目指して
展示概要
撮影する被写体の様々な情報(撮影情報※1)を取得し利用することで、高度な映像加工を簡単な
操作で実現できる映像制作手法の研究を進めています。ここでは、これまでに開発した映像加工
ツールと、撮影情報の一つであるカメラ姿勢情報の取得手法を紹介しています。
特 長
□被写体の様々な情報を利用し映像加工をサポート
撮影情報を利用することで、加工対象を被写体単位で指定するなどの操作を簡単にできます。また、映像内の不要な
被写体を高品質に消去するなどの高度な加工も可能になります。
□データ形式などの共通化による一元的管理と容易な外部連携
加工ツールはメタデータ制作フレームワーク※2に準拠した映像制作フレームワーク上で動作しています。このことに
より、素材や映像加工に関連する情報の管理や、別のシステムとの連携を容易に行うことができます。また、映像
処理モジュールは組み合わせてブロック化でき、煩雑な映像加工がわずかな指示で可能になります。
□高精度なカメラ姿勢推定
特殊なセンサーを利用したり撮影対象に目印を置くことなくカメラの姿勢を高精度に推定できます。これにより、
例えばカメラが移動している映像に違和感なくCGを合成できるようになります。
今後の予定
被写体表面の質感や照明条件など多様な撮影情報を効率よく取得する手法の開発や、各処理の高速化、自動化を
進め、誰にでも使えるツールとして実用化を目指します。
※1 撮影情報:例えば、被写体の形状や表面模様、顔位置、カメラの姿勢情報など。
※2 メタデータ制作フレームワーク:NHK放送技術研究所が提案している映像コンテンツに関する様々な情報を統一的に扱える共通基盤。
http://www.nhk.or.jp./strl/mpf/
簡単な指示で
高度な加工!
映像加工の
知識が不要!
消去処理ブロック
仮想物合成ブロック
別のシステムとの
連携が容易!
吹き出し合成ブロック
撮影情報※1
今日は私の
コレクションを
紹介します。 撮影映像
素材
この辺は不要だから
消去しようかな
ちょっと殺風景だから
CGで飾りつけよう
撮影情報を利用した映像制作の流れ
ちょっと吹き出しで
説明を追加したいな
加工映像が完成!
映像処理ブロック
加工手順に
もとづき構成
映像制作フレームワーク
(共通基盤)
高度コンテンツ制作
22
移動中継用MIMO受信システム
高画質で途切れにくい中継を実現
展示概要
ロードレースなどの大規模移動中継に利用する無線伝送システムの研究を進めています。
本MIMO※受信システムを用いることで、中継コースの周辺に設置された複数の基地局の受信
信号を合成できるようになり、従来よりも途切れにくい映像伝送が実現できます。
特 長
□1台の受信機で最大16基地局の受信エリアをカバー
従来の移動中継で利用される800MHz帯の電波に比べて、
ギガヘルツ帯(1.2GHz帯、
2.3GHz帯、
6 7GHz帯など)
の電波は見通し外環境における伝搬損失が大きく、途切れない安定した移動中継が困難です。今回、最大16基地局
で受信した信号をそれぞれ光ファイバーで集め、選択・合成することで回線信頼性を飛躍的に向上できる受信装置
を試作しました。
□最大160kmの経路差を補正し16ブランチから最適な4ブランチを選択して合成
各基地局(ブランチ)の受信信号を受信装置まで集める光ファイバーの長さは大きく異なります。また、送信局の
移動とともに無線区間の伝搬経路長も時々刻々と変化します。経路長差が大きなブランチの信号をそのまま合成
すると受信特性が劣化するため、今回開発した装置は、経路長差に相当する遅延時間差を補正した後に、最適な
4ブランチを選択して合成します。
□小型受信高周波部とIF帯5波光波長多重伝送装置の試作
現行FPUの高周波部と同程度の性能をもつ小型受信高周波部と、最大5つのIF信号を1本の光ファイバーで伝送
できるIF帯5波光波長多重伝送装置を試作しました。これにより、光回線を新設せず低コストで受信ポイントを
増やすことができます。
今後の予定
ギガヘルツ帯の電波を用いたフィールド実験を実施し、本MIMO受信システムによる回線信頼性の向上の効果を
評価します。
※ MIMO:Multiple-Input Multiple-Output、マルチ入力・マルチ出力
受信アンテナ
送信局(移動中継車)
D/C
D/C
E/O
E/O
D/C
送信局
(カメラバイク)
スイッチングセンター
E/O
O/E
D/C
E/O
O/E
O/E
受信基地局
O/E
互いに異なる長さの光ファイバー(数∼数十km)
D/C
小型受信高周波部
E/O
IF帯5波光波長多重伝送装置
MIMO受信の仕組み
16入力基地局
MIMO受信装置
高度コンテンツ制作
23
3次元ミリ波イメージング技術
光では見えないモノを見るカメラ
展示概要
煙、布、木材などの遮へい物によって隠された被写体を、電波を利用して撮影するミリ波
イメージング技術の研究を進めています。ミリ波を送受信して被写体の3次元空間上の位置
情報を取得し、リアルタイムに可視化することができます。
特 長
□ミリ波電波を利用して3次元の位置情報を取得
アンテナのビームを被写体に向けて上下左右に電子的に走査しながら、60GHz帯のミリ波を送受信します。
被写体からの反射波の到達時間を解析することによって、被写体の3次元空間上の位置情報が得られます。
□電子走査アンテナを送受信で共用して画質を改善
電子走査アンテナを送信と受信で共用することにより、送信信号の不要な方向への放射を抑え、不要な方向からの
反射波の受信レベルを大幅に低減しました。これによって、画像に生じるノイズを低減し、被写体の輪郭がより
鮮明に見えるようになりました。
今後の予定
評価実験を進め、放送番組での使用を想定した実用的なシステムの開発に取り組みます。
被写体
ビームを走査しながら
ミリ波電波を送受信
送受共用アンテナ
3次元データ
被写体の3次元空間上の
位置を解析、表示
遮へい物
(ミリ波電波は透過)
イメージング装置
3次元ミリ波イメージング技術
高度コンテンツ制作
24
ミリ波モバイルカメラ
現場で活躍する低遅延・高画質ワイヤレスカメラ
展示概要
ケーブル接続のハイビジョンカメラと同等の性能・機能を持つワイヤレスカメラの研究を
進めています。42GHz帯電波とMIMO※1技術を用いて、ハイビジョン映像を高画質・低遅延で
無線伝送し、さらに精密なカメラ遠隔制御が可能なワイヤレスカメラを開発しました。
特 長
□ミリ波(42GHz帯)とMIMO技術を用いた、ハイビジョン映像の高画質・低遅延伝送
42GHz帯電波とMIMO技術を用いることにより、1フレーム以下の遅延で最大160Mbpsの圧縮ハイビジョン映像
の無線伝送が可能です。また、100mW級のOFDM信号出力が可能な42GHz帯送信機を開発し、数百メートルの
範囲を途切れずに移動撮影できるようになりました。
□本線、送り返し伝送によるワイヤレスカメラの高機能化
カメラの撮影映像を伝送する本線伝送(カメラから副調整室※2へ)に加え、カメラマンが確認するオンエア映像や
カメラの遠隔制御の信号を伝送する送り返し伝送(副調整室からカメラへ)を42GHz帯電波で実現しました。
□実用化に向けて開発した周辺装置
本線、送り返し伝送を実現する小型の42GHz帯送受信装置、全ての送受信信号を光信号に変換して多重伝送
することでケーブルの引き回しが簡略化できる光変換装置、電波の受信状況や信号の復調特性を視覚的に表示する
回線品質モニターなどの周辺装置を開発し、番組撮影で簡単にミリ波モバイルカメラを使用できるような工夫を
行いました。
今後の予定
非圧縮ハイビジョン・圧縮スーパーハイビジョン映像を伝送する大容量データの途切れない無線伝送技術を研究し、
スタジオ内の全ての撮影カメラのワイヤレス化を目指します。
※1 MIMO:Multiple-Input Multiple-Output、マルチ入力・マルチ出力
※2 副調整室:スタジオの撮影映像・音声・照明を放送用に調整したり、スタジオ内のスタッフに指示を出すなど、撮影全体のコントロールを行う部屋
光波長
多重
光波長
多重
送受信
光変換
光変換
送受信
送受信
送受信
光変換
光変換
副調整室※2
光波長多重 光波長多重
送り返し変調
本線復調#1
本線復調#2
ステージ上
モバイルカメラ
モバイルカメラ
MIMO受信の仕組み
NES
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NHK技術の活用と実用化開発の紹介
社会に貢献するNHKの技術
展示概要
(財)NHKエンジニアリングサービスは、NHKの研究開発の成果である特許や技術ノウハウの
紹介と、放送技術の社会還元を目指した実用化研究開発を行っています。NHKの特許技術や
実用化開発中の機器を展示し広く利用いただける技術を紹介しています。
展示項目
□いろいろな映像技術・システム
●スーパーハイビジョンをより身近にする「新型スーパーハイビジョンプロジェクター」※1(展示番号20)
●宇宙や深海などの暗闇もくっきりと映す「超高感度ハイビジョンEM-CCDカメラ」
●高度な映像処理技術を用いた「ジオラマ風3D空中散歩」※2
●「JPEG2000-4K高精細映像」の野外中継を可能にする「1.5Gbps級無線伝送技術」
●コンテンツの魅力を引き出す「映像の高精細化技術」
●高速・大容量化を実現、長寿命な「アーカイブ用薄型光ディスクシステム」
□さまざまな分野で活用が期待される技術
●いつでもどこでも使っていただくための「手軽な話速変換技術」※3
□特許・ノウハウの技術移転
●放送技術で、社会に貢献
NHKが保有する特許・技術ノウハウのご利用についてのお問い合わせ先
財団法人NHKエンジニアリングサービス
〒157-8540 東京都世田谷区砧1-10-11 TEL(03)5494-2400 FAX(03)5494-2152
URL:http://www.nes.or.jp/
※1 本プロジェクターはNHK、(財)NHKエンジニアリングサービス、JVCケンウッドホールディングス(株)と共同で開発しました。
※2 コンテンツは(株)NHKエンタープライズの提供です。
※3 この研究開発の一部は、産業技術大学院大学と共同で進めています。アプリケーションの研究開発の一部は、(独)情報通信研究機構(NICT)の「高齢者・
チャレンジド向け通信・放送サービス充実研究開発助成金」の交付を受けて進めました。iPhoneアプリの開発は(株)NHK出版と共同で進めています。
新型スーパーハイビジョン
超高感度ハイビジョン
プロジェクター
EM-CCDカメラ
ジオラマ風3D空中散歩
高度コンテンツ制作
26
超解像技術を利用した画像復元型符号化
高品質・超高圧縮を目指して
展示概要
将来の超高精細映像の符号化を目指し、超解像技術※1を用いた画像復元型符号化の研究を
進めています。この符号化方式では伝送帯域や絵柄に応じて画像を縮小変換してからAVC/
H.264のような従来型の符号化を行い、復号後に超解像により画像を復元します。
特 長
□絵柄に応じて冗長な画素を間引く画像縮小技術
伝送帯域や絵柄に応じて入力映像を縮小変換します。縮小画像は従来型の符号化で圧縮します。高精細な映像を
そのまま圧縮する場合よりも、無理のない圧縮率で符号化できるため画質劣化を抑えることができます。
□縮小画像を元の画像に戻す超解像復元技術
ひずみ
画像の動きや折り返し歪※2に加え、送信側から送られる補助情報を手掛かりとして画像を復元します。画像復元型
符号化の構成に適した超解像法を新たに開発しました。
□画像を高品質化する最適化制御技術
高品質な復元映像を得るため、送信側で最適な画像縮小や超解像復元のパラメーターを求めます。パラメーターは
補助情報として受信側へ伝送し、高精度な超解像復元を実現します。
今後の予定
画像縮小や超解像復元などの要素技術や最適化制御技術を改良することで一層の画質向上を図り、スーパー
ハイビジョン映像符号化としての利用を目指します。
※1 超解像技術:画像の解像度を高める技術
※2 折り返し歪:画素間隔よりも細かい絵柄が、偽の模様や輪郭として現れる歪
画像復元型符号化
無理のない圧縮率
画像縮小
入力映像
AVC/H.264
符号化
縮小画像
AVC/H.264
復号
映像情報
超解像復元
復号縮小画像
復元映像
補助情報
映像が破たん
従来型の符号化
極端な圧縮率
AVC/H.264
符号化
入力映像
AVC/H.264
復号
映像情報
画像復元型符号化の構成
復号映像
高度コンテンツ制作
27
番組映像検索システム
さまざまな情報を使って番組やシーンを検索・閲覧
展示概要
番組制作者の多様な要望に応えることを目的として、アーカイブスなどの大量の映像から所望の
番組やシーンを検索・閲覧するシステムを研究しています。ここでは、進めている画像解析技術
および言語解析技術を活用した、多様な検索・閲覧手法を紹介しています。
特 長
□番組制作時のさまざまな検索要求に対応
番組制作時には、過去に放送した番組から、特定の人物や物、場所、記憶に残るイメージなどを手がかりにシーンを
検索したり、構想を練っている番組と関連が深い事柄を取り上げた番組やシーンを検索したりして、構成を練り
上げます。本システムは、このような作業を支援します。
□顔、文字、構図などさまざまな画像の特徴を組み合わせた検索
人物検索に有用な顔の有無や出現位置、番組内で重要な被写体を紹介する際の画面上に表示され文字情報の有無、
シーンの構図やカメラワークなどを組み合わせて指定することで、多様な検索機能を提供します。
□番組概要、字幕などさまざまなテキスト情報を利用した検索
番組に付随する字幕情報を利用した映像検索のほか、番組説明文に含まれる、内容を特徴づける重要な固有名詞
(人名や地名)や複合語(複数の名詞からなる語)を用いた検索で、同様な過去の番組を探し出します。
今後の予定
各手法による検索精度の向上とともに、使いやすさに関するユーザーの意見を収集し、実用化に向けてインター
フェースの改良や新しい検索手法の開発に取り組んでいきます。
何だっけ、
あの時撮ったシーン
タイトル忘れたけど
あの番組…
多様な手法で検索・絞込・閲覧
画像の類似
簡易スケッチ
一般ユーザー
番組制作者
構図による高速化
スーパー画像
自動抽出
画像解析技術・
言語解析技術
探すの大変!
顔の位置
カメラの動き
アーカイブスなどの大量の番組映像
本システム開発の背景
キーワード
番組内容記述文の類似
高度コンテンツ制作
28
現場で活躍するエコな番組制作設備
電気自動車を使った中継車とLED照明器具
展示概要
電気自動車(EV)をベースに、搭載する放送機器用の電源にもバッテリーを使用した日本初の
排ガスゼロ中継車と、LEDを使った省エネ効果の高い照明器具を開発しました。いずれも実際の
番組制作の現場にて活躍中です。
特 長
□排ガス、エンジン音ゼロ、日本一静かでクリーンな中継車
排ガスを出さず、走行時も静かな電気自動車を利用した中継車です。使用した車両は、フル充電で約160kmの
走行が可能で、最高速度は130km/h※1と一般車両とそん色がありません。発電機も搭載していないため※2、運用中
も静かでクリーンな中継が可能です。EV中継車は、エンジン音が出ないことを活かした住宅街からの早朝中継や、
食べ物を扱う企画での排ガスなしのクリーンな番組制作に活用されています。
□環境にやさしいLED照明器具
従来のハロゲンランプと同等の光量でありながら、消費電力は5分の1の照明器具を開発しました。20,000時間の
長寿命である他、高い演色性※3や柔らかで自然な光を実現、カメラ撮影時にフリッカーが生じないなど、スタジオ
使用時に求められる要件をクリアしました。本LED照明器具は、NHK横浜新会館ニューススタジオに全面導入され、
平成22年11月より使用されています。
今後の予定
EV中継車の有効な運用方法について検証するとともに、開発で培った技術を一般中継車に応用していくことを
考えていきます。LED照明器具は、今後の新会館スタジオや情報番組スタジオなどへの積極的な導入を検討して
います。
◆EV中継車は、京成自動車工業(株)
、三菱自動車工業(株)
、富士電機システムズ(株)と共同で開発しました。
◆LED照明器具は、東芝ライテック(株)と共同で開発しました。
※1 メーカー諸元による。
※2 通常の中継車では、放送機器用の電源として発電機を搭載しています。発電機の大きさは、小型中継車で15kVA程度です。
※3 対象物の色の見え方を決める光源の性質。演色性の高い光源は、対象物の色を忠実に再現することができます。
EV中継車
LED照明器具
高度コンテンツ制作
29
リアルアピアランスモニター
明るさ感を表示して、明るく感じる映像制作をサポート
展示概要
明るく見やすい映像作りは、電気的な測定や担当者の経験で実現していますが、実際の見え方に
基づいた評価方法はこれまでありませんでした。そこで、人間の視覚特性に基づいたシステムを
開発し、より視聴者本位となる映像作りへのサポートを実現しました。
特 長
□これまでにない、人間の視覚特性に基づいた明るさの評価システム
人間の視覚には、明るい部分と暗い部分が接している場合、その境界を強調し明るさの対比をより認知するための
側抑制と呼ばれる特性があります。本システムでは、画面の全ての部分に対して、コントラストを定量的に計算し、
明るく見やすい映像作りをサポートします。
□人間が感じる明るさ感をグラフィカルに表示
実際に制作している映像と同じ画角の「明るさ画像」を高速に生成、
リアルタイムに表示します。その内容としては、
明るく感じる部分を赤、暗く感じる部分を青、中間を緑としその色合いや濃さで明るさ感を表現しています。
□明るく感じる映像作りをサポートするシステム
より視聴者の皆さまに親しまれる映像作りのため、番組セットを含めた映像全体としてどの程度明るく感じるかに
ついての評価方法を確立しました。好評を頂いている『あさイチ』の制作スタジオを始めとした、多彩な番組で
運用されています。
今後の予定
今後も、新番組立ち上げ時の番組セットを含めた映像評価等に役立てていきます。
◆リアルアピアランスモニターは、(株)ビジュアル・テクノロジー研究所、アストロデザイン(株)と共同で
開発しました。
放送中の画像
明るく感じる部分
暗く感じる部分
感じられる明るさを
異なる色で、
リアルタイムに表示
明るさ画像(モニターによる評価画像)
リアルアピアランスモニターを用いた放送画像の評価例
高度コンテンツ制作
30
気象通報自動読み上げシステム
ラジオ放送での実用化を目指して
展示概要
放送用の原稿やデータを自動的に音声に変換する自動音声放送の実現に向けて高品質な音声
合成の研究を進めています。気象庁からの電文をもとに、気象通報を高品質な合成音で番組
時間に合わせて自動的に読み上げるシステムを開発しました。
特 長
□放送品質の合成音を実現
入力文と類似した文型※を選択することにより、文内の語順を反映した音声データが選択され、イントネーションが
自然で高品質な合成音を作成できます。
□番組時間尺ちょうどに調節
放送途中で読み上げる文章を飛ばしたり、緊急のコメントを挟むなど番組内容を変更しても、話速変換技術で
合成音の速度を逐次調節することにより、番組時間に合わせて読み終えます。
今後の予定
ラジオ放送での実用化に向けた検討を進めます。また、交通情報など他の課題への応用についても検討します。
※ 類似した文型:読み上げるすべての文章を文節単位で比較し、類似した部分を統合して代表させた複数の文章パターン
気象データ
(気象庁)
合成音
・
・
・オホーツク海の東の、
北 緯23度40分 、東 経
122度10分には、950
ヘクトパスカルの、超大
型で非常に強い台風第
3号があって・
・
・
オホーツク海の東の、北緯23度・
・
・
ラジオ
音声合成
話速変換
気象通報自動読み上げシステム
放送博物館
31
放送博物館コーナー
ラジオ放送の歴史とラジオ受信機
放送開始∼昭和30年代
1925(大正14)年3月、芝浦の仮放送所からラジオ放送の歴史が始まり、7月には現放送博物館
のある愛宕山に局舎が完成、本放送を開始しました。その後、全国放送網が拡充され、1932
(昭和7)年にはラジオの聴取契約数も100万を超えました。東京では1939(昭和14)年に
内幸町に放送会館を移し、ラジオ放送の黄金時代を築いていきました。テレビ放送が始まった
1953(昭和28)年の後も、連続ラジオドラマ、クイズなど娯楽番組も充実し、ラジオの人気は
根強いものでした。
ラジオ受信機も放送開始時には鉱石ラジオや外国製のものでしたが、その後は国産のものも多く
販売されていきました。形も鉱石から真空管、トランジスター、ICを使ったものへと進化し、
高性能・小型化していきました。
博物館コーナーでは、ラジオ放送開始時から昭和30年代までの歴史を、その時代の資料、写真、
ラジオ受信機によって紹介しています。
ラジオ放送の歴史
年 代
1925年3月
東京放送局、芝浦から仮放送開始
1925年7月
東京放送局、愛宕山から本放送を開始(1KW)
1926年8月
社団法人日本放送協会 設立
1928年4月
ラジオ機器認定規定を定め、受信機・真空管・スピーカー等の規格を決定。
決定。
1928年5月
東京放送局、新郷放送所を開設(10KW)に増力
1930年6月
NHK技術研究所 設立
1931年4月
東京中央放送局、第二放送開始(10KW)
1932年2月
ラジオ受信契約数100万
1935年6月
海外放送開始(日本語と英語1時間)
1936年6月
ラジオ相談所指定規定およびラジオ技術者検定規定を制定
1938年1月
「放送局型受信機規程」を制定
1941年12月
電波管制が施行(全国同一周波数放送を実施)
1945年8月
天皇の「終戦の詔勅」録音放送
1945年9月
電波管制が解除(各局単独周波数に復帰 第1は鳩ヶ谷 第2は新郷から放送
は新郷から放送(10KW)
(10
1951年9月
民間放送本放送開始(名古屋 中部日本放送 大阪 新日本放送のちの毎日放送)
1952年8月
ラジオ受信契約数1000万
1953年2月
テレビの本放送の開始
1955年8月
国産初のトランジスターラジオ 出現
1957年12月
FM実験放送開始(東京)
次世代デバイス
32
電荷蓄積型シリコンマイク
堅ろうで低電圧動作が可能な小型マイク
展示概要
単結晶シリコンで製作されるシリコンマイクは、堅ろうで優れた音響特性を備えています。
一方で、その動作には48Vの高い電圧が必要でした。そこで、マイクの内部に電荷を蓄積
することで低電圧動作を可能とした電荷蓄積型シリコンマイクを開発しました。
特 長
□低電圧動作の実現
電荷蓄積型シリコンマイクは、薄い振動膜と背面電極とを対向させた構造です。背面電極に形成した誘電体※に電荷を
蓄積することで高電圧を不要とし、音声信号の検出に必要な3Vの電圧での動作を実現しました。これにより、一般的
なワイヤレスマイク送信機に接続して使用することも可能となりました。
□優れた音響特性と堅ろう性
音をとらえる振動膜には単結晶シリコンを用いています。そのため、従来のシリコンマイクと同様に、可聴帯域を
カバーする優れた音響特性と過酷な環境下でも使用できる堅ろう性とを兼ね備えています。
□新たな電荷蓄積技術
誘電体に電荷を蓄積するために放電を用いる一般的な手法による試作と、X線照射を用いる独自の電荷蓄積技術
による試作を行いました。後者の技術を用いることで、シリコン基板に多数製作したマイクに、一括して効率良く
電荷を蓄積することが可能となります。
今後の予定
放送用のみならず、補聴器など、小型で低電圧動作が求められる用途への応用を目指します。
◆この研究は、リオン(株)
、
(財)小林理学研究所と共同で進めました。
※ 誘電体:極めて電気抵抗が高く、電荷を保持しやすい性質を持つ材料。
振動膜
(単結晶シリコン)
音
絶縁体
背面電極
(単結晶シリコン)
ー
ー
ー
ー
音声信号
ー
誘電体
(電荷を蓄積) 検出回路
電荷蓄積型シリコンマイクの構造
次世代デバイス
33
冷陰極HARP撮像板
小型の超高感度カメラを目指して
展示概要
小型の超高感度カメラを目指して、電界集束型※1冷陰極アレー※2とHARP膜とを組み合わせた
冷陰極HARP撮像板の開発を進めています。今回、水平256×垂直192画素の撮像板を試作
するとともに、カラー化に向けてHARP膜※3の光電変換効率を改善しました。
特 長
□電界集束型冷陰極アレーの性能向上
新しい構造の電界集束型冷陰極を開発し、集束時の電子ビーム量および冷陰極アレーの信頼性を向上させました。
□HARP膜の長波長光に対する光電変換効率の改善
波長の長い光を吸収しやすい材料を用いた高効率光電変換層をHARP膜と接合することで、緑や赤色光に対する
光電変換効率を大幅に改善しました。
今後の予定
冷陰極アレーの微細・高集積化を図るとともに、光電変換効率を改善したHARP膜の撮像板への適用を進めます。
◆この研究の一部は、双葉電子工業(株)と共同で進めています。
※1 電界集束型:冷陰極アレー上の電極(集束電極)に電圧を加えることで、電子ビームを集束する方式で、集束のための磁石などが不要となるため、カメラの
大幅な小型化が可能
※2 冷陰極アレー:電圧を印加するだけで電子放出する素子(冷陰極)を平面上に多数並べたデバイス
※3 HARP膜:High-gain Avalanche Rushing amorphous Photoconductor、電荷のなだれ増倍現象を利用した超高感度な光電変換膜
電子ビーム
−
集束電極
電子ビーム
引き出し電極
−
ゲート電極
HARP膜
電子ビーム
陰極
従来
新規
電界集束型冷陰極
冷陰極アレ−
画素
冷陰極HARP撮像板
冷陰極HARP撮像板の構造
次世代デバイス
34
磁気記録デバイスの高速化技術
スーパーハイビジョン用小型記録装置を目指して
展示概要
小型のスーパーハイビジョン用記録装置を目指して、磁気記録デバイスの高速化を進めています。
ここでは、ハードディスクの転送レート※1を平滑化することで最低転送レートを高める技術と、
磁性細線※2中の微小磁区※3の移動を利用した新たな記録技術を紹介しています。
特 長
□ハードディスクの転送レート平滑化技術
2台のハードディスクを用いて、1台は外周から、もう1台は内周から記録することで最低転送レートを従来の1.5倍
以上に高める技術を開発しました。これにより、スーパーハイビジョンの記録に必要なハードディスクの台数を従来
の2/3に抑えることができます。
□磁性細線を用いた新たな記録技術
磁性細線中の微小磁区を移動させることで、情報を微小磁区に順次、記録し、再生する技術の開発を進めています。
この技術を用いることで、現状の磁気記録デバイスに比べて、格段に小型で信頼性の高い大容量・超高速磁気記録
デバイスを実現することができます。
今後の予定
転送レートを平滑化したハードディスクの早期実用を目指します。また、データの記録再生が可能な、磁性細線
を用いた記録デバイスの試作を進めます。
※1 転送レート:1秒間に記録/再生できるデータの量。単位はbps(bit per second)
※2 磁性細線:幅を数百nm(1nmは1mmの百万分の1)に微細加工した、磁性材料からなる細線
※3 微小磁区:磁性細線中に存在する微小な磁石で、情報を記録できる最小単位
ハードディスクの高速化技術
現状
転送レート
平滑化技術
約200台の2.5型
ハードディスクが必要
ハードディスクの
台数を2/3に削減
磁気記録の超高速化を
目指した要素技術
磁性細線を用いた記録技術
飛躍的な小型化と
高信頼性との両立
スーパーハイビジョン記録装置へ向けた高速化技術
次世代デバイス
35
プラズマディスプレイの省電力技術
家庭用スーパーハイビジョンテレビを目指して
展示概要
家庭用スーパーハイビジョンテレビの実現を目指して、プラズマディスプレイ(PDP)の省電力技
術の研究を進めています。今回、パネルの製作工程で劣化しない低電圧電極を開発し、輝度を維
持したままより消費電力の低いパネルを実現しました。
特 長
□低電圧電極による省電力化
パネル内のキセノン(Xe)ガスの濃度を高めることでPDPの輝度を上げることができますが、これまでの電極
では高い放電電圧が必要になりました。今回、低い電圧でも放電できる電極(低電圧電極)を開発し、高濃度の
Xeガスを用いても高電圧を必要としない消費電力の低いパネルを実現しました。
□電極の化学的安定性の改善
これまでの低電圧電極は、PDPの製作に必要な大気中での加熱工程で材料が劣化してしまうため、所望の低電圧
放電特性が得られませんでした。今回、低電圧電極の一種であるカルシウム・マグネシウム酸化化合物(CaMgO)
電極の製作条件と組成比を改善することで電極の化学的安定性を高めました。この電極により、加熱工程での劣化
なく、低電圧電極を用いたパネルを製作できるようになりました。
今後の予定
今後は寿命の検証など、実用化に向けた研究を進めます。
交流電圧
表示電極
前面板
前面板
従来の低電圧電極
電極
ガス
{ 大気中の加熱工程
により劣化
放電
前面板
背面板
PDP(1発光点)の断面図
蛍光体
CaMgO電極
劣化を大幅に抑制
電極の製作条件と組成比を改善
CaMgO電極の化学的安定性の改善技術
次世代デバイス
36
フレキシブル有機ELディスプレイ
高画質の大画面シート型ディスプレイを目指して
展示概要
持ち運びに便利な携帯端末や超大画面のスーパーハイビジョン用ディスプレイを実現するため、
薄くて軽く湾曲でき持ち運びに便利なフレキシブルディスプレイの研究を進めています。有機
TFT※1駆動の有機EL※2パネルの製作工程を改良して、ディスプレイの画素欠陥を低減しました。
特 長
□画素構造と製作工程の改良
プラスチック基板上に微小な電極・配線を高精度に形成するため、金属材料・パターン・工程を検討して、ディスプレイ
パネル(対角5インチ、QVGA : 320×240画素)の表示欠陥を低減しました。
□有機TFT絶縁膜の最適化
有機TFT内に用いる塗布系高分子絶縁膜の形成工程や厚みを最適化して、表示動作の均一性や安定性を高めました。
□有機ELの材料開発
発光材料の改良により高効率な有機EL素子を試作しました。
今後の予定
ディスプレイの大画面化・高精細化に向けて、印刷技術などの新しい製作法やそれに適した材料の開発を進めて
いきます。
◆本研究は、パナソニック(株)と共同で進めています。
※1 TFT:Thin Film Transistor、薄膜トランジスター
※2 EL:Electroluminescence、電流を流すと発光する素子
有機TFTアレイ
有機EL素子
塗布型高分子
絶縁膜
発光
電極・配線
フレキシブル有機ELディスプレイの断面図(1素子)
プラスチック
基板
デジタル放送受信相談コーナー
デジタル時代の受信の疑問にお答えします
展示概要
地上放送とBS放送のアナログテレビ放送が終了し、テレビ放送はいよいよ完全にデジタル化
されます※。デジタル放送を受信する方法をお知らせするとともに、デジタル時代の放送受信に
関するさまざまな疑問・質問にお答えします。
特 長
□デジタル放送への移行の最後のお願い
アナログ放送終了まで残りわずかとなりました。まだデジタル化に対応していない視聴者の皆様には、早くの
デジタル移行をお願いします。デジタル放送を受信するために必要なさまざまな情報や対応方法をお伝えします。
□都市部での地上デジタル放送受信方法
これまでビルや送電線などの影響で電波障害対策の共同受信施設が設置されていた地域でも、ほとんどの地域で
個別アンテナ受信が可能です。
□地上デジタル放送の安定受信に向けた今後の展開
アナログ放送終了後、新たな中継局を建設するなどして、デジタル放送を一層安定に受信できるようにします。
また首都圏では、2013年頃に送信場所が東京スカイツリーに変わる予定です。東京タワーにアンテナを向けている
ご家庭・施設でも、アンテナ方向を変えずに受信できる見込みです。
今後の予定
NHKは、総務省テレビ受信者支援センター(デジサポ)や地域の電器店などと協力し、円滑なデジタル移行に全力
で取り組みます。また、それ以降の完全デジタル化時代にも、テレビ放送の安定受信のため、電波環境の整備を
進めます。
※ 岩手・宮城・福島の東北3県については、アナログ放送終了を最大で1年間延期すると発表されました。
東京スカイツリー
2011年に完成
2013年頃に運用開始予定
親局
(東京タワーなど)
放送衛星
移行
地上デジタル放送
BSデジタル放送
直接受信
共同受信
(集合住宅)
ケーブルテレビ
デジタル中継局
全国約2,100局建設
共同受信
(受信障害対策施設)
共同受信
(受信障害対策施設)
共同受信施設
非常災害時に役立つ放送技術と東日本大震災等での活用例
展示概要
災害情報を全ての方にお届けするための技術、被災地の状況を克明にとらえてお伝えするための
技術、安全・安心に関わる情報をお届けするための技術を紹介しています。
展示項目
□災害情報をすべての方にお届けするための技術
●災害時にも途切れることなく放送電波をお届けするための技術
●生放送の災害情報報道にも字幕を付与するための音声認識を用いた生字幕制作技術
●聴覚に障害のある方々に手話で情報をお伝えするための技術(展示番号:12)
●視覚に障害のある方々に障害のタイプに応じて情報をお伝えするための技術(展示番号:13)
●外国人住民の方々にニュースの難しい日本語を「やさしい日本語」に書き換えて提供するための技術
(展示番号:14)
□被災地の状況を克明にとらえてお伝えするための技術
●超望遠映像を撮影した放送機器(取材用ヘリコプター、望遠レンズ、防振台付カメラ、画像鮮明化装置)
●夜間の災害状況を撮影できる超高感度カメラ(EM-CCDカメラ、スーパーHARPカメラ)
●地震発生時などのその一瞬を収録することができるスキップバックレコーダー
●いち早く被災地の状況をお伝えするロボットカメラ
●煙や木材などの遮へい物によって隠された被写体の様子を撮影できる3次元ミリ波イメージング技術
(展示番号:23)
□安全・安心に関わる情報をお届けするための技術
●被災者の安否をお届けするための技術
●安否情報を簡単な操作でNHKに送信できる安否伝言ポスト
●緊急地震速報によって受信端末を自動的に起動し速報をいち早くお伝えする技術
音声認識を用いた生字幕制作システム
超高感度EM-CCDカメラと望遠レンズ
安否伝言ポスト
ポスター展示
P1
放送用コンテンツ共有のための分散ファイルシステム
放送局の大量のファイルを分散保管し効率的に利用
大量の放送用ファイルを放送局内で共有するため、分散ファイルシステムを開発しています。分散
ファイルシステム内のデータベースが時間情報を管理することで、複数のファイルを時間的に連続
した1つのファイルとして扱えるなど、効率的にファイルを扱える技術を紹介しています。
P2
放送・通信連携のためのメディアトランスポート技術
多様な伝送路を用いたコンテンツ配信に向けて
映像・音声・データを、放送・通信の異種伝送路を用いて伝送し、受信側で組み合わせて利用
するためのトランスポート技術を紹介します。多数の端末に安定した伝送ができる放送と、個別の
伝送ができる通信とを組み合わせて用いるコンテンツ配信が可能になります。
P3
番組素材ファイル伝送のためのTCP優先度制御技術
緊急度の高い素材ファイルを優先的に伝送
複数のファイルを伝送中に、それらの相対的な伝送レートを調節する技術を開発しました。TCP
通信を行う基本ソフトウェアとして動作するため、ファイル転送ソフトなどのアプリケーションを
改修することなく、優先制御ができるようになります。
P4
感動メーター
心理効果から音響品質を客観評価
視聴者に感動や臨場感が伝わったかという観点で音を評価する試みとして、音の印象に基づいて感動
の促進/抑制の度合いを調べる実験の結果を紹介します。その知見に基づいて試作した感動メーター
を展示しています。
ポスター展示
P5
放送番組への意見を対象とした評判分析技術
視聴者の意見の素早い理解のために
視聴者の皆さまから寄せられるご意見をすばやく分析する研究を進めています。ここでは、特に番組
に対する多種多様なご意見を分析するため、述語を解析して「何に関する」
、
「どういう種類の」意見
かを自動判定する技術を紹介しています。
P6
画像の特徴が目立ちやすさに与える影響度の推定
目立ちやすさを顕著性マップで定量化
人がテレビを見るときの視線は、興味のある対象に向けられることも、興味に関わらず目立つ対象
に自然に向くこともあります。この2種の視線の動きの要因を分析して興味の状態などを推定する
ことを目指し、画像特徴量が目立ちやすさに与える影響を定量化しました。
P7
HARP光電変換膜の暗電流低減
超高感度で高画質な撮像デバイスの実現を目指して
アバランシェ増倍率のさらなる向上を目指して、HARP光電変換膜の暗電流の低減を進めています。
正孔注入阻止層に新しい材料を適用することで、暗電流の原因となる外部からの不要な正孔の注入
をこれまで以上に抑制することに成功しました。
P8
近接場光ディスク用高精度フォーカス制御技術
光ディスクの高速・大容量化を目指して
ブルーレイディスクに比べ4倍の高密度記録が可能な近接場光ディスクの研究を進めています。今回、
その実現に不可欠な要素技術である、高速回転するディスクに光ヘッドを50nm以下の狭間隔で近接
し保持させる高精度フォーカス制御技術を開発しました。
◆この研究は、長岡技術科学大学と共同で進めています。
ポスター展示
P9
プラズマディスプレイの多ライン駆動技術
家庭用スーパーハイビジョンテレビを目指して
走査線数が多いスーパーハイビジョンなどに対応可能なPDPの駆動技術を研究しています。PDPの
サブフィールド駆動方式を利用し、複数ラインを同時に走査しても画質劣化が少ない画素値決定法
を提案し、その有効性を確認しました。
P10
電荷輸送性を基にした高効率有機EL材料の設計技術
省電力なフレキシブル有機ELディスプレイを目指して
高画質なフレキシブルディスプレイの実現に向けて、電荷輸送性の制御により高効率リン光性高分子
を開発しました。電荷輸送材料の配合比率により、発光層の電荷移動度を的確に制御し、有機EL素子
の発光の高効率化が実現できることが分かりました。
P11
スピン注入型超高精細空間光変調器
電子ホログラフィーによる立体テレビの実現を目指して
将来の電子ホログラフィーによる立体テレビの実現を目指して、スピン注入型超高精細空間光変調器
の研究を進めています。立体ホログラフィー表示での視域拡大に有効となる1μm以下の狭画素ピッチ
を有するスピン注入型空間光変調器について紹介しています。
◆この研究の一部は、
(独)情報通信研究機構(NICT)の委託研究「革新的な三次元映像技術による聴臨場感
コミュニケーション技術の研究開発」を受託して進めています。
◆この研究は、長岡技術科学大学と共同で進めています。
P12
高速ホログラム記録技術
スーパーハイビジョン用の超大容量高速記録装置を目指して
スーパーハイビジョン用の超大容量・高速記録システムの実現を目指して、ホログラム記録の研究
を進めています。今回、その要素技術として、データ転送速度の高速化を可能とする光波面制御技術
を紹介しています。
体験型展示
T1
うつってあそぼ!
顔画像解析技術を使ったゲーム体験
テレビの前に立つと、あなたの顔が画面に映ります。画面の中のあなたが活躍するゲームです。
あなたも挑戦してみませんか。
T2
超スローモーションの世界を体験
ウルトラハイスピードカメラ
ウルトラハイスピードカメラは、人間の目ではとらえることのできない一瞬の現象を、スローモーション
映像として再現できる特殊なカメラです。サッカーボールをけった瞬間の足の動きやボールの様子を
スローモーション映像で見てみましょう。
T3
しゃべってあそぼ!
音声認識とTVMLでゲーム体験
クイズにあなたの声で答えてください。パソコンがあなたの声を聞き取って、CGキャラクターが
動きます。さあ、あなたの声にCGキャラクターはうまく反応してくれるかな?
T4
EN-Vision
NHKの映像検索技術を体験
NHK放送技術研究所で開発した関連映像検索技術EN-Visionは、NHKの提供するシステムや
サービスで実験的に利用されています。こちらでは、EN-Visionを利用したNHKクリエイティブ・
ライブラリー、番組公開ライブラリー、NHKオンデマンドの3つのシステムを体験できます。
講 演
5月26日(木)に開催
情報保障(手話通訳・要約筆記)があります。
午後 1:00 ∼
米国におけるメディア・アクセシビリティー
講 演
1
技術革新の現在と未来
■WGBH(米国ボストンの公共放送局)メディアアクセス部門長 ラリー・ゴールドバーグ氏
同時通訳(英→日)があります。
今回のプレゼンテーションでは、米国におけるメディアアクセスの歴史を振り返り、特に研究開発分野において数多くの進展に
結びついた、技術的、法律的、政策的、あるいは市場的促進策について説明する。現在、字幕サービス(および、場合によっては
解説サービス)は、デジタルテレビ、携帯向けデジタル放送、インターネット、DVDやブルーレイ、スマートフォンや映画館などで
利用可能である。これらについてそれぞれをデモや説明図などで解説する。
消費者の強い需要と、場合によっては連邦政府の命令に合致したことによって、米国におけるメディアアクセスの現在の状況は、
成長の新しい段階の初めにあたる。この新しい加速の動きが起こった理由の一つは、
「21世紀における通信と映像アクセシビリティー
に関する法」の成立である。この法律の様々な規定とその施行のスケジュールを電話、デジタル放送の字幕及び解説放送、Webベース
のメディア、ビデオセットトップボックスのユーザーインターフェイスのアクセシビリティーに与える影響と共に解説を行う。
最後に、
発表者はWGBHのアクセシブル・メディア・センターと、
メディアアクセスの世界の今後の新しい動きについての見解を示す。
この見解では、音声合成、音声認識、一般人を発信源とする番組制作や、自動化または半自動化プロセスによるクラウドベースのメディア
充実などについて述べることになるであろう。
講 演
2
人にやさしい放送の充実に向けた研究開発
午後 2:00 ∼
情報バリアフリー社会をめざして
■NHK放送技術研究所 研究主幹 伊藤 崇之
だれにも等しく的確に情報を伝えることは、安全安心社会を築く上で必要不可欠であり、また公共放送機関としての責務でもある。
NHK放送技術研究所では、人にやさしい放送の充実を実現すべく、視覚障害者、聴覚障害者、高齢者を含め誰にも放送サービスを
等しく受けていただくための研究開発を、研究所の方針の一つの柱として、積極的に推進してきた。これは平成21∼23年度NHK
経営計画の中でも謳っているところである。本講演ではこのような「人にやさしい放送技術」の研究開発について、字幕放送や解説
放送の充実に資する研究開発のみならず、デジタル放送時代の新しい機能を利用した技術やさらに今後の放送・通信融合時代の特徴
を利用した技術などを含め、放送サービス充実のための技術とテレビをはじめとする情報機器のバリアフリー化に資する技術の研究
開発の全体像を示した上で、人にやさしい放送の将来を展望する。
講演・研究発表のライブ配信
P2P型ライブ映像技術を用いたインターネットライブ配信
技研で開発したP2Pライブ配信システム※を用いて技研公開の講演や研究発表のライブ配信を実施しています。
視聴用ソフトウェアはパソコンのWebブラウザ上でインストールすることなく動作します。
下記のURLにアクセスしてご利用いただけます。
http://www.nhk.or.jp/strl/open2011/index.html
※ 展示番号15「P2P型ライブ映像配信技術」において、開発したシステムの紹介をおこなっています。
研究発表
5月27日(金)に開催
特 別 発 表
HybridcastTMの開発
午後 1:00 ∼
放送通信連携サービス高度化に向けた技術要件
■次世代プラットフォーム研究部 松村 欣司
近年、インターネット接続機能を備えたテレビ受信機の多機能化によって、テレビは放送を見るだけでなく、ネット経由で様々な
サービスを楽しむことができる端末になってきた。技研では、このような時代において今まで以上に魅力のある放送サービスを楽しんで
頂くために、放送通信連携システム∼Hybridcast∼の開発に取り組んでいる。Hybridcast開発の目的は、放送と連携した様々な
インターネットサービスを利用して、既存の放送によるサービスを強化できるような環境を実現することにある。これによって視聴者
の皆様はこれまでより便利かつ多様に番組を楽しむことができる。
本報告では、Hybridcastで実現されるサービスの例と、そこで用いられる、放送と通信の同期、SNSとの連携、携帯端末やPC
との連携、画面の制御といった各種技術について説明したのち、今回技術展示するプロトタイプ受信機や各要素技術検証のための試作
システムを紹介する。その上で、現在検討中であるHybridcastのシステム構成や受信機仕様について説明し、最後に今後の実用化に
向けた取り組みについて述べる。
午後 1:50 ∼
研究発表
1
3次元モデルからインテグラル立体像への変換手法
■テレビ方式研究部 片山 美和
将来の高臨場感映像システムの実現を目指して、インテグラル立体テレビの研究を進めている。インテグラル立体テレビは高精細な
映像デバイスとレンズアレーを組み合わせて被写体からの光線を記録・表示することにより、被写体の立体像を再構成する。撮影側の
光線が表示側で再現されるため、特殊なめがねを必要とせず自然な立体視が実現できる。水平視差に加えて垂直視差が再現できる
ことも特徴である。
インテグラル式立体ディスプレイに表示される映像は、従来、専用の立体カメラで撮影してきた。今回、人物の3次元モデルを
インテグラル式立体像に変換する手法を開発した。この3次元モデルとは複数のカメラで人を撮影した映像から生成した形状と色の
データである。3次元モデルはCGと同じデータ形式で表現されるため、3次元モデルとCGを合成したシーンのインテグラル立体像
をこの変換手法により生成することができる。また、文化財や医療関係の3次元データへの適用など応用範囲が広い。本報告では、
3次元モデルをインテグラル式立体像に変換する手法について説明するとともに、画質劣化を抑制するためのフィルター処理、および
変換処理の高速化手法について述べる。
午後 2:10 ∼
研究発表
2
画像解析による映像検索技術
■人間・情報科学研究部 望月 貴裕
映像圧縮技術の発展やハードウェアの高度化、インターネット網の整備により、蓄積された大量の映像に容易にアクセス可能となった。
その流れの中で、放送アーカイブスなどの大規模な映像資産を活用する需要が高まり、所望のシーンを効率的に探し出す映像検索技術
が求められている。現在の検索手法は、
映像の各シーンに付加されたテキスト情報に基づくキーワードによる検索が主流である。しかし、
言葉では表現し難い「なんとなくこんな感じのシーンが欲しい」などの検索要求がある。それらに応えるためには、テキスト情報に
限らない様々な特徴に基づいた検索技術を導入する必要がある。
技研では、
「こんな見た目(色、模様、構図など)のシーンが欲しい」というユーザーの視覚的検索要求に応えるべく、画像解析
による映像検索技術の研究を進めている。これまで、検索対象映像に多く含まれる色や模様を「パレット」として抽出し、そのパレット
を用いて要求画像(「欲しいシーン」)を描画して検索する仕組みを実現した。また、構図(色や模様の大まかな配置)の類似性に
基づいて検索対象を分類しておくことにより、検索処理の高速化を図った。本報告では、開発した映像検索の基本技術について
解説すると共に、これらの技術を適用したシステム例として、NHKのWebサービス「クリエイティブライブラリー」における映像
検索システムと、アーカイブスのような大量の番組映像を検索対象としたシーン検索システムを紹介する。
研究発表
5月27日(金)に開催
午後 2:30 ∼
研究発表
3
ミリ波モバイルカメラ
■放送ネットワーク研究部 中川 孝之
現在のハイビジョンカメラシステムは、カメラ本体とカメラ制御機器がケーブルで接続されているため、カメラマンが自由に動き回り、
かつ安全に撮影することが困難である。そのため、様々なジャンルの番組撮影でハイビジョンカメラのワイヤレス化が望まれている。
また、ワイヤレス化にあたっては、現行システムとの接続が容易であり、有線カメラと同等以上の性能・機能が求められる。
技研が開発しているミリ波モバイルカメラは、無線周波数に広帯域なミリ波帯を採用し、送受に複数のアンテナを用いるMIMOOFDM技術を適用することにより、ハイビジョンワイヤレスカメラの要求条件である高画質(100Mbps級)
、低遅延(1フレーム
以下)と途切れにくい無線伝送を実現するものである。これまでは、カメラ映像を伝送する本線系について42GHz帯で開発を行って
きた。今回、リターン映像やカメラ制御信号などの送り返し系についても42GHz帯で無線伝送する装置を試作し、現行システムと
整合の取れた高機能なハイビジョンワイヤレスカメラを開発した。本報告では、ミリ波モバイルカメラのシステムについて詳しく解説
するとともに、その番組活用例を紹介する。
午後 2:50 ∼
研究発表
4
家庭におけるマルチチャンネル音響再生技術
■テレビ方式研究部 澤谷 郁子
あたかもその場にいるような臨場感と高い質感を実現する次世代のテレビとして、スーパーハイビジョン(以下、SHV)の研究開発
を進めている。その音響方式として、22.2マルチチャンネル音響を提案し、制作、伝送、家庭再生のための研究を行っている。22.2
マルチチャンネル音響は、1)画面上の映像と一致した明確な音像定位、2)聴取位置を取り囲む全方向からの音の到来、3)自然な
3次元音響空間の再現、を可能とする再生方式である。
家庭でSHVを楽しむ場合、リビングルームや個室、シアタールームなどの視聴環境や、70インチ程度の中画面、150インチ程度
の大画面といったディスプレイサイズなどによる、様々な視聴形態が考えられる。そこで、視聴形態に合わせてスピーカーの数や
設置位置を柔軟に適応できるSHV音響再生が求められる。また、複数の人が一緒に楽しんだり、見る場所を変えたりすると想定
されるため、良好な音響品質が得られるエリアが広いことが望まれる。
本報告では、SHV音響を少ないスピーカー数で再生するシステムを試作して聴取位置を変えた評価実験を行い、再生スピーカー
の数・配置とリスニングエリアの関係を検討した結果を示す。
午後 3:10 ∼
研究発表
5
電荷蓄積型シリコンマイク
■撮像・記録デバイス研究部 萩原 啓
優れた音響特性と高い信頼性、機動性を兼ね備えた次世代の放送用マイクの研究を進めている。これまでに、堅ろうで化学的にも
安定な素材である単結晶シリコンを用いたコンデンサー型シリコンマイクを開発・試作した。このマイクが良好な周波数特性を有し、
高温多湿や酸性の雰囲気中といった過酷な環境でも安定に動作することを確認した。
一方で、このコンデンサー型シリコンマイクの動作には48Vの高い電圧が必要なため、中継や取材での使用における機動性の向上
が求められていた。そこで、マイク内部に誘電体を形成し、そこに電荷を蓄積することで高電圧が不要となる電荷蓄積型シリコン
マイクの開発に取り組んだ。本報告では、電荷蓄積型シリコンマイクの原理と構造について説明し、高温でも優れた安定性を有する
シリコン系材料の誘電体と、それを用いて試作したマイクの諸特性について述べる。また、本マイクを製作するために、新たに開発
したX線照射による電荷蓄積技術について説明するとともに、本技術のマイク以外への応用についても紹介する。
研究発表
5月27日(金)に開催
午後 3:30 ∼
研究発表
6
有機TFT駆動フレキシブルディスプレイ
■表示・機能素子研究部 武井 達哉
薄くて軽く、曲げられるフレキシブルディスプレイは、携帯・収納・設置など使い方の自由度を高めることができる。例えば、
丸められて持ち運びが便利なディスプレイや、家庭での省スペース・大画面ディスプレイを実現できるようになる。我々は、携帯型
ディスプレイから将来の家庭用大画面スーパーハイビジョンディスプレイまでを視野にいれて、プラスチックフィルムを基板とした
フレキシブルディスプレイの研究を進めている。
今回有機TFTのゲート絶縁膜として、大画面化に適した塗布型材料を導入した。使用したのは熱架橋型オレフィンポリマーで、
スピンコート法で塗布後、150℃以下の低温で加熱硬化することで絶縁膜を形成し有機TFTを試作した。従来用いていた五酸化
タンタル絶縁膜による有機TFTと比較して、ヒステリシスや閾値電圧シフトが少なく、均一性と安定性が共に向上した。また、この
有機TFTを用いて5インチQVGAフレキシブル有機ELパネルを試作し動画表示を行ったところ、画素欠陥の低減と表示の均一性改善
が確認できた。本報告ではポリマーゲート絶縁膜の特徴、有機TFTの特性、パネル作製プロセス、動画表示例を紹介する。
イベント
5月28日(土)、5月29(日)に開催
イベントの詳細や事前予約の方法は、技研ホームページをご覧ください。
http://www.nhk.or.jp/strl/
5月28日(土)午後1:30∼2:40
なっとくテレビ塾
場所:技研講堂
小学校高学年から中学生の親子を対象に、技研の研究員が、最先端の放送技術をわかりやすく説明します。テーマは次の
2つです。
○どこまで知っている? 地デジクイズ
○立体テレビはどうして見える
5月29日(日)午後1:30∼3:00
世田谷らいぶステージ
場所:技研講堂
第1部 ドリームジャズバンド コンサート
ドリームジャズバンドは、ジャズトランペッター日野皓正さんが校長をつとめる「才能の芽を育てる体験学習Dream
Jazz Workshop」
(世田谷区教育委員会主催、世田谷パブリックシアター企画制作)で結成された世田谷区立中学生に
よるジャズバンド。
第2部 倍音って何? 音の不思議を体験しよう!
ディジュリドゥ(豪)
、シンギングボール(チベット)などの民族楽器が発する不思議な共鳴音「倍音」
。神秘的な癒しの
空間に浸るとともに、意外に身近な音にも含まれる倍音の体験を通して音の不思議を楽しんでいただく体験型のコンサート。
講師および演奏は、プロのサックス奏者であり、第2回世田谷芸術アワード「飛翔」音楽部門受賞者の藤枝伸介さん。
5月28日(土)、29日(日)午前10:00∼午後2:20
ガイドツアー
受付:エントランス
技研の研究員が、1グループ7名程度で、主な展示について詳しく解説するガイドツアーです。研究の苦労話など、普段は
聞けない話も聞くことができます。
5月28日(土)、29日(日)午前10:00∼午後3:30
スタンプラリー
受付:エントランス
技研公開会場に置いてあるスタンプを集めましょう。全部回った方には素敵なプレゼントを差し上げます。NHKネットクラブ
のポイントもたまります。
(平日のみ)
(平日のみ)
NHK放送技術研究所
〒1 5 7 - 85 1 0 東京都世田谷区砧 1-10-11
http://www.nhk.or.jp/strl/
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