...

信州には、自然はもちろん 総合医を育む土壌があります。

by user

on
Category: Documents
14

views

Report

Comments

Transcript

信州には、自然はもちろん 総合医を育む土壌があります。
歴史的にある信州
総合医を育てる土壌が
高 木 信 州 は昔 から 地 域 医 療 に
力 を 注 いで き た 先 輩 方 が 大 勢 い らっ
信州は、
総合医を育てる
環境に最適だと思います。
﹁信州型総合医﹂
のお手伝いを
することが、私の喜びです。
信州は、包容力がある
というのが私の実感ですね。
8
高木 宏明
[諏訪中央病院]
しゃるし 、住 民の方 たち も 健 康 意 識 が
州の医療がつくられてきたという歴史
非常に高い。そのコラボレーションで信
整っている地域ですよね。
が あ る の で 、総 合 医 を 育 て る 素 地 が
諏 訪 中 央 病 院では、若い医 師が講 師
役を務める勉強会をやっていますが、
い
ろんな診療科から集まってくる。
診療科
医としての自分を鍛えあげていける環
やろうとすると嫌がるところが多いん
ですが、
ここは
﹁新しいことでもなんで
う 土 地 柄なんですよ。受け入 れる素 地
も好きなことをやってください﹂
って言
があるという か、包 容 力 があるという
のが私の実感ですね。
鄭 私は兵庫県出身なんですが、
佐久総合病院には初期研修で来たんで
す 。正 直 言 う と、ずっといる気はなかっ
たんですが、ずるずると、 年目になっ
ちゃいました
︵笑︶。病院が自分に合って
ろもあります。佐久だと、浅間山がきれ
いたのと、やはり 自 然 に惹 かれ たとこ
性 鼻 炎 だったんで す が、そ れ も 改 善 し
いに見えて、和みますよね。
アレルギー
ました。空気がきれいなせいかな
︵笑︶。
関口 私は長野県の飯田市出身で
地元ですが、出身は関係ないですよ。た
だ総 合 医は地 域 医 療でもあるので、地
域 を 愛 さないと展 開 が難 しい。その意
鄭 真徳
[佐久総合病院]
許 勝栄
関口 健二
[相澤病院] [信州大学医学部附属病院]
の垣根が低いので、
いろいろ学んで総合
他の病院とも連携しながら総合医を育
境があります。個別の病院だけでなく、
てていく素地もあるんじゃないですか。
環 境 として 十 分 とはいえ ない。そこで
許 相 澤 病 院 は救 命 救 急 が中 心
です が、それ だけでは総 合 医 を育てる
総合医の研修医を受け入れるにあたっ
らえるか相 談したら、快 く 引き 受けて
て、事 前に諏 訪 中 央 病 院に協 力しても
すよね。
もらいました。信州は、そういう土壌で
分 野については浅い知 識で良いという
関口 総合診療は広い分野にわた
るわけです が、だからといって、個々の
わ けにはいき ません 。質の高い研 修 を
提供して、それで、オールラウンドな医
師 を 育 て てい く こ と が 基 本 に な り ま
す。その基本からブレないためにも、各
診 療 科の連 携 、病 院 同 士の連 携が重 要
に 信 州 は 総 合 医 を 育 てる 環 境 な んで
になってきます。言われるように、まさ
すね。
信州には、歴史的にも人柄的にも、それを可能にする土壌があり、
味では、信 州は愛しやすい場 所ではあ
りますよね。
研修プログラムの特徴
研修の場は広く
くぼ・けいし ●出身大学:信州大学医学部(昭和49
年3月卒業) ●平成25年4月 地方独立行政法人
長野県立病院機構理事長に就任 ●宝物:信大医
学部長就任時のサッカー部員からのサッカーボールへ
の寄せ書き ●座右の銘:
「人は城、人は石垣、人は
堀、情けは味方、
仇は敵なり」
それぞれの診療科、それぞれの病院が連携することこそ重要です。
関口 話 を戻 すと、病 院の横の連
携 がと り や す く て 、
いろ んなところで
せきぐち・けんじ ●出身大学:群馬大学(平成12年
度卒業) ●平成25年11月 ハワイ大学老年内科よ
り信州大学医学部附属病院総合診療科長に就任 ●宝物:聖書 ●座右の銘:いつも喜んでいなさい。
絶えず祈りなさい。
すべての事について、感謝しなさい。
(第1テサロニケ5章16-18節)
座談会
研 修できるというのは、総 合 医 を 育て
たかぎ・ひろあき ●出身大学:名古屋大学(昭和62
年度卒業) ●諏訪中央病院内科系診療部長補
佐、在宅診療部長、医療安全管理部長 ●宝物:
1978年製 ヤマハギターL-53、2005年製 ハーレー
ダビッドソン:ヘリテイジ ソフテイル クラシック ●座
右の銘:道は自分で拓く
信州には、
自然はもちろん
総合医を育む土壌があります。
るうえで大きなポイントですよ。
[県立病院機構]
関口 健二
地域を愛すること
それが総合医には大事だ
久 保 私 は三 重 県 出 身で す が大
学も信 州 大 学だし、こちらで 年 く ら
い暮 らしていて 、自 分では長 野 県 人 だ
的に真 面 目 な 人 が多いので 、そ ういう
と思ってる んで す けどね︵ 笑 ︶。土 地 柄
人 たち が﹁ 信 州 型 総 合 医 ﹂に取 り 組 め
ば、
きっと良いものができると期待して
います。その手伝いを私もできて、嬉し
いんですよ。
阪人で、今は松本に住んでいますが、大
許 人 も良いですけど、やはり 山
があって、自 然 がいいですよね。私は大
阪に戻ろ う という 気 がしません。地 元
の人に言わせると、﹁山があるのは当然
すぎて、ありがたみを感じない﹂そうで
すけどね
︵笑︶。
高 木 私 も 名 古 屋 出 身 で 、地 元
じゃない。その
〝よそ者〟が新しいことを
[信州大学医学部附属病院]
八ヶ岳の裾野のように、
幅広い臨床能力を持つ本物の総合医を育てていくには、
13
久保 惠嗣
[諏訪中央病院]
高木 宏明
40
井上 雅彦
久保 惠嗣
[長野県健康
[県立病院機構] [長野県健康福祉部]
9
信州型総合
座談会
さらに、個別病院の枠や地域、国境を越えたスケールで能力を磨ける環境があります。
座談会
寄 稿
ら、大学病院のような3次ケアの場では
なくて地域を基盤とした診療所・病院と
Than Ever』
を発表し国連がミレニアム
いうプライマリ・ケア現場で診療・教育・
開発目標を設定して以来、
それぞれの国
研究を行うという日本の大学としては初
の保健医療制度の重要な柱としてプラ
めての家庭医養成事業のモデルを構築
イマリ・ケアの整備を進めてきた。
日本で
してきた。現在、
オランダ、英国、
オースト
の動きは世界から大きく遅れている。
プ
ラリアをはじめ世界の多くの家庭医療先
ライマリ・ケアは簡単に言うと
「身近に
進国とのネットワークを持っている。
あって、なんでも相談にのってくれる総
このたび、
長野県が県をあげて総合医
合的な医療サービス」である。私たちの
を養成する事業を開始する。
「信州型総
健康や病気に関する問題の8割程度は、
合医」だ。県が認定した病院(現在12施
このプライマリ・ケアの段階で解決でき
設)
が協力して「健康長寿を支える地域
ることがわかっている。
プライマリ・ケア
保健医療活動をよく知り、患者の全身を
は地域を基盤としたチームで取り組まれ
幅広く診療できる医師」
を養成する制度
るが、そこで医師として活躍する専門医
である。
私は以前から長野県立病院機構
が
「総合診療専門医」
である。
本部研修センターに招かれて長野県の
以前から私は、
こうした「総合医」
「家
医師の卒後教育に助言する機会をいた
庭医」
の養成はもはやひとつの大学や医
だいてきたが、
このような大きなシステ
かっさい・りゅうき ●昭和59年:北海道大
学 医学部 卒業 ●平成4年:カナダ家庭
医学会認定 家庭医療学専門医課程 修
了(ブリティッシュ・コロンビア大学) ●平
成8年:医療法人社団カレスアライアンス・
北海道家庭医療学センター 所長 ●平
成17年:英国家庭医学会 正会員・専門
医(MRCGP) ●平成18年:公立大学
法人 福島県立医科大学 医学部 地域・
家庭医療部 教授 ●平成22年:公立大
学法人 福島県立医科大学 医学部 地
域・家庭医療学講座 主任教授 ●医学
博士(北海道大学)専門分野:家庭医療
学 ●日本プライマリ・ケア学会 理事(国
際キャリア支援委員会 委員長)
をきちんとみて研修医の皆さんに参加
健 機 関( W H O )が 世 界 保 健 報 告 書
『Primary Health Care: Now More
井 上 ﹁ 信 州 型 総 合 医 ﹂養 成 プロ
の医療機関にいる指導医と協力しなが
してほしいですね。
した取り組みだが、大学の指導医が地域
世界各国は、特に平成20年に世界保
グラムでは、自分の病院だけでなく、大
医」
とも呼ばれる。
高木 日本地図にダーツの矢を投
とを理解してほしい。
学 病 院 、地 域の病 院 、海 外 も 含 めて 多
てきた。後者も福島県内の自治体と連携
げてみたら長野に当たった、
という選び
療専門医」は、
日本では「総合医」
「 家庭
岐にわたる研修を前提にしていますか
高い魅力あふれるキャリアパスであるこ
方じゃなくてね
︵笑︶。
る本格的な家庭医養成の仕組みをつくっ
ら、実力が身につきますよね。
で初の専門医が生まれる。
この「総合診
井上 ﹁信州型総合医﹂
に共感して
の臨床研究に取り組んでグローバルに
も活躍できる、極めて専門性と発展性の
関口 アメリカでも研修しました
道に点在する複数の自治体と連携しな
がら公益性を持たせ、
日本で初めてとな
13
信州人の温かい人柄、
そして
山や自然も大好きなんです。
ある。平成29年度から専門の後期研修
が始まり、
平成32年度には新制度のもと
くれる研修医を、
広く集めたいですね。
き、
さらに地域を基盤とした国際レベル
けど、私は内科ですが、内科医として専
継続しつつ地域で臨床教育にも従事で
は一医療法人の事業にも関わらず、
北海
高 木 見 学 に来 る 研 修 医 に訊 く
域・家庭医療学講座の新設である。前者
が養成・認定されることになったからで
信州に 年もいられたのは、
きれいな空気のせいかな。
「総合診療専門医」
という新しい専門医
門 化していく 過 程で、総 合 的 なトレー
る仕事を行い、その臨床でのキャリアを
と、地域医療をやりたい、何でも診られ
地域全体の健康に関わるやりがいのあ
平成18年からの福島県立医科大学 地
ニン グ を がっつり や る 。そ うい う 経 験
海道家庭医療学センターの設立であり、
る医 者になりたい、全 人 的 医 療 をやり
省の「専門医の在り方に関する検討会」
が定めた19の基本領域専門医の中に
も、研 修 する場 を広げたからこそでき
生・研修医は、
この専門医が患者、家族、
たい、
この三つなんですね。それが研修
そして「信州型総合医」
を目指す医学
考えてきた。その結果が、平成8年の北
たんですね。
ロジェクトとして行われるべきものだと
今、
ターニングポイントにある。厚生労働
医の持っている総 合 医のイメージかも
ま新書)
に詳しく書いたが、
日本の医療は
久保 県立病院機構はハワイ大学
発展してほしい。
し れ ない。実は私 たち と一致 していて 、
まり専門を極めたいと思うかもしれな
性を大事にして提供できるシステムへと
て、
より広域にわたる公益性を備えたプ
のシミュレーションセンターに人を派遣
許 私 が 初 期 研 修 し たこ ろ の日
い 。そ れ は 、そ れ で 良い と 考 え てい ま
療機関などで取り組む規模のものでなく
換̶日本のプライマリ・ケア革命』
(ちく
私たちは八ヶ岳の裾野のように幅 広い
本 で は 救 命 救 急 とい う と3 次 が 中 心
す。
昨 年 夏に出 版した小 著『 医 療 大 転
﹁信州型総合医﹂
の研修は、本当の
実力が身につくと思います。
11
予防・健康維持増進も含めた継続性の
ある包括ケアを人間中心性と家族志向
しているし、福 島 県 立 医 大 とも提 携し
で し た が 、私 がや り た かったのは1 次
井上 そういう幅のある考え方が
オランダの家庭医診療所を訪問する後期研修医
診療能力を持った医師を育てたいんで
から3 次 までの救 命 救 急でした。そこ
﹁信州型﹂
のひとつの特徴ですからね。
する人たちと連携してチームをつくり、
ています。そうしたところを、総合医の
で 、そ れ を やっているアメリ カで 勉 強
鄭 まだまだ総合医のイメージが
が、ぜひ地域のプライマリ・ケアに従事
高 木 NHKの
﹁ 総 合 診 療 医 ドク
歴史的なものであり文化的なものである
思ってるくらいかもしれない
︵笑︶。
合診療専門医の活躍の場がある。
これは
すね。それ をやっているうちに山 頂 、
つ
して き た わ けで す 。私 の経 験 か ら も 、
固まっていないんじゃないですか。だか
世界の家庭医療先進国と異なり、
日本
では地域を基盤とした病院にあっても総
研修にも利用できます。
研修の幅が広いというのは大事だと思
ら、見学に来てもらいたいですね。
期待したい。
いますね。
り、
そのプロセスとアウトカムをおおいに
タ ーG﹂を 観 て 、﹁ こ れ が 総 合 医 か ﹂と
性を重視した総合診療専門医養成の取
り組みが行われることはとても意義があ
八ヶ岳の裾野のような
幅広い臨床能力を持つ医師
ムで、
長野県全域に広がる広域性と公益
もっと知ってもらうために、私たちも
(「信州型総合医」
アドバイザー)
葛西 龍樹
関口 私たちも研修プログラムを
主任教授
努力しなくちゃね。
福島県立医科大学医学部 地域・家庭医療学講座
しっかりつくるし、実 行 するので、そこ
「信州型総合医」への期待
井上 雅彦
鄭 真徳
許 勝栄
[長野県健康福祉部]
[佐久総合病院]
[相澤病院]
いのうえ・まさひこ ●平成24年4月 長野県 健康福
祉部 医師確保対策室長 ●宝物:アルクマ ● 座右の銘:しあわせ信州創造プラン てい・まさのり ●出身大学:群馬大学(平成13年度
卒業) ●平成24年4月 佐久総合病院総合診療科
部長 ●宝物:2人の娘 ●座右の銘:臨機応変
きょ・かつひで ●出身大学:神戸大学(平成9年度
卒業) ●平成25年 同病院 救命救急センター 副
センター長 ●宝物:家族と思い出 ●座右の銘:
Text readingではなく、Patient readingを。
みんなの
10
Fly UP