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逆光電子分光・・・・・米田忠弘

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逆光電子分光・・・・・米田忠弘
放射光第 4 巻第 3 号 (1991 年〉
3
4
7
〉77φ
C 70 及び、 Kx C 60 の光電子?逆光電子分光
C60 ,
米田忠弘
日本テキサス・インスツルメンツ(槻
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Cω ,
Buckminsterfullerene は炭素原子 60 個か
化学工業への応用という面ではすでに Ref.l で議
ら成る非常に美しい対称性をもったクラスターで
論されている。生産コストは最終的に電気代だけ
ある。その構造は 6 員環が 20 個,
5 員環が 12 偲
で,値段もアルミのようなところまで低下すると
から成る 32 面体で,まさにサッカーボールの形を
みられている。具体的な応用例としてはクラス
している。ちょうど 12 個の 5 員環ム様々な数の
ター関の相互作用が極めて弱いと予想されること
6 員環によって作られる炭素の立体的なかご状の
から潤滑剤として期待されている。また,このか
クラスターの一族,
ごの中に金属原子を入れる試みもなされて,その
fullerene の中の一つである。
Cω の存在は数年前より知られており,例えば
1985 年 Kroto らはグラファイトをレーザーで蒸発
理論的計算も進んでおり 5) ,また触媒への応用も見
逃せない 6) 。
させて得られた物質のなかにこの特徴的なクラス
ター Cω を発見している九彼らの研究動機の一つ
が炭素 r
ich な星の周辺での宇宙環境の研究で
しかしながら,この物質が炭素原子が取る基本
構造としてはダイアモンド,グラファイトに続く
3 番目の構造であり,また非常に特殊な対称性を
あったことは興味深い九この物質の物性的研究,
持ったクラスターであることから,その基礎的な
あるいは化学工業的応用の研究が爆発的に開始さ
物性は大変興味のある対象である。しかもこの Cω
れたのは Krätschmer らによって macroscopic な
が形成する格子の中へアルカリ金属をドープした
量の Cω の合成が発表された後のことである 3}o そ
系が伝導性さらに超伝導を示すことが観測され
の後,合成方法に関する様々な発表がなされてい
た 7) 。分子状物質としては非常に高い T c が測定さ
る 4) 。
れ,グラファイトに層間物質としてアルカリ金扇
1
4
9
-
(C) 1991 The Japanese Society for Synchrotron Radiation Research
3
4
8
放射光第 4 巻第 3 号 (1991 年)
をドープした系で得られる Tc とは桁違いに高いも
リンダーの器壁に“すす"を形成する効率を高め
のである。いったいこのサッカ…ボールがこのよ
ようとしている。その“すす"は溶剤にトルエン
うな超伝導を示すメカニズムは何であり ,
等を用いて溶かされ,クロマトグラフによって Cω
Tc はど
こまで上昇するのかといったエキサイチイングな
の精製が行なわれている。
興味を含めて,今後多くの基礎的な研究が進めら
希ガスの存在がキーポイントで,蒸発された炭素
れると予想される。
原子が希ガス雰囲気中で凝集する時 fullerene を形
シンクロトロン放射光を用いた光電子分光
Smalley によるとこの
成する確立が非常に高くなっている。また生成の
(PES) はこの物質の電子構造に対する総合的な情報
初期過程で存在したと思われる 5 員環,
を与えてくれる。後述するように PES で得られた
2 次元的なシートから立体的にカールしてこのよ
スペクトルは鋭く明瞭なピークを多数示し,ダイ
うな立体的なかご状の構造を取るには,かなり大
アモンド
きなアクチィベーションエネルギーが必要で,そ
グラファイトとはまったく異なった,
6 員環の
分子状の物質に見られるスペクトルを示した。他
のためにはこのようなシートを高温でアニールす
方スペクトル全体の構造はダイアモンド
グラフ
る必要があるとしている。そのため局所的に加熱
ァイトと共通性を示すことから,この物質を原子
するようなレーザー加熱のタイプではアーク放電
と国体の閣に位置づけることが可能であり,鋭い
によるものよりかなり Cω の生成効率は低いとして
ピークは間体電子状態の理論計算の妥当性を議論
いる。
する試金石となり得る。そしてアルカリ金属を
ドープしたときのフェルミレベル付近の電子状態
精製後の試料についてもその色彩や質感も“す
す"である。 PES および IPES ,
STM の実験には
の変化から超伝導のメカニズム解明へ一歩踏みだ
Cω の蒸着薄膜を用いた。基盤に GaAs(llO) ,
すことができる。
InP(llO) 真空へき開面を用いている。これは PES
本稿は筆者がミネソタ大ウイーパ…教授らと行
なった,
等に実験ヂータの蓄積があることと基盤が原子レ
シンクロトロン放射光を用いた Cω の光電
ベルでの表面再配列が少ないため STM の観測が容
子分光実験の結果を示すと共に,同グループで行
易であるという理由による。試料はタングステン
なわれている Cω ,
C70 についての逆光電子分光
あるいはタンタノレポートにのせこれを通電加熱し
(IPES) ,走査型トンネル顕微鏡 (STM) の測定結果
て蒸着させた。ボートの温度はオプテイカルパイ
を紹介したい。また Cω 膜にアルカリ金属をドープ
ロメータによってそニターされており,約 500 C
した場合の PES 実験も紹介する。
で容易に昇華させることができるヘまた基盤近傍
0
に中a抗z crystal の膜厚計をおいたがこれも動作し
実験
相対的な膜厚をモニターすることもできた。実際
o
fHouston , Smalley 教授らの
の蒸着に先立つて 300-400 C で脱ガスを十分に行
グループで合成されたものである 4} 。 He ガスを約
なったが,脱ガスの主成分は水であり溶剤のトル
lOOtorr に保ったチェンバー内で,水冷された 2 本
エンからとおもわれるピークはごくわずかしか観
の炭素棒を lmm 程度に接近させ溶接用電源を用い
測されなかった。
てアーク放電させ,放電開始後は任意のスピード
響のないことが確認できる。
Cω 試料は Univ.
0
PES のピークからも何ら影
接近させる。その上部には煙突のような格好で水
冷された鋸のシリンダーが突き出しており,この
シリンダーの内援に“すす"がくっつく形とな
る。チェンパー内部にガスの流れを作り,このシ
シンクロトロン放射光,
光電子分光実験は Univ.
XPS による PES
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Aladin で行なった。 CMA を用いた角度積分型の
-150-
放射光第 4 巻第 3 号 (1991 年〉
3
4
9
も均一であることがわかる。結合エネルギーは
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を
60
基準にとってあるがフェルミレベルは 2.6eV だけ
1486.6
HOMO よりも低エネルギー側に存在する。図の
ピークにつけられた番号は説明の便宜のためであ
(
.
.
.
I
170
る。
C
各ピークを構成する C の原子軌道を同定するた
コ
ぷコ
L帽
め抗 ν の関数として各ど…クの強度変化を見てみ
。
、‘・'
〉、
・31651
る。ピーク 1 ,
C
2 は hν が低エネルギーのとき明瞭
Q)
+四
であるが hν の増加と共に相対強度が減少すること
c
ト叶
がわかる。対照的にピーク 9 , 10 は hν=
1
4
8
6
.
6
eV で dominant なピークとなっている。この強度
T
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変化は C の 2p および 2s の cross section の抗 ν 依
(008)
存性から理解できる。
hν ご 125eV で I(2p) は
I(2s) とほぼ閉じ他方 hν ご 1486.6eV では I(2s)
1
0
Energy(
e
V
)
は I(2p) の 13 倍の強度を持つ 8) 。ピーク 9 , 10 は s
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の寄与が大きいことがすぐに分かる。興味深いこ
とに McFeely9) ,Bianconi 10) のグラファイトおよび
ダイアモンドにたいする PES 測定結果でも同様の
入射光エネルギ…依存性がみられている。両者の
共通したピークの同定として E F - 5eV の構造は
2plt ,
5-10eV の領域では 2pσ それより高い結合エ
ネルギー側のピークは s からの寄与が多いとして
いる。
Cω とダイアモンド
グラファイトは結合角
が大きく異なっているにもかかわらず 3 つの結合
測定によってトータル分解能 150- 300meV を得て
エネルギー領域への炭素の原子軌道の寄与はほぼ
いる。また XPS にはそノクロ化した X 線源を使用
同じ傾向を持っていると考えられる。さらに詳し
している。
いピークの同定には理論計算と比較する必要があ
図 1 は代表的な 3 つの入射光エネルギ -hν
コ 65 ,
170 ,
る。
1486.6eV に対する価電子帯のスペク
それでは理論計算結果と実験結果の一致はどう
トルを示したものである。非常に明瞭な鋭いどー
であろうか。関 2 の低部には,偽ポテンシャル局
クが約 23eV の価電子帯に 17 個観測される。約 5
所状態密度近似をもちいて計算された結果そ示し
個のブロードなピークが観測されるダイアモン
である 11) 。図での各線の高さは状態の縮重度に対応
ド\グラファイトとは大きく違ったスペクトルで
している。計算には実験から得られたデータは一
ある。スモールクラスターに関する多くの実験に
切もちいられず炭素原子関距離もトータルエネル
おいてもこのような鋭いピークは見られていな
ギー計算より得られた値をもちいている。図 2 の
い。このことから Cω クラスターの構造が安定で各
上部には分解能を 100meV 程度にまで高めたスペ
クラスターの構造にばらつきがなく電子構造的に
クトルを示した。計算結果と実験結果は良く一致
-151
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Bucky B
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していて,例えばピーク 2 はピーク l に比べて明
らかに広いピーク幅をもっているが計算でこの
ピークが大きく分けて 2 つの状態からなることが
分かる。さらに実験との比較を容易にするために
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スペクトルを再現したものが図 1 の底に示しであ
る。約 0.5eV のシフトが見られる以外は広い範囲
さて各ピークの強度変化の hν 依存性を詳細にし
ですばらしく一致していることが分かる。これは
らべる事によってもこのクラスターの電子構造が
計算が第一原理から求められた事を考えれば驚く
強く分子軌道的性格を残していることが分かる。
べきことである。これで各ピークの同定を計算結
図 3 は 40< hν< 100eV でのスペクトルを示した
果に基づいて行なうことができる。その結果は先
ものである。各ピークの強度が入射エネルギーに
程の各ピークの強度変化から推定されたものと矛
よって敏感に変化することが分かる。例えば共に
盾することなく説明でき,
2仏の性格を持つピーク 1 ,
ピーク 1 ,
2p lt iJ、らの寄与で、それぞ、れれ,
2 は大部分
れの対称性を持っ
2 を比較してみると入
射光が 40eV では両者の強度はほぼ同じであるが,
ていると確認された。ピーク 3 はだと σ の性格を
90eV ではピーク 2 はピーク 1 の 2 倍の強度を持っ
合わせ持っており,
ピーク 4-7 は主として σ であ
ている。これは光電子の強度に終状態の影響が強
る。ピーク 8 以下はおもに s 的である。以上のよ
く及んでいることを示している。これを系統的に
うに計算結果は実験結果を非常によく再現し分子
調べるためにピーク 2 とピーク 4 の強度比
軌道的性格を持つ各ピークの同定を行なうことが
1(2)江(4) を入射光のエネルギーの関数として示した
できた。 HOMO 準位はれの性格を持つ o
のが図 4 である。それぞれのピークが Pu
-152-
p" に由
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3
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T
C-final)/(σ-
final) に相
IPES STM による測定
当し,グラファイトで McFeely が議論しているよ
Jost らは高分解能 IPES を用いて Cω の非占有準
うに 9) ,終状態が π か σ かによって極小極大をと
位の測定を行なっている問。 PES 同様鋭いピーク
る。グラファイトではこの比が hν コ 90eV までに
が多数観測され Lowest
小さな構造を持つが 90eV以上では全く一定で,終
O 巾 ital(LUMO) から 15eV 上の領域までに,鋭い
状態がこの領域で自由電子的であると解釈されて
10 個のピークを見いだしている。
いる。関 4 からも明らかなように Cω では大きな構
介した方法で非占有状態におけるエネルギー準位
造を持ちしかもこの強度の振動は 200eV まで継続
が計算されており,
している。これはこの領域においても終状態は自
は素晴らしく LUMO より 10eV 上のエネルギー領
由電子では近似できず discrete な分子軌道的レベル
域においてはほぼ完全に両者は一致する。そのた
を保っていると考えられる。このような高いエネ
め図 5 に示したように実験データの 2ndLUMO が
ルギーの continuum において電子状態が自由電子
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nzone の r 点での理論計算僚と著しく違
的でないというのは興味深い点である。
いを見せ,他方 X 点付近での計算値は実験値との
シンクロトロン放射光をもちいた PES によって
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一致を見ることから,
Jost らはこの準位がエネル
Cω の価電子帯に分子軌道的な多数の明瞭なピ…ク
ギーの k-分散を示すとしている。 k-分散の有無
が観測され,計算結果と非常によく一致した。非
は Cω クラスター間の相互作用と関係して非常に興
占有状態の連続状態においてもグラファイトにく
味深いが,
らべて非常に高いエネルギーに至るまで,自由電
も言える。非局所的な規則構造を持った Cω膜を形
子近似のできない discrete な状態が保たれている事
成し角度分解光電子分光を実施することが望まれ
がピークの強度解析により分かつた。 HOMO 準位
る。なお,
は πu の対称性を持ち EF より 2.6eV高エネルギー側
付けられている。
に位置する。
このデータだけで判断するのは困難と
LUMO は仏の性格をもつことが結論
もう一つ,注目しなければならないのは入射電
-153-
放射光第 4 巻第 3 号 (1991 年)
3
5
2
造を持って膜が成長することが明らかにされた。
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しかし筆者が観測したかぎり低速電子回折像では
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超格子構造は観測されなかったことから,局所的
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h一
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(ωZ
コC
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心』
な規則構造と思われる。
C70 の予 ES , IP 正 S
Experlment
E ,ロ 15.25
Jost らは Cω と C70 にたいする PES 及び IPES の
eV
測定を行なっている 14) 。そのスペクトルを図 6 に示
す。
C 70 は細長いラグビーボールの様な形をしてい
る。
Cω との相違は主として炭素間の結合角だけで
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いにとても敏感であり PES 及び IPES ともにその
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変化を十分捕えることができることを示してい
2
る。
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Haddon らは Cω の格子関にアルカリ金属をドー
プすることによって,
Cω の国体は超伝導を示す事
を初めて観測した九 K x C 60 は 18K, Rb
6
0~ま 28K
xC
に Tc を持つ。これらの倍はグラファイトの層間化
合物である C 8 K において 0.128-
0.55K ,
C 8Rb に
子によって作り出されたプラズモンの消滅によっ
おいては 0.03K であることを考えると異常に高い
て発光されたと思われるピークが光のエネルギー
値と言える。
が 27.6eV に観測されることである。このエネル
ギーのプラズモン励起は,
Benning らは前述のようにして蒸着した Cω膜に
XPS においても炭素の
K を SAES ゲッターソースより蒸着させて価電子
Is のメインピークの高結合エネルギー側にロス
バンドの変化を K のドープ量の関数として示して
ピークとして観測されている 1 九このプラズモンの
いる問。その様子を国 7 に示す。これは 300K での
由来としては Cω が形成する格子においての集団励
蒸着でその後のアニールは行なっていない。大変
起か,あるいは Cω のかご、を回るような電子の集団
興味深いことには K のドーフ。と共に大変ブロード
励起が考えられる。 XPS において,他のスモール
なピークがフェルミ面近傍に現われる。フェルミ
クラスタ…についての実験例ではプラズモン口ス
面付近を拡大するとフェルミエッジが確認され,
は観測されていないので後者の可能性も捨てきれ
この状態が金属的であるとしている。このブロー
ない。そのような励起モードが可能かどうかさら
ドなピークは K をド…プしない状態での LUMO 準
に検討を要すると思われる。
位が断続的に占有されてゆくことに対応している
Li らは同様の方法で得られた GaAs(110) 基盤上
の Cω 膜の成長を UHV-STM で観測している問。
としている。このピ…クは K のドープ量とともに
断続的にシフトしてゆき最終的に一番上のスペク
アイランド状に基盤とコメンシュレートに規則構
トルに到達する。この準位が LUMO 由来のもので
-154-
放射光第 4 巻第 3 号 (1991 年)
3
5
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ある理由として最終のスペクトルで HOMO 準位と
要であるとしている 17) 。グラファイトにおけるフェ
この準位は 1.6eV 離れているがこれはガス相の
ルミ面付近の電子状態は,やはり π 的な性格を持
Cι について得られた PES での値と一致してい
ち炭素の原子軌道の pz に由来している。これらの
る崎。また両者の強度比は縮重度の比と一致する
軌道は対称性によってフォノンの single
(5 対 3) 。このように断続的に LUMO が占有さ
center としては寄与しない。
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Cω で、はこの電子軌道
れていく様子は rigid -ba註d model では説明でき
の対称性が異なっているため,それが放射状の原
ず,
K の位置が disorder であることを反映してい
子の変位に相当するようなフォノンの single
ると考えられる。最終のスペクトルはフェルミレ
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gcenter となることができ,分子内フォノ
ベル付近の状態から絶縁状態にあると判断され K6
ンと強い electron p
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ncoupling が実現し高い
Cω の絶縁相に対応すると思われる。
Tc に結びついたとしている。この場合アルカリ金
以上の結果より金属的な状態で起こる超伝導
は,
属原子の位置は重要でなくそれらがかごの中に入
Plt 的な分子軌道の性質をもっ LUMO がアル
った状態でも超伝導を起こすであろうとしてい
カリ金属をドープするすることによって断続的に
る。他方 Rosseinsky らは仏が占有されることによ
占有され出現した準位が関与しているであろうと
って Cω クラスター聞の結合は強くなり,その結果
考えられる。それではなぜグラファイトの層間に
分子関フォノンと電子の結合が強まった可能性も
Rb 等をドープした場合に比較してこの
あるとしている九両者ともこの高い Tc をもっ超伝
K , CS ,
ような高いすc を実現するのであろうか。
Martins
らはグラファイトの場合仏の相対的な軌道の形状
が互いに平行であり c 軸に沿っているが,
Cω では
それらは球の中心より放射状に伸びている事が重
p
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導のメカニズムは強い electron にあるとしている点では一致している。
今後の課題として Rosseinsky が指摘しているよ
うに,
-155-
Cω膜にアルカリ金属をドープした系は固体
3
5
4
放射光
第 4 巻第 3 号 (1991 年)
かつて見られたことのないような鋭いピークを示
K
xCeo
すことが明らかにされた。 これはこのクラスター
が原子と固体の中聞に位置しその電子状態に分子
軌道的性格を残すと共に,クラスターが安定して
均一な構造を持つことを証明している。超伝導を
Ke
x
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示す KxCω についての測定ではアルカリ金属のドー
100
プで P It的な性格を持つ LUMO が断続的に占有さ
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れこの状態がフェルミ面での電子準位そして超伝
70
導に関与している事実が明らかにされている。
40
の p 徳的な準位が分子内あるいは分子関フォノンと
、,
~
強く結びつくことが超伝導機構のひとつと考えら
20
れる。
10
C60
謝辞
M
.Jost,
Y.Chen , T
.
R
.Ohno , G
.H
.Kroll , N
.Troullier,
J
.L
.Martin , Y.Z.Li昔そしてJ. H. Weaver に感謝し
本稿を書くにあたって P. J. Benning ,
HOMO LUMO
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.
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.
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ます。
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. Top spectrum
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ミネソタ大ウイバー教授のグループを中心に
Cω ,
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C初蒸着膜および、アルカリ金属をドープした
系についての PES ,
I~ES ,
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) P.
J
. Fagan , J
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C
. Calabrese , B
. Malone, S
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252 , 1160 (
1
9
9
1
)
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STM測定結果を紹介
IPES の測定では
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) R.C. Haddon , A
.
F
. Hebard , M.J
. Rosseinsky ,
このクラスターがスモールクラスターの測定では
D.W.Murphy , S.
J
.Duclos , K.B.Lyons , B
.Miller,
した。
Cω ,
C加に対する PES ,
-156-
3
5
5
放射光第 4 巻第 3 号 (1991 年〉
J
.M.Rosamilia, R
.M.Fleming, A
.
R
.Kortan , S
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.Weaver, J
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. Makhija, A.
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Glarum , A
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. Zahurak, R
.Tycko , G
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