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社会潮流の整理資料
資料4
社会潮流の整理資料
【目次】
全体まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
1.人口減少、少子高齢化の進行による市民生活や都市活動への影響・・2
2.社会経済情勢の変動による影響・・・・・・・・・・・・・・・・・5
3.地球環境問題の顕在化による影響・・・・・・・・・・・・・・・・12
4.災害に強い安全・安心なまちづくりへの対応・・・・・・・・・・・19
5.情報化社会の進展・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
6.地方分権の進展と地域主体のまちづくり・・・・・・・・・・・・・23
7.税財政制度への対応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
8.社会基盤等の維持・更新・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
社会潮流の整理(全体まとめ)
テ
ー
マ
概
今後の対応の方向性について(例)
要
1.人口減少、少子高齢化の進
・生産年齢人口の減少
・男女共同参画社会の推進(女性の社会参画の推進)
行による市民生活や都市活動へ
・現役世代の負担増
・高齢者の社会参加の推進
の影響
・経済成長への悪影響
・多世代交流型の社会システムの構築(世代間の扶助)
・市民への基礎的サービスの低下
・持続可能な都市経営展開のための人口確保・維持
・家族形態の多様化(単独世帯の増加等)
・人口減少に対応した都市機能や社会基盤の集約化、維持管理コストの低減
など
・子どもの健全育成に対する影響への懸念
2.社会経済情勢の変動による
・労働力人口減少等のともなう潜在的な成長率の低下
・選択と集中の観点にたった自治体の産業政策、成長戦略の策定・推進の必要性
影響
・労働分配率の低下、雇用・所得への影響
・戦略的な企業誘致活動の展開
・社会・経済のグローバル化の進展、企業の国外流出
・成長著しいアジア圏を中心としたグローバルマーケットへの展開
・新興国の急速な経済成長
・観光、環境、医療等の成長分野への注目
・海外との交流人口の増加(海外から日本へ)
・質の高い人材の育成、再教育等の必要性
など
・国での成長戦略の策定・推進
3.地球環境問題の顕在化によ
・地球温暖化問題への対応
・環境負荷の少ない産業構造への転換
る影響
・エネルギー問題の拡大、再生可能エネルギーへの注目
・低炭素型の都市構造(土地利用、交通システム等)への変革
・我が国の環境・エネルギー産業の強み
・市民の環境配慮型ライフスタイルへの変化
・関西の環境・エネルギー産業の集積
・地域における自立・分散型のエネルギー供給システムの導入
・環境・エネルギー関連の産業立地の推進
など
4.災害に強い安全・安心なま
・東日本大震災による甚大・想定外の被害発生、従来の防災対策の限界
・公共施設や都市基盤の耐震化、避難場所の確保
ちづくりへの対応
・東海・南海・東南海地震等の大規模な地震の発生が予測、震災リスク等への備えが急務
・防災教育の推進や、防災コミュニティの確立等のソフト面での対応
・市街地や施設の再配置を含む、都市構造・都市計画の見直し(リスクに強い都市構造)
・広域的な連携・交流の必要性
5.情報化社会の進展
・ICT(情報通信技術)の高度化と普及
など
・社会課題の解決のためのITの活用
・クラウドコンピューティング等の新しい技術・ビジネスの普及(所有するから、利用するへ)
(例)・スマートグリッドの展開
・コミュニケーション手段の多様化、勤務形態の多様化、環境負荷の低減等の影響
・ITS の進展による交通分野での効率化・低炭素化
・高齢化に対応した遠隔医療や遠隔介護など
・行政運営の効率化や透明性の確保、市民サービスの向上
・ITの普及・発達による負の影響
(例)
・フェース・トゥ・フェースコミュニケーションの減少によるコミュニティ機能の弱体化
6.地方分権の進展と地域主体
・分権型の地方自治の確立に向けた取り組みの進展
・行政の経営体力や運営能力の向上
のまちづくり
・市民、企業、行政がそれぞれ役割分担しながらともに公共を担う「新しい公共」の形成に向け
・市民や地域、企業等の各主体が参画し、意思決定や活動に関与する新しい公共ガバナンス
た検討
・行政におけるコーディネイト機能、機会の創出や場の提供、人材の育成等の必要性
など
・NPO活動やボランティア活動の増加、社会的起業への注目
7.税財政制度への対応
・厳しい経済環境のなかで伸び悩む税収
・より一層、自律的かつ効率的な行政運営の必要性
・高齢化にともなう社会保障コストの増加等による歳出の増加
・都市間競争における地域の特性や強みを生かした都市活力の向上、税源涵養
・厳しさをます財政状況、累積債務の増大(国・地方とも)
・高齢者や疾病予備軍の健康づくりによる医療費抑制や在宅・地域ケア体制の充実等
・今後の税財政制度の見直しの必要性の高まり
・自治体間の広域的な連携・調整等
・官民連携による行政運営の効率化の推進
8.社会基盤等の維持・更新
など
・高度成長期以降に整備された社会資本・公共施設の更新(建替等)時期が到来
・自治体保有資産の現状把握・分析の必要性
・社会資本・公共施設の更新コストの大幅に増加
・長期的・全体最適の発想による、戦略的な維持更新の推進(優先順位づけや、施設の統廃合等を含
む)
・民間の資金・ノウハウの活用
1
など
1.人口減少、少子高齢化の進行による市民生活や都市活動への影響
・我が国の人口は、2004 年(平成 16 年)にピークを迎え、2005 年以降は減少傾向が続いて
いる。今後はその傾向が一層強まり、国立社会保障・人口問題研究所の推計(平成 18 年)で
は、2047 年(平成 59 年)には 1 億人を下回ることが予想されている。
・今後は、さらに未婚化や晩婚化が進み、出生率が低下することによって少子化が進むととも
に、団塊の世代が定年退職を迎え、高齢化が急速に進行するものとみられる。
・年齢構成の内訳をみると、2055 年(平成 67)年には、老年人口比率は 40.5%まで上昇し、
年少人口は 8.4%にまで減少する。生産年齢人口も 51.1%まで減少する。
日本の将来推計人口
(千人)
実績値
推計値
140,000
0~14歳
65歳以上 【H17国勢調査】
総人口127,767千人
15~64歳
120,000
【H22推計値】
総人口127,176千人
老年人口:20.2%
【H52推計値】
総人口105,695千人
老年人口:23.1%
100,000
【H67推計値】
総人口89,930千人
老年人口:36.5%
80,000
老年人口:40.5%
生産年齢人口:66.1%
60,000
生産年齢人口:63.9%
生産年齢人口:54.2%
40,000
生産年齢人口:51.1%
20,000
年少人口:13.8%
年少人口:13.0%
年少人口:8.4%
年少人口:9.3%
0
昭
和
3
0
3
5
4
0
4
5
5
0
5
5
6
0
平
成
2
7
1
2
1
7
2
2
2
7
3
2
3
7
4
2
4
7
5
2
5
7
6
2
6
7
資料:国立社会保障・人口問題研究所
出生数および合計特殊出生率の推移
出 生 数
合計特殊出生率
2,000
2.50
出
生 1,500
数
(
千
人 1,000
)
合
計
2.00 特
殊
出
生
率
1.50 (
%
1.37
)
2.13
500
1.00
1955
1965
1975
1985
1995
資料:厚生労働省「平成 22 年
2
2005
2008
人口動態統計の年間推計」
年代別の人口割合(平成 22 年 10 月 1 日現在)
女
男
100歳
以上
80歳
団塊の世代
(60~62歳)
60歳
40歳
団塊ジュニア世代
(35~38歳)
20歳
1,200 1,000 800
600
400
200
0
0
年齢別女性人口( 千人)
200
400
600
800
1,000 1,200
年齢別男性人口( 千人)
資料:総務省統計局「人口推計」
(平成 23 年 4 月)
【市民生活や都市活動への影響】
・人口減少や人口構造の変化は、現役世代である生産年齢人口の減少を招き、我が国や経済や
都市活動の活力を維持していく上で大きな問題となる。既存の調査研究等を参考に、主に経済
面での影響を整理すると以下のとおり。
①生産年齢人口の減少
・15 歳から 64 歳までの生産年齢人口が減少、特に若年労働者の比率が低下することが予測さ
れる。生産年齢人口の減少を補完するものとして、女性や高齢者の就労が期待されるものの、
社会全体の労働力供給不足が懸念される。
②現役世代の負担増
・少子化と高齢化の進行は、社会経済を支える現役世代を減少させ、社会福祉の受給側である
高齢者の増加を促す。このことは、年金、医療、福祉等の社会保障の分野において、現役世代
の負担を増大させ、租税と社会保障負担をあわせた国民負担率を上昇させることにつながる。
・少子高齢化による介護需要の増大は、高齢者が受けられる福祉サービスの量・質面での低下
と、保健、医療、福祉分野のマンパワーの不足を招く懸念がある。
③経済成長への悪影響
・労働力人口の減少が経済にマイナスの影響を及ぼしたり、貯蓄を取り崩すと考えられる退職
者割合の増加などに伴う貯蓄率の低下によって、投資が抑制されるなど、経済成長に対する悪
影響が懸念される。
・続いて、社会面からみた影響は以下のとおり。
3
④住民への基礎的サービスの低下
・現行の地方行政体制のままでは、福祉や保健医療サービス等の基礎的サービスについても提
供することが困難になるとの懸念も指摘される。
・これまで比較的高齢化の進行が遅かった都市部においても急速な高齢化が見込まれることか
ら、それらに伴う諸問題が顕在化することが予想される。
⑤家族形態の多様化
・核家族の進行とともに、兄弟姉妹数の減少や寿命の伸びなどにより、子と同居しない高齢夫
婦や高齢単身者が増加するとともに、未婚率の上昇と相まって単独世帯が増加することが予想
される。
・未成年の子どものいる世帯の減少や子どものいない世帯の増加による家系の断絶など、家族
という概念そのものが根本から変わる可能性がある。
⑥子どもの健全育成に対する影響への懸念
・子ども数の減少による親の過保護や過干渉などとともに、子ども同士の交流、特に、異年齢
の子どもたちの交流機会が減少しており、子どもの社会性が育まれにくく、子ども自身の健や
かな成長への影響が懸念される。
・青少年期に、乳幼児と接触する機会が少なくなっており、その子どもたちが親になったとき
の育児不安などが懸念される。
【今後の対応の方向性について】
・以上のように、経済面、社会面の両面から、今後の都市の活力の低下が懸念される。今後は、
少子・高齢化に対応した新たな社会システムとして、男女共同参画社会の推進や高齢者等の社
会参加を進めるなど、これからの社会・経済を支える人的資源の涵養が必要である。その際に、
単に「高齢者」=「社会的弱者」として捉えるのではなく、元気な高齢者が支援の必要な高齢
者を支援するなど、同じ世代内で助け合えるシステムの構築や、リタイア層が子育てを支援す
るなど世代を越えた支援のしくみなど、多世代交流型の社会システムを構築していく必要があ
る。
・今後も都市の活力を維持し、持続可能な都市経営を展開していくためには、一定の人口規模
を維持・確保する努力が必要である。子育て、教育などのサービスに注力するなど、若い世代
にも魅力あるまちづくりを進めていくことが求められる。
・人口減少社会の到来と前後して、人口増加を前提に整備が進められた社会基盤の遊休化や、
維持・管理コストの増加が予測される。今後の社会基盤整備においては、既存ストックを有効
活用していくことを前提としながら、段階的に都市機能や社会基盤の集約化を進めるなど、維
持管理にかかる社会的コストを低減させていく必要がある。
4
2.社会経済情勢の変動による影響
【経済の低成長の継続】
・我が国の経済は、バブル崩壊後約 20 年にわたり、経済成長率が平均 0.9%(1991~2010 年
度の平均)と極めて低い水準にとどまっている。理由については諸説が提唱されているが、か
つてと比較して、我が国の潜在的な成長率が低下しているものと考えられる。
・今後の長期的な見通しについても、消費や生産を支える労働力人口の減少が続く中にあって
は、かつてのような大幅な経済成長は難しい状況にある。
我が国の経済成長率の推移
労働力人口の推移
男
女
男女計
7,000
労
働
力
人
口
(
万
人
)
6,586
6,000
5,000
4,000
3,825
3,000
2,761
2,000
1985
1990
1995
2000
2005
2010
資料:総務省統計局「労働力調査」
5
・我が国における経済の低成長が継続するなか、雇用や所得面において影響が拡大している。
・完全失業率については、1995 年に 3.0 を超えて以来、高い水準で推移し、2008 のリーマン
ショック以降、再び5%台に上昇している。
・所定内給与額についても、平成 1999 年に 30 万円に到達して以降、近年はその水準を維持
するにとどまり、2008 年には景気の悪化の影響を受け、再び 30 万円台を下回る水準に低下
している。
・雇用環境が悪化し、労働分配率が低下するなかで、被生活保護世帯数が増加しており、社会
保障コストの増加につながっている。
完全失業率のおよび所定内給与額の推移
完全失業率
完
全
失
業
率
(
%
所定内給与額
6.0
350
5.0
300
250
4.0
200
3.0
150
2.0
)
1.0
0.0
所
定
内
給
与
額
100
(
千
円
50
)
0
1985
1990
1995
2000
2005
資料:総務省統計局「労働力調査」
、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
被生活保護世帯数と保護率の推移
被保護世帯数
1, 200
被
保 1, 100
護 1, 000
世
900
帯
数 800
(
700
千
世 600
帯
)
保護率
24. 0
22. 0
20. 0 保
護
18. 0 率
16. 0 (
%
14. 0 )
12. 0
500
400
10. 0
1985
1990
1995
2000
2007
資料:国立社会保障・人口問題研究所「「生活保護」に関する公的統計データ一覧」
6
【社会・経済のグローバル化の進展】
・世界経済に目を移すと、国境を超えた企業活動や商取引、投資などが活発に行われ、地球規
模での経済の一体化(グローバル化)が進行中である。TPP(環太平洋連携協定)や FTA(自
由貿易協定)等の推進により、国境を越えた経済活動はさらに活性化する可能性が高い。
・我が国において、海外への直接投資は長期的には増加傾向にある。これは、製造業を中心と
した企業が生産拠点を海外に移行していることを意味する。海外の労働賃金の格差、円高の影
響等を踏まえると、今後とも企業・事業所の海外流出が進む可能性は高いといえる。
・我が国では、従来より国内から海外への直接投資が、海外から国内への直接投資を上回って
おり、相対的にみて、外資系資本の国内への投資が過少となる状況が続いている。
・経済のグローバル化は、国家間の自由な経済的取引を拡大し、経済活動のパイを拡大する効
果が期待される一方で、平成 20 年に勃発した世界同時不況のように、一金融機関の破綻が全
世界の経済に多大な影響を及ぼすなど、その悪影響についても認識しておく必要がある。
我が国の直接投資の推移
( 億円)
140, 000
120, 000
100, 000
国内から海外への直接投資
80, 000
60, 000
40, 000
20, 000
海外から国内への直接投資
0
-20, 000
1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009
資料:財務省「対内・対外直接投資」
海外生産比率と今後の予測(一例)
(海外生産比率=現地法人売上高÷(現地法人売上高+国内法人売上高)
)
7
・グローバル化の進展のなかで、中国やインド、ロシアなどの新興国等は急速な経済成長を実
現しており、これらの国々に対しては、世界中の企業が新たな市場として注目し、続々と進出
している。中国、インドを中心として今後とも GDP は拡大が予測される。
主要国の経済成長率の推移
日 本
イ ギリ ス
フ ラ ンス
インド
14.0
実
アメ リ カ 合衆国
イタ リ ア
ロ シア
ブラ ジル
カ ナダ
ド イツ
中 国
12.0
質 10.0
経
済
中国
8.0
インド
成
長
6.0
ロ シア
ブラ ジル
率
(
4.0
ド イツ
アメ リ カ 合衆国
イ ギリ ス
カ ナダ
%
)
2.0
日 本
0.0
2000
2003
2004
2005
2006
2007
フ ラ ンス
2008 イ タ リ ア
-2.0
資料:総務省統計局「世界の統計」
(平成 22 年 3 月)
世界経済の見通し
資料:財団法人日本経済研究センター「世界経済長期予測」
(平成 19 年1月)
8
・経済のグローバル化と並行して、人の動きや社会活動の国際化も進行中している。特に、訪
日外国人旅行者数や海外からの留学生数が増加傾向にある。一方、日本から海外への旅行者数
はこの 10 年間はほぼ横ばいで推移しており、「日本から海外へ」という人の流れが「海外か
ら日本へ」へと変化している。
・国では成長戦略の一つとして観光立国を掲げ、アジア圏をはじめ世界中からの交流人口の獲
得に向けた政策を推進中である。長期的には 3000 万人の訪日外国人を呼び込むことを目指し
ている。
日本人の海外旅行者数と訪日外国人旅行者数、海外からの留学生数の推移
日本人海外旅行者数
訪日外国人旅行者数
海外から の留学生数
20,000
140,000
18,000
旅
行
者
数
(
千
人
)
120,000
16,000
80,000
留
学
生
数
60,000
(
人
100,000
14,000
12,000
10,000
8,000
6,000
40,000
)
4,000
20,000
2,000
0
0
1985
1990
1995
2000
2005
資料:観光庁「観光白書」
、独立行政法人日本学生支援機構「留学生数の推移」
我が国の観光需要の推移と見通し
資料:観光庁
9
【国の成長戦略の動き】
・平成 22 年 6 月に閣議決定された「新成長戦略」では、「グリーン・イノベーション(環境
関連)
」
、
「ライフ・イノベーション(健康関連)」、
「アジア」、
「観光・地域」、
「科学・技術・情
報通信」
、
「雇用・人材」
、
「金融」の7つの戦略分野が示され、特に、「環境」・「健康」
・「アジ
ア」
・
「観光」の分野については、2020 年までに約 123 兆円の需要創造と 499 万人の雇用創造
が打ち出されており、2020 年度までの平均で、名目3%、実質2%を上回る成長を目指すも
のとされている。
資料:経済産業省ホームページ
「新成長戦略」における需要および雇用創造
分野
需要創造
雇用創造
環境(グリーン
イノベーション)
50兆円
140万人
健康(ライフ・
イノベーション)
50兆円
284万人
アジア
12兆円
19万人
観光
11兆円
56万人
資料:政府「新成長戦略(基本方針)~輝きのある日本へ~」
10
【今後の対応の方向性について】
・我が国全体での大きな経済成長が見込めず、また地域における人口・労働力等の供給制約の
影響が大きくなるなかで、自治体においては選択と集中の観点から経済政策・成長戦略を立案、
推進していく必要性が高まっている。
・製造業を中心にグローバルな企業の誘致競争は激しくなっているが、地域経済の活性化・雇
用維持の観点から、企業立地・企業誘致を推進することは自治体にとって重要な政策課題とな
る。競合する自治体・地域との差別化を図りながら、戦略的な誘致活動を展開していく必要が
ある。
・今後、持続的な地域経済の発展を支えるために、域内の企業に蓄積されてきた技術力や人材
力、その他の知的資源等を最大限に活用して、成長分野である観光、環境、医療などの国内の
需要創出を目指す産業を育成するとともに、成長著しいアジア圏を中心としたグローバルマー
ケットを視野に入れた市場開拓等も課題となる。
・経済・産業を支える労働力の不足に対しては、女性や高齢者の社会進出を促進するとともに、
将来的には海外からの人材調達を促進する必要性が高まる可能性がある、また、国内での限ら
れた人材資源を活用して、より一層、付加価値・競争力のある製品・サービスの開発等を促進
するための人材育成、再教育等のしくみについても検討していく必要性がある
11
3.地球環境問題の顕在化による影響
【地球温暖化問題への対応】
・地球温暖化の進行は、人類の生存基盤に関わる重要な問題となっている。砂漠化の進行や氷
床・氷河の減少などの直接的な影響のほか、食糧の生産、海岸の浸食、生物種の減少などにも
一層深刻な影響を及ぼすものと予想されている。
・我が国の CO2排出量については、総量、一人当たり排出量とも増加を続けてきたが、リー
マンショックによる経済不況以降は減少した。
・平成 21 年 7 月のラクイラ・サミットでは「先進国が 2050 年までに温室効果ガスを 80%削
減する」ことが合意され、我が国では先進国としての責任を果たすため、中期目標として「2020
年までに温室効果ガスの排出量を 25%削減する」という大きな目標を掲げ、低炭素社会の実
現に向けた取組を一層推進しようとしている。
全国のCO2の総排出量及び一人当たり排出量の推移
1, 400
C 1, 350
O
2
1, 300
総
排
出 1, 250
量
9. 70
9. 77
9. 84
10. 06
10. 18
10. 0410. 04
10. 01
9. 88
9. 91
9. 74
9. 73
9. 79
9. 48
一
10
9. 51
1, 301
9. 25 9. 29 9. 33 9. 25
1, 282
1, 286
1, 281
1, 276
1, 267
1, 239
1, 226
1, 213
(
1, 200
百
1, 161
万
1, 153
1, 154
1, 143
ト 1, 150
ン
C
1, 100
O
2
1, 050
1, 235
1, 254
1, 234
1, 238
9
排
出
量
1, 214
1, 199
8
(
ト
ン
7
)
0
1, 000
0
6
1990
人
あ
た
り
C
O
2
1995
2000
( 年度)
2005
C
O
2
/
人
)
2008
資料:独立行政法人国立環境研究所地球環境研究センター「日本の温室効果ガス排出量データ」
(平成 22 年)
12
各部門のエネルギー起源二酸化炭素(CO2)排出量(電気・熱 配分後)
資料:環境省「2009 年度(平成 21 年度)の温室効果ガス排出量(確定値)
」
国別 CO2 排出量割合(2007 年)
アメ リ カ
2 0 .1 %
その他 3 0 .0 %
先進国( G7 )
3 3 .3 %
日本 4 .2 %
ド イ ツ 2 .7 %
オースト ラ リ
ア 1 .3 %
イ ン ド ネシ ア
1 .3 %
その他新興国等
6 6 .7 %
メ キシ コ 1 .6 %
韓国 1 .7 %
イ ン ド 4 .7 %
ロ シ ア 5 .3 %
イ ギリ ス 1 .8 %
カ ナダ 1 .8 %
イ タ リ ア 1 .5 %
フ ラ ン ス 1 .2 %
中国 2 0 .7 %
資料:EDMC/エネルギー・経済統計要覧 2010 年版
13
【エネルギー問題の拡大】
・本年 3 月 11 日の東日本大震災に伴う原子力発電所事故等を契機に、エネルギー問題に注目
が集まっている。
・我が国では、バブル経済以降はエネルギー供給量はほぼ横ばい傾向となり、直近では減少傾
向に転じている。
・資源別の構成割合をみると、石油の割合が低下し、石炭、原子力の割合が高まっている。ま
た新エネルギーの割合も徐々に高まりつつある。
我が国のエネルギー供給の推移
資料:経済産業省「エネルギー白書 2010」
我が国の一次エネルギー国内供給の推移
資料:経済産業省「エネルギー白書 2010」
14
・また、世界では、新興国を中心とした人口や経済活動の活性化にともない、エネルギー需要
が拡大、化石燃料をはじめとする資源枯渇や水不足等に対して世界的な関心が高まっている。
・今後のエネルギー供給は増加を続けるものと予測されているが、資源別にみると天然ガスの
割合が高まるものと予測されている。また、再生可能エネルギーの割合も増加することが予測
されている。
世界のエネルギー供給量
(Gto e)
14
12
10
その他再生可能エネルギ ー
廃棄物
8
6
原子力
天然ガス
4
石油
2
水力
石炭
0
1985
1990
1995
2000
2007
資料:経済産業省「エネルギー白書 2010」
世界のエネルギー供給量と今後の予測
資料:東京ガス「2035 年世界のエネルギー予測」
出典:IEA:World Energy Outlook 2011
15
【我が国の環境・エネルギー産業の強み】
・一方、我が国では世界的にも高水準にある環境・エネルギー関連の技術力とノウハウを活用
しながら、今後の国内のエネルギー問題の解決を解決していくとともに、経済成長が著しい新
興国等における地球温暖化対策や水問題・交通問題の解決等に貢献することによって、我が国
の経済成長にも寄与するものと考えられる。
環境産業の市場規模
140
市
場
規
模
(
兆
円
)
120
50兆 円 超 の
市場開発
100
80
60
40
20
51
58
2004
2005
66
69
75
2006
2007
2008
41
0
2000
資料:環境省「平成 22 年版
2022ま で
環境・循環型社会・生物多様性白書」
環境技術に関する特許の各国シェア
資料:環境省「平成 22 年版
16
環境・循環型社会・生物多様性白書」
【関西の環境・エネルギー産業の集積】
・特に関西においては、蓄電池や太陽光パネル等をはじめとした新エネルギーや、廃棄物処理・
リサイクル装置、省エネルギー関連等の企業立地が進んでおり、我が国全体の環境ビジネスを
リードする立場にある。
関西の環境ビジネスの規模
(単位:億円)
環境ビジネスの分類
全国
1 公害防止装置
2 廃棄物処理・リサイクル装置
3 環境分析装置
4 環境関連サービス
5 施設建設(埋立処分場造成)
6 廃棄物処理・リサイクル
7 下水・し尿処理
8 環境修復・環境創造
9 環境調和型製品
10 新エネルギー
11 省エネルギー
合計
関西
13,462
3,314
432
2,180
582
221,619
10,930
3,909
60,994
8,594
11,123
337,139
全国シェア
3,030
1,090
50
270
90
33,800
1,880
590
11,190
3,720
3,030
58,740
22.5%
32.9%
11.6%
12.4%
15.5%
15.3%
17.2%
15.1%
18.3%
43.3%
27.2%
17.4%
資料:2010年度版関西経済白書
リチウムイオン電池生産金額の推移
「バッテリーベイ」プロジェクトマップ
k. フジプレアム(株)
播磨テクノポリス光都工場
j. カネカソーラーテック(株)
豊岡工場
g. 三菱電機(株)
京都工場
J. 三洋電機(株)
新工場
G. パナソニック(株)エナジー社
守口本社工場
d. 京セラ(株)
野洲工場
A. 新神戸電気(株)
彦根事業所
E. (株)リチウムエナジージャパン
c. 京セラ(株)
新工場(京都市)
滋賀八日市工場
a. 三洋ENEOSソーラー
岐阜事務所
l. パナソニック(株)・三洋電機(株)
尼崎工場
(c)ESRI Japan
K. 三洋エナジー南淡(株)
三原工場
日本
関西の対日本シェア
82.0%
3,858
4,000
3,500
80.0%
3,151
78.0%
2,893
3,000
2,500
2,708
76.0%
2,311
75.0%
2,200
2,000
e. 三洋電機(株)
滋賀工場
74.0%
73.3%
b. 京セラ(株)
伊勢工場
1,500
72.0%
f. (株)クリーンベンチャー21
吉祥院工場
1,000
I. 三洋エナジー貝塚(株) F. 日立マクセル(株)
京都事務所
貝塚工場
M. パナソニック(株)エナジー社
和歌山工場
500
k. シャープ(株)
葛城工場
L. 三洋電機(株)
洲本工場
関西
81.2%
C. (株)リチウムエナジージャパン
草津工場
H. パナソニック(株)エナジー社
住之江工場
h. シャープ(株)
堺工場
i. 三洋電機(株)
二色の浜工場
N. 三洋電機(株)
徳島工場
億円
4,500
D. (株)ブルーエナジー B. (株)リチウムエナジージャパン
長田野工場
新工場(栗東市)
太陽電池
リチウムイオン
70.0%
0
68.0%
2007年
2008年
2009年
資料:日本投資政策銀行「バッテリースーパークラスターへの展開」(2010 年)
17
【今後の対応の方向性について】
・各々の地域における温室効果ガスの削減や環境負荷の低減に貢献していくために、地域特性
に応じて、環境負荷の少ない産業構造への転換や、低炭素型の都市構造への変革、市民の環境
配慮型ライフスタイルへの変化などを促していく必要がある。
・また、従来のような大掛かりなインフラを必要とした大規模・集中型のエネルギー供給シス
テムへの依存を見直し、自然エネルギー・再生可能エネルギー等を活用した、地域における自
立・分散型の供給システムの導入に向けた取り組みを進めることが求められる。
・関西・滋賀県は世界でも有数の環境関連の産業・企業立地エリアであり、素材・部材から最
終製品の製造までの一定のサプライチェーンを形成している。本エリアの産業集積の強みを活
かした環境関連産業の育成・立地等も今後の課題となる。
18
4.災害に強い安全・安心なまちづくりへの対応
・本年3月 11 日に発生した東日本大震災は、死者・行方不明者数が約 20,000 万人に達する、
戦後最大となる甚大な被害を及ぼした。
・また、本年9月には、台風 12 号による豪雨により、紀伊半島を中心に 100 人を越える死者・
行方不明者が発生、平成になって最大級の台風による被害をもたらすなど、大規模な自然災害
が頻発している。
・東日本大震災では、想定外の大規模な津波により、東北地方の太平洋沿岸部の各都市や集落
が壊滅的な被害を受けたことによって、行政・産業・交通・居住等のあらゆる都市機能が麻痺
した。被災地においては、世界最大級の潮受け堤防が整備されていながら、想定を超えた津波
により壊滅的な被害を受けた地域があり、また避難の遅れによって犠牲者が大幅に拡大した地
域もあるなど、従来の防災対策の限界が露呈した面もあった。
・また、従来より安全であると宣伝されてきた原子力発電所において大規模な事故が発生し、
未だに事故が収束せず、被害が拡大している状況に至っては、我が国における安全神話が覆さ
れたともいわれる。
・今後とも、我が国においては東海・南海・東南海地震等の大規模な地震の発生が予測されて
おり、また各地における活断層の存在も確認されるなかで、震災リスクへの備えが急務となっ
ている。また、台風や豪雨等による土砂災害、水害等への対応も進めていく必要がある。
自然災害による死者・行方不明者の推移
19
・今回の大震災により、改めて、市民生活を支える公共施設やインフラの安全性、耐震性の確
保が問題となっている。
・公共施設については、地域における防災拠点ともなりうるため、特に耐震化等の対策を進め
ることが重要である。老朽化が進んでいる施設については、改築等も含めた抜本的な対応の必
要性が高まっている。
防災拠点となる公共施設等の耐震化の状況
資料:消防庁「平成22年度防災白書」
【今後の対応の方向性について】
・市民の生命と財産を守るため、震災や土砂災害、水害等への対策を進めることによって、災
害に強い安全・安心なまちづくりを推進することが急務となっている。
・今後の被災地の復興にあたっては、公共施設や都市基盤の耐震化等の災害に強いまちづくり
や、避難場所や食糧備蓄の確保はもちろんのこと、防災教育の推進や、防災コミュニティの確
立といったソフト面での対応が重要となる。
・東日本大震災では、津波によって海辺に集中していた都市機能がほぼ麻痺するなど、都市機
能が一極集中していることのリスクも明らかになった。今後は、リスク分散の観点から施設の
再配置や、都市構造・都市計画の見直しを図るなど、リスクに強いまちづくりを総合的に展開
していく必要性が高まっている。
・避難場所の確保や帰宅困難者問題にみられるように、災害の影響は基礎自治体の範囲を超え、
広域的に広がりをみせている。今後の防災対策にあたっては、各地域、自治体単位だけではな
く、周辺エリアも含めたより広域的な連携や交流等の取り組みを推進していくことが求められ
る。
20
5.情報化社会の進展
・ICT(情報通信技術)の高度化とその普及によって、インターネットなどの地球規模の高
度情報通信網が形成され、情報通信技術を駆使した新たな産業活動が大きな広がりを見せてい
る。我が国のインターネットの利用者数は 9,400 万人を突破し、普及率も 78%に到達。
・従来のパソコン形態から、携帯電話端末を進化させたスマートフォンやタブレット等の形態
が急速に普及している。
・近年では「クラウドコンピューティング」という考え方が広まりつつある。これは、ユーザ
ーがコンピュータのハードウェア、ソフトウェア、データ等を保有・管理するのではなく、イ
ンターネットの向こう側からサービスを受け、サービス利用料金を払う形態となる。いわば、
IT の「所有」から「利用」へと移行を進める概念として注目されている。
・これら急速に発展する情報通信技術は、経済産業構造だけでなく、コミュニケーション手段
の多様化、勤務形態の多様化、環境負荷の低減など、私たちの社会生活のあらゆる面において、
大きな変化をもたらすことが予想されている。
・近年では、環境・エネルギー分野において、「スマートグリッド」が注目されている。これ
は、発電設備から末端の電力機器までをデジタル・コンピュータ内蔵の高機能な電力制御装置
同士をネットワークで結び合わせ、自律分散的な制御方式も取り入れながら、電力網内での需
給バランスの最適化を行うものである。エネルギー問題の解決に向けた、高度な IT 技術を活
用が期待されている。
我が国のインターネット利用者数と人口普及率の推移
利用者数
10, 000
利
用 8, 000
者
数
6, 000
(
万
人 4, 000
)
2, 000
人口普及率
9, 408
78. 0
100. 0
80. 0
5, 593
60. 0
46. 3
40. 0
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009
資料:総務省「情報通信白書」
21
人
口
普
及
率
(
%
)
【今後の対応の方向性について】
・IT 技術の進歩により、コミュニケーション手段の多様化、勤務形態の多様化、環境負荷の
低減など、社会生活のあらゆる面において、大きな変化をもたらすことが予想される。近年で
は、ソーシャルネットワーキング等の新たなツールが発達し、人と人とのコミュニケーション
のあり方そのものが変化しつつある。
・IT 技術を「社会課題の解決」のために活用していくことも考えられる。例えば、環境・エ
ネルギー分野においては、先述したスマートグリッドの展開や、ITS の進展による交通分野で
の効率化・低炭素化などが考えうる。また、高齢化に対応した遠隔医療や遠隔介護など、医療・
福祉分野での活用も考えられる。さらに、高度化が進む情報通信技術を有効に活用して、行政
運営の効率化や透明性の確保、市民サービスの向上にも活用可能である。
・一方、IT の発達による負の影響も認識すべきである。従来のフェース・トゥ・フェースの
コミュニケーションが減少することによる影響として、例えば商店街の機能がネットショップ
に取って代わることにより、商店街に直接出向く消費者が減少することによって地域経済が衰
退し、コミュニティが弱体化する可能性もある。技術革新によるメリットとデメリットの双方
を勘案した、バランスの取れた活用が求められる。
22
6.地方分権の進展と地域主体のまちづくり
【地方分権の進展】
・平成 12 年(2000 年)の地方分権一括法の施行以来、国から自治体への権限委譲や裁量の
拡大など、分権型の地方自治の確立に向けた取組が進展している。
・近年では、抜本的な地方制度の見直しとしての「道州制」が注目をされており、関西では関
西広域連合が設立されるなど、従来の枠組みを超えた試みが始められている。
・国においては、平成 21 年(2009 年)に内閣府に地域主権戦略会議が設置され、住民に身
近な行政を自治体が自主的かつ総合的に担う「地域主権」の確立をめざして、権限委譲や地方
税財政制度等の議論がされている。
【地域主体のまちづくり】
・市民の価値観やライフスタイルの多様化に伴い、期待される公共サービスの領域は拡大して
いる。それに伴い、従来のような行政だけではなく、市民や企業も社会的な活動に参画するこ
とによって、市民、企業、行政がそれぞれ役割分担しながらともに公共を担う「新しい公共」
の形成に向けた検討が進められている。
・市民分野における取り組みとしては、地域におけるNPO活動やボランティア活動も増加し
てきており、社会的起業が注目されるなど、市民・企業による社会活動が活発化しており、地
域づくりの新たな担い手が増えている。
NPO 法人数の推移
45,000
40,922
38,165
35,271
40,000
35,000
法
人
数
(
累
積
)
32,050
30,000
27,066
25,000
21,932
20,000
16,752
15,000
11,183
10,000
5,000
6,869
3,965
1,880
0
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
資料:内閣府市民活動促進課
23
【今後の対応の方向性について】
・地方分権・地域主権の進展により、今後の自治体経営においては、国や県からのお仕着せで
はなく、自立的・自律的に求められる。
・そのためには、行政の経営体力や運営能力を高めるとともに、単なる行政主導だけではなく、
市民や地域、企業等の地域に関わる各主体が参画し、意思決定や活動に関与する新しい公共ガ
バナンスの発想が重要となる。行政においては、コーディネイター機能を高めるともに、「新
しい公共」の形成に向けた、機会の創出や場の提供、人材の育成等を行っていくことが求めら
れる。
24
7.税財政制度への対応
【厳しさを増す我が国の財政状況】
・近年における経済情勢の低迷による税収の減少や、高齢化の進展に伴う歳出の増大により、
国および地方自治体を通じた財政は逼迫状況にある。
・財政状況が厳しい中で、歳入-歳出ギャップが広がりを見せており、国と地方が抱える長期
債務は、年々増加傾向にある。
国および地方の税収の推移
( 兆円)
100
国税
80
地方税
33. 5
33. 7
35. 5
35. 5
33. 4
60
40
62. 8
55. 0
52. 7
50. 0
45. 8
1995
2000
2005
2009
20
0
1990
資料:財務省・総務省
社会保障給付費の推移
1,000,000
900,000
医療
年金
福祉その他
800,000
700,000
給
付
費
(
億
円
600,000
500,000
400,000
)
300,000
200,000
100,000
1965
1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2005 2008
資料:社会保障・人口問題研究所「平成 20 年度社会保障給付費」
25
国および地方の長期債務残高の推移
国
重複分
地方
1 ,0 0 0
長
期
債
務
残
高
(
兆
円
)
862
758
800
646
600
410
400
205
266
200
0
1985
1990
1995
2000
2005
2010
資料:財務省「我が国の 1970 年度以降の長期債務残高の推移」
26
【今後の制度見直しの必要性】
・先進諸国のなかでも日本は中福祉・中負担国家であるといわれるが、高齢化に伴う社会保障
費や社会基盤の維持・更新コスト等が増大すると予想されるなかで、国民の負担は増加せざる
を得ない状況にある。将来的にも持続可能な財政運営を実現していくため、国においても地方
においても、世代間の公平性等にも留意しながら、受益と負担のバランスのとれた税制や社会
保障制度等への見直しを進めることが喫緊の課題となっている。
租税負担率の国際比較
資料:財務省
注:租税負担率は国税及び地方税の合計の数値。所得課税には資産性所得に対する課税を含む。
社会保障給付費の国際比較
資料:社会保障・人口問題研究所「平成 20 年度社会保障給付費」
27
【今後の対応の方向性について】
・地方財政を取り巻く環境は厳しさを増す一方、地方分権・地域主権の動き中で、自治体の権
限や裁量が拡大し、課せられる責任や役割も増大している。自治体経営の舵取りが、市民生活
により大きな影響を及ぼすことが考えられることから、より一層、自律的かつ効率的な行政運
営が求められる。
・今後、各自治体では、財源の確保やコストの縮減などにより、財政基盤を一層強化するとと
もに、激化する都市間競争の中で生き残るため、地域の特性や強みを生かした都市活力の向上
に取り組み、税源涵養を図ることが必要となる。
・医療・介護等の社会保障コストは高齢化とともに増加傾向にあるが、高齢者や疾病予備軍の
健康づくりによる医療費抑制や在宅・地域ケア体制の充実等を通じて、持続可能なしくみづく
りを進めることが必要である。
・あわせて、広域的な課題への対応、行政事務の一層の効率化を図るために、自治体間の広域
的な連携・調整等を図っていくことが重要である。
・国や地方自治体で指定管理者制度、PFI 事業、市場化テストなど、官と民が連携する公民協
働(PPP)の取組が進められているほか、近年では、社会資本の整備・管理においてコンセッ
ション方式などの新たなスキームの導入も含めた検討がされており、今後の活用が課題である。
28
8.社会基盤等の維持・更新
【社会基盤等の維持・更新需要の高まり】
・我が国では、道路や下水道等の社会資本の整備が進んできたが、単年度あたりの固定資本形
成は 1996 年をピークに減少傾向にある。
・一方、今後は過去に整備された社会資本の更新(建替等)のコストが大幅に増加し、30 年
後には約5兆円まで拡大するものと予測されている。
日本の社会資本ストックの推移
社会資本の維持管理・更新費の推計
14. 0
維持管理費
更新費
災害復旧費
新設( 充当可能) 費
12. 0
費
10. 0
用
額 8. 0
( 6. 0
兆 4. 0
円
2. 0
)
0. 0
-2. 0
1980 1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050 2060
資料:国土交通省「国土交通白書」
(平成 22 年)
29
・日本総研による自治体に対するアンケート調査結果(平成 22 年7月)では、財政的課題と
なっている社会資本ストックは「公立学校等」が最も多く、
「道路・橋梁等」「庁舎・宿舎等」
がこれに続いている。
自治体にとって財政的課題となっている社会資本ストックの種類
900
800
700
経
済
的
イ
ン
フ
ラ
600
500
社
会
的
イ
ン
フ
ラ
400
300
200
100
0
公
立
学
校
等
道
路
・
橋
梁
等
庁
舎
、
宿
舎
等
環
境
施
設
文
化
施
設
公
営
住
宅
下
水
道
上
水
道
ス
ポ
ー
ツ
施
設
福
祉
施
設
病
院
産
業
施
設
公
園
・
河
川
鉄
道
・
バ
ス
他
の
社
会
的
イ
ン
フ
ラ
空
港
・
港
湾
他
の
経
済
的
イ
ン
フ
ラ
資料:日本総研「平成 22 年度・今後の社会資本ストックの戦略的維持管理等に関する調査」
【今後の対応の方向性について】
・我が国においては、高度経済成長期に整備された社会基盤・公共施設を中心に、建替え・更
新の時期に差し掛かりつつある。社会基盤・公共施設は、市民の日々の生活・行動を支える重
要な資産であり、その維持・管理については高い安全性が求められるものである。
・一方、財政状況は厳しさを増しており、補修・更新のための財源の捻出が難しくなりつつあ
る。補修・更新等の先延ばし・放置によって、インフラの安全性が脅かされれば、市民の生命・
財産を守るという自治体の責務が果たせなく可能性も高まる。
・そのため、自治体が保有する資産の寿命や耐震性等を詳細に把握しながら、限られた財源を
有効に活用するための優先順位づけや、施設の統廃合等を含め、長期的・全体最適の発想で取
り組む必要がある。
・また、最近では民間の資金・ノウハウを社会資本の整備・維持管理に活用するコンセッショ
ン方式などの新たなスキームの導入に向けた検討もはじまっている。こうした新たな整備手
法・財源調達手法も検討していく必要がある。
30
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