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カラビーヤウ多様体を通じて

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カラビーヤウ多様体を通じて
カラ ビーヤウ多様体 を通 じて
小木 曽
啓
示 (数 学科)
oguiso@rl■s.u― tokyo.ac.jp
専門 は複素代数幾何学 で、主 に標準束 が 自明 であるよ
うが多様体 に関す る研究 をして い る。標 準束 が 自明 であ
る多様体 は、ある意味 で無重力状態 におかれた多様体 で
あ り、“方 向性 "を つ けるには人工的 に偏極 をあた える
必要があるとい う意味で 自然 に扱 えない面 もあ るが、他
方、周期 に関す る振 る舞 い はよ く、K3曲 面 とよばれ る、
その性質 の美 しさで多 くの数学者 を魅了 して きた 曲面 の
一般化 で もある。従 って、 い ろい ろな、美 し くかつ面 白
abstractな 方法 で あった。 難点 はその 方法 で 得 られ る
結果 は、予想 よ り強 く「本 当 の有限性」 をも導 いて しま
うところにあった。従 って、 (「 本当 の有限性」 には反例
のある)第 2チ ャーン類 が消えてしまうようなファイバ ー
空 間構造 には、全 く無力 な方法だ った。昨年 の今 ごろ
(10月 頃)、 対極 にあ る、第 2チ ャー ン類 を消 して しま
うフ ァイバ ー空 間構造 について も有限性予想 を解決す る
ことが 出来た。その解決 には、前段階 として、第 2チ ャー
ン類 を消 して しまうようなファイバ ー空間の幾何学的構
い性質 を もって い るに違 い ない と信 じられている多様体
で もある。
その 1つ のクラスが 3次 元 カラビーヤウ多様体 と呼ば
造 をかな り詳細 に明 らかにす ることが必要 になった。対
数的極小 モ デル理論、表現論 な ど、証明 にはいろんな道
れる多様体 で、10年 ほど前 に物理学者 Candelasら によっ
て ミラー対称性 と呼 ばれ る純数学的 には予想だ にで きな
具 が (少 な くとも筆者 の方法では)必 要 になったが、結
果的 には非常 に簡明な構造 になって しまうことがわかっ
かった意外 な対称性 が発見 された ことで、数学者、物理
学者 の間 に一大 センセ イ シ ョンを巻 き起 こした多様体 の
た。 これは筆者 には少 し驚 きで もあ り、 この構造定理 自
身 が予想解決の過程で得 られた副産物 に もなった。 (た
クラスで もある。 90年 の 中頃 には
e― print serverに 毎
日の様 にタイ トルにカラビー ヤウ とい う文字のはいった
preprintが 出 ていた。Candelasら が 実際 に観察 した と
だ前提 としていた筆者 の論文 の 1つ に不備 が見 つかって
しまい、最初 か らや り直 さなければな らない ところが 出
てきてしま うとい うハ プニ ングはあったが。)フ ァイバ ー
思われ る超 曲面型 カラビーヤウ多様体 に対す る、 ミラー
現象 は、数学者 バ テ レフによる トー リックファノ多様体
空 間予想 の完全解決 には、あ と、特性類 を消 して しまう
(仮 想的)フ ァイバ ー空 間構造 へ の フアイバ ー空 間構造
の超 曲面族 に対す る位 相的 ミラーの数学的構成、 コ ンセ
ヴィッチ、 マニ ン らによる曲線の安定写像 のモ ジ ュライ
達の収束の解析 にかかわ る問題 が残 ってい るが、力不足
で まだ出来 ていない。 この一連の研究 は、結果や方法 は
理論、量子 コホモ ロジー群 の数学的整備発展 を経 て、最
終的 には数学者 ギヴ ェンタール によって純数学的 にも検
ミラー とは関係 しないのに、 ミラー予想がなかった ら定
式化す る ことに思 い至れたか どうかす らわか らない とい
う点 で、 ミラー予想 に大 き く依存 した。
証 され、ある意味で一段落 ついた ところもあるようである。
ところで、筆者 は、川又氏 による 3次 元代数多様体の
バ
ア ンダ ンス予想の解決に触発 され、92年 頃か ら、ミラー
また、 もう一 つ の貴重 な “副産物 "は 、 この研 究 を通
じて、 い ろんな数学者、物理学者 と知 り合 え、時 として
とは無関係 に、純代数幾何学的な視点か ら 3次 元カラ ビー
ヤウ多様体 の研究 をはじめて いた。 だか ら、その過程 で
海外 の研究集会 に呼んで もらえた り、その時 々に違 うバ ッ
クグラウンドをもった研究者の人達 と議論 できた ことだっ
何 とな く感 じて いた ことが、錐予想 と呼 ばれ る、 ミラー
た。昨年 1年 はフンボル トフ ェロー として Viehweg氏
の下、 ドイツのエ ッセ ン大学 に滞在 し、氏 と新 しい共同
対称性予想 の 1つ の数学的定式化の中に現れ る予想 と密
接 に関係す る ことを、Morrison氏 か ら指 摘 された時 は
驚 いた。 そ こで錐予想 の幾何学版 であるファイバ ー空間
研究 をす るとい う機会 に恵 まれた (近 く出版予定 )。 そ
の研 究 は、す ぐ後 に、氏 によって違 った方法 で一般 の場
予想 (一 般 にはフ ァイバ ー空 間構造 は無限個 あるのに同
型 を法 とすれば有限個 になって しまうとい う予想 )を た
合 に拡張 されて しまった とい う点では必ず しも成功作 と
はいえない し、筆者 の貢献度 もあまり大 き くない もので
て、 その予想の解決 を目指す ことにした。調 べ てい くう
ちに第 2チ ャー ン類 と呼 ばれ る特性類 が問題 とかか わる
はあ つたが、 ある種 の楕円曲面族 の準 自明性 とい う今 ま
での筆者 の研 究 とは異質な問題であったにもかかわ らず、
カラビーヤウ多様体 の フ ァイバ ー空間構造 を調 べ る時 に
学 んだ楕円 フ ァイバ ー空間構造 に関す るい くつかの技法
ことが わか って きた。 この ことは、“第 2チ ャー ン類 が
ある程度大 きい"場 合 に予想 を解決 した Perternell氏 と
の共同研究 (98年 出版・ preprintは 96年 頃完成 )で 明 ら
か にな った。 この論文 の 方法 は Alexeev氏 の対数的 曲
面のモジュライ空 間 の有界性定理 に基 くもので、比較的
-6-
や、 K3曲 面 の研究 によ くでて くる周期写像の考 えが役
だち、そ こで少 しお手伝 い出来た ことがち ょっと嬉 しかっ
た。 また、 この研究 と Borcherdsら による先駆 けの仕
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-7-
研究紹介
デ ー タマ イ ニ ング とゲ ノム情報科学
森
下
真
― (情 報科学科 )
[email protected]― tokyo.ac.jp
平成 11年 9月 に理 学部情報科学科 に赴任 しました森下
真 一です。大規 模 なデー タベ ースか ら経験則 を高速 に抽
出す るためのデータマ イニ ング技術 の研究 と、膨大 なゲ
ノム デー タの解析 を、や は り高速 に行 うゲノム情報科学
の研究 をしてお ります。
デ ー タ マ イエ ング
(data minil■
g)は 、耳慣 れ な い言
葉 か もしれ ませんが、巨大 なデータベ ースを鉱 山 にた と
え、 そこか ら値千金の鉱脈 のような経験則 を発見す ると
い う意味 を もつ造語 です。 1993年 ごろか ら IBMア ルマ
デ ン研究所で研究が盛 んにな り、特 に ビジネスデータヘ
の応用 が著 しく、遺伝子情報 へ も適用 されてい ます。従
来 の回帰分析 な どとの違 いの一つ として、連続量 ではな
また、ゲノム上 高精度遺伝子地図の作成 にも取 り組 ん
でいます。従来 のゲノム情報科学の貢献 の一つ として、
数百万個 にお よぶ cDNAを デ ー タベ ース化 し、配列 の
類似性 が 高 い cDNAを 探す機能 (Blastな どのツール)
を提供 した ことが あ ります。実際、多 くのユ ーザに利用
されて い ます。 しか し cDNA間 の比 較 だ けで は、選択
的 スプライ シング・ プロモー タ配列 な ど転写 に関連す る
重要な情報が見 えない とい う問題 もあ ります。幸 い1999
年後半以降 はヒ トゲノムの公 開 が進展 し、DNA配 列 と
い う正確 か つ 完備 な情報 を もつ物差 しの上 に、cDNA
をすべ て写像 して上ヒ
較す る ことが不可能 ではな く現実味
を帯 び て きて い ます。 しか し、 数 百万 個 に も及 ぶ全
cDNA配 列 を塩 基 数 約30億 の ヒ トゲ ノム 上 に exon―
く離散的 な値 を もつパ ラメータを対象 とし、パ ラメータ
の値 がある離散値 と等 しくなる条件 の論理積 を考 え、論
intronの 構造情報 も明 らか に しなが ら高速 に写像 す る
理積 の間 に相 関度 を定義 し、相関度 の高 い組合 せ を高速
に計算す ることが大 きな研究テーマ になっています。パ
DNAと
ラメータ数 が数百万 にお よぶ ことが稀 ではないため論理
積 の数 は膨 大 にな り、計算 の最適化 が必要 にな ります。
計算中に考慮す べ き論理積 をうま く選択 し、調 べ て も無
動 的計 画法 の利 用が望 ましい のですが 、動 的計 画法 は
Blastな どの近 似的解法 に比 べ計算 の負荷 が大 きい とい
駄 な論理 積 の集合 を切 り落 とす prulling法 の設 計 が重
要 にな ります。我々 は相関度 を定義す る統計量 の性質 を
DNA配 列 に長 さが数千 の cDNA配 列 を平均10秒 程度
利 用 した pruning法 で あ る ApriOriSMP法 を設計 開発
し、以前 は解法 が難 しい とされたベ ンチマー クテス トを
効率的 に解 くことに成功 しました
(1)。
デー タマ イエ ングの応用 として、ゲ ノム情報科学 の研
究 も行 つてお ります。例 えば、ゲ ノム 医科学分野 で は
SNPと 呼 ばれ る遺 伝 的多型性 をもつ ゲノム上 の 1塩 基
の変異 を数十万 か ら数百万のオーダーで収集す る計画が
あ ります。遺伝病 との相関 の高 い SNPの 組合 せ を計 算
するために ApriOriSMPを 利用することを考 えてい ます。
のは容易 ではあ りませ ん。 また,高 精度 に読 まれた ヒ ト
は異 な り cDNA配 列 には読 取 の ミスが 多 く、
このよ うな読取 ミスに も柔軟 に対応 がで きる感度 の高 い
う問題 が あ ります。我 々 は現 在、塩基数 が 約 3千 万 の
で写像す るソフ トウエ ア技術 を開発 しましたが、 もう 1
桁 の性能向上かで きないか模索 して い ます。 そして近 い
将来 WWWか らゲノム上 高精度遺伝子地図 (図 2参 照)
を公 開 したい と考 えて い ます。
参考文献
●
[1]S.MOrishita and」 .Sese."Traversing ltemset
Lattices with Statistical Metric Prunillg"Pη ε
.げ
4C′ 7(弥 α4Cη g670D‐ 師α4RT(シ 笏夕.θ %Dα ‐
″み
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夕
2S ρODtt pp.226‐ 236,May 2000.
[2]T.HiShiki,S.Kawamoto,S.Morishita,K.Okubo:
BodhⅣ Iap: a human and mouse gene expression
“
ゲノム情報科学 の研究 で は、他 に約 2万 個 の ヒ ト遺伝
子 (mRNA)が 様 々 な異 な る細胞 中 で どれだ け働 い て
い る (発現 して い る)か とい う定量的な情報 を公開中の
www サーバ ー BodyMap lhttp://bOdymap.ims.u― to―
kyo.ac.jp/図 1参 照)を 開発 してい ます
(2)。
各細胞 に
発現 している遺 伝子 をその分布 の偏 りか らランキングす
(3)、
る機能
発現 の類似性 か ら遺伝子 をグループ化す る
ことで機能 の異 なる遺伝子 を分別す る機能 な ど、他 に類
のないユ ニ ー クな情報 を提供す るサーバ ー として認識 さ
れ、海外か らのアクセス も過半数 に及んでいます。
-8-
database"Attθ ″グ
θ 4θ グ
ゐ Rω ι
απれ Volume 28,
Issue l,pp.136-138,January 2000
[3]」 .SeSe,H.NikaidOu,S
S
Kawalnoto,Y.Minesaki,
Ⅳlorishita and K.Okubo.BodyL/1ap incOrporat‐
ed PCR‐ based expressiOn prOfiling data and a gene
ranking system. To appear in Stθ ″グ
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研究紹介
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図 は遺 伝 子 の 細 胞 別発 現 量 を表 示 した GS Cardの 例 。
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図 2
開発 中 の ゲ ノム上 高精度遺伝子地 図のイメー ジ
21番 染色体 DNA配 列 の一 部 に cDNAを 写像 した結果。
複 数の aLerna‖ ve splicingや プ ロモ ー タ配列 が分 か る。
-9-
研究紹介
太 陽 の 100倍 の質量 をもつ回転 ブラ ックホ ール
牧
島
一
夫
(物
理
学
専
攻
)
maxllna(Dphys.s.u― tokyo ac』 p
重 い星 は、進化 の最期 に潰れてブラックホール (BH)
にな る。BHは 、 その質量 に比例 した半径 Rsの 「事象
の地平線」 に囲 まれ、その内側か らは光 も逃 げ出せ ない
ので、暗 い夜空 に潜 む BHは 簡単 には発見 で きな い。
系統 的 な X線 分光 を行 って きた。 その結果、 8個 ほ ど
の ULXは 標準降着 円盤 のスペ ク トル を示 し [5]、 残 る
3個 ほ どは硬 い「べ き関数 J型 のスペ ク トル をもつ こと
を発見 した。後者 は、光学的に薄 い降着円盤 か らの放射
しか し BHと 星 とが 近接連星 をな し、星か ら BHへ と
ガスが 降着す ると、 BHの 周 りにで きる降着 円盤 か ら強
であ り、や は り BH連 星 に特有 で ある。 さ らに IC342
い X線 が放射 され、 目立 つ天体 とな る。 は くち ょう座
再観測 した ところ、 一 方 のスペ ク トル は標 準状 態か ら
「 べ き関数」状態 に遷移 し、 また他方 のスペ ク トル は、
にある強 い X線 天体 Cyg X‐ 1が BH連 星 に違 い ない と
う達見 を、世界 に先駆 けて1970年 代 はじめに唱えたのは、
本学名誉教授 の小田稔博 士である [1]。
以来、 日本 は BH連 星 の研 究 で世界 の トップ を走 り
続 けて きた。 ある条件で降着 円盤 は、幾何学的 に薄 く光
学的 に厚 い「標準状態」 とな り、 そ こか らの X線 放射
は、各種 の温度 の黒体放射 を一定 の比 率 で混ぜ合わせた
「多温度黒体放射」 にな ると考 えられ る。 この予想 は、
宇宙科学研 の 3世 代 の衛星「てんまJ「 ぎんが」「あすか」
によ り、5個 ほ どの BH候 補 の観測 を通 じて検証 され
てきた [2]。 BHを 中性子星 か ら区別す る方法が確立 し、
観測 データか ら求 めた 降着 円盤 の 内縁 の半径 が 3Rsと
よ く一 致す ることも見 出 された。 この 3Rsは 、 一 般相
対論 のために安定 な円軌道 が消失す る半径 なので、理論
的な予想 とも辻棲 が合 う。 1996年 には王者 Cyg X‐ 1の
降着円盤 が、 16年 ぶ りに標準状態 とな り、我 々が 開発 し
た「あすか」 ガス蛍光比例計数管 (GIS)[3]の 観測 デ
ー タか ら Rsを 求 め、そ こか ら BH質 量 を推定 した とこ
ろ、 ∼ 1郷化 と求 まった。 これ は光 学対応天体 の軌道 ド
ップラー運動か ら求 めた値 とよ く一 致す るため、我 々は
「Cyg X‐
た
とい う渦巻 き銀河 にある 2個 の ULXは 、 7年 を隔 て て
偶然 ではあるが逆 向 きに遷 移 した ことが発見 された [6]。
この様 子 を図 に示す。 こ うした遷移 は BH連 星 に固有
な特徴 なので、ULXが ∼ 10M%の
は確定的 となった。
BH連 星 であ る こと
この結果 には続 きが ある。∼ 100〃 。と重 い BHで は、
降着 円盤の内縁温度 は、理論的 には∼ 05 keVを 越 えな
い はずなのに、ULXで 観澳1さ れた内縁温度 は、 いずれ
もその 3∼ 4倍 に達す る。我 々 は、BHが 高速 で 回転す
る「Kerrブ ラ ック ホール」 になっていて、その場合 に
は安定 な 円軌道 が 0.5Rsま で 接近 で きるた め、 円盤 の
内縁温度 が高 くなると考 えてい る。超 高速回転す る重 い
BHを どうやって作 るか、そのシナ リオに興味 が もたれる。
こうした進展の一方で2000年 2月 10日 には、「 あすかJ
の後継 機 となるべ き ASTRO― E衛 星 が、M― V-4ロ ケ ッ
ト1段 目の不調 により、我 々が釜江研 な どと共同で心血
を注 い で 開発 して きた臨
検 出器 もろとも、失われて
[7]。 筆舌 に尽 くせない痛手 であるが、皆様 の
ご支援 のおかげで、再挑戦 へ の道が 開けつつ ある ことを、
ご報告 かたがた感謝 したい。
しまった
1は 正 真 正銘 の BHで ある」と宣言す るに至 っ
[4]。
系外銀河 には新たな驚 きが待 って いた。 20年 も以 前 か
ら、近傍 の 渦巻銀河 の腕 には、異常 に明 るい点状 の X
線源が しばしば観測 されてお り、大 きな謎 となっていた。
それ らの X線 光 度 は太 陽光度 の 数百 万倍 に も及 ぶ。
重力 が その 放 射 圧 に勝 つ た め に に は、 中心 天体 に∼
10Mん もの質量が必要なため、 それ らは BHだ ろうと考
えられて来た。 しか し∼ 10餌 も の BHが 星 の進化 の果 て
に作 られ る とい うコンセンサスは無 く、 この考 えは仮説
の域 を出なかった。
我 々 は こ う し た 天 体 を ULX(Ultra_Luminous
Compact X‐ ray Sotlrce)と 名付 け、「 あすか」 を用 いて
-10-
参考文献
[1]レ ビュー は、M.Oda,動 形
Sc・
力πθ
ιRι υグ
αυ
s 20,757
`ι
(1977)
′
αスリスS′%9ρ ゎs.ェ 308,635(1986)
[2]K Makishima θ
[3]大 橋隆哉、牧島一夫、物理学会誌、1994年 4月 号、
p.287
α′,4s′ γ
[4]T Dotaniι ′
ρ
ρtts.′ Lι 滋6485,L87(1997)
[5]K.Makishima ι′αス,4s"9ρ のS.ノ 535,632(2000).
[6]A Kubota,T.Mizuno,K.Makittima,Y.Fu―
kazawa,J.Kotoku,T.Ohnishi&M.Tashiro,
スs′ %σρtts.工 ιι
′
″簿,in press(2001).
[7]牧 島一夫、「科学J、 2000年 8月 号、p.642.
研究紹介
図の説明
「 ぁすか」衛星で、1993年 と2000年 に、近傍の渦巻き銀河 Ю342を 観測 した結乳 左の 2つ は光の画像に X線 の画像 (角 分解
能があまり良 くない)を 重ねたもので、Souro,1 と SOurce 2と いう、きわめて明るい 2つの XI線 源が見られる。 1993年 には
Source lが souFce 2よ り明るかつたが12000年 には逆転 した。有はそねらの X線 スペ ク トル (装 置の応答を取 り除いたもの)
で、 ア年間 に sOurce lは F標準状態」か ら「べ き型状態 へ Source 2 1よ その逆の遷移 をしたことがわかる..
J‐
-11-
研究紹介
太 陽 の 内部 を音波 で見 る
柴
橋
博
資
(天 文学専攻)
shibahashi@astron,s.u‐ tOkyo.ac.jp
スイカを叩 いて その音色 を聞 き分 け、食 べ ごろを調 べ
が誕生 してからその進化の過程 で、中心部は収縮 してい
く。角運動量を保存 しなが ら収縮すれば、当然、回転 は
る。 これ は音 を使 つてスイカの 内部 を直接 目で見ず に診
断 して い る訳 だ。 これ と同 じ原理 を使 って太 陽 の内部 を
速 くなって い くだろう。 一 方表面 では、太陽風が外 に吹
探 る研究 (「 日震学」 と呼 ぶ)が 進 んで い る。太陽面 で
はいつ も約 5分 位 の周期 の振動 が起 こっている。太陽 の
き出 しているので、次第 に回転 が遅 くなってい くだろう。
ところが結果 は、表面層の方 が 回転 が速 い。対流層内 の
表面近 くで起 こってい る対流運動 によって太陽全体が い
つ も叩かれてい るか ら振動 しているのだ と考 えられてい
自転 は、大雑把 に言 うと表面 で見 られ る自転 と同 じで、
緯度 に強 く依 って いて深 さにはあまり依 って い ない。一
て、観測 されている振動 は、 ガス圧力 を復元力 とす る固
有振動 モー ドが多数重 なった ものである。 この振動 を解
方、内部 の輻射層 は、表 面赤道付近 よ りもゆっ くりした
岡1体 回転 になっている。
析すれば、言わば太陽の音色 を聞 き分 ける ことにな り、
太陽内部 を探 ることが 出来 るのだ。
この対流層 の非一様 回転 か ら輻射層 のほぼ一様 な回転
へ のE移 層 は非常 に薄 い。 この遷移層が、対流層直下で
多数 の固有 モー ドを解析す る事 に よ り、 まず太陽内部
の音速分布 が判 る。音速 は温度 が高 い ほ ど速 いので表面
進化 モ デル より音速 が速い層 に一 致 してい る。進化 モ デ
ルで は、対流層直下 の輻射層 で は拡散 によって水 素 が深
か ら深 さと共 に速 くなるが、中心近 くになると逆 に少 し
遅 くなって い る。 これは中心部 でヘ リウムが外 よ り多 く
さと共 に僅 かに減少 して い る。音速 は温度 だけでな く化
学組成 にも依 るか ら、 この遷移層で現実の太陽の音速が
含 まれて い ることを示 して い る。中心核 での核反応 の証
拠 と見なす事 が 出来、太陽の年齢 を これか ら決 める事 が
速 いのは、自転 の様子 の急激な変化 に伴 う攪拌のために、
深 さに伴 う水素の減少 をモ デル よりも抑 えて い るか らで
出来 る。太 陽の音色 を聴 くだけで年齢が判 るとは、画期
的 ではないか。太陽中心部 で発生 したエ ネル ギー は輻射
で運 ばれ 、あ る程度 よ り外側 か らは対流で運 ばれ る。中
心か ら約 0.7太 陽半径 ぐらいの ところで音速 の傾 きがガ
クッと急 に変わ っていて、 ここが輻射層 と対流層の境で
あると判 る。恒星 の一生の過程 を追 う理論 に基づいて作
られた太 陽 の進 化 モデルの音速分布 と、 こうして求めた
現実の太陽内部 の音速分布 を比 べ てみると、全体 として
割合良 く合 っているが、対流層の直下 で、現実 の太 陽の
方が音速 が顕著 に速 い。
太陽が 自転 して い る事 も固有振動数 に影響す る。 そこ
●
はないか と、考 えられた。実際、最近 になって太陽の振
動数解析 を更 に進 めて化学組成の分布 も決め られ るよう
にな り、水素の深 さ分 布 は攪拌 が起 きて い ることを示唆
す る結果 が得 られるようになった。
日震学 は、太陽 ニ ュー トリノの問題、太陽表面 での リ
チウム欠乏の問題、恒星進化 に伴 う内部での角運 動量配
分の問題、太陽活動の問題等、太陽・ 恒星 に関す る重要
な基本的 な問題 に新 たな切 り口 。取 り組み方 を提供 せん
としている。
参考
で、詳細 に解析すれば自転 の様子 が深 さや緯度 の関数 と
http://ヽ ″
wW.astron.s.u‐ tOkyO.ac.ip/
して どんな風 になっているか を求 める事 が 出来 る。太 陽
group/shibahashi/helioseismology99.htnll
―-12-―
0
研究紹介
大気の進化 :鉱 物 一 水 一 大気の相互作用からの推定
村 上
隆 (地 球惑星科学専攻 )
[email protected]‐ tOkyo.acjp
先 カ ンブ リア時代 (約 46-6億 年前 )に 大気 の組成
は大 き く変化 した と考 えられて い る。例 えば、二酸化炭
年以上前 の古土壌 には風化 生成物 は今 まで発見 されて い
なかった。 このよ うな状況で、我々 は当時の大 気 の情報
素 は現在 の 1万 倍 か ら現在程度 まで減少 した と考 えられ
て い る。 この減少 には風化反応 (鉱 物 ― 水 一 大気 の相
を直接反映 す る風化生成物 を見出す作業 を行 って きた。
最近 つい にカナダ、 プ ロン トの古土壌か ら、25億 年前 の
互作用 )が 大 きく関与 し、大気中 の二酸化炭素 は主 に炭
酸塩 として地殻 に移 り、大気か らは除去 されていった。
風化生成物 を発 見 したので紹介 した い。
先 カンブ リア時代 における二 酸化炭素の減少の定量的取
り扱 い は、 シ ミュ レー シ ョンで行 われて い る。我々の研
0
究室では、先 カンブ リア時代 の実際 の岩石 か ら推定値 を
導出 しているが、本小稿 で は紙面 の関係 で割愛す る。一
が、 よ り多 く形成 していた。 どの試料 の Rhabdophane
方、地球上の生命活動 によ り生 じた と考 えられて いる酸
素 の増加 は、 シ ミュ レー ションで はな く、地質時代 に起
dOphane中 で も、 全岩 中 で も、 ほぽ一 定 で あった。全
こつた様 々な現象 を元 に、推定 されて い る (図 1の 点 で
示 した領域 )。 このモデルで重要なのは、約20億 年前 の
れ らは 当 時 の地 下水 中 で、Ceが Laや Ndと 同様 の挙
動 を して い た こ とを強 く示唆 す る。 現代 の 風 化 で も
Rhabdophaneが 形成す ることは知 られて い るが、酸化
2、
3億 年 の間 に、 2桁 か ら 3桁 の急激 な酸素濃度 の上
も Ce― richで あ り、 また La/Ce/Ndの 濃度比 は、Rhab―
岩の希元素 パ ター ンで は Ce anomalyは なかった。 こ
昇 があった とい う点で あ る。 ところが、少な くとも30億
年前 か ら現在 まで酸 素濃度 は大 き く変化 してない とい う
的条件 では、溶出 した Ce(3+)は す ぐに Ce(4+)と な り、
Ce02と して沈殿 し、結果 として、Cerfreeま た は Ce‐
モ デ ル もある (図 1の 線 で示 した領域 )。 我 々の研究室
では、大気 の酸 素濃度 の推定 に古土壌 (paleOsol)と 呼
ばれてい る岩石 を利 用 して い る。現 在 と同様、鉱物 ―
poorな Rhabdophaneが 形 成 す る。 即 ち、酸 化 的条件
水 一 大気 の相 互作用 によ り、風化 した岩石・ 土壌 に当
時の大気組成 の情報 が記憶 されているという考 えに基づ
く。 しか し、現在の上壌 と異 な り、古土壌 は風 化後、例
外 な く続 成・ 変成作 用 を受 けてお り、実際 には弱変成岩
le
原岩である花聞岩 は Apatite(Ca phosphate)を 多 く
含 んでいる。 この Apatiteの 縁 に、風化 の度合 いが強 く
なるにつれ、 Rhabdophane((La,Ce,Nd)P04・ nH20)
として存在す る。 一般 には風化生成物 も変質・ 変成す る
ので、当然、風化後 の続成・ 変成作用がデータに影響 し、
異 なる解釈 も生 じ、上 記の ように相異 なる結論 が導 き出
され た。 もし、当時の風化生成物が古土壌 に残 つていれ
Ndの 挙 動 とは異
なる。一方、Rhabdophaneは 溶解度 が低 く、 また、500
度 まで安定 に存在する ことが実験的 に確 かめられてい る。
以上の ことか ら、プ ロン トの Rhabdophaneは 25億 年前
で は、溶 液 中 での Ceの 挙動 は Laと
の風 化時 に生 成 され、 かつ、 その当時 Ceは 3価 として
溶液中を移動 した と考 えられ る。 これは当時の大気が非
酸化 的 であった ことを意 味す る。Apatiteは 花 聞岩 に広
く分布す るので、今後、様 々な時代 の古土壌中 の Rhab‐
dophaneを 調 べ る こ とで、先 カ ンブ リア時代 の大気 の
進化の理解が飛躍的に進展す ると考 えられ る。
ば大気 の進化のよ り深 い理解が可能であろうが、十数億
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図
1
大気 中の酸 素濃度の変遷 (KasJng(1993)を 一部修正 )。
点で示 した領 域が酸素 の増 加 を表す説 に基づ くもので、
上方 の横線 の領 域 が地 質時代 を通 じ酸 素濃度 はほぼ―
定 であつた とい う説 に基 づ くもの。
―-13-
図 2 Apalteの 縁 に され た Rhabdophaneの 反 射 電 子 像。 コ
ン トラス トの高 い 小 粒子 はす べ て Rhabdophaneo Sは
se● cle(aluminOsilicateの 一種 )。
研究紹介
地球 システムの変動 とス ノーボ ール 0ア ース現象
田
近
英
[email protected]‐
一 (地 球惑星 科学専攻 )
tokyo.acjp
地球環境 は、地球史 を通 じて、基本 的 には現在 とあま
り変 わ らない温暖な気候状 態 が維持 されてきた もの と考
の低下 もし くは有機炭 素埋没率 の増加 によって大気海洋
系 に対す る二酸化炭素の正味放出 フラ ックスが低下す る
えられて い る。地球 の長期 的 な気候状態 は大気中の二酸
化炭素分圧 の変動 によって支配 されてお り、二酸化炭素
ことで大気中の二酸化炭素濃度 が減少 し、ある臨界値 を
下回る と、 つい には地球 が全球凍結す る ことを見 いだ し
分圧 は炭素循環 によって調節 されている。炭素循環の主
要 プロセスのひ とつに珪酸塩 鉱物 の化学的風化過程 があ
た。 この ことは、炭素循環 システム に よる地球環境 の安
定化機構 には限界 が存在す る ことを意味 し、地球 システ
るが、それは明瞭 な温度依存性 を持 つ ことが知 られてお
り、 このプロセスが地表温度 に対 す る負 のフ ィー ドバ ッ
ム 内の擾乱がその限界 を超 えた場合、地球環境 は暴走的
ク機構 として働 く結果、地球の気候 状態 は安定 に保 たれ
て きたのではないか と考 えられて きた。
な振 る舞 い をす る可能 性 を示唆 して い る。
ところが 、今 か ら約 7億 5千 万年前のスターチアン氷
全球凍結状態 においては、平均気温 はマイナス40° Cと
い う極端 な寒冷状態 とな り、海洋 は表 層約 1000メ ー トル
が 完全 に凍結 して しまう。 このような状態 か ら脱 出す る
期 においては、大陸氷床 が赤道域 に存在 していた という
証拠 が見 つかってい る。 さらに、当時の氷河性堆積物 に
ためには、大気 中 の二 酸化炭素分圧 が0.2気 圧程度 に ま
で増加す る必要があるが、 これは火山ガスが徐 々 に蓄積
は鉄鉱床 が含 まれ、その直上 にはキャップ・ カーボネー
す る ことによって達成 され る。 しか し、氷 の融解 は急速
に起 こると推定 されるため、氷 が融解 した直後 には、今
トと呼 ばれ る炭酸塩岩が延々 と堆積 してお り、海水中の
炭素同位体比が異常な挙動 をす るな ど、通常 の氷河時代
にはみ られない大 きな特徴 を持つ ことが明 らかになった。
これ らはすべ て、当時の地球表面の大部分が氷で覆 われ
ていた と考 えることによってのみ説明す ることが可能で
あ る。 これが、 最近大 きな注 目を集 めて い る、“スノー
度 は地表気温 が60° Cと い う高温環境が実現 される。
スノーボール・ アース現象 は約 1千 万年程度 の時間 ス
ケール を持 ち、 その過 程 を通 じて大気中の二 酸化炭素濃
ボール・ アース仮説 "で ある。 この ような現象 は、実 は、
度 と地表温度 は非常 に大 きな振幅 で変動す る (図 参照 )。
スノーボール・ アース現象 とは、単な る氷河期の大規模
今 か ら 8∼ 6億 年前頃 に何度 か繰 り返 し生 じた らしい。
な ものではな く、気候 の安 定状態間の相転移 を伴 うよう
筆者 は、気候 モデル と炭素循環 モ デル とを結合 させて、
スノーボール・ アース現象 にお ける地球 システムの挙動
な特異 な現象な のである。 しか しなが ら、地球全体 が 1
千万年 ものあいだ凍結 した とした ら、生物 は一体 どうやっ
てそのよ うな過酷 な環境 を生 き延びたのかな ど、 まだ未
解析、 とくに、支配的な物理化学過程 とそれ らの特性時
間 に注 目 した研究 を行 っている。 その結果、火成活動度
解決 の課題 が多 い。地球環境の安定性の観点か らみて も、
スノーボール・ アース現象 は大変興 味深 い問題 である。
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103年
図 :ス ノーボール ・ アース現象 における大 気 C02分 圧 と全球平均温度 の時 間変化。
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研究紹介
剛 ビーム を用 い た メス バ ウ アースペ ク トル測定
_57Mnか ら生 成 した57 Feの 化学状態
久
保
謙
哉
ヒ学専攻
)
[email protected]― tokyo.ac.jp
“
一 般的 な鉄 のメスバ ウアースペ ク トル は、57 Feを 対
象核種 とし、市販 されて い る半減期 270日 の57c。 が EC
壊変 (57c。 →57 Fe)し て生 成 す る 14.4keVの 57 Feの 第
か らの Mnビ ーム使用 し、KMn04を 試料 として実験 を
行 った。
得 られたスペ ク トル を図 1に 示す。25Kと 155Kい ず
一 励起準位 を利 用 して い る。57 Feに は も う一 つのメス
バ ウア ー親核 57 Mnが あるが、半減期 が87秒 と短 いため
に57 Mnを 製造 しつつ測定 を行 う必要がある。以前に我 々
は54 cr(α ,p)57Mn反 応 を用 い、 3分 間製造 -3分 間測定
れのスペ ク トル も線幅 の広 いシング レ ッ ト2本 で解析す
る ことがで き、 どの ピークについて も四極分裂 が小 さい
ことか ら鉄 原子 の周 りの d電 子 の分 布 の歪 みは小 さ く
対称 性 が よい こ とが わ か る。 どち らの スペ ク トル に
とい うサイクル を数百回繰返 してクロム金属やク ロム酸
化物 中 に生 成 した57 Mnを 線源 とす る57 Feの メスバ ウ
Fe(II)(3d6)の 異性体 シフ ト値 で あ る。 もう一 方 の ピー
アースペ ク トル を測定 した [1]。
理化学研究所 リングサイクロ トロンでは、高エネルギー
クを与 える鉄化 学種 は Fe(III)よ りも高酸化状態 にあ り、
これまでに報告されてい る安定な鉄化合物 のメスバ ウアー
重イオ ンビーム をターゲ ッ トに照射 し、入射核破砕反応
で生成 す る短寿命 RIを ビーム として取 り出す ことがで
パ ラメー タ と比 較 す る と高 ス ピンFe(V)(3d3)ゃ 低 ス ピ
ンFe(IV)(3d4)に 近 く、現段 階 で は Fe(VI)以 上 の 高酸
化状態の鉄化学種 は見 つかってい ない。壊変直後 に生成
きる。59c。 をベ リリウム に照 射 す る こ とに よ り57 Mn
の ビームが得 られ、 これ を試料 に打込 んで57 Mnを 線源
た [2]。
した高酸化状態 の鉄は短 時間 に還元 されると推定 される。
メスバ ウアー効果 が観測 されるためには試料 が団体 で
ある必要 が あるが、57 Mnを 外 か ら ビーム で注入す る こ
鉄 は金 属 か ら生体酵素 まで幅広 い化学形 をとり、酸化
状態 も様 々で あるが、化学的に合成 されているものでは
の方法 は多様 な1試 料 に適用可能 である。今後種 々のマ ト
リクスに57 Mhを 打込み、通常 の化学的手法 で は作 り出
K2Fe04な どの鉄 酸 化合物 中 で の Fe(VI)(3d2)が 最 高
せない exoacな 鉄化合物の合成 とキャラクタリゼーシ ョ
としたメスバ ウアースペ ク トルの測定 が可能 となって き
壊
酸化状態 で ある。57 Mnは β 変 して57 Feに な るが、
壊
変 では原子番号 が 1だ け増 えるか ら、壊変直 後 の娘
原子 の酸化状 態 は、親原子 の酸化状態 と同 じか、壊変
電子が飛び去れば+1だ け大 き くなる。 マ ンガ ンには過 マ
β
ンガ ン酸 カ リウム KMn04と い う Mn(VII)(3d9)の 化合
物 が あ る。 これ に57 Mnを 打込 めば、壊 変 して生成 し
○
も共通 してみ られ る 0.80 mm s lの ピークは典型的な
た57 Feが い ままで にない exoticな 化学状態 を とるので
はないか と期待 し、理化学研究所 リングサイク ロ トロン
ンを進 めて い く計画 である。
なお この研究 は、理化学研究所、東京理科大学 との共
同研究 である。
参考文献
[1]M.Nakada et al.,Bull.Chem Soc.Japan,65(1),
1‐
5(1992)
[2]Y Kobayashi et al.,Hyp.Int,126,417-420(2000)
お一
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・
98L
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-2
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_12
Velocity / mm s
4
図 1 過 マ ンガ ン酸 カ リウム 中 に打込 んだワMnを 線源 とす る Feの メスバ ウアースペ ク トル。 上 155K、 下 25K。
通常 の メス バ ウアー吸収 ス ペ ク トル にあ うよ うに横軸 の符号 をか えてある。
5ア
―-15-一
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