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株式会社同仁化学研究所(熊本県)
九州・沖縄地域 株式会社同仁化学研究所(熊本県) ∼特許によって製品の優位性を確保∼ 1.最先端を走る地元のフロンティア企業 (株)同仁化学研究所は大正初期に上野景治により創設された同仁堂薬局を前身とす る。その後、息子の上野景平九州大学教授が開発したキレート試薬を事業化して、試薬 分野への本格参入を果たした。現在の同社は昭和53年に設立された。今では大学や医 療機関、研究所や工場などの研究や開発、製造に不可欠な試薬を製造。その製品数はお よそ800種類を超えるなど生命科学の発展に貢献し、基礎技術のバックアップ・テクノ ロジーとして高い評価を得ている。地域にとって先端技術分野で最先端を走るフロンテ ィア企業の一社でもある。また、同仁グローカルや同仁堂、ケミカル同仁、ハビタを関 連会社として持ち、米国メリーランド州に現地法人も擁する。 2.経営を支えてきた物質特許取得の酸化発色色素 1980年代はじめ、同社は酸化発色試薬を開発して市場に投入した。生体成分を検査 する時、血液中の過酸化水素の量を測定する試薬で、酸化されると発色する。それまで の色素を改良して、毒性や水に溶けにくいといった問題を解決した。これが新規物質と して認められて、物質特許を取得することができた。そのため、この試薬は同社でしか 購入できない。そのこともあってこの試薬は市場のほぼ100%を占め、これまでの経営 を支えてきた。この酸化発色試薬は同社にとってエポックとなった製品である。 3.細胞の情報伝達機構解明に大きな役割を果たした情報伝達関連試薬 昭和63年に市場投入したのが情報伝達関連試薬である。この試薬は米国のカリフォ ルニア大学が開発したものをライセンスを取得して国内では唯一、 製造販売権を持った。 この情報伝達関連試薬は細胞の中でカルシウムイオンがどのように変化していくかを調 べる試薬である。1980年代以降に細胞中のカルシウムイオンの研究が進み、これが情 報を伝達していることが解明されてきた。その背景にはこの試薬が大きな役割を果たし た。この情報伝達関連試薬は今でも好調な販売を続けている。 また平成8年には、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から助成を受け て開発していた酸化還元系発色試薬も市場投入した。これは細胞の数を数えることによ って、ある化学物質が細胞にどの程度の悪影響を与えるかを調べる試薬である。 4.製品の優位性確保のためにも積極的な特許戦略 金属を捕捉する化合物であるキレートを専門に研究していた上野景平九州大教授を父 に持つのが、現在の社長の上野景右氏である。それだけに社外研究機関をパートナーと 位置づけ、国内外の大学をはじめとする研究機関との共同研究は積極的だ。現社長も研 究者であり、開発した技術については特許を取得して他社との差別化をはかろうという 姿勢で取り組んでいたことから、同社では特許を重視している。また特許戦略でも、世 界的に競争が厳しい世界だけに特許で権利化しておかないと製品の優位性が確保できな いとの基本方針を持つ。それだけに製品が持っているポテンシャルや市場性を踏まえな − 306 − 株式会社同仁化学研究所 がら特許は努めて出願していく考えだ。こうした考えは同社の創業以来、変わらない方 針にもなっている。 【特許活用製品】 製 品 群 ●会社概要 代表者:代表取締役社長 上野 景右 所在地:熊本県上益城郡益城町田原2025−5 創 業:1978(昭和53)年 資本金:2000万円 従業員:80人 主要製品:各種試薬 − 307 −