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脳科学研究の 国内および国際動向について

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脳科学研究の 国内および国際動向について
資 料 2
脳科学研究の
国内および国際動向について
独立行政法人科学技術振興機構
研究開発戦略センター ライフサイエンスユニット
1
JST研究開発戦略センターのビジョン・ミッション
•
•
•
ビジョン:
– 社会ニーズを充足し社会ビジョンを実現する科学技術の有効な発展に
貢献する
ミッション:
– 科学技術政策立案者と研究者とのコミュニティを形成する
– 科学技術の研究開発分野を俯瞰的に展望する
– 今後重要となる研究開発分野、領域、課題およびその推進方法等を系
統的に抽出する
– 研究開発状況・技術レベルに関して海外と比較する
– 我が国が重点的に推進すべき研究開発領域・課題とその推進方法を
「戦略プロポーザル」として提案する
サブミッション
– 我が国の研究開発システムに関する提案
– 海外の科学技術政策情報の調査と発信
– 海外との情報・技術交流の促進
2
報告概要
•
脳神経科学の主な要素研究開発領域に関する、
主要な国と地域の研究動向、倫理対応
•
主要な国と地域の脳科学関連施策、予算動向
•
国際競争力の観点からみた、日本の脳神経科学研究推進上の課題
3
主要な国と地域の
研究動向・倫理対応
ライフサイエンス分野 科学技術・研究開発の国際比較
2011年版ならびに2012年版 (編集中) より
【総括責任者(JST-CRDS 特任フェロー)】
辻 省次
東京大学大学院医学系研究科 教授
入來 篤史
理化学研究所 脳科学総合研究センター
象徴概念発達研究チーム チームリーダー
【JST-CRDS 担当フェロー】
福士 珠美
11IC05/ライフサイエンス分野 科学技術・研究開発の国際比較 2011年版
http://crds.jst.go.jp/output/rp.html#1-1
4
科学技術・研究開発の国際比較調査とは
•
JST-CRDSが第三期科学技術基本計画に対応する科学技術分野について
有識者からの情報提供をもとに編集、発行する国際動向調査報告書として
2008年より発行。
•
研究者・産業界の「現場の声」「リアルタイムの情報」「近未来的予測」に関す
る定性的な情報に基づいた国際動向の比較を行なうことを目的。
•
ライフサイエンス分野は毎年情報をアップデートし、進展がめまぐるしく、国
際競争の激しい研究領域においても最新動向を追従。
•
2011年版作成時にセンター全体で国際比較調査報告書の大改訂を実施。
•
脳神経分野に関しては、2011年版より臨床医学ならびに基盤技術やインフ
ラを反映した中綱目を追加。また、脳神経倫理についても中綱目としてより
詳細な調査を行なう形式に改訂。
•
2012年版は、2011年版原稿の加筆修正を基にした「小改訂」を実施(2012
年3月発行予定)。
5
脳神経分野 国際比較調査の手法
<中綱目の選定>
日本神経科学学会ならびに北米神経科学会の年次大会プログラムのカテゴリー分けを参
考に、特任フェロー、フェローの協議により選定
<執筆者協力者の選出・依頼>
特任フェローからの推薦をもとに原則1中綱目あたり複数人の執筆協力者候補を選出し、
担当フェローから依頼と説明を行い、承諾いただいた方が調査に協力。
<評価手法>
特筆すべき情報を表に記述するほか、記号によって主観評価。
現状 [◎:非常に進んでいる,○:進んでいる, △:遅れている, ×:非常に遅れている]
※我が国の現状を基準にした相対評価ではなく、絶対評価である。
トレンド [↗:上昇傾向,→現状維持,↘下降傾向]
<原稿作成・編集・監修>
2011年版は2010年7月~2011年1月までに提供いただいた原稿をもとにフェローが編集
作業を行い、特任フェローの監修を経て公表。
2012年版は2011年10月より、2011年版執筆協力者への小改訂依頼を行い、必要に応じ
て協力者を追加。2011年12月7日までに提供いただいた情報をもとに本報告資料を作
成。今後特任フェローの監修を経て2012年冊子を公表予定。
6
脳神経分野(脳神経倫理を含む) 執筆協力有識者
(2011年版・2012年版)
磯村
伊藤
糸川
井上
岩坪
梅田
漆谷
大隅
岡野
岡村
尾崎
宣和
啓
昌成
治久
威
聡
真
典子
栄之
康司
紀夫
笠井
加藤
兼子
金生
上口
河野
神作
北澤
窪田
蔵田
桑原
清登
忠史
直
由紀子
裕之
憲二
憲司
茂
芳之
潔
斉
坂上
佐倉
佐藤
白尾
鈴木
鈴木
高橋
遠山
富田
浜井
雅道
統
浩
智明
則宏
隆文
良輔
育夫
博秋
美弥
深井
深谷
福田
古市
星野
本間
前田
水島
南本
里宇
和田
朋樹
親
正人
貞一
晴彦
さと
正信
希
孝史
明元
圭司
(50音順 敬称、所属略)
7
国際比較調査 中綱目ハイライト (基礎系)
<分子生物学>
遺伝子の網羅的探索研究が一段落、機能と構造の一体的な理解を目指し、数理科学やシステムバイオロジーとの融合
研究や関連技術開発が進展。一方で、実験、解析手法の多様化に伴い、近い将来に質の高い電気生理学人材の枯渇
が予想される。
<神経細胞生物学>
基礎研究の水準は日米欧が拮抗するものの、大規模サンプリングを必要とするゲノム解析研究に関しては日本の出遅れ
が顕著。イメージング技術では日独が世界をリード。今後は中国のほか、BRICS諸国の人材の流動をそれに伴う研究
技術開発力の変遷に要注目。臨床研究支援のグローバルスタンダード導入が日本の課題。
<神経回路の機能と構造>
無麻酔かつ特定行動中の小動物における大脳や小脳の機能的なネットワーク動態の研究が進展し、光学的手法の導入
も加速。これらの手法の活用には遺伝子改変動物作成技術開発力や実験条件の多様化に対応した装置開発も必要。
日本にも勝機が見込める研究、技術領域も。
<自律機能、内分泌の調節>
生物時計による糖・資質代謝調節研究の隆盛を含め、米国が全般的優位を保つ中、日欧は独自の研究成果を展開する
戦略。ブラジル、オーストラリア、中国、台湾などの新興国の台頭が目立つ。特に睡眠研究については、睡眠障害など
社会的課題との関わりも密接で「睡眠学」として総合的に研究展開する動きも。
<感覚・運動系>
光学的手法の、より高次の機能解明研究への導入が期待されている。日本は臨床研究への展開力が弱い一方、霊長類
を用いた研究環境が国際的には恵まれており、その環境維持と特に運動制御系の研究人材育成が今後の課題。世界
的には研究人口の多くが中国系であり、今後の動向には要注意。
<高次脳機能・行動の神経基盤>
情動・社会性・報酬などの学際研究が盛ん、専門誌の創刊も多い。ヒト脳研究の方法論への手詰まり感がぬぐえない中、
霊長類を用いた光学的手法による脳機能研究に期待感。ヒト脳計測においてもより高次な複合的計測手法の導入や
デコーディング技術開発が進展中。アジア太平洋地域にも高磁場 MR 装置が普及。
8
国際比較調査 中綱目ハイライト (医療系)
<発生・再生と可塑性>
特に神経再生、神経幹細胞研究を中心に日本のプレゼンスは高く、米国をしのぐ研究成果も見られる。臨床治験体制を
欧米水準に整備した中国、韓国をはじめとするアジア諸国の追い上げも予想され、アジアにおける連携強化が今後の
課題。
<神経変性疾患 (アルツハイマー病とその他の認知症をのぞく)>
幹細胞培養、プロテオームやトランスクリプトーム解析、分子イメージング、次世代シークエンサーなどを用いた疾患メカニ
ズム研究において日米欧が競合。今後中国による急速な追い上げが予想され、日本においては情報や研究資源の共
有が課題。医療用ロボット開発への期待感も。幹細胞研究との融合にも要注目。
<アルツハイマー病とその他の認知症>
世界全体の経済損失は6040億ドルと試算され、発症予防と進行遅延は世界規模の課題。先制医療的超早期治療への指
向が強まり、早期治験を成功させるための画像・バイオマーカーによる評価指標づくりの臨床研究として、米国・日本で
ADNI研究が行われ、成功を収めている。アミロイドイメージング技術も急速に進歩。
<精神疾患>
一部先進国においては国民病として扱う動きもあり、社会ニーズに則した研究開発の需要が世界的に増大。臨床例の分
析から動物実験や臨床研究を実施。日本においては、基礎研究の知見をさらに活用するための、精神疾患研究の政
策的位置づけと科学研究の進捗段階の整合性を取った研究戦略が必要との指摘が。
<広範性発達障害>
世界的な診断数の伸び(約100名あたりに1人)を背景に特に自閉症に対する関心が社会的に高い。診断技術の世界標準
を有する米国が基礎から臨床研究、医療応用において圧倒的な強みを持ち、日本においても類似の研究開発体制の
構築を望む声がある。日本においては客観性の高い治療・評価法の遅れも課題 。
9
国際比較調査 中綱目ハイライト (基盤技術・インフラ・倫理)
<計算論・ニューロインフォマティクス>
学会や国際共同事業が主導する形での大規模プロジェクトが多数展開中。基礎研究においては近年欧州が台頭し、日本
も一部世界先端の成果を有する。インフォマティクスに関しては、データベースの構築や維持管理に関する評価、人材
育成の体制確立に関して日本に遅れ。
<新規技術・他分野との連携、融合>
全体的に米国の優位が見られ、欧州、日本が追従。今後は中韓に加え、シンガポール、台湾からの参入の兆しも。非侵
襲BMI/BCIの技術については欧州主導で進展。多様な刺激技術やBMI技術の需要に見合ったデバイスの研究開発、
臨床治験を含む産業化戦略の構築が必要。
<ブレインバンク・ヒト脳組織リソース>
疾患研究の進展に伴い、ヒト脳を対象としたリソースの採取、保管、分配を行なうバンク機能の強化が望まれるが、日本
でのバンク運営体制の整備は欧米に比して遅れが。欧州で確立されている死後脳バンクの連携ネットワークについて
は、北米でも設立に向けた動き。バンク運営においては倫理面の検討と指針整備も重要。
<倫理・ガバナンス・アウトリーチ>
総論的重要性の啓発から各国がそれぞれの状況に応じて内的充実を志向する段階へ。日本は学会レベルの議論や指
針策定は進展しているが、国レベルで脳神経倫理の何をどこまで扱うかべきかの検討には至っていない。国際連携に
おいては文化や社会経済的背景の違いを配慮した推進体制の構築が求められており、日本がアジアにおいて果たす
役割の重要性は増している。
10
中綱目
分子生物学
遺伝子の網羅的探索研究が一段落、機能と構造の一体的な理解を目指し、数理科学やシステムバイオロジーとの融合研究や
関連技術開発が進展。一方で、実験、解析手法の多様化に伴い、近い将来に質の高い電気生理学人材の枯渇が予想される。
(ライフサイエンス分野 科学技術・研究開発の国際比較 2011年版、2012年版原稿をもとにJST-CRDSが作成)
国・
地域
日本
米国
欧州
中国
韓国
フェーズ
現
状
トレ
ンド
評価の際に参考にした根拠等
研究水準
◎
→
新規の神経機能分子の同定について近年日本独自の発見あり。一分子レベルの解析など独創的な研究もあり、シナプスの分子機構やその動態では
優れた成果あり。分子構造と動作原理の統合理解研究には遅れ(電気生理学的実験と構造生物学の両方に精通する人材の不足)。
技術開発
水準
○
↗
機能分子を応用した神経回路の動作原理解明のための技術開発においてドイツや米国から遅れ。神経活動モニター技術にも独自開発の動き。特定
の分子に的を絞った統合的アプローチに取り組む研究室の少なさや異分野からの技術参入などの場つくりが課題。
産業
技術力
△
→
イオンチャネルなど機能分子の測定系などの開発で独自の発展。神経回路を解析するための様々な顕微鏡の改良と応用がなされており今後革新的
な技術に到る可能性があるが商品化に結びつくかどうかは不明。
研究水準
◎
↗
厚い研究者層。構造生物学と電気生理学の融合研究や分子動態、分子動力学など質の高い研究を辞しs。病態との関連も多くの症例から遺伝子変
異を見いだす等、医師と基礎研究者がうまく連携して、世界をリード。
技術開発
水準
◎
↗
Two photon レーザー顕微鏡以後も、オリジナリティーの高い顕微鏡開発を継続。イメージング技術は、国家レベルのインフラ整備の他、Janelia Farm
Research Campusでも盛ん。免疫組織学的解析のインフラ整備も進み、神経系の膜タンパク抗体をライブラリー化し、研究者に安価で提供。
産業
技術力
◎
↗
顕微鏡の開発では世界をリード。イオンチャネルやトランスポーター分子創薬は、多分野な人材を戦略的に採用し自発的な研究を推進。自動電気生
理ロボットによる大規模ドラッグスクリーニング装置開発に向けた、3 x 3 mmでのパッチクランプの集積回路の作成にも成功。
研究水準
◎
↗
膜タンパクの基本的特性の研究を基礎としつつ、構造情報から動態へ結びつけようとする質の高い研究を実施。Structural Genomics Consortium(英
国、スウェーデン、カナダ)が活動中。
技術開発
水準
◎
↗
レベルの高い、伝統に基づいた顕微鏡開発。
産業
技術力
◎
↗
ドイツやデンマークなどでHigh throughoutputの自動パッチクランプ装置などを開発、近年性能が向上。
研究水準
○
↗
まとまった勢力には到っていない。一方、米国の有力研究室から若手の中国人研究者が戻り、以前と比較できないほど質が向上。上海生命科学研究
院からはトップジャーナルへの発表も増加。
技術開発
水準
○
↗
上海生命科学研究院とその他数カ所を除くと、技術レベルの高さは論文発表などの形では不明な点が多いが、電気生理手法の入門書なども中国語
で独自に編集する等、急激に技術を向上させ、研究者人口も増加中。
産業
技術力
△
→
電気生理学のロボットを用いた創薬研究を推進。自動パッチクランプ装置など欧米のメーカーも中国市場を重要視し人材が増えていく可能性も。
研究水準
△
↗
近年ソウル大学がCa依存性Clチャネルのクローニングに成功。しかし分野全体としては、集団としての国際競争力は不足。
技術開発
水準
△
→
米国からの帰国者などにより技術力は向上中と思われるが詳細は不明。
産業
技術力
△
→
特に目立った活動なし。
11
中綱目
神経細胞生物学
基礎研究の水準は日米欧が拮抗するものの、大規模サンプリングを必要とするゲノム解析研究に関しては日本の出遅れが顕著。
イメージング技術では日独が世界をリード。今後は中国のほか、BRICS諸国の人材の流動をそれに伴う研究技術開発力の変遷に要注目。
臨床研究支援のグローバルスタンダード導入が日本の課題。(ライフサイエンス分野 科学技術・研究開発の国際比較 2011年版、2012年版原稿をもとにJST-CRDSが作成)
国・
地域
日本
米国
欧州
中国
韓国
フェーズ
現
状
トレ
ンド
評価の際に参考にした根拠等
研究水準
◎
→
レベルは高いがテーマによって国際競争力にばらつきあり。変性疾患や精神疾患の病態解明へ貢献しうる研究が高水準。グリア細胞の機能形
態に関するin vivo研究の普及には遅れ。GWAS、リシークエンス、ゲノムコホートの規模の小ささも課題。
技術開発
水準
◎
↗
神経再生技術開発、蛍光タンパクによる可視化技術、ミクログリア研究などで世界をリード。中枢神経系高次機能の表現型を同定する人材の養
成システム整備の必要性の指摘が。
産業
技術力
○
→
精密機器をはじめ光学顕微鏡、顕微鏡用デジタルカメラ、マニピュレーター等の技術開発力は世界をリード。一方で、生化学や分子生物学関連
の研究試薬および医薬品の開発では企業側が海外研究者と組む傾向も。東日本大震災における影響が懸念される。
研究水準
◎
↗
レベルは非常に高く今後しばらく優位性を維持。産官学の連携のもと、各疾患の多様な臨床研究が活発で、ゲノム解析を用いたADHD、自閉症、
統合失調症、双極性障害等のコンソーシアム型研究が推進され、各疾患の責任遺伝子同定や疾患モデル動物の開発を推進。
技術開発
水準
◎
↗
イメージング技術、in vivo解析技術などに強み。タンパク質の分子構造改変による細胞機能操作技術や、偽トランスミッターを用いたシナプス伝達
可視化法開発などにも成功。企業によるゲノム研究技術の発展も著しく、産学官の人材が流動性をもって交流。
産業
技術力
◎
↗
研究機関と企業との共同研究が活発。精密機器においては開発力よりも標準規格化において優位性。テレビ電話を介した精神症状評価の中央
集約型評価システム(Centralized Rating) がFDA治験認可対象に。
研究水準
◎
↗
英国、ドイツ、フランス、スウェーデンの水準は米国に比肩。グリア研究においては、Eurogliaが組織化され欧州全体として推進。遺伝子解析研究
についてはInternational Schizophrenia Consortiumなど、米国との共同研究も。
技術開発
水準
◎
↗
独創性のある技術開発に強み。ドイツを中心とした精密機器、特に光学顕微鏡の技術開発では米国をも凌駕。創薬への貢献が期待されるGタン
パク質共役型受容体の構造解析技術開発も盛ん。
産業
技術力
○
↗
ドイツ発の多光子レーザー顕微鏡や超高解像度顕微鏡の製品化が成功。医薬品開発についても新薬をいち早く臨床応用し、上市するためのシ
ステムを整備。
研究水準
△
↗
上海生命科学院神経科学研究所および香港理工大学においては日欧に比肩する成果を発信。ゲノム解析分野は、高いサンプル収集能力に注
目。
技術開発
水準
△
↗
欧米の技術の輸入段階から中国独自の技術開発力形成に転換中。国家規模の重点投資、通貨政策に伴う高賃金化等、今後の動向には長期的
に注意が必要。
産業
技術力
△
↗
中国で国際共同治験を行う企業が増加、Centralized Ratingの導入にも積極的。
研究水準
○
↗
KAISTから優れた基礎研究成果が報告され始めているが、全体的には発達途上。一方、臨床研究への取り組みは日本よりも高水準。
技術開発
水準
△
○
↗
欧米の技術の輸入段階から韓国独自の技術開発力形成に転換中、日本よりも欧米との協力関係を重要視する科学政策も進展。
産業
技術力
△
○
↗
戦略的にグローバルスタンダード化を進め、外国資本との連携に積極的。韓国で国際共同治験を行う企業も増加し、Centralized Ratingの導入に
も積極的。
12
中綱目
神経回路の機能と構造
無麻酔かつ特定行動中の小動物における大脳や小脳の機能的なネットワーク動態の研究が進展し、光学的手法の導入も加速。
これらの手法の活用には遺伝子改変動物作成技術開発力や実験条件の多様化に対応した装置開発も必要。
日本にも勝機が見込める研究、技術領域も。
(ライフサイエンス分野 科学技術・研究開発の国際比較 2011年版、2012年版原稿をもとにJST-CRDSが作成)
国・
地域
日本
米国
欧州
中国
韓国
フェーズ
現
状
トレ
ンド
評価の際に参考にした根拠等
研究水準
◎
→
高い研究水準を維持し、可塑性研究などで成果を挙げる一方、マルチユニット記録では、欧米から遅れ。微量の遺伝子改変ウイルスを特定脳
領域に感染させる単一細胞形態の完全可視化技術や脳組織の透明化による三次元構造の可視化技術なども進展。
技術開発
水準
○
→
電気生理学的手法の技術開発に伸び悩み。一方、最先端の光学や遺伝子工学の技術開発の水準は、産学とも高い。自動車産業が脳科学の
基礎的研究に参加している特色があるが、継続性については不透明。
産業
技術力
○
↘
光学機器の開発と実用化は国際的にもトップクラスだが、電気生理学に関連機器の開発、実用化は臨床医学向けを除くと縮小傾向。自動車、
ロボット産業への脳科学の貢献に関する潜在的な期待は大。
研究水準
◎
→
極めて高水準。特に、マルチユニット記録と高度な統計学的手法を駆使した神経回路のシステムダイナミクス研究が隆盛。物理学・数学、工学
系との連携も進展。コネクトミクスプロジェクトにおいても成果。
技術開発
水準
◎
→
光ファイバー入り多点電極開発など、神経生理学分野の技術開発が急激に進展。プローブ分子や遺伝子改変動物の開発改良は質・量ともに最
高水準。各社のシステムで得られた実験データの研究者間の有効活用にむけた、Neuroshare規格への標準化の機運も。
産業
技術力
◎
↗
大学発のベンチャー企業が新技術を開発する成功例多数。神経細胞の形を3次元的に記録できるNeurolucida、高解像度CCDカメラなど、研究
そのものが産業となり、さらなる応用分野が創り出される環境。
研究水準
◎
→
無麻酔・自由行動下の小動物の活用技術など、英国、フランス、ドイツ、ノルウェーなどで最先端の研究成果。神経細胞の電気的特性やシナプ
ス結合の観察結果からスーパーコンピューターで大脳皮質回路の動作シミュレーションを行なうブルー・ブレイン・プロジェクトの動向に要注目。
技術開発
水準
○
→
研究に必要な機器類を作るワークショップ(工作室)で開発されたソフト、技術や機械が市販あるいは無料配布され、多くの研究者がその恩恵に
。ドイツではパッチクランプ増幅器の新製品を継続的に発表。遺伝子改変技術も高水準。
産業
技術力
○
↗
米国に次ぐ産業技術力を維持しており、日本よりやや有利。
研究水準
△
↗
現時点では日米欧に及ばないが、論文発表数が急激に増加、国際一流誌にも中国発の論文が散見。研究設備の購買力も増加。
技術開発
水準
×
↗
国際的に通用する研究機器類を独自開発し供給する企業はほとんど存在しないが、米国からの帰国組を中心に急速に追い上げる予想も。
産業
技術力
-
-
技術開発水準に同じ。
研究水準
△
↗
現時点では日米欧に及ばないが、韓国生命工学研究院では遺伝子改変動物を系統的に作製し選択する拠点を設けつつある。
技術開発
水準
△
↗
国際的に通用する研究機器類を独自開発し供給する企業はほとんど存在しないが、半導体・電子産業の興隆を背景に、日米欧に匹敵する研
究機器や新技術を開発する潜在能力あり。
産業
技術力
×
→
技術開発水準に同じ。
13
中綱目
発生・再生と可塑性
特に神経再生、神経幹細胞研究を中心に日本のプレゼンスは高く、米国をしのぐ研究成果も見られる。
臨床治験体制を欧米水準に整備した中国、韓国をはじめとするアジア諸国の追い上げも予想され、アジアにおける連携強化が今後の課題。
(ライフサイエンス分野 科学技術・研究開発の国際比較 2011年版、2012年版原稿をもとにJST-CRDSが作成)
国・
地域
日本
米国
欧州
中国
韓国
フェーズ
現
状
トレ
ンド
評価の際に参考にした根拠等
研究水準
◎
↗
基礎研究は着実に進展し、神経新生と精神疾患領域との関連性解明やiPS細胞技術等を用いた神経再生研究は、世界をリードする成果も。発達障
害や統合失調症については発生後期や発達期における研究を精力的に推進する必要性。
技術開発
水準
◎
→
遺伝子改変霊長類動物の作成と生殖細胞系列への遺伝子導入に世界で初めて成功したほか、条件付ノックアウトマウスの作製、オプトジェネティク
ス等は高い水準を誇る一方、モデル動物の行動バッテリーの開発等に関しては停滞。
産業
技術力
○
→
全般的に、製薬会社等との連携が不十分だが、サルの脊髄損傷モデルの開発特許の複数国での取得など再生医療領域において新たな動き。iPS
細胞技術を用いた神経疾患モデルの開発、創薬研究展開には大手の製薬企業も高い関心。
研究水準
◎
↗
神経発生領域においては常に世界をリード。再生領域における幹細胞研究とその臨床応用においても圧倒的な高さ。精神発達障害の分子レベル
での研究が急速に発達しているほか、アカゲザルを用いた遺伝子改変技術の開発も進行中。
技術開発
水準
◎
↗
Optogenetics技術は応用段階に入っており、種々の研究室に普及。患者由来細胞からのiPS細胞樹立とその応用研究も盛ん。
産業
技術力
◎
↗
新しいシーズに基づく創薬研究が盛ん。脊髄損傷を始め、幹細胞等の細胞移植に関しては、バッテン病、遺伝性ミエリン形成不全症の治験実施な
どが世界をリードしてきたが、この分野の第一人者的存在であるジェロン社が ES細胞関連事業からの撤退を発表し、今後注意が必要。
研究水準
○
→
英国(神経軸索の伸長とリハビリテーションを組み合わせた治療法開発)、スウェーデン(ドーパミンニューロン移植)など、独創的な研究成果。全般
的に出口志向が強化。
技術開発
水準
○
→
米国とは異なる独自の戦略だが、この分野に特化した目立った成果は不明。
産業
技術力
○
→
米国Stem Cells社がスイスに進出し、慢性期の脊髄損傷患者を対象とした、胎児由来神経幹細胞移植の治験を開始したが独自の顕著な成果はみ
られない。
研究水準
○
↗
現時点では日米欧に及ばないが、上昇傾向。上海にInstitute of Neuroscienceが設立されここを中心に神経再生に関する幹細胞研究を推進。
Tetraploid 補完法によるiPS細胞の全能性の証明に世界で初めて成功。ただし、地域間の研究費格差、研究水準のばらつきも大。
技術開発
水準
○
↗
現状では不十分であるが、今後、海外からの人材参入や企業からの投資が期待され、その場合にの伸びしろは大。
産技術力
○
↗
神経系の再生領域では、数々の臨床研究が実施準備段階に。臨床応用に力を入れており、欧米と類似した治験システムを導入。
研究水準
○
↗
最近急速に進展。特に、黄教授事件以降の体制の立て直しは目覚ましく、ヒトES細胞のドーパミンニューロンへの高効率誘導法の開発、アメフラシ
のシナプス可塑性の分子機構の解析などに成果。在米研究者と共同で蛋白質を用いたiPS細胞の作成にも成功。
技術開発
水準
○
↗
基礎研究分野の充実を背景に今後の発展が予想され、要注目。
産業
技術力
○
↗
神経系の再生領域では、数々の臨床研究が準備、開始段階に。臨床応用に力を入れ、欧米と類似した治験システムを導入。
14
中綱目
自律機能、内分泌の調節
生物時計による糖・資質代謝調節研究の隆盛を含め、米国が全般的優位を保つ中、日欧は独自の研究成果を展開する戦略。ブラジル、オーストラリア、中国、台湾など
の新興国の台頭が目立つ。特に睡眠研究については、睡眠障害など社会的課題との関わりも密接で「睡眠学」として総合的に研究展開する動きも。(ライフサイエンス分
野 科学技術・研究開発の国際比較 2011年版、2012年版原稿をもとにJST-CRDSが作成)
国・
地域
日本
米国
欧州
中国
韓国
フェーズ
現
状
トレ
ンド
評価の際に参考にした根拠等
研究水準
◎
→
基礎研究水準は高く、概日リズム、時計遺伝子、遺伝子によらない蛋白・振動体ネットワークによるリズム発振や温度補償性などで独創的な研究
成果。脳内液性伝達物質の機能解明による、睡眠・覚醒を制御する物質とこれらの脳内ネットワーク解析でもトップレベルにある。
技術開発
水準
○
↗
生物発光レポーター、経時的イメージングなど、得意分野での研究展開が見られる一方、多くの大学で技術職が廃止され、研究現場の技術開発と
維持、伝達に支障が。経済状況の悪化を反映し各種メーカーの機器開発に対する意欲と資金も低下。
産業
技術力
△
→
発光イメージング、長期タイムラプス、睡眠脳波解析機器などの機器発売では米国に先行してきたが不況によるメーカーの技術開発力の低下の懸
念。一方、メラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)は生理的な睡眠導入剤としての定着のほか、うつ症状改善報告も。
研究水準
◎
↗
量質ともに世界をリード。ショウジョウバエ・ゼブラフィッシュなどのモデル動物と哺乳類の協調のとれた研究を実施。1993年開始のWake Up
America(10年計画の大規模な睡眠調査・研究)の流れから現在も国家レベルでのリズム・睡眠研究が展開中であるが、近年失速気味。
技術開発
水準
◎
↗
技リズム・睡眠研究とも非常に高い。メガファーマとの共同研究によるリズム調節薬の網羅探索]、新たな光感受性タンパクによる睡眠制御研究 な
ど、分子レベルでの技術開発の高さと、応用研究に役立てるシステムに圧倒的強み。
産業
技術力
○
↗
睡眠・リズム作動薬創薬のための網羅的研究について、メガファーマの研究施設が大学との共同研究を効率的に推進。
研究水準
◎
→
国による格差はあるものの、EUの大型科学研究費により欧州全体で研究水準の維持・上昇を目指す姿勢。生態学、季節性変動、インターネットを
用いたヒト概日リズムデータベース作成とその展開、時間医療の実践研究など、得意領域に研究費とマンパワーを集中させる戦略が多い。
技術開発
水準
○
→
米国との直接競争を避けた独自のアイディアによる技術開発が顕著。研究者の欧州域内の自由な移動を反映してEU全体での底上げを推進。
産業
技術力
△
→
メガファーマの大規模データベースを用いた創薬研究は、リズム睡眠研究にも波及。睡眠障害のための照明設備やセンサー付インテリジェントベッ
ドなど一般向け不眠・リズム障害治療機器の開発も盛ん。
研究水準
△
→
量質ともに日米欧は大きな隔たりがあるが上昇傾向も一部見られる。しかし、他の分野ほど海外人材の呼び戻しが進んでおらず、今後の人材流動
には要注目。
技術開発
水準
×
→
現状では未発達であるが、経済力と人口を考慮すると、急速な発展も。
産業
技術力
×
→
現状では未発達であるが、経済力と人口を考慮すると、急速な発展も。
研究水準
△
↗
関心は高いものの国内研究者層は薄いと考えられる1]。ただし、リズム研究に関しては、分子レベル、神経生理レベルで、米国・日本に肩を並べる
研究室も存在し、今後の発展を予測。
技術開発
水準
△
→
現状では独自の技術開発は進んでいないが、一部大手企業の技術開発力と市場開拓力を考慮すると今後の発展が予測される。
産業
技術力
△
→
現状では独自の技術開発は進んでいないが、一部大手企業の技術開発力と市場開拓力を考慮すると今後の発展が予測される。
15
中綱目
感覚・運動系
光学的手法の、より高次の機能解明研究への導入が期待されている。日本は臨床研究への展開力が弱い一方、霊長類を用いた
研究環境が国際的には恵まれており、その環境維持と特に運動制御系の研究人材育成が今後の課題。世界的には研究人口の多くが中国
系であり、今後の動向には要注意。
(ライフサイエンス分野 科学技術・研究開発の国際比較 2011年版、2012年版原稿をもとにJST-CRDSが作成)
国・
地域
日本
米国
欧州
中国
韓国
フェーズ
現
状
トレ
ンド
評価の際に参考にした根拠等
研究水準
○
→
知覚や注意の連合野機能、運動連合野、高次視覚野研究で、国際的に高い評価の一方低次感覚皮質や一次運動野研究は手薄。小脳の研究が
運動学習に特化し、基底核の研究が報酬、動機付けなどの方向に向かう傾向に。
技術開発
水準
○
→
脳波計、NIRSなどの非侵襲脳計測の開発には高い技術力を誇るが、fMRI、MEG用機器開発では遅れ。電気生理研究の先端技術は海外企業から
の輸入が多く、産業化に結びつくような新分野開拓や産学連携の体制づくりが停滞。
産業
技術力
○
→
非侵襲脳計測機器の研究開発力は高いが、大量生産によるコストダウンを目指す志向。電気生理研究に必要な精密機器は世界トップレベルだが、
オンリーワン技術を提供できる国内企業がほとんどないか、あっても極めて高価であり、普及には課題が。
研究水準
◎
→
研究成果発信の中核雑誌や最大規模の学会を擁し、世界をリードする研究者層と包含分野を誇る。チャネルロドプシンの選択的細胞への発現によ
る光刺激技術など、最先端の遺伝子改変技術を駆使した研究では圧倒的な進展。
技術開発
水準
◎
→
新しいテクノロジーが多岐にわたる領域で開発中。マルチ電極、スパイクソータなどの最新機器や解析用ソフトウェアの多くは米国製非侵襲脳計測
用大型機器の開発技術水準も高い。
産業
技術力
◎
→
遺伝子改変、大型研究機器(非侵襲計測機器含む)、ベンチャーによる特殊技術開発などが行われているほか、ウイルスベクターもコマーシャルベ
ースに乗るに至っている。軍事・宇宙技術開発から生まれた特殊技術が脳神経科学に転用されてくる例も。
研究水準
○
→
霊長類を含む動物実験を行うことが困難な状況を反映し、トップダウンの研究体制というより、個々の大学、研究所で特色のあるテーマを掲げた研
究が主流。英独の一部は世界トップクラスの水準だが、欧州全体では研究レベルは横ばいないし低下傾向。
技術開発
水準
◎
→
世界最高性の小動物用16.4TのMRI開発を行なったドイツをはじめとして非侵襲脳計測用大型機器の開発技術水準は高い。ヒトを対象とした行動解
析装置やBMI開発のレベルも高い。
産業
技術力
◎
→
fMRI(ドイツ、オランダ)MEG(フィンランド)などの評価が高い。非侵襲の三次元動作解析装置開発(スウェーデン)、眼球運動計測装置開発(スウェ
ーデン)も進んでいる。遺伝子改変動物の開発レベルは英国が世界トップクラス。他、ニューロン活動の記録解析にはイスラエル企業にも強み。
研究水準
△
↗
ヒトの非侵襲脳計測は盛んになってきているが、この分野で注目される研究には乏しい。ただし、外国からの頭脳流入と多額の資金投入により、近
い将来に急激な研究レベル上昇の起こる可能性も。
技術開発
水準
△
↗
現状では特記すべき独自技術開発はほとんどないと思われるが、最近の経済発展を背景に革新的技術開発のポテンシャルあり。
産業
技術力
△
↗
特記すべき独自技術開発は顕在化していないが、MRI装置の国産化が開始。また、霊長類(アカゲザルなど)の大規模コロニーの設立など、インフ
ラは拡充中。日本で実験用リソースとして流通しているアカゲザルの大半は中国産。
研究水準
△
↗
1998年制定の脳研究促進法による予算投入成果が見えつつあるが、現在の国家プロジェクトは遺伝子および再生医療が主体に。韓国系研究者の
呼び戻し政策をとった場合には、研究水準のさらなる上昇が可能。
技術開発
水準
△
↗
新しいテクノロジーによる研究技術開発例は少ないが、PET-MRI Hybrid Systemの開発が進行中。
産業
技術力
△
↗
個々の産業技術力は高いものがあるが、
大量生産によるコストダウンを目指すものであり、小規模のベンチャーなどによる高いレベルでのオンリーワン技術はほとんどない。
16
中綱目
高次脳機能・行動の神経基盤
情動・社会性・報酬などの学際研究が盛ん、専門誌の創刊も多い。ヒト脳研究の方法論への手詰まり感がぬぐえない中、
霊長類を用いた光学的手法による脳機能研究に期待感。ヒト脳計測においてもより高次な複合的計測手法の導入やデコーディング技術開発
が進展中。アジア太平洋地域にも高磁場 MR 装置が普及。 (ライフサイエンス分野 科学技術・研究開発の国際比較 2011年版、2012年版原稿をもとにJST-CRDSが作成)
国・
地域
日本
米国
欧州
中国
韓国
フェーズ
現
状
トレ
ンド
評価の際に参考にした根拠等
研究水準
○
↗
神経経済学や社会性脳科学など新規融合領域研究は、欧米に後れているが、要素研究の質は高い。実験心理学や計算論的神経科学からの参
画や若手研究者への支援が進めば今後の水準の上昇が期待できる。ボノボ研究拠点が熊本県に設立され、高次認知機能研究の計画も。
技術開発
水準
△
→
日本発のNIRS技術に関しては、基礎研究による知見の蓄積が必要。fMRIやMEGの臨床装置開発には成果が見えるものの、研究用としての普及
にはソフトウェア開発が課題に。神経経済学や神経政治学の萌芽的成果が出つつある。
産業
技術力
○
→
NIRSは製品化が先行し商業ベースで過度に普及傾向し。その信頼性・安定性についての研究が平行展開中。脳神経科学を利用した商品開発に
関する企業の関心は高く、大手広告代理店やメーカー企業が参画した応用脳科学コンソーシアムが発足。
研究水準
◎
↗
世界を牽引する位置は揺るがない。大規模研究施設が、基礎から応用まで一貫したハードウェア、ソフトウェア開発を行なうほか、経済学、宗教学
等を巻き込むような学際的高次脳機能研究拠点が新しい研究を牽引。
技術開発
水準
◎
↗
マルチ電極や実験制御用ソフトウェア開発の技術開発力は大きく日本への輸出も多い。MR装置に関しては、大規模研究施設を利用した研究開発
を実施。
産業
技術力
○
↗
MR装置に関しては世界をリードする企業を擁する。ベンチャー企業設立などボトムアップ的産業技術力も高い。ニューロマーケティング専門のリー
サーチコンサルティング会社が事業を展開を開始。ただし、実用性や科学技術としての進展については、現時点では疑問。
研究水準
◎
↗
古くからの心理学・認知科学の流れを生かして英国、ドイツ、フランスなどは、米国と比肩する水準、ポルトがルなど他の国も追従。現在も水準の
高い先進的な研究が見られる。認知・社会性神経科学については、計算論的手法を活用し海外からの留学生を取り込んだ研究を展開。
技術開発
水準
◎
↗
リスク対策的な技術開発も含めて高い水準。MRI、fMRIについては、ドイツにおいてハードのみならずソフト開発やサポートサービスにも強み。EEG
のfMRI撮像環境下計測、EEGのTMS使用環境下計測、fMRIとPET、MEGとMRIの同時計測等、高度な新規技術開発も進行中。
産業
技術力
○
→
研究用の非侵襲計測装置の製品化でリードしている他、脳波を用いたニューロフィードバック、BMI機器には産業化の動き。
研究水準
△
↗
独自な研究はそれほど多くないが、中国人研究者が中心となって発刊されたCognitive neurodynamicsのimpact factorが2を超えるなど、研究推進
を支える環境が整いはじめている。臨床用の高磁場MR装置については普及が進んでおり、マカクザル設備も含め研究環境は整備されつつある。
技術開発
水準
△
→
論文が散見される程度で注目すべき発展は見受けられない。
産業
技術力
△
↗
低価格な商品の開発を通して、技術を普及させる産業が散見され、今後の発展には要注目。
研究水準
△
↗
一部の大学では、高磁場のMRIやPETとの融合機など意欲的に新技術を導入する一方、組織的な成果や独自の研究展開などがみられるには至
っていない。しかし、韓国出身の認知神経科学者の米国での活躍もあり、研究水準は上昇傾向にあり、今後の動向には要注目。
技術開発
水準
△
↗
MRIやPETなどの技術開発に関して注目すべき点あり。技術開発と研究、教育が結びついており、貴重な人材が育つインフラが整っている。国ベー
スではなく、私立の機関にもこのような傾向が見られ、今後の動向には要注目。
産業
技術力
△
↗
超高磁場のMRIなどの開発、産業化に積極的であり、国際連携も進んでいる印象。
17
中綱目
神経変性疾患
(アルツハイマー病とその他の認知症はのぞく)
幹細胞培養、プロテオームやトランスクリプトーム解析、分子イメージング、次世代シークエンサーなどを用いた疾患メカニズム研究に
おいて日米欧が競合。今後中国による急速な追い上げが予想され、日本においては情報や研究資源の共有が課題。医療用ロボット開発へ
の期待感も。幹細胞研究との融合にも要注目。
(ライフサイエンス分野 科学技術・研究開発の国際比較 2011年版、2012年版原稿をもとにJST-CRDSが作成)
国・
地域
日本
米国
欧州
中国
韓国
フェーズ
現
状
トレ
ンド
評価の際に参考にした根拠等
研究水準
◎
→
欧米との差をいかに少ないまま維持できるかが課題。前臨床研究のブレークスルーとして、霊長類を用いた疾患モデル作出、患者由来のiPS細胞
を用いたin vitroのヒト疾患環境の再現などが進捗理工系研究機関の参入も増加。
技術開発
水準
◎
↗
細胞培養技術や遺伝子導入技術は、米国と共に世界をリード。X線やNMRを用いた病原タンパク質の超微細構造解析によりin vivo分子イメージン
グや低分子化合物や抗体などの分子標的治療法の開発も。医療用ロボット開発にも期待。
産業
技術力
○
↗
近年、政府レベルのサポートにより確実に基礎研究が産業化する土壌が醸成されつつある一方、技術革新や産業化への傾倒が強くなり、基礎研
究の規模縮小や萎縮傾向に。
研究水準
◎
→
質・量とも比類無い。次世代シークエンサーによる遺伝子の網羅的解析、SNPやGWASによる危険因子や疾患の原因遺伝子の同定にも強み。特に
ALS研究が進展。民間助成団体を軸とした稀少疾患研究助成の機会が多く研究費単価も大きいことが裾野を拡大。
技術開発
水準
◎
→
基礎研究成果を速やかに産業化し、さらに技術確認によって広く実用化するというサイクルが確立している。豊富な研究人口と研究費はこれらを用
いて新たな基礎研究成果を生み出すという循環が米国の研究推進力、応用力の基板となっている。
産業
技術力
◎
→
ALS 患者への移植治療法幹細胞の開発例などに代表されるように、民間企業を中心とした基本技術の実用化が迅速。
研究水準
◎
→
英国、フランス、ドイツが先行してきたが、近年ALSにおいてはスエーデン、ベルギー、オランダ、イタリアに優れた業績。特に、スエーデン、ベルギ
ーが欧州多施設共同を展開し、全体のレベルアップに大きく貢献。
技術開発
水準
◎
→
全般に高い水準だが国家間格差は大。スイス、ベルギーなどの成果は米国との共同研究にも発展。
産業
技術力
○
→
精密大型機器の開発において世界をリード。製薬系についてもパーキンソン病やアルツハイマー病の新規治療薬の開発を推進。産学連携は米国
ほど強くはないがポテンシャルは高い。
研究水準
△
↗
神経難病の基礎研究において日米欧の後塵を拝してきたが、近年、研究体制を急速に整備。国内単独チームによるハイインパクトジャーナルへの
掲載例も増えつつある。
技術開発
水準
△
↗
神経変性疾患の研究拠点がなかったため、独自の技術開発の実績に目立ったものはないが、急速に研究環境が先進化しており、今後は著しい発
展の見込み。
産業
技術力
△
↗
研究開発水準に同じ
研究水準
◎
↗
研究機関の数は多くはないが、有力大学の研究レベルは高い。培養細胞研究や幹細胞研究に強い土壌を有していたが、近年米国やカナダで活躍
した韓国人研究者を迎え、パーキンソン病やALSにおいて著しい研究の進歩が。
技術開発
水準
○
↗
疾患関連幹細胞研究の技術開発力は高い。培養細胞技術を幹細胞研究に転用し、北米や日本各国と細胞移植治療についての共同研究を推進。
産業
技術力
△
↗
研究開発水準に同じ。
18
中綱目
アルツハイマー病とその他の認知症
世界全体の経済損失は6040億ドルと試算され、発症予防と進行遅延は世界規模の課題。先制医療的超早期治療への指向が強まり、
早期治験を成功させるための画像・バイオマーカーによる評価指標づくりの臨床研究として、米国・日本でADNI研究が行われ、
成功を収めている。アミロイドイメージング技術も急速に進歩。 (ライフサイエンス分野 科学技術・研究開発の国際比較 2011年版、2012年版原稿をもとにJST-CRDSが作成)
国・
地域
日本
米国
欧州
中国
韓国
フェーズ
現
状
トレ
ンド
評価の際に参考にした根拠等
研究水準
○
↗
基礎研究に関しては、アミロイド、タウタンパク質研究に伝統があり、高レベルの研究が行われているが、研究規模は必ずしも拡大していない。臨床
研究面では、J-ADNIの進捗により、画像・バイオマーカーを用いた臨床評価法が国際水準に向かって伸びつつある。
技術開発
水準
△
→
画像・バイオマーカー等の新規技術の開発においては欧米に遅れをとっている。タウイメージングなど、本邦がリードする分野もある。
産業
技術力
△
→
製薬企業による治療薬開発は、高いレベルで進んでいるが、規模や臨床開発力において、欧米グローバル企業に遅れをとっている。
研究水準
◎
↗
基礎研究、臨床研究ともに、質的・量的に他を引き離している。臨床研究においても、ADNIプロジェクトが成功裡に終了し、現在より早期のアルツハ
イマー病に焦点をあてたADNI2が開始されている。
技術開発
水準
◎
↗
アミロイドイメージング、fMRIを用いた診断法など、早期画像バイオマーカーの開発など米国を中心に進展。新規治療方策の創出においてもリード。
産業
技術力
◎
↗
米国に拠点を置くグローバル製薬企業、診断機器企業の技術力が他を圧倒的に引き離している。
研究水準
○
→
ドイツ、ベルギー、英国などにすぐれた基礎研究者が存在。臨床研究においても伝統と高いレベルを誇るが、EUとして一体となった研究体制の構築
には成功していない。
技術開発
水準
○
→
バイオマーカーの創出、標準化などで高い技術を有する。
産業
技術力
○
→
欧州に基盤を置く企業の技術力も高い。
研究水準
△
↗
アルツハイマー病そのものに関する基礎研究は未萌芽状態であるが、今後のレベルアップが予想される。臨床研究は未発達であるが、意欲は極め
て高い。
技術開発
水準
x
↗
オリジナルの製薬、診断機器企業はほとんど存在しないと思われるが、今後の発展は予想される。
産業技術
力
x
↗
まだ産業技術力は高くないが、グラクソ社など、アルツハイマーを含む神経疾患の研究開発拠点を中国に全て移転した企業もあり、今後の急上昇
が予想される。
研究水準
△
↗
米国から帰国した基礎・臨床研究者が活発に研究を展開しはじめている。
技術開発
水準
△
↗
新規技術の開発が行われているかどうかは未知。
産業
技術力
△
↗
治験など、臨床開発に強みを発揮しつつあるようである。
19
中綱目
精神疾患
一部先進国においては国民病として扱う動きもあり、社会ニーズに則した研究開発の需要が世界的に増大。臨床例の分析から
動物実験や臨床研究を実施。日本においては、基礎研究の知見をさらに活用するための、精神疾患研究の政策的位置づけと科学研究の
進捗段階の整合性を取った研究戦略が必要との指摘が。
(ライフサイエンス分野 科学技術・研究開発の国際比較 2011年版、2012年版原稿をもとにJST-CRDSが作成)
国・
地域
日本
米国
欧州
中国
韓国
フェーズ
現
状
トレ
ンド
評価の際に参考にした根拠等
研究水準
○
↗
脳画像研究、動物モデル、統合失調症遺伝子研究など一部で世界的に高水準。一方、気分障害研究では大きな遅れ。疫学、大規模臨床研究欧
米や中国に比べて層が薄い。分子神経科学・人文社会学と精神医学研究者の協力機運の高まりが。厚労省による5大疾患定義の動きも。
技術開発
水準
○
→
非侵襲脳機能画像(近赤外線スペクトロスコピー)の精神疾患補助診断への応用は世界的に注目。基礎研究の活発化が精神疾患治療技術開発
における大きな流れとはなっていないほか、世代シークエンサーの導入については、大きな遅れ。
産業
技術力
○
→
創薬研究は、国内の企業が海外に投資する傾向。国内で基礎研究から応用研究までのシームレスなつながりは少ないが、産業化に向けたポテン
シャルはある。関連省庁間の連携による薬剤開発の効率化が今後の進展に向けた鍵。
研究水準
◎
→
世界トップにある。て¥STAR*D(うつ病)、CATIE(統合失調症)、STEP-BD(双極性障害)など、複数の大規模な臨床研究プロジェクトが展開中。
死後脳の集積を行うブレインバンク活動も盛んな一方、画像モデル依存の仮説検証型研究へのバイアスに対する内外批判も。
技術開発
水準
◎
→
世界トップの水準。大学、製薬企業、ベンチャー企業のダイナミックな産学連携が発達し、企業から大学へのヘッドハントが活発。1000ドルゲノム技
術、脳画像データの較正、認知機能検査バッテリーの開発など、大規模臨床試験のための技術開発でも世界をリード。
産業
技術力
◎
→
創薬を初めとして抜きん出た開発力。民間企業がコマーシャルサービスで個人ゲノムを解析し疾患脆弱性を調べるなど、パーソナル医療を見越し
た開発が進展。
研究水準
◎
→
独自性の高い研究を展開。精神疾患を国民病として多額の投資を行なっている英国と、北欧を中心に疫学研究、コホート研究が盛ん。ドイツでは
、気分障害の基礎臨床融合研究が大きな実績。イタリアでは気分障害の臨床研究が盛ん。オランダ、ドイツでは死後脳研究も。
技術開発
水準
○
→
ドイツ、フランスが総合的に高水準。また、スウェーデンでは画像研究等の技術開発が盛ん。脳MRI解析技術SPMでは英国が世界を主導。欧州全
体で、診療と結びついた研究を評価し推進する機運。医療経済学的な評価指標の公開によって研究費増大を狙う動きも。
産業
技術力
◎
→
多くの巨大製薬企業が存在し、創薬研究等の産業化が盛ん。厳しい財政状況下でも売り上げを伸ばしている
研究水準
○
↗
BGIなどのゲノム研究拠点がパイプラインを整備し、大規模ゲノム解析が進行中だが、診断の信頼性や倫理問題に関する懸念を指摘する声も。脳
画像や臨床研究においても一部成果をあげてきており、今後欧米中の3極としてこの分野が動くという見方も。
技術開発
水準
△
↗
BGIが新型シークエンサー128台を購入するなど、技術開発力も急成長。ただし、施設間の格差が顕著であり、全体の底上げが図られるかどうか
は注視が必要。
産業
技術力
△
↗
現時点で特筆すべき産業技術は認められないが、中国国内に国際学会組織を多数設立し、日欧米の研究者へのプロモーションを進めるなど、国
際主導権の獲得を目指した急速な進歩が予想される。
研究水準
△
↗
神経画像研究で高い成果が得られているほか、遺伝子研究でも一部のグループが成果を上げており、今後の発展が期待される。臨床研究の潜
在力は高まっているほか、理学・工学分野との連携が進みはじめ、理工系研究者が参加した数値解析的な研究が目立つ。
技術開発
水準
△
↗
今のところ、技術開発で目だったものはないが、今後の発展が期待される。
産業
技術力
△
↗
研究水準の向上に伴う今後の進歩が期待される。
20
中綱目
広汎性発達障害
世界的な診断数の伸び(約100名あたりに1人)を背景に特に自閉症に対する関心が社会的に高い。診断技術の世界標準を有する
米国が基礎から臨床研究、医療応用において圧倒的な強みを持ち、日本においても類似の研究開発体制の構築を望む声がある。日本にお
いては、客観性の高い治療・評価法の導入の遅れも課題。
(ライフサイエンス分野 科学技術・研究開発の国際比較 2011年版、2012年版原稿をもとにJST-CRDSが作成)
国・
地域
日本
米国
欧州
中国
韓国
フェーズ
現
状
トレ
ンド
評価の際に参考にした根拠等
研究水準
○
→
画像研究を中心に注目すべき成果が出ているが、欧米に比して特に臨床研究者層が薄く、客観性の高い診断・評価法の導入や人材育成の遅
れが大きな課題。一部に基礎と臨床の連携研究体制が築かれ始めたが、欧米に比肩する研究センターなど恒久的な支援体制を望む声も。
技術開発
水準
△
→
発達障害に特化した技術開発で目につくものはないが、ロボットを用いた教育支援など応用可能な技術はある。
産業技術
力
△
→
発達障害に関連した産業技術で目につくものはない。
研究水準
◎
↗
複数の研究拠点が学際研究を推進し、exome sequence やトランスクリプトーム解析の導入などは世界トップ。自閉症の診断・評価基準の世界標
準や診断ライセンスの授与においても世界を主導。多施設共同研究やAGREデータベースなど患者参加型の研究支援体制が強み。
技術開発
水準
◎
↗
研究に必要な技術は他の生物学の領域と共通。他、教育支援プログラムや機器の開発も盛ん。
産業技術
力
◎
↗
自閉症関連遺伝子の検査や、応用行動分析を使った治療等が民間のビジネスとして成立。遺伝性疾患Fragile X症候群に対する薬物治療が開
発され、臨床治験も進展。
研究水準
◎
→
英国において認知・行動を中心に発達障害に関する高い水準を誇る。「心の理論」の研究はロンドン発祥。発達障害に関して注目を集める「ミラ
ーニューロン」はイタリア発の研究成果。
技術開発
水準
◎
→
行動観察に関する技術開発が企業と研究者の共同で進展。
産業技術
力
◎
→
幼児にも適用可能な非接触の視線計測技術ではスウェーデンが世界の標準技術を有する。行動観察用ソフトはオランダが世界標準を持つ。
研究水準
△
↗
国として注力している分野ではないが、関連遺伝子探索やコホート研究を実施する場合のポテンシャルは高い。
技術開発
水準
△
↗
現状では力を入れていないがポテンシャルは大きい。
産業技術
力
△
↗
現状では力を入れていないがポテンシャルは大きい。
研究水準
△
→
特記すべき研究は見当たらない
技術開発
水準
△
→
特記すべき技術開発は見当たらない。
産業技術
力
△
→
特記すべき産業技術は見当たらない
21
中綱目
計算論・ニューロインフォマティクス
学会や国際共同事業が主導する形での大規模プロジェクトが多数展開中。基礎研究においては近年欧州が台頭し、日本も一部
世界先端の成果を有する。インフォマティクスに関しては、データベースの構築や維持管理に関する評価、人材育成の体制確立に関して
日本に遅れ。
(ライフサイエンス分野 科学技術・研究開発の国際比較 2011年版、2012年版原稿をもとにJST-CRDSが作成)
国・
地域
日本
米国
欧州
中国
韓国
フェーズ
現
状
トレ
ンド
評価の際に参考にした根拠等
研究水準
○
↗
計算論に関しては複数の研究センターで世界先端レベルの研究を実施する一方、生物学、生理学的手法との融合に遅れ。ニューロインフォマティ
クスに関しては、INCF日本ノードが主導的に推進し、認知度は高まりつつあるほか、ショウジョウバエなど国際的評価を持つデータベースも存在。
技術開発
水準
○
↗
欧米からは遅れているが独創的なデータベースによって世界標準の創出可能性も。次世代スパコン開発に脳のマルチスケールシミュレーションが
位置づけられ、脳研究における計算理論の需要には高まりが。しかし、膨大な生データに立ち向かえる人材供給が追いついていないのが現状。
産業
技術力
△
→
計算論研究に関する技術基盤は有するが、産業的には特筆すべき点はない。ニューロインフォマティクスでは、データベース作成や管理にあたる
キュレーターという専門職種の育成やキャリアパス体制が確立しておらず、産業として根付く状況にない。
研究水準
◎
↗
厚い研究者層を誇り、学会や学術雑誌を巻き込んだ活動、さらにはNIH Blueprint for Neuroscience Researchによって総合的な支援が継続中。ア
レン脳アトラスなど国際的にも主導的なプロジェクトの他、Human Connectome Project、BrainMapsなども展開中。
技術開発
水準
◎
↗
計算論においては国際的な展開戦略による研究を推進。バイオインフォマティクスの世界標準創出の体験を生かし、データとリソースの大規模産
出と収集、データベース化、サービス化を強力に推進。オントロジー策定や可視化ツール開発などでも主導的な立場に。
産業
技術力
◎
↗
短時間で莫大な新技術開発を推進。アレンのデジタル脳アトラスは産業を生み出す基盤技術として確立されmデジタル脳アトラスを用いた自動脳
定位固定装置開発も進展。大規模データベースのほとんどは米国中心で、バイオデータベースを支えるキュレーターのキャリアパスも定着。
研究水準
◎
↗
計算論では特にドイツとスペインが台頭し欧州全体は米国をしのぐ勢いも。Blue Brain プロジェクト[19]に代表されるインフォマティクス分野も発展
し、ドイツ、英国、スウェーデン等で研究が盛ん。大規模データベースの構築、公開に関しては、米国には及ばない。
技術開発
水準
◎
↗
シミュレーションやモデルの技術開発水準が高く、小規模ながらマイクロスケールの高度な技術を駆使した標本作成・撮影技術や、国際協調プロ
ジェクトによるソフトウェア開発を主導。ドイツと英国のマウス脳や胚のデジタルアトラスの独創的な技術開発も高評価。
産業
技術力
○
↗
最近のIT 産業の進展は日本を凌駕。オランダがデジタル脳アトラスBrainNavigatorを米国と提携して商品化化する動き。他、ドイツ、スイスのImaris
、英国などで産学連携をベースに高い技術力を持つ商品開発が進み、英国ではキュレーター人材育成事業も進展中。
研究水準
△
→
日本から帰国した研究者による萌芽的な取り組みが始まっている。また、欧米に研究室を持つ中国人有名研究者がデュアルアポイントメントで母
国にも研究室を持つなど、今後、米国での経験を持つ若手研究者の帰国後の活動次第で侮れない勢力に成長する可能性が。
技術開発
水準
△
↗
商用のプロセッサーとGPUを組み合わせて最高性能を引き出すノウハウが専門家の間で高く評価される一方、独自の技術力には遅れ。研究水準
の向上から生じる波及効果が将来予想される。
産業
技術力
×
→
産業に結びつく動きはまだ顕在化していないが、経済力の急激な進展を背景に、純国産スパコンの開発をめざすなど意欲的で、産業技術力の将
来的な向上は確実。
研究水準
△
↗
国家プログラムBraintech’21(1998-2008)の実施により、拠点整備が進み、計算理論ベースの脳活動計測、前頭前野の情報表現など、小規模な
がら世界レベルで通用する研究成果が出始めた。2010年にINCFに加盟。
技術開発
水準
△
→
インフォマティクス分野での大きな成果はまだ見られないが、潜在能力は高く、IT 関係への展開の動きも。
産業技術
力
△
→
人工知能を生物医学などに応用するBMI分野への展開など、キャッチアップ型の産業技術への展開を志向。計算機、電子機器、光学機器で世界
的競争力を持つ企業が育っており、今後の進展が予想される。
22
中綱目
新規技術・他分野との連携、融合
全体的に米国の優位、欧州、日本が追従。今後は中韓に加え、シンガポール、台湾からの参入の兆しも。Closed loop BMI研究に
世界的な進展があったほか、研究非侵襲BMI/BCIの技術については欧州主導で進展。多様な刺激技術やBMI技術の需要に見合うデバイス
の研究開発、臨床治験を含む産業化戦略の構築が必要。
(ライフサイエンス分野 科学技術・研究開発の国際比較 2011年版、2012年版原稿をもとにJST-CRDSが作成)
国・
地域
日本
米国
欧州
中国
韓国
フェーズ
現
状
トレ
ンド
評価の際に参考にした根拠等
研究水準
○
↗
脳-機械インターフェイス(BMI/BCI)研究は医工連携による成果が社会還元段階に。運動性疾患への脳深部刺激(DBS)についてはエビデンスレ
ベルの高い研究成果が期待される。電極開発に関しては特徴ある研究が進んでいるもののベンチャー実用化への推進力が不足。
技術開発
水準
○
↗
非侵襲BMI/BCI技術に関して、ヒトを対象とした技術開発が産学協同研究として進展。また、NIRSの精度向上研究や、着脱容易な脳波電極の開
発も進行中。動物用も含めた電極開発に関しては、潜在的な技術力は有するものの、企業レベルでの研究開発は進んでいない。
産業
技術力
◎
→
BMI/BCI技術としては、製品化ならびに信頼性に関する研究が進行中。リハビリテーション機器についても、随意運動介助型電気刺激装置、多機
能エルゴメータ、BMIリハシステム、外骨格ロボットなど独自開発技術による潜在能力は高い。
研究水準
◎
↗
侵襲型BMI開発において世界をリード。また、非侵襲BMI/BCIは臨床応用への展開段階へ。リハビリテーションについてはリハビリ支援技術のほ
か、イメージングによる効果の検証研究の展開が進展。電極開発に関しては、世界をリード。DBSの新たな適応疾患に関する臨床研究も盛ん。
技術開発
水準
◎
↗
電極開発力が高いほか、多次元データ解析システムも世界をリード。アカデミアと緊密なベンチャー企業が多く、技術の移転もスムーズで、ユーザ
ーのニーズを反映した技術の実用化に全般的な強み。動物モデルの訓練・評価機器、DBS用デバイスシステムの国際標準も有する。
産業
技術力
◎
→
歩行訓練機器の実用化、簡便型電気刺激装置の生産技術は高い。電極に関しても実績を伴う高い技術力を有する。非侵襲BMI/BCIは、アミュー
ズメント先行。ヒト侵襲型BMI用電極を開発したCyberkinetics社は臨床応用から撤退したまま。
研究水準
◎
↗
フランス、ドイツ、英国、イタリアなどが高レベル。電極研究に関しては、EU域内での国際研究協力体制がうまく機能し、柔軟型や多機能型の開発
が進展。非侵襲BMIと外骨格ロボットを融合させた脳卒中リハ研究プロジェクト”BETTER”や嚥下障害に対するrTMS研究なども要注目。
技術開発
水準
○
↗
臨床用デバイス開発は低調だが、細胞用の超高密度電極システムや既存の脳活動計測法のハイブリッド技術(MRIと脳波)開発など独自の最先
端技術開発に強み。ドイツ、オーストリアを中心に非侵襲BMI/BCI関連技術の開発も。
産業
技術力
○
→
臨床用の神経電極について産業として定着した実績は見聞きしない。非侵襲BMI/BCIの製品化(g.tec)では世界をリード。デザイン性と使いやす
いパッケージにより、歩行訓練機器、神経イメージング機器・ソフト、視線や行動解析機器の実用化においても高い技術力を持つ。
研究水準
○
↗
BMI研究や新規適応疾患へのDBS研究、神経リハ研究が行われているが、エビデンスレベルの高いものは少ない。電極開発に関しては、独自の
成果は少ないものの参入グループ数は増えつつあり、今後の展開への注視が必要である。電気刺激に関する報告も今後要注目。
技術開発
水準
△
→
独自のデバイスを製造販売できる素地はないと考えられる。全般的にパテントに関する認識が他国と異なることも国際間競争において問題を生じ
る可能性もあるが、電極開発に関しては今後の展開への注視が必要。
産業
技術力
△
↗
BMI/BCIに関しては具体例を見聞きしない。DBSの施行症例数は比較的多いものの、人口当たりでみるとその普及度は低い。電極開発に関して
は、現時点では特筆すべき事項はない。
研究水準
○
↗
エビデンスレベルの高い研究や多施設共同研究などの実施例はほとんどない。電極開発に関しては参入者の増加に伴い今後の展開への注視
が必要。リハビリテーションについては、動作解析研究のレベルが高い。機能的電気刺激による治療報告が近年存在感を示している。
技術開発
水準
○
↗
独自のデバイスを製造販売するには至っていないが、ナノテクを用いての技術開発の進展には要注目。全般的に現時点では突出した技術はな
いが、国家的に技術創出の基盤作りを進めており、今後発展する可能性が高い。
産業
技術力
○
→
BMI/BCI、ならびに電極開発に関しては、現時点では特筆すべき事項はない。DBS治療は、公費負担による医療システムが機能しており、人口あ
たりの症例数も多いが、自国の産業技術としての成果は見聞きしたことはない。
23
中綱目
ブレインバンク・ヒト脳組織リソース
疾患研究の進展に伴い、ヒト脳を対象としたリソースの採取、保管、分配を行なうバンク機能の強化が望まれるが、日本でのバンク
運営体制の整備は欧米に比して遅れが。欧州で確立されている死後脳バンクの連携ネットワークについては、北米でも設立に向けた動き。
(ライフサイエンス分野 科学技術・研究開発の国際比較 2011年版、2012年版原稿をもとにJST-CRDSが作成)
バンク運営においては倫理面の検討と指針整備も重要。
国・
地域
日本
米国
欧州
中国
韓国
フェーズ
現
状
トレ
ンド
評価の際に参考にした根拠等
研究水準
△
↗
神経疾患の死後脳バンク活動母体があるが、運営制度の整備・維持に関する公的支援は欧米に比べると不足。精神疾患関連の死後脳バンク
はさらに整備が遅れており、学会レベルで倫理指針を含めたバンク運営体制整備の検討が行われている。
技術開発
水準
×
↗
企業が独自に死後脳集積を行なう例はないが、リソース整備の機運は高い。神経科学ブレインバンクネットワークでは生前の脳画像評価と共
に死後脳を集積しバンク化しており、画像研究の面では既に企業の技術開発への協力を開始。
産業
技術力
×
↗
技術開発水準の現状に準ずる。
研究水準
○
↗
疾患別に複数のバンクが存在し、多数の死後脳組織の集積、供給を実施。精神疾患に関しては全世界に検体を提供し、多大な貢献。検死官と
連携して対照群からのサンプル採取を含めたバンクシステムを構築。バンク間の連携体制は未整備。
技術開発
水準
○
↗
企業による死後組織の商業利用について遺族からの同意を含めて規制基準が明確ではなく、企業が独自に集積した死後脳組織を用いて第3
者機関からの解析の受託や抽出した核酸の販売を実施。
産業
技術力
○
↗
技術開発水準の現状に準ずる。
研究水準
○
↗
欧州の20のブレインバンクを連携するBrainNet Europe II という体制が2004年に確立済み。このネットワーク形成以降、集積された死後脳検体
の解析から100編以上の学術論文が出版され大きな成果を挙げている。
技術開発
水準
△
↗
欧州全体としては、慎重な姿勢で、営利企業が直接、死後脳の集積等を行う例は少ないが、既存のブレインバンクを利用した学術研究から企
業での技術開発に繋がる成果も見られる。
産業
技術力
△
↗
技術開発水準の現状に準ずる。
研究水準
△
↗
2007年Chinese Brain Bank Centerが設立され、死後脳研究が進む可能性はあるが、これまでのところ学術的成果の報告はほとんどない。
技術開発
水準
×
→
人権上不適切な死後臓器・組織の摘出、売買が行われている可能性を示唆する報告がなされており、こうした由来の死後組織が市場に出回っ
ている可能性があるなど、倫理面の懸念は大。
産業
技術力
×
→
特筆すべき情報はない
研究水準
×
→
道教、儒教の影響などの要因もあってブレインバンク整備の試みは実現に至っておらず自国での死後脳研究はほとんど行われていない。
技術開発
水準
×
→
自国の死後脳バイオリソースに基づく技術開発が行われることは当面期待できない
産業
技術力
×
→
技術開発水準の現状に準ずる。
24
倫理・ガバナンス・アウトリーチ
(脳神経)
総論的重要性の啓発から各国の研究展開に則した個別具体的検討、市民への理解増進などの展開期に。日本は学会レベルの
議論や指針策定は進展しているが、国レベルで脳神経倫理の何をどこまで扱うかべきかの検討には至っていない。国際連携においては
文化や社会経済的背景の違いを配慮した推進体制の構築が求められており、日本がアジアにおいて果たす役割は大きい。
(ライフサイエンス分野 科学技術・研究開発の国際比較 2011年版、2012年版原稿をもとにJST-CRDSが作成)
国・
地域
日本
米国
/
カナ
ダ
欧州
中国
韓国
フェーズ
現
状
トレ
ンド
評価の際に参考にした根拠等
研究水準
○
↗
科学哲学、倫理学者等による脳高次機能研究をめぐる倫理・哲学的議論が活発に行われ、書籍刊行も続き人文社会科学からの関心は高い一方
、実践倫理課題への検討や対応に、専門家教育には遅れ。研究開発プロジェクト内に設置された倫理対応研究グループの活動に要注目。
政策対応
△
↗
学会レベルの指針策定は進み始め、死後脳バンクの制度整備の中でも倫理面の検討が行なわれるなどの進展があるが、国レベルでの制度整備
には至らず。近年、厚生労働省と経済産業省による次世代医療機器・審査WGがニューロモジュレーション分野の安全性評価を議論。
理解促進
△
↗
脳神経科学コミュニティから一般市民に向けた情報発信が増加。研究者による「脳ブーム」批判書籍の刊行や、脳科学と倫理・社会に焦点をあて
たシンポジウムや科学カフェなども増えている。一方で、政策決定や脳科学研究のあり方に対する市民参加の取り組みは停滞。
研究水準
◎
↗
脳神経倫理研究のネットワーク化が進み、脳神経倫理専門の国際学会を主宰。北米圏で最大規模の生命倫理学会 (ASBH) や北米神経科学会
(SfN)においても存在感が増している。カナダに関しては、カナダ衛生研究所(CIHR)が脳神経倫理研究を強力に推進し、フィンランドやドイツとの共
同研究も展開。北米の複数の大学で脳神経倫理を専攻できるDual Degree Program の設置が進展。
政策対応
○
→
米国国立衛生研究所 (NIH) が研究助成に付随するガイドラインとして、偶発所見に関する対応マニュアル作成しているが、死後脳バンク運営や
DBSの精神疾患適用を含め、全般的に連邦政府よりも研究機関や組織運営母体ごとの倫理指針に依拠する傾向。
理解促進
○
↗
脳神経倫理の普及啓発は脳神経科学の普及啓発と不可分であるとの意識が広く共有。学会や科学技術啓発団体による一般市民、子供向けの
啓発教材開発や、教育プログラムを作成。
研究水準
◎
→
脳神経分野、哲学分野等での学術研究的関心は高まっており、英国を中心に大学や財団のサマースクールによる人材育成、啓発活動がこの5年
ほどの間に複数実施されている。スペインのバレンシア大学にも脳神経倫理の研究教育プログラムが設立。
政策対応
○
→
法規制レベルでの対応例は見聞きしない。フランスで生命倫理法改正にあたり脳神経倫理に関する議論があったものの、法案への反映は見送ら
れた。死後脳バンク運営に関する倫理対応は国ごとに違い、英国、ベルギー、スペインは死後組織の商業利用を一切禁じている。
理解促進
△
→
科学技術全般に関して市民参加や科学コミュニケーションの取り組みは非常に多く行われているが、脳神経科学の社会実装に関する市民会議
Meerting of Mind が2005年に開催された例を除き、脳神経倫理およびその基盤となる脳科学に特化した取り組みはまだ少ない。
研究水準
×
→
脳神経科学研究自体が発展段階にあり、これらに対する倫理・社会領域の体系的な研究はまだ実施されていない。
政策対応
×
→
政府による脳神経科学研究への投資に脳神経倫理は含まれていない。国内のBMI開発への倫理対応動向には要注目。
理解促進
×
→
特筆すべき動きはない。
研究水準
△
↗
2009年度から始まった "Neuro-Humanities” プロジェクトが、ソウル国立大学を中心に引き続き進行中。国際ネットワークを構築している。
政策対応
△
→
国レベルでの倫理指針などは策定されていないが、脳研究促進法において研究推進と合わせて安全性、倫理性の担保を研究者に義務付け、政
府がしかるべき措置をとることを定めている。“Neuro-Humanities”プロジェクトは達成目標の一つとして国レベルの指針案の提示を掲げている。
理解促進
×
→
特筆すべき動きはない。
25
主な注目動向
•
コネクトミクス研究者層が拡大。米国以外からドイツ、スペイン、英国、日本、スイスな
どの研究者の参画が進んでいるほか、連続切片電子顕微鏡像の取得に関する自動
化技術の普及も進んでいる。
•
Optogeneticsに代表される、光学的手法による分子生物学的アプローチがさらに普
及し、萌芽的技術から普遍的研究ツールへの転換期に。
•
精神疾患に関しては、患者由来試料のオミックス解析による診断・治療標的分子探
索研究の進展や希少サンプルによる遺伝子変異検索、またヒトとモデル動物をつな
ぐトランスレータブル中間表現型研究の発展が顕著。脳画像やゲノムデータベース
の構築に向けた取り組みや、医療経済学的観点からの検討も始まった。
•
厚生労働省の社会保障審議会医療部会は、がん、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病の「4
大疾病」に、新たに精神疾患を追加して「5大疾病」とする方針を2011年に決定した。
•
2011年9月に、国連で非伝染性疾患に関する会議が開催され、脳血管障害を含む心
血管疾患,糖尿病,がん,慢性呼吸器疾患を世界的規模で取り組むべき課題に。
•
世界的に研究リソースとしての霊長類生体試料のデータベース化や実験動物施設
の効率的運用に関する取り組みが進展。
•
霊長類をはじめ実験動物の保護に関する法規制等の改正が日本を含め世界的に進
展。特に大型類人猿に関する実験の規制が欧米において厳しくなる中、日本国内で
はボノボの研究拠点が設置されるという独自の展開も。
26
主要な国と地域の
脳科学関連施策、予算動向
2010年ライフサイエンス分野俯瞰ワークショップ
脳神経分野 分野別検討分科会 参考資料
ならびにアップデート版(机上配布資料)より
10WR07/俯瞰ワークショップ「ライフサイエンス分野の俯瞰と重要研究領域」脳神経分野 検討報告書
http://crds.jst.go.jp/output/rp.html#2-3
27
(参考) 俯瞰ワークショップとは
•
JST-CRDSが次年度以降に施策化に向けた深掘り検討を行なう研究開発
テーマ抽出の根拠とするために隔年で実施するワークショップ。
•
科学技術の各分野の研究開発の現状を網羅的に把握し、その状況を可視
化する「俯瞰マップ」の作成と今後トップダウン研究としての推進が必要にな
ると考えられる「重要研究領域」の抽出を主な目的とする。
•
ライフサイエンス分野は2006年から俯瞰ワークショップを実施し、2010年よ
り、分野全体のワークショップに先立って、ライフサイエンスを構成する要素
分野(ゲノム、脳、発生・再生、免疫、がん、植物、健康)別の分科会を実施。
•
脳神経分野分科会については、基礎から臨床まで脳神経科学とその関連
領域に関係する主要学会や研究機関の長を中心に参加者を招聘し、科学
行政からも関係者が出席。
•
分科会においては主要国の脳神経分野関連のトップダウン的施策や予算
動向について、参考資料を用意し、当日の議論に活用。
28
脳神経分野 分科会招聘有識者 (敬称略、所属は2010年9月当時のもの)
金澤 一郎 (日本学術会議)
中西 重忠 (大阪バイオサイエンス研究所)
安西 祐一郎 (慶応義塾大学)
津本 忠治 (理研BSI)
平井 有三 (筑波大学)
高坂 新一 (国立精神・神経医療研究センター )
内山 安男 (順天堂大学)
木村 實
(玉川大学 脳科学研究所)
松沢 哲郎 (京都大学霊長類研究所)
岡本 仁
(理研BSI)
祖父江 元 (名古屋大学)
河村 満
(昭和大学)
岡崎 祐士 (都立松沢病院)
武田 雅俊 (大阪大学)
藤原 一男 (東北大学)
吉峰 俊樹 (大阪大学)
文部科学省 ライフサイエンス課
経済産業省 生物産業課
JSTイノベーション推進部
29
調査対象の国と機関など
米国
カナダ
EU
英国
ドイツ
フランス
NIH
NSF
CIHR
CNRC
FP7
Horizon 2020
BIS
BBSRC
MRC
BMBF
DFG
MPI
CNRS
Inserm
ANR
シンガポール
中国
韓国
NMRC
A*STAR
NSFC
NSTC
脳研究促進法
30
米国 オバマ大統領着任後のNIH脳神経分野関連の新戦略
•
自閉症研究支援額 の増額
•
NIH共通ファンド(NIH Common Fund、最低2つ以上のNIH研究所や研究セ
ンターで共同研究を行うことを要件とする分野横断研究への投資)の予算増
•
生命倫理研究に対してOffice of the directorより新たに500万ドル投資し、市
民の信頼と確信を維持向上させるための横断的な研究・トレーニングを推進
•
希少・未対応疾患・治療イニシアティブ(TRNDI)を2009年より開始
•
大型挑戦、ハイリスク研究を支援する“GO grants” (Grand Opportunity
Program) の創設
•
研究資源センター(NCRR)の廃止→新設されるトランスレーショナル・リサー
チセンターへ一部吸収
•
R01グラント審査に「イノベーションへの展開」を取り込んだ評価を盛り込む方
向に審査基準が改正
•
研究者からの自由提案にもとづく革新的な異分野融合型研究を推進する
Transformative R01枠の設置
JST CRDS 海外動向ユニット調査成果
http://officeofbudget.od.nih.gov/UI/2009/Dr%20%20Kington-Testimony%20Final%203-23-09.pdf
http://officeofbudget.od.nih.gov/ui/2010/Summary%20of%20FY%202010%20President's%20Budget.pdf
31
米国 脳神経分野関連の主要なNIH研究所の研究予算推移
(US$ in thousands)
国立心肺血液研究所
国立歯科・頭蓋顔面研究所
国立神経疾患・脳卒中研究所
国立小児保健発達研究所
国立眼病研究所
国立聴覚・伝達障害研究所
国立精神衛生研究所
国立薬物乱用研究所
国立アルコール乱用・依存症研究所
NIH全体の2012年予算
(見込み額)は
約2兆5千4百万円(1$ = 80 円)
科学技術全般に連邦政府予算縮減の一方で、
脳神経分野関連研究所の研究予算は増加傾向に
SFN2009 出展研究所
http://officeofbudget.od.nih.gov/pdfs/FY
12/Volume%201%20-%20Overview.pdf
をもとに JST-CRDS作成
32
米国 NSFの脳神経科学関連研究の戦略と予算
2012年開始の脳神経を含むライフサイエンス分野に関連する主なプログラムと予算(5年分総額)
・ Integrated NSF Support Promoting Interdisciplinary
Research and Education (INSPIRE) ($12.35 million、約9億8千万円)
・ Research at the Interface of the Biological, Mathematical,
and Physical Sciences (BioMaPS) ($76.14 million、約60億9千万円)
・ National Robotics Initiative (NRI) ($30.0 million 約24億円)
分野別の2012年予算要求額
と対2010年比
33
http://www.nsf.gov/about/budget/fy2012/pdf/fy2012_rollup.pdf
33
カナダ National Research Council Canadaの研究戦略と予算
ライフサイエンス分野についてはCanadians Health をテーマに以下に重点投資を計画
(主な対象:がん、神経変性疾患、炎症性疾患、老化、工学技術との連携 など)
Health and Environmental Biotechnology Research AgeRelated and Infectious Disease Research Medical
Diagnostic Technology Research Marine Biosciences and
Nutrisciences Research Plant Biotechnology Research
Genomics and Health Technology
ライフ分野の2012-13年予算は
約65億3千万円(1C$ = 80 円)
Forecast Spending
($ millions)
2010-11
Program Activity
Planned Spending ($ millions)
2011-12
2012-13
2013-14
Manufacturing Technologies
127.789
126.551
111.916
112.174
ICT and Emerging Technologies
77.183
69.534
40.223
40.364
Industrial Research Assistance
290.850
139.146
134.013
134.601
Health and Life Science Technologies
114.117
92.829
81.652
82.172
Energy and Environmental Technologies
35.746
34.633
27.995
28.137
Total
645.685
462.6937
395.7998
397.448
http://www.tbs-sct.gc.ca/rpp/2011-2012/inst/nrc/nrc01-eng.asp#s1.1
34
EU FP7:Cooperation(多国間共同研究)における
分野別予算配分
•
•
•
FP7予算: € 323.65億
共同研究への助成、JTI(Joint Technology Initiative)への助成、各国の
研究プログラムとの連携も
脳神経分野においては約40課題が採択
10分野の配分額
単位:€億
ナノサイエンス、ナノテクノロ
ジー、材料、新製造技術
34.75 €
11%
エネルギー
23.50 €
7%
情報通信技術
90.50 €
28%
健康分野の予算は約6400億円
(1Euro = 105円)
食料、農業、バイオテクノロジー
16.35 €
5%
健康
61.00 €
19%
セキュリティー
14.00 €
4%
環境(気候変動含む)
18.90 €
6%
運輸(航空含む)
41.60 €
13%
社会経済科学、人文科学
6.23 €
2%
宇宙
14.30 €
5%
JST CRDS 海外動向ユニット調べ
35
EU FP7後継の科学技術計画 Horizon 2020 策定に向けた動き
当初 Framework Programme 8 として検討が進んでいた研究開発戦略を他
の研究開発事業(Competitiveness and Innovation Framework
Programme (CIP) ならびにEuropean Institute of Innovation and
Technology (EIT))と統合し、より効率的な欧州の科学技術研究開発の推
進を目指したプログラムに編成し、2013 年以降に実施予定。
Horizon 2020 の策定プロセス
2010年
2011年2月
2011年6月
本格的な検討を開始(ブレイン・ストーミング的会合等)
Green Paper を発刊、パブリックコメント受付
パブリックコメントに対応した研究開発戦略方針案の作成会合開催
・ 全体方針として、より市場、産業に近い出口への志向性が強まる。
・ 研究者の利便性を考慮し、他の研究財源(各国政府からの助成や
個人の寄付等)の併用に関しての自由度を増やす方向に。
・ 社会情勢の変化に対応して、期間中の研究戦略の柔軟な見直しも考慮。
・ 多分野の融合研究によるイノベーション創出を推奨。
※脳科学を含むライフサイエンス分野は
The health, demographic change and wellbeing challenge 枠で具体的検討
http://ec.europa.eu/research/horizon2020/index_en.cfm?pg=home 36
英国 MRCにおける脳神経科学関連研究の戦略と予算
Neurosciences and Mental Health Board (NMHB)による重点研究領域
• 神経変性疾患
• 精神衛生と依存症
• 神経発生生物学、神経生理学(含む痛み研究)、神経心理学
• 認知・行動神経科学と関連する心理学、機能障害
• 可視化技術と脳バンク
2009/10年研究予算(£758.2M)配分の分野別割合
神経・精神疾患分野への研究投資割合が
最大(約38億2千万円、1£=120円)
ttp://www.mrc.ac.uk/consumption/idcplg?IdcService=GET_FILE&dID=31774&dDocName=MRC007851&allowInterrupt=1
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英国 BBSRCにおける脳神経科学関連研究の戦略と予算
2010年ー2015年の研究開発戦略
・
・
・
・
World-class bioscience (世界に通用するバイオサイエンス研究の推進)
Food Security (食の安全)
Bioenergy and industrial biotechnology (エネルギー開発と産業技術への貢献)
Basic bioscience underpinning health (健康を支える基礎研究)
加齢、再生医科学、動物モデル(哺乳類)による in vivo統合研究、
生物化学、構造生物学、プロテオミクス、イメージングなどの新規技術開発、
ゲノム科学、産業化に向けたトランスレーショナルリサーチの推進
脳神経分野関連の研究投資総額は
約1億4千6百万円(1£=120円)
http://www.bbsrc.ac.uk/nmsruntime/saveasdialog.aspx?lID=3142&sID=4977
http://www.bbsrc.ac.uk/nmsruntime/saveasdialog.aspx?lID=6741&sID=4968
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ドイツ DFGで進行中のプロジェクトへの分野別予算
脳神経分野の関連領域(心理学を含む社会行
動科学、生物学、医学など)への投資が増額
Biologie の2010年予算
254億3千万円(1Euro =105円)
Medzinの2010年予算
508億9千万円(1Euro =105円)
http://www.dfg.de/en/dfg_profile/annual_report/index.html
39
フランス CNRS の研究戦略と研究分野別予算配分
Interdisciplinary Program
• 既存の学問分野の境界にある新規研究領域インターフェイスを迅速に設定し、科学技術
のみならず、社会経済的課題にも解決をもたらすような研究開発を支援。
• 人材の交流や共通ファシリティの整備に対する資金的援助や、他のファンディング
プログラム(ANRやEUなど)への応募を行う際の研究チーム結成に関する支援も。
415億8千万円
(1Euro =105円)
生命科学分野のみな
らず学際領域への研究
投資による脳神経科学
研究の推進が期待できる。
http://www.cnrs.fr/en/
aboutCNRS/interdiscipl
inary.htm
691億8千万円
(1Euro =105円)
http://www.dgdr.cnrs.fr
/dsfim/chiffres/2011/p
df/Presentationglobale.
pdf
40
フランス Insermの研究所別配分予算(FY2011)
脳神経科学関連の研究所への配分額は
全体の20%近く、2番目に大きい配分額
(114億9千万円、1 Euro=105円)
http://www.inserm.fr/qu-est-ce-que-l-inserm/missions-de-l-institut/budget-2011/activite-scientifique-parthematique-de-recherche-et-par-nature-de-depenses
41
フランス ANRの2010年の予算配分実績
テーマ無指定で、研究者からの自発提案を尊重する研究開発助成プログラム
“Blanc(白)”に約半分の研究費(約 € 425 million、約446億2千万円)を充当
脳神経科学が関連する
Biology and Health や Information and
Communication Sciences and Technology
分野への投資割合は
相対的に高く、Blanc枠での採択数も
トップ5に入っている
recherche.fr/fileadmin/user_upload/documents/2011/ANR-Annual-Report-2010.pdf
42
シンガポール NMRC の予算配分実績(FY2010)
Executive Director; Tan Say Beng (Duke-NUSの疫学の准教授)
Funding金額 ; S$85.34 million (2010年)
(参考)NMRCにおける2010年の予算配分実績(分野別の詳細は不明、目的別、S$)
(参考)2010年までの5ヵ年計画にお
いて配分された、目的別の配分総額
戦略対応型研究費
約152億2千万円
(1S$=60円)
研究者の自発提案研究費
約114億7千万円
(1S$=60円)
http://www.nmrc.gov.sg/content/nmrc_internet/home/aboutus/eddesk.html
http://www.nmrc.gov.sg/content/dam/nmrc_internet/documents/annualReports/NMRC%20Annual%20Report%202010.pdf
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シンガポール A*STAR 生物医科学イニシアチブ
医薬品、バイオテクノロジー、医学テクノロジー、ヘルスケアの研究開発を推進
Biomedical Research Council内の Biomedical Sciences International
Advisory Council(7カ国31名)が推進に必要な助言を行っている。
Phase 1 (2000-2005年、S$1-3 billion):以下の分野について中核施設を設立
• Bioprocessing
• Chemical synthesis
• Genomics and proteomics
• Molecular and cell biology
• Bioengineering and nanotechnology
• Computational biology
Phase 2 (2006-2010年、 S$1.5-3.0
billion):橋渡し研究の推進が主体
Phase 3 (2011-2015年)
・ より大きな経済的、公衆衛生的インパクト
の獲得を目指した戦略展開
・ より大きい経済成長を見込んだ
Mission-orientedな研究開発への重点投資
・ 国際競争において有利な事業統合や橋渡しのシームレスな推進
http://www.a-star.edu.sg/AboutASTAR/BiomedicalResearchCouncil/BMSInitiative/tabid/108/Default.aspx
44
中国 NSFCにおけるライフサイエンス予算
中国は2010年よりライフサイエンスと医科学分野を明示的に分離して、ヒトの疾
患・障害の治療や予防技術開発に繋がるものは研究対象に関わらず医学科学
部扱いとした。一方、生命科学には植物科学分野も含まれる。脳科学に特化し
た予算情報は公表されていない。
全体予算は約87億7千万円
1課題あたりの交付額
約390万円
(1元=12円)
全体予算は約119億4千万円
1課題あたりの交付額
約380万円
(1元=12円)
http://www.nsfc.gov.cn/nsfc/cen/ndbg/2010ndbg/05/01.html
NSFC医学科学部 Qunyan Lu プログラムディレクター 提供情報
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米国の脳科学研究者コミュニティの中国研究業界への
関心の高まり (インタビュー有識者からの情報提供)
Cold Spring Harbor Asia Conferences が中国に設立
2012に予定されている国際会議のテーマ
Fishing for Answers: Zebrafish Models of Human Development and Disease
Epigenetics, Chromatin & Transcription
Global Health Genomics
Liver and Metabolic, Disease and Cancer
Bone and Cartilage: from Development to Human Diseases
Invertebrate Neurobiology
Frontiers of Immunology in Health and Diseases
Ion channels: biophysics, diseases and therapeutics
Ras/small GTPases Meeting
RNA Biology
High Throughput Biology
Differentiation Therapy and Advances in Leukemia
CSH-Asia/NCI-MMHCC Joint Conference: Genetic, Genomic, and Translational Studies of Human
Leukemia
Plant Epigenetics, Stress and Evolution
Neural Circuit Basis of Behavior and its Disorders
CSH Asia / ICMS Joint Conference on Tumor Microenvironment
Synthetic Biology
Stem Cells and Developmental Mechanisms
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Vaccine Design
http://meetings.cshl.edu/CSHAsia/index.html
46
韓国における脳神経科学研究の推進戦略
韓国では、科学技術基本法に加え、特に推進したい科学技術分野に関する個別法が制定さ
れ、政府としての基本計画を策定し、戦略立案、予算配分への優遇がはかられている。(例:
生命工学育成法 1984年制定、ナノ技術開発促進法 2003年制定 など)
脳科学分野では、「脳研究促進法」を1998年に制定(教育科学技術部所管)
・ 脳研究促進法に基づく第1次基本計画(1998-2007年)期間中に政府は3180億ウォンを投入。
1998年の予算は136億ウォンだったが、2007年は492億ウォン(49億2千万円)と3倍強に。
・ 現在は2007年制定の「第2次脳研究促進基本計画」(2008-2017年)に沿い、計画終了時に脳
研究分野世界7位を目標に政府(教育科学技術部、知識経済部、保健福祉部等)が合計1兆5千億ウォ
ン(約1500億円)を投入し、2006年には2000名であった脳科学分野の研究人材を2017年に
9296名まで増加させる目標。脳神経生物分野、脳認知分野、脳神経界疾患分野、脳神経情
報・脳工学分野、脳融合分野の5分野に関する推進計画を立てている。
・ 教育科学技術部は、2011年6月、大邱慶北科学技術院(DGIST)-大邱・慶北コンソーシア
ムが「韓国脳研究院」を誘致する機関として選定したと発表。DGIST付設研究所として設置
予定(2014年開所予定)。政府が設計費、運営費、研究開発費など638億ウォン(63億8000万
円)を支援。
・ 韓国脳研究院は、国際的な脳研究の重要性の高まりの中、韓国における散発的な脳科学
の研究組織を集約し、拠点機能を持つ必要性を背景に設置が進められている。
1ウォン = 0.1円
九州大学韓国研究センター 岩渕 秀樹 学術共同研究員の情報提供を基に、JST-CRDS ライフサイエンス・臨床医学ユニット編集
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(参考) 韓国 脳研究促進法のポイント (1)
【目的】
脳研究を効率的に育成・発展させ、その技術の産業化を促進し、国民福祉の向上および
国民経済の健全な発展に資する。(1条)
【政府の責務】
政府は、脳研究促進の支援策を策定し、積極的に推進しなければならない。大学、研究
機関、企業など脳研究を行う者はこの施策に積極的に協力しなければならない。(4条)
【脳研究促進基本計画】
教育科学技術部長官は、関係行政機関の長から提出した脳研究促進のための計画を総
合・調整し、生命工学総合政策審議会議を経て、脳研究促進基本計画を策定しなければ
ならない。脳研究促進基本計画に次の事項を定める(①脳研究の中長期的目標、②脳研
究財源の拡大方策・推進計画、③各分野の脳研究に係る計画、④必要な人的資源に係
る計画、⑤脳研究の成果利用と係る計画)(5条)
【脳研究投資の拡大】
政府は、予算の範囲で脳研究投資を拡大するため最大限努力しなければならない。教育
科学技術部長官は、毎年脳研究投資拡大計画を作成し、国家教育科学技術諮問会議に
報告する。(9条)
九州大学韓国研究センター 岩渕 秀樹 学術共同研究員の情報提供を基に、JST-CRDS ライフサイエンス・臨床医学ユニット編集
脳研究促進法(韓国語 URL)
http://www.law.go.kr/LSW/lsSc.do?menuId=0&p1=&subMenu=1&searchName=LicLs%2C0&query=%EB%87%8C%EC%97%B0%EA%B5%AC+&
x=27&y=14#liBgcolor0
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(参考) 韓国 脳研究促進法のポイント (2)
【脳研究推進施策の策定】
関係行政機関は脳研究を効率的に促進するため次の施策を策定する。(14条)
①教育科学技術部長官: 基本計画・実施計画策定の支援・調整、脳分野の研究促進のため
の専門人材の養成と脳科学の基礎分野の研究支援、脳関連基礎技術・先端技術の開発、研
究成果の活用のための研究の支援、公共的性格の脳研究支援体制の育成
②知識経済部長官: 脳研究の成果を生産・産業の工程に効率的に応用する技術の開発、技
術の産業化促進、脳研究の成果を情報・通信などの分野に応用するための技術の開発及び
開発技術の産業化促進
③保健福祉部長官: 保健・医療等に係る脳医薬研究とその成果の応用及び開発技術の産業
化促進
【臨床・検査】 政府は脳研究関連製品に関する臨床・検査体制を確立する。(15条)
【実験指針の作成・実施】
政府は、脳研究とその産業化促進のための実験指針を作成しなければならない。実験指針に
は脳研究とその産業化の過程で予想される生物学的リスク、人間に及ぼす悪影響および倫理
的問題の発生を事前に防止するために必要な措置及び安全基準を含む。(16条)
【研究所の設立】 脳分野の研究及びその利用と支援に関する機能を果たし、産学官の有機的
協力体制を維持・発展させるため、政府が財政支援する研究所を設立できる。(17条)
九州大学韓国研究センター 岩渕 秀樹 学術共同研究員の情報提供を基に、JST-CRDS ライフサイエンス・臨床医学ユニット編集
脳研究促進法(韓国語 URL)
http://www.law.go.kr/LSW/lsSc.do?menuId=0&p1=&subMenu=1&searchName=LicLs%2C0&query=%EB%87%8C%EC%97%B0%EA%B5%AC
+&x=27&y=14#liBgcolor0
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まとめ 主要国の施策と予算動向のトレンド
•
欧米では2008年以降、科学技術全体で研究予算配分額が低下している国も多いが
脳神経科学に関わる予算については配分額、割合に上昇傾向。
•
国レベルで実施されるトップダウン施策の多くが課題解決型の研究開発プログラム。
•
解決が必要な課題として挙げられるテーマは老化や疾患、発達障害のうち特に経済
的損失の大きいもの、国民生活に影響が大きいものが多い(アルツハイマー病、自閉
症など)。
•
イノベーションへの傾倒が強く、出口(産業化、市場化)志向も相変わらず(NIH R01
の課題選考においてもイノベーションに対する評価が盛り込まれたほど)。一方で研
究者の自由提案型研究を支援する動きが欧米で顕在化。
•
数理科学、複雑系、光学など異分野融合の推進や、それを支える基盤技術開発への
投資も盛ん。
•
ニューロインフォマティクスや脳神経系の研究資源に関するサンプルの確保、供給体
制の確立など基盤技術、インフラ整備への関心が高く、特に死後脳バンクやデータベ
ースの構築、維持、管理に関して国際連携が進展。
•
中国、韓国をはじめとする新興国において欧米モデルの臨床研究支援体制の整備が
進展。
•
韓国は法律で脳科学研究の推進と倫理対応に必要な予算枠の確保や体制整備に必
要な措置を政府が講じることを定めている。
50
2011-12年版国際比較調査と主要国の動向から示唆される
日本の脳神経科学研究の現状と課題
•
国レベルでの研究開発基盤(ニューロインフォマティクス、画像データベースを含むヒ
ト脳研究のためのリソース管理体制等)の整備が欧米に比べて遅れている。国内の
みならず、欧州やアジアに顕著な国際連携の潮流からの遅れも懸念される。
•
神経・精神疾患の研究支援が基礎から臨床応用(大規模な治験の実施、開発された
薬剤や治療技術の上市)までの一貫性を維持しにくい。
•
非侵襲的な可視化、機能計測の新しい技術開発とその普及への対応策(独自技術
の開発や装置の国産化、既存の普及技術の衰退に伴うパラダイムシフトを担う研究
技術開発人材の育成)、国内の産業界との連携のあり方などの議論が必要では。
•
BMI/BCI等神経工学を中心とする、新規技術開発成果の社会還元の具体化のため
に、医療技術評価等も視野にいれた取り組み(安全性評価軸の確立、 FDA治験認可
の取得、大規模臨床試験の実施、国際標準の獲得など)が必要では。
•
欧州を中心に実験動物としての霊長類需要の低下が加速している中、日本の立場、
将来戦略をどのように立てるべきか。遺伝子改変霊長類開発の成果をどのように国
際競争力強化につなげるべきか。
•
アジアにおける脳神経科学研究推進の機運を高める指導的役割はほとんど米国が
担っている現状で、日本としてとるべきアジア内国際連携あるいは競争に対する戦略
をどのようにとるべきか。
51
独立行政法人科学技術振興機構
研究開発戦略センター
ライフサイエンス・臨床医学ユニット
浅島 誠
(上席フェロー)
及川 智博
川口 哲
鈴木 響子
辻 真博
○福士 珠美
森
英郎
山本 雄士
(フェロー)
(フェロー)
(フェロー)
(フェロー)
(フェロー)
(フェロー)
(フェロー)
52
52
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