怒りと脳損傷 - なやクリニック

怒りと脳損傷
怒りは、脳損傷が人生を変えてしまったということを考えるときによく経験される反応です。
脳損傷により、怒りなどの基本的な反応をコントロールする脳の領域が損傷されます。叫び
や他人を傷つけるといった衝動は通常はコントロールされていて、より適切な行動が取られま
す。脳損傷者はしばしばこのコントロールが失われ、かつては我慢したり完全に無視できてい
た状況で、激怒してしまいます。
この怒りには、スイッチが入ったり切れたりといった感じがあります。脳損傷者は数分後に
は平静になるのですが、周囲のものは怒りの爆発に圧倒され、傷つき、何日とまでは行かなく
ても何時間かはショックを感じるでしょう。家族やパートナーはこうした怒り発作を何とか理
解しようとします。そして次第に恨みや苦々しい思いが積み重なっていきます。ひとたび彼等
が、愛する脳損傷者が怒りをコントロールできないと感じていることを理解するなら、彼等は
発作を処理できるように反応し始めることができることでしょう。
しばしば脳損傷者は自分の問題に気づいていないのです。彼等は怒りに問題を持っていると
いう認識さえないかもしれません。このことはまた家族や人間関係の中に大きな葛藤を持ち込
みます。本人が問題を抱えているということに徐々に気づくためには、言葉を選んでフィード
バックすることが必要ですが、これにはかなりの時間がかかります。
次のステップは、脳損傷者（生還者）がかつては当然持っていた怒り対処法を再学習するこ
とです。最初にやるべきことは、個別のいらいらにどのように怒り発作が関係しているのかと
いうパターンを知ることでしょう。そうした引き金は、環境や特定の人または内にある思いか
ら出てくるものです。
怒りのよくある原因
・本人が不可能なことをやるように迫られているとき
・他人の行動、たとえば運転、無遠慮な発言
・不正確な思い込み、たとえば人が自分を笑っていると間違って信じていること
・非現実的な自分への期待
・目標や日常的な決まりごと（ルーチン）の前に立ちはだかる障害、たとえば順番を待つ列に
並ぶこと
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・ストレスの積み重ね
怒りの原因を特定するのはたやすいことではありません。すべての可能性のある影響を考慮
することが重要です。それには次のようなものがあります。
・環境、たとえば刺激がありすぎる、秩序がなさ過ぎる、日常的な決まりごと（ルーチン）の
変更。
・身体の状態、たとえば痛み、疲れ
・精神の状態、たとえば欲求不満、混乱
・周囲の人によく処遇されているかどうか
怒りとうまく付き合う（コープ）ための推奨すべき方法
怒りをうまく自分でコントロールするためのステップは次のようになります。
やる気になる
怒りをもっと上手に処理しようと思うのはなぜかを見極めることです。怒りの処理がうまく
なることによって、どんな利益があるのかをはっきりさせることです。
自覚
怒りに伴う自分の考えや行動、あるいは身体的状態などを良く知ることです。こういったこ
とに気づくことは、腹が立つ前兆を知ることができるので重要なのです。腹が立ち始めるとき
に次々に起こってくる変化を書き留めるように勧めましょう。
状況に気づくこと
腹が立つことにともなっている状況をよりよく知ることです。状況や気づいた行動について
教えてくれるように周囲の人に尋ねると良いでしょう。
怒りのレベルとうまく付き合う方法
当事者が怒りに伴う状況についてわかってくると、出来事やきっかけとそれに伴う怒りの程
度を記録することができます。いろいろなレベルの怒りが見つかります。たとえば、少々腹が
立つ、がっかりする、いらいらする、高い段階の怒りなどです。
怒り管理記録をつける
当 事 者 は 、 怒 り を 引 き 起 こ す 状 況 に つ い て の 日 記 や 表 を 書 い て い き ま す 。 状 況 や １ か ら 10ま
での段階での怒りのレベル、それから怒りの感情を乗り越えたり、減少に役立った対処法をリ
ストアップします。
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簡単で効果的な怒りのレベルを下げる方法は「立ち止まって考える」テクニックです。
「立ち止まって考える」テクニック
当事者は心の中を流れる思いに気づきます。
１ 止まれ！、そして状況に反応する前に考えよ（こうした考えは正確／有益か）
２ 不正確もしくは無益な考えに挑戦せよ
３ 新たな考え方を作り出す
かつて、怒りのきっかけになった状況になりそうなときには、腹が立つのを避けるようなプ
ランを立てることができます。プランの例としては、怒りが起こることがわかっているショッ
ピングセンターに近づいているときには、立ち止まって考えるテクニックを使うのです。
私の目標：わたしが長い列に並んでいるとき、怒りに対処する能力を身につけること。
典 型 的 な 怒 り の 発 想 ：「 こ こ の サ ー ビ ス は た る ん で い る 。 ど う し て も っ と さ っ さ と で き な い の
か 。 今 に も 冷 静 さ を 失 い そ う だ 。」
立ち止まってこのことを考える！
新 し い よ り 冷 静 で 有 益 な 考 え ：「 お そ ら く み ん な 長 い 列 に う ん ざ り し て い る こ と だ ろ う 、 サ ー
ビスしてる人間だってそうだ、また後で来ることもできる、でも、ここで待ちながら映画に行
く と か 楽 し い こ と を 考 え る こ と も で き る 。」
大きな極端な怒りへの対処法
脳損傷者が、腹が立ちそうだと自分で気づいたときには前述の方法を利用していただくこと
が望ましいでしょう。そして、大きな極端な怒りを避けることが望まれます。しかし明らかに
常に可能とはかぎりません。
怒りをコントロールすることができないと感じるような状況に際しては、自分自身の安全策
を持つことが可能です。
自分の安全策への可能なステップ
・ストレスの多い状況から気を紛らす方法を用意する、たとえば雑誌を持って行く。
・同じ問題を抱えた人に、どうしたらうまく問題解決ができるかを説明する。
・状況から、可能であれば離れる。
・電話をする、友人や相談窓口に腹立ちの原因について話す。
・腹が立つ高い危険性のある状況を避ける。
・日常的にする決まりごと（ルーチン）や環境を変更する、たとえば渋滞時を避けて車を運転
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する。
・服薬の効果をかかりつけ医や精神科医に相談する。
（ ク イ ー ン ズ ラ ン ド 脳 損 傷 協 会 フ ァ ク ト シ ー ト よ り 許 可を 得 て 翻 訳 転 載 ）
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