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奈良市教 職員ハンドブック よりよい関 係づくりをめざして 平成 25 年 4月 奈良市教育委員会 はじめに 「奈良で教えること、働くことに誇りをもつ教職員」 これは奈良市がめざす教職員像です。 「教育は人なり」という言葉に表されるように、私たち教職員は、子どもたちの豊か な学びを保障するために、実践的な指導力や教育的愛情と使命感をもち、豊かな人間性・ 社会性を身に付けた「常識あるよき社会人」であることが必要です。 また、学校では、子どもたちだけでなく、保護者や地域の人々、その他の来校者、 同僚等様々な人々と出会う機会があります。いつも「相手の立場や気持ちを思いやる心」 をもち、その「心」を相手に伝えることが大切です。「一期一会」という茶道の言葉の ように、生涯でただ一度まみえるという覚悟をもって、人と接することが必要です。 そこで「人との出会い」をより豊かなものとし、よりよい人間関係を形成するため の参考として作成したのがこのハンドブックです。 このハンドブックには、本市のめざす子ども像や教職員像に関すること、よりよい 人間関係を形成するための「接遇」に関すること等を掲載しています。また、いじめ 問題や特別な教育的支援を必要とする子どもへの配慮の在り方、普段の学校現場で生 じる様々な出来事に対する対処方法等を事例集として掲載しています。いつも手元に 置いて活用していただきたいと願います。 このハンドブックが、よりよい関係づくりの一助となり、信頼される学校づくりに 寄与することを祈念しています。 奈良市教職員ハンドブック よりよい関係づくりをめざして 目 次 1 奈良で教えること、働くことに誇りをもつ (1)奈良市教育ビジョンにみる教育の姿・・・・・・・・・・・・・・・・・1 (2)奈良市がめざす教職員像・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 2 よりよい人間関係を築くために [ 接遇マナーを考える ] ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 [ 人間関係の四つのハードル ] ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 [ 基本の姿勢 ] ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 (1)あいさつ…人間関係の基本・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 (2)表情…素敵な表情のポイントとは・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 (3)身だしなみ…ふさわしい身だしなみとは・・・・・・・・・・・・・・ 10 (4)言葉遣い…その話し方で相手が変わる・・・・・・・・・・・・・・・ 12 (5)態度…体で表す第二の言語・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 3 事例集 (1)いじめの未然防止・早期発見のために・・・・・・・・・・・・・・・ 17 (2)子どもに関する人権侵害が疑われる場合・・・・・・・・・・・・・・ 21 (3)特別な教育的支援を必要とする子どもへの配慮・・・・・・・・・・・ 23 (4)地域・保護者との連携・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 1 奈良で教えること、働くことに誇りをもつ (1)奈良市教育ビジョンにみる教育の姿 奈良市教育委員会では、平成 21 年 5 月に「奈良市教育ビジョン −確かな学力と規律ある たくましい子どもをはぐくむために−」を策定し、奈良市が向こう 10 年間にめざすべき教育 の姿とその前期計画となる 5 年間に取り組むべき施策を明らかにしました。 「奈良市教育ビジョン」には、めざす子ども像と 5 つの基本目標が次のように示されてい ます。 「奈良市教育ビジョン」 めざす子ども像 手ごたえのある夢をもち、 たくましく生きる子 自ら学び、考え、 行動する子 知 夢 奈良で学んだことを 誇 生きる力 誇らしげに語れる子 体 自他の生命と 体を大切にする子 徳 あたたかい心や 公の心をもつ子 「奈良市教育ビジョン」 5つの基本目標 ▶基本目標1 奈良らしい教育の推進 ▶基本目標 2 豊かな心とたくましい体をはぐくむ教育の推進 ▶基本目標 3 確かな学力をはぐくむ教育の推進 ▶基本目標 4 信頼される学校づくりの推進 ▶基本目標 5 地域全体で子どもたちを守り育てる体制づくりの推進 この「奈良市教育ビジョン」は、学校・家庭・地域が一体となり、社会全体で本市教育の 向上に取り組むためのよりどころとなるものです。 −1− 前期計画を見直し、後期計画を考える基礎資料とするため、平成 24 年度に、保護者及び 教員を対象とするアンケート調査を行いました。 保護者:「どのような教員がいることを希望しますか」の問いに対する回答状況 ( 複数選択 ) 100% 95% 95% 90% 79% 80% 小保護者 88% 中保護者 81% 高保護者 60% 60% 63% 56% 60% 57% 54% 52% 40% 34% 30% 20% 0% 子どもとの 信頼関係 教育に関する 専門知識 教育に対する 情熱と使命感 家庭や地域 との連携 国際化、情報化 への関心 アンケート調査結果の一部を上記のとおり示しました。 保護者の多くが、 「子どもとの信頼関係」「教育に関する専門知識」「教育に対する情熱と 使命感」 「家庭や地域との連携」を選択し、その割合は 50%を超えています。中でも「子ど もとの信頼関係」の選択割合は、大変高いことが読み取れます。 このことから、保護者は、子どものことをよく理解し、子どもと信頼関係を築くことので きる教員を強く求めていることが伺えます。 −2− (2)奈良市がめざす教職員像 「奈良市教育ビジョン」を実現し、子どもたちに質の高い教育を提供するには、教職員の 資質能力の向上が不可欠なことは言うまでもありません。奈良市がめざす教職員像は次のと おりです。 奈良で教えること、 働くことに誇りをもつ教職員 実践的な指導力 学校経営を念頭に置いた発揮 伸長と発展 法の獲得 追求方 3つの教師力の意識化 研修 教育的愛情と使命感 豊かな人間性・社会性 3つの教師力と協働する職員力 ※信頼関係を築くことのできる「豊かな人間性・社会性」、専門知識を基によりよ い教育活動を展開できる「実践的な指導力」、これらの基盤となる「教育的愛情 と使命感」の3つの教師力は、子ども、保護者、教職員のそれぞれが「求めて いる」 「大切にしたいと考えている」力なのです。 −3− 2 よりよい人間関係を築くために [ 接遇マナーを考える ] 「接遇」という言葉は、国語辞典に「もてなし 接待 あしらい」と出ています。職場では、 接客のスキルというイメージがあるようです。果たしてそれだけでしょうか。なぜ接遇マナー が必要なのか考えてみましょう。 マナーの原点は、「相手の立場・気持ちを思いやる心」、仕草や決まりは、「その心を相手 に伝えるための一つの技術」です。 自分の表情や声、言葉、態度、立ち居振る舞いなどで、相手に「不安を与えない」、「嫌な 思いをさせない」、「心を閉じさせない」ことが大切です。 そのために 「大切に思っている気持ちを伝える」 「お互いに気持ちよく過ごす」 「自分の一つ一つを振り返り、 適切であるか考え、 その思いやりの心を体現できるようにマナーの心と技術を磨く」 それが、接遇マナーです。 人は、中身が大切です。しかし、 「人の第一印象は、一般的にその人の外見や表情で決まる。 」 とも言います。また、人は自分のことに対しては案外気付いていないことが多いものです。 自分の表情が相手にどんな印象を与えているか気付いていなかったり、自分ではできている と思っていても実際にはできていなかったりします。 例えば 見かけには無頓着 Negative... どんな人? 感じが悪い? 我、日に三度我が身を省みる。人の為に謀りて忠ならざるか。朋友と交わりて信ならざるか。習わざるを伝ふるか。 …曾子の言葉 −4− 内面がいくら素晴らしくても、これでは台無しです。子ども、保護者、地域の方々、職場 の同僚など、毎日多くの人と接している私たちだからこそ、こんな状況には陥りたくないも のです。 それでは、相手に安心して心を開いてもらうにはどのようにすればいいでしょう? よりよい自分 人当たりが柔らかい どんな人? Positive!! 感じがいい! 大切なことは、相手に心からの関心を寄せること、そして、思いやる心をもつことです。 心から自分を大切にできる人は、心から相手も大切にできると思います。相手に関心をも つことができれば、自分自身にも関心をもち、その関心が高くなると、自分自身を大切な存 在として認める心に繋がっていくはずです。 「内面は、外面に現れる。 」と言います。「心から相手を大切にすること」、「心から自分を 大切にすること」は、よりよい人間関係を形成するために欠かせないことであり、よりよい 人生を歩むために最も大切なことだと思います。 お互いに「出会ってよかった。」と思える人間関係を目標に、自己の在り方を見直してみ ましょう。 心から相手を 大切にすること 心から自分を 大切にすること 「出会ってよかった。 」 と思える人間関係 The face is the index of the heart . …顔は心の指標であるという意味。 −5− [ 人間関係の四つのハードル ] 子どもや教育に対する思い、指導技術など、 私たちは素晴らしいものをもっています。でも、 それらは相手に伝わらなければ意味がありません。相手からみた結果や成果などのフィード バックがあってこそ、それらは初めて「能力」や「技術」といえるのです。 相手に何かを伝え、人間関係を築くためには、越えるべき4つのハードルがあります。1 つをクリアしなければ、次の段階にうまく進めないハードルです。 個人がもっている素晴らしいもの 能力、技術、やる気、知識等 伝えたいこと 1 外見 第一印象・身だしなみ 表情 等 能力を生かす場や 機会が与えられる。 循 環 2 態度・行動 姿勢・立ち居振る舞い あいさつ・視線 等 3 話し方 声量・発音・抑揚 速さ・口癖 等 相手が「また会いたい。」 「一緒に仕事がしたい。」と思う。 フィードバック 4 話の内容 構成・論理 強調点・感情 等 結果として 相手が「この人に出会えてよかった。」と思う。 人に交わるに信をもってすべし。おのれを信じて、人もまたおのれを信ず、人々相信じてはじめて自他の独立を実にするを得べし。 …福沢諭吉の言葉 −6− [ 基本の姿勢 ] (1) 立ち姿、歩く姿勢 −少しの意識が大切です− ①立ち姿 ・背筋を伸ばして、胸を張り、頭と背筋が一直線になるように ・首を伸ばして、あごを引く ・かかとをそろえて、男性はつま先を約 60 度開き、女性はつま先もそろえる ②歩く姿勢 ・背筋を伸ばす ・靴を引きずらず、かかとから着地 ・おなかを突き出したり、どたばたしたりして歩かない ・顔を上げる (2) おじぎの仕方 −敬語が言葉の礼儀なら、おじぎは態度の礼儀です− ・正しい立ち姿で相手の目を見る ・頭の先から下すように ・背筋を伸ばして、腰を折る ・頭を下げた位置で、一呼吸おいてゆっくり戻す ・もう一度相手を見る ポイント ※猫背にならない ※あごを出さない ※足を開かない ※歩いている途中で出会ったときは、立ち止まって、おじぎをする [ 接遇の 5 原則 ] 1. あいさつ(P8) 人間関係の基本 2. 表情(P9) 素敵な表情のポイントとは 3. 身だしなみ(P10) ふさわしい身だしなみとは 4. 言葉遣い(P12) その話し方で相手が変わる 5. 態度(P16) 体で表す第二の言語 言忠信、行篤敬(げんちゅうしん、こうとくけい) …孔子の言葉。 言葉に誠実さがあり、行いに真心があるという意味。 −7− (1)あいさつ…人間関係の基本 -あいさつは基本 あいさつの基本(明るくはっきりと)- 素敵な笑顔を忘れずに…優しいまなざし、微笑みの口もと、心を込めて あいさつは、 「あかるく」 「いつも」 「さきに」 「つづけて」 子どもには… プラスαの一言で会話が広がります。 答えが広がるような声かけをしましょう。 おはようございます。 元気がないね、どうしたの。 楽しそうだね、何かいいことあったの。 さようなら。 保護者には… 子どもたちの様子や学校の取組を伝える 機会にしましょう。 同僚には… いつもありがとうございます。 ○○さん、とてもがんばっていますよ。 家での様子、いかがですか。 発表会、お待ちしております。 コミュニケーションは、 互いに気持ちよく仕事を進めるための 「基本中の基本」です。 ありがとうございます。 行って参ります ( 行ってらっしゃい )。 ただいま戻りました ( お帰りなさい )。 お先に失礼します。 来校者には… 笑顔が基本。あなたが学校の窓口です。 防犯対策としても声かけをしましょう。 地域の方には… こんにちは。 ご用件は伺っておりますでしょうか。 ○○担当の△△と申します。 ご案内いたします。 学校を支えてくださっていることへの 感謝の気持ちを忘れずに対応しましょう。 いつもお世話になっております。 子どもたちも喜んでいました。 機会をいただきありがとうございます。 今後ともよろしくお願いいたします。 一挨一拶 ( いちあいいちさつ ) …禅宗で、問答によって僧侶が互いの修行の深さを測ることをいう言葉。 −8− (2)表情…素敵な表情のポイントとは 一般的に第一印象を決めるのは顔です。 相手に接するときの表情ひとつ、相手が受け取る印象は大きく異なります。 話すときも、話を聞くときも、おじぎをするときも、あいさつするときも、まずは相手の 目を見ましょう。そのとき、心のこもった笑顔が相手に安心感と良い印象を与え、相手と真 摯に向き合う姿勢が伝わるでしょう。それが、人間関係を築く第一歩です。 「目は口ほどにものを言う。 」という言葉があるように、視線は心掛けしだいで優しいまな ざしにもなり、威圧感のあるまなざしにもなります。目から愛あるメッセージを伝え、笑顔 で接することができれば、相手の不安は解消され、あいさつも会話もうまくいくはずです。 感情が伝わる眉 目が優しい 心がこもっている 口角が上がる口元 愁眉を開く(しゅうびをひらく) …今までの心配が解けて安心するという意味。 −9− (3)身だしなみ…ふさわしい身だしなみとは -社会人&教職員 身だしなみあれこれ- 安心感・信頼感を得るために、 何より子どもたちの安全を考えて 「TPOに応じた身だしなみを」と口で言うのは簡単です。でも、教育活動は多種多様。 目の前にいる子どもたちの年齢にも大きな幅があります。「社会人はいつでもスーツ」とは 一概に言えないのが、教職員の身だしなみの難しいところではないでしょうか。 ①清潔であるとともに、 さわやかな身だしなみを心掛けましょう。 ②教職員にふさわしく、 華美でない身だしなみを心掛けましょう。 「~らしく」 が大切です。 ③その場や状況に応じた身だしなみを心掛けましょう。 あなたなら、どんな身だしなみがふさわしいと考えますか。 体育大会 来客対応時 授業参観 図工の授業中 家庭訪問 式典 子どもと外遊び 国語の授業中 給食の時間 野外活動 出張 研修会 遠足 修学旅行 職員会議 体育の授業中 部活動 掃除の時間 地域行事 集会 説明会 書写の授業中 三者懇談 自分の姿を通して、子どもたちの社会性を育むことは、私たちにとって大切な役割の一 つではないでしょうか。 自分の都合(例: 「楽だから」 「みんながやっているから」 「子どもが相手だから」 「めんど うだから」 「忙しいから」etc.)ではなく、場や相手の目線に合わせるのが、社会人としての、 また、教職員としての、身だしなみの基本だと言えるのではないかと思います。 あなたを見ているのは、クラスの子どもだけではありません。 あなたは、 「○○さん」ではなく、 「○○学校の○○先生」と見られているのです。 貌言視聴思 ( ぼうげんしちょうし )…中江藤樹の言葉。 「貌」は心のこもった優しく和やかな顔つき、 「言」は温かく思いやりのある言葉、 「視」は澄んだ眼差しで人や物を見ること、 「聴」は心を傾けて聴くこと、 「思」は相手への思いやりを表す。心の身だしなみも忘れずに。 − 10 − これって いいのかなぁ まずいよなぁ やっぱり ◆その1 その履物で子どもたちの命を守ることができますか。 スリッパやサンダル履きは、不審者対応、避難誘導など、緊急時の動作の妨げ になります。校内では靴を履きましょう。 ◆その2 いつでもジャージ 「体育のときは着替えなさい。 」 「体育が済めば、着替えなさい。 」と、子どもた ちに指導しているのは、私たちです。 ◆その3 これってどうだろう 「よくないんじゃないかな。 」という気持ちがあるから、そう思うのではありま せんか。 「華美な服装を着て来ない。 」 「学習に関係のないものは持って来ない。 」という 内容の決まりは、どこの学校にもあるはずだと思います。子どもたちに対して、 このようなことについて指導していると思います。 ◆その4 教室、 職員室、 机上、 引き出しの中がぐちゃぐちゃだったら 整理整頓された環境も身だしなみです。校舎や教室をいつもきれいにしておく とどのような効果があるか考えてみましょう。 「整理整頓を心掛けましょう。 」 「使ったものは元の場所に戻しましょう。 」と指 導していると思います。 子どもたちにとって、 「学習にふさわしい環境」 、私たちにとって、 「仕事をす るうえでふさわしい環境」を整えることも大切だと思います。 人は教えている間に学ぶものである。 …セネカの言葉 − 11 − (4)言葉遣い…その話し方で相手が変わる 私たち教職員の言葉遣いや表現から子どもたちが学んでいることを忘れないようにしま しょう。「おい」「こら」という言葉を使っていませんか。 ①明るく………… 明るい話し方やその話題についても考えてみましょう。 ②やさしく……… 相手に分かりやすく、 明瞭に、 そして、 思いやりの気持ちをもって話 しましょう。 ③美しく………… 正しく美しい日本語を使いましょう。 相手を傷つけない、不快にさせないことが鉄則 相手が大人であっても、 子どもであっても、 人としての尊厳を守る言葉遣いが大切です。 私的には ありえない ヤバい マジで あざーす ○○じゃないですかぁ ありえなーい なるほどですね ○○みたいな 微妙に○○ 一応○○ どうも … ○○って感じ ○○っていうか … ○○っすか ○○なんす … 超○○ 激○○ 友だちじゃないよ 誰と話しているの 何が言いたいの 仲間同士のおしゃべりのよ うな、いわゆる流行の言葉 は不要です。 「失礼だな」 「コミュニケー ションスキルが低い」など と思われないように。 「あいまいな言い方」と「や わらかい印象を与える言い 方」とは違います。 余計な言葉を省く 相手が誰かを意識する はっきり伝える 心に愛がなければ どんなに美しい言葉も 相手の胸には響かない。 …パウロの言葉 − 12 − ちゃんと言った つもりが… 「ごくろうさまでした。 」… ◆その1 役不足ですが精一杯がんばります。 「役不足」は、力量に比べて、役目が不相応に軽いことを意味します。自分の 力量がないことを言うときは「力不足」「経験不足」といった表現が適切です。 ◆その2 校長先生ごくろうさまです。 「ごくろうさま」は、目上の人が目下の人をねぎらう言葉です。目上の人には「あ りがとうございます。 」など、感謝の言葉が基本です。 ◆その3 このように答えてみませんか。 ・すみませんが → 恐れ入りますが ・はい、います → はい、おります ・今すぐ行きます → ただ今、参ります ・今、席にいません → ただ今、席を外しております ・どんなことでしょうか → どのようなご用件でしょうか ・こちらから行きます → こちらからお伺いいたします ・後から知らせます → 後ほどご連絡させていただきます ・ちょっと待ってください → 少々お待ちください ・電話のあったことを言っておきます → お電話を頂きましたことを申し伝えます ◆その4 クッション言葉 ~適度に使うと印象がやわらかくなります~ ・恐れ入りますが… ・勝手を申し上げますが… ・お忙しいにもかかわらず… ・お手数をおかけしますが… ・申し訳ありませんが… ・せっかくですが… ・失礼ですが… ・差し支えなければ… ・あいにくですが… ・ご面倒ですが… ・よろしければ… ・残念ながら… 習慣は第二の天性なり …習慣は人の行動に大きな影響を与えるという意味。 − 13 − 電話対応の基本…顔の見えないファーストコンタクト あなたと学校の印象が、あなたの受け答えで決まります。ゆっくり丁寧に、明るい声を心 掛けて、見えない相手を常に思いやりましょう。 電話を受ける 電話をかける メモの用意。早く ( 3コール以内に ) 出る。 3回以上待たせたときは、 「お待たせいたしました。 」 朝10時半ごろまでは、 「おはようございます。 」 伝えたいこと、相手の役職、 氏名、かける時間帯等の確認。 はい(あいさつ言葉) 、○○小 ( 中 ) 学校○○で ございます。 →「~ます。 」語尾を明瞭に ○○小 ( 中 ) 学校○○と申します。 いつもお世話になっております。 ○○の○○様でいらっしゃいますね。 →所属と名前を復唱する いつもお世話になっております。 相手が名乗らない→失礼ですが、お名前をお伺いし てよろしいでしょうか。 △△でございますね。少々お待ちください。 →△△先生と敬称をつけない。 →保留ボタンを押してから取り次ぐ。 →保留ボタンを押し、△△の不在を確認し、再度電 話に出るときは、 「わたくし、○○でございます。 」と 名乗る。 △△が出られない→申し訳ございません。あいにく △△は席を外しております。 →伝えられる範囲で、 先に具体的な情報を伝える。 「◇ ◇時ごろには学校に戻る予定ですが、 」 戻りましたら、こちらから連絡を差し上げるようにい たしましょうか。 かしこまりました。→連絡先をメモする。 相手が伝言を頼みたい場合→はい、承ります。 復唱いたします。○○という内容でよろしいでしょ うか。 →お名前、連絡先も必ず復唱 「○○様でいらっしゃいますね。ご連絡先は○○番で すね。 」 ( 「ございますね」はまちがい) 失礼いたします。 ○○の件でお電話いたしました。( ご担当の○○ 長の ) △△様をお願いいたします。 △△さんが出る→△△様でいらっしゃいますね。 今お話ししてもよろしいでしょうか。 →用件を伝える。 ( 原則として ) 自分の用件でかけた場合→お戻りは 何時頃のご予定でしょうか? それでは、こちら から改めてご連絡を差し上げます。 ( 原則として ) 先方の用件でかけた場合→ 恐れ入り ますが、お電話頂きたい旨をお伝えいただけます でしょうか。○○小 ( 中 ) 学校○○と申します。 電話番号は○○です。よろしくお願いいたします。 伝言を残したい場合→ 恐れ入りますが、ご伝言を お願いしてもよろしいでしょうか。 お忙しいところ、ありがとうございました。失礼 いたします。 ( 原則としてかけた方から ) 受話器をそっと置く。 慇懃無礼 ( いんぎんぶれい ) …言葉や態度が丁寧なようで、実は尊大であるという意味。 − 14 − これはNG -あわてず すばやく 正確に- ◆その1 「少々お待ちください。」って言ったじゃない 相手を待たせないようにしましょう。取次などに時間がかかりそうなときは、後 でこちらからかけ直す旨を伝えて、一旦電話を切るとよいでしょう。 ◆その2 ついうっかり 電話番号などの個人情報を教えたり話したりするのは厳禁です。 親切のつもりが、 後で思わぬトラブルに発展することもあります。 ◆その3 シーッ! 周囲の会話は、電話中意外と迷惑になります。また、受話器の向こうが騒がしい と感じたときなどは、「後ほど改めましょうか。 」といった気配りを忘れないように しましょう。 ◆その4 その「先生」って? 自分の学校の教職員には敬称をつけません。 「○○は…」 「校長は…」などのよう に話しましょう。 ◆その5 それって本当? 「あせって」や「知っているふり」をして答えないようにしましょう。あやふや な答えは、誤解の元になります。無理に即答するよりも、素直に分からないと伝え ることや、確認してから正確に伝えることの方が大切です。 ◆その6 何だったっけ? 覚えていたつもりでも、受話器を置いたとたんに頭が真っ白になってしまうこと があります。必ずメモを取る習慣をつけましょう。 ◆その7 あっ 忘れていました! 「承りました。 」は、自分で用件を処理するか、「受話器の向こうの人が伝えてほ しい人」に用件を確実に伝えるかまでのことをいいます。机上にメモを置くだけで はなく「○○様からお電話がありました。メモは見ていただいたでしょうか。」と 確認することが大切です。 ★どうしよう ~保護者や地域の方からの要望には~ ① 真摯な態度で、 相手の話を十分に聴き、 その思いを受け止めましょう。 特に、 電話での対応は復唱して確かめることを大切にしましょう。 ② 要望の内容を具体的に把握しましょう。 「いつ」 「誰」 、 に 「何」 を 「どう」 してほしいのか。 ③ 分からないこと、 すぐに答えられないことは、 無理に答えずに相談しましょう。 「ホウ(報告) 、レン(連絡) 、ソウ (相談) (できれば一旦電話を切る。 」 ) ④ ケースに応じて必要な対応を取りましょう。 どのように対応したかを報告し、 対応内容も記録しておきましょう。 相手のペースや感情に巻き込まれないこと。落ち着いて対処しましょう。 今日なし得るだけの事に全力をつくせ、そうすれば、明日は一段の進歩があろう。 …ニュートンの言葉。仕事の重要度や、やるべき順番を考え、全力で取組むことが大切であるという意味。 − 15 − (5)態度…体で表す第二の言語 態度は、体で表す第二の言語といわれるように、言葉で語らなくても、表情や仕草で心の 内が相手に伝わります。 相手に出会ったとき、気持ちの良い、心のこもったあいさつはできているでしょうか。相 手の目を見て、明るくはっきりと声を出していますか。素敵な笑顔も相手に大きな安心感と 親しみやすさを与えます。 場にふさわしい身だしなみと清潔感も大切です。卒業式や入学式、懇談会や修学旅行、学 校にはたくさんの場面があります。その場にあった服装を選ぶことはできているでしょうか。 例えば、 言葉遣いも同じです。明るく、 やさしい言葉遣いで、 子どもたちに接しているでしょ うか。 このような一つ一つの態度から、人間関係が始まっていきます。 まずは、先入観をもたずに相手と接しましょう。そして、様々な状況に応じて、適切な行 動に移していきましょう。 接遇マナーは、相手との人間関係形成の基本です。相手はあなたのことをよく見ています。 姿勢や身だしなみといった外見、言葉遣いや話し方、その一つ一つがあなたの印象となりま す。見方を変えれば、 「あなたの印象一つで、相手の受け取り方も変わる。 」ということです。 いつの間にか「自分はこれでいい」と思い込んでしまっていることはないでしょうか。 私たち教職員は、子どもたちだけでなく保護者や地域の方々など、たくさんの人との関わ りの中で仕事をしています。あなたの態度や言葉遣い、身だしなみを通じて、相手はあなた のことを感じ取っています。あなたが誠意をもって接することで、相手も変わります。こう したことの積み重ねが、よりよい人間関係の形成につながっていくのではないでしょうか。 よりよい人間関係の形成 あいさつ 表 情 身だしなみ 言葉遣い TPO 状況に応じた適切な行動 すべて物事というものは、理想すなわち最終目標をあらかじめはっきりとつかんでいないことには、 到底本当のことはできない…森 信三の言葉 我々が行動可能なのは現在であり、また未来のみである。…ドラッカーの言葉 − 16 − 3 事 例 集 (1)いじめの未然防止・早期発見のために いじめに対する正しい認識、強い危機感をもって対応しま しょう。あなたの人権意識が問われています。あなたの言葉、 態度を子どもたちは見たり、感じたりしています。 何かあった時、困った時「あの先生なら話を聞いてくれる」 「あの先生には話せる」と信頼される教職員をめざしましょう。 事例 「友だち関係が上下関係に移行し、いじめに至った事例」 6年生の 2 学期ごろから、学級の中で特に仲のよい男児数名ずつが「なかよしグルー プ」となり、グループ以外の友だちと遊ぶことが少なくなっていました。また、グルー プ以外の友だちと遊ぶと、今まで一緒に過ごしていたグループにもどりにくくなる構 図ができていたため「なかよしグループ」から外れたくないという思いから、グルー プ内では、過度に気をつかいあっていました。 そのような中、発言力のあるA児が、グループのリーダーとして、今まで親しくし ていた友だちに指示を出し始めるようになりました。 (①) A児は、複数の友だちに指示を出しながら、グループ内の特定の一人に対し、遊び から外したり、使い走りをさせたりするいじめを始めました。しばらくいじめると、 その対象を別の友だちに変えていきました。いじめられたくない同じ仲良しグループ の子どもたちは、更にA児に気をつかうようになりました(②) 。そして、そのグルー プ内では、A児を頂点として上下関係ができていきました(③) 。 Q. 子どものどのような様子に対し、 A. 下線部①のように、子どもたちの様子が「対等でない様子」に気づいたら、 どのように声をかけたらいいのでしょうか? その場で「どうしたの?」「何かあった?」と声をかけましょう。子ども同 士の会話、行動、視線に注意し、人を傷つけるような言葉や行動を見逃さな いでください。 − 17 − Q. A. 「遊んでいるだけ」「からかっただけ」 「ゲームだから」と 子どもは言うのですが、どのように対応したらいいのでしょうか? 下線部①のような場面で、教職員が子どもに声をかけた時、子どものその場 しのぎのいいわけを許さないようにしましょう。たとえ笑顔であっても、見 過ごしてはいけません。その遊び、からかい、ゲームを止めて、「誰かの心 や体を傷つけることを目的に行うことは、遊びでもゲームでもなくいじめで ある」と指導しましょう。 Q. A. 事情は、いつ聞き取ればよいのでしょうか? 下線部②のような場合もあります。その場では無理せず、後から事情を聞き 取りましょう。被害を受けている子どもは「なんでもない」 「大丈夫」と言 うことがあります。 「告げ口をした」と言われ、更に立場が悪くなることを 恐れている子どももいます。安心して話ができるように、他の子どもに知ら れないように声をかけることや話しかける言葉には十分配慮しましょう。 Q. A. 事情を聞き取る時には、どのような点に気をつければよいでしょうか? 話している子どもが感じている気持ちをしっかり受け止め、さえぎらずに最 後までその話を聞きましょう。教職員が 「そんなことくらい」 と軽く考えたり、 「まさか」「思い込みでは」と疑ったり、 「あなたにも悪いところがあるので は?」などと子どもを責めないようにし、安心して話せる雰囲気をつくりま しょう。何回かに分けて聞き取ることもよい方法です。また、記録を徹底し ましょう。 − 18 − Q. いじめの発見・相談があったら、 A. 下線部③のような状況がわかったら、事実の確認を行い、加害者の問題を放 その後はどのようにすすめていくのでしょうか? 置せず、速やかに対応することが必要です。 第一に、相談してきた子どもの安全確保のために、全教職員が危機感をも ち、相談者だけでなく周囲の子どもたちから目を離さないようにしましょう。 第二に、 「聞き取り」と「指導」は別として考え、「聞き取り」の際には、 複数で対応し、子どもの話を最後までさえぎらずに聞きましょう。「指導」 においては、加害側の子どもを追い詰めることが目的ではなく、行為に対す る反省を促し、立ち直りを支援できるよう配慮しましょう。 Q. いじめへの個別指導のあと、 A. 表面的な謝罪だけで解決したと安心せず、その後もいじめのサイン、交友関 どのようなことに気をつけて指導すればよいでしょうか? 係、学校生活、家庭での様子に注意しましょう。また発生したいじめについて、 援助・指導の方針の再検討を行い、望ましい集団づくりへ取り組みましょう。 Q&A 保護者への対応では、どのようなことを大切にすればよいでしょうか? 教職員がいじめを把握した時には、保護者とともに連携して子どもを守るために、 保護者にできるだけ早く事実を知らせる必要があります。内容について保護者へ伝え る際には、子どもの心情に配慮した言葉、誠意ある態度で臨みましょう。 Q&A いじめの事象を把握したら、どのような動きをとればよいのでしょうか? いじめの相談をうけたり、問題行動が起こったりした場合、関係した教職員から学 年の教職員、学年主任、生徒指導担当、管理職へ報告し、指導を含め対応を検討しましょ う。必ず、その日のことはその日のうちに速やかに報告し、情報を共有して組織的か つ具体的な対応をしましょう。 − 19 − Q&A 相談するべきかどうか迷うことがあるのですが、 どうしたらよいのでしょうか? 学校では、毎日の生活の中で様々な問題が生じます。全てを自分一人で解決しよう とするのではなく、組織で対応するという意識をもち、積極的に周囲の人に相談しま しょう。 特に、いじめにつながるおそれのある事象は、早期発見と早期対応をすることが大 切です。気づいた時に相談することをためらわないでください。 Q&A 奈良市いじめ対策アクションプランとは、どのような内容なのでしょうか? いじめに対する基本的な指針を示したものです。「子どもの命と心を守る」・「早期発 見と適切な対応」 ・「学校と教育委員会との連携」 ・「関係機関(専門家を含む)や地域 との連携」の4つの柱で構成されています。 この内容をもとに、各学校において、いじめに対する独自のアクションプランと事 象が起こった時の対応マニュアルを作成し、それを活用しましょう。 検索 奈良市 いじめ アクション http://www.city.nara.lg.jp/www/contents/1351840236114/files/ijimetaisaku.pdf 対応の手順 (学校内で解決を目指す事象) いじめ (疑われるものも含む) 事象の認知 報告 学級 (HR) 担任及び副担任・部活動 (クラブ) 顧問等が対応 保護者との連携 報告 管理職・生徒指導主事 (主任) 連絡 職員朝礼・職員会議 (事象・指導内容を全職員に周知する) 具体的な指導・支援へ (報告・連絡・相談・記録を徹底しながら実施) 加害者への指導 被害者への支援 友人・知人 (観衆・傍観者) への指導・支援 参考資料/ 「事例から学ぶいじめ対応集」 ・ 「いじめ早期発見・早期対応マニュアル」 奈良県教育委員会 「子どもと学ぶ いじめ・暴力克服プログラム」 合同出版 武田さち子 − 20 − (2)子どもに関する人権侵害が疑われる場合 適切な対応が取れないために、被害を受けた子どもがさらに傷ついてしまう恐れがありま す。その場でどのような対応をすべきかを知っておくとともに、人権侵害が起こらないよう に普段からの集団づくりが重要です。 事例 校内大縄跳び大会に向けての練習での出来事です。クラスは一致団結をして優勝し ようとみんなで休み時間や放課後に練習しています。しかし、大会が近づいてきまし たが記録がいっこうに伸びません。いつもAさんのところで引っかかってしまうので す。そのとき同じクラスの子どもが「Aさんはみんなのために見ておいてくれる?」 と言いました。他の子どもも優勝したかったこともあり、 おかしいと思いながらも黙っ たままでした。 Q. A. このような場面を見つけました。 どのように対応すればよいのでしょうか? その場ですぐに指導します。まず、その際、被害者の人権擁護を最優先に考 えたうえで、加害者や周りにいた子どもに対して事実確認を行うとともに、 内容は記録に残しておきます。そして、「何が問題であったのか」「どうして いけないのか」を丁寧に説明する必要があります。 Q. 指導を行いました。発言した子どもや周りにいた子どもも反省しています。 A. 校長、園長、教頭、主任、生徒指導担当、人権教育担当等に報告すること このことは報告しなければなりませんか? を怠らないようにします。そして、教職員間でも共通理解を図りましょう。 − 21 − Q. A. 被害を受けた子どもに対して、どのような心のケアをすればよいのでしょうか? 教職員が見ていないところでもこういった事象は起こりうるものです。被害を 受けた子どもは自分で指摘できないこともあります。また、繰り返し同じ出来 事が起こるのではないかという不安にさらされることがあります。教職員は絶 対にあなたを守るということを伝えなければなりません。 Q. A. Q. A. 家庭には連絡した方がいいのでしょうか?なかなか言いづらいのですが。 出来事は保護者にその日のうちに直接伝えるほうがよいでしょう。保護者の 思いを受け止めるとともに、これからの姿勢を示すことが保護者と学校間の 信頼関係の構築となります。 今後、学校としてはどのように取り組めばよいのでしょうか? 教職員としては、この発言に対して、どのような背景から起こったのかを分 析する必要があります。子ども側の責任として処理するのではなく、学校の 人権教育の取組について課題はなかったか、子どもたちが何かサインを出し ていなかったかを振り返り、課題があるのなら改善していくことが望まれま す。 Q. A. 自分の学級でなぜこのような発言が出るのか。 自分の学級経営は正しかったのでしょうか? 学級には様々な課題があると思いますが、決して一人で抱えることのないよ うにしましょう。経験や年齢にとらわれることなく、わからないことはため らうことなく相談できる職場にすることが望まれます。教職員が情報交換を 行い、一人一人を見ていくことは、違った角度から子どもを見つめる視点が 生まれ、違った角度からアプローチできます。 Q. A. 学級経営で心がけることはなんでしょうか? 教職員が「人権侵害は許さない」という思いを強くもつことです。それが子 どもたちに伝わり、教室の雰囲気は変わります。逆に教職員の何気ない発言 が子どもに悪影響を与えることもあります。そのためには教職員が人権感覚 を磨かなければなりません。 − 22 − (3)特別な教育的支援を必要とする子どもへの配慮 子どもたちにとって、教室が安全で安心のできる居場所であり、 「わ かる・できる」を実感することのできる場所であることはとても大 切なことです。そのためには、特別な教育的支援を必要とする子ど もの特性を知り、なぜその子どもが困っているのかを理解しなけれ ばなりません。一人一人の違いに対応する教育が特別支援教育です。 どの子どもにとってもわかりやすい授業を展開し、すべての子ど も一人一人に応じた支援ができる教職員をめざしましょう。 事例 学級で担任が大きな声で「みなさん、こちらを向きなさい」と指示します。指示ど おりにできない児童生徒には容赦なく「Aさん、こちらを向きなさい」と何度も声が 飛びます。しかしAさんは先生の指示に従うことができません。 Q. A. なぜ指示に従うことができなかったのでしょう? 聞こえていない(聴力の問題)、聞いていない(注意集中力の問題)、言われ ている意味がわからない(理解力の問題) 、他に興味を引かれることがあっ た(優先順位を間違えている問題)等のいくつかの要因が考えられます。要 因を考えることが大切です。 Q. A. 聞くことが苦手な子どもの指導のポイントはありますか? 静かな環境を作り、集中したのを確認してから指示を出します。また一つ の動きに一つの指示を出すなど端的でわかりやすい言葉を使いましょう。 一斉指導の後、個別に要点を確認したり、視覚的な支援を活用したりする ことも効果的です。 Q&A わかりやすい授業とはどのようなものですか? 学習のめあてや内容、発問、活動の流れが明確であり、板書が整理されていること が大切です。具体的な活動や、個別の手立て(声かけ・ヒントカード・選択肢がある こと等)などを工夫しましょう。 − 23 − Q&A 通常の学級の教室環境はどのようにすればよいですか? 黒板の周りの掲示は必要最小限のものに限定します。個人ロッカーや机の中の整理 整頓をする習慣をつけましょう。時間割、一日のスケジュール、学級や学年のルール を提示したり、子どもたちの実態に応じた座席の配慮や工夫をすることも大切です。 Q&A 子どもを正しく理解するための実態把握の方法には どのようなものがありますか? 子どもを正しく理解するための実態把握の方法には、発達検査の実施、チェックリ ストの活用、保護者や関係者からの聞き取り等があります。いずれの方法でも学校生 活での様子の観察と関連づけながら分析することを大切にしましょう。 Q&A 保護者と話す上でどのようなことを心がければよいでしょうか? 保護者の思いを受け止め、日頃から子どものよさを見つけ伝えることで信頼関係を 築くことが重要です。特に支援を必要としている子どもの場合には、困難なところも 得意なところも含めて受け止め、今の課題を明確にしながら、家庭で協力してもらえ ることなど具体的な支援についての共通理解を図りましょう。 Q&A 外部の関係機関はどのようなところがありますか? 奈良市教育センター(教育相談課)、通級指導教室(椿井小・済美小、あやめ池小、 鳥見小) 、特別支援学校、医療機関、奈良市健康増進課、奈良市子ども発達センター、 奈良県発達障害支援センター「でぃあ~」などがあります。 奈良市教育センター 教育相談窓口 ℡ 0742 − 93−8199 奈良市教育センター 教育相談窓口 検索 http://www.city.nara.lg.jp/www/genre/0000000000000/1334225018668/index.html − 24 − (4)地域・保護者との連携 奈良市内の学校園では、地域ぐるみで子どもを育てる活 動が進められています。 教職員にできること。(先生!一人で抱え込まないで!) 地域の様々な教育力を学校園に取り入れるために、各地 域では、 学校園と地域のつなぎ役である「コーディネーター」 が活動されています。 (平成 24 年度現在約 300 名) 教職員が、 校園長と相談しながら、窓口になるコーディネー ターに子どもたちのためにしたいことを伝えることで、コー ディネーターは様々な支援の可能性を共に探ってくれます。 子どもを育てるために、家庭・地域の協力は不可欠です。 地域の方々は、 「何か子どもの役に立てることはないか」 「先 学校園 学校園の ニーズを把握 コーディネーター 生、忙しそうやから手伝おうか」と先生方の声を待ってい ます。 地 域 あるコーディネーターの言葉から… はじめは子どもへの関わり方で戸惑いがあ りましたが、一緒に活動する中で、子どもたち が変わっていく姿がわかりました。とても喜び とやりがいを感じました。学校の先生方は、こ れだから頑張れるのだなと実感しました。 事例 富雄第三小中学校ホームページより 家庭科授業補助ボランティア 小学校の5年生家庭科では、今「はじめてソーイング」の学習を進めています。今 日の実習は、裁縫で「玉結び、玉留め」の練習です。1組は3・ 4限目に2組は5・ 6 限目にそれぞれ2時間続きで学習しました。 それぞれ地域の方が5名お手伝いくださり、家庭科の先生を中心に子どもたち一人 一人の手を取って教えることができました。子どもたちも、実際にやってみて、 「玉結 び、玉留め」ができるようになりました。ボランティアのみなさま、ありがとうござ いました。 − 25 − 事例 佐保台小学校運営委員会だより 「ほうかご夢ニュース 第5号」より スポーツや自然…多彩な活動 2学期の放課後子ども教室は自然との関わり・文化・スポーツなど多彩な内容の活 動を試みました。昆虫観察では飛び回るバッタたちに校庭で、 図書室で歓声がいっぱい。 イモ掘りでは収穫の喜びを味わい、自作の竹ぽっくりで心ゆくまで遊びました。奈良・ 人と自然の会のご協力で安心して自然に親しみ理解を深めることができました。 各校区では、環境整備・見守り活動・地域行事開催・ 遊びや体験の場の提供などをはじめ、教育課程内の活 動補助など、地域教育力が学校にどんどん取り入れら れています。 地域学校連携の取組の様子は奈良市 HP で 地域学校連携 奈良市 検索 http://www.city.nara.lg.jp/www/contents/1159850716413/index.html Q&A 教職員にとって必要な視点は? 今後、教職員には今まで以上に次の4つの視点が求められます。 ①子どもたちは地域で生まれ、地域で育ち、地域で暮らす。やがて地域を支える人 材となります。地域の持続発展になくてはならぬ存在です。 ②幼小中高連携などを通して、教職員が子どもの成長過程を把握した上で、子ども に関わる必要があります。 ③子どもの成長を支援しながら、大人も学びます。地域の中にある学校園は、地域 住民にとっても学習の場です。 ④保 育・授業においては、担当教職員一人だけの力ではなく、地域人材・企業や NPO などの諸団体の力を活用することで、幅のある教育活動が展開できます。 奈良市は地域ぐるみで子どもを守り育てる 学校づくりをすすめています。 − 26 − 奈良市教職員ハンドブック よりよい関係づくりをめざして 発 行 者 奈良市教育委員会 発行年月日 平成 25 年 4 月 1 日 (協力) 第 2 章監修 山本 えり(あい☆えがお 代表) トータルマナー研究所副所長 平成 23 年度・25 年度奈良市教職員研修講師 挿絵 茨本 有里(日本画家) おはよう おかえり こんにちは 声かけ 気にかけ 笑顔かけ 毎月17日は「子ども安全の日」です 奈良市教育委員会 〒 630-8580 奈良市二条大路南一丁目 1-1 TEL 0742-34-1111