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EBook2 Magazine Vol.5, No.32, 04/23/2015 ©2010-15 OTI, Inc. E-Book 2.0 Magazine 2015 年 4 月 23 日号 Vol.5, No.32, 4/23/2015 [無償公開版] 目次 ANALYSIS & COLUMN 大出版社で進む DITA+EPUB3 の利用 「ライター」としてのコンピュータの可能性 2 3 NEWS & COMMENTS 第 3 のフォーマットとしてのオーディオブック 4 「ブランド・ビジネス」化する出版 7 「もの書き」は絶滅危惧種か? 9 E-Book 2.0 Magazine 2015 年 4 月 23 日発行(第 5 巻第 32 号) ISSN: 2185-954-X (2010 年 9 月 15 日創刊) 編集兼発行人:鎌田 博樹 発行:オブジェクトテクノロジー研究所 〒185-0003 東京都国分寺戸倉 3-15-22 www.otij.org Email : [email protected] ⓒ2010-2015 by Object Technology Institute, Inc. 1 EBook2 Magazine Vol.5, No.32, 04/23/2015 ©2010-15 OTI, Inc. ANALYSIS & COLUMN 大出版社で進む DITA+EPUB3 の利用 BookBusiness の Web セミナーでハーパーコリンズ社の EPUB3 導入事例が紹介されていたので聴講してみたのだ が、DITA を使用することで複雑、膨大な作業を大幅に容 易にし、コンテンツの管理と利用における課題に目途をつけたこと を知った。これは刮目すべき変化で、アマゾンにキャッチアップす る上でのマイルストーンとなるものだ。[全文=♥会員] 制作管理と情報資源管理を統合 印デジ同時、多用途モジュール出版というゴール 2 EBook2 Magazine Vol.5, No.32, 04/23/2015 ©2010-15 OTI, Inc. ANALYSIS & COLUMN 「ライター」としてのコンピュータの可能性 IBM の人工知能・思考ロボット「ワトソ ン」が、料理本の主役となって話題を呼 んでいる。4 月 14 日に出版された本は 65 以上のオリジナル・レシピからなる (→リリース) 。料理本の中心がレシピであるとするなら、本書は シェフ・ワトソン著の本と考えることもできるだろう。コンピュー タによる「著作」への進出がまた一歩進んだ。[全文=♥会員] IBM「シェフ・ワトソン」のオリジナル・レシピ集出版 考える環境としてのデジタル 3 EBook2 Magazine Vol.5, No.32, 04/23/2015 ©2010-15 OTI, Inc. NEWS & COMMENTS 第 3 のフォーマットとしてのオーディオブック アップルが次の iOS (8.4) 更新時にオーデ ィオブックを iBooks に統合することを Apple Insider (04/14)が報じた。これにより iBooks アプリからオーディオブックにアク セスできるようになる。Kindle の後を追った形だが、これまでは別 のストアで別の商品として販売されてきた 2 つのフォーマットの 環境が統合されることの意味は小さくないだろう。 環境の統合で市場はさらに拡大 これまでオーディオブックは iTunes ストアで購入し、iPad などの Music ボタンで聴いてきた。今後は iBooks ストアで購入し、聴くこ とになるが、それによって(カセットテープで出発した)オーディオ ブックは、より「本」の一フォーマットとして定着していくと思われ る。最大のプラットフォーム Audible を傘下に持つアマゾンは、早く から Kindle 環境での統合を目ざし、読みかけの本の続きを聴くとい ったシームレスな読書体験 (Whispersync for Voice)を可能にしたが、 iBooks でもいずれ同じことが期待できるかもしれない。 アクセシビリティの観点から語られることが大きいオーディオブッ クは、実際には「朗読」や「読み聞かせ」といった重要な(伝統的) 読書体験の系譜を継ぐフォーマットで、この市場が米国で成長を続 4 EBook2 Magazine Vol.5, No.32, 04/23/2015 ©2010-15 OTI, Inc. けているのは喜ばしい。それは語り手と著者とのマッチングや著者に よる録音の機会を提供するサービスによるところが大きい。それによ って最近では自主出版でも E-Book、印刷本、オーディオブックの 3 フォーマットのセット化に取組む著者も珍しくなくなった。Wattpad もドイツの Soundcloud と提携して、自作にオーディオクリップや効 果音を挿入することを可能としている(当面は Android アプリ対応)。 E-Book サービスはオーディオブック対応を強化している。Scribd は 定額サービスのメニューにオーディオブックを加えることで、このフ ォーマットを受け容れやすくした。ペンギン・ランダムハウスとの提 携で、一挙に 9,000 点が加わる。もちろん、アマゾンも負けてはいな い。Prime 会員向けの Kindle Unlimited (KU)はこれまで 2,000 点のオー ディオブックを提供しているが、4 月 15 日ドイツにおいて英語、独 語のオーディオブック 2,000 点を月額 10 ユーロで提供する定額サー ビスを開始すると発表した。オーディオブックは、定額モデルをめぐ る攻防に新しい波乱要因を加えるかもしれない。 日本でもオーディオブックの潜在的可能性は大きい。語学学習という 巨大市場だけでなく、古典という「読めない本」の朗読・解説という 日本独自の市場も広がるからだ。とくに明治以前の古典籍は、人に読 んでもらって頭に入れてきたコンテンツだ。コスト問題を乗り越える 方法はいくらでも考えられる。◆ (鎌田、04/21/2015) 記事タグ 本誌カテゴリ:コンテンツビジネス, テクノロジー, ユーザー体験, 出 5 EBook2 Magazine Vol.5, No.32, 04/23/2015 ©2010-15 OTI, Inc. 版・製作, 書籍端末 タグ:オーディオブック, 定額サービス, 読書体験 6 EBook2 Magazine Vol.5, No.32, 04/23/2015 ©2010-15 OTI, Inc. NEWS & COMMENTS 「ブランド・ビジネス」化する出版 世界最大の出版社ペンギン・ランダムハウス (PRH)が、読者とのエンゲージメントに乗り 出した。250 以上のブランドを擁する同社が、 ブランドの垣根を越えて Web サイトで全出 版物の販促にコミットするのは初めてで、メール、SNS による統 一された情報提供もあり、単一の出版社としてのインタフェースを 打ち出している。出版は規模のビジネスとしての色を強めている。 世界最大の出版社が統一出版情報サイト 4 月 22 日に公開された新サイトでは、出版分野など自然な分類によ る新刊紹介や著者紹介が行われている。PRH 傘下のすべてのブラン ドの出版物をカバーする。オンライン書店や E-Book ストアへのリン クも提供されている。The Perch(止まり木)というブログは同社のス タッフによる、本と出版に関する裏話を掲載する。一見した印象は、 なお雑然としているハーパーコリンズのサイトと比べて、機能的で一 貫している、と評価する声が多い。しかし、読みたい本が PRH であ るか HC であるかなどに関心を持っていない人にはあまり役に立た ないだろう。書評サイトや紹介サイトとの使い分けも不明だ。 欧米の大出版社は「インプリント」と呼ばれる出版ブランドを多数保 有している。多くの場合、独立した様々な規模の出版社を順次吸収 7 EBook2 Magazine Vol.5, No.32, 04/23/2015 ©2010-15 OTI, Inc. してきたことで巨大化したものだ。近年では国境を越えて統合が進み、 言語圏をも超えたグローバルなものとなった。理由は、制作・管理機 能の集中による効率化という以上に、流通やマーケティングでのバー ゲニング・パワーが得られるからだ。20 世紀の後半にかけて加速し てきた巨大化は、デジタルな 21 世紀では常態となっている。出版は 個人や家族など顔が見えるほうがいいと考える筆者だが、それはもは やビジネスではなく、インディーズの世界なのだろう。 統一ブランドはマーケティングで機能するか 個々の出版ブランドのアイデンティティの維持と、マーケティングの プラットフォームとしての PRH のパフォーマンスの最大化は、より 積極的にブランド・ビジネスを志向するものかもしれない。5 つの事 業で高級ブランドを展開する LVMH (モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン =現在クリスチャン・ディオール SA の所有)は、その究極の姿ともい えるものだ。ブランド・ビジネスでは、 「社内」のブランド間の激烈 な競争も企業に大きな利益をもたらす。 PRH(親会社は独ベルテルスマン)が世界市場の半分を支配するとい う事態も、あり得ないことではない。それには、グローバルなマーケ ティング・プラットフォームを機能させることが課題となる。PRH の Web サイトはその第一歩なのかもしれない。◆ (鎌田、04/23/2015) 記事タグ 本誌カテゴリ:コンテンツビジネス, 出版・製作 タグ:PRH, ビッグファイブ, ブランド 8 EBook2 Magazine Vol.5, No.32, 04/23/2015 ©2010-15 OTI, Inc. NEWS & COMMENTS 「もの書き」は絶滅危惧種か? 英国の職業作家の収入に関する最新の調査結 果が、著作権と版権料支払に関わる機関から 発表され、ライターという職業が収入低下に より「限界点」に達していることが明らかに なった。窮乏化の原因が出版ビジネスの没落でないことは(日本以 外では)実証済なので、これはクリエイティブ産業における「労働 分配率の低下」を示すことになる。 職業作家の窮乏化と格差拡大 この調査は、Authors’ Licensing & Collecting Society (ALCS)が、ロンド ン大学クィーン・メアリ・カレッジと合同で行ったもので、支払実額 をもとにした厳密で継時的なデータに定評がある。昨年の表題「言葉 の値段はいま幾ら」に続く今年は「著者というビジネス:著者の収入 と契約に関する調査」と名付けられた。これは作家という職業分類が 絶滅危惧種となっていることを示すものだ。格差拡大は一般社会だけ でなく、もともと残業手当などないクリエイティブ・ワークに及ぶ現 象である。 「2014 年の著者の実収は、 10 年前の 2005 年に比べて 19%減少してい る」とレポートは述べている。 「フルタイムのライターは同期間に 8% 減少しており、もし調査対象となった 2,454 人から、一握りの高所 9 EBook2 Magazine Vol.5, No.32, 04/23/2015 ©2010-15 OTI, Inc. 得者を除けば、減少は 29%にもなる。つまり法定最低賃金を下回って しまう。格差は非常に大きく、6 万ポンド(約 1,080 万円)以上を稼ぐ 上位 10%で職業作家の全収入の 58%、10 万ポンド(約 1,800 万円)以 上を稼ぐ上位 5%で 42.3%を占める。下位 50%の平均は 1 万 432 ポン ドで同 7%でしかない。しかも職業作家の 17%は 2013 年中の収入が なく、その 98%は 2010 年から 2013 年まで著書が出版されていた。 」 メディア企業は繁栄している 生活の糧を執筆で得ているライターは 11.5%で 6 人に 1 人に満たず、 10 年前の 40%に比べて激減しており、この傾向が続けば 1 割を切る ことは明らかだ。著者の窮乏化をよそに、出版は繁栄を謳歌している。 ALCS はデジタル時代に入って成長を速めた大手メディアの業績に ついても言及している。 「クリエイティブ産業は繁栄しており、ライ ターの収入が 30%も減少する中で、年間 760 億ポンドを売上げてい る」とリチャード・コームズ氏は語っている。BBC (04/20)の文化担 当ディレクター、ウィル・ゴンパーツ氏は、その理由を単純に作品点 数の増加に帰している。しかし、これは現象的事実でしかない。ALCS のデータは供給過多を示してはいないし、何より出版社の繁栄を説明 できない、と TeleRead (04/22)のポール・マッキントッシュ氏は述べ ている。理由については昨年のレポートで述べられていた。 「多くの 出版社が著者に要求している契約条件は、公正でもないし維持可能で もない」 。 スターを除いた職業ライターの窮乏化は、ポスト・デジタル時代にお 10 EBook2 Magazine Vol.5, No.32, 04/23/2015 ©2010-15 OTI, Inc. ける出版契約の問題点を示している。デジタルによって、出版社は図 らずも(著者に対して)勝ち組となってしまった。自主出版は答の一 部かも知れないが、ほんの一部でしかない。まともなライターを社会 として育てていくことが出来なければ、いずれ産業として衰退を迎え るだろう。◆ (鎌田、04/23/2015) 記事タグ 本誌カテゴリ:コンテンツビジネス, 出版・製作 タグ:職業作家, 著者収入 11 EBook2 Magazine Vol.5, No.32, 04/23/2015 ©2010-15 OTI, Inc. E-Book2.0 Magazine V5N32 Copyright © 2015 オブジェクトテクノロジー研究所 ISSN 2185-954X 発行日:2015 年 4 月 23 日 発行者:鎌田博樹 発行所:オブジェクトテクノロジー研究所 185-0003 東京都国分寺市戸倉 3-15-22 Web サイト http://www.ebook2forum.com/members/ Email : [email protected] 12