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EBook2 Magazine
Vol.6, No.11, 11/26/2015 ©2010-15 OTI, Inc.
E-Book 2.0 Magazine 2015 年 11 月 26 日号
Vol.6, No.11, 11/26/2015 [無償公開版]
18 世紀のチャップブック
『ジャックと豆の木』
目次
ANALYSIS & COLUMN
二極化する出版:(1)中小出版社の没落
アマゾンによるメディア環境の改造:(2)統合と連携
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11
NEWS & COMMENTS
二極化する出版:(2)エコシステムの再生
4
アマゾン書店は独禁法違反か?
5
アマゾンによるメディア環境の改造: (1)ツール
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E-Book 2.0 Magazine
2015 年 11 月 26 日発行(第 6 巻第 11 号)
ISSN: 2185-954-X (2010 年 9 月 15 日創刊)
編集兼発行人:鎌田 博樹
発行:オブジェクトテクノロジー研究所
〒185-0003 東京都国分寺戸倉 3-15-22
www.otij.org
Email : [email protected]
ⓒ2010-2015 by Object Technology Institute, Inc.
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EBook2 Magazine
Vol.6, No.11, 11/26/2015 ©2010-15 OTI, Inc.
ANALYSIS & COLUMN
二極化する出版:(1)中小出版社の没落
ニールセン社の分析によれば、出版市場は
ビッグファイブ(B5)とインディーズに二極
化しつつある。前者はグローバルなネット
ワークによって、後者は E-Book と会社を
持たない身軽さによってデジタルな世界
に適応している。巨大化と極小化の中間には、非常に多数の、ふつ
うの出版社がいる。出版文化を支えてきた、伝統と個性を持った出
版社だが、いまその中堅が危ない。
B5 とマイクロ・インディーズに圧される「ふつうの出版」
本誌は過去 5 年以上、メガトレンドとしての出版メディアのデジタル
転換(境界喪失時代の市場形成)を、仕掛け役としてのアマゾンを軸
に、B5 とインディーズの動向を中心にウォッチしてきたが、個人的
に気になっていたのは、数世代にわたって存在してきた「ふつうの出
版社」の運命である。B5 は地球的規模の存在であり、それぞれ複合
メディア企業を背景にしている。彼らのデジタル戦略は、グローバル
化とマーケティングを先行し、E-Book 市場の成長を「抑圧」するも
のである。しかし、時を見て E-Book 市場への反攻を開始することは
間違いない。
他方で自主出版として生まれたインディーズは、多くの職業的著者に
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選択されることで、しだいに数と勢いを増している。米英の書評メデ
ィアが選ぶ今年のベストブック表彰でも、大出版社のものと並んで、
インディーズ本がかなりの数を占めるまでになった。欧米でインディ
ーズとは、超大手から準大手までの出版ビジネス(大部分が上場企業)
ではない、伝統的なタイプの出版人が興した出版社を意味してきたが、
別のインディーズの急増で、非出版社系のインディーズを「マイク
ロ・インディーズ(MI)」と呼んで区別するようだ。MI はデジタル・
ファーストであり、アマゾンとともにデジタル転換の推進勢力となる
だろう。
良書を世に出してきた「ふつうの出版社」の影は薄くなっている。業
績発表などはないが、名の通った出版社も経営が悪化していると推測
されている。やがて B5 のブランド・コレクションに加えられるのだ
ろう。旧ブランドのスタイルが維持されるのならば悪いことばかりで
はないと思うが、実際にはグループ内での競争激化、管理強化が進み、
優秀な編集者や著者たちが離れて MI に移行する要因にもなっている。
大出版社は書店への営業を強化しているが、それは「ふつうの出版社」
をさらに追い詰める。MI が多くなるのは、印刷本より格段にいい
E-Book の印税配分のためだ。ある程度の知名度がある著者にとって
は、いくら出版社=書店への愛着があっても、経済的に MI は必然的
な選択となる。◆ (鎌田、11/26/2015)
記事タグ
本誌カテゴリ:コンテンツビジネス, ビジネスレポート, 出版・製作
タグ:インディーズ, エコシステム, ビジネスモデル, ビッグファイブ
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NEWS & COMMENTS
二極化する出版:(2)エコシステムの再生
コンテンツと読者の関係を変えるメディアの革
命は、
「ふつうの出版」を脅かす段階に入った。
しかし、その本質はあまり理解されているとは
言えない。それは「デジタル vs. アナログ」の
二分割で世界を見てしまうためだ。現実に進行しているのは B5 と
アマゾンが競い合って、出版の風景を変えていく姿であり、紙と印
刷が頑張っているかどうかなどは些末なことだ。[全文=♥会員]
二極に挟撃される中堅出版社
B5 の戦略的意図とその波紋
「ふつうの出版社」「ふつうの書店」のサバイバル
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NEWS & COMMENTS
アマゾン書店は独禁法違反か?
米国書店協会(ABA)のオーレン・タイ
チャーCEO は 11 月 19 日、会員宛のメ
ッセージの中でアマゾンが最近シア
トルにオープンした Amazon Bookstore
に独禁法違反の疑いがあるとして注
意を喚起した。アマゾンがオンライン用に仕入れた在庫を書店用に
転用するならば、同規模の街の書店に対して著しい競争上の不利を
与えるというのだが、果たして立件の可能性はあるか。
独禁法の要件:消費者の不利益+不公正競争
ABA が問題にしているのは、米国独禁法の中の卸、小売、競合他社
間の価格差別を禁じた条項 (Robinson-Patman Act)に違反するのではな
いかということらしい。アマゾンの小さな書店は、その規模では分不
相応な割引販売を行っている可能性が強く、大きな価格交渉力がある
Amazon.com の在庫を流用しているとすれば、それは不公正な競争に
あたる、ということなのだが、論理的に飛躍がありすぎて、直感的に
無理としか思えない。アマゾンの書店は、オンラインでも街中でもア
マゾンのストアで、同じ価格で売ることに問題はない。
そもそも法律は独占的事業者から消費者を護るためにあるので、小規
模小売業者を護るためにあるのではない。まともな方法(消費者の
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選択)で独占的地位を築いたアマゾンを罰する法律はないのだ。
ABA の疑惑は違法性を立証できるだろうか。The Digital Reader のネ
イト・ホフェルダー氏は、それは実際には困難であると述べている
(11/21)。アマゾンは卸業者ではなく小売業者だ。大量仕入れによって
割引が可能なほどの(卸業者と同等の)価格条件を得ているが、卸業
者ではないし、そうであったとしても、企業内の(事業部門間の)在
庫の移転は「販売」と見做されない。
ABA は 1990 年代に 2 回、独禁法で提訴したことがある。大手出版社
を相手に、小規模書店に対する差別的契約条件の禁止を求めた訴訟に
は勝訴し、Borders と Barnes & Noble の大手チェーン 2 社を提訴した
結果は略式判決と訴訟費用の一部負担という実質敗訴だった。いずれ
の場合でも、裁判所の判断基準は消費者の利益と競争手段の当否とい
うものだ。アマゾンの書店の営業は、少なくとも不公正とは言えない
し、消費者の不利益ではない。
米国のように(とくに流通における)自由市場を尊重する国では、街
の書店だけに特別な文化的意義と公共性を認め、保護する政策はとれ
ない。保護することは悪ではないが、公権力の出版への介入と引換え
になるから、実質的に出版ビジネスの支配を認めることになる。出版
物の実質的検閲(公共性審査)から書店の出店規制(競争制限)に至
るまで、サプライチェーンごとに生まれる権力過程は政治化し、政治
と一体になる。そのことは、
「公共の電波」を実質的に無償で営利事
業に使っているこの国の放送で見られるとおりだ。よほど成熟した社
会でないと政治の手段に使われるのは避けられない。公権力に書店を
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護らせるという幻想を捨てないと、伝統的出版の凋落は加速するばか
りだ。◆ (鎌田、11/26/2015)。
記事タグ
本誌カテゴリ:コンテンツビジネス, 流通・書店・図書館
タグ:ABA, Amazon Bookstores, 独禁法
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NEWS & COMMENTS
アマゾンによるメディア環境の改造: (1)ツール
Amazon Studios を通じて映画・TV など
映像コンテンツ製作への取組みを強化
しているアマゾンは 11 月 9 日、脚本執
筆に特化したクラウド・ベースの無償ア
プリ Amazon Storywriter をリリースした。アマゾンはこれまで教科
書や絵本、マンガのための制作ツールを提供してきたが、それを脚
本にまで拡張したことになる。
クラウド脚本作成ツールの登場
Storywriter はその名の通り、映画・TV ドラマなどの脚本・台本のた
めのツールで、Final Draft など、駆け出しのライターには簡単に手が
出ない、高価な専用ツールの代用になるものだ(Tutorial 参照)
。クラ
ウドおよび Chrome アプリの、オンライン/オフライン両用で、PDF
のほか、FDX (Final Draft)、Fountain(脚本用の XML マークアップ)へ
の入出力をサポートする。つまり、Final Draft などの高度な専門機能
と競合するものではなく、アマチュアでも FD のユーザーを含むプロ
フェッショナルと台本を共有できるようにするための環境である。
フォーマットに厳密でない台本を読むのはプロにとって苦痛だが、ア
マゾンは新人を求めており、粗削りでも独創的で新鮮なアイデアやキ
ャラクター設定がプロの手で洗練されることでヒット作が生まれ
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ることを期待している。新人の脚本は製作リスクを大きくするという
常識に反するものだが、その有効性は、データ指向のコンテンツ・マ
ーケティングによって実証されていると考えてよいだろう。
Storywriter はライティング・プロセスの入口にあたるものなのだ。
出口となるタイトルの市場は Amazon Studios が自ら生み出している。
独自製作映画、プライム会員のための大人/子供向けの連続ドラマは
新しい脚本需要を喚起している。Storywriter で作成した原稿は、その
まま Amazon Studios のオープンドア・プロセスを通じて Development
Slate(製作候補リスト)に提出することが出来る。これはプロとアマ
チュアの両方に開かれており、アマゾンが選択権を取得する際には職
能団体である WGA (Writers Guild of America)の最低料金が保証される。
WGA は無償の公募を認めていないので、そうしないと WGA 会員の
応募が出来ない。
コンテンツ別ライティング・ツールの意味
アマゾンが出版(コンテンツ)のタイプ別制作ツールを揃える理由を
お分かりいただけたと思う。ドキュメントには、タイプごとに特別な
読者がおり、了解事項がある。そして構造と表記形式、あるいは根底
となる方法論がある。ワープロやエディタでそれをサポートしている
スタイル・テンプレートはないわけではないが比較的高く、使いやす
くない。何よりもプロとツール/環境とアマのそれとが違いすぎるこ
とだ。これは情報の共有を困難にしている。小説などと違って、脚本
それ自体は完成品ではなく、設計図のようなものだ。構造性は非常に
高く、シーケンス・リストや制作スケジュール、費用見積りなど、直
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接間接に関連している情報は多い。ライティングの内容に関係し、ラ
イティング以外の(主にビジネス)機能をサポートするのがコンテン
ツ用ツールなのである。
そうしたツールはプロの中だけで使われてきた。日本ではそもそも市
場に出ていないものも多い。グループで使用しなければ意味がなく、
仕様に一定のスキルが必要で、個人で買うには高すぎる、という理由
があれば、まず普及することは難しい。こうした状態はアマゾンにと
って好ましい。ツールを無償提供するだけでクリエイターの最大の問
題を解決し、それによって多くのコンタクトと情報が得られるためだ。
「コンテンツが王様である」と信じている人も、王様がつくられるプ
ロセスについては関心を持たない。しかし、アマゾンはコンテンツと
はプロセスの産物であると考えており、ここにコミットすることで市
場をリードできると考えた。これは狭い「製作ツール市場」と巨大な
コンテンツ市場の制作プロセスに組込むことでビジネスモデルを再
構築する方法だ。日本ではツール自体が普及していないので、非常に
有効であると思われる。◆ (鎌田、11/24/2015)
記事タグ
本誌カテゴリ:エンターテイメント, コンテンツビジネス, テクノロジー,
出版・製作, 出版・製作
タグ:Amazon Studios, オーサリング, ビジネスモデル
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ANALYSIS & COLUMN
アマゾンによるメディア環境の改造:(2)統合と連携
アマゾンの Storywriter は、同社のビジ
ネスモデルの重要なピースで、今後ま
すます重要性を増していくと思われ
るので、コンテンツをめぐるプロセス
で「制作環境」が持つ意味を考えてみ
たい。これはプロとアマの両方を対象としており、自主出版のため
の簡易入稿ツールとは性格が異なる。コンテンツの上流工程の再
編・統合を意図したものと考えられる。[全文=♥会員]
意味的構造のサポート:上流-下流の統合
ネット時代のライティング・ツール
「アイデア」と「コミュニケーション」を重視するアマゾン
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EBook2 Magazine
Vol.6, No.11, 11/26/2015 ©2010-15 OTI, Inc.
E-Book2.0 Magazine V6N11
Copyright © 2015 オブジェクトテクノロジー研究所
ISSN 2185-954X
発行日:2015 年 11 月 26 日
発行者:鎌田博樹
発行所:オブジェクトテクノロジー研究所
185-0003 東京都国分寺市戸倉 3-15-22
Web サイト http://www.ebook2forum.com/members/
Email: [email protected]
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