Comments
Description
Transcript
平成19 年3 月27 日 PISAP ミニレポート 2006
PEC 海外石油情報(ミニレポート) 平成 19 年 3 月 27 日 PISAP ミニレポート 2006-035 フランスのバイオエタノール燃料事情 <バイオ燃料> 2006 年 5 月 15 日に de Villepin 首相が「2015 年にはフランスで販売される輸送用燃料 の 10%をバイオ燃料にする考えを表明」(2006 年 5 月 16 日、Le Figaro)した。フランスは 石油への依存の低減が大きな課題でありその対策の一環である。数日後、Breton 経済・財 政・産業大臣が「2010 年までに消費者がバイオ燃料油かあるいは従来の燃料油かを実際に 選択できるようになるのは良いことである」(2006 年 5 月 22 日、Reuters News)と記者会 見で語った。 Breton 大臣が言うバイオ燃料油とは E85(エタノール 85%、ガソリン 15%)、従来の燃料油 とはガソリンのことである。フランス政府はバイオ燃料油の導入目標を達成するにはブラ ジルやスウェーデンのようにエタノール燃料を全国的に普及させる必要があると考えてい る。 翌 6 月、Breton 大臣および Bussereau 農業・食料・水産・農村問題大臣の肝いりで、E85 の普及計画を取りまとめることを目的とする flex fuel 2010 と名付けられたワーキンググ ループが発足した。元 F1 レーサーの Alain Prost 氏を委員長とするこのワーキンググルー プは、政府、フランス国内で自動車用燃料を販売している大手石油会社および大手小売販 売会社(ハイパーマーケット、スーパーマーケットなど)、自動車会社、農業およびエタノ ール製造会社の代表で構成された。 そして 3 カ月後の 9 月、 ワーキンググループが E85 普及のための政策提言を Breton 大臣 に提出、 「12 月末までに品質規格を制定すること、2007 年 1 月 1 日から全国レベルで販売 を開始すること、税優遇、および E85 憲章への関係者全員の署名」(2006 年 10 月 20 日、 Agence France Presse)などを提案した。 これを受けて Breton 大臣は E85 の販売価格をガソリンより安い1リットル約 80 ユーロ セントにすると約束するとともに、2007 年に 500 カ所の E85 給油所を設けると発表、さら に Ford、Saab、Volvo、PSA Peugeot Citroen および Renault の自動車 5 社は 2007 年から 可変燃料車を供給できるだろう」(2006 年 9 月 26 日、Reuters News)と述べた。 フランスの小売業の最大手Leclerc は 「自らの手でエタノールを混合して販売できるE85 に強い意欲」(2006 年 9 月 26 日、L'Indépendant)を示している。 同社はフランス北東部 のシャンパーニュ=アルデンヌ地域で 2005 年 6 月から実施されている「7 台の可変燃料車 による走行試験に E85 を供給」(2006 年 9 月 28 日、La Tribune)している。 PEC 海外石油情報(ミニレポート) 出遅れたのは石油会社であるが、Total が 10 月にパリで E85 の給油所を開所した。開所 式にはTotalのDesmarest最高経営責任者、 Breton大臣およびBussereau大臣が参加した。 そして 11 月 13 日、首相官邸に石油会社、大手小売販売会社、自動車会社、農業および エタノール製造会社の代表が集まりスーパーエタノール憲章に署名した。この時に初めて 登場したスーパーエタノールとは「エタノール 65~85%、ガソリン 35~15%含む自動車用燃 料」(2007 年 3 月 5 日、Agence France Presse)である。実際には E85 が主体であるので便 宜的に E85 と呼ばれることが多い。 憲章に署名した石油会社および大手小売販売会社は、2007 年に 500 カ所、2008 年に 1500 カ所の E85 の給油所を開設すること、 自動車会社は 2007 年に 1 車種以上の可変燃料車を販 売すること、農業従事者およびエタノール生産会社は必要な量のエタノールを供給するこ となどを約束した。 石油会社では「Total、BP、Shell および Eni が署名し、ExxonMobil は辞退」(2006 年 11 月 20 日、Oil & Gas Journal)した。小売販売会社では少なくとも Leclerc、Carrefour、 Auchan および Système U が署名している。これは報道写真(2006 年 11 月 13 日、Reuters Pictures)で確認したものだが、いずれもフランスを代表するハイパ-マーケット、スーパ ーマーケットの大手でありすでに同国のガソリン販売の一翼を担っている。 当面は「Total と Leclerc が主な供給者」(2006 年 11 月 14 日、Le Parisien)と報じられ ている。 Total は 「2007 年末には 200~275 カ所で販売する」 (2006 年 11 月 13 日、 DJ Bourse) としている。なお、自動車会社で署名したのは、予想どおり PSA Peugeot Citroen、Renault、 Ford、Saab および Volvo の 5 社である。 そして 2007 年 1 月に E85 の小売販売が始まった。 今のところ E85 の給油所はそれほど多 くない。 Chirac 大統領が3 月初旬の演説で 「まだわずか25 カ所」 (2007 年3 月4 日、 dimanche Ouest France)と述べている。しかし Leclerc が「2009 年には約 500 カ所の自社の給油所 の全てで E85 を販売する」(2007 年 3 月 7 日、Les Echos)と述べるなど各社は前向きに対 応しており、今後、E85 の急速な普及が期待される。 (YY) 本資料は、 (財)石油産業活性化センター石油情報プラザの情報探査で得られた情報を、整理、分 析したものです。無断転載、複製を禁止します。本資料に関するお問い合わせは [email protected] までお願いします。 Copyright 2006 Petroleum Energy Center all rights reserved