Comments
Description
Transcript
ミシン針 - 神奈川県産業技術センター
ミシン針 神奈川県産業技術センター 化学技術部 1 ○尾上正行、加藤三貴 お茶の水女子大学名誉教授 中島利誠 元実践女子大学教授 鎌田佳伸 はじめに ミシン糸は針とともに押し下げられ布を貫通し、 衣服縫製は手縫いと機械縫いに大別され、いずれ 釜の剣先ですくわれて、ボビンの周囲を回って下糸 も針を使うことには違いがない。両者の大きな違い と絡み合い、ひとつの縫い目が形成される。釜の剣 は針の形状と糸穴の位置にある。この違いは糸が布 先がミシン糸をすくい損なうと目飛びとなる。 に対してどのように作用するのかに起因する。ここ 3 では機械縫製に欠かせないミシン針の役目について 説明したい。 目飛び防止対策 目飛び防止用の針の考え方として、図1のえぐり の部分を深くしたり、糸穴の形状を改良したり等の ミシンを用いて布を縫い合わせるときに欠かせな 措置がとられている。その一例を図3に示す。図3 いのは、針と糸である。糸を用いない溶着・融着な -a はえぐりを深くしたもので、ミシン糸にループが どの方法も考案されたが、布素材の性質によって使 形成され剣先で引っ掛ける時に確実に補足できるよ 用範囲が限定されるために糸を用いる縫製が主流で うになっている。図3-b は幹の部分をえぐりとした ある。糸を用いた縫製は縫い目のしなやかさ、縫合 ものである。この針を用いるときは針板の針穴の大 力の確かさ等の点を考慮して合理的な方法と言え きさを考慮しなければならない。図3-c は糸穴の断 る。縫製は糸の絡み合いによってなされ、その際に 面形状を改良したもので、ループを形成するときに 針は不可欠の構成要素である。針の形状と各部位の ループが外側に大きくふくらむようにしている。a、 名称を図1に示す。 cはオルガン針製 NY2、bは旧シンガー製MR針で 2 ある。 縫製の注意点(可縫性) 縫製で気をつけなければならないのは目飛びであ 4 おわりに る。目飛びは糸の絡み合いが行われない場合に起こ 衣服縫製で、 目飛 り、単環縫いでは糸のほつれとなり致命的な製品欠 びは縫いの不良現象 陥となる。本縫いではほつれとはならないが、縫製 のひとつである。そ 不良としてカウントされる。本縫いは、Lock Stitch の他に地糸切れなど と呼ばれ図2のような縫い目構成をしている。 も不良現象に上げら れる。これら縫製中 のミシン針に関わる 図3-a えぐりの改良 問題点に ついて述 べる。 図3-b 幹の改良 図1 針の形状と各部位の名称 図3-c 図2 本縫いの縫い目 糸穴形状の改良