Comments
Description
Transcript
3308 通信 - 札幌学院大学
佐々木のウェブページの「教育」をクリックす 3308 通信 るとバックナンバーを DL できます。 2012 年 6 月 5 日号 佐々木冠(札幌学院大学経営学部)が担当する講義・ゼミに関する情報を伝えることを主な目的とした通信 です。大学でも学級通信みたいなものがあると面白いかなと思って作ってみました。定期刊行を目指していま す。意見、質問、要望がある学生は気軽にメールで連絡してください。 [email protected] http://ext-web.edu.sgu.ac.jp/ksasaki/ フェースブックにも出没中。 今週の講義 論述・作文 A (3), (5), (11) 清書課題はどうでしたか? ペンで清書をして緊 張したのではないでしょうか。修正液を使って文章 を直すのが初体験の人もいたかもしれませんね。レ イアウトは綺麗にできたでしょうか。 今週の小テストで取り上げた大津論文は前期最後 の課題でも使いますので、なくさないようにしてく ださい。前期最後の課題は「これからの外国語教育」 というテーマの論説文です。大津論文には外国語教 育に関連するキーワードが複数含まれています。最 後の課題を説得力のあるものにするためにも役立つ 論文ですので、時々読み返してください。 教養ゼミナール A(7) 先週は二人の学生が発表した時点で時間切れにな りました。今週はもうちょっと早く進めることにし ましょう。 英語の文章を把握するのが結構上手になってきた 気がします。Lewycka の文章の癖に慣れてきたんじ ゃないかな。Irina ちゃんだけでなく Andriy くんも イギリスに対して妄想と言っていいぐらいの過剰な 期待を持っていることがわかりましたね。二人がど んな風に期待を裏切られるのか楽しみですね。 今週読む箇所では Irina ちゃんのイチゴ畑にいる 同僚に対する人物評が読めます。なかなか笑える箇 所です。楽しみましょう。 人間の言語のしくみ 先週は、言語学も「こんな現象がある」 「こんな一 般化ができる」 「こんな規則がある」ということを指 摘するだけでないところまで来たことを最後に話し ました。つまり、「どうしてそんな現象があるのか」 と問題にできるところまで現代言語学は何とか到達 したというわけです。もちろん、全ての現象につい て「何故」を問えるところまでは来ていません。で も、そういう次元に到達しようともがいているわけ です。皆さんが勉強している分野ではとっくにそん な段階は通り過ぎているかもしれませんが。 さて、先週出た質問への回答です。 質問:大根(daikoN)が何故 2 音節になるのかよく わかりません。一つの音節には母音が一つしか 存在できないのではないのですか? 答え:確かに、一つの母音が音節の中心になってい ることが多いのですが、常に音節に含まれる母 音が一つとは限りません。ソシュールの音節の 定義(狭窄から狭窄までの間の区間)で「大根」 を分析すると次のようになります。[d]から[a] に移行する際に閉鎖を開放します。[a]から[i]に 向かって口の開きを狭めていきます。そして、 [k]でもう一度閉鎖します。[k]から[o]に移行する 際に閉鎖を開放します。そして、[o]から[N]に移 行する際に狭めを作ります。そうすると、狭窄 から狭窄までの間の区間は二つあることになり ます。したがって、 「大根」には音節が二つある ことになります。 全学共通特別演習 A(2) 先週読んだ論文は、概念の定義はしっかりしてい て良かったのですが、扱っていた現象が狭すぎまし たね。今週扱う論文は、その点、どうでしょうか? 方言とカウンセリングに関する論文は、心理学を やっている立場からするとどんなふうに評価できた でしょうか? 来週、話を伺うのが楽しみです。 「ルーマニア貧乏旅行ゼミ総括」(4) 先週は多忙に付き、連載を休ませていただきまし た。今週から、実際にやってみたルーマニア貧乏旅 行ゼミについて書くことにします。うまくいったこ ともあれば、課題として残ったこともあります。 ルーマニア貧乏旅行は教養ゼミの企画ですので、 シラバスを通して学生に告知しました。シラバスに は、自分自身がルーマニア貧乏旅行に参加する意志 のある学生にだけ受講を認めるということを書きま した。 ルーマニア貧乏旅行も海外旅行ですから、リスク があります。安く済ませるとはいえお金がかかりま す。また、普段とは違う環境に飛び込むわけですか ら、体調を崩すリスクもあります。そうしたリスク を引き受ける意志がある学生にだけ受講を認めたの です。 このような制限を課したのは「自分の意志で自分 を高めようとするきっかけを与える」という企画の 趣旨からすれば当然のことです。文献でルーマニア の文化や歴史について読むことも、もちろん勉強に なります。しかし、この企画では、そのような文化 や歴史を持つ社会の中に自分自身が飛び込むにはど うしたらよいかを考えてほしかったのです。そうし なければ「どうしたら自分の力(行動力、外国語で のコミュニケーション力、情報収集力など)をつけ られるか」を考えることができないからです。 2009 年度に開講した 1 回目のルーマニア貧乏旅行 ゼミ以来、ゼミの基本的な進行は同じです。半年間 (1 セメスター)のゼミの間に、ルーマニアの地理、 歴史、文化、言語と貧乏旅行のノウハウを学び、準 備をしました。そして、ゼミと並行して航空券や宿 の予約といった旅行の準備をしました。 ルーマニアに関する情報源としては、2 冊の本を 選びました。 『ルーマニアを知るための 60 章』 (2007 年, 六鹿茂夫編、明石書店)と The Golden Age for Children (2008, Ştefan Constantinescu, The Romanian Cultural Institute of Stockholm)です。 これらの本を学生達に読ませて発表をさせるかたち で情報収集をさせました。この辺りは普通のゼミと 同じですね。 『ルーマニアを知るための 60 章』は、ほとんどの 章が 10 ページ以下と短いのが特徴です。400 ページ に 60 章もあるのだから当然と言えば当然ですが。大 事なことをコンパクトにまとめられるのは本当によ く知っている人にしかできないことです。短いペー ジ数であるにもかかわらず議論のあるテーマに関し て、様々な意見を踏まえた上で書いてあります。こ の本を使って、ルーマニアの各地方の特徴を調べさ せました。 The Golden Age for Children は、ルーマニア語と 英語の 2 カ国語表記になっている写真を使った飛び 出す絵本です。表紙は以下の通り。 本を開くと下の写真のように飛び出す絵本になっ ています。下の写真のページは、サンタクロースの 代わりの「氷じいさん」を扱ったページです。社会 主義時代にルーマニアでは宗教政策でサンタクロー スが禁じられていたわけですが、その代用品として 考案されたのが、12 月 31 日に子供達にプレゼント を配って歩く「氷じいさん」だったわけです。この ように、この本では、チャウシェスク独裁政権下の 日常をコミカルに紹介しています。 The Golden Age for Children を教材として選ん だのには複数の理由があります。第一の理由は、ル ーマニアの近現代史を知ってもらいたかったことで す。第二の理由は、英語とのつきあい方を知り、英 語のありがたみを実感してもらいたかったことです。 ルーマニア人と会話をするとき、ルーマニアの近 現代史の知識はあった方が良いに決まっています。 それを話題にできるわけですから。僕がこれまで見 てきた日本人とルーマニア人の会話では、ルーマニ ア人が日本の社会のことを話題にすることはあって も、日本人がルーマニアの社会のことを話題にする ことはほとんどありませんでした(ルーマニア人と 長くつきあっている日本人はその限りではありませ んが)。それだけ日本人はルーマニアに関心がないの です。ルーマニア人はとてもおしゃべり好きの民族 です。学生達には是非とも有意義な会話をルーマニ ア人と楽しんでほしいと思いました。それで、この 本を取り上げたわけです。 日本語で書かれた本でも上記の目的は達成できる かもしれません。しかし、ルーマニア人と会話をす るときは、当然ながらルーマニア語か英語になるわ けです。これらの言語で近現代史のいろいろな用語 を知っておいた方がよいと考えたわけです。 学生達は少なくとも 6 年間は学校で英語を学んで います。ルーマニア語で書かれた部分は読めないと しても、辞書を引いて予習をすれば英語で書かれた 部分は読めるはずです。未知の言語が話されている 未知の国の情報も、英語訳があれば、わかるわけで す(未知といっても人類にとってではなくこのゼミ を受講する学生にとってということですが)。この飛 び出す絵本は、学生達にとってのロゼッタストーン になると考えたわけです。 ただ、残念ながら、僕のもくろみは外れました。1 回目のゼミでは、飛び出す絵本を予習しに来た学生 は、7 名中 2 名でした。 「なるほど簡単な絵本だから 当日目を通しても十分わかると思ったのだろう。自 信があることはいいことだ」と思って、ゼミに臨ん だら、予習しなかった学生は一瞬で絵本を理解でき るというわけではありませんでした。 飛び出す絵本を扱う前の週に、学生に実物を見せ たので、自分にとって一瞬で理解できる本か否かは そのときにわかったはずです。すぐに理解できると いう自信がないのに、何故予習に来ないのか僕には 理解できませんでした。 もちろん、全ての学生が予習をしなかったわけで はありません。しかし、自分で選んだ、卒業単位に 関係のないゼミで予習をしない学生がいたことはそ れなりにショックでした。でも、 「まだ本気出してい ないだけだろう」と思うことにしました。少なくと も現地に行けば、本気を出して何とかするはず、そ う思うことにしました。 次回から、実際に学生達とルーマニアに行った経 験について書きます。3 回行ったルーマニア貧乏旅 行はルートも毎回違っていましたし、計画と実行の プロセスも違っていました。次回は 1 回目のルーマ ニア貧乏旅行について書きます。大学の刊行物でも 取り上げられた回ですが、実は一番課題が多く残っ た回でもありました。