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3308 通信 - 札幌学院大学

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3308 通信 - 札幌学院大学
佐々木のウェブページの「教育」をクリックす
3308 通信
るとバックナンバーを DL できます。
2012 年 7 月 3 日号
佐々木冠(札幌学院大学経営学部)が担当する講義・ゼミに関する情報を伝えることを主な目的とした通信
です。大学でも学級通信みたいなものがあると面白いかなと思って作ってみました。定期刊行を目指していま
す。意見、質問、要望がある学生は気軽にメールで連絡してください。
[email protected]
http://ext-web.edu.sgu.ac.jp/ksasaki/
フェースブックにも出没中。
ここのところ毎週週末に出張が入っており、スケ
ジュールに余裕がありません。皆さんも期末試験が
近づいてきたので、忙しい日々を送っていることで
しょう。体調管理に留意して 7 月を乗り切りましょ
う。
今週の講義
論述・作文 A (3), (5), (11)
来週は最終課題の締切ですね。少し早いと思うか
もしれませんが、これでいいのです。この課題の締
切をもっと後に持ってくると期末試験対策の勉強に
差し支えが出ます。
以前から話しているように、この締切は絶対的な
ものです。成績提出期限があるためです。これまで
の課題のように遅れて提出するということが非常に
難しいと考えてください。
教養ゼミナール A(7)
先週読んだところでは、Yola の英語も大分「すご
い」ものであることがわかりましたね。実は、Lewycka
の作品でも Two Caravans はあの手の「すごい」
(つ
まり文法的にめちゃくちゃな)英語が少ない方です。
デビュー作の A Short History of Tractors in Ukrainian
はものすごい頻度で「すごい」英語が出てきます。
Two Caravans で「すごい」英語が少ないのは、登
場人物達がウクライナ語やポーランド語で話してい
る部分も英語で表しているからなのです。東ヨーロ
ッパ出身者や中国人が英語で話す場面では、これま
でにも「すごい英語」が出てきました。登場人物の
中で一番まともな英語ができるのは、Emmanuel 君じ
ゃないかな。彼がシスター宛に書いている手紙を読
んで、僕はそんな印象を受けました。ちょっと語彙
が堅すぎる気もしましたが。
皆さんも予習で苦労することがあると思います。
でも、これは英文学のゼミではありませんから、正
確に訳すことは目指さなくてかまいません。むしろ、
どんな出来事が起きているか、つまり、誰が何をし
ているかを把握するようにしてください。そして、
訳しにくいところでは、訳さず「ここで書いてある
のはこんな内容だと思うんだけど、そうですか?」
と質問してください。本当におおざっぱな把握でい
いですよ。そもそも、僕は英文科の教員ではないわ
けですから、気楽に行きましょう。
人間の言語のしくみ
今週は先週に続いて、格と文法関係と意味役割の
話をします。
Kurylowicz が提案した文法格と具体格の区別につ
いて、もう少し具体例がほしいというリクエストが
ありました。先週の講義では対格を文法格の例とし
て、そして具格と奪格を副詞格の例として出しまし
た。
与格(名詞+に)を例に取ってみましょう。この
形式の典型が間接目的語であるとした場合、統語的
に一時的用法が規定されるので、文法格ということ
になります。一方、この形式には二次的用法として
副詞的な用法もあります。時間を表したり(11 時に
寝る)、場所を表したり(庭に池がある)する例です。
受動文の動作主を表す用法(お母さんに叱られる)
は統語的用法といえます。
全学共通特別演習 A(2)
今週は、僕の書いた論文ですね。自分で読み返す
とちょっと恥ずかしいです。あまり多くを語らない
ことにしましょう。
ルーマニア貧乏旅行ゼミ総括(6)
今回は、2010 年度に行った 2 回目のルーマニア貧
乏旅行について書きます。この回が他の回と違って
いたのは、ゼミを後期に開講した点です。また、前
回の反省を踏まえて、この回からなるべく学生自身
に行動させるようにしました。
今回のゼミが後期開講になったのは、担当教員で
ある僕が前期大学にいなかったためです。留研制度
(サバティカルのようなもの)を使って、2010 年度
の前期は東北大学で研究をしていました。そんなわ
けで後期にしか開講できなかったのです。
後期にゼミを開講すると必然的にルーマニアへの
旅行も冬になります。ルーマニアの冬は、少なくと
も北海道と同程度には厳しいものなので、旅行は快
適ではありません。ただし、後期にゼミを開講して
冬にルーマニアを旅することには利点もあります。
まず、ゼミが終了してから旅行に行くまでに時間が
あまりないので、学習効果が薄れない点です。2009
年度の反省会で、前期に覚えたルーマニア語を夏休
み中に忘れてしまったので、学習会をすべきだった
という意見が出ました。2010 年のスケジュールでは
そのような心配はありません。また、冬は航空運賃
が安い点も魅力です。ルーマニアに着いた後は、物
価が安いのでよいのですが、日本からの移動は結構
かかります。予約の仕方にも寄りますが、冬の方が
夏より 5 万円ぐらいは航空券代金が安いものです。
また、オフシーズンなので、宿が取りやすい点で
も楽です。この年から宿の予約も学生自身にやらせ
ることにしたので、これはありがたいことでした。
ゼミの進行は基本的に前年度と同じでした。ただ
し、宿の予約を取るといった準備は全て学生自身に
やってもらいましたので、そこは大きく違います。
中には不安を抱えていた学生もいましたが、宿の予
約は何とかうまくやってのけたようです。
準備段階ではショッキングな出来事もありました。
本学のカリキュラムの教育効果に不安を抱かせるよ
うな出来事でした。
ルーマニアの一般的な家庭を見る機会があったほ
うがよいだろうという配慮から、僕の妻の実家を訪
問してみないかと学生達に提案しました。そのとき
ある学生から「食事が出るなら」という返答があり
ました。予期していなかった反応に驚きました。詳
しく解説するまでもないかもしれませんが、学生が
発言した条件節は「もてなしてくれるなら、行って
やるよ」ということを意味しています。学生は一般
的な家庭はどのようなものかを知る経験をすること
になるわけですから、情報の受益者です。学問をす
るものにとって何よりも大切な情報を得るわけです
から、それ自体で感謝するべきことです。それなの
に「もてなしてくれるなら」という条件をつけると
はどういうことでしょうか。学生という立場から考
えて不適切な発想です。
家に誘った人間に対して「食事が出るなら」とい
う条件をつけるのは、非常に失礼なことです。社会
に出てそんなことをしたら、人間関係が壊れます。
しかし、あえて学生として(つまり学問をするもの
として)不適切と書いたのは、理由があります。そ
の発言が、フィールドワークをやっていることを売
りにしている学部の学生から出たことです。フィー
ルドワークは人間を相手にした調査ですから、常に
調査被害が生じる可能性があります。調査被害とい
うのは、調査を行うことによって調査協力者や共同
体に被害を与えることです。調査をする側の姿勢や
態度、そして行動によって相手に迷惑がかかること
です。したがって、学生にフィールドワークをさせ
る科目を開設する場合、調査被害を可能な限り防ぐ
ために調査倫理を教えることがカリキュラムに組み
込まれている必要があります。
僕は全学共通科目を教える立場ですので、学部の
専門段階でどのような教育が行われているか詳しく
は知りません。フィールドワークを行う科目で調査
倫理をどのように教えているのか心配になりました。
調査倫理は、調査という特殊な人間関係において相
手(調査協力者)に被害を与えないことを直接のモ
チーフにするものです。しかし、実は、相手の(他
社の)人間としての尊厳を尊重するというごく一般
的な人間として当然の姿勢を求めるものです。です
から、調査倫理をしっかり身につけていれば、自分
を招いている人間にもてなしを求めるという行為は
できないはずなのです。本学の専門教育で調査倫理
が身につく教育が行われているのか不安になりまし
た。そうした倫理が身についていない学生が社会に
出て大丈夫なのか心配になりました。
このようなことがあったので、次の年度からは、
学生自身が提案しないことはやらない方がよいのか
もしれないと思いました。教員の側から提案すると、
「自分はやってあげる立場」という発想が出て、学
生にとって勉強にならないと思ったのです。
このように準備段階では不安があったのですが、
実際にやってみた旅行は実りのあるものになったと
思います。この回は初めてルーマニアの外に足を伸
ばしました。ブカレストからバスでイスタンブール
(トルコ)に行ってみました。イスタンブールは日
本から直行便の飛んでいる都市です。結構日本語を
話す人がいます。次年度の 4 月に研修成果の発表を
行った学生が、
「日本語で道を教えてもらえたりして、
異国情緒があまり味わえなかった」と言っていまし
た。日本からの直行便がある国とそれ以外の国の対
比ができたようです。
また、この回は前回の反省から、できるだけ学生
を放っておきました。こうすることで、学生の日本
人以外の人との交流が促進されました。ブラショブ
の宿では、ヒッピー世代の哲学的なドイツ人のおじ
いさんと話し込んでいた学生もいました。イスタン
ブールでは、僕が外をうろついている間に、同室の
モロッコ人の学生を先生にしてフランス語教室が始
まっていました。本学の学生はアラビア語がわかり
ません。そこにいたモロッコ人の学生は日本語がわ
かりません。フランス語講座は英語を媒介言語にし
て行われていました。
これまでも、学生が日本人以外の人と話をする機
会はありました。しかし、お金を介しないコミュニ
ケーション、つまり、宿やお店の人以外と話をする
機会はありませんでした。
やはり、学生達の自主性に任せた方が、勉強にな
る経験を積むことができるのです。失敗したらどう
しようか、という老婆心を抑制したことがよかった
のだと思いました。
学生がもてなしを条件として出した件は、本学の
教育の問題である可能性もありますが、教員側があ
れこれ提案しすぎることにも問題があるのかもしれ
ません。そこで、次回から学生自身が提案したこと
を尊重し、こちらから提案するのは控えることにし
よう、と思いました。この年度までは、日本語を全
く使わずに自分でルーマニア人と会話をする練習を
するために学生を我が家に招いていたのですが、そ
れもやめることにしました。
これは、サービスを削るということではありませ
ん。むしろ、学生の自主性を尊重することで、教育
上のリスクをとることにしたのです。こちらから何
も提案しない場合、学生が宿に閉じこもってぼんや
りしているだけになる可能性も論理的にはあり得る
からです。旅行の計画そのものが頓挫する可能性す
らあります。しかし、2011 年度はこの方針を貫いた
ことにより大きな成果がありました。それについて
は次回述べることにします。
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