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第Ⅵ部 英独仏各国の国家予算に占める農業予算の 割合

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第Ⅵ部 英独仏各国の国家予算に占める農業予算の 割合
農林水産省
平成 26 年度海外農業・貿易事情調査分析事業(欧州)
報告書
第Ⅵ部
英独仏各国の国家予算に占める農業予算の
割合
2015 年 3 月
株式会社 農林中金総合研究所
は じ め に
本報告書は農林水産省「平成 26 年度海外農業・貿易事情調査分析事業(欧州)
」のうち,
英独仏各国における各年毎の国家予算に占める農業予算の割合(EU からの受取額を含む)
の調査に関する調査結果を取りまとめたものである。
主要先進国である英独仏の農業予算については、とくにわが国と対比してどの程度の水
準にあるのかという観点から関心が高い。しかしながら EU 加盟国の実質的な農業予算と
その割合は、国家予算だけでなく EU からの CAP 資金受け取り額も考慮する必要がある。
本報告書では、英独仏における最近 2~3 年間の各年毎の国家予算に占める農業予算の割
合を調査した。資料の制約等から、国によって対象年はまちまちとなった。CAP にかかる
EU からの受取額も含めて実質的な農業予算を把握するよう努めた。
この第Ⅵ部については、以下の検討委員諸氏から提供いただいた情報に基づき取りまと
めた。
第 1 章(英国)
和泉 真理
社団法人JC総研 客員研究員
第 2 章(ドイツ)
市田 知子
明治大学 教授
第 3 章(フランス) 清水 卓
駒澤大学 教授
2015 年 3 月
― VI-i ―
目 次
はじめに
i
目次
ii
1 英国の国家予算に占める農業予算の割合 ........................................................................ 1
2 ドイツ連邦農業予算の概況 .............................................................................................. 3
3 フランス国家財政における農業関連予算の位置 ............................................................. 6
3-1 国家予算の範囲 ........................................................................................................ 6
3-2 農業補助金の把握 .................................................................................................... 7
3-3 農業予算と国家予算 .............................................................................................. 12
― VI-ii ―
第Ⅵ部
1
英独仏各国の国家予算に占める農業予算の割合
英国の国家予算に占める農業予算の割合
英国の農業予算の大層は CAP 関連予算であり、近年の英国の CAP 支払額は表 VI-1
のようになっている。
VI-1 英国における CAP 支払額の推移
英国
第1の柱
うち直接支払い
うち市場支持関連
第2の柱
うちEAFRDからの支出
うち共同支出分
英国のCAP支払総額
イングランド
第1の柱
うち直接支払い
うち市場支持関連
第2の柱
うちEAFRDからの支出
うち共同支出分
イングランドのCAP支払総額
スコットランド 第1の柱 (直接支払い)
第2の柱
うちEAFRDからの支出
うち共同支出分
スコットランドのCAP支払総額
ウェールズ
第1の柱 (直接支払い)
第2の柱
うちEAFRDからの支出
うち共同支出分
ウェールズのCAP支払総額
北アイルランド 第1の柱 (直接支払い)
第2の柱
うちEAFRDからの支出
うち共同支出分
北アイルランドのCAP支払総額
2010
3,424
3,325
99
913
512
401
4,337
2,199
2,100
99
562
348
214
2,761
589
190
92
98
779
316
97
38
59
413
320
64
34
30
384
2011
3,309
3,304
5
1,018
653
365
4,327
2,099
2,094
5
597
448
149
2,696
583
243
123
120
826
312
105
45
60
417
315
73
37
36
388
単位:100万ユーロ
2012
2013
3,348
3,326
3,290
3,285
58
41
1,085
1,091
742
752
343
339
4,433
4,417
2,146
2,126
2,088
2,085
58
41
631
666
470
532
161
134
2,777
2,792
584
583
256
236
167
113
89
123
840
819
309
309
117
97
54
48
63
49
426
406
309
308
81
92
51
59
30
33
390
400
注:年次は EU 会計年である
出所:DEFRA (2014)
"Agriculture in the United Kingdom 2013"
英国予算にしめる農業予算比率を推測するものとして、上記英国の CAP 支払総額を
英国国家予算額と比較すると、以下のようになり、国家支出額の 0.5%強の予算が農業
に仕向けられていることになる。
― VI-1 ―
1
英国の国家予算に占める農業予算の割合
表 VI-2 英国予算支出額と CAP 支払額との比較
英国CAP支払総額
ユーロ/ポンド換算
CAP支払額(ポンド)(A)
英国国家予算支出総額(B)
(A)/(B)
単位
100万ユーロ
100万ポンド
2010
4,337
0.86
3,730
2011
4,327
0.87
3,764
2012
4,433
0.80
3,546
2013
4,417
0.84
3,710
10億ポンド
697
711
683
720
%
0.54
0.53
0.52
0.52
注:CAP 支払額の年次は EU 会計年、英国国家予算の年次は英国会計年である。
ユーロ/ポンド換算値は Defra の資料のものを用いている。
出所:DEFRA (2014) "Agriculture in the United Kindom 2013"、HM Treasury (各
年)”Budget”
― VI-2 ―
第Ⅵ部
2
英独仏各国の国家予算に占める農業予算の割合
ドイツ連邦農業予算の概況
ドイツ連邦政府の農業予算は 1990 年の東西統一に伴い大幅に増額されたが、1992
年以降は漸減している。表 VI-3 に示すように、2014 年の連邦政府の農業食料関係総予
算額は約 53 億ユーロであり、うち農業者老齢保険、疾病保険などの社会政策予算が 37
億ユーロ、すなわち 7 割を占める。
表VI-3 ドイツ連邦農業省の農業食料関係予算額(EUから還付され執行する予算を除く)
単位:100万ユーロ
予算項目
2013年
2014年
社会政策
3,662
3,680
健康的な消費者保護および食料に関する政策
(連邦リスク評価研究所経費を含む)
110.0
99.6
「農業構造改善および沿岸保護」共同課題 600.0
600.0
市場秩序、緊急時備蓄措置(連邦農業・食料庁経費
を含む)
123.8
128.8
持続性、研究・技術革新(モデル試験、有機農業およびその他の
持続的農法、タンパク質作物の戦略、
連邦政府農村振興プログラム、再生可能エネルギー作物、
技術革新促進)
178.8
188.6
国際的な措置(二国間技術協力、国際機関(FAO)、持続的林業
のための国際活動)
60.2
63.1
その他の承認事項(詳細は不明)
-0.7
-1.1
連邦政府研究所、検査所の経費(施設整備・維持関係)
82.0
85.1
連邦農業省経費
93.2
92.6
369.9
5,269
383.7
5,311
連邦政府研究所、検査所の経費(主として人件費)
合計
資料:ドイツ連邦農業省、Ausgewählte Daten und Fakten der Agrarwirtschaft 2014, p.9。
次に多いのは、「農業構造改善および沿岸保護」共同課題であり、これは連邦政府と
州政府の共同により実施されている。連邦政府による「共同課題」予算支出は 6 億ユー
ロである。
この「共同課題」には、EU の農村振興政策、すなわち CAP「第2の柱」である農業
環境政策、条件不利地域政策(LFA 補償金)などが含まれる。農村振興政策に関する
― VI-3 ―
2
ドイツ連邦農業予算の概況
従来の EU 規則(1305/2013)に沿えば、EU がドイツの予算支出の 50~80%を負担し
(旧東独では最大 80%)
、残りの 20~50%を連邦と州とで分担支出する。ただし、ドイ
ツの場合、旧西独内でも依然、南北の経済格差がある。そのため、最も裕福な南部のバ
イエルン州の農業環境政策のように、EU が 5 割、州が 5 割を支出し、連邦は支出しな
い場合もある。
一方、EU からドイツに対し、年間約 55 億ユーロが連邦政府の農業省に入り、その
大部分が経営補助金(直接支払)
、すなわち CAP「第1の柱」として用いられている。
下記の表 VI-4 に示すように、2012 年には EU から約 54 億ユーロの歳入があり、その
うち約 53 億ユーロが直接支払として費やされた。
表VI-4 ドイツ連邦農業省の農業食料関係予算(EU関係)
単位:1000ユーロ
2014年
2013年
両年の差額
2012年決算
EUからの歳入総額
5,245,000 5,792,000
-547,000
5,417,480
連邦政府の支出
5,245,000 5,792,000
-547,000
5,417,485
うち、経営補助金(直接支払)
5,287,448
資料:ドイツ財務省資料、連邦政府予算2014(Bundeshaushaltplan 2014)より連邦農業食料
省関係の部分、p.41およびp.53。
経営補助金は受給権(Zahlungsansprüche)に対応し、この受給権(金額)の上限は
EU によって国別に規定されている(注 1)
。2014 年末の時点で、4,826 百万ユーロが
割り当てられており、これに対して実際に経営補助金として支払われたのは 4,822 百万
ユーロであった。受給権上限は 2005~2012 年は、牛乳、タバコ、砂糖の生産数量制限
(クオータ)制度改革の代償措置導入により引き上げられたが(5,853 百万ユーロ)、
2014 年は 17%減とされ、さらにモジュレーションが適用され、大幅に減額された。
受給権を持つ経営の数は 325,345 であり、このうち最も多いのはバイエルン州(34%)
であり、次にニーダーザクセン州(15%)である。受給権の金額でもバイエルン州(19%)
、
ニーダーザクセン州(15%)が上位を占めている。
受給権の地域単価(州毎の ha あたり受給額)の差は徐々に縮小しているが、依然、
「歴史的な」家畜奨励金、牛乳・砂糖・タバコのクォータに影響された部分が残ってい
る。全州平均は 285.51 ユーロであるのに対し、下は 245.18 ユーロ(ラインラント・プ
ファルツ)から上は 304.37 ユーロ(ニーダーザクセンおよびハンブルク)まである。
経営当たりの受給額の平均は 14,600 ユーロであり、前年の 2013 年に比べると 3,000
ユーロほど減少している。受給額別の経営数をみると、0~5,000 ユーロの最下位層が全
体の半分近く(47%)を占めているのに対し、300,000 ユーロの最上位層は 0.4%に過
ぎない。一方、受給額総額では、最下位層が 6.3%であるのに対し、最上位層が 14%と
逆転している。
― VI-4 ―
第Ⅵ部
英独仏各国の国家予算に占める農業予算の割合
2015 年に始まる新しい直接支払では、ドイツの場合、30ha までの再分配支払い(最
初の 30ha に 50 ユーロ/ha、プラス、次の 16ha(30ha~46ha)に 30 ユーロ/ha)など、
小規模経営を優遇する方式が導入されており、こうした受給額格差を是正することが期
待されている。
表VI-5 加盟国別にみた欧州農業保証基金
単位:100万ユーロ
支払
還付
差引
ドイツ
8,938.4
5,355.1 -3,583.8
ギリシャ
732.9
2,346.2
1,613.3
スペイン
3,853.2
5,935.4
2,082.2
フランス
7,931.3
8,601.9
670.6
イタリア
5,876.5
4,662.3 -1,214.2
英国
5,440.4
3,331.3 -2,109.1
EU27ヶ国
44,962
44,962
0
さて、EU の中にあってドイツは
数少ない純拠出国であり、かつ最大
の拠出国である。上記の「第1の柱」
にほぼ相当する欧州農業保証基金
(EAGF)に関する限り、2013 年に
EU からドイツに還付された金額は
約 54 億ユーロであるが、ドイツか
ら EU に対してはその 1.7 倍もの拠
出(支払)をしており、その分、ギ
リシャなど他の加盟国の財政支援に用いられているのである(表 VI-5 を参照)。
― VI-5 ―
3
フランス国家財政における農業関連予算の位置
3
フランス国家財政における農業関連予算の位置
3-1 国家予算の範囲
表VI-6の出所は、仏会計検査院から国家予算の執行状況に関し毎年度公表される国家予
算の評価書というべき文書、すなわち『国家予算』
(各年度)である。
表VI-6
フランスの国家予算(歳出)
単位:100万ユーロ
2011年
2012年
2013年
一般予算
291,251.20
299,535.28
298,653.79
付属予算
1,981.34
2,120.49
2,116.21
1,801.19
1,946.91
1,941.30
180.15
173.58
174.91
特別割当勘定(CAS)
11,343.15
13,806.10
14,898.27
交通管制と駐車場
683.85
1,375.38
1,315.12
農業・農村振興
108.38
114.35
106.98
国家不動産遺産管理
422.12
461.41
570.45
89.31
1,100.00
1,066.24
716.19
1,114.75
1,674.11
8,681.95
8,085.51
7,811.33
旅行者と提携した国の運輸サービス
175
325
312.04
実習の振興と近代化向けの国の融資
466.34
560.1
813.71
自家用車購入助成
0
229.57
281.54
ギリシャ債務軽減へのフランスの参加
0
198.7
599
14,923.45
7,612.88
7,208.33
7,607.23
754.18
541.28
6,789.08
6,836.48
6,633.79
130.82
22.22
33.26
322,833.41
322,528.86
航空管理利用(BACEA)
広報と行政情報
マイクロ波による資源と国家通信インフ
ラシステムの管理と活用
国家の金融介入
年金
資金協力勘定
外国政府への借款
公的サービスを管理する機関ないし国家
の各種サービスへの前貸し
個人ないし民間機関への融資および前貸
し
自家用車購入助成基金への前貸し
国家歳出合計
396.32
319,499.15
出所)Cour des compes, Le Budget de l’Etat en2013, resultats et gestion,
http://www.cour des compes.fr/Publication/ Le Budget -de -l-Etat –en-2013-resultats- et
-gestion
― VI-6 ―
第Ⅵ部
英独仏各国の国家予算に占める農業予算の割合
この表には、一般予算および付属予算、特別割当勘定CAS(comptes d’affectation
spéciale)
、資金協力勘定CCF( comptes de concours financiers)の純支出が示されている。
ただし、 (資金協力勘定の内、 地方公共団体への前貸し、公共視聴覚機関への前貸し、社
会保障機関への前貸し)の暫定歳入勘定は含まれていない。
歳出額の二重計算を避けるため、歳出項目の組替が行われている。事実、一般予算のう
ちの特定支出は、特別勘定への組み入れを含んでおり、それにより特定勘定の支出が可能
となっているのである。従って、一般予算と特別勘定の予算額を単純に合計しても、実質
の国家予算額は得られない。国家予算額を知るためには、この会計検査院の数値を使用す
るのが適当だろう。
ただし、表VI-6 に示されるように、特別予算の予算規模に比べて一般予算の規模はは
るかに大きいから、農業予算の比重を測る場合、母数に会計検査院の「国の歳出」を採っ
ても「一般予算」を採っても結果に大きな差は生まれない。当然のことだが「一般予算」
額の方が少ないので、それを母数にとると、0.1%程度農業予算の比重が高まる程度の違い
である。
なお、フランスの国家予算関連文書、たとえば政府原案、予算項目の詳細を定めるデク
レ、議会での審議そして採択された当初予算などは、経済・財政省のサイト(Forum de la
PERFORMANCE)で知ることができる。
実際、国家予算は、予算原案、国会での審議案、種々の委員会での意見、最後には国会
(国民議会とセナ)での採択等の手続きを経て、当初案が確定する。時期的には12月末で
あり、翌1月1日から新財政年度国家予算が執行される。会計検査院の予算執行に関する上
記文書が公表されるのが例年5月末であるから、2015年2月の時点では2014年度の実績を把
握することはできない。
3-2 農業補助金の把握
毎年の農業関連の国家支出に関する資料としては、
「国家農業会計審議会(commission
des Comptes de l’agriculture de la Nation)が逐次公表する報告書『農業への公的支援』
(Les concours publics à l’agriculture )があり、同一の報告書がAGRESTE dossiers誌 に
掲載されている(農業省のホームページで閲覧可能)
。因みに、最新情報はAGRESTE Les
Dossiers №23-JANVIER 2015. による2014年(暫定値)であり、これは2014年12月15
日の「審議会」での報告文書である。
この報告書の付表(表VI-7)により、農業補助金の内訳を知ることができる。その解説を以
下に見ておくことにしよう。
「農業補助金は、農業部門への予算支出を集計している。つまり、漁業、内水面漁業へ
の特別支出を除く、農業省管掌の金庫の特別口座で扱われる融資、農業省と同じ事業目的
の他の省の予算からの支出、農業省の予算支出、CAPの制度内のEU予算支出を対象として
― VI-7 ―
3
フランス国家財政における農業関連予算の位置
いる。
農業助成金関連支出は、その受け手に最も近いところ、つまり、支払いを行う事業者の
段階で集計される(農業共済中央金庫、再保険中央金庫を除く)
。これらの機関については、
これら機関に対する予算権限委任が集計される。したがって、農業省とこれらの事業者と
の間の資金の流れは除かれる。
税に関わる助成や優遇、さらには他の社会的助成(土地税の減税など)は、受益者の資
材購入コスト削減を目的とする場合を除き、農業補助金とはされない。他方、地方自治体
の助成は、国とEUの補助金とは認められない。地方自治体の助成金は特別評価の対象とな
り、最近では2002年の執行状況に基づき全面的な評価が行われた。
農業補助金は4つの機能的区分に応じて分けられ、さらに、それらは、事業毎に細区分さ
れる。
農業補助金の公表は、「予算法に関する2001年8月2日組織法律第2001-692号」(注1)
(LOLF : loi organique relative aux lois de finances)の原則に従い、補助金の仕組みを、
プログラムや事業の形で、農業省予算の仕組みに組み替えることを目的としている。同様
に、その公表は、二つの柱からなるCAPの仕組みとプログラムを反映する。
農業補助金の記録時期は、国の予算年度(歴年ベース)である。国家予算の支出はその
年度内に執行された支出である。しかし、支払い機関への予算割り当ては考慮されない。
これらの機関の運営費支出は会計書類で特定される。
(追記:EUの)FEOGA保証部門と
FEOGA指導部門は廃止され、2007年からは、欧州農業保証基金(FEAGA)と欧州農業農
村振興基金(FEADER)となった。FEAGAはCAP第一の柱の助成金を供給し、FEADER
は第二の柱の農村振興への助成金を供給する。
本表の農業補助金では、国の支出とEUの支出を区別して表示されている。支払い機関を
経由しての補助金は国の部分とEUの支出部分に分けて集計される。
統制手続きにより、欧州委員会は加盟国への補助を拒否する財政是正措置を適用するこ
とがあるが、それは、受取国側で共同体規則に基づく支出が行われない場合である。監査
に基づく共同体側の支出拒否の金額は、農業省の予算の負担となり、国庫からの別の補助
金への追加的補助金となる。それと並んで、EU補助金の金額は、補助金支給機関が支払い、
農業部門介入機関中央機構(ACOFA:Agence centrale des organismes d’intervention dans
le secteur agricole.)に提出される金額で特定されるが、監査を拒否すれば減額される。そ
の部分はEUの基金の負担とはされない。
市場介入のための特定の支出は、生産者による特別負担により資金調達される(1993年
までの牛乳と穀物の共同責任制度およびクオータ超過への罰金)
。同様に、
「一時金」
、つま
りFEAGAの一部である製糖業構造再編一時基金に充てられる収入もまた公的補助金の評
価対象となる。公的補助金は、生産者負担を控除した上で表示される。
農業・農村振興特別割当勘定(CASDAR:le compte d'affectation spéciale «
développement agricole et rural)からの支出は、農業経営の売上高税により賄われるので、
― VI-8 ―
第Ⅵ部
英独仏各国の国家予算に占める農業予算の割合
農業補助金には算入されない。
」
(注 1)LOLF と略称されるこの法律は 2001 年に発効し、2006 年に完全施行された現在の国家予算決定
制度に関する法律で、予算の効率的執行、透明化、情報提供、議会権限の強化により、財政の結果重
視の効率性を追求することを目的としている。2012 年度予算では、議会審議と採決対象となる 32 の
ミッション、議会の承認を要する予算枠とその管理責任を示す 125 のプログラム、その下に行政執行
されるアクションという 3 層構造となっている。
「予算法に関する 2001 年 8 月 2 日組織法律第 2001
-692 号」という訳語およびフランスの予算制度については、松浦茂「イギリス及びフランスの予算・
決算制度」
『レファレンス』2008.5,国立国会図書館を参照。
― VI-9 ―
3
フランス国家財政における農業関連予算の位置
表VI-7-1 農業向け公的支出(2011年~2013年)
単位:100ユーロ
合計
2011年
農業と農村領域
市場と農業所得
市場調整
輸出払い戻し金
介入支出
国内市場での販売支援
その他の支持 (業界の適応, 監査、税)
製品対象の支援
繁殖雌牛維持手当
屠畜手当
雌羊手当
穀物・油糧作物・蛋白作物支援
製品関連の他の直接支払
供給管理
休耕地支援
酪農廃業支援
他の供給管理支援 (ブドウ、果樹その他の抜根)
製糖業構造改善基金
単一支払いおよび 68条関連支払い
単一支払い
68条関連支払い
業界の組織化および 近代化
生産部門業界活力強化 (ブドウ園の構造改善)
販売部門業界活力強化(近代化事業)
販路拡大と製品の質
食料支援
生産変動対策および 費用負担軽減
農業リスク 管理全国基金、利子補給、災害融
資、金利負担軽減基金、最貧困農家支援
その他措置
エネルギー作物・天然ガス消費課税控除
農村振興
汚染除去施設・管理 ( 利子補給、 若手就農支
援、農業起源の汚染物 質管理 、経営地域契
約、持続可能農業契約、畜舎近代化計画
2012年
フランス
2013年
2013年/
2012年
11 905,6 11 798,5 11 373,2
9 933,3
447,7
88,6
84,2
44,4
2 147,7
1 999,2
-45,0%
0,0
0,0
0,0
-4,6%
-15,3%
25,0
34,7
38,7%
31,6
2013年
2166.2
9 474,8
271,4
43,1
2012年
-3,6%
9 931,0
320,5
78,4
2011年
9,8
-69,0%
881,3
-3,9%
0,0
0,0
1 242,1
143,0
0,0
0,0
1 056,7
129,2
-13,0%
-23,9%
-14,0%
0,1
299,3%
0,0
230,5
185,4
183,7
733,2
0,7
644,6
0,2
0,0
0,3%
-99,4%
-97,1%
244,2
260,7
646,5
0,0
0,0
0,1
15,4
-53,0%
34,0
35,4
19,7
0,1
15,4
0,1
7 281,9
7 182,0
295,9
358,6
21,2%
28,6
42,5
31,3
-24,4%
123,8
87,3
86,4%
-20,6%
11,2
79,1
10,9
63,5
8,2
59,1
-28,0%
-11,8%
870,5
583,3
-33,0%
959,2
732,0
583,2
-33,0%
577,1
744,8
477,6
-35,9%
577.1
617,8
477,6
-35,9%
53,4
128,8
1 741,5
0,7
125,0
1 624,2
1,5
104,2
1 665,8
113,6%
-16,6%
53,2
128,8
0,7
113,5
1,4
104,2
105,4%
-16,6%
294,4
377,9
388,5
2,8%
146,3
200,2
196,5
1,3%
1037,8
0,1
59,6
99,1
0,3
29,4
7 170,4
6 890,0
280,4
211,8
142,5
69,3
106,2
100,9
759,4
917,3
11,7
32,8
0,1
12,9
6 900,3
381,6
229,5
66,4
109,9
102,4
-0,9%
1188,2
76,5
2013年/
2012年
-99,0%
234,7
0,0
129,0
-14,1%
169.2
0,0
0,0
163,4
0,0
0,0
164,0
0,0
0,0
1,3%
0,0
34,5
-22,2%
-17,7%
34,0
0,2
-1,4%
0,0
-100,0%
6 791,1
390,9
-1,6%
2,4%
2,3%
95,6
143,0
-10,0%
0,0
234,8
76,5
197,4
-6,6%
2,6%
34,3
0,0
0,0
0,0
0,0
17,4
13,1
789,1
225,1
0,0
61,7
19,7
227,4
0,0
63,4
1,9%
3,4%
15,4
-22,1%
19,7
0,1
15,4
0,1
-22,2%
-14,2%
0,0
0,0
0,0
0,0
0,0
0,0
31,6
16,2
731,1
0,0
0,0
0,0
0,0
23,1
11,1
726,0
-23,0%
-32,2%
1,0%
65,6
43,8
42,0
-4,1%
64,8
43,4
41,5
-4,2%
自然条件不利地域補償 (ICHN およびその他)
農業環境措置 (農業環境草地手当、経営地域
契約、持続可能農業契約)-CTE/CAD)
582,7
569,8
570,5
0,1%
260,2
254,6
255,1
0,2%
528,4
385,6
423,2
9,8%
178,1
132,1
136,1
12,2%
農業空間の整備と保護(Axe 3, leader…)
農産物加工販売 (POA)
馬事
182,4
40,1
47,9
162,7
40,2
44,2
243,3
160,0
40,8
40,8
232,6
-1,7%
1,5%
-7,7%
-4,4%
84,4
7,4
47,9
188,9
46,4
10,2
44,3
174,4
46,3
9,7
40,8
216,4
-12,0%
6,4%
-7,7%
13,8%
-9,6%
347,4
37,2
345,7
311,7
-9,0%
136,6
209,2
107,1
204,7
-19,8%
-2,0%
農業活動廃止 (早期引退‐離農就業終身年金)
植物・動物衛生安全
規格外屠体公的サービスおよび 動物骨粉除去
森林
森林・木材産業の経済振興
公有林管理と森林保護
林業の経済発展と持続可能な管理
森林リスク予防・保護
教育・研究
技術教育
実習生、継続教育、その他
高等教育
研究、開発、技術移転
一般サービス
人員
その他運営費用
230,8
80,2
150,6
89,6
153,7
78,2
154,4
-12,7%
0,4%
167,8
129,5
39,0
2 395,7
213,3
155,8
210,5
123,2
-1,3%
-20,9%
2 409,7
2 439,8
1,2%
34,0
2378,9
2 383,8
2 425,7
1,4%
32,2
261,8
33,0
265,5
29,4
270,0
-10,7%
15,5
16,8
15,2
-7,5%
1 323,3
1 069,0
254,2
0,4%
0,1%
1 314,9
1 066,8
0,4%
0,1%
379,1
42,8
1 271,8
829,9
1 317,3
1 071,5
245,7
369,1
1 291,1
820,2
1 318,0
1 068,3
249,7
333,8
1 295,2
845,3
合計
15 997,6 15 895,4 15 470,1
出所)Concours publics a l'Agriculture 2011,2012,2013, MAAAF/SAFLS/SDABS.
― VI-10 ―
0,3%
1,7%
3,0%
1,8%
-2,7%
80,2
108,7
167,8
108,5
1271,7
261,8
829,9
1310,7
1069,4
241,3
6203,3
86,8
87,7
1 269,0
266,5
831,5
1 244,3
1 072,5
171,8
6 121,5
78,2
138,2
1 295,2
270,0
845,3
248,2
6 051,5
-12,7%
37,5%
0,3%
1,7%
3,0%
1,6%
-4,6%
第Ⅵ部
英独仏各国の国家予算に占める農業予算の割合
EU
2011年
2012年
2013年
9739,4
8745,2
371,2
9 502,0
8 544,6
275,2
9 374,0
8 418,1
142,2
44,4
154,0
840.4
570,3
0,7
0,1
59,6
209,7
64,8
32,5
127,7
664,5
482,7
0,2
0,0
11,7
169,9
12,9
9,8
54,7
653,9
482,5
0,0
0,0
0,1
171,3
0,0
88,6
84,2
82,2
32,8
43,1
34,6
0,3
0,0
35,2
29,4
7170,4
6890,0
280,4
0,0
0,0
0,0
12,9
7 291,0
6 917,4
373,6
0,0
0,0
0,0
0,0
7 182,0
6 791,1
390,9
58,1
27,2
87,8
0,2
61,1
49,8
85,5
0,0
115,6
28,1
84,6
0,0
183,2
125,1
165,6
104,5
327,3
211,7
2013年/
2012年
-1,3%
-1,5%
-16,5%
-45,0%
38,4%
-69,0%
55,1%
-5,8%
-0,1%
-99,4%
-97,1%
-99,0%
-14,1%
-100,0%
-100,0%
-100,0%
-100,0%
-1,4%
-1,6%
2,4%
28,6%
6,1%
110,2%
-34,3%
-1,7%
0,0
0,0
0,0
0.2
0,0
952,3
0,0
0,0
904,3
0,0
0,0
939,7
3,8%
148,1
181,6
192,0
4,4%
0,8
0,5
0,5
7,6%
322,5
316,0
315,4
0,0%
350.2
285,6
287,1
8,7%
98,0
32,7
0,0
41,9
0,0
41,9
31,7
5,8
0,0
93,0
27,7
0,0
53,1
0,0
53,1
24,5
113,6
31,1
0,0
16,2
0,0
16,2
22,0
3,2%
0,0%
-69,6%
21,4
16,2
-27,2%
13,9
14,2
-14,0%
21,0
5,1
16,7
0,0
16,7
0,0
0,0
6,5
2,1
4,4
9794,3
3,1
0,0
13,9
0,0
0,0
7,6
2,6
5,1
9 548,0
5,9
0,0
14,2
0,0
0,0
8,3
2,3
6,1
9 418,6
-69,6%
-17,2%
33,0%
-14,0%
1,4%
-21,5%
13,9%
-1,4%
― VI-11 ―
3
フランス国家財政における農業関連予算の位置
3-3 農業予算と国家予算
国家予算に占める農業予算の割合を明らかにするため、第3-3表では、予算の支出(執行
結果)のデータを基づき検証した。
国の歳出実績は会計検査院の報告書(表VI-6)
、農業財政支出は農業省の報告書(表VI-7)
を使った。
数値の操作上問題としたのは、社会保障関連支出(特に年金)であり、農業省予算の中
にはそれは含まれていない。したがって、会計検査院「国の歳出」からも、特別割当勘定
の「年金」を控除して考えるのが適当だと思われる。軍人恩給を軍事支出に含めるか否か
といった問題と共通することがあるが、社会政策と市場・環境政策とを区別する近年の政
策志向からすれば、農業者向け社会保障支出を狭義の「農業予算」から除くのが適当かも
しれない。
フランスの農業分野の社会保障制度の運用は、ほぼ農業共済制度(Mutualite sociale
agricole)がカバーしているが、この機関の運用には国家予算の補助金がつき、この制度の
運用資金の27%を占めている。この補助金額は、表VI-8の(f)特別勘定・年金の額に近
い水準である。
以上を前提にしてみると、フランス国家財政の内、農業向けは1.9%、これに対し3%程度
がCAP支出として加わり、合計すれば、公的支出のほぼ5%が農業向けであるという結論と
なる。狭義の農業財政に限ればCAPの存在がいかに大きいかが判然とする。
― VI-12 ―
第Ⅵ部
英独仏各国の国家予算に占める農業予算の割合
表 VI-8
農業財政支出に関する試算
単位:100 万ユーロ
2011 年
2012 年
2013 年
319,499.20
322,833.40
322,528.90
15,997.60
15,895.40
15,470.10
6,203.30
6,121.50
6,051.50
9,794.30
9,548.00
9,418.60
(c)農業向け支出/国の歳出(b/a)
5.00%
4.90%
4.80%
仏農業支出/国の歳出(b1/a)
1.90%
1.90%
1.90%
CAP 受取/国の歳出(b2/a)
3.10%
3.00%
2.90%
61.20%
60.10%
60.90%
8,682
8,085.5
7,811.3
310,817.20
314,747.90
314,717.50
5.10%
5.10%
4.90%
(a)=会計検査院「国の歳出」
(b)=農業向け支出(林業等含む)
(b1)=
(b2)
=
仏農業省「公的支出」
CAP 受取
(d) CAP 受取/農業向け支出(b2/b
(e)特別勘定・年金
参考
(f)国の歳出―特別勘定・年金
(g)=(b/f)
出所)会計検査院、Le Budget de l’Etat en 2013,p256, 農業省、Les concours publics a
l’agriculture en 2012,2013.
a :Cour des comptes, LE BUDGET DE L’ETAT ,RESULTATS ET GESTION, 各年次
b および d:MAAF,
Commission des Comptes de l’agriculture de la Nation,Les
concours publics a l’agriculture 2012。AGRESTE, Les dossiers N°19,p92,,janv.2014.
― VI-13 ―
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