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地球温暖化対策
地球温暖化対策 ANAグループは航空燃料の消費により、2007 年度には 835 万トンの CO2 を排出しました。新エコロジープランで 、航空 業界で初めて CO2 総排出量枠(国内線)を設定しましたが、新鋭機への更新や 、運用面での燃料消費削減策などを通じて、 目標達成に向け引き続き努力していきます。 航空機の燃費効率の向上を目指して Web 版追加データ 機種別燃料消費率 ■ CO2 排出量の推移 2006 年度において日本全体で排出された温室効果ガスの 【国際線】 ( g /座席キロ) 95%を占めるCO2を部門別に見ると、運輸部門は全産業部門 B737-700INT(118席) の 19.9%を占め、そのうち国内航空輸送の CO2 の排出割合は 運輸部門の 4.4%を占めています。 24.5 B777-300ER(247席) 37.2 B777-200ER(234席) 以下の図は ANAグループの提供座席キロ当たりの CO2 排出 B767-300ER(216席) 量と燃料の推移グラフです。1990 年度以降、航空需要の増 B747-400(339席) 大につれて提供座席数は大きく増加しましたが、2007 年度の B747LR(326席) 32.3 26.9 33.3 38.5 0 提供座席キロ当たりの CO2 排出量は 90.4g-CO2と、対 1990 10 20 30 40 ■は退役済の航空機 年度比で約 11.4% 削減しています。 国際線(9,260 km 、満席)で計算した場合(但し、B737-700INT は 5,556 km ) ANAグループ提供座席・距離(座席キロ)当たりCO2 排出量の推移 (百万 kl ) 4.0 原単位当たりCO2 排出量(右軸)( g-CO2 /座席キロ) ■ 燃料使用量(左軸) 【国内線】 105 ( g /座席キロ) B737-800(167席) 3.0 100 22.3 B737-700(136席) 25.0 B737-500(126席) 2.0 95 2007 年度目標値 90 0 85 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 24.7 DHC8-300(56席) 89.8g-CO2 1.0 27.2 DHC8-400(74席) 年度 22.0 B777-300(525席) 19.3 B777-200(382席) 23.3 B747-400D(569席) 23.0 22.3 A320(166席) 26.3 F-50(50席) B767-300(288席) 22.5 21.1 A321(195席) ■ 省燃費型の航空機導入の歴史 26.9 B767-200(234席) B747SR(536席) CO2 の発生を減少させること、すなわち燃料消費を減らす最 L1011(341席) も有効な方法は、①最新のエンジンテクノロジ−を駆使した効 B737-200(126席) 26.2 31.6 35.3 B727(178席) 率の良いエンジンを採用し、②翼型などの改善により空気抵抗 を減少させ、③複合材料などにより重量軽減された、燃料効率 の良い新鋭機を導入することです。ANAグループは早くから 37.2 YS11(64席) 36.2 0 10 20 30 40 ■は退役済の航空機 国内線(926 km 、満席)で計算した場合 この方法に取り組み、効果を上げています。 CSR Report 2008 51 東京~札幌間の 1 座席当たりの CO2 排出量比較(2007 年度データ) ボーイング 787 型機の導入 (kg) ボーイング787-8型機 2009年∼ ボーイング767-300型機の 約20%減 ボーイング777-300型機 1997年∼ 58.0 ボーイング747-400型機 1992年∼ 63.2 ボーイング767-300型機 1987年∼ 67.6 ボーイング747-100SR型機 2006年退役 72.8 ロッキードL1011トライスター型機 1995年退役 94.0 ANA は、ボーイング 787 型機のローンチカスタマー(初めて の発注会社) として設計・開発段階から参画し、世界に先駆け て 50 機を発注しています。羽田空港の再拡張を視野においた ボーイング727-200型機 1990年退役 ボーイング 767 型機の後継機種として、2009 年度以降に就航 する予定です。 109.0 ボーイング 787 型機(イメージ) n 保有機一覧 ボーイング747- 400(19 機) ボーイング737-700(15機) n 約 20% の燃費向上 機体は、炭素繊維複合材料などの先進素材を多用すること で軽量化を実現し、ほぼ同じサイズのボーイング 767-300 型 ボーイング777- 300(19 機) ボーイング737-700ER(2機) 機と比較して、燃費効率が約 20% 向上しています。 n 環境負荷の大幅な低減 ボーイング777- 200(23機) ボーイング737-500(25機) エンジンは、ロールスロイス社の「トレント1000」を採用して います。ボーイング 767-300 型機と比較して 、騒音を離陸時 ボーイング767- 300(56機) ボンバルディアDHC-8-400(14機) で約 40% 削減、排出ガスでもCO2を約 20% 、NOxを約 15% 削減できます。空力特性は、機体空気抵抗の最小化を追求し ています。 ボーイング767-300F(4機)*貨物専用機 ボンバルディアDHC-8-300(5機) n 効率的で経済性の高い整備体制 ANA の要望により、複合材に使用可能な耐久性の高いペイ エアバスA320 - 200(32機) フォッカー50(3機) ントが開発され 、再塗装回数の削減を実現しました。また 、当 社の短距離多頻度運航に適した推力制御方式も開発され 、エ ンジン部品の劣化が抑制されるため、整備コストの低減も期待 新世代型航空機 合計218機 (2008年3月31日現在) * リース賃借機を含みます。 * 上記のほか、 ボーイング737-400型機1機を賃貸中、 合計数に含んでいます。 52 CSR Report 2008 ボーイング 737-800 6 月1日より就 航 されます。 次世代リージョナルジェット*1MRJ*2 の導入を決定 MRJ の主な特徴 機体素材 三菱重工業株式会社が開発を決定した次世代のリージョナ ルジェット機「 MRJ 」の導入を決定しました *3。 機体全体のおよそ 3 割の部品 を炭素繊維複合材で構成し軽 量化を実現 機体形状 主 翼やフラップなどの形 状を 研 究し、風 切り音を減らすな ど、低騒音化を実現 ANA はローンチカスタマーとして合計 25 機(うち 10 機オプ ション) を発注しました。今後の MRJ 開発計画にも積極的に参 画し、お客様のニーズを新しい航空機に反映させていきます。 同機はリージョナル機として初めて主翼・尾翼に複合材を本 格採用しています。最新技術を駆使した新型エンジンによっ て環境負荷が著しく軽減されます。また 、最先端の空力設計 により、燃料消費量を現行機材に比べ約 40% 改善します。さ らに、MRJ 導入による増収やコスト削減により、年間約 50 億 円の収支改善の効果を見込んでいます。 * 1リージョナルは「地域」の意味で、主に国内線など近距離を結ぶ小型ジェット 旅客機のことです。 (Mitsubishi Regional Jet)の略。 *2三菱リージョナルジェット YS-11型機以来40年ぶりに日本が独自開発する旅客機です。 *32 008 年4月4日、新会社「三菱航空機株式会社」が事業会社として発足し ています。 コックピット 4 つの大型液晶ディスプレイが パイロットの飛行状況認識を容 易にし、安全性を向上 エンジン 同サイズ他社小型ジェット 機よりも3 割の低燃費と低 騒音を実現 (イメージ) スリムシート 快適な座り心地と広々とし た足元まわりを確保する新 構造のシートを採用 国内航空会社として初めて、 ボーイング767-300ER 型機に ウイングレットを装着 ウイングレットは主翼の先端に装着する長さ3.4m 、 幅 4.5m の APB( Aviation Partners Boeing )社 製 の 部 品 で 、翼長(片翼)が約 1.65m 延長されます。通常、主 翼の先端では 、翼の下の部分にかかっている圧力が上 へと抜けようとする際に空気の渦が発生します。ウイ ングレットの装着により、この渦の発生による翼端抗力 が抑制され 、長距離運航するボーイング 767-300ER 型機では 、約 5% の燃費向上=1 機当たりCO2 排出量 を年間約 2,100トン削減できます。 ボーイング 767-300ER 型機(イメージ) ANA では 2008 年度導入予定の 2 機を含めた計 16 機にウイ ングレットを装着する計画になっており、2009 年度以降にも順 次改修を行う予定です。 主翼先端での空気の渦発生イメージ CSR Report 2008 53 運用面での環境負荷低減努力 飛行計画を立てたり、燃料を効率的に使用できる空港ごとの 降下・進入のポイントを運航乗務員に周知するなど、種々の工 航空機の消費燃料の節減は、環境負荷の低減に直結する最 重要項目です。ANAグループは、早くから燃料節減に積極的 夫、運航方法により燃料削減を進めるプロジェクトで 、毎月、 削減結果をモニターしています。 に取り組んできました。2007 年度の運航面や地上でのさまざ まな燃料削減努力を含む、全社的な燃料節減効果の合計は、 n 地上電源装置( GPU=Ground Power Unit )の優先使用 前年度より5,460 キロリットル増 *となりました。この量は、東 ANAグループは 1990 年以来、APU* の使用削減=GPU の 京~大阪間の約 360 往復(ボーイング 777-200 型機)分の燃 積極的な利用に取り組んできました。GPUを優先使用するこ 料に相当します。 とによる2007 年度の燃料削減量は、GPUを使用しない場合 * シミュレーターによる燃料節減効果は含みません。 と比較して 40,600 キロリットルと算出されました。この量は、 東京~大阪間の約 2,700 往復(ボーイング 777-200 型機)分 n EFP( Efficient Flight Program )推進プロジェクト ANA は、2003 年 度 よりEFP( Efficient Flight Program ) 推進プロジェクトを実施しています。これは、気象条件や航空 管制を勘案した上で、消費燃料の少ない高度・速度を選択した に相当します。 *A PUとは、航空機に電気とエンジンスタートや空調のための高圧ガスを供給 する、航空機搭載の小型ガスタービン補助動力装置。航空機燃料で作動する ため、GPUと比べてエネルギー効率が悪い。 n RNAV(広域航法)の運用 ANAグループは、2002 年 6 月からRNAV(広域航法)の正 式運用を実施しています。RNAV は、航空保安無線施設や衛 星・自蔵航法機器を利用して自機の位置を算出し、任意の経路 を飛行する航法です。RNAV 経路は従来に比べて距離や時間 が短縮され 、消費燃料やエンジン排気ガスが減少するととも に、深夜帯などにおける空港周辺の騒音軽減にも寄与してい ます。ANAグループは、国内外で RNAV 運用の一層の拡大に 努めています。 機内ブリーフィングの様子 RNAV 経路と従来経路のイメージ 出 発経 路 航空路 到着 経路 進入 VOR/DME 滑走路 滑走路 VOR/DME VOR/DME VOR/DME (旧)経路 RNAV(新)経路 54 CSR Report 2008 n 着陸後に一部のエンジンを停止した地上走行 ANAグループは 1994 年以降、着陸後に一部のエンジンを 停止して地上走行をしています。 実際のエンジン停止については、空港、気象条件、走行路 用した場合と比較して 、燃料で 29 万キロリットルの削減効果 がありました。この量は 、ANAグループの 2007 年度全運航 で 使 用した 燃 料 の 8.7%=東 京~大 阪 間 の 約 19,000 往 復 (ボーイング 777-200 型機)分に相当します。 状況、航空機の状況、管制塔からの指示などを総合的に判断 して実施しています。 n コンプレッサー部の水洗によるエンジンの性能回復 エンジンは使用するにつれて、そのコンプレッサー(圧縮器) 部分に微小なほこりが付着し、エンジンの燃費を悪くします。 ANAグループでは燃費改善のため、圧縮器部分のほこりを定 期的に水洗除去して性能回復させ、使用燃料を削減する運用 を2003 年度から実施しています。水洗後の性能回復結果から、 2007 年度の燃料削減量は、水洗しなかった場合と比較して 24,000 キロリットルと算出されました。この量は、東京~大阪 訓練センターの航空機シミュレーター 間の約1,600 往復(ボーイング777-200 型機)分に相当します。 n 軽量型コンテナの導入 ANAグループでは 、2006 年 10 月より国際線用軽量型コン テナを導入し、2008 年 5 月現在で 1,030 台を保 有していま す。このコンテナは、底盤および骨格を除く外壁部分をケブ ラー Ⓡ * 素材、開閉部分をキャンバス素材に変更したもので 、 従来のコンテナより28kg の軽量化を実現しました。 欧米路線で使用しているボーイング 777-300 型機の場合、 夜間におけるエンジンの水洗 1 機当たり最大で 1,232kg の軽量化が可能です。成田~サン フランシスコ線で試算すると、片道で約 495リットルの燃料= CO2 換算で 1,220kg の排出削減となります。 n シミュレ-タ-による燃料削減効果 * ケブラーⓇは米国デュポン社の登録商標です。 ANAグループは、燃料節減( CO2 排出削減)、騒音問題、訓 練空域狭隘などの改善のため、運航乗員訓練・審査の大部分 をシミュレーターで実施しています。 2007 年度の乗員訓練・審査ならびに整備士養成・審査のた めのシミュレ−タ−の総使用時間は 53,000 時間で 、実機を使 CSR Report 2008 55 n 機内搭載品軽量化の取り組み ANAグループでは、2003 年から機内搭載品を小型化・軽量 化し、搭載数・品目の見直しや、新規搭載品の開発を継続的に 実施しています。 特に、国際線のファーストクラス、ビジネスクラスにおいては、 2005 年から特殊軽量食器を導入しています。これは、特殊な 原料を配合し、素地の中に微細な気孔を多数形成させた陶土を 使用したもので、軽いだけでなく保温性にも優れています。導 入前のものと比べてお皿一枚当たり最大約 30%(▲ 170g )の 軽量化を図りました。国際線仕様ボーイング747-400 型機で は、一機当たり約 40㎏もの減量となっています。 また、2007 年 9 月に就航したムンバイ線のビジネスクラスで は、いろいろなジャンルの機内食に対応できる軽量食器を新規 開発して搭載しています。一般素材のお皿と比べて一枚当た り最大約 15%(▲ 70g )の軽量化を実現しています。 ムンバイ線ビジネスクラスの軽量化食器 n 航空機以外の地上エネルギーの削減 ANAグループのエネルギー消費量の 98% は航空機による もので す。地 上 エネル ギーは 全 体 の 2% に 過ぎませ んが 、 2007 年度実績で原油換算で約 54,000 キロリットルという大き な消費量となっており、2004 年度からほぼ横ばいの状況です。 ANAグループエコロジープラン 2008−2011 の中で掲げ た 、全事業所総計で年 1%(原単位当たり)のエネルギー消費 削減を達成するため 、2007 年度に今後 10 年にわたる省エネ 設備工事計画を策定し、2008 年度より順次実施しています。 56 CSR Report 2008