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BRIEFINGS Vol.374, No.08

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BRIEFINGS Vol.374, No.08
MARCH 2016
BRIEFINGS
Vol. 374
No. 8
from The New England Journal of Medicine
S u m m a r i e s a n d p e r s p e c t i v e s f r o m t h e FE B RUAR Y 2 0 1 6 Iss u e s
P E R S P E C T I V E S
T O P I C S
・外科研修における勤務時間の柔軟性
EDITORIAL
外科レジデントの勤務時間
に関する規則
・冠動脈手術前のアスピリン投与の継続
̶ 新たなエビデンスを考察する
・卵巣癌に対するパクリタキセルの週 1 回投与と 3 週ごと投与との比較
・早産児における酸素飽和度の目標値
監 修
北村 聖
東京大学大学院医学系研究科
医学教育国際研究センター教授
大西弘高
東京大学大学院医学系研究科
医学教育国際研究センター講師
提 供
株式会社
南江堂 洋書部
Copyright © 2016 -2016, Massachusetts Medical Society. All rights reserved.
この情報は著作物です.無断の内容の転載,転用,公開等一切を禁じます.
BRIEFINGS from The New England Journal of Medicine
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外科レジデントの勤務時間に関する規則 — 新たなエビデンスを考察する
外科研修はいつの時代もレジデントに対して無情である.私がレジデントであった 20 年以上前には,週 100 時間
勤務と一晩おきの当直は当たり前であった.レジデントの院外の生活はまったく優先されなかった.レジデント研修
期間は患者に対してもいっそう無情なものであるかもしれない.多くの研究で,レジデントの睡眠不足と神経行動検
査の成績不良との関連と,さらに驚くべきことには,患者ケアにおける注意力欠如の割合がより高いこととの関連が
報告されている 1, 2.
レジデントの健康と患者の安全性の両方に対する懸念に対応すべく,米国卒後医学教育認定評議会(ACGME)は
2003 年に,いくつかの変更のうち,レジデントの勤務時間を週 80 時間に制限する勤務時間改革を実施した.2011 年
の改定で,個々の勤務シフト時間に新たな制限が設けられ(24 時間+引継ぎのための 4 時間),24 時間シフトと次の
24 時間シフトのあいだに最低限の休息時間(14 時間)をとることが保証された.業務の遂行が公共の安全に影響を及
ぼすような他の職業(例:航空機のパイロット)で設定されている基準ほど厳格ではないが,それにもかかわらずこの
ACGME 規則には医学界から多くの批判が寄せられた.とくに外科医は,新しい勤務時間規則により引継ぎが増える
ため ̶ レジデントは,担当する最重症の患者をその症例になじみのない別の医師にサインアウトする ̶ 逆説的に医
療過誤が増加するのではないかと懸念した.言い換えれば,レジデントの疲労減少という安全上の利益は,ケアの連
続性が途切れることによる害によって相殺されることになる.
メディケア保険請求データに基づく過去の全国的研究 3 の結果を拡大しているため,本誌 2 月 25 日号[N Engl J
Med 2016;374:713-27]
に発表された,Bilimoria らの非常に意欲的で科学的に頑健な研究は,こうした懸念を和らげる
のに一役買うはずである 4.本研究では,無作為割付けにより,59 の一般外科研修プログラムに,最長シフト時間,
および 24 時間シフトと次の 24 時間シフトのあいだにとる最低限の休息時間に関する ACGME 規則を遵守すること
を求めた.別の 59 のプログラムには「柔軟性」を認め,上記規則を遵守しなくともよいこととした.両群とも 1 週間
あたりの総勤務時間については ACGME の要件を遵守した.勤務時間規則の遵守を求められなかったレジデントの
ほうが,ケアの連続性や引継ぎに関する不満を報告する割合が低かった.しかし,米国外科学会の手術の質改善プロ
グラムによるリスク補正後の臨床転帰データに基づくと,1 年後では,死亡,全合併症,特定の合併症の発生率は両
群ともほぼ同じであった.
転帰は,最長シフト時間とシフト間の休息時間に関する ACGME 要件をプログラムが満たしたかどうかに左右さ
れなかったが,これは当然である.研修病院の外科患者のうち,レジデントの引継ぎによる影響を受ける可能性がもっ
とも高い患者 ̶ 急性または悪化しつつある臨床状態を有する患者 ̶ の占める割合はごくわずかである.さらに重要
なことに,研修病院における外科レジデントへの依存は,以前よりもずっと少なくなっている.以前の外科レジデン
トはかなり自律性をもっていた.私のレジデント時代には,外科レジデントは,とくに夜間や週末に,独立して手術
を行うことが多かった.一方,現在は,ほぼ例外なく指導医の立ち会いのもとで手術する.最重症の外科患者を収容
する集中治療室(ICU)はますます「閉鎖的」になり,集中治療専門医が配置される.術後ケアは,レジデントだけでな
く医師に準ずる医療職も含む多職種チームによって提供される.
外科研修医の勤務時間に関する要件の柔軟性(FIRST)試験も,米国外科専門医機構が毎年収集している調査データ
を用いて,教育の質と健康に関するレジデントの認識に対する ACGME 勤務時間制限の影響を評価している.2 つの
群の研修病院のレジデントは,研修の質に満足する割合が同程度に高かった.ACGME 勤務時間規則の遵守を求めら
れないプログラムを受けたレジデントのほうが,休息時間に満足していない割合が高かったが,全体的なレジデント
の健康と意欲において,群間で有意差はみられなかった.
1 ♦ March 2016 Copyright © 2016 -2016, Massachusetts Medical Society. All rights reserved.
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FIRST 試験の結果は,レジデントの勤務時間に関する ACGME の方針にとってどのような意味をもつのだろうか?
多くの外科医と同様に,著者らは,外科研修プログラムは勤務時間規則をもっと柔軟に適用すべきであると結論付け
ている.この解釈により,ACGME は暗黙のうちに立証責任を課されている.以上のように,レジデントのシフト時
間およびシフト間の休息時間に対する制限をなくすことにより患者に害を及ぼすとの根拠が FIRST 試験では示され
なかったことから,プログラムには自身の選択によってレジデントを研修する自主性をもっと盛り込むべきである.
私はまた別の結論に達している.FIRST 試験は,引継ぎが増加し,ケアの連続性が途切れることにより患者が危害
を被るのではないかという懸念を,事実上覆すものである.外科の指導者たちは,ACGME 勤務時間規則を撤回する
のではなく,過重労働のレジデントに頼らなくてもすむ,安全で弾力性のある医療システムの開発に重点的に取り組
むべきである.また,2000 年以降学習者の期待が変化している点も認識すべきである.現在のレジデントや医学生
の多くはおそらく,週 80 時間勤務(あるいは 72 時間勤務であっても)および 24 時間シフトを十分に長いと感じるで
あろう.このことを公に認める外科レジデントはほとんどいないであろうが,多くのレジデントはきっと「この症例
は君なしで対処できる.家に帰って家族に会い,リフレッシュしてまた明日きてくれ」
という言葉を聞きたがっている.
John D. Birkmeyer, M.D.
Disclosure forms provided by the author are available with the full text of this article at NEJM.org.
From the Dartmouth–Hitchcock Medical Center and the Dartmouth Institute for Health Policy and Clinical Practice — both in Lebanon, NH.
This article was published on February 2, 2016, at NEJM.org.
1. Veasey S, Rosen R, Barzansky B, Rosen I, Owens J. Sleep loss and fatigue in residency training: a reappraisal. JAMA 2002;288:1116-24.
2. Lockley SW, Cronin JW, Evans EE, et al. Effect of reducing interns’ weekly work hours on sleep and attentional failures.
N Engl J Med 2004;351:1829-37.
3. Volpp KG, Rosen AK, Rosenbaum PR, et al. Mortality among hospitalized Medicare beneficiaries in the first 2 years following ACGME
resident duty hour reform. JAMA 2007;298:975-83.
4. Bilimoria KY, Chung JW, Hedges LV, et al. National cluster-randomized trial of duty-hour flexibility in surgical training.
N Engl J Med 2016;374:713-27.
DOI: 10.1056/NEJMe1516572
外科研修における勤務時間の柔軟性
外科レジデントの勤務時間に関して,米国卒後医学教育認定評議会(ACGME)
による方針と,より柔軟な方針とを比較した無作為化試験において,柔軟な
方針は,患者転帰について非劣性であり,健康全般と教育の質全般に関する
レジデントの満足度に有意差をもたらさなかった.
Bilimoria KY, Chung JW, Hedges LV, et al.
National Cluster-Randomized Trial of
Duty-Hour Flexibility in Surgical
Training. N Engl J Med; February 25.
Copyright © 2016- 2016, Massachusetts Medical Society. All rights reserved.
この情報は著作物です.無断の内容の転載,転用,公開等一切を禁じます.
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BRIEFINGS from The New England Journal of Medicine
冠動脈手術前のアスピリン投与の継続
冠動脈手術を受ける患者 2,100 例を対象とした無作為化試験において,アス
ピリン投与を継続しても,プラセボ投与と比較して,術後 30 日以内の出血
のリスクが上昇することも,術後 30 日以内の死亡および血栓症のリスクが
低下することもなかった.
Myles PS, Smith JA, Forbes A, et al.
Stopping vs. Continuing Aspirin before
Coronary Artery Surgery. N Engl J Med;
February 25.
卵巣癌に対するパクリタキセルの週 1 回投与と
3 週ごと投与との比較
進行卵巣癌の女性を対象に,化学療法の頻回投与レジメン(薬物の送達頻度
が増加する)の有効性が検討された.全例にカルボプラチンを投与し,半数
にはパクリタキセルを週 1 回,残り半数には 3 週ごとに投与した.無増悪生
存期間に群間で差は認められなかった.
Chan JK, Brady MF, Penson RT, et al.
Weekly vs. Every-3-Week Paclitaxel and
Carboplatin for Ovarian Cancer. N Engl J
Med; February 25.
早産児における酸素飽和度の目標値
早産児を対象とした 2 つの試験において,酸素飽和度の目標値を 85∼89%に
した場合,91∼95%にした場合と比較して,2 歳の時点での死亡または障害の
発生率が有意差はないものの高かったが,2 試験を合わせた事後解析では,
死亡または障害の複合リスクと,死亡のみのリスクが有意に高かった.
3 ♦ March 2016 The BOOST-II Australia and United
Kingdom Collaborative Groups. Outcomes
of Two Trials of Oxygen-Saturation
Targets in Preterm Infants. N Engl J Med;
February 25.
Copyright © 2016 -2016, Massachusetts Medical Society. All rights reserved.
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