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なぜ、検査をする必要があるの? 形態診断(CT、MRI)

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なぜ、検査をする必要があるの? 形態診断(CT、MRI)
平成 27 年 1 月 6 日発行
第3号
近江八幡市福祉子ども部福祉総合相談課
もの忘れ ニュースレター
(近江八幡市地域包括支援センター)
〒523‐0082
近江八幡市土田町 1313 番地
TEL 31‐3737
E-mail
今回のテーマ『 認知症の画像検査
/
FAX
31-3738
010840city.omihachiman.lg.jp
~どんな検査、どこを調べるの~ 』
近江八幡市立総合医療センター 放射線科部長 高田 政彦
氏
我が国は、これから超高齢化社会を迎えようとしております。全国で約 600 万人とも推定される認知症
患者はさらに増加します。従って、認知症に対する正しい理解と社会全体の対応が必要となってきます。
なぜ、検査をする必要があるの?
(1)認知症には、「治療可能なもの」、「予防可能なもの」、「治療困難なもの」があり、それらを鑑別
する必要があります。「治療や予防可能なもの」については、早期発見の対策が必要です。
【治療可能なものの代表的な疾患】慢性硬膜下血腫…頭蓋骨と脳との間に、血の塊が溜まるもので、除去
することにより、症状は良好に改善します。
【認知症の原因】変性、感染、脳血管性、代謝性、中毒(例.アルコールによるもの)、腫瘍性、脳挫傷
などの外傷性のものなど、多数のものがあります。
(2)認知症の病型によって治療や介助の方法が異なるため、鑑別診断が重要です。
認知症には、「アルツハイマー型」、「レビー小体型」、「血管性」、「前頭葉側頭葉型」、
「アルツハイマー型と血管性が合わさった混合型」の 5 つの病型があります。
形態診断(CT、MRI)
(1)腫瘍性や外傷性のものを除外する為に、まず形態診断が行われます。
形態的な画像診断には、CT、MRI があり、「脳の萎縮」を評価します。MRI の方が、解剖学的な構造
が明瞭である点や、多方向の撮像ができるなど長所が多く、第一選択となります。しかし、静止困難な
場合は、撮像時間の短い CT を選択する場合があります。
MRI
大きな磁石の中に入る検査で、所要時間は 20 分程度です。安静にしている時間が CT より長いで
すが、被ばくの心配はありません。
CT
被ばくがありますが、健康に害を及ぼすような放射線の量ではありません。
(2)除外診断を行った後、「海馬の萎縮」の有無を判定します。
海馬は記憶を司る部位と考えられており、認知症の多くを占める「アルツハイマー型認知症」では、
海馬の萎縮が特徴です。加齢に伴い、脳全体にある程度の萎縮が生じますが、海馬の萎縮が脳全体の萎
縮より目立っている時は、アルツハイマー型の可能性が高くなります。
頻度は少ないですが、「前頭葉側頭葉型認知症」では、その病名が示す通り、前頭葉、側頭葉の萎縮
が特徴的です。多数の小さな脳梗塞が見られた場合には、「血管性認知症」が疑われます。
このように、MRI、 CT で認知症の病型をある程度判定することができます。しかし、残念ながら形
態診断で認知症の型が判定できるのは、かなり進行した状態になってからです。
アルツハイマー型認知症では早い時期から治療を開始した方が、進行をゆるやかにできることがわか
っており、認知症では、早期に病型を判定することが重要です。
←図 1 アルツハイマー型認
知症の CT 画像、両側の海
馬(矢印)が著明に萎縮
している
図 2 アルツハイマー型認→
知症の MRI 画像、CT と同
様に海馬(矢印)が著明に
萎縮している
認知症の早期診断(脳血流シンチグラフィ)
認知症の早期診断には、脳に集まる薬品を注射して脳の血流を見る「脳血流シンチグラフィ」という検
査があります。脳に集まる薬剤に微量の放射線を出す物質がくっついており、その放射線を検出すること
により、脳血流の画像を作成します。薬品の静注の後は、ベッド上で安静にして頂くだけで、30 分程度
で検査は終了します。微量の放射線が体内に入りますが、健康に及ぼす影響はほとんどありません。
この検査は、MRI や CT で明らかな異常が出る前の段階に
認知症の病型を判定することができます。認知症の病型により、
脳のどの部位の血流が低下するかがわかっています。
「アルツハイマー型」では、後部帯状回と頭頂葉から側頭葉に
広がる血流低下が特徴的です。
「レビー小体型」では、後頭葉の血流低下が特徴的です。
このように認知症の病型の判定を行ってから、どのような
治療薬を選択するか、介入方法の判断を行います。
図4
図 3 脳血流検査の様子、頭の回りを撮像用のカメラが回転します。
アルツハイマー型認知症の脳血流シンチグラフィの画像、図の下段、虹色の表示の部分が健常者と比べ、脳血流が低下している部位
次回のテーマ『お薬について』(平成 27 年4月発行)
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