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特色ある教育活動の実践 ~時代が求める農業教育を目指して~
特色ある教育活動の実践 ~時代が求める農業教育を目指して~ 県立安中総合学園高等学校 石井 樹一朗 1 本校の概要 本校は、平成18年に県下最大規模の総合高校として開校し、今年で創立10年目を 迎える。9系列13系の科目選択群を設置し、2年次より専門的な学習を行っている。 生徒への幅広いニーズに応え、時代を担うことの自覚を持ち、地域社会で活躍できる人 材を育てることを目指している。農業に関する系列は、生物資源系列と食文化系列の2 系列があり、私が所属する生物資源系列では、 食料生産などの生物生産、緑化材料の栽 培管理、環境保全機能に関する知識や技術について学ぶことができる。現在、 2年生3 7名、3年生は農業系26名、園芸系8名、計71名の生徒が専門教科を学習している。 2 取り組みのねらい 本校では、1年次に科目「産業社会と人間」のなかで、約半年間をかけ2年次より所 属する系列を12系の科目選択群から選択する。生徒にとって系列は2年次以降授業の 大半を占める専門科目であり、系列選択は 悩むところである。 その為、生徒に対して生 物資源系列では何が出来るのかを示さなければならず、魅力的な学習内容でなければな らない。また、選択した生徒が、2年間の専門学習にやりがいを感じ、充実した学校生 活を送る支援をしなければならない。そして、社会が求める変化に対応し、様々な取り 組みを行い情報発信することが必要である。 そこで、特色ある教育活動を行い、 生徒が 取り組みに魅力を感じ、授業にやりがいを持てる教育内容を提供したいと考え実践した。 3 特色ある教育活動 (1) 環境を考えた農業 ~有機JAS認証取得~ ①実践内容 平成20年から学校設定科目「環境保全型農業」を導入し、有機農業を授業に取り 入れた。従来の慣行農業(農薬・化学肥料使用)ではなく、対照的な有機栽培を学習 することで、互いの良いところ、悪いところを知り、生徒自らが考える力を養っても らいたいと考え取り組んだ。有機農産物とは、「化学的に合成された肥料及び農薬を 避けることを基本として、播種または植付け前2年以上の間、堆肥等による土づくり を行った圃場において生産された農産物」と定義されている。本校では、環境に配慮 した土づくりを実践し、肥料も授業内で生徒が手作りした。 有機認定を受ける為には、有機JAS規格で定められた基準を満たし、第三者機関 【 図1 有機栽培圃場認証 】 【 図2 有機JASシール 】 である認定機関に申請を行わなければならない。認定機関の書類審査、実地検査を受 -1- け、平成22年6月に面積4aが有機圃場として認証された。(図1)平成24年に 隣接するビニールハウスを追加申請し有機圃場が5aとなった。これによりベビーリ ーフなどの葉菜類栽培が長期間行えるようになった。 有機認定の証明として、認定された事業者のみ が有機JASマークを貼ることができ、この「有 機JASマーク 」(図2)がない農産物には 、「有 機 」、「オーガニック」などの名称の表示や、これ と紛らわしい表示を付すことは法律で禁止されて いる。生徒が有機圃場で生産した野菜は、適切な 管理、記録を行い、有機JASマークが張られ、 消費者へ届けられている 。(図3) 【 図3 有機栽培ジャガイモ 】 ②成果 認証を受けたことで、付加価値を得ることがで き、 生産している生徒のやりがいにつながってい る。また、 県内教育機関で唯一の有機JAS認証 圃場であり、全国でも珍しく話題性も高い。 土作りから収穫販売まで、すべて生徒が関わり、 効率のよい生産体系を確立でき、生徒が自立して 有機農業経営を学ぶことができている。いままで 農産物の販売は、学校周辺での引き売り、イベン ト販売であったが、環境に配慮した有機野菜を求め 【 図4 レストランで利用 】 る人たちが増え、飲食店(図4)、学校給食食材、つけ物加工材料として利用が拡大 している。 環境に配慮した農法を地域へ広める活動として、群馬県農政部技術支援課と協力し、 環境保全型農業に関するアンケート調査を校内イベントで2回実施した。JA収穫感 謝祭では環境保全型農業のPR活動を合同で行い 学官連携を深めている。 大きな成果として、平成25年には、生徒が取 り組む循環型農業と地域の食育を通して、環境意 識の高揚に寄与したことが評価され、群馬県環境 賞顕彰を受賞した 。(図5)また、環境保全型農業 推進コンクールでは、群馬県の推薦を受け応募し、 全国環境保全型農業推進会議会長賞を受賞した。 【 図5 群馬県環境賞顕彰 】 (2) GAP(農業生産工程管理)の導入 ~安心・安全な有機栽培野菜を消費者へ~ ①実践内容 消費者は有機JASに安心・安全を求めるが、有機栽培は環境に配慮した農法であ り、品質保証の仕組みではない。そこで、安全性を得るために、昨年度から学校設定 科目「環境保全型農業」において、GAP(農業生産工程管理)を導入した。 GAP(Good Agricultural Practice)は、直訳すると良い農業の実践という意味であ る。農業生産活動の各工程の正確な実施、記録、点検および評価を行うことによる持 続的な改善活動を指す。本県では、農政部技術支援課が群馬県GAP実践マニュアル を作成している。このマニュアルを取り寄せ、本校でも安心・安全な農業生産活動を -2- 目指すため、本校有機圃場の実態にあった安総版GAPマニュアル(図6)を作成し 実践した。実践ポイントとして、記録の徹底(図7)、整理整頓、生産者の安全管理、 無理のない取り組みを基本とし有機栽培管理を行った。 ②成果 以前の栽培では、栽培内容の記録のみであったが、日常管理記録、使用資材管理記 録を作業前後に記入することにより、作業場の環境整備、圃場での栽培環境が改善さ れた。また、有機栽培で環境に配慮した農法を実践し,GAPを取り入れたことで、 農業生産管理を徹底することができた。こ れにより、消費者が求める、栽培・生産管 理を行うことができ、安心・安全の獲得に 繋がったと言える。 GAPを取り入れ栽培した有機野菜は、 安中市の公立小中学校へ給食食材として出 荷している。各小中学校の栄養士からは「安 全に配慮した野菜栽培をしていただいてあ りがたい 」、「生産した野菜はすべて学校給 食で使いたい」とうれしい言葉をいただい た。(図8) 【 図6 安総版GAPマニュアル 】 【 図7 (3) 使用資材管理記録簿 】 【 図8 新聞掲載 農業教育にGAP】 食農から食育へ繋がる取り組み ①実践内容 小学校では、栽培圃場がないため、子供達一人一人が野菜を育てる体験ができない。 そこで、平成23年より有機栽培圃場を活用し交流活動を行っている 。(図9 )(図 10)これにより、播種から収穫までの一連の栽培学習を体験することが可能になり、 子供達は収穫する喜び、野菜を生産する仕組みを知り、さらには収穫した野菜を持ち 帰り食べることで、旬な野菜の本当のおいしさを知ってもらえた。 小学生が播種・収穫した野菜を学校給食に使用する取り組みも行っている。栽培、 収穫、加工といった流れを体験を通して学び、野菜というものが身近に感じられてい る。 平成24年には、食育活動を発展的、継続的に行うことを目的に、群馬県が進める 「ぐんま食育応援企業」(図11)に登録し、見学者の受け入れ(圃場、つけ物製造施 設)、食育団体、行政等が行う食育活動に対し、食育に必要な物(農産物、商品)の 提供や、施設(栽培圃場)の提供などの支援を行っている。 -3- ②成果 子供達は栽培体験を楽しみにしており、お礼の手紙(図12)では、この体験から 多くの刺激を受けていることが感じられ、体験活動の必要性を強く感じている。 収穫した野菜が加工され、その日の学校給食で出される。小学生は、事前に給食で 使用されることを知っており、野菜が成長し、収穫されるまでの流れをイメージする ことができる。小学校教諭からは、「いままで給食で食べなかった野菜を、この体験 活動後に食べるようになった生徒が増え驚いている。」といった話も伺い、この一連 の体験活動の成果としてうれしく思っている。 この取り組みは、本校生徒が指導者となり児童を指導し、知識・技術の深化定着を 図るとともに、教える事による「コミュニケーション能力の向上 」、「農業教育にお ける言語活動の充実」をねらいとして実践し、成果を上げている。 これらの活動が評価され、平成24年には、県の食育分野の知事表彰である「食育 推進活動優良表彰」を学生部門で受賞、一連の授業実践を通じて、生徒達は大きな自 信を持つことができた。 【 図9 【 図11 有機栽培コマツナ播種体験 】 ロゴマーク 【 図10 有機栽培コマツナ収穫体験 】 【 図12 お礼の手紙 】 -4- 】 (4)高校生が栽培した野菜を学校給食へ ①実践内容 本校の食育・食農活動の推進、生産物を地域へ広めたいという願いと、学校給食に 地元食材を積極的に使用したいという小学校、中学校の思いが合致し、平成22年か ら本校で栽培した野菜を市内の小・中学校へ給食食材として出荷している。 安中市と食材提供の契約を結び、中学校1校から始まった給食食材出荷も、平成2 3年は中学校2校、小学校1校に増え、平成24年は、中学校2校、小学校2校、給 食センター(9校)へ食材を提供している。現在は、安中市内の公立小中学校すべて に食材を出荷するまでになった。 生産物出荷の流れは、本校から各学校へ収穫予定の生産物を伝え、各校栄養士か ら献立にあてはまる野菜の発注を受ける。根菜類は事前に収穫し、葉菜類は朝収穫 したものを届け(図13)、昼の給食に使用される。生産物は、有機栽培コマツナ、 有機栽培ダイコン、有機栽培ニンニク、有機栽培ニンジンなどを出荷している。 ②成果 学校給食法では、地場産物を学校給食において積極的に活用する取り組みを推進し ている。高校生が栽培した野菜が給食に使用されることで、地元の食材を使用し、地 産地消を積極的に行うことが出来ている。また、地元の高校生が栽培しているので、 生産者の顔が見え、安心・安全な食材の提供ができている。 本校生徒は、地元小学校、中学校を卒業した生徒が半数を占め、卒業生が栽培した 農産物が給食になったことで 、「生きた教材」として「食」に関する指導がしやすい ようである。小学校は、給食時に校内放送で使用食材の説明を行い(図14 )、中学 校では、 「給食紹介」を配布し生徒への理解を深めている。その効果として、小学生、 中学生が食材に関心を持つようになったと各学校から話を伺った。また、この取り組 みが、高校選択の一因になった生徒もいるようである。 中学校の栄養士から、 「 地元高校で栽培された農産物を学校給食に使用したことで、 生徒のみならず、教職員等、学校全体で地場農産物を身近に感じ、より興味・関心 を高め感謝する気持ちが育まれた」との言葉をいただいた。 この高校生が取り組む地産地消は、 群馬県の推薦を受けて平成25年に 地産地消 優良活動表彰へ応募し、農林水産省食料産業局長賞を受賞した。(図15)表彰理由 として、 地域内で連携した活動であり、独自性が高く注目される取り組みと評価さ れた。平成26年には、フード・アクション・ニッポンアワード2014の販売促進 ・消費促進部門にて入賞することができた。(図16) 【 図13 給食食材出荷 】 【 図14 -5- 給食風景(小学校) 】 【 図15 地産地消優良活動表彰 】 【 図16 フード・アクション・ニッポンアワード 2014 】 (5)6次産業化への取り組み ~食品製造販売業許可(つけ物)取得~ ①実践内容 生物資源系列2年では、科目「農業と環境」(旧:農業科学基礎)において、食品 加工について学習している。秋に栽培したダイコン、ハクサイをつけ物にすることで、 生産から加工までの一連の学習を行っていた。この学習をさらに深化・発展させるた め「食品製造販売業許可(つけ物)」の取得を考えた。許可取得は、事前に保健福祉 事務所に相談、施設検査を経て、平成22年に食品製造販売業許可(つけ物)を取得 した。(図17)(図18) ②成果 食品製造販売業(つけ物)を取得したことで、加工食品の販売が可能になり、生 産・加工・販売までを体験することができ、一連の流れを学習、経験することがで きた。これにより、本校で生産した農産物を自分達の手で加工し、販売する6次産 業化が可能になった。 また、いままで廃棄していた規格外の野菜を利用することもでき、有機栽培野菜 の更なる付加価値を得ることにも繋がった。有機栽培野菜を加工食品にすることで、 話題性があり、消費者の購買意欲に繋がっている。たくあんは「安総セレブ漬」(図 19 )、ハクサイキムチは「安総セレブキムチ 」(図20)と名付け、 新聞各紙に掲 載されたこともあり、予約販売で売り切れてしまい、イベントではつけ物を求め長蛇 の列ができた。 冬が近づくと、地域の人だけでなく、遠方からも予約で買い求める 人が増えてきている。 新たな展開として、平成25年からは、 各学校栄養士から要望のあった「安総セレ ブキムチ」を学校給食に出荷し、加工食品を給食食材として利用していただいている。 この取り組みでは、生産・加工・販売までを体験させ、6次産業化をイメージした 授業をとおして、生徒のモチベーションの向上、農業学習への自信・やりがい、達成 感・成就感の獲得へと繋げることができている。 -6- 【 図17 キムチ製造 】 【 図18 【 図19 安総セレブ漬 】 セレブキムチ袋詰め 】 【 図20 安総セレブキムチ 】 (6)安心・安全な加工食品製造 ~群馬県自主衛生管理認証制度取得~ ①実践内容 食品製造販売業許可(つけ物)を取得したことにより、加工から販売まで一連の流 れを学習、体験することができた。しかし、この食品製造販売業許可(つけ物)は、 製造に関する施設基準を満たしただけであり、毎回製造した商品が衛生的に製造され たものであるとういう証明にはならない。そこで、群馬県が創設した「食品自主衛生 管理認証制度」を取得することにより 、「HACCP(ハサップ )」の考え方に基づ く自主的な衛生管理を推進し、衛生水準の向上を図ることにより食品衛生上の危害の 発生を防止できると考え、この制度取得を目指し取り組んだ。 群馬県が定める認証基準にあったマニュアル、個別基準を作成し、衛生管理マニュ アルの内容審査(マニュアル審査)、管理が正確に行われているか実地審査が行われ、 6ヵ月の審査期間を経て、平成23年10月「食品自主衛生管理認証制度」を取得し た。これにより製造された製品は安全に作られているという証明になり、食中毒、不 -7- 良食品等の発生リスクが低減され、自主衛生管理の努力 が客観的に評価されると共に社会的信頼が得られる。 認証を受けた施設は、「ぐんまちゃんの認証マーク」を 使用でき、施設、パンフレット、ホームページで紹介す る場合にも使用できる。さらには平成23年11月より 商品表示も可能になり、パッケージ(図21)も新しく 変更した。このパッケージは、デザインを芸術文化系列 美術系の授業で制作を依頼し選ばれたもので、パッケー ジへのレイアウト・印刷は情報ビジネス系列の授業で取 り組み、総合学科である本校の特色を生かし、他系列の 生徒達とのコラボレーション事業として実践した。今後、 更に学校全体での取り組みに発展させ、学校力の向上に つなげたいと考えている。 【 図21 パッケージデザイン】 ②成果 マニュアルに沿った製造をを行うことで、細部にわたる作業、記録の確認ができる ようになった。これにより「マニュアル化された衛生管理」に基づいたつけ物の製造 が可能になり、疎かになりがちであった、記録作業、道具の管理も行えるようになっ た。また、授業で行う製造実習であっても、この衛生管理の流れを基本として行うこ とで、生徒も衛生管理の危機意識を持つようになり、意識の高い農業教育の実践につ ながっている。 (7)「食の6次産業化プロデューサー」資格取得 ①実践内容 平成22年に科目「環境保全型農業」の取り組みとして、有機JAS認証を取得し、 同年、更なる付加価値を求め、食品製造販売業許可(つけ物)を取得。農産物生産・ 加工・販売の一連の流れを行えるようになった。本校では、科目「農業と環境」「農 産加工 」「総合実習」「野菜 」「環境保全型農業」など生物資源系列2,3年の授業で 6次産業化に関連する学習を実践している。この取り組みを経験だけでなく、形で残 すことはできないかと考えていた。 そんな時、「食の6次産業化プロデューサー・キャリア段位制度・国家プロフェッ ショナル検定」が平成25年度からスタートした。これは、内閣府がすすめる国家認 定制度の1つであり、生物資源系列で学んだことが形になる資格である。現在レベル 1~4までがあり、高校生が対象となるのはレベル1にあたる。このプログラムは本 校で学ぶ取り組みと合致する部分が多い。そこで、昨年度、教育プログラムの認証を 行う実施機関として申請を行い、教育プログラム実施機関として認められた。 本校での実施科目と照らしあわせると、生物資源系列2年で学習する「総合実習」 「農産加工」「野菜」においてレベル1の内容を学習する。現在、2年目となり県内唯 一の教育プログラム実施機関として取り組んでいる。 ②成果 教育プログラムの認証を行う実施機関になったことで、授業の中で農業生産、加工、 流通を学んだ結果として資格取得が可能になった。これにより、教科で学んだ内容が 反映された資格となり、新たな資格取得に繋がることができた。昨年度は、13名の 生徒が「食の6次産業化プロデューサー・レベル1」を取得した。 (図22)現在は、 生物資源系列2年生39名がカリキュラムを受講している。この資格取得をきっかけ -8- として農業の魅力、可能性に気づき、 1次産業の従事者が増えることが理 想であるが、農業・加工・流通の仕 組みを知り、進路を考える機会にな ることを期待している。また、群馬 県の高校での実施機関はまだなく、 校内外の注目も高い。生物資源系列 の目玉資格としてPRしていきたい。 【 図22 新聞掲載 4 初認定】 まとめ ~繋がる農業教育~ 「有機JAS認証」を取得し、環境に配慮した野菜の生産を行えるようになった。更な る付加価値を求め 、「食品製造販売業許可(つけ物 )」を取得したことにより、規格外野 菜の効果的な利用法として「6次産業化」に繋がった。そして、確かなる安総ブランド商 品確立のため 、「食品自主衛生管理認証制度」を取得し、安心・安全を形にし、社会的信 頼を得ることができた。また、環境に配慮した野菜を次の世代へ繋げる「食育」へと広が った。このように、平成20年から取り組んだ有機野菜栽培から、加工食品製造販売、食 育活動へと繋がり形となった。 「食品自主衛生管理認証制度」については、平成23年に取得し、平成25年までの2 年間実施したが、耐震工事での施設問題や、費用対効果などの理由で更新は行わなかった。 しかし、現在も衛生管理マニュアルと同様の衛生基準で実施している。これらの特色ある 取り組みは、それぞれの「科目」で実践している内容が繋がり、付加価値のある6次産業 化へと結びついた結果である。今できる農業、世の中が求める農業を考えて実践した集大 成と言える。 生徒による授業評価アンケートでは、授業内容に対して不満を持っている生徒は0%で あった。コメントでは「この学校でしか学べない内容が魅力」「交流活動が多く、人に慣 れた 」「考えて行動できるようになった」など授業をとおして成長している姿を強く感じ られた。 本校生徒は、1年次に半年を掛けて12系の科目選択群から系列を選択する。その為、 生徒に対して生物資源系列では何が出来るのかを示さなければならず、魅力的な学習内 容でなければならない。 限られた専門教科を学ぶ時間の中で、 生徒に対し 農業の魅力や 可能性を少しでも伝えることが課題でもある。過去4年間の系列希望調査では、第1希望 から第3希望までの中に生物資源系列が占める割合は、平成24年17%、平成25年1 9%、平成26年23%、平成27年20%と全12系の中で1番の人気を維持している。 希望する理由として、「楽しそう 」「植物を育ててみたい」「おもしろそうだから」という 声が多く、希望する生徒の28%が農業関係の職業に就くことを望んでいる。生物資源系 列が行うプレゼンテーションが魅力的な系列として支持されていることがわかる。 農業高校から就農する生徒が減少している中で、雇用就農者、農学系上級学校への進学 者を毎年輩出している。これは、2年間という短い専門教科の学習ではあるが、農業の楽 しさを教え、農業の可能性を体験させた結果であると感じている。 現在、農業高校に求められるものは何かと問われれば。教師が自由な発想を持って、農 業に取り組む姿を見せることが、求められていることの1つではないかと思う。これから も生徒に夢を与える実践型教育を行うため、継続して行う体制の確立を目指していきたい と考えている。個人で取り組んできたことを組織で取り組むシステムの構築を行い、進化 し続ける総合学科高校を目指し、今後も農業教育活動の幅を広げ、「農業」を学んで良か -9- った 、「安総」に入学して良かったと1人でも多くの生徒が思える授業実践を行っていき たい。 - 10 - 主題 特色ある教育活動の実践 部門 杉の子賞(教職員の部) 応募形態 ~時代が求める農業教育を目指して~ 個人 住所 安中市安中一丁目2番8号 安中総合学園高校 027-381-0227 氏名 教諭 石井 樹一朗(いしい じゅいちろう)