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銀シェル金ナノロッドの電気化学

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銀シェル金ナノロッドの電気化学
P01
銀シェル金ナノロッドの電気化学
(九大院工)○濱﨑祐樹・新留 康郎・中嶋 直敏
我々は形状均一性に優れた銀シェル金ナノロッド (AuNR@Ag)をカチオン性界面活性剤溶液中
で 調 製 す る こ と に 成 功 し た 1) 。 AuNR@Ag の 成 長 反 応 は 界 面 活 性 剤 の 種 類 、 す な わ ち
Hexadecyltrimethylammonium chloride (CTA+Cl-: CTAC)とCTA+ bromide (CTA+Br-: CTAB)
のいずれかを用いるかによって大きく異なることがわかった。CTAC共存下でのAgシェル生成
速度はCTAB共存下での場合と比較して非常に速いことが報告されている。さらにAgシェルは
金ナノロッドの短軸方向に厚く、長軸方向には薄いことから、金ナノロッドの結晶面に依存した
異方的な結晶成長が強く示唆された。金本研究では、金ナノロッド上のAgシェル生成に与える
カチオン性界面活性剤やハロゲン化物イオンの影響を電気化学的な手法により明らかにした。
0.1 mM AgNO3を含んだKClあるいはKBr溶液中 (1 M)でCVにより測定した。作用極にカチオン
性界面活性剤吸着金 (Au)ディスク電極 (2.0 mm2)、対極は白金板、参照極には飽和カロメル電極
(SCE)を用いた。カチオン性界面活性剤吸着Au電極として、80 mM CTACあるいはCTABミセル溶液
に一時間浸漬し、その後少量の水で洗い
25
流した電極を用いた。
voltammogram (CV)をFig. 1(a)(赤線)
に示す。銀の還元ピークは-0.02 V vs.
SCE、酸化ピークは+0.03 V vs. SCEに
15
10
5
0
-5
15
10
5
0
-5
-10
-0.6
観察された。未修飾(bare)Au電極を用
CTAB modified Au
bare Au
20
Current / A
着 Au 電 極 を 用 い た 場 合 の Cyclic
Current / A
Agイオン含有KCl溶液中でCTAC吸
25
CTAC modified Au
bare Au
20
-10
-0.6
-0.4 -0.2
0
0.2
Potential / V vs. SCE
-0.4 -0.2
0
0.2
Potential / V vs. SCE
Fig. 1 Auディスク電極によるCV
いた場合 (Fig. 1(a)(青線))も、ほぼ同様
(a) Ag含有KCl溶液、(b) Ag含有KBr溶液
のCVが観察された。また、Agイオン含
赤線:CTA+吸着Au電極、青線:bare Au電極
有KBr溶液の場合はbareとCTAB吸着
Au電極のどちらの場合でも銀由来の明確な酸化還元ピークが観
25
20
のCTA+吸着に影響されないことを示している。
グラッシーカーボン (GC)電極を用いた場合のCVをFig. 2に
示す。KCl溶液 (赤線)とKBr溶液 (青線)を用いたいずれの場合
も、銀由来の酸化還元ピークを観察できた。Fig. 2のCVは、電
極表面とハロゲン化物イオンが特別な相互作用が無い場合の銀
Current / A
察されなかった。この実験結果は、Ag電解析出がAu電極表面
KCl solution
KBr solution
15
10
5
0
-5
-10
-0.6
-0.4 -0.2
0
0.2
Potential / V vs. SCE
の電解析出の例であり、Au電極の場合 (Fig. 1)の電解挙動がハ
Fig. 2 GC電極によるCV
ロゲン化物イオンとAu電極の強い相互作用に影響されているこ
赤線:KCl溶液、青線:KBr溶液
とを示唆している。
参考文献
1.
Y. Okuno, K. Nishioka, A. Kiya, N. Nakashima, A. Ishibashi and Y. Niidome, Nanoscale, 2010, 2,
1489-1493.
P02
界面に吸着した銀シェル金ナノロッドの分光特性
(九大院工)○鶴 由貴子・新留 康郎・中嶋 直敏
金や銀の異方性ナノ粒子は特異な表面プラズモン(SP)特性を示すことから、プローブ材料と
して注目されている。銀シェル金ナノロッド(Au-AgNR) は金ナノロッドの表面を銀で均一にシェ
ルしたもので、棒状銀ナノ粒子の分光特性を示すと期待される。このAu-AgNRは可視域に4つ
の消失バンドを示し、最も長波長側のバンドは長軸由来と帰属されているが、短波長側の3つの
バンドはまだ明らかにされていない。本研究ではこのバンドの帰属を行うことを目的として、AuAgNR固定ガラス基板の分光特性評価を行った。基板表面にナノロッドを固定することで基板表
面に平行な振動方向を有するSPに選択励起できるようになり、3つのバンドの帰属を議論できる
と期待した。
Fig. 1の3つのスペクトルはそれぞれ、Au-AgNR溶液(a)、固定化スライドガラス(b)、さらに固定
化ITOガラス(c)の消失スペクトルを示す。全てのスペクトルは
最も長波長側のピークで強度を規格化している。基板上の
Au-AgNRは溶液中と比較して全てのピークが短波長シフト
し、短波長側の3つのバンドの相対強度が減少した。ピークの
短波長シフトは、基板が空気中にあるため、Au-AgNR近傍の
屈折率が大きく下がった事に起因する。短波長側の3つのバ
ンドの相対強度の減少は、これらのバンドが基板表面に垂直
な成分を持ちうるバンド、すなわち短軸由来であることを強く
示唆している。またITOガラス(Fig. 1(c))では、短波長側410
nm付近にピークが1つ増加した(Fig. 1矢印)。固定化基板の
SEM像ではスライドガラスと比較すると、ITOガラスには正方
形に見えるロッドが多く観察された(Fig. 2 (0 °))。ITOガラスを
傾けて観察すると(Fig. 2 (25 °))、柱状に見える粒子があるこ
とから、ITOガラス上には立って固定されているロッドがあるこ
とがわかった。短波長側に1つ増えたバンドは、ITOガラス上
に立っているロッドの短軸方向の光吸収に由来すると考えら
れる。
Fig. 1 Au-AgNR溶液(a)と固定化
スライドガラス(b)、固定化ITOガ
ラス(c)の消失スペクトル
Fig. 2 固定化ITOガラスのSEM像 (左0 ˚、右25 ˚)
金ナノロッドの凝集状態制御とSALDI-MS分析
(九大院工)○藤井政徳・新留
康郎・中嶋
直敏
Surface-Assisted Laser Desorption/Ionization Time-of-Flight Mass Spectrometry (SALDIMS)は、無機粒子等をイオン化支援剤として用いて脱離・イオン化を行う質量分析法である。本研
究では金ナノロッドを用いてSALDI-MS分析を行う。我々は金ナノロッドを用いたSALDI-MSによる
高感度分析を既に報告した1)。本研究では基板に固定する金ナノ粒子の形状とSALDI効率の相関
を検討し、金ナノ粒子によるSALDI現象のメカニズムを考察した。
3-Aminopropyltriethoxysilaneで修飾したITO基板に、Poly (sodium styrensulfonate) (PSS)を修
飾した金ナノロッド (PSS-NR)を固定した。この後4-aminothiophenol(4-ATP)エタノール溶液に浸
し、界面活性剤の除去を行った。この基板に、オリゴペプチド
(angiotensinⅠ)溶液を100L滴下し、自然乾燥させ、さらに、
Trifluoroacetic acid (TFA)溶液 (0.1 %)を100L滴下し自然乾
燥させて、MALDI-TOF-MS装置 (Bruker Daltonics, autoflex
Ⅲ) でTOF-MS測定 (測定モード:Reflector, Positive) を行っ
た。また、金ナノロッド溶液やPSS-NR固定化基板にNd:YAGパ
ルスレーザー光を照射し、粒子の形状を変化させて、同様に
TOF-MS測定を行った。
Fig. 1にPSS-NR固定化基板のSEM像を示す。金ナノロッド
Fig. 1 PSS-NR基板のSEM像
50
定前後での粒子の形状変化を観察したが、測定は粒子の形状
40
分布にほとんど影響を与えなかった。SALDI-MS測定に用いる
窒素レーザー光照射では金ナノロッドの形状変化は起こらない
ことがわかった。金ナノロッド分散液に比較的高強度のパルス
Intensity
が比較的分散して固定されていることがわかる。SALDI-MS測
30
1 2 9 5.5
20
10
レーザー光(1064 nm, 70 mJ/pulse, 10 ns, 20 Hz, 10 min.)を照
射し、金ナノロッドを球状粒子に変換した。この球状粒子をITO
0
1260
基板に固定し、1 MのangiotensinⅠ溶液を滴下後、SALDI-
1280
1300
m /z
1320
1340
1320
1340
50
MS測定に用いた。Fig. 2にナノロッド固定基板と球状粒子固定
40
のピークが観察されたことから、SALDI効率は基板表面に固定
する金ナノ粒子の形状にあまり依存しないことがわかった。
SALDI-MS測定の際には金ナノロッドの大きな形状変化は
起こらないことがわかった。同じ基板固定・表面修飾方法である
ならば、金ナノ粒子の形状に依存せず、同程度のSALDI効率
Intensity
基板のSALDI-MSスペクトルを示す。二つの基板でほぼ同程度
30
20
1 29 6.8
10
0
1260
1280
1300
m /z
が得られることがわかった。SALDI効率は粒子の形状以外の要
Fig. 2 レーザー光照射前(上)
素に大きく依存することが示唆された。
後(下)のPSS-NR基板のマスス
1.
ペクトル
Y. Nakamura, Y. Tsuru, M. Fujii, Y. Taga, A. Kiya, N.
Nakashima and Y. Niidome, Nanoscale, 2011, in press.
P04
カーボンナノチューブ可溶化剤交換反応の
熱力学的解析
(九大院工)○井上 彩花・加藤 雄一・新留 康郎・中嶋 直敏
単層カーボンナノチューブ(CNT)はグラフェンを円筒状に丸めた、直径数ナノメートルのチ
ューブ状の物質である。CNT はグラフェンの丸め方により多くの種類((n,m))が存在し、バラ
エティ豊かな直径、電子特性、光学特性などを持つ。可溶化剤と呼ばれる CNT に物理吸着する
分子と、CNT との相互作用は、CNT を分散させるための可溶化、特定の(n,m)CNT の単離にとっ
て重要な問題である。これまで可溶化剤と CNT の相互作用は、CNT の可溶化量の大小、あるい
は吸着物質の発光強度や CNT の Raman のシフト量から求めた吸着量に基づいて評価されてきた。
しかしながら、これらの方法は CNT のバンドル状態(分散状態、凝集規模)が実験操作中に大
きく変化することなどから、定量的な評価法とは言い難い。
コール酸ナトリウムを用いて分散させた CNT に DNA を加えると、可溶化剤のコール酸ナトリ
換では、CNT の破壊や可溶化剤の変性、CNT バ
ンドル状態の変化を避けることができる。CNT
の吸収ピーク波長は、可溶化剤や溶媒の極性に
よりシフトする。吸収スペクトル測定により
CNT 可溶化剤交換に伴う熱力学パラメータ変化
量を求めた[1]ので報告する。
可溶化剤はコール酸ナトリウムとオリゴ DNA
(cytosine, 20 mers)を用いた。コール酸ナトリ
ウムにより可溶化した CNT 水溶液を調製し、
DNA 水溶液、緩衝溶液と混合した。これら溶液
を 15-40 C で静置し、吸収スペクトルを各温度
Normalized Absorbance
ウムと DNA の交換反応が生じる。可溶化剤交
(n,m) = (6,5)
950
(7,5)
1000
1050
Wavelength / nm
(10,2)
1100
Figure 1 Absorption spectra of the CNTs dissolved
in solutions containing SC in the absence and
presence of the DNA.
条 件 で 測 定 し た 。 ス ペ ク ト ル 変 化 は 各 (n,m)
CNT 毎に等吸収点を示した(Figure 1)。(n,m) CNT の直径はそれぞれ、(6,5): 0.76 nm, (7,5): 0.84
nm, (10,2): 0.88 nm である。可溶化剤交換率を吸光度変化から求め、平衡定数、熱力学パラメー
タ(ΔH、ΔS)を求めた。交換に伴う平衡定数および熱力学的パラメータの CNT 直径依存性に
ついてディスカッションする。
[1] Y. Kato, Y. Niidome, N. Nakashima, Chem. Lett. 2011, 40, 730.
P05
有機薄膜太陽電池に組み込む疎水性金ナノ粒子の作製
(九大工)○竹下めぐみ、御手洗広子、海野英久、高橋幸奈、山田 淳
【序】金ナノ粒子(AuNP)に光を照射すると局在表面プラズモン共鳴(LSPR)が起こり、ナノ粒
子表面近傍に局所的な増強電場が発生する。この増強電場は、AuNP 近傍に存在する分子と
光電場との相互作用の確率を増大させることができる。このことから、有機薄膜太陽電池の
光活性層に AuNP を組み込むことにより光電変換効率の向上が期待されている。光活性層中
に組み込むためには疎水性の AuNP を利用する必要があるが、一般的に用いられるクエン酸
保護 AuNP は親水性である。このような背景から、保護基にアルカンチオールを用いた疎水
性 AuNP を作製したので報告する。
【実験】疎水性 AuNP は二種類の手法で作製を試みた。
サンプル A:H[AuCl4]・4H2O / THF にオクタデカンチオ
ール(ODT)を溶解させ、少量ずつ LiB(C2H5)3H / THF を滴
下し撹拌して疎水性 AuNP を作製した[1]。
サンプル B:水分散クエン酸保護 AuNP( = ca. 20 nm)を作
製し、ODT を溶かしたクロロホルムとの二相溶液をつく
り、そこにエタノールを滴下し 30 秒振盪することで AuNP
を相間移動した[2]。
作製した AuNP の消失スペクトル測定・透過型電子顕
微鏡(TEM)観察を行った。
Fig. 1 TEM image of sample A.
【結果と考察】サンプル A はクロロベンゼン、サンプル
B はクロロホルムに分散させて消失スペクトルを測定し
たところ、サンプル A は 525 nm 付近、サンプル B では
545 nm 付近に、LSPR に由来する吸収ピークが観察され
た。このことから、いずれの作製法でも疎水性 AuNP が
作製できるものと推定された。また、TEM 観察により、
粒径がそれぞれ 4.3±0.03 nm、24.3±0.4 nm であると確認
された(Fig. 1, 2)。なお、サンプル B は、クロロホルム中
の ODT 濃度が低いときには AuNP が有機相に相間移動せ
ずに凝集したことから、相間移動は、エタノールの添加
Fig. 2 TEM image of sample B.
によって水中での安定性が低下した AuNP に ODT が保護
基として作用することで相間移動が起こっていると推察される。
作製した AuNP は、有機薄膜太陽電池の光活性層であるポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)
の溶液に安定に混合可能であることを確認した。今後、AuNP が P3HT の光電気化学特性に与
える影響を検討する。
【参考文献】
[1]C. K. Yee et al., Langmuir, 1999, 15, 3486
[2]M. Sastry et al., Colloids and Surfaces A: Physicochem. Eng. Aspects, 2001, 181, 255-259
界面活性剤水溶液上のアルカン薄膜の単分子・二分子凝縮膜
形成とアルカンレンズの線張力
(九大院理 1・宇部高専物質工 2)○牛島 漠 1・高市哲正 1・高田陽一 2・
瀧上隆智 1・荒殿 誠 1・松原弘樹 1
【緒言】異なる 2 つの相が接触する面に界面張力が働くように、3 つの相が接触する線には
線張力が働く。界面活性剤水溶液表面のアルカンレンズは、油が全く拡がらない非濡れ状態
から、ナノスケールの濡れ膜とレンズが共存する薄膜状態への濡れ転移、さらに薄膜の中で、
界面活性剤分子と油分子が液体に近い状態で混合した膨張薄膜から、固体に近い状態で混合
した凝縮薄膜への濡れ膜の凝固転移を起こすことが知られている。今回の研究では、アルカ
ンレンズの濡れ転移および濡れ膜の凝固転移によって 3 相接触線の状態が大きく変化するこ
とに注目し、それが線張力に与える影響を研究した。
【実験】界面活性剤には炭化水素鎖長が 12, 14, 16
画像解析から得られるレンズの二面角
、半径
を 3 相接触線における力のつり合いの式
L
S2
m
S1
m
L
S2
L
S1
m
G
G
T
G
T
T
L
HTAB
G
m
L
G
L
T
70 μm のレンズを形成し、微分干渉顕微鏡による
TTAB
T
溶液表面に油を滴下し、攪拌することで半径 10~
G
T
アルカン(以下 C14, C16)を用いた。界面活性剤水
Tetradecane
DTAB, TTAB, HTAB)、油には鎖長が 14 と 16 の
Hexadecane
の臭化アルキルトリメチルアンモニウム(以下
DTAB
S2
m
S1
m
図1. 濡れ膜の状態図
に適用することで、線張力 を求めた。
【結果・考察】図 1 に界面活性剤水溶液表面でのアルカン薄膜の状態図を示した。記号 G, L,
S1, S2 はそれぞれ気体膜、膨張薄膜、単分子凝縮膜、二分子凝縮膜に対応している。各々の膜
状態で線張力の測定を行ったところ、その符号は気体膜では正、膨張薄膜では負、凝縮薄膜
ではどちらの場合も正という興味深い結果が得られた。界面膜の相転移に伴う線張力の符号
の変化は、レンズの自発的な合一・分裂挙動の目視観察からも支持された。本発表では、線
張力の起源を 3 相接触線近傍で濡れ膜の上下の界面に働く表面間力と考え、界面変位モデル
を使って相転移と符号の変化の関係を議論する。
P07
アゾベンゼン色素を含んだ液晶を利用した
光マニピュレーション
(熊本大院自然)太田 和宏・○桑原 穣・金 善南・緒方 智成・栗原 清二
[緒言] 近年、マイクロマシン、バイオチップなどの製造において非常に小さな部品を組み立
て、操作するための技術が求められており、流体を用いた微小物体マニピュレーションが注
目されている[1]。これまでに、当グループでは液晶中のフォトクロミック物質の光異性化に
伴う、液晶表面の微小物体の回転運動、直線運動現象を見出している[2]。本研究では、フォ
トクロミック物質であるアゾベンゼン誘導体を含む流体における微小物体の駆動メカニズム
を解明することを目的として、光照射によりネマチック(N)-アイソトロピック(I)相転移を誘
起する液晶薄膜を作製し、光反応に伴う相転移と微小物体の運動挙動の関係について検討し
た。
[実験] 低分子液晶 5CB(Fig.1)とフォトクロミッ
NC
C 5H11
ク分子であるアゾベンゼン色素(BMAB;Fig.1)を
4-Cyano-4’-pentylbiphenyl(5CB)
任意の割合で混合したテトラヒドロフラン溶液
を調整した。この溶液をポリイミド配向処理ガ
H9C 4
ラス基板上に一定量を滴下し、乾燥することで
N
OCH3
N
4-Butyl-4’-methoxy-azobenzene(BMAB)
Fig.1 Structure of compounds
液晶薄膜を作製した。液晶薄膜表面にガラスロ
ッド(直径 7m)を微量散布し、紫外光(=375nm)および可視光(=488nm)を照射した。フォト
クロミック分子の光異性化に伴う液晶表面での微小物体の運動を光学顕微鏡により観察した。
[結果・考察] ガラスロッド
(a)0s
(b)60s
(c)300s
を 散 布 し た 液 晶 薄 膜
(BMAB=1.9×10
- 4
mmol/mg-
LC)に紫外光を斜め上から
照射すると、cis 体の増加に
Fig.2 Optical micrographs of translational motion of a glass rod during
伴い N-I 相転移が誘起され、
irradiation of UV laser.
ガラスロッドは光照射位置に近づくように運動した(Fig.2)。ガラスロッドが I 相まで運動す
ると、ガラスロッドはほとんど運動しなくなった。微小物体の駆動原理は明確ではないが、
アゾベンゼン分子の光異性化により液晶の配向構造が変化し、微小物体周辺において弾性力
の差が生じ、微小物体が運動すると考えている。
[1] W. R. Browne, B. L. Feringa, Nature Nanotechnology 2006, 1, 25-35.
[2] A.Kausar, H.Nagano, S.Okada, T.Ogata, S.Kurihara, Angew. Chem. Int. Ed. 2009, 48, 2144-2147.
P08
有機色素/金ナノ粒子積層膜の光特性と光電流発生
(熊本大院自然・九大院工)村田 ゆみ・○桑原 穣・山田 淳・栗原 清二
[緒言]ロッド状金ナノ粒子はその形状に由来する2つの表面プラズモン共鳴吸収帯を有する。特に
長軸による長波長域の吸収帯は様々な光機能性材料への応用において新しい機能を期待できる。
本研究では、交互吸着法により球状またはロッド状の金ナノ粒子(AuNPs)と有機色素の積層膜を形
成し、その構造や光特性について評価した。有機色素としては、ポルフィリンまたはフタロシアニン
(CuPc)を用いた。光電流測定を行ない、金ナノ粒子薄膜を利用した光電変換材料への応用につい
て検討した。
[実験] 既報 1,2)を参考に、球状金ナノ粒子(AuNS)およびロッド状金ナノ粒子(AuNR)を合成した。
親水化処理した ITO 基板上に、交互吸着法を用いてポリエチレンイミン(PEI)、ポリアクリル酸ナトリ
ウム(PAS)、金ナノ粒子および有機色素の積層膜を作製した。透過型電子顕微鏡(TEM)観察を用
いて金ナノ粒子の粒径、形状を、走査型電子顕微鏡(SEM)観察を用いて薄膜の構造および金ナノ
粒子の凝集状態を評価した。紫外可視近赤外(UV-vis-NIR)吸収分光測定により薄膜の光特性を
評価した。光電流測定を行なった。
[結果・考察] 合成した金ナノ粒子の TEM 観
ITO|PEI|AuNS|PEI|CuPc
ITO|PEI|PAS|AuNR|CuPc
ITO|PEI|CuPc
CuPc solution
察より、AuNS および AuNR の形成を確認し
状態で、AuNR 膜はわずかに凝集した状態
で基板上に吸着していることを確認した。
Absorbance/a.u.
膜の SEM 観察より、AuNS 膜は凝集せずに
0.01
Photocurrent/nA・mW-1
た。AuNS または AuNR を用いたナノ粒子薄
0.5 nA
UV-vis-NIR 吸収分光測定の結果、金ナノ
粒子および色素由来の吸収帯が現われ、吸
390
440
490
540
590
640
690
740
790
Wavelength/nm
着積層膜の形成が示唆された。光電流測 Fig.1 Photocurrent action spectra of ITO|PEI|AuNS|PEI|CuPc,
ITO|PEI|PAS|AuNR|CuPc and ITO|PEI|CuPc and UV-vis-NIR
定の結果、金ナノ粒子を用いたサンプルに absorption spectrum of CuPc solution.
おいて、CuPc の光吸収に由来する光電流が観測された(Fig. 1)。一方、金ナノ粒子未修飾サンプ
ルにおいては、光電流は観測できなかった。このことから、AuNS および AuNR による光電流の増強
が示唆された。
1) J. Turkevich, P. C. Stevenson, J. Hillier, Disc. Faraday Soc., 1951, 11, 55.
2) T. K. Sau, C. J. Murphy, Langmuir, 2004, 20, 6415.
P09
金ナノ粒子に修飾した
11-mercaptoundecanoic acid の酸解離特性
(鹿児島大理工)○野添 久・神長
暁子・前田 環
[緒言]
有機チオール分子の金属表面への強力な共有結合によって形成される自己組織化単分子膜
(self-assembled monolayer:SAM)に関する研究は、その幅広い応用範囲のために盛んに
行われている。これまで当研究室では、11-mercaptoundecanoic acid(MUA)を用いて、金
基板上にSAMを形成した場合、あるいはcetyltrimethylammonium bromide(CTAB)のミセル
中に可溶化させた場合など、複数の系においてMUAのpKaを測定し、そのpKaに対する解離基周
辺環境の効果について検討してきた。
今回我々は、MUAで修飾した金ナノ粒子(以下、AuNPと略記)を調製し、AuNP表面上での
MUAのpKaを逆滴定により調査した。
[実験]
AuNPは、金前駆体に塩化金(Ⅲ) (0.5 mM)、還元剤にアスコルビン酸 (1.7 mM)、保護剤
にCTAB (1.0 mM)を用いて合成した。合成したCTAB/AuNPをMUA水溶液と混合し6 h撹拌
することで、CTAB/MUA/AuNPを得た。これを遠心分離と再分散を3 回繰り返すことで不純
物を除去した後、精製したCTAB/MUA/AuNPに過剰のNaOHを加えたものを試料溶液、HCl
を標準液として逆滴定を行った。
[結果と考察]
12
10
る。HCl-NaOHの滴定曲線(base line)と比較して、
8
中性付近でプラトーが生じ、二段滴定のような曲線が
pH
Fig. 1 は調製した試料溶液の滴定曲線を示してい
得られた。これは、MUAの末端カルボキシル基(アル
base line
MUA
6
4
カリ領域ではCOO-)のプロトン結合に由来するものと
2
考えられる。この滴定曲線からMUAの解離度を算出し
1.5
たものをFig. 2 に示す。Henderson-Hasselbalchの式
2
2.5
3
3.5
MUAのpKaを6.7と見積もった。この値は、金基板上に
1
形成されたMUA‐SAMの場合のpKa 6.4に近い。この
0.8
ことは金基板上のSAMと類似の環境がナノ粒子表面に
も形成されていることを示唆している。ただし、本系
ではMUA/AuNPをCTABミセル中に可溶化させた状態
で滴定を行っており、AuNP周囲に形成されているであ
ろうCTABシェルの構造と、そのpKaに対する効果は明
確ではない。現在、pKaに対するCTABの濃度効果につ
いて調査中である。
解離度α
より、解離度α= 0.5のときpH = pKaとなることから、
20 mM HCl volume / ml
Fig. 1 MUA/AuNPの滴定曲線
0.6
0.4
0.2
0
5.5
6
6.5
7
7.5
8
pH
Fig. 2
各pHにおけるMUAの解離度
8.5
P10
ヘモグロビンを用いたSAMのバイオセンサーとしての利用
の検討 ~メト・オキシ・デオキシヘモグロビンのUV-visス
ペクトルの帰属~
(鹿児島大理)○松本 汐里・神長 暁子・前田 環
[緒言]
生体物質であるヘモグロビンは4つのサブユニットから成り立ち、各々のサブユニットの
持つヘム基に酸素を取り込むことができる。また、ヘモグロビンは酸素に比べ一酸化炭素と
の親和性が強く、酸素の250倍も一酸化炭素と結合しやすいことが知られている。一方、金
基板をアルカンチオール化合物を含む有機溶媒に浸すことで、金とチオール基の間でAu-S結
合が形成されるとともに、アルキル鎖同士の相互作用(van der waals力)によって、金表面
に高密度、高配向な自己組織化単分子膜(SAM: Self-Assembled Monolayer)を容易に形成す
ることができる。SAMはアルカンチオールのアルキル鎖長の変更や、末端に機能性官能基を
導入することで様々な働きを持たせることが可能である。SAM表面にヘモグロビンを固定す
ることでセンサーとしての応用が期待できる。
本実験では、ヘモグロビンの特性を利用したバイオセンサーの作製を見据え、ヘモグロビ
ンの溶液中での酸素との結合・非結合状態における分光学的変化を調べた。
[実験]
市販のヘモグロビンは空気酸化のため三価のヘム鉄を含むメトヘモグロビン(metHB)で
あり酸素結合能力が無い。そこで、還元剤を用いて二価の鉄に戻す操作を行った。市販のウ
シヘモグロビン(Hemoglobin, from Bovine Blood ; Wako)をリン酸緩衝液(PBS、pH 6.41)
に溶かし、0.4 mg/mlのmetHB溶液を調製した。調製したmetHB溶液25 mlに窒素気流下で還元
剤として50 mM ハイドロサルファイトナトリウム水溶液 25 ml を加え、デオキシヘモグロビ
ン(HHb)溶液を得た。HHb溶液を酸素雰囲気下で撹拌することで、酸素結合状態のオキシ
ヘモグロビン(OHb)溶液を得た。UV-visスペクトルを測定しこれらの溶液に含まれるヘモ
グロビン誘導体の帰属を行った。
[結果と考察]
調製した各種ヘモグロビン溶液のスペクトルを図に示した。実験から得られたHHb溶液の
スペクトルは555 nmにシングルピークを持つことが分かる。またOHb溶液は500~600 nmにダ
ブルピークを持つことが分かる。これらの特徴は文献と一致し、目的の物質が得られている
ことが確認出来る。また、metHb溶液で405 nm
付近に見られた吸収ピーク波長は、HHb溶液
では429 nm付近に、OHb溶液では 410~420 nm
付近にシフトした。
ヘモグロビン誘導体を電極に固定する際、
ハイドロサルファイトナトリウムは、金表面
上で硫化を起こすため使用を避けたい。その
ため、別の還元剤を用いる方法を現在検討中
である。
図1 ウシヘモグロビン誘導体のUV-visスペクトル
ポリペプチド保護金ナノ粒子の創製と
キャラクタリゼーション
(鹿児島大院理工)○三隅
宝・橋口明菜・Myint Thein Tun・
蔵脇淳一
【序】 近年金属ナノ粒子はバイオセンサー、フォトニクス材料として注目され広く研究
されている。当研究では、金ナノ粒子と生体分子との相互作用のモデル系の構築とし
て、NaBH4 の還元及び超音波処理によるポリペプチド保護金ナノ粒子の創製を行い、
ポリペプチドのコンフォメーション変化との関連性及び分光特性の解明を行った。
【実験】 タンパク質モデル分子としてリシン残基のみからなるポリ(L-リシン)(P-L), リシ
ンとチロシン(あるいはフェニルアラニン)のモル比が 1:1 から成るコポリペプチド(LT11,
LP11)を使用した。超音波処理の創製は、四塩化金酸 HAuCl4 と(P-L), (LT11), (LP11)
コポリペプチド各々を残基モル濃度比が 1:1~1:2 に、0.1 M NaHCO3 水溶液にて pH
を 4.4 に調整しその溶液を 38 kHz で超音波照射を行い、AuNP を合成した。NaBH4
Absorbance
の還元は、濃度条件は超音波処理と同様にし、0.01M の NaBH4 水溶液を添加した。
【結果と考察】 超音波照射の実験では LT11 の
0.25
pH 2.7
系のみにおいて通常 2~3 日反応に要するのを、
0.2
pH 3.4
90 分~105 分超音波処理を行う事で、Fig. 1 の
pH 4.4
0.15
吸収スペクトルにおいて 535 nm 付近に AuNP
0.1
特有のプラズモンバンドが観測された。次に pH
0.05
を 2.7, 3.4, 4.4 及び 6.7 と変化させ pH 依存性を
0
調べたところ、pH が 2.7 に近づくほど金由来の
400
500
600
700
ピークの長波長シフトが見られた。
Wavelength/nm
Fig.2 に示すように LT11 の CD スペクトル
2
1.5
[θ] /104 deg・cm2/(dmol)
は中性付近から酸性領域において LT11 はラン
ダムコイル構造とβシート構造の混在している
状態であるが、pH を 2.7, 3.4, 4.4 に調整した反
応溶液は 208 および 222 nm に極小値を有す
るα-helix 構造に特徴的なスペクトルペクトパタ
ーンを示すことがわかった。NaBH4 の還元して
得られたものと異なり 215 nmβ-sheet の成分が
見られず、かつ通常の酸性条件下と構造が異
なった。また NaBH4 の還元で創成した LP11 系
においても通常の酸性条件下と異なり、金存在
下α-helix 構造をとることがわかった。
Fig.1 Absorption spectra of AuNP/LT11.
1
0.5
0
-0.5
-1
-1.5
Au free
NaBH4
Soniccation
-2
Fig.2200
pH 2.7
CD spectra
of AuNP/LT11
210
220 230
240 250
Wavelength/nm
Fig. 2 CD spetra of AuNP/LT11 systems.
余白
ベンゼンチオール誘導体を用いた金ナノ粒子・金ナノロッド
(発表番号 の創製とキャラクタリゼーション
記入用)
(鹿児島大院理工)
○石田拓也・置鮎佑太・岡村浩昭・蔵脇淳一
【序】金の球状ナノ粒子(AuNS)、ナノロッ
ド(NR)は表面プラズモンに基づく大きな吸
収バンドを紫外~近赤外に示すことや、顕著
な電場増強を示すことから、ナノデバイスと
して応用が注目されている。我々が開発した
1
ベンゼンチオール誘導体(Scheme 1)は、金
ナノ粒子合成の表面修飾化剤として有効であ
2
り、ナノ粒子を機能化するのに優れている。
Scheme 1
さらに、NaBH4のような還元剤を用いること
なくベンゼンチオール誘導体自身が有する還元力でもってAuNSやAuNRを合成できることを
初めて見出した。今回更にScheme 1に示す新たなベンゼンチオール誘導体を用いることで分
散安定化剤を用いることなくAuNSやAuNRを一段階で合成できる新奇な方法を開発した。本
手法により創製したAuNSやAuNRのキャラクタリゼーションを行うと共にAu-機能性分子複
合体の振動構造についてFTIRやラマンスペクトルを測定して考察した。
【実験】機能性分子(Scheme 1)と塩化金酸を適当量、水または有機溶媒中で混合するだけで
容易に機能性分子が修飾したAuNSの生成を示唆する濃い黄色、赤、青紫色等の溶液が得ら
れた。そのコロイド溶液の吸収スペクトルやTEM画像を測定した。また、機能性分子が修飾
したAuNRは、超音波照射を用いて一段階で創製や、置換法
a)
を用いて合成した。さらにAuNSやAuNRの吸着配向状態や
振動構造を明らかにするためにFTIRスペクトルやラマンス
ペクトルを測定した。
【結果と考察】機能性分子で修飾されたAuNSの吸収スペク
トルは約480 nmや約560 nmに吸収極大を示した。これらは
それぞれ、ナノ粒子の粒径が3 nm以下のときに生じた吸収
バンドと、またその小さい粒子が多分散状態であるときに
b)
示した際の吸収バンドと帰属される。更には、機能性分子
の構造や用いる溶媒の誘電率の違いによっても溶液中での
粒子の状態は異なるという結果が得られた。一方、超音波
照射法を用いて得られたAuNRはアスペクト比が4.0~5.3と比
較的大きなNRが得られていることが画像の結果からわかっ
た。機能性分子のSAM、AuNSおよびAuNRのラマンスペク
Fig. 1 1の誘導体で創製した(a)
トルの結果は260 cm-1にAu-Sモードに帰属される振動バンド
AuNSと、(b) AuNR
が観測されたことを示し、チオール基を有する機能性分子が
還元剤として作用し、金表面に吸着していると結論できた。
P13
球状金ナノ粒子の生成速度に及ぼす添加塩効果
(鹿児島大院理工)○弟子丸めぐみ・石田拓也・蔵脇淳一
【緒言】金ナノ粒子は、表面プラズモンに由来する大きな吸収バンドを紫外~近赤外域に示すこと
や、顕著な電場増強を示すことから、光ナノデバイスやバイオセンサーとしての応用が期待されてい
る。このような光機能性を発揮させるためには、金ナノ粒子のサイズや形状を制御することが必要とな
る。本研究では、球状金ナノ粒子(AuNS)の生成速度に及ぼす添加塩の種類や濃度依存性につい
て調べ、速度論的に考察した。
【実験】界面活性剤であるCTACまたはCTAB水溶液に塩化金酸水溶液(HAuCl4)を加え、
NaBH4水溶液により還元することで、AuNSを生成した。溶液は、恒温槽中で25 ℃に保ちな
がら撹拌した。NaCl、NaBrを濃度を変えて添加し、反応速度を比較した。調製した溶液の
UV-vis吸収スペクトルを測定し、透過型電子顕微鏡(TEM)によりAuNSの形状と粒径を評価し
た。
1.2
【結果と考察】保護剤にCTABを用いる
1h後
1
3h後
と、CTACを用いたときよりもAuNSの
6h後
24h後
生成速度が遅くなることを確認した。
CTAC保護AuNSでは、プラズモンピー
Absorbance
0.8
48h後
72h後
0.6
5日後
7日後
ク が 525 nm 付 近 に 見 ら れ た 。 ま た 、
0.4
CTAB保護AuNSでは、最初に見られた
0.2
475 nm付近の吸収ピークが時間が経つ
0
につれて小さくなっていき、525 nm付
400
500
600
700
800
900
Wavelength / nm
近に吸収ピークが現れ大きくなってい
Fig.1 UV-vis スペクトルの経時変化
くことを確認した。その際、等吸収点
が観測された(Fig.1)。475 nm付近の吸
0.5
収ピークは、AuNSの前駆体である金
0.45
0.4
ナノクラスターに基づくものと結論付
で、AuNSの生成速度が増大し、最終
生成濃度に達する時間が短くなった。
また、NaBrを添加すると、AuNS生成
が抑制されることがわかった。このよ
うに、添加する塩の種類が変わること
Absorbance
けた。さらに、 NaCl を添加すること
0.35
0.3
0.25
[NaCl]
0.2
0M
0.15
0.005 M
0.1
0.015 M
0.05
0
0
20
40
80
100
120
Time / h
によって、生成速度に及ぼす影響が異
なることを確認した。
60
Fig. 2
吸光度の時間依存性
140
160
180
P14
金ナノロッドの生成速度に及ぼす添加塩効果
(鹿児島大院理工)
○下堂薗公平・石田拓也・蔵脇淳一
1. 緒言
金ナノロッド(以下、AuNR)は異方性を持つ光
応答性の金属ナノ粒子であり、紫外領域から近赤外
領域において、2つのプラズモンバンドを有する。
特異な物理特性を有し、生体適応性に優れているた
め、医療や工学等の分野において研究がなされてい
る。このAuNRの生成は、温度条件、各試薬の濃度条
件、塩の添加、可溶化などにより影響を受ける。今
回の研究において、各試薬の濃度条件の変更、塩の
添加における、速度論的解析を行った。
Fig.1
2.
金ナノロッド溶液の写真画像
実験方法
AuNRはSeed‐Growth法を用いて生成した。AuNR生
成開始後は恒温槽内で25℃一定に保った。恒温槽に
入れた時を0分とし、5分または10分ごとに、反応が
平衡状態に至るまでUV-vis吸収スペクトルを測定し
た。これを基に速度論的な解析を行った。
Growth 溶 液 の HAuCl4 水 溶 液 濃 度 、 CTAB 水 溶 液 濃
度、AgNO3 水溶液添加量を変化させ、NaCl、NaBr、
NaIをGrowth溶液に添加したものと比較した。
Fig.2
UV-vis吸収スペクトル
3. 結果・考察
塩を添加しなかったものは、全ての条件で右図の
ように約40分から1時間程度で、2段階の反応を経て
平衡状態に達した。また濃度を変化させたことによ
り、濃度の高い溶液ほど生成速度が増大することが
分かった。また、NaClを加えたものは、生成速度が
減少した。NaIを添加するとAuNRは生成されなかっ
た。これは、I-イオンによるケミカルエッチングが
原因であると思われる。NaBrの添加のよる生成速度
の変化についての結果と考察はポスターにて記載する。
Fig.3
時間に対する吸光度の増加
PVP 保護銀ナノ粒子の創製とキャラクタリゼーション
P15
(鹿児島大院理工)○石橋晴菜・石田拓也・Kwati Leonard・蔵脇淳一
[序] 近年、金属ナノ粒子特有の現象を利用する新たなデバイスの開発が進められており、特
に、局在型プラズモン共鳴を利用したデバイスの開発は情報通信・医療・環境・エネルギー
など、様々な分野において実用化への期待が高まっている。銀ナノ粒子の合成方法は数多く
報告されている。しかしながらそれらの方法は手順が複雑であり、当研究室では加熱するこ
とによってポリビニルピロリドン(PVP)保護銀ナノ粒子を容易に合成できる手法とその結
果について報告する。用いた保護剤 PVP の分子量に銀粒子のサイズや形状は依存することが
明らかになった。
[実験]
80 ℃の湯浴中で PVP (分子量と添加量を変えたもの), AgNO3 0.85 g, 還元剤として用
いる HMTA 0.04 g を蒸留水 50 ml 中に溶解させ、銀コロイド溶液を調製した。その溶液を1
分毎に 500 μL とり、4.5 mL の蒸留水を加えることで 10 倍希釈した。生成物のキャラクタリ
ゼーションには、TEM 観察および紫外―可視吸収スペクトルを用いた。
[結果]
Fig. 1 に示すように分子量 10000 で調製した銀コロイド溶液の吸収スペクトルは、
410nm 付近に銀ナノ粒子のプラズモン共鳴に基づく吸収極大が観察され、時間の経過ととも
に吸光度が増大し、銀ナノ粒子が生成していくことが示された。PVP の分子量が大きくなる
程、吸収スペクトルのスペクトル幅がブロードになり種々のナノ粒子生成を示す結果が得ら
れた。一方、TEM 画像から銀ナノ粒子は 30~80nm の粒径を有し比較的均一な球状をとって
いることが観測された。さらに分子量が 40000 と 55000 の PVP を用いた時の TEM 画像は球
状のナノ粒子以外にも三角形、プリズム型などの形状のものが生成しており、さらにより凝
集していることがわかった。吸収スペクトルへの PVP の濃度依存性が銀ナノ粒子のプラズモ
ンバンドにいかなる効果をもたらすかを現在検討中であり。詳細は当日報告する。
0.35
1分後
0.3
2分後
0.25
3分後
4分後
0.2
Abs
5分後
6分後
0.15
0.1
0.05
0
200
300
400
500
600
700
800
900
1000
1100
Wavelength / nm
Fig.1 PVP(MW:10000)を用いて調製した Ag コロイド溶液の吸収スペクトル
(左)とその TEM 画像(右).
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