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日本的な「宗教意識」の構造―「価値観と宗教意識

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日本的な「宗教意識」の構造―「価値観と宗教意識
March 2
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8
―4
5―
日本的な「宗教意識」の構造*
――「価値観と宗教意識」に関する全国調査の結果の分析 ――
真
鍋
一
史**
省・日本学術振興会)基盤研究(A)による共同
!.はじめに
研究「現代人の価値意識と宗教意識の国際比較
研 究――脱 欧 入 亜 の 視 点 か ら――」(課 題 番 号
近年、社会科学の領域において、
「価値観」と
17203036)の一環としてなされたものである。こ
いうテーマが、新しい様相――たとえばポストモ
の共同研究は、「事例研究・質的調査グループ
ダンの価値観の出現など――のもとに、再び活発
(大村英昭が統括)」と「質問紙調査・量的調査グ
に取りあげられるようになってきた。こうして、
ループ(真鍋一史が統括)」から構成され、これ
1980年代以降、
「ヨーロッパ価値観調査(European
まで、以下のような研究がなされてきた。
Values Study)」「世界価値観調査(World Values
(1)「価値観と宗教意識」に関する内外の先行
survey)」
「国際社会調査プログラム(International
研究――「理論的研究」と「実証的研究」――の
Social Survey Programme)」などの、人びとの価
成果についてのレヴューと、そのような成果を生
値観に焦点を合わせた大規模な国際比較調査が実
み出してきた「調査データ・資料」の収集・整理
施されるようになってきた[真鍋、2
0
03]。これ
・まとめ。
らの質問紙調査では、多くの場合、その中心に
(2)この研究領域における方法論的問題、と
「宗教意識」が位置づけられてきた。その結果、
くに国際比較調査における religiosity の観察と測
「欧米の国ぐににおいては宗教意識は人びとの価
定の「等価性(equivalence)」の問題の提起と、
値・信念・態度と強く結びついているが、日本で
そのような問題の解決の方法に関する提案。
はそのような傾向は見出せない」ことが検証され
(3)この研究領域における今日的問題・戦略
てきた。「無宗教の国・日本」というフレーズが
的問題の1つとして――従来の「教義宗教」の考
一般化してきたのも、このようなコンテキストに
え方からするならば、ここに取りあげる現象は、
おいてである[真鍋と Jagodzinski、2000、 真鍋、
いわゆる「世俗化(secularization)」の事例にほ
Jagodzinski と小野寺、2000、Manabe, Jagodzinski
かならない――、人びとの宗教的感性・行動、と
and Onodera,2002、真鍋と Jagodzinski、2002、
くに世界における「火葬化の進展」に伴う遺骨灰
Manabe and Jagodzinski,2002、Jagodzinski and
について考え方、感じ方とその取り扱い、動物慰
Manabe,2003、真鍋、2003]。しかし、それは欧
霊祭、エンバーミング、ペット・ロスなどのテー
米型の宗教観にもとづくからであって、日本独自
マに焦点を合わせた、米国ハワイと西海岸、韓
の宗教意識を射程に入れて検討するならば、必ず
国、タイ、台湾、沖縄、北欧、とくにスウェーデ
や別の側面が見えてくるに違いない。これが今回
ンなどでの「フィールド調査――実地観察・聞き
の調査研究(全国調査)の基本的な問題関心であ
取り調査――」の実施。
る。
そこで、つぎに、この全国調査の位置づけにつ
そして、このような研究を踏まえて、今回の質
問紙調査が企画・設計されたのである。
いて述べておかなければならない。調査は、平成
17年度∼平成19年度科学研究費補助金(文部科学
*
キーワード:宗教的行動、宗教的信念・感情・意識、宗教のはたらき・機能・性質
関西学院大学社会学部教授
**
―4
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社 会 学 部 紀 要 第1
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4号
るものの見方・考え方・感じ方・行動の仕方、そ
!.調査の概要
してその背後にある価値観については、日本にお
いても「religiosity は人びとの価値・信念・態度
サンプルは、2006年3月31日現在の住民基本台
帳より20歳以上の男女を層化2段無作為抽出し
と結びついているかどうか」を検証するために準
備したものである。
た。全国を12の地域に分け、都市規模 を16大 都
今回のデータ分析(data analysis)では、まず
市、その他の市、町村に分けて、16大都市から25
(2)の諸項目を取りあげる。それは、(2)と
地点、その他の市から63地点、町村から12地点の
(3)の諸項目間の相互の関係の分析に入るに先
合計1
00地点を抽出し、それぞれの地点から1
8人
立って、まず「日本人の宗教意識(religiosity あ
ずつの合計1,
800人をサンプリングした。
るいは religious faith, belief, attitude, feeling,
サンプリングと実査は、2007年3月に行なっ
behavior)」と呼ばれるものの全体像――筆者の
た。調査会社(中央調査社)に委託し、実 査 は
用語を使うなら、
「森」――を把握しておくこと
「訪問留 め 置 き 法」で 行 な っ た。有 効 回 収 率 は
が、必要であると考えるからである。そして、そ
49.
2%で有効回答数は882となった。
のような分析は、やはり「探索的(exploratory)」
あるいは「問題発見的(heuristic)」な性格を持
".調査の内容――質問諸項目の分類――
つものとなるであろう。
つぎに、質問諸項目を、質問――そして同時に
こ の 調 査 の 質 問 諸 項 目 は、
(1)被 調 査 者
その回答の選択肢――の「形式」によって分類す
(respondent)の社 会 的 属 性(social attribute)・
る方法としては、「ファセット(Facet)」の考え
デモグラフィック要因(demographic factor)に
方がある。
関する諸項目、(2)日本人の独自の宗教意識を
ファセットという考え方は、L. Guttman によっ
捉える諸項目、(3)人びとの生活・社会・政治
て考案された独自の知的創造のアイディアであ
をめぐるものの見方・考え方・感じ方・行動の仕
り、この領域における1つの到達点を示す方法論
方を捉える諸項目、の3種類に分けられる。
的 な 提 案 と い う こ と が で き る。S. Shye[1978]
一般に質問紙調査の質問諸項目は、その質問の
「内容」および「形式」にもとづいて分類される。
は、ファセットという考え方(ファセット・アプ
ローチ)を3つの領域に区別している。
いうまでもなく、上述の分類はその「内容」にも
(1)ファセット・デザイン(Facet Design):①
とづく分類といえる。ここで、3種類の質問諸項
観察(つまり質問紙調査)のための概念装置・枠
目を準備したのは、つぎのような考え方による。
組みの準備、②質問文とその回答の選択肢のタイ
ま ず(1)被 調 査 者 の 社 会 的 属 性・デ モ グ ラ
プ(response category)の選択、③調査の理論的
フィック要因については、これは①今回の質問紙
・仮説的図式を文章の形で表現する独自の技法で
調査のサンプルの母集団(universe・population)
あるマッピング・センテンス(Mapping Sentence)
に対する代表性をチェックすることを可能にす
る、②性、年齢、学歴、職業、所得などと、人び
とストラクタプル(Structuple)の作成。
(2)ファセット・アナリシス(Facet Analysis):
とのものの見方・考え方・感じ方・行動の仕方
仮説検証のためのデータ分析の技法、たとえば
(社会科学の用語でいえば、「価値・信念・態度・
「尺度分析(Scalogram Analysis)」「部分尺度分析
意見・行動」)との関係の分析――
一般に「条
(Partial Order Scalogram Analysis)」「最小空間分
件 分 析(conditional analysis)」と 呼 ば れ る――
析(Smallest Space Analysis)」「中央値回帰分析
を可能にする、という2つの意味をもっている。
(Median Regression Analysis)」――この最後の技
つぎに、(2)日本人の独自の宗教意識について
法は Guttman が2変数間の関係を描写する簡便
は、これは今回の調査の中心的なテーマである日
法として用いたものであるが、その解説はまった
本人の religiosity を捉えるための諸項目である。
くなされていない。筆者はこの技法にこのような
最後に、(3)人びとの生活・社会・政治をめぐ
命名を行なうとともに、専門家の協力にもとづく
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コンピュータ・プログラムの作成を行なった――
る」「あるような気がする」
「ないようなきがす
などの開発。
る」「ない」の4つ)
。
(3)ファセット・セオリー(Facet Theory):質
(3)宗教的な信念・感情・意識に関する諸項
問紙調査にもとづく人間行動の諸法則――第1の
目(回答の選択肢は「そう思う」「ややそう思う」
法則、第2の法則、多調回帰の法則――などとそ
「どちらともいえない」「あまりそう思わない」
の理論的根拠(rationale)の定式化、がそれであ
「そう思わない」の5つ)。
る。
(4)宗教のはたらき・機能・性質に関する諸
ここで、ファセット・アプローチについて、さ
項目(回答の選択肢は「そう思う」
「ややそう思
らに詳細に解説する紙面の余裕はない。この点に
う」「どちらともいえない」
「あまりそう思わな
ついては、筆者による別の文献を参照されたい
い」「そう思わない」の5つ)。
[真鍋、1993、Manabe,2001、真鍋、2002]。
ここで、回答の選択肢の「形式」という点から
さて、ファセット・デザインの考え方からする
するならば、
(1)と(2)(3)(4)には大き
ならば、調査票で用いられる質問項目は、まず
な違いがあることがわかる。それは、
(1)の場
open-ended question と closed-ended question に
合の回答のカテゴリィは一方の端の「しない」の
区 別 さ れ る。Guttman は、後 者 を さ ら に range
ところに0ポイントがくる形であるのに対して、
question と cafeteria question に 区 別 し、質 問 紙
(3)と(4)の場合は0ポイントは「どちらと
調査にもとづく人間行動の諸法則の定式化という
もいえない」というところにあり、その0ポイン
視座からするならば、range question――「賛成
トを中心に両端(上下あるいは左右)に positive
― 反対」「好き ― 嫌い」「満足 ― 不満足」などの一
な 方 向(「そ う 思 う」
「や や そ う 思 う」)と
次元的(unidimensional)な選択肢を提示する形
negative な方向(「そう思わない」「あまりそう思
式――こそが有効であるとする。では、cafeteria
わない」)がセットされる形となっているという
question とは、具体的にどのようなものかという
ことである。そして(2)の場合はいわば(3)
と、たとえば余暇の過ごし方についての質問で、
と(4)の変形で、0ポイントを示す選択肢が省
「仕事の疲れを癒す」
「自己実現をはかる」
「好き
略されているタイプということができる。
なことをして楽しむ」
「家族と過ごす」などの多
さて、以上においては、今回の調査の質問諸項
次元的(multidimensional)な選択肢を提示する
目を、まずその「内容」にもとづいて3種類に分
という形式がそれである。そして、このような
類するとともに、つぎにそのようにして分類され
range question は、その種類――その回答の選択
た、2番めの「日本人の独自の宗教意識を捉える
肢の形――にもとづいて、さらにいくつかのタイ
諸項目」を、その「形式」というところに焦点を
プに分けられる。これが、ここにいう、質問諸項
合わせて、4種類に分類した。では、データ分析
目を質問――そして同時に、回答の選択肢――の
に先立って、なぜこのような分類作業をしておく
「形式」によって分類する方法である。すでに述
のかというと、Guttman とその研究グループが
べたように、ここでは「日本人の独自の宗教意識
ファセット・セオリーにもとづいて蓄積してきた
を捉える質問諸項目」をデータ分析のために取り
知見(cumulative findings)からするならば、「質
あげるので、それらを具体的な事例として用い
問諸項目間の関係の大きさは、質問の『内容』だ
て、range の種類にもとづく質問諸項目の分類の
けでなく、質問の『形式』によっても影響を受
仕方を示すことにする。それは、質問諸項目を以
け る」――上 述 の 例 で い え ば、0ポ イ ン ト が
下のような4種類に分類するその方法である。
response scale の『中間』のところにくるいわゆ
(1)宗教的な行動をしているかどうかに関す
る attitudes の 質 問 と、0ポ イ ン ト が response
る諸項目(回答の選択肢は「よくする」
「ときど
scale の一方の端にくるいわゆる involvement の
きする」「たまにする」「しない」の4つ)。
質問項目との関係は、その質問項目の「内容」に
(2)神仏、霊魂、輪廻などが存在すると思う
かかわらず、し ば し ば monotone(linear)で は
かどうかに関する諸項目(回答の選択肢は「あ
なく、 polytone の形になることがわかっており、
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Guttman はこれを「多調回帰の法 則」と 呼 ん だ
意識と変わらぬ宗教意識』東京:國學院大
――ということがわかっているからにほかならな
い。社会科学の領域におけるデータ分析では、こ
学
西脇
れまで、そして現在でも、多くの場合、質問項目
の「内容」に即して項目間の関係についての分析
良(2004年)『日本人の宗教的自然観』
京都:ミネルヴァ書房
林
文(2007年)『身近な生活における伝統文
のデザインが準備され、質問の「形式」が考慮さ
化意識に関する調査――2006年横浜市4区
れることは少ない。このように、データ分析の
郵送調査報告書――』東京:東洋英和女学
「事前」にファセット・デザイン(Facet Design)
院大学
と呼ばれる準備作業を十分に整えておくのがファ
ロバート・キサラ、永井美紀子、山田真茂留
セット・アナリシスの特徴といえるのであり、こ
(2007年)『信頼社会のゆくえ――価値観調
の点がデータ分析の「事後」に結果の意味づけを
査に見る日本人の自画像――』東京:ハー
試みることの多い「因子分析(Factor Analysis)」
ベスト社
との大きな相違点ということができるであろう。
今回の調査の内容ということに関しては、以上
いうまでもなく、ここでは日本人の religiosity
のような質問諸項目の分類ということ以外に、ど
の測定に取りくんだ実証的研究を網羅的に取りあ
うしても述べておかなければならないことがあ
げたわけではない。そうではなくて、はじめの問
る。それは、
「日本人の独自の宗教意識を捉える
題関心であった日本においても「宗教意識は人び
諸項目」をどのように作成したかということで
との価値・信念・態度と結びついている」という
あ る。い い か え れ ば、日 本 人 に 固 有 と 考 え ら
命題を検証するために、日本人の religiosity につ
れ る religiosity に つ い て の conceptualization と
い て の conceptualization と operationalization に
operationalization の試みということが で き る。
端緒を開くことができれば十分であった。そのた
この点については、これまでさまざまな文献にお
めに、ここでは筆者らの共同研究のグループのメ
いて、じつに多くのことが語られてきた。しか
ンバーの手近にある文献を用いることにした。い
し、その多くが、いわばその文献の筆者の「洞察
ずれにしても、こうして、これらの文献を踏まえ
力・観察力・イマジネーション」にもとづく記述
て、調査票の設計がなされたのである。
――もちろん、社会学にとっては、それはまさに
研究の出発点であるとともに、ある意味では到達
!.データ分析
点ともいうべきもので、きわめて重要であること
はいうまでもない――にとどまり、それを質問紙
1 .回答の分布の型
法(questionnaire method)にもとづく大量観察
質 問 紙 調 査 の デ ー タ 分 析 の 第1段 階 は、そ
的なサンプル・サーベイによって実証的に検証す
れぞれの質問項目ごとの「単純集計表(simple-
るという試みは必ずしも多くはない。その多くは
tabulations=marginal frequency distributions)」に
ない文献のなかから、ここでは以下のものをあげ
示された回答の分布が、
(1)「単一最頻(single-
ておきたい。
modal)型」であるか、それとも(2)「複数最
頻(multi-modal)型」であるかの検討であろう。
NHK 放送世論調査所(1984年)
『日本人の宗教
意識』東京:日本放送出版協会
そして、前者の(1)の型の場合、それが、①最
初の選択肢のところで回答者のパーセンテイジが
金児暁嗣(1997年)
『日本人の宗教性――オカ
最も高く、回答の選択肢の順にそのパーセンテイ
ゲとタタリの社会心理学――』東京:新曜
ジが直線的に低くなっていく「linear 減少型」、
社
②回答の選択肢の「中間(in the middle)」のと
石井研士(2007年)
『データブック 現代日本
ころのパーセンテイジが最も高く、そこから両極
人の宗教[増補改訂版]』東京:新曜社
に離れていくにしたがってパーセンテイジが低く
井上順孝(2003年)『若者における変わる宗教
なっていく「ベル型」
、③逆に、回答の選択肢の
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順にそのパーセンテイジが直線的に高くなってい
見る」、後者の 側 面 を「木 を 見 る」と 呼 ん で い
く「linear 増加型」
、のいずれの型となっている
る。では、このような「森を見る」ための技法と
かの検討、さらに後者の(2)の型の場合、それ
して、どのようなものが利用できるかというと、
が、①回答の選択肢の「両極」でそのパーセンテ
ここではまず「相関マトリックス」の検討から始
イジが高く、
「中間」のところでそれが低い「U
め る。い う ま で も な く、「相 関 マ ト リ ッ ク ス」
(あるいは V)字型」、②その変形型で回答の選択
は、n 個の項目の相互間のすべての単純相関係数
肢が4カテゴリィの場合、2番目と1つ置いて最
を n×n のマトリックス(行列)の形で示したも
後のカテゴリィでパーセンテイジが高く、1番目
のである。データ分析に取りあげる質問諸項目は
と3番目でそれが低い「N 字型」、のいずれの型
57項目となっているので、こうして作成した「相
となっているかの検討、が必要となってくるであ
関マトリックス」は縦1m、横2m にも及ぶ大き
ろう。
なサイズのものとなった。そのため、その相関マ
ここでデータ分析に取りあげる質問諸項目は、
トリクスを、そのままの形で、ここに掲載するこ
日本人の独自の宗教意識を捉える諸項目であり、
とはできない。そこで、そこから読み取ることの
それは57項目となる。この57項目が、それぞれど
できる知見とそれをめぐる考察について箇条書き
の回答の分布の型に分類されるかを示したのが、
的に記しておくにとどめる。
つぎの表1である。
(1)ここで扱う5
7の諸項目を、①宗教的な行
動をしているかどうかに関する諸項目、②神仏、
表1
回答の分布の型の頻度
霊魂、輪廻などが存在するかどうかに関する諸項
分布の型
ケース数
%
目、③宗教的な信念・感情・意識に関する諸項
(1)の① linear 減少型
8
1
4.
0
目、④宗教のはたらき、機能、性質に関する諸項
4
0
7
0.
1
目、に分類したことについてはすでに述べた。し
(1)の③ linear 増加型
7
1
2.
3
(2)の① U(V)字型
1
1.
8
(2)の② N 字型
1
1.
8
がそれぞれについて、
「そう思うか」
、それとも
5
7
1
0
0.
0
「そう思わないか」を回答するという形式になっ
(1)の②ベル型
かし、④については、これらの質問項目は宗教の
はたらき、機能、性質がいわゆる statements あ
計
るいは propositions の形で示されていて、回答者
ている。そこで、このような statements あるい
以上の結果から、ここで分析に取りあげる質問
は propositions の内容が「肯定的(positive)」な
諸項目のほとんどが、「単一最頻型」であり、そ
ものであるか、それとも「否定的(negative)」な
れも「ベル型」の分布であることがわかる。この
ものであるかが問われることになる。こうして④
ことから、以下の分析を進めるにあたりとくに問
の質問項目を「肯定的な statements/propositions」
題はないものといえよう。
と「否 定 的 な statement/propositions」の2つ 分
けるとするならば、全体で5種類の質問項目群が
2 .「相関マトリックス」(correlation matrix)
――質問諸項目間の関係の分析――
ここでのデータ分析の基本的な考え方は、比喩
区別されることになる。ここでは、このような質
問諸項目の分類を踏まえて、「相関マトリックス」
の検討を進める。
的にいえば、いきなり「木を見る」のでなく、ま
さて、一般に「相関マトリックス」の検討はつ
ず「森を見る」ところから始めるというものであ
ぎの2つの側面から行なわれる。
(!)個々の相
る。一般に、質問紙調査のデータ分析において
関 係 数 の「正 負 の 符 号(sign)」の 検 討、
(")
は、まず広く全体的なデータの構造や関連を把握
個 々 の 相 関 係 数 の「数 値 の 大 小(size)」の 検
したうえで、つぎにデータの特定の側面に焦点を
討、がそれである。このように視座を定めて、
絞って分析を深めていくという行き方が常套手段
「相関マトリックス」を検討していくならば、全
となっている。筆者は、この前者の側面を「森を
体として上述のような質問諸項目群「間」の相関
―5
0―
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係数とくらべて、質問諸項目群「内」の相関係数
仰なき宗教」という指摘と軌を一にするものとい
のほうで、
(!)その「符号」はプラスのものが
える[柳川啓一、1
989]。このような視座に立っ
相対的に多く、また(")その「数値」は相対的
て、Q7の「なにか宗教を信仰しているか」と、
に大きいものが多い、ということがわかる。この
Q24の「宗教的な心というものは、大切だと思う
ことから、以下のデータ分析においては、このよ
か」の2つの質問項目と、それ以外の質問諸項目
うな質問諸項目群ごとに advanced analysis を進
との関係を示した「相関係数」をくらべてみるな
めていくことの可能性が示唆されるのである。
らば、後者のほうでその相関係数の数値がより大
(2)つぎに、以上のような質問諸項目の分類
きいものとなっている場合が多いことがわかる。
というようなアイディアから離れて、全体として
このことから、確かに日本人の religiosity の中心
「相関マトリックス」のどのあたりで相関係数の
には、
「宗教的な心は大切」という気持ちが位置
数値が小さなものとなっているか――相関係数の
していることが示唆されるのである。
大小の判断については、決まった考え方があるわ
けではない。ここでは、それが0.
1未満の場合に
3 .最小空間分析(Smallest Space Analysis)
「その数値は小さい」とする。この基準からする
以上においては、
「相関マトリックス」の個々
ならば、マイナスの「符号」のついている相関係
の相関係数の「符号」と「数値」の比較にもとづ
数のほとんどで、その「数値」は小さなものと
いて、そこに見られる傾向といったものを読み取
なっている――を見ていくならば、それが「Q12
ることにつとめた。ところが、このような分析作
b.おみくじを引くかどうか」
「Q19f.UFO はあ
業にはつぎのような問題が残される。それは、こ
ると思うかどうか」
「Q21f.神様といっても仏様
の分析作業では、
「相関マトリックス」に示され
といっても同じであると思うかどうか」
「Q21g.
た個々の相関係数が1対の変数間の関係の測度
この世のしあわせの方が来世の救いよりも大切で
(measurement)にとどまるものであるかぎり、
あると思うかどうか」の4項目とほかの質問項目
それぞれの傾向の読み取りがどこまでも個々に独
との関係のところにおいてであることがわかる。
立したものに終わらざるをえないということであ
このことは、以下の advanced analysis において
る。つまり、再び筆者の用語を用いるならば、相
は、これらの4項目は削除しておいたほうが、そ
変わらず「森」が見えてこないのである。こうし
の分析はうまくいくということを示唆していると
て、これら個々の独立した傾向を背後で関連づけ
いえるかもしれない。
ていると考えられる「基底的な側面」を抽出する
(3)今回の調査票では日本人の religiosity に
データ分析の技法が要請されることになる。この
ついて、2つ の key variables を 準 備 し た。1つ
ような要請にこたえる技法の1つに L. Guttman
は Q7の「あなたは、なにか宗教を信仰していま
の「最小空間分析」がある。
すか」という質問項目ではあり、もう1つは Q24
最 小 空 間 分 析 は、多 次 元 尺 度 構 成 法
の「宗教的な心というものは、大切だと思います
(multidimensional scaling)の系列に属し、「相関
か」という質問項目である。いうまでもなく、こ
マトリックス」に示された n 個の項目間の関係
れらの2つの質問項目を準備したのは、統計数理
を m 次元(m<n)の空間における n 個の点の距
研究所の『日本人の国民性』に関する研究成果を
離の大小によって示す方法である。相関が高くな
踏まえてのことである。それは、「日本人は『な
るほど距離は小さくなり、逆に相関が低くなるほ
にか宗教を信仰しているか』と尋ねられると6割
ど距離は大きくなる。通常は諸項目間の関係を視
の人びとが『ない』と答えるものの、同じく6∼
覚的に描写するために2次元(平面)かあるいは
7割の人びとが『宗教的な心は大切か』と聞かれ
3次元(立体)の空間布置が用いられる。アウト
ると、それに対しては『大切だと思う』と答え
プットの座標軸には固有の意味はなく、この点が
る」という知見であり[石井研士、2
007]、まさ
「因子分析」と異なるところである。
にこの点に日本人の religiosity の特徴が見られる
以上から、
「最小空間分析」はデータの全体的
と考えられる。確かに、この点は柳川啓一の「信
な構造や関連を視覚的に描き出すのにきわめて適
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した技法であることがわかる。ここでは、
「日本
人の独自の宗教意識」の分析にこの技法を援用す
―5
1―
(1)宗教的な行動に関する諸項目(1
0項目)の
最小空間分析
ることの意義について、もう少し考えておきた
上述の「「相関マトリックス」から Q10、Q12a
い。筆者は、かねてから社会科学の領域の実証的
∼i の10項目の相互間の関係を示した部分を取り
研究(empirical research)に お け る「プ ロ セ ス
出し、それをデータ分析のコンピュータ・ソフト
提示型論文(海野道郎の用語)
」の重要性を主張
ウェアのパッケージ HUDAP(Hebrew University
してきたが、このような線上で、今回の「価値観
Data Analysis Package)を用いて分析することに
と宗教意識に関する調査」での質問紙設計に関す
よって、つぎのような2次元の SSA マップ(空
る基本的な考え方とともに、その具体的なプロセ
間布置)が得られた(図1)。コンピュータのア
スについて説明してきた。それは、調査に先立っ
ウトプットは、2次元の空間に、それぞれの変数
て、日本人の religiosity に関する文献の渉猟が行
(質問項目)の位置を示した数字が印字されてい
なわれ、それを踏まえて調査票の設計がなされた
るものであり、この SSA マップに描かれた4つ
と い う こ と で あ る。い い か え れ ば、そ れ は、
の同心円(concentric circle)は、筆者が Guttman
日本人の religiosity をめぐる conceptualization と
のファセット・セオリーの「経験法則(empirical
operationalization の試みということも で き る。
law)」を踏まえて、これら10項目の空間布置にあ
ところが、このような作業は、その性格上、いわ
る意味づけ(解釈)を試みた結果である。それが
ば日本人の religiosity のさまざまの側面にサーチ
どのような解釈かというと、これら10項目の空間
ライト(T. Parsons の用語)を当ててみたもので
布置は、7(Q12f)の「聖書や経典などの宗教関
あり、それだけではそれぞれの側面がつながって
係の本を読む」を中心にして、それとの関係――
構 成 さ れ る「全 体 像」――つ ま り 日 本 人 の
相関関係――の大きさに応じて、近くの――つま
religiosity の全体像――は見えてこない。そもそ
り相関関係が大きい――同心円内あるいは遠くの
も、これまでの先行研究において、そのような全
――つまり相関係数が小さい――同心円内にそれ
体像を実証的に描き出すという試みそのものがな
ぞれプロットされる形となっているというもの
されていない。
で あ る。い う ま で も な く、こ こ で の 空 間 分 割
こうして、ここでのデータ分析のねらいはとい
(space partition)が、「楕円」ではなく、「円」に
うと、それは個々のバラバラな質問文の形に解き
よって描かれているのは、後者の場合はそれが原
ほぐされた「日本人の宗教意識の諸相」を、それ
点からの等距離を示すものであるからにほかなら
ぞれの質問文の相互の関係の構造というところに
ない。
焦点を合わせて、その全体像を再構成するという
こうして「聖書・経典」を取り囲む第1番目の
試みということになる。そしてこのような「探索
同心円は、それを中心としてそれ以外の諸項目の
的」で「問題発見的」な課題に応えるデータ分析
空間布置を検討するための出発点という位置づけ
法の1つが、
「最小空間分析」にほかならないの
がなされる。
である。
さて、以下においては、日本人の独自の宗教意
つぎに、第2番目の同心円 は、6(Q12e)の
「ふだんから礼拝やお勤めなど宗教的な行いをす
識を捉える56の質問項目を、データ分析のために
る」と8(Q12g)の「決まった日に神社やお寺
取りあげるが、その分析の手順は、まずこれらは
にお参りに行ったり、教会へ行く」の2項目を含
56項目をそれぞれの質問とその回答の「形式」に
むもので、「聖書・経典」との相関係数の大きさ
もとづいて4つに分類した、その4つの質問項目
は前者で0.
54、後者で0.
41――いずれも1%水準
群ごとに「最小空間分析」を試みた上で、つぎに
で統計的に有意――となっており、これらは「か
こうして空間布置されたそれぞれの項目について
なり高い相関」を示しているといえる。
の「単純集計」の結果を検討する、というもので
ある。
さ ら に、第3番 目 の 同 心 円 は、10(Q12i)の
「仏壇を拝む」(0.
21)、9(Q12h)の「神棚を拝
む」(0.
19)――いずれも1%水準で統計的に有
―5
2―
社 会 学 部 紀 要 第1
0
4号
図1
宗教的な行動に関する諸項目の最小空間分析
11
22
33
4
45
56
67
8
79
8
10
0
9
10
Q10
お正月に初詣に行く
Q10
0 お正月に初詣に行く
Q12
2a a
お盆やお彼岸などに墓参りをする
Q12
お盆やお彼岸などに墓参りをする
Q12b
Q12b bおみくじを引く
おみくじを引く
Q12c
c お守りやおふだ(交通安全や入試合格など)を買う
お りやおふだ 交通安全や入試合格など)を買う
Q12
c
お守りやおふだ(交通安全や入試合格など)を買う
Q12d
d 商売繁盛や入試合格などを、祈願しにお寺・神社・教会に
商 繁盛や入
合格などを
願しにお ・神社・教会に行く
Q12e dふだんから礼拝やお勤めなど宗教的な行いをする
商売繁盛や入試合格などを祈願しに、お寺・神社・教会に行く
Q12e
ふだんから礼拝やお
めなど宗教的な行いをする
Q12f
聖 や経典など宗教関係の本を読む
Q12f e聖書や経典など宗教関係の本を読む
ふだんから礼拝やお勤めなど宗教的な行いをする
Q12g
g 決まった日に神社やお寺にお参りに行ったり、教会へ行く
決まった日に神 やお にお参りに行ったり、教会へ行く
Q12h f神棚を拝む
聖書や経典など宗教関係の本を読む
Q12h
Q12i g仏壇を拝む
決まった日に神社やお寺にお参りに行ったり、教会へ行く
Q12i
Q12 h
Q12 i
神棚を拝む
仏壇を拝む
墓参り 2
仏壇 10
0
神棚 9
礼拝・お勤め 6
お参り 8
お守り・おふだ
4
祈願5
祈願
初詣 1
7 聖書
聖書・経典
経典
おみくじ 3
意――、2(Q12a)の「お盆やお彼岸など に 墓
れである。
参りをする」(0.
08)――5%水準で統計的に有
いうまでもなく、このような諸項目の分類は
意――の3項目を含み、これらは「ある程度の相
Guttman のいう「近接仮説(contiguity hypothesis)」
関」を示すものとなっている。
にもとづいている。そもそも質問紙調査というも
最後に、その外側に第4番目の同心円がくる
のは、その質問紙(調査票)で用いら れ る「言
が、そこには「聖書・経典」とは「きわめて低い
葉」の意味をめぐる実証的な測定の技法であり、
相関」を示した5(Q12d)の「商売繁盛や入試
したがってそのデータ分析はまさに調査者と被調
合格 な ど を 祈 願 し に お 寺・神 社・教 会 に 行 く」
査者の両方の側における「意味空間」の探究とい
(0.
03)、4(Q12c)の「お 守 り や お ふ だ(交 通
うことになる。そこで、Guttman の考え方からす
安 全 や 入 試 合 格 な ど)を 買 う」
(0.
02)、1(Q
るならば、調査で用いられる質問諸項目の意味内
10)の「お正月に初詣に行く」
(−0.
01)、3(Q
容が近い場合には、それら諸項目の SSA マップ
12b)の「お み く じ を 引 く」
(−0.
05)が 含 ま れ
における位置(空間的距離)も近いものとなる。
る――こ れ ら は い ず れ も 統 計 的 に 有 意 で な い
じつは、ファセット・セオリーは、このような
――。
「意味空間」と「意味連関」についての概念装置
以上のような SSA マップの読み取りから、少
と実証を踏まえて構築されてきたものである。で
なくともつぎのような2つの点が指摘されるであ
は、以上に分類――因みに、
「量的な次元を数量
ろう。
で表すことを測定という。非量的次元の場合、測
①ここで取りあげた宗教行動に関する10の項目
定に相当するのは分類である」とされている[安
が、以上に述べた同心円によって空間分割される
田、1960]――された、それぞれの諸項目群ごと
3つの領域にグループ化されながら散らばってい
の「意味」はどこにあるといえるのだろうか。こ
ることがわかる。(!)礼拝・お勤め・聖書・経
こでは、それぞれの諸項目に共通する性格に注目
典・お参りのグループ、(")墓参り・神棚・仏
して(!)を「信仰表出的行動」、(")を「伝統
壇のグループ、(#)初詣・おみくじ・お守り・
・慣習的行動」、(#)を「イベント的行動」と呼
おふだ・祈願のグループ、の3つのグループがそ
ぶことにしたい。
March 2
0
0
8
―5
3―
さて、このような知見は、日本人の religiosity
いくつかの同心円が描かれるという形を「シンプ
の観察――ここでは「質問紙調査」という方法に
レックス(simplex)」と呼び、このようにデータ
よる観察――と分析にとって、きわめて示唆的で
分析に取りあげた諸項目間の関係が「シンプレッ
あるといわなければならない。それは、人びとの
クス」の性質を示している場合には、それらの諸
religiosity の国際比較研究においては、いわゆる
項目を「尺度分析(scale analysis:Guttman scale)」
「宗教的な行動」について、このようないくつか
の種類の宗教行動が必ずしも十分に区別されてこ
なかった――いいかえれば「次元の細分化」がな
されてこなかった――からである。
に か け る な ら ば、そ れ ら は「1次 元 尺 度
(unidimensional scale)」を構成するという。
そうだとするならば、ここでの宗教行動の諸項
目も、一方の「聖書・経典」から「お守り・おみ
たとえば、このような領域における調査研究と
くじ・初詣」に到る「一次元尺度」を構成してい
して最も注目されるのは、
「ヨーロッパ価値観調
るものと考えられる。いうまでもなく、このよう
査」に合わせて日本で全国調査として実施された
な「一次元尺度」は、ある1つの特性を線形関係
「日本人の価値観調査」であろう[キサラ、永井、
の形で示している。では、ここでの宗教行動の諸
山田、2007]。ところが、この調査では、このよ
項目における「次元」の特性はどのようなもので
うな宗教行動の種類が区別されていない。それに
あろうか。ごく一般的にいえば、それは信仰心の
もかかわらず、そこから「日本の場合、信仰を
「深さ」あるいは「強さ」といえるかもしれない。
もっている人の割合が低いにもかかわらず、宗教
しかし、筆者は筆者自身の「洞察・経験・イマジ
行事への参加度は高い」という知見を導き出し、
ネーション」にもとづいて、それを「信仰心の自
「日本では宗教行事が慣習化されている」と解釈
覚(self-awareness of religiosity)」というように
している。もう1つの例は、
「国際社会調査プロ
考えておきたい。つまり、
「聖書・経典」におい
グラ ム(宗 教 モ ジ ュ ー ル 調 査)
」で、そ こ で も
てその自覚の意識が高く、
「お守り・おみくじ・
「日本人の宗教行動は社会的な習慣として定着し
初詣」ではそれが低いということである。こうし
ている」とされている[小野寺、1
999]。この記
て、「お守り・おみくじ・初詣」では、人びとは
述 に つ い て は、R. Merton の い う「事 後 解 釈」
ことさらそのような行動が「宗教行動」であると
[Merton、1957=1961]という問題も指摘できる
は意識(あるいは認識)していないにもかかわら
が、それはしばらくおくとしても、前者の場合と
ず、その心のどこか深いところで、いわば無意識
同様にさまざまな宗教行動の種類を区別していな
の「信仰心」をもっているというのが筆者の仮説
いという問題が残される。
である。
(じつはこのような「仮説」は、これら
こうして、今回の質問紙調査をとおして、日本
の諸項目と、以下の分析で取り上げる「神仏・霊
人の religiosity の分析においては、日本人の宗教
魂・輪廻などの存在に関する諸項目」
「宗教的な
行動を「十把ひとからげ」的に取り扱うことの問
信念・感情・意識に関する諸項目」
「宗教のはた
題が浮き彫りとなってきたといえるのである。繰
らき・機能・性質に関する諸項目」との相関関係
り返しになるが、ここで3種類に分けられた宗教
の大きさの検討をとおして検証されるものであ
行動、つまり、(!)「礼拝・お勤め・聖書・経典
る。)
・お 参 り」――「信 仰 的 表 出 行 動」――、(")
さて、以上のような宗教的行動に関する諸項目
「仏壇・神棚・墓参り」――「慣習的行動」――、
の最小空間分析の結果を踏まえて、つぎにこれら
(#)「初詣・おみくじ・お守り・おふだ・祈願」
質問諸項目についての「単純集計」の結果(図
――「イベント的行動」――は、性格的にもかな
2)に目を移すならば、
(!)信仰表出的行動、
り違ったものではあり、その結果、お互いの相関
(")伝統的・慣習的行 動、
(#)イベント的行
関係も小さなものにとどまっているのである。
② Guttman は、 上述のような SSA マップの形、
動、の3種類の行動をくらべて、そのような行動
を「する」(「よくする」)+「時々する」)という回
つまり共通の原点――ここでは「聖書・経典」と
答の割合が、信仰表出的行動のグループの諸項目
いう項目(変数)がこれに当たる――のまわりに
で相対的に低くなっていることがわかる。多くの
―5
4―
図2
社 会 学 部 紀 要 第1
0
4号
宗教的な行動に関する諸項目の単純集計結果
(2)神仏・霊魂・輪廻などの存在に関する諸項
―― 問12「する」
(
「よくする」
+
「時々する」
)
、
目(6項目)の最小空間分析
(
「いつも行く」
+
「行くことの方が多い」
)の% ――
問10「行く」
「宗教的な行動に関する諸項目」の場合と同様
100
の分析を進めた。ただ、ここでの結果(図3)か
90
80
78.1
らするならば、UFO のケース(ほぼ0.
3の値)を
66.2
70
60
%
合とくらべて、全体に「かなり大きい(0.
5以上
44.6
36.1
40
27.7
30
の値)」ものとなっている(いずれも1%水準で
28.2
24.9
統計的に有意)。6項目のなかで、UFO だけがや
17.1
20
10.7
10
0
除いて、諸項目間の相関係数のサイズは前者の場
51.9
50
や異質の項目であるといわなければならない――
問
12
a
問
12
b
問
12
c
問
12
d
問
12
e
問
12
f
墓
参
り
お
み
く
じ
おお
ふ守
だり
・
祈
願
お礼
勤拝
め・
経聖
典書
・
寺
・
教
会
問
12
g
問
12
h
問
12
i
問
10
神
社
・
お
神
棚
仏
壇
初
詣
人びとの心のなかで「神や仏」
「霊魂・輪廻・守
護霊など」と「UFO」は別の意味空間を構成して
いると考えられる――が、残りの5項目について
は、これらを別の同心円を描くことによってさら
人びとが「する」と答えるのは「墓参り」78%と
に分類する必要はないかもしれない。しかし、他
「初詣」66%であり、それに「仏 壇」52%と「お
方で、これらの「存在」に関する諸項目と、つぎ
守り」45%がつづくが、それ以外の諸項目は人び
に取りあげる「宗教的な信念・感情・意識に関す
とのほぼ1!
3か、それ以下でしかない。これらの
る諸項目」との相関係数のサイズを検討していく
結果を見るかぎり、確かに「信仰的表出的行動」
ならば、これら5項目のなかの「神や仏」と「霊
の割合は低く、この点から日本人の religiosity を
魂・輪廻・死後の世界・守護霊」では相違点も見
「信仰なき宗教」と特徴づけることもうなずける。
られる。つまり、そのような相関係数の値が、多
しかし、この傾向が日本に固有な現象であるかど
くのケースについて、後者よりも前者で大きいと
うかという点については、疑問が残る。さらなる
いうことである。このような点からするならば、
検討が必要であるといえよう。
図3のような空間分割にも意味があるといわなけ
図3
神仏・霊魂・輪廻などの存在に関する諸項目の最小空間分析
11
22
33
4
45
56
6
神仏 1
6 UFO
O
たましい 4
5
守護霊
輪廻 3
死後の世界 2
Q19
神や仏
Q19
9a a
神や仏
Q19b
Q19b b死後の世界
死後の世界
Q19c
輪廻転生 生まれ変わり)
Q19c c輪廻転生(生まれ変わり)
輪廻転生(生まれ変わり)
Q19d
d 霊魂(たましい)
霊魂 たましい)
Q19e d守護霊霊魂(たましい)
Q19e
Q19f eUFO
Q19f
O 守護霊
Q19 f
UFO
March 2
0
0
8
図4
―5
5―
神仏・霊魂・輪廻などの存在に関する
諸項目の単純集計結果
(3)宗教的な信念・感情・意識に関する諸項目
(28項目)の最小空間分析
―― 問19「ある」
(
「ある」
+
「あるような気がする」
)の% ――
100
ものとくらべると、かなり複雑な様相を呈してい
90
るよう見える。それは28項目という圧倒的に多く
80
70
65.4
63.9
の項目を1度に分析に取りあげているからにほか
60
%
46.5
50
51.7
46.4
ならない。しかし、じつはこのマップも決してそ
40
29.8
30
れほど複雑なものではなく、その全体的な構造は
これまでのマップと変わるものではない。つま
20
10
0
ここで の SSA マッ プ(図5)は、これまでの
り、「信仰をもっている」とする項目を中心に、
問19a
神仏
問19b
問19c
死後の世界 輪廻転生
問19d
霊魂
問19e
守護霊
問19f
UFO
それ以外の27の諸項目がこの項目との相関関係
(係数)の大きさに応じて、4つの同心円によっ
ればならないのである。
て分割される空間内にそれぞれ布置されていると
このような結果を踏まえて、つぎに「単純集
いうことである。いうまでもなく、それぞれの距
計」の結果(図4)に目を向けるならば、同じく
離の近い項目どうしはその「意味内容」が近いも
UFO の場合を除いて、「ある(『ある』+『あ る よ
のである――すでに述べたように、これが「近接
うな気がする』)」と答える人の割合がどの項目に
仮説」と呼ばれるものの具体的な内容である――
ついても46%以上、とくに「神や仏」、「霊魂」で
と考えられる。つぎに、4つの同心円の内側から
はほぼ65%にも及ぶものとなっていることがわか
順番に、それぞれの空間内に布置された諸項目の
る。これが、後で取りあげる「宗教的な心が大
内容について検討していきたい。
切」という回答とほぼ同じ割合であり、
「信仰が
まず、1(Q7)の「信仰をもっている」とす
ある」という32%の回答の2倍近くにもなってい
る項目から始めて、1番目の同心円内には28(Q
ることはきわめて興味深い。
24)の「宗教的な心は大切」が位置しており、こ
の両者の相関係数の値は0.
30以上――1%水準で
図5
宗教的な信念・感情・意識に関する諸項目の最小空間分析
1
21
32
43
4
55
6
6
77
88
99
10
0
10
11
11
12
2
12
13
13
3
14
14
4
15
15
5
16
16
6
17
17
7
18
19
18
8
20
19
9
21
神さま=仏さま
15
5
20
0
21
1
22
22
23
23
3
12
2
メモリアリズム(思い出・浮かべる)
23
3
10
0 先祖供養=信仰
先祖 養=信仰
4
24
24
4
25
25
5
26
6
26
Q7
宗教信仰の有無
Q7
7
宗 信仰の有無
宗教信仰の有無
Q20
a
祖先の人たちとは深い心のつながりを感じる
Q20
0a b
祖先の人たちとは深い心のつながりを感じる
Q20
神社やお寺、教会では心が落ち着く
Q20b
b c
神 やお寺、教会では心が落ち着く
神社やお寺、教会では心が落ち着く
Q20
神社やお寺、教会ではゴミを捨てたり、汚したりするようなことはでき
ない、教 ではゴミを捨てたり、汚したりするようなことはできない
Q20c
c 神社やお寺、教会ではゴミを捨てたり、汚したりするよう
神 やお
なことはできない
Q20
神社やお寺、教会では自然と手を合わせたくなる
Q20d
d d
神 やお
神社やお寺、教会では自然と手を合わせたくなる
、教会では 然と手を合わせたくなる
Q20 e
なにか困ったことがあるときは、
「神さま仏さま」と心の中で叫びたく
Q20e
e なにか困ったことがあるときは、「神さま仏さま」と心の
なにか困ったことがあるときは
神さま仏さま」と心の中で叫びたくなる
中で叫びたくなる
なる
Q20f
f f何ごともなく毎日生活できることは、神仏のおかげだと思
何ごともなく毎日生活できることは、神仏のおかげだと思う
う
Q20
何ごともなく毎日生活できることは、神仏のおかげだと思う
Q20g
g g
神や仏に願いごとをすると、なんとなくかなえてくれそうな気がする
神や仏に願いごとをすると、なんとなくかなえてくれそう
な気がする
Q20
神や仏に願いごとをすると、なんとなくかなえてくれそうな気がする
Q20
h
祖先の霊は、ずっとどこかで生きていて、われわれ子孫をいつも見守っ
Q20h
h 祖先の霊は、ずっとどこかで生きていてわれわれ子孫をい
祖先の霊は、ずっとどこかで生きていてわれわれ子孫をいつも見守ってくれている
つも見守ってくれている
てくれている
Q21a
a 先祖を供養しない人は、信仰のない証拠である
先祖を 養しない人は、信 のない証拠である
Q21 a
先祖を供養しない人は、信仰のない証拠である
Q21b
b b
神仏をそまつにするとバチがあたる
Q21
神仏をそまつにするとバチがあたる
Q21c
c c
亡くなった家族との思い出は、大切である
Q21
亡くなった家族との思い出は、大切である
Q21
神仏に救われるとは、この世でうまくいくことだと思う
Q21d
d d
神仏に救われるとは、この世でうまくいくことだと思う
Q21
この世のよい行いは、来世で報われる
Q21e
e e
この世のよい行いは、来世で報われる
Q21 f
神さまといっても、仏さまといっても同じである
Q21ff 神さまといっても仏さまといっても同じである
Q21 g この世のしあわせの方が、来世の救いよりも大切である
Q21g
g h
この世のしあわせの方が来世の救いよりも大切である
Q21
大きな古い木をみかけたとき、なにか神々しい気持ちをいだく
Q21h
h i大きな古い木をみかけたとき、なにか神々しい気持ちをい
大きな古い木をみかけたとき
なにか神々しい気持ちをいだく
だく
Q21
日の出や日没、または月の光に、なにかあらたまった気持ちになる
Q21
いま、ここでの瞬間が大切なひとときだと感じる
Q21i
i j日の出や日没、または月の光に、なにかあらたまった気持
日の出や日没、または月の光に、なにかあらたまった気持ちになる
ちになる
Q21
自分はなにか大きな見えない力によって「生かされている」と感じる
Q21j
j k
いま、ここでの瞬間が大切なひとときだと感じる
Q21 l
賛美歌やゴスペル、お経やご詠歌などを聞くと、心が落ち着いたり、あ
Q21k
k 自分はなにか大きな見えない力によって「生かされている
自分はなにか大きな見えない力によって「生かされている」と感じる
」と感じる
らたまった気持ちになる
Q21l
l m
賛美歌やゴスペル、あるいはお経やご
賛美歌やゴスペル、あるいはお経やご詠歌などを聞くと、
歌などを聞くと、心が落ち着いたり、あらたまっ
心が落ち着いたり、あらたまった気持ちになる
た気持ちになる
Q21
神仏は、畏れ多いものである
Q21m
mn
神仏は、畏れ多いものである
Q21
仏壇を拝んだり、お墓参りをするときは、ご先祖さまよりも亡くなった
父母や祖父母を思い浮かべる
Q21n
n 仏壇を拝んだり、お墓参りをするときは、ご先祖さまとい
仏壇を拝んだり、お墓参りをするときは、ご先祖さまというよりも亡くなった父母や祖父
うよりも亡くなった父母や祖父母を思い浮かべる
母を思い浮かべる
Q21
誰も見ていなくても、よくないことをすると、罰があたる
Q21o
o o
誰も見ていなくても
誰も見ていなくても、良くないことをすると、バチ(罰)
良くないことをすると バチ 罰)があたる
があたる
Q21 p ときどき、これから何が起ころうとしているかを教えてくれる、第六感
Q21p
p ときどき、これから何が起ころうとしているかを教えてく
ときどき、これから何が
ころうとしているかを教えてくれる、第六感が自分にはあるよ
れる、第六感が自分にはあるように思える
うに思える
が自分にはあるように思える
Q21q
q
すぐれた芸
すぐれた芸術作品からは、宗教的なものが感じられること
作品からは、宗教的なものが感じられることがある
がある
Q21 q すぐれた芸術作品からは、宗教的なものが感じられることがある
Q21
山や川や、草や木など、すべてに霊がやどっているような気がする
Q21r
r r山や川、草や木など、すべてに霊がやどっているような気
山や川、草や木など、すべてに霊がやどっているような気がする
がする
Q24
「宗教的な心」は大切
Q24
4 「宗教的な心」について
宗教的な心」について
27
27
7
バチ(そまつにする・よくないことをする・ゴミ) 11
28
16
6
28
8
この世の幸せ>来世の救い
加護・救い(神さま仏さま・願いごと・祖先は見守る・救われる・報われる)
3
13
24
4
4
5 6 8 14
9
手を合わせる・畏れ多い
祖先との心のつながり
22
7 2
信仰 1
3 神仏のおかげ
21
1
ご 歌)
心が落ち着く(神社・寺・教会・讃美歌・お経・ご詠歌)
7
17
18
8
宗教的自然観(古い木・日の出・日没・月の光・山川草木)
7
27
8 宗教的な心
28
0
20
見えない力で生かされている
19
9
この瞬間が大切
26
6 芸術
25
5 第6感
―5
6―
社 会 学 部 紀 要 第1
0
4号
統計的に有意――となっており、その相関は「か
なり高い」ものであるといえる。しかし、
「かな
り高い」ものではあるが、「非常に高い]もので
あるとまではいえない。やはり、
「信仰をもって
いる」という意識の側面と「宗教的な心は大切」
という意識の側面とは、別の次元として区別して
おいたほうがよさそうである。繰り返しになる
が、相関係数の値がどのくらいであれば、2つの
22(Q21m)神仏は畏れ多い
#)「心の落ち着き・あらたまった気持ち」の
グループ
3(Q20b )神社・寺・教会
21(Q21l )賛美歌・ゴスペル・お経・ご詠歌
$)「生かされている」のグループ
20(Q21k )大きな見えない力で生かされて
いる
項目は同じ次元を構成し、どのくらいであれば別
の次元を構成すると考えるかについては、必ずし
ここでの SSA マップでは、これらのグループ
も確定した考え方があるわけではない。それは、
を、「信仰をもっている」を中心(原点)とする
「科学 的 な 判 定」の問 題 で あ る よ り も、む し ろ
4つの同心円とは別の円を描くことで示してい
「理論的な目標」の問題であるというべきであろ
る。す で に 述 べ た よ う に、4つ の 同 心 円 は
う。ここでは、
「信仰をもっている」という「信
Guttman のファセット・セオリーの「経験法則」
仰表出的な意識」の側面と、
「宗教的な心が大切」
を踏まえて、ここで分析に取りあげた全部で28項
という「素朴な宗教的感情」(林文の用語)の側
目の空間布置に一定の意味づけ(解釈)を試みた
面とを概念的に区別することから、日本人に独自
結果である。しかし上の4つのグループを区別す
な religiosity の諸相の解明が進展するであろうと
るための小さな円を描くという方法は筆者自身の
いう「理論的な目標」を掲げてきたが、データ分
ものである。Guttman の考え方からするならば、
析をとおして、このようなアイディアを検証して
これらのグループは「小さな円」よりも、むしろ
いく操作的方法に端緒を開くことができたと考え
「原点からの放射線」による空間分割にもとづい
るのである。
て描き出されるべきものであろう。
しかし、筆
つぎに、2番目の同心円内には今回の分析では
者の考え方からするならば、技法は目的によって
最も多い13項目が布置されている。これらの諸項
用途が決められるべきものである。いうまでもな
目は「信仰をもっている」の項目との相関係数の
く、Guttman のファセット・アナリシスが基本的
値が0.
20以上――1%水準で統計的に有意――と
に「仮説検証」という性格をもっているのに対し
なっており、「ある程度の高さ」の相関であると
て、筆者のここでのアイディアはむしろ「探索的
いえる。これ諸項目は、それぞれの近接の度合い
な試み」という性格づけがなされる。Guttman の
にしたがって、さらにつぎの4つのグループに分
場合は、このような放射線を描く仕方は分析に扱
けることできるであろう。
う諸変数間の関係の構造に関する Circumplex と
呼ばれる理論を検証するための目的適合的な方法
!)「加護・救い・先祖」のグループ
ということができる。では、筆者の場合はどうか
6(Q20e )「神さま仏さま」と叫ぶ
というと、そもそも筆者の問題関心は日本人の
7(Q20f )神仏のおかげ
religiosity をめぐるある特定の仮説の検証にある
8(Q20g )願いごとはかなえてくれる
のではなく、その前の段階の日本人の宗教意識の
13(Q21d )この世で救われる
諸相の全体像を捉えるということにある。このよ
14(Q21e )来世で報われる
うな問題関心からするならば、「近接仮説」にも
2(Q20a )祖先との心のつながり
とづいて、空間内で相対的に近くに散らばってい
9(Q20h )祖先が見守ってくれる
る諸項目を小さな円で囲んでひとまとめにしてみ
10(Q21a )先祖供養
")「畏れ・手を合わせる」のグループ
5(Q20d )神社・寺・教会で自然と手を合
わせる
るという仕方は、それなりに十分に意味のある方
法ということができるであろう。こうして、この
ようなグルーピングの手法によって、日本人の宗
教意識では、
「信仰・加護・救い」という宗教的
March 2
0
0
8
―5
7―
な感覚において、「神仏」と「先祖・祖先」は決
照しておくべきであろう。金児はこの研究書にお
して別々のものではなく、相互に交じり合ってい
いて日本人の宗教性を浮き彫りにするものとして
るということがはっきりと確認できるのである。
「オカゲ」と「タタリ」という2つの鍵概念(key
この点は、これまでの日本人の religiosity をめぐ
concepts)を提案した。広く解釈すれば、
「オカ
るさまざまな文献で記述されてきた「日本人は亡
ゲ」は「加 護・救 い・応 報」に、
「タ タ リ」は
くなった先祖は仏様になるという感覚をもってい
「バチ」に対応するものといえよう。そうだとす
る」という命題を、大量観察的なサーベイ・リ
るならば、今回のデータ分析をとおして現代人の
サーチによって実証的に検証した結果として注目
信仰が「タタリ」よりも「オカゲ」とより強く結
されなければならない。
びついているという知見が導き出されたことは興
さらに3番目の同心円内には8項目が位置して
味 深 い。こ の 点 は「punishment よ り も reward」
おり、「信仰をもっている」の項目との相関係数
という現代人の意識傾向を示唆したものといえる
の値は0.
10以上――25(Q21p)第六感のケース
かもしれない。
を除いて0.
1%水準で統計的には有意――となり、
つぎに後者の「宗教的自然観」については、西
「低い相関」にとどまった。ここでも、これら8
脇良『日本人の宗教的自然観』(ミネルヴァ書
項目は、2番目の同心円内の諸項目の分類と同じ
房、2004年)が参考になる。じつは、ここでの宗
考え方にもとづいて、以下の3つのグループに分
教的自然観という概念そのもの、そしてその概念
けられる。
の操作化の産物としての質問項目も西脇のこの研
究書に依拠している。こうして、ここでも現代人
!)「バチ・罰」のグループ
4(Q20c )神社・寺・教会ではごみを捨て
たり、汚したりできない
11(Q21b )神仏を粗末にするとバチがあた
る
24(Q21o )よくないことをすると罰があた
の意識のなかで「信仰心(の表出)
」と「宗教的
自然観」とにはやや距離があるいうとことがわ
かってきた。しかし、それは、
「信仰」という項
目を中心的な位置に据えて分析したからで、逆に
「信仰」という言葉が前面に出てこない「宗教的
自然観」の諸項目を中心に置いて分析するなら
る
ば、当然、別の SSA マップが描かれることにな
")「宗教的自然観」のグループ
る。こ こ で の 知 見 は、こ の よ う な 日 本 人 の
17(Q21h )大きな古い木=神々しい気持ち
religiosity を捉える視座の転換の必要性を示唆し
18(Q21i)日 の 出・日 没・月 の 光=あ ら た
たものといえるかもしれない。
まった気持ち
27(Q21r )山川草木=霊が宿っている
#)「芸術・第六感」のグループ
26(Q21q )芸術作品から宗教的なものが感
じられる
25(Q21p )第六感がある
②同じく、
「信仰心(の表出)」はバチがあたる
という「機能的・規範的・事後的な側面」よりも自
然に手を合わせたり、畏れを感じたりする「自然
的・内発的・事前的な側面」とより強く結びつい
ている。この点については、T. Parsons をはじめ
とする社会学における Sanction の理論[Parsons,
1954]が思い出されるのであり、ここでも前者の
ここでは、つぎの2点が注目される。
側面よりも後者の側面への選好を示す現代人の意
①「信仰をもっている」の項目との空間的距離
識のあり様を見ることができるといえるかもしれ
によって表されるその「意味連関」の度合いとい
ない。そして、このような現代人の意識のあり様
う点からするならば、「信仰心(の 表 出)
」は、
は、R. Inglehart のいういわゆる「ポス ト・モダ
「バチ」や「宗教的自然観」よりも「加護・救い
ンナイゼーシ ョ ン の 価 値 観」[Inglehart,1997]
・応報」とより強く結びついている。
とも深く結びついているのかもしれない。
まず、前者の「バチ」という点については金児
以上の2点は、いわば「探索的発見」ともいう
暁嗣『日本人の宗教性』(新曜社、1997年)を参
べきもので、これらについては今後さらに深い分
―5
8―
社 会 学 部 紀 要 第1
0
4号
析と考察が加えられなければならない。
はなかった。
さらに、4番目の同心円内には3項目が含ま
さて、以上において、宗教的な信念・感情・意
れ、「信仰をもっている」との相関係数の値0.
10
識に関する諸項目の最小空間分析の結果について
以下――19(Q21j)「いま、この瞬間が大切なひ
検討を加えてきた。ここでの SSA マップは、日
ととき」は相関係数0.
09で5%水準で統計的に有
本人の宗教意識の諸相を見事に描き出したものと
意であるが、1
2(Q21c)「亡くなった家族との思
して注目される。すでにたびたび述べたように、
い出は大切」は0.
04、23(Q21n)「お墓参りでは
これまで日本人の固有の宗教意識ついてはさまざ
亡くなった人を思い浮かべる」は0.
0
5で、いずれ
まな記述がなされてきたが、このような形でその
も統計的には有意でない――となり、
「きわめて
全体像を経験科学的に描き出す試みはなかった。
低い相関」という結果となった。これまでの日本
このような諸項目の位置――別の言葉でいえば、
人の宗教意識に関する文献では、
「従来の日本人
それぞれの項目の相互の「意味連関」――につい
の先祖供養・先祖崇拝の意識が、先祖を思い出の
て確認した上で、それぞれの「単純集計」の結果
記憶・なつかしさの対象としてのみ位置づけよう
(図6、7)に目を向けるならば、「信仰をもって
とする意識へと変化してきている」ことが指摘さ
れ、そのような意識が「メモリアリズム」と呼ば
図6
宗教的な信念・感情・意識に関する諸項目の
単純集計結果( 1 )
れてきたが、確かに今回のデータ分析の結果から
―― 問 7 「信仰がある」
、問 9 「親しみを感じる宗教がある」
、
も、伝統的な「宗教的先祖観」と、ここでの「メ
問24「宗教的な心は大切」
モリアリズム」との間にはその意味空間に一定の
(
「大切だと思う」
+
「まあ大切だと思う」
)の% ――
距離があることがわかった。こうして現代人の意
100
識のなかで「メモリアリズム」は「信仰」とは別
90
86.5
80
の意味世界を構成しているといえるかもしれない
70
のである。
62.5
60
%
最後に、4番目の同心円の外側にも2項目15
50
40
(Q21f)「神さま=仏さま」と16(Q21g)「この世
30
の幸せ>来世の救い」が見られるが、これらの項
20
10
目も「信仰をもっている」とは「きわめて低い相
0
関」にとどまり、しかもこれらは統計的に有意で
図7
32.2
問7「信仰がある」
問9「親しみを感じる
宗教がある」
宗教的な信念・感情・意識に関する諸項目の単純集計結果( 2 )
―― 問20、21「思う」
(
「そう思う」
+
「ややそう思う」
)の% ――
100
92.1
91.8
90
68.8
70
61.1
60
%
50
82.9
78.0
80
49.8
62.7
57.8
54.3
51.9
44.2 43.4
40
40.6
35.0
38.7 39.9
55.9
61.1
48.4 47.2
48.3
37.2
30.8
30
19.8 18.0
20
10
0
問 問 問 問 問 問 問 問 問 問 問 問 問 問 問 問 問 問 問 問 問 問 問 問 問 問
20 20 20 20 20 20 20 20 21 21 21 21 21 21 21 21 21 21 21 21 21 21 21 21 21 21
a b c d e f g h a b c d e f g h i j k l m n o p q r
祖
先
と
の
心
の
つ
な
が
り
心 ゴ 手 神 神
が ミ を さ 仏
落
合 ま の
ち
わ 仏 お
着
せ さ か
く
る ま げ
願
い
ご
と
祖 供 バ 思 こ
先 養 チ い の
の
が 出 世
霊
あ
で
た
う
る
ま
①
く
い
く
来
世
で
報
わ
れ
る
神
さ
ま
仏
さ
ま
も
同
じ
こ
の
世
の
し
あ
わ
せ
が
大
切
古 日 い 生
い の ま か
木 出 、 さ
・ こ れ
日
没 こ て
・ で い
月 の る
の 瞬
光 間
賛
美
歌
・
お
経
畏
れ
多
い
父
母
や
祖
父
母
バ 第 芸 山
チ 六 術 川
が 感 作 草
あ
品 木
た
る
②
問24「宗教的な心は
大切」
March 2
0
0
8
―5
9―
いる」はさすがにほぼ30%といったところにとど
「否定的(negative)な内容のもの」に大きく2
まるものの、「宗教的な心が大切」はほぼその倍
分されていることがわかる。その上で、それぞれ
の60%、「親しみを感じる宗教がある」や「メモ
のグループ内の諸項目はさらにそれぞれ2つずつ
リアリズム」や「バチ」
「畏れ」に到っては80%
の小グループに分かれていることもわかる。つま
∼90%にもおよぶ人びとが「そう思う」としてお
り、「肯定的なステートメント」についていえ
り、それ以外の多くの項目についても40%を越え
ば、「宗教はご利益を与えてくれる」は「宗教は
る回答者がそのような宗教意識に対して肯定的な
心の安らぎを与えてくれる」
「平和に貢献する」
回答をしていることがわかる。つまり、日本人の
「人生の意味を教えてくれる」「深い人間関係をも
固有の宗教意識とされてきたものは、現在におい
たらす」「人生を変える力がある」とやや離れた
ても人びとの心のなかに生き続けているといわな
ところに位置しており、また「否定的なステート
ければならないのである。これは、やはり筆者に
メント」についていえば、
「宗教は不寛容」の2
とっては大きな驚きであった。
項目は「宗教は争いを生む」
「人間の弱さのあら
われ」
「だまされる」「うさんくさい」
「理解でき
(4)宗教のはたらき・機能・性質に関する諸項
ない」とやや離れたところに位置しているという
目(13項目)の最小空間分析
ことである。これらの点は、質問項目についての
日本の宗教に関するこれまでの文献のなかで
意味内容の検討からして十分に納得のいく知見で
は、宗教のはたらき・機能・性質についても、さ
あるといえよう。
まざまな記述がなされてきている。これらの記述
つぎに、宗教のはたらき・機能・性質に関する
を命題(proposition あるいは statement)の形に
13項 目 の 単 純 集 計 の 結 果 は、平 均 値(mean
整理し、それらのいくつかを質問項目に構成した
values)の形で示した(図9)。その手順は以下
のが、ここでの13項目である。
のとおりである。これら質問文は、13のステート
さて、SSA マップ(図8)では、これら1
3の項
メントを提示し、調査対象者がそれぞれのステー
目(命題)が、宗教のはたらき・機能・性質につ
トメントに対して5つの選択肢のなかからいずれ
い て の「肯 定 的(positive)な 内 容 の も の」と
かの回答を選ぶという形式となっている。そこ
図8
宗教のはたらき・機能・性質に関する諸項目の最小空間分析
11
22
33
4
45
56
67
8
79
8
10
0
11
9
12
2
10
13
3
11
12
Q23
宗教は争いを生む
Q23
3a a
宗教は争いを生む
Q23b
Q23b b宗教は人間の弱さのあらわれである
宗教は人間の弱さのあらわれである
Q23c
Q23c c宗教はうさんくさいものである
宗教はうさんくさいものである
Q23d
d 宗教を信じるとだまされて、金をまきあげられたりする
宗 を信じるとだまされて、金をまきあげられたりする
Q23e d宗教は私には理解できない
宗教を信じるとだまされて、金をまきあげられたりする
Q23e
Q23f e宗教は心の安らぎをあたえてくれる
宗教は私には理解できない
Q23f
Q23g
Q23g f宗教はご利益を与えてくれる
宗教は心の安らぎをあたえてくれる
Q23h
h 宗教は世界平和に貢献する
Q23
g
宗教はご利益を与えてくれる
Q23ii 宗教は本当の自分や人生の意味を教えてくれる
Q23j h宗教は深い人間関係をもたらす
宗教は世界平和に貢献する
Q23j
Q23k
Q23k i宗教は、自分や自分の人生を変える力がある
宗教は本当の自分や人生の意味を教えてくれる
Q23ll 信仰心の強い人々は、信仰を持たない人々に対して不寛容
い人々は 信仰を持たない人々に対して不寛容になりがちである
になりがちである
Q23 j信仰心の
宗教は深い人間関係をもたらす
Q23m
m 信仰心の強い人々は、他の信仰を持つ人々に対して不寛容
信仰心の い人々は 他の信仰を持つ人々に対して不寛容になりがちである
になりがちである
Q23 k
Q23 l
13 Q23 m
t
t t
t
positive
statement
7 ご利益
negative
t
statement
t t
t
3
13
不寛容
2
12
6 心の安らぎ
8 平和
9 人生の意味
0 深い人間関係
10
1 争い
2 弱さ
11 人生を変える
だまされる
4 3
うさんくさい
理解できない
5理解できない
宗教は、自分や自分の人生を変える力がある
信仰心の強い人々は、信仰を持たない人々に対して不寛容になりがちで
ある
信仰心の強い人々は、他の信仰を持つ人々に対して不寛容になりがちで
ある
―6
0―
社 会 学 部 紀 要 第1
0
4号
4 .中央値回帰分析
で、それらは選択肢の「そう思う」には+2点、
(Median Regression Analysis)
「ややそう思う」には+1点、「どちらともいえな
い」には0点、「あまりそう思わない」には−1
ファセット・アナリシスの1つに筆者が「中央
点、「そう思わない」には−2点を与え、それを
値回帰分析」と名づけた技法があることについて
調査対象者全員について加算し、平均値を算出
は、すでに述べた。この技法は、2変数間の関係
し、それをグラフ上にプロットするというもので
を視覚的に描写するためのいわば簡便法として考
ある。
案されたものであるが、そこでの Guttman の基
この結果からするならば、人びとは「ご利益」
本的な考え方は重要である。それは、
「ファセッ
「世界平和」「深い人間関係」「人生を変える」で
ト・アナリシス」
「ファセット・セオリー」とと
は「そうと思わない」、「争い」「人間の弱さ」で
もに、いわば三位一体的に「ファセット・アプ
は「そう思う」、と回答する傾向があることが読
ローチ」を構成する「ファセット・デザイン」の
み取れる。ここでは、人びとは「宗教のはたら
考え方を出発点とする。Guttman は調査票の質問
き」に対してやや否定的であるように見える。し
文 を そ の 回 答 の 選 択 肢 の タ イ プ――range の
かし、人びとが「宗教のはたらき」について考え
種 類――に も と づ い て attitude,
る場合、それは既成の宗教団体を意識して回答し
intelligence などに区別し、それらを調査票を用
ているのであって、すでに述べたような人びとの
いて観察される人間行動の principal components
心のなかに生き続けている日本独自の宗教意識に
(「主要素」あるいは数学的な表現をとるならば
思いを馳せながら回答したのではなかろうか。そ
「主要素解」)と呼んだ。そして、Guttman は、さ
うだとするならば、
「宗教」という言葉によって
まざまな調査事例をとおして、これら component
呼び起こされる意識と、日本独自の宗教意識との
間の関係は――その質問文の具体的な内容にかか
乖離(discrepancy)ということこそが、現代の
わらず――U 字型、N 字型、M 字型などの多調回
日本におけるきわめて特徴的な宗教現象といえる
帰(polytone regression)の関係となることを見
であろう。
出した。中央値回帰分析は、まさにこのような多
involvement,
調回帰の関係のパターンを描写する技法として考
案されたのである。
図9
宗教のはたらき・機能・性質に関する諸項目の単純集計結果
―― 平均値 ――
−2.
00
−1.
00
00
0.
00
1.
00
2.
問
23
a
問
23
b
問
23
c
宗
教
は
争
い
を
生
む
宗
教
は
人
間
の
弱
さ
の
あ
ら
わ
れ
で
あ
る
宗
教
は
う
さ
ん
く
さ
い
も
の
で
あ
る
あ
げ
ら
れ
た
り
す
る
問
23
d
問
23
e
問
23
f
問
23
g
問
23
h
宗
教
を
信
じ
る
と
だ
ま
さ
れ
て
、
金
を
ま
き
宗
教
は
私
に
は
理
解
で
き
な
い
宗
教
は
心
の
安
ら
ぎ
を
あ
た
え
て
く
れ
る
宗
教
は
ご
利
益
を
与
え
て
く
れ
る
宗
教
は
世
界
平
和
に
貢
献
す
る
て
く
れ
る
問
23
i
問
23
j
問
23
k
宗
教
は
本
当
の
自
分
や
人
生
の
意
味
を
教
え
宗
教
は
深
い
人
間
関
係
を
も
た
ら
す
が宗
あ教
るは
、
自
分
や
自
分
の
人
生
を
変
え
る
力
問
23
l
人
々
に
対
し
て
不
寛
容
に
な
り
が
ち
で
あ
る
信
仰
心
の
強
い
人
々
は
、
信
仰
を
持
た
な
い
問
23
m
人
々
に
対
し
て
不
寛
容
に
な
り
が
ち
で
あ
る
信
仰
心
の
強
い
人
々
は
、
他
の
信
仰
を
持
つ
March 2
0
0
8
―6
1―
図10 「宗教的な行動」と「宗教的な信念・感情・意識」との関係
―― 中央値回帰分析 ――
Q12 c 「お守りやおふだ」と Q20 f 「神仏のおかげ」
、Q21 b 「バチがあたる」
、Q21 r 「山川草木」との関係
Q1
2c 「お守りやおふだ」
よくする
しない
そう思わない
そう思う
Q2
0 f 「神仏のおかげ」
そう思わない
そう思う
Q2
1b 「バチがあたる」
そう思わない
そう思う
Q2
1r 「山川草木」
Q12 e 「礼拝・お勤め」と Q20 f 「神仏のおかげ」
、Q21 b 「バチがあたる」
、Q21 r 「山川草木」との関係
Q1
2e 「礼拝・お勤め」
よくする
しない
そう思わない
そう思う
Q2
0 f 「神仏のおかげ」
そう思わない
そう思う
Q2
1b 「バチがあたる」
そう思わない
そう思う
Q2
1r 「山川草木」
Q12 i 「仏壇を拝む」と Q20 f 「神仏のおかげ」
、Q21 b 「バチがあたる」
、Q21 r 「山川草木」との関係
Q1
2 i 「仏壇を拝む」
よくする
しない
そう思わない
そう思う
Q2
0 f 「神仏のおかげ」
そう思わない
そう思う
Q2
1b 「バチがあたる」
そう思わない
そう思う
Q2
1r 「山川草木」
さて、今回の「価値観と宗教意識に関する全国
theory)」も、筆 者 の 関 心 を 強 く 引 く も の で あ
調査」の調査票で用いられた質問諸項目、①宗教
る。一例をあげるならば、質問紙法にもとづく大
的な行動に関する諸項目、②神仏・霊魂・輪廻な
規模な国際比較調査の嚆矢となった「ヨーロッパ
どの存在に関する諸項目、③宗教的な信念・感情
価値観調査(European Value Studies)」との比較
・意識に関する諸項目、④宗教のはたらき・機能
をねらって日本で実施された「価値観調査」
[ロ
・性質に関する諸項目、についていえば、①は
バ ー ト・キ サ ラ、永 井 美 紀 子、山 田 真 茂 留、
involvement、② ③ ④ は attitude と い う こ と が で
2007]の分析では、
「日本における慣習化された
きる。そこで、今回のデータ分析の最後の課題
宗教行動」という性格づけがなされている。しか
は、このような component 間の関係の分析とい
し、このような「日本人の宗教行動」が、すでに
うことである。このアイディアは、いうまでもな
述べてきたような「人びとの心のなかに生きつづ
く フ ァ セ ッ ト・セ オ リ ー と い う「一 般 理 論
けている日本独自の宗教意識」と無縁のものとは
(general theory)」から導きだされるものである
考えられない。慣習化されていると思われなが
が、筆者の理論的関心はこの点につきるものでは
ら、そのような行動の背後には、やはり広い意味
ない。じつは比較の視座からする日本人の宗教意
での日本人の宗教意識がいきづいているのではな
識と宗教行動についての「特定理論(substantive
かろうか。初詣などは単なるお祭り騒ぎにすぎな
―6
2―
社 会 学 部 紀 要 第1
0
4号
いといわれることもあるが、そのお祭り騒ぎのな
は、「世俗化」ということが叫ばれながらも、少
かおいてさえ、人びとの素朴な宗教心を見ること
なくともこのような形での宗教的慣習は維持され
ができるというのが筆者の仮説的洞察である。
ているということを示している。
以上のような問題関心から、ここでは「宗教的
(2)神仏・霊魂・輪廻などの存在については、
な行動の諸項目」と「宗教的な信念・感情・意識
人びとの心のなかで「神仏」と「死後の世界・霊
の諸項目」との関係の分析を試みた。具体的にい
魂・輪廻・守護霊」と「UFO」はそれぞれ別の意
うなら ば、
「宗 教 的 な 行 動 の 諸 項 目」か ら、①
味空間を構成している。そして、
「神仏」と「霊
「信仰表出的行動」の1つとして「礼拝・お勤め」
魂」については、60%を越える人びとがその存在
を、②「伝統・習慣的行動」の1つとして「仏壇
に肯定的な回答を寄せている。
を拝む」を、③「イベント的行動」の1つとして
(3)宗教的の信念・感情・意識については、
「お守り・おふだ」を、それぞれ取りあげ、それ
それぞれの項目の意味連関の空間布置が「信仰を
と「日本独自の宗教意識の諸項目」から選んだ①
もっている」という項目を中心に置いた場合は、
「神仏のおかげ」、②「バチがあたる」
、③「山川
それと近い項目として、まず「宗教的な心が大
草木」、との関係を測定した。結果は図1
0に示し
切」があり、それに「加護・救い」
「おかげ・祖
たとおりである。
先との心のつながり」
、そして「心が落ち着く・
この結果から、どのケースについても、それぞ
畏れ」がつづく。さらに、「バチが当たる」「宗教
れの関係は右上がりの monotone の形となってい
的自然観」がくるが、「メモリアリズム」と「第
るこ と が わ か る。つ ま り、
「宗 教 的 な 行 動」と
六感」ははじめの「信仰をもっている」からやや
「日本独自の宗教意識」とは決して別々のものと
遠くに位置している。そして、それぞれの項目に
いうのではなく、両者はしっかりと結びついてい
対する回答の分布から見るならば、日本人の宗教
るということである。こうして、筆者の仮説は、
性(religiosity)に つ い て は、「信 仰 を も っ て い
この点において実証的に検証されたといえるので
る」としてその「信仰している宗教」
(帰属宗派
ある。
あるいは宗教団体)をあげる回答者は30%程度に
とどまるものの、それ以外の人びとも決して宗教
!.おわりに
的なものを否定しているわけではなく、日本独自
の宗教意識は依然として人びとの心のなかに生き
以上のデータ分析をとおして、少なくともはじ
めの問題関心の前半部分には答えることができた
といえる。それは、日本人の宗教行動・意識・意
つづけているというのが実相であるといえよう。
(4)宗教のはたらき・機能・性質については、
それらについての13のステートメントが、宗教に
見の全体像を実証的に捉えるという問題関心であ
ついての「肯定的な内容のステートメント」と
り、それに対するここでの結果は、以下のように
「否定的な内容のステートメント」に大きく2分
まとめられる。
され、どちらかといえば、前者のステートメント
(1)宗教的な行動については、「信仰表出的行
に対して「そう思わない」と答える回答者が多い
動」「伝統・習慣的行動」「イベント的行動」が空
ようである。つまり、人びとは「宗教のはたら
間布置の領域区分にもとづいてはっきりと区別さ
き」に対しては、やや否定的であるように見え
れ、「信仰表出的行動」を「する」と答える人の
る。
割合はほかの行動とくらべて低い。世俗化という
さて、以上のようなデータ分析から得られた諸
概念を人びとが「信仰(表出)」といったものか
知見(findings)をどのように解釈(interpretation)
ら離脱していく現象として理解するならば、以上
するかが、つぎの重要な課題となってくる。ここ
のような日本人の宗教行動は明らかに「世俗化」
では、近年、宗教社会学の領域で注目されるよう
という性格づけがなされるものといわなければな
になってきた2つの主要な概念・命題・理論を取
らない。しかし、他方において、「墓参りをする」
りあげ、それらの視座のなかに今回の諸知見を位
78%、「仏 壇 を 拝 む」52%と い う 回 答 者 の 割 合
置づけていくという方向を示唆しておきたい。そ
March 2
0
0
8
―6
3―
の1つは、「世俗化(secularization)」であり、も
待って、初めてこの論文は一応の完結を見ること
う1つは「宗教的多元主義(religious pluralism)」
になるのである。
である。それぞれの考え方については、以下のよ
うにまとめておくことができるであろう。
(1)世俗化
世俗化という同じ用語が用いられながら、それ
が同じ現象を意味しているかというと、必ずしも
そうではない。それは一方で「教会の会員数の減
少」「教会活動への参加の低下」を意味するとと
もに、他方で、人びとの心のよりどころの「超越
的なもの」から「内面的なもの」への移行を示唆
し て い る(Lawrence,1998)と い え る。ま た、
「世俗化」という現象は、社会的レベル、宗教団
体レベル、個人的レベルの3つのレベルに分けて
分析する必要がある。個人的レベルではさまざま
な宗教のなかから個々人が自分に合うものを選ん
で 再 構 成 す る「宗 教 的 寄 せ 木 細 工(religious
bricolage)」あ る い は「ア ラ カ ル ト 式 宗 教(a
religion
à
la
carte)と い う 方 向 が で て く る
(Dobbelaere,1981,1
995,2002)。
(2)宗教的多元主義
後期近代社会では伝統的な教会や宗教的な制度
に と っ て か わ っ て、「見 え な い 宗 教(invisible
religion)」が現れる(Luckmann,1967)。つまり
伝統的な宗教形態は弱体化していくが、人びとの
宗教心が衰えていくのではない。人びとは高度に
分化した多様な社会のなかで、それぞれの宗教を
求めていく。この考え方は宗教研究の門戸を広げ
た。たとえば、
「発展の進んだ社会では人生の意
味や目的を深く考える人びとが増えるが、そのよ
うな人びとは伝統的な信仰や既成の宗教団体には
背を向ける人びとでもある」
(Inglehart,1997、
Norris と Inglehart,2004)という知見も見出され
ている。
最後に、この論文のはじめの問題関心の後半部
分についての検証と考察が、今後のもう1つの重
要な課題として残されているという点を確認して
おかなければならない。それはいうまでもなく、
「日本人の宗教行動・意識・意見」は「人びとの
社会的な価値・信念・態度」とどのように結びつ
いており、どのような関係の構造にあるのか、に
ついてのデータ分析とその知見をめぐる考察とい
うことである。このような点についての論述を
文献
Dobbelaere, K.,1
9
8
1, Secularization, London: Sage.
Dobbelaere, K., 1
9
9
5, Religion in Europe and North
America. In R. de Moor(Ed.)
, Values in Western
Societies, Tilburg: Tilburg University Press.
Dobbelaere, K., 2
0
0
2, Secularization: An analysis at three
levels, Bern etc.: Publishing Group Peter Lang.
林 文、2
0
0
7、『身近な生活における伝統文化意識に関
す る 調 査――2
0
0
6年 横 浜 市4区 郵 送 調 査 報 告 書
――』東京:東洋英和女学院大学
Inglehart, R., 1997, Modernaization and Postmodernization:
Cultural, economic and political change in 43
societies, Princeton: Princeton University Press.
井上順孝、2
0
0
3、『若者における変わる宗教意識と変わ
らぬ宗教意識』東京:國學院大學
石井研士、2
0
0
7、『データブック現代日本人の宗教[増
補改訂版]
』東京:新曜社
Jagodzinski, Wolfgang and Kazufumi Manabe, 2
0
0
3, In
search of Japanese Religiosity, Kwansei Gakuin
University Social Sciences Review(Vol.7)
.
金児暁嗣、1
9
9
7、『日本人の宗教性――オカゲとタタリ
の社会心理学――』東京:新曜社
キサラ・ロバート、永井美紀子、山田真茂留、2
0
0
7、
『信頼社会のゆくえ――価値観調査に見る日本人の
自画像――』東京:ハーベスト社
Lawrence, B. B., 1
9
9
8, From Fundamentalism to
Fundamentalisms: A religious ideology in multiple
forms. In P. Heelas(Ed.)
, Religion, Modernity and
Postmodernity, Oxford: Blackwell.
Luckmann, T., 1
9
6
7, The Invisible Religion, New York:
Macmillan.
真鍋一史、1
9
9
3、『社会・世論調査のデー タ 解 析』東
京:慶應義塾大学出版会
真鍋一史、Wolfgang Jagodzinski、2
0
0
0、「家族と宗教
――価値志向の視座から――」『関西学院大学社会
学部紀要』(第8
8号)
真鍋一史、Wolfgang Jagodzinski、小野寺典子、2
0
0
0、
「ドイツと日本における家族志向と宗教――ISSP 宗
教調査データの分析――」『NHK 放送文化調査研
究年報』(第4
5集)
Manabe, Kazufumi, 2
0
0
1, Facet Theory and Studies of
Japanese Society: From a comparative perspective,
Bonn: Bier’sche Verlangsanstalt.
真鍋一史、2
0
0
2、「ファセット:ファセッ ト・デ ザ イ
ン、ファセット・アナリシス、ファセット・セオ
リー」『ファセット理論と解析事例』京都:ナカニ
―6
4―
社 会 学 部 紀 要 第1
0
4号
シヤ出版
真鍋一史、Wolfgang Jagodzinski、2
0
0
2、「家族と宗教
――『世界価値観調査(World Values Survey)
』
データの分析――」『関西学院大学社会学部紀要』
(第9
1号)
Manabe, Kazufumi, Wolfgang Jagodzinski and Noriko
Onodera, 2
0
0
2, Family Values and Religion in
Germany and Japan: An analysis of ISSP data,
Kwansei Gakuin University Social Sciences Review
(Vol.6)
.
Manabe, Kazufumi, Wolfgang Jagodzinski, 2
0
0
2, Family
Values and Religion in Germany and Japan:
Theoretical discussions and empirical findings,『関
西学院大学社会学部紀要』(第9
2号)
真鍋一史、2
0
0
3、「ドイツと日本における『家族にかか
わる価値観』と『宗教』との関係――探索的デー
タ解析――」『よろん[日本世論調査協会報]
』(第
9
1号)
真鍋一史、2
0
0
3、『国際比較調査の方法と解析』東京:
慶應義塾大学出版会
Merton, Robert K., 1
9
5
7, Social Theory and Social
Structure, Glencoe: Free Press. (=1
9
6
1、森東吾ほ
か訳『社会理論と社会構造』東京:みすず書房)
NHK 放送世論調査所、1
9
8
4、『日本人の宗教意識』東
京:日本放送出版協会
西脇 良、2
0
0
4、『日本人の宗教的自然観』京都:ミネ
ルヴァ書房
Norris, P. and R. Inglehart, 2
0
0
4, Sacred and Secular:
Religion and politics worldwide. Cambridge, MA:
Cambridge University Press.
小野寺典子、1
9
9
9、「日本人の宗教意識―― ISSP 国際比
較調査 日本の結果から――」NHK 放送文化研究
所『放送研究と調査』(5月号)
Parsons, Talcott, 1
9
5
4, Essays in Sociological Theory,
Glencoe: The Free Press.
柳川啓一、1
9
8
9、『宗教学とは何か』京都:法藏館
March 2
0
0
8
資料
―6
5―
調査票の一部
問7.あなた自身は、なにか宗教を信仰していますか。
1.信仰をしている
2.信仰はしていない
〔問 9 へお進みください〕
【信仰をしている方におたずねします。】
問8.あなたが信仰している宗教は、この中のどれにあたりますか。1つだけ○をつけてく
ださい。
1.天台宗・真言宗系
6.創価学会
2.浄土宗・浄土真宗系
7.立正佼成会
3.禅宗(臨済宗・曹洞宗)系
8.神道または神道系
4.日蓮宗系
9.キリスト教またはキリスト教系
5.その他の仏教系
10.その他の宗教
(具体的に
)
【全員の方におたずねします。】
問9.今の日本にはさまざまな宗教がありますが、あなたが信仰している宗教も含めて、親
しみを感じる宗教はどれですか。いくつでも○をつけてください。
1.神
道
4.イスラム教
2.仏
教
5.その他の宗教
3.キリスト教
(具体的に
)
問10.あなたはお正月に初詣に行きますか。
1.
いつも行く
2.
行くことの方が多い
3.
4.
あまり行かない
まったく行かない
―6
6―
社 会 学 部 紀 要 第1
0
4号
問12.以下の a から i にあげることがらで、あなたが行なっていることがありますか。
それぞれについて、あてはまるものを1つずつ選んで○をつけてください。
よ
く
す
る
時
々
す
る
た
ま
に
す
る
し
な
い
a .お盆やお彼岸などに墓参りをする………………………
1
2
3
4
b .おみくじを引く……………………………………………
1
2
3
4
c .お守りやおふだ(交通安全や入試合格など)を買う…
1
2
3
4
1
2
3
4
e .ふだんから礼拝やお勤めなど宗教的な行ないをする…
1
2
3
4
f .聖書や経典など宗教関係の本を読む……………………
1
2
3
4
1
2
3
4
h .神棚を拝む…………………………………………………
1
2
3
4
i .仏壇を拝む…………………………………………………
1
2
3
4
d .商売繁盛や入試合格などを祈願しに、お寺・神社・教
会に行く……………………………………………………
g .決まった日に神社やお寺にお参りに行ったり、教会へ
行く…………………………………………………………
March 2
0
0
8
―6
7―
問19.以下の a から f にあげるものを、あなたは「ある」と思いますか。それぞれについ
て、あてはまるものを1つずつ選んで○をつけてください。
あ
る
あ
る
よ
う
な
気
が
す
る
な
い
よ
う
な
気
が
す
る
な
い
わ
か
ら
な
い
a .神や仏………………………………………
1
2
3
4
5
b .死後の世界…………………………………
1
2
3
4
5
c .輪廻転生(生まれ変わり)………………
1
2
3
4
5
d .霊魂(たましい)…………………………
1
2
3
4
5
e .守護霊………………………………………
1
2
3
4
5
f .UFO………………………………………
1
2
3
4
5
りん ね
問20.以下の a から h にあげることがらについて、あなたはどのようにお考えですか。
それぞれについて、あてはまるものを1つずつ選んで○をつけてください。
そ
う
思
う
や
や
そ
う
思
う
ど
ち
ら
と
も
い
え
な
い
あ
ま
り
そ
う
思
わ
な
い
そ
う
思
わ
な
い
a .祖先の人たちとは深い心のつながりを感じる……
1
2
3
4
5
b .神社やお寺、教会では心が落ち着く………………
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
けが
c .神社やお寺、教会ではゴミを捨てたり、汚したり
するようなことはできない…………………………
d .神社やお寺、教会では自然と手を合わせたくなる
e .なにか困ったことがあるときは、「神さま仏さま」
と心の中で叫びたくなる……………………………
f .何ごともなく毎日生活できることは、神仏のおか
げだと思う……………………………………………
g .神や仏に願いごとをすると、なんとなくかなえて
くれそうな気がする…………………………………
h .祖先の霊は、ずっとどこかで生きていてわれわれ
子孫をいつも見守ってくれている…………………
―6
8―
社 会 学 部 紀 要 第1
0
4号
問21.以下の a から r にあげることがらについて、あなたはどのようにお考えですか。
それぞれについて、あてはまるものを1つずつ選んで○をつけてください。
そ
う
思
う
や
や
そ
う
思
う
ど
ち
ら
と
も
い
え
な
い
あ
ま
り
そ
う
思
わ
な
い
そ
う
思
わ
な
い
a .先祖を供養しない人は、信仰のない証拠である………
1
2
3
4
5
b .神仏をそまつにするとバチ(罰)があたる……………
1
2
3
4
5
c .亡くなった家族との思い出は、大切である……………
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
e .この世のよい行いは、来世で報われる…………………
1
2
3
4
5
f .神さまといっても仏さまといっても同じである………
1
2
3
4
5
g .この世のしあわせの方が来世の救いよりも大切である
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
d .神仏に救われるとは、この世でうまくいくことだと思
う……………………………………………………………
h .大きな古い木をみかけたとき、なにか神々しい気持ち
をいだく……………………………………………………
i .日の出や日没、または月の光に、なにかあらたまった
気持ちになる………………………………………………
j .いま、ここでの瞬間が大切なひとときだと感じる……
k .自分はなにか大きな見えない力によって「生かされて
いる」と感じる……………………………………………
えい か
l .賛美歌やゴスペル、あるいはお経やご詠歌などを聞く
と、心が落ち着いたり、あらたまった気持ちになる…
おそ
m.神仏は、畏れ多いものである……………………………
n .仏壇を拝んだり、お墓参りをするときは、ご先祖さま
というよりも亡くなった父母や祖父母を思い浮かべる
o .誰も見ていなくても、よくないことをすると、バチ
(罰)があたる ……………………………………………
p .ときどき、これから何が起ころうとしているかを教え
てくれる、第六感が自分にはあるように思える………
q .すぐれた芸術作品からは、宗教的なものが感じられる
ことがある…………………………………………………
r .山や川や、草や木など、すべてに霊がやどっているよ
うな気がする………………………………………………
March 2
0
0
8
―6
9―
問23.あなたは宗教をどのようなものだとお考えですか。a から m までのそれぞれにつ
いて、あてはまるものを1つずつ選んで○をつけてください。
そ
う
思
う
や
や
そ
う
思
う
ど
ち
ら
と
も
い
え
な
い
あ
ま
り
そ
う
思
わ
な
い
そ
う
思
わ
な
い
a .宗教は争いを生む……………………………………
1
2
3
4
5
b .宗教は人間の弱さのあらわれである………………
1
2
3
4
5
c .宗教はうさんくさいものである……………………
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
e .宗教は私には理解できない…………………………
1
2
3
4
5
f .宗教は心の安らぎをあたえてくれる………………
1
2
3
4
5
g .宗教はご利益を与えてくれる………………………
1
2
3
4
5
h .宗教は世界平和に貢献する…………………………
1
2
3
4
5
i .宗教は本当の自分や人生の意味を教えてくれる…
1
2
3
4
5
j .宗教は深い人間関係をもたらす……………………
1
2
3
4
5
k .宗教は、自分や自分の人生を変える力がある……
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
d .宗教を信じるとだまされて、金をまきあげられた
りする…………………………………………………
l .信仰心の強い人々は、信仰を持たない人々に対し
て不寛容になりがちである…………………………
m.信仰心の強い人々は、他の信仰を持つ人々に対し
て不寛容になりがちである…………………………
問24.それでは、今までの宗教にはかかわりなく、
「宗教的な心」というものを大切だと
思いますか、それとも大切だとは思いませんか。1つだけ○をつけてください。
1.
大切だと思う
2.
まあ大切だと
思う
3.
4.
あまり大切だとは
大切だとは
思わない
思わない
―7
0―
社 会 学 部 紀 要 第1
0
4号
The Structure of Japanese Religiosity
ABSTRACT
!.Introduction
In recent years, the social sciences have seen a re-emergence of research focused on
the theme of “values,” for example, the appearance of post-modern values, based on new
dimensions. Since the 1
9
8
0s, several large-scale international comparative surveys have
been conducted that focus on people’s beliefs and values, including the European Values
Studies, the World Values Survey and the International Social Survey Programme. The
questionnaires used in these surveys focus on “religiosity.” The results have shown that
while religiosity is strongly linked to people’s beliefs, values and attitudes in Western
countries, that tendency is not evident in Japan. The generalized use of the phrase “nonreligious Japan” is also derived from this context. This perspective, however, is based on
Western religious views, and an examination informed by Japan’s distinctive religiosity
would undoubtedly shed some light on other aspects that might not otherwise be evident.
That is the key purpose of this questionnaire survey.
".Survey Outline
The sample was obtained using a two-stage stratified nationwide random sampling of
men and women aged 2
0 and older from the Basic Resident Registry as of March 3
1, 2
0
0
6.
The survey was conducted in March 2
0
0
7. A survey company(Central Research Services,
Inc.) was entrusted to conduct the survey using the leave-and-pick-up method. Valid
responses were collected from8
8
2respondents, yielding a response rate of4
9.
2%.
#.Data Analysis Method
The data analysis method used was Facet Analysis, developed by Louis Guttman, and
specifically the two methods of Smallest Space Analysis and Median Regression Analysis. I
have labeled the current data analysis an “exploratory data analysis,” and have selected
these methods because they are extremely effective tools for conducting exploratory work.
$.Smallest Space Analysis
1 .Smallest Space Analysis of Question Items Related to Religious Behaviors
The SSA map shows that the question items related to religious behaviors are divided
into three groups: ① Worship, devotions, the Bible, sacred scriptures, and shrine or temple
visits, ② Visiting ancestors’ graves, household shrines, household altars, and ③ Visiting a
shrine on New Year’s Day, fortune-telling sticks, protective charms, amulets, prayer.
2 .Smallest Space Analysis of Question Items Related to Another World
According to the SSA map the question items are divided into those regarding: ① Deities,
② Life after death, reincarnation, souls, guardian souls, and ③ UFOs.
3 .Smallest Space Analysis of Question Items Related to Religious Beliefs, Feelings
and Attitudes
The question items that are close to the position of “holding religious beliefs” are “a
religious mind is important,” followed by “protection and salvation,” “gratitude and
emotional connection with ancestors,” a sense of peace or awe,” then the belief that “bad
behavior will be punished,” and “a religious view of nature,” However, “exhibiting
memorialism” and the feeling that the “this moment is important” are located a fair
distance away from “holds religious beliefs.” This SSA map is important insofar as it clearly
shows the various aspects of the religiosity of the Japanese.
4 .Smallest Space Analysis of Question items Related to the Workings, Functions and
Characteristics of Religion
This SSA map shows that the question items related to the workings, functions and
characteristics of religion are divided into two categories: those with positive content and
those with negative content.
%.Median Regression Analysis
The next step after Smallest Space Analysis is to explore the relationship between
“religious behaviors” and “religious feelings and attitudes”. These results suggest that the
relationship in each of these cases has a monotone shape that rises upward to the right.
That is, “religious behaviors” and “religious feelings and attitudes” are not distinct and
separate items, but are closely linked to one another.
Key Words : religious behaviors, religious beliefs, feelings and attitudes, the workings,
functions and characteristics of religion
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