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『ごあいさつ』 桂 歌之助

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『ごあいさつ』 桂 歌之助
本日の出演者
『ごあいさつ』
本日は御来場頂きまして有難うございます。今回は十一周年記
念会で、仁智師匠をお迎えします。
最近電車に乗っていてよく目にするのが転職支援の広告です。
昔の様に一つの会社で勤め上げるのが当たり前ではなくなってき
たと聞きます。
例えばある会社に十年勤め、そこで得たものを武器に転職をする
人生において職場や職種を変えるのは大きな挑戦と言えるでしょ
う。
一方落語家は、正式な入門前や入門してすぐに辞める人は
多々いますが、十年経って辞める人は大変少ない。これは落語家
という仕事がよほど魅力的なのか、それとも落語家の十年は何の
武器にもならないから辞めるに辞められないのか・・・。こう言う私も
入門して十七年が経ってしまいました。
そんな状況にいるからか、自分自身どうも新しい事に挑戦するの
を忘れている気がします。新しいネタを覚えたり、イタリア語落語をや
ってみたりはしますが、これらはあくまで落語の範疇でのこと。全く新し
い何かに挑戦していない。やってみたい事は色々あるのです。それは
子供の頃に憧れていたことで、今の私のイメージには合わないでし
ょうが、エレキギター、タップダンス、絵画、料理、バイクでモンゴル
旅行。
これらに挑戦したら、きっとそこで面白い人に出会い、魅惑の体験が
出来てそれが高座のネタになるだろう・・・、あっ、結局落語に行き
着いてしまう様です。
桂 歌之助
『手拭について』
落語家の必需品の手拭い。どんな品を使っているのだろうと思われて
いるかも知れません。市販の物を使うこともありますが、噺家が作った手拭
いをよく使います。
私達はある程度キャリアを積みますと自分の手拭いを作って、言わば名
刺のように配ります。自分でデザインを考えますから、そこにはその人の人
柄がよく表れます。
私の師匠は自分の芸名を大きく書いただけの愛想のないもの。米朝師
匠のものは御自身で手書きの俳句が配されています。一番感心したの
が、東京の古今亭志ん朝師匠の手拭い。憧れの師匠から頂戴して広げ
てみるとそこには大きな富士山。
日本一の噺家。
他の人がこんな柄なら鼻につくところが、志ん朝師匠なら「なるほど。」と
納得してしまいました。
市販の手拭いにも洒落た柄が多いです。薄手でかさばらず、濡らしても
すぐに乾くし、使い込む内に色落ちの変化も楽しめる。手拭いは誠によく
出来たもの。
両端がほつれてきますが、気にせずガンガン使うのが良いのです。
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