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送信機の製作∼ワイヤレス・モニタ・システムの実験
見本 PDF 第 4 部 無線機を作ってみよう 第 2 章 微弱電波によるワイヤレス・データ通信の実験製作 (1) 送信機の製作∼ワイヤレス・モニタ・システムの実験 本稿では 2 章に分けて,手製作でも確実に動作する微 弱電波の送信機と受信機の製作をテーマに解説します. 本章と次章で紹介するワイヤレス・モニタ・システ ムを 写真1 に示します. いて,離れていても動作の状態がわかる便利さと,眼 や耳が不自由な人の生活を支援する器具として役立つ ことをねらいます.システムの構成を 図1 に示します. 図1 応用事例として,LED ランプなどのインジケータ のリモート・センシングを行います. 写真2 のよう にランプなどの点灯の状態をセンサで検出し,点灯か ら消灯あるいはその逆の変化があったときに電波を出 します.センサは吸盤で家電製品や防犯機器などに付 けられるようになっています. 受信機は信号を受けると音や光を出すようになって 写真1 微弱無線送受信機の応用事例 微弱電波 光 315MHz 送信機 光 受信機 音 センサ 振動 ⋮ 写真2 製作する送受信ユニットとセンサ部の外観 センサを洗濯機のLED 表示部に取り付けたようす センサ部 2- 1 ハードルは多いが越えられる, 一つずつ工夫していこう 高周波回路の製作は敷居が高い? 携帯電話,無線 LAN,ロボット,ラジコン模型… など,近距離の無線通信の応用は年々広がっています. しかし,この領域は自分で製作や実験を行ってみよう となると,ハードルがいくつもあって気軽に踏み込め ないのが実情です. ● ハードル 1…法規制の問題 コードレス・テレホンの通信距離は見通し 100 m ほ どですが,この程度の電波出力(特定小電力)でも認可 なしでは利用できません. 92 自由に出せるのが「微弱電波」と規定されている範 囲の電波で,うまく作れば見通し 30 m ほどの通信が できます. 送信機自体は 3 V の電池とトランジスタ 1 本でも構 成できるほどですが,問題はその出力が微弱電波の範 囲に入っているかどうかを検証するのが大変なことで す.電波暗室,スペクトル・アナライザ(スペアナ)に 標準アンテナと,個人はおろか無線関連の製品を作っ ているメーカでさえもそろえるのが大変なほど大がか りな設備が必要です. 第 2 章 送信機の製作∼ワイヤレス・モニタ・システムの実験 プリント基板のガーバ・データを公開しますので,利 微弱電波がもっとも効率的に使えるのは,後述のよ 用してください.このプリント基板が動作し,受信機 うに 322 MHz よりちょっと下がった周波数領域です. も動作すれば,以後の製作への貴重なテスト・ツール この領域になると,1 pF 未満の容量や数 nH のインダ ともなります. 基礎編 ● ハードル 2…手製作が困難 クタンスが動作を大きく左右します.ワイヤを使った ● 微弱電波とは 送信機について述べるまえに,電波法で規定されて いる微弱電波について説明します.微弱電波であるか 用となっています.実験用に基板を起こすことは最近 どうかは受信側の電界強度で決まります.どのような はかなり手軽になってきましたが,アートワーク専業 でない人がパターン設計を行うのは能率が良いとはい えません.ましてや,プリント基板ができあがっても 動くとは限らない…となれば二の足を踏んでしまいま す. 送信機でも送信電波の強さはアンテナ次第で変わりま すから,「微弱電波用の送信機」というものは本来あ りません. 電界強度はピーク値が記録できる電界強度計,ある いはスペアナで測定されます.測定環境についてはほ ぼ規格化されており, 「3 m 法」と呼ばれる方法では ● ハードル 3…動作確認が難しい 送信機と受信機を作ったけれど動かない,どちらが 次のようになっています (昭和 63 年 2 月 25 日に告示さ れた郵政省告示第 127 号の要約, 図2 参照). 悪いのかもわからない,ということは起こりえます. s測定する場所は平たんで周囲に建築物その他の電波 を反射する物体がなく,かつ,直径 6 m,短径 5.2 m の楕円の範囲内に測定の障害となる金属物体がないこ と. 短波放送とか FM ラジオの中間周波数程度までなら, 中級品のオシロスコープがあれば信号を見ることで原 因をたどることができます.しかし,300 MHz を越 える世界ではプローブ自体が測定の妨げになり,信号 をとらえるにはまったく別の手段がいります.それも お金と手間がかかる話で,ためらっているうちに迷宮 入りしかねません. * 本稿では,プリント基板を起こす代わりに銅板をグ ラウンド・プレーンに用いる手法で,手製作でも動作 する高周波回路の製作法を解説します. 送信機についてはアンテナを基板上に設けました. これに沿って製作した送信機が電波法に触れないこと は,電波暗室で測定して確認ずみです.これでハード ル 1 と 2 は越えられます. ハードル 3 に対しては,送信機の高周波部分だけを モジュール化したプリント基板を作成しました.この 1∼4m 可変 ダイポール・アンテナ (水平) ダイポール・アンテナ (垂直) 1.5m 回転 測定器 5.2 常に厳しく規制されます.一方,通信距離を伸ばすに は ア ン テ ナ が 短 く て す む 高 い 周 波 数 が よ い の で, 315 MHz がよく使われます. 図3 3 m 法での電界強度の測定環境 絶縁物で作った台. 被測定物をここに置く sアンテナは半波長ダイポールを用い,地上高を 1 m から 4 m まで変化させ,水平偏波および垂直編波の双 方における電界強度の最大値をもって送信機の出力と する(スペアナの帯域幅に関する項は省略). 電波暗室でなくても畑や運動場に行けばこれらの条 件がクリアできますが,気象条件や外来電波に測定結 果が左右されます. 図3 のように,電界強度は 322 MHz を越えると非 m 3m 6m 導電性の網や金属板を 敷くと再現性がよい 微弱電波とみなされる電界強度の範囲 1000 電界強度[μV/m] 図2 s送信機は,木その他の絶縁材料により作られた高さ 1.5 m の回転台の上に,通常の使用状態に近い状態で 設置すること. 500 100 35 10 1 100k 1M 10M 100M 1G 322M 周波数[Hz] 10G 100G 2-1 高周波回路の製作は敷居が高い? 1T 150G 93 実践編 手配線では,動作したとしても再現性のある回路は組 めません. また,この用途の IC や受動部品はすべて表面実装