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基礎編
徹底図解★ LCR &トランス活用 成功のかぎ
Appendix
コイルやフェライト・ビーズの特性を実験で理解
インダクタの寄生容量と配置の影響
● 実際のインダクタ素子の等価回路
実際のインダクタ素子の等価回路を 図1 に示しま
す.ここに存在する物理量が,純粋なインダクタンス
L だけであればよいのですが,実際には巻き線抵抗な
どに起因する直列抵抗成分 R s や,巻き線間の浮遊容
量としてどうしても存在してしまうため,並列容量成
分C p が存在します.
インダクタンスの大きな素子の場合は,巻き線径が
細く,巻き数も多くなる傾向にあり,これらの寄生成
分がより大きな問題となってきます.特に並列容量成
分の影響は,公称インダクタンスの値が大きくなるだ
けでも効き方が強くなります.比較的低い周波数領域
においても無視できない問題となります.
● 市販インダクタの並列容量成分の測定
基板上に構成したインピーダンス 50 Ωのマイクロ
ストリップ・ラインに,市販インダクタを直列に挿入
します.
そのときの伝送周波数特性を,ネットワーク・
アナライザを用いて測定してみました.
今回の実験に使用したのは,インピーダンス 50 Ω
のネットワーク・アナライザなので,信号源インピー
ダンスと受信端インピーダンスはそれぞれ 50 Ωです.
これらのインピーダンスをR として含めた形での等価
回路と,その場合の伝達関数を 図2 に示します.寄
生成分を含んだ伝達関数は少々複雑な式になります.
もし,インダクタが理想素子であった場合には,単純
な 1 次ローパス・フィルタの式になります.
直列に挿入するインダクタには,東光の LL1608 シ
リーズから 10 nH 品と 100 nH 品
(いずれも 1608 サイ
ズ),村田製作所の LQG21N タイプ 1.2 μH 品(2012 サ
イズ),同じく村田製作所の LQH3C タイプ 22 μH 品
(3225 サイズ),および村田製作所のチップ・フェラ
イト・ビーズ BLM18EG601(1608 サイズ)を使用しま
した.測定結果を 図3 に示します.
Fixture と表示されたグラフは,実験に用いたマイ
クロストリップ・ラインに何も実装しない場合の伝達
特 性 で す. パ タ ー ン 間 の 浮 遊 容 量 に よ り 1 GHz で
− 46 dB 程度のクロストークが発生していますが,イ
ンダクタ実装時と比較すると十分小さく,それほど影
響はないものと考えられます.
一番インダクタンスの小さい LL1608,10 nH 品では,
大体 1 GHz を超えるあたりからようやく減衰が始まり
ます.今回の測定周波数範囲においては,並列容量成
分の影響をはっきり確認できませんでした.
同 じ LL1608 シ リ ー ズ で も,100 nH 品 で は,922
MHz に伝送特性のディップが見られます.これは,
本来のインダクタンスと寄生成分としての並列容量成
分が並列共振を起こしたことにより見られる特性です.
ディップの周波数から寄生容量を逆算すると大体
0.3 pF の並列容量成分が推定できます.
LQG21N,1.2 μH 品では,並列共振周波数が低くな
り,大体 148 MHz にディップが観測されます.推定
並列寄生容量は約 1 pF です.LL1608 シリーズ 100 nH
図2
インダクタ素子を直列に挿入したときの等価回路
と伝達関数
50Ωの伝送線路にインダクタを直列に挿入し,そのときの伝
送特性をネットワーク・アナライザで測定する
インダクタ素子の等価回路
Cp
L
Rs
本来のインダクタンス成分 の
L
ほかに,直列抵抗成分 Rs や,並
列容量成分 Cp が,どうしても存
在してしまう
出力
ネットワーク・アナライザの入出力インピーダンス を含めて,
R
等価回路を描くと下のようになる
Cp
入力
R
L
Rs
出力
R
この回路の伝達関数は,
s 2LCp + sCp Rs +1
2
R
2Cp RRs +L
s 2LCp
+s
+1
2R +Rs
2R +Rs
Rs
Cp
仮に, =0かつ, =0の場合には,伝達関数は以下のように
ずっと簡単な形になる.
1
1
G(s )
=
L
2
s
+1
2R
=
G(s )
図1
L
入力
R
2R +Rs
Appendix インダクタの寄生容量と配置の影響
139
実践編
■ インダクタ素子の寄生成分の影響
見本 PDF
いろいろなイン
ダクタを直列に
挿入したときの
伝送損失特性
10
LQG21N 1.2μH:148MHzにディップ
−10
−20
−30
BLM18EG601:
フェライト・ビーズ
は損失があるので共
振にはならない
−40
−50
0.1
1
10
■ インダクタ素子を配置するときの注意
● 周囲の空間も素子の一部
インダクタ素子は,巻き線とその周囲に発生する磁
界との相互作用によりインダクタンスを獲得していま
す.見方によってはインダクタ素子周囲の空間も,そ
の素子の特性を得るための大切な構成要素といえます.
特に内部にコア材を持たない空心コイルでは,磁気回
路は周囲の空間そのものとなるので,そういった性質
クロストークの実験に使用したコイル
図5
100
周波数[MHz]
10000
● コイル間クロストークの相対距離による変化
今回, 図4 に示すような,線径 0.4 mm のウレタン
線を 5 回巻いて外形を 4 mm とした空心コイルを二つ
手作りし,このコイルをそれぞれ同軸ケーブルの先端
にはんだ付けして相対距離や相互の姿勢を変えながら,
どれくらいのクロストークが発生するか実験してみま
した.実験回路を 図5 に示します.
初めに二つのコイルを 図6 に示すように平行配置
とし,コイル間のすき間の距離を変えて測定を行いま
した.結果を 図7 に示します.
コイルに限らず,近接した部品間では寄生容量など
インダクタ間のクロストー
ク特性を測定するための実
験回路
出力
L1
Appendix インダクタの寄生容量と配置の影響
1000
がより顕著となります.
従って,抵抗素子やコンデンサ素子と比較して,イ
ンダクタ素子は周囲に存在する物体の影響を受けやす
いといえます.最近では電子機器の小型化要求が強く,
電子部品の実装密度がとても高くなり,個々の部品間
の相対距離が小さくなっています.インダクタが周囲
の空間や素子に与える影響や,逆にインダクタが周囲
から受け取る影響について,今よりも増して注意する
必要があります.
インダクタ素子同士を接近させると,一方の素子か
ら発生する磁界が,もう一方の素子の巻き線に作用し,
磁界を通して信号が漏れてしまう現象が発生します.
この現象は比較的低い周波数でも見られ,しばしば回
路の性能を悪化させる原因となります.
入力
140
LL1608 10nH:
今回の範囲では影
響を確認できない
Fixture:
マイクロストリッ
プ・ラインのみの
伝達特性
LQH3C 22μH:
約26MHzにディップ
と比較して共振周波数が大きく下降したわりには,寄
生容量はそれほど大きくありません.これは,インダ
クタンスが大きくなった影響があるためです.
LQH3C,22 μH 品ではさらに共振周波数が低くなり,
25.99 MHz にディップが観測されています.推定並列
寄生容量は 1.7 pF と計算されます.この素子のように
インダクタンスが比較的大きな巻き線抵抗では,共振
周波数以上の高い周波数領域における特性がかなり暴
れています.500 MHz 以上では複雑な伝達特性とな
っています.
フェライト・ビーズ,BLM18EG601 は,素子その
ものに損失があります.通常のインダクタ素子と異な
り,顕著な共振現象が見られません.減衰は比較的低
い周波数から始まり,約 3 μH のインダクタンスをも
つことが分かります.100 MHz 付近を境に減衰が止
まり,それ以上の周波数では大体フラットな特性とな
ります.
図4
LL1608 100nH:922MHzにディップ
0
レスポンス[dB]
図3
L2
図6
二つのコイルの平行配置
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