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紫外線(UV-A)照射により出現するマウス皮膚 メラノサイトの起原および

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紫外線(UV-A)照射により出現するマウス皮膚 メラノサイトの起原および
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日皮会誌:88
(10,685-700,
1978 (昭53)
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紫外線(UV-A)照射により出現するマウス皮膚
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メラノサイトの起原および分化過程の生物学的特性
孝*
上 杉
(dimethylbenz
要 旨
素沈着を"*,
紫外線(UV)照射後に出現する表皮メラノサイト
(MC)の数的増加の機序を明らかにする為,C
57BL/6
anthracene)は皮膚MCの活性を高め色
hydroquinoneは逆に皮膚MCの機能の低
下,破壊を起こし,色素脱失を生じさせる5)6)・さらに
マウスを実験モデルとして選んだ.同々ウス背部,足根
紫外線(UV)はメラニソ穎粒(MS)産生を増加させ
部皮膚には,照射前には活性MCは皆無であったが,
る刀-15)_
UV-A
UV照射に基づくメラこン産生の増加は単数.複数照
(320∼400nm)を連続14日間照射した所,活性
MCが出現した.これ等活性MCの出現過程は4時期
射ではその機序を異にする.ヒト及びモルモット皮膚に
に分けられ得た.少数ながら照射第3期(6∼7日目)
単数のUV照射を行なうと,MCの機能の宜進のみを
には分裂像を示すMC
認め,MCの数的増加ぱ伴なわない10)15)16)一方,複数
(1.7∼2.2%)が認められた.電
照射ではMCの数的増加及び機能の完進を起こすna)9)
顕下にて,活性MCは,照射前より存在する不活性,
ii)-n)_ UV照射に基づくMCの活性化,数的増加は
DOPA反応陰性MCが活性化したものに由来する事が
分かった.不活性MCは,
(a)樹枝状を呈し,
(b)
UV-A(320∼400nm),
UV-B
(280∼320nm)両者の
メラノソーム(MS),ラングルハンス穎粒等の特異的穎
照射により認められうる1り16) これ等UV照射後の
粒を有せず,(c)少数の細胞内小器官と,
MCの数的増加の機序に関しては,最近Erickson等14)
100Åフィラ
メソトを有する細胞であった.電顕組織化学にて,これ
がrhesus
monkey,
佐藤18)がhairlessマウスを実験モデ
等不活性MCはUV照射後,明らかなMSを産生す
ルとして報告している.しかし,その詳細は未だ明らか
る以前にDOPA陽性小空胞,ゴルジ装置を有してい
ではなく,現在の所4つの仮説が考えられている.即
た.これ等所見よりUV照射後に出現するMCは(a)
ち.
既存の不活性MCの活性化及び,(b)これ等細胞の分
:1)表皮内に既存する4・ロジナーゼ陰性,不活性MC
裂・増殖によるものであると考えられた.
のUV照射による活性化.
2)チロジナーゼ陽性MCの直接の分裂・増殖.
I● 緒 言
3)皮膚附属器,真皮に存在する不活性MCの活性
皮膚メラノサイト(MC)の機能は種々の内的,外的
及びその表皮内移動.
因子の影響を受ける。これ等因子のうち代表的なものは
4)これ等3点の2つ以上の組み合わせ,である9)10)
ホルモソ・化学薬剤・理学的刺激である.MC刺激ホ
12)1<)
ルモン(MSH)はMC内cyclic・AMPを介し,酵素
著者はUV照射に基づくMCの数的,機能的増加
・チロジナーゼ活性及びその産生を増し。jラニソ化
の機序を明らかにする為に,C
(melanization)の克進を起こす1)2)・化学薬剤・DMBA
57BL/6マウスを実験モ
デルとして選んだ.同マウス背部皮膚では胎生15日目よ
り,表皮基底層にMCが出現するが,生後3日目以後
*札幌医科大学皮膚科教室
Takashi
Uesugi
zation
: Electron
in the
erentiation
processes of activation
of dormant
mis
of C57
tion
(UV・A)・
microscopic
black
mouse
melanocytes
characteriand
in
diff-
epider-
skin after UV-irradia-
昭和53年5月12日受理
ではその数が減少し,18日目では完全に消失する19)20)
Quevedo等8)は,成熟G
57 BL/6マウス足底部皮膚
にUVを照射し,活性化MCの出現をみた.又,佐
藤18)はC
57BLマウス由来のhairlessマウス背部皮膚
にUV照射を行ない,同様活性化MCの出現をみ
別刷請求先:(〒060〉札幌市中央区南1条西16
た.しかし,これ等2者の実験モデルでは照射前には少
丁目札幌医科大学皮膚科 上杉 孝
数ながら活性化MCが存在する,今回,著者ぱ活性化
上杉 孝
686
MCを全く欠くマウス背部,足根部皮膚に複数のuv
緩衝液にて37°C,6時間反応させた. これ等皮膚片は
照射(UV-A)を行ない,モの後出現したMCの起原
その後1%オスミウム酸で後固定し,1.5%酢酸ウラユ
及びその活性化機序を光顕,電顕,組織化学,及びオー
ウム・ヴェロナール緩衝液(pH
トラジオグラフィーを用いて明らかにした.尚,背部皮
間ブロック染色を施行し,エタノール系にて脱水,エポ
7.2, O.IM)にて30分
膚は毛包,脂腺を有するか,足根部皮膚はこれ等附属器
ソ812に包埋Porter-Blum
を欠く.
て超薄切片を作製し,酢酸ウラニウム,クェソ酸鉛の二
II● 実験方法
重染きを施した,
1; 実験動物;C
3)オートラジオグラフィー標本作製法;マウス6
目,体重20∼25g,
57BL/6Jマウス,雄,生後8∼10週
MT- I 型ultramicrotom eに
匹を使用.40μCiの'H-methylthymidine
36匹.
2. UV照射方法;照射線源は東芝製Dermaray
DMR-I型(波長;300∼430nm,ピーク;
M-
352nm)を用
Ci/m mole. New
(特異活性:20
England Nuclear lnc・)をO.lccの生
食に溶かし,照射開始3,
5, 10日目の背部皮下に注射
いた.1回照射エネルギー量は6.12J/cm≫とし,連日14
した.注射6時間後に採皮,直ちに上記カルノフスキー
日間照射した.
氏固定液にて30分間固定し,その後前述のDOPA溶液
3. 照射部位;1)汗腺,毛包,脂腺を欠く足根部,
内に浸潰し,アルコール脱水,パラフィソ包埋後,デ4
2)汗腺を欠くカ乳毛包,脂腺を有する背部,の2ヵ所
ツピング法によるオートラジオグラフィー標本を作製し
を選んだ.背部生毛は照射3週間前にパラフィソ・ロジ
た.乳剤はNR-M,
ソ含有フックスにて抜毛し,毛周期を一定にさせ,その
蔵庫中で14日間露出後,
後照射前日に再度抜毛した.又,照射中生毛の出現をみ
5分間現像し,その後ヘマ・トキシリソ液にて核染色を行
(コダック社製)を使用し,4°C冷
D19 (=!タック社製)現像液で
たものは直ちに,同様の手技にて抜毛した.
なった.
4, 標本採皮及び標本作製方法;エーテル麻酔下に
III. 結 果
て,照射前及び,照射開始後1
7,8√10,
, 2,
3,
4,
5,
6,
12, 14日目の合計12回行なった.採皮片は
直ちに細切し,光顕,電顕,及び組織化学の標本に用いこ
1.
UV照射前
1)肉眼的所見;C
57BL/6マウスの背部及び足根部
皮膚は淡紅色を呈しており,色素沈着は全く認められな
た.
い(図1-a,
1)光顕組織化学標本作製法;採皮片の一部は剥離及
2)光顕所見;照射前の表皮は3∼4層からなり,表
び垂直DOPA
皮基底層及び有練層内には淡明細胞が散見される.
(L・3,4-dihydroxyphenylalanine)反応標
本に用いた.剥離DOPA標本作製は,
Staricco,Pinkus
b).
Mas-
son-Zimmermann嗜銀染色において,表皮,真皮にはメ
の方法21)に準じ, 2N-NaBr液にて37°C,2時間浸潰し,
ラニソ預粒は証明できない(図2―a,
表皮と真皮とを分離する.分離表皮片を0.1%DOPA・
DOPA標本においても,表皮,真皮,背部毛包部には
燐酸緩衝液(pH
DOPA陽性MCは皆無である(図3―a,
7.4, 0.1M)中にて37°C,4時間反応
させた後,ホルマリン固定,アルロール脱水,核染色を
b).剥離及び垂直
b, 4-a,
施行した. DOPA陽性MCの算出法は接眼部に1区画
現は認めない.
25m
3)電顕所見;光顕下で認められる淡明細胞は電顕上
「(5×5mm)のレンズを:装着し,
画のMCを集計し,lm
100倍下で8区
「に換算した.垂直DOPA標
本は採皮片を5%中性ホルマリソにて4
°C,
2 時間固定
デスモソームを有しない,非角化細胞である.これ等細
胞は核クロマチン,細胞内小器官及び100
Aフィラメン
後,タリオスタットにて12μの凍結切片を作製,その後
トの含有差に基づいて4型に分け得た.第1型は樹枝状
上記DOPA・燐酸緩衝液内にて37°C,4時間反応させ,
細胞であり,良く発達した細胞内小器官を有し,細胞質
核染色を行なった.コントロール標本は,切片を70°Cに
内にはライソソーム様頼粒,
て3分間加熱したもの,又はDOPAを取り除いた燐酸
ングルハンス穎粒を認め,ラングルハンス細胞と同定で
緩衝液に浸潰した組織とした.
きるものである(図5
2)電顕標本作製法;通常0電頭標本はカルノフスキ
胞であり,第1型に比較的よく似た超徴構造を示す.細
ー氏固定液2りこて2時間固定,電顕組織化学(DOPA)
胞質内にはライソソーム様穎粒,
標本は同固定液にて30分間固定し,上記DOPA
有するが,ラングルハンス願粒は確認できない(図6−
・燐酸
b).
予備実験で抜毛等の機械的刺激により活性化ヶMCの出
100Åフィラメント及びラ
−a, b).第II型は同様樹技状細
100Å7イラjントを
UV-Melanogenesis
687
図1 -a,b. UV照射前のC57BL/6マウス皮膚.a:抜毛した背部.b:後脚足根部.
a, b両者共色素
沈着は認め得ない.又,bでは生毛の発育が認められない.
図2 -a,b. UV照射前の表皮.a:背部表皮.b:足根部表皮.aでは3−4層の上皮細胞からなる.
しかし,bでは5−6層の上皮細胞からなり,角質層が厚い.表皮,真皮にjラニソ穎粒はない.
Masson-Zimmerraann染色.a:×240,
b:×180
図3 -a,
b .UV照射前の剥離DOPA標木.a:背部.b:足根部.
a, bいずれもDOPA陽性MCは
存在しない.a:×80,
b:120
図4 -a, b. UV照射前の垂直DOPA標本.a:背部.b:足根部.表皮基底層及び真皮内にDOPA
陽性MCは認め得ない.a:×150,
b:×150
688
上杉 孝
図5 -a,b. UV照射前の第1型・非角化細胞,細胞内小器官が良く発達L,ラングルハンス顕粒,ラ
イソゾ一ム様頴粒が存在する.N:核.a:×15,㈲0,b:X 37.4(10.
図6 -a,b.
UV照射前の第U慌・非角化細胞.細胞質内にライ`ノソーム様願粒,
が存在する七,ラングルハンス順粒は認め得ない.N:核.a:×20,500,
100Å7イラタント
b:×62,800.
UV-Melanogenesis
図7
-,
689
UV照射よう第HI聖・非角化細胞.核は毀染色質に富み,細咆内小趾白句)発達が極めて悪く
f
Vヽダ・
ム様噸粒,りング'jL
・ヽン・ス噸粒は存在しない.N:核.
X 18.500.
図8 UV照、射│町の第IV聖一非μj化細││包.衣皮簾底川に存在し、核は頁││ミ染色賢が多く、細胞質内に
はリjシバーム、糾而小胴体、(ヽoatedvesirle 万少数仁仁する.
胴.×に、肋0.
BL:仏眼膜、N:核、KC:角化細
上杉 孝
690
図9-a,
b ,uv
照射前の第IV型・非角化細胞.表皮基底層に存在する樹枝状細胞である.細胞質及び
突起内に100Åフイうベッドが豊富である,BL:基底膜,KC:角化細胞.a:×8,800. b:×
25,000.
EE\uoijeindOri
“
3)A30UB│8│A│
0 3 5 7 10 14
⑧ Days
Eχposure
図10 UV照射後出現するDOPA陽性MCの経時的,数的増加を示す.DOPA陽性MCは照射
3日日より出現し,3−5日日迄は少数のMCが存在.
わずかに増加するのみである.
6―7日に急速に増加し,
8―14日迄は
UV-Melanogenesis
図U-a, b. uv
691
照射後の皮膚.a:14日目背部.b:10日目足根部.aでは黒褐色の微細な色素沈着か
びまん性に認められ得,bではわずかに色素沈着を認める.
I8:ll2-a,
b . uv 照射後の剥離DOPA標本(第2期).a:3口目背部,
2 ― 3本の樹枝状突起を有す
るDOPA陽性EMCが存在ミする.b:5日目足根部,樹枝状突起の発達は種々である.a:×120.
b:×220
[5;il3-a,
b. uv 照射後の垂直DOPA標本(第2期).表皮基底層にDOPA陽性MCが認められる.
a:3日目背部,b:5日日足根部.a:×150,
b:220
図14-a, b. uv
照射後の剥離DOPA標本(第4期).良く発達した樹枝状突起を有するDOPA陽性
MCが多数出現する.a:14日目背部,b:10日目足根部.a:×80,
b:×220
図15-a. b. uv 照射後の垂直DOPA標本(第4期).表皮基底層に多数のDOPA陽性MCを認め
る.背部毛包部にもMCが出現している.しかし.真皮内にはMCは存在しない.a:14日目背
部,h:10日日足悦郎.a:×100.
b:〉く220
69Z
上杉 参
川Ifi-a,b. UV照射後の第IV型・非角化細胞.照射3日LI.細胞内小器竹,殊にゴルジ装置が発達
へ小才胴七増加する.
100Åツイラタントは核周川に凝集している.‘ヤノゾしムは認められた
い.BL丿,肩口虹 G:ゾルジ装置.a:×ぶ),000,
b:Hよ000.
図17 UV照射後の第IV型・非角化細胞.照射5L卜1.細胞質内に比較的'収r密度の扁いライソゾー
ム様顛粒が存在する.リボソし一ムも豊富で一部ポリゾー−ムを形成する.BL:塙収映、N:核、R:
リボリ二犬・ヽ、DOPA反応.×15.7O(卜
693
UV-Melanoeenesis
図18-a、b.
UV照射後のMC.照射5日日.ゴルジ装置の一部およびcoated
を示す.
吠宍いうノヅーづぺよはとん,ど認め難い.BL:基底膜,DOPΛ反比こa:×12,500.
vesicle がDOPA陽什
b:×
四、000.
図19-a. b. UV照射後のMC.照射7日日.核は真正染色質に富み,小胞体,ゴルジ装置が著明とな
貼DOPA陽性の小空胞が多数紅白する.
BL : 基鋭膜,N:核,G:ゴ・ドノ装置,DOPA反応.
a:×1乱O叩,b:×:胴ぷ00
6叫
し杉 孝
図2(l-a,b. UV照射後のMC.照射14日[│.成熟jラノ・/−ムが多数出現し,
示す.BL基底膜,N:核,G:イルブ装置,DOPΛ反応.a:×10,700,
DOPA反応も強陽什を
b:×28,8㈲.
図2I UV照射後のMC.照射14日目.基底細胞に受け渡されたタラノソ……ノヽ1ま単-一体と複合体が存
在する.KC:角化細胞,BL:基底膜,DOPΛ反応.×11,300.
UV-MelanoiJ"enesis
図22 UV照射7日目,エポン包埋Iμ薄切片本.表皮基底層に淡明細胞が2個存在し,そのうち1
個はクロ・チンが分裂期の像を呈している(矢印).
図23-a, b.図22の同一部位の連結超薄切片標本.核クロマチンはクロモゾームに分離し,細胞質内に
は種々の発達段階を示すjラノゾームが存在する.かつ,DOPA陽性の小空胞も存在する(図a).
この分裂期MCと隣接角化細胞間に一部デスモゾー−ム様構造が存在する(図b矢印).C:クロモゾ
ーム,DOPA反応.a:×10.600,
b:×洵,㈲皿
図丿-a, b.光顕DOPΛ・う一一トラジオダラフィー標本.図aは細胞質MSに,図bは核内銀粒子に
加点を合卜せた.MC:ノラノサイト,KC:角化細胞.
695
上杉 孝
696
a, b).第1型,第II型ともに核のクロマチンは真正染
3)電顕的所見;UV照射後の表皮内・非角化細胞は
色質に富んでいる.第Ⅲ型は非樹枝状細胞と思われる細
第3期迄は照射前と同様4型の細胞に分類し得たが,第
胞である.核の細胞質に占める割合か大きく,核は異染
4期では第Ⅳ型の細胞はほとんど認められない.従っ
色質に富み,細胞質内にはライソソーム様穎粒,ラング
て,著者は照射前に存在する第IV型の樹枝状細胞が不活
ルハンス穎粒は認められ得ず,細胞内小器官の発達も極
性MC
(dormant MC)と考え,その照射後における活
めて悪く,リンパ球由来の細胞と考えられる(図7).
性化の過徨を検索した.
第IV型は樹技状細胞である.しかし,ライソソーム様穎
照射後第1,2期において,第Ⅳ型細胞の変化は細胞
粒,ラングルハンス穎粒は存在しない.核は真正染色質
内小器官とくにリボソームが増加し一部ポリゾームを形
が多く,細胞質内には100Å7イラメントが比較的多
成する.さらにゴルジ装置の発達が著明となり,小空胞
く,リボソーム,粗面小胞体,小空胞も少数認められ
の数も増加する.特異な事は細胞質内に比較的電子密度
る.第1,n型に比し樹技状突起の発達は多様で個々の
の高いライソソームに類似した球状顎粒が出現してくる
細胞により異なる(図8
事である.しかし,未だ明らかなMSは確認できない.
, 9 ―a, b).第1型から第Ⅳ
型への細胞はいずれもDOPA反応は陰性である.
100Åツィラjントは核周囲に集積している(図16−a,
なお,第I,
b, 17).しかし,これ等細胞のごく少数に電顕的DOPA
I , Ⅲ型の細胞は主として基底層より上部
に,第IV型の細胞は表皮基底層に位置している.
反応にて明らかに陽性所見が認められたものが存在す
2.
る.これ等DOPA陽性細胞ではMSはほとんど認めら
UV照射後
1)肉眼的所見;背部及び足根部皮膚はUV照射6
れないにもかかわらず,ゴルジ装置の一部及びcoated
∼7日目頃より淡褐色の色素沈着を生ずる.その後14日
vesicleにDOPA陽性物質が沈着している(図18―a,
目迄では色素沈着は徐々に増強する(図11―a,
b).第3期では明らかに分化したDOPA陽性MCが
b).
2)光頭所見;表皮は照射前に比し,照射14日後でも
多数認められる.核は真正染色質に富み,細胞内小器官
軽度肥厚するに過ぎない.黒褐色のタラニソ穎粒は照射
とくに小胞体,ゴルジ装置が著明となり,未成熟及び成
6日日以後表皮内に認められ得るようになる.
熟MSが認められる.かつ,DOPA陽性の小空胞か多
Masson-
Zimmermann染色では表皮基底層に一致して好嗜銀願
数存在するが,未成熟MSの一部はDOPA陰性であ
粒含有細胞が認められる.剥離DOPA標本にてこれ等
る(図19
細胞の大部分はMCである事が分かる.
し,MSの数も増加する.これ等MSは大部分成熟MS
図10はUV照射後に出現してくるDOPA陽性MC
a, b).第4期では細胞内小器官は一層発達
である.さらに100Åフィラメントは細胞質内及び樹
の経時的,数的変化を図示したものである.便宜上これ
枝状突起内に拡散している.DOPA反応では小空胞,
等DOPA陽性MCの出現の数的増加の経過を4つの
coated vesicle.ゴルジ装置の一部が強陽性を示す(図
時期に分けた,第1期は照射開始後2回目迄の時期で,
20―a, b, 21).
この間にはDOPA陽性MCは認められない.第2期
MSの周囲角化細胞への受げ渡しは照射第2期(照射
は照射3日日から5日目迄で,初めてDOPA陽性MC
3日から5回目)より認められる.受け渡されたMS
が出現する時期である.この時期のMCは胞体が小
は単一ないし複合体で存在する.その数は照射回数が増
さく,2∼3個の樹枝状突起を有し,DOPA反応の程
すごとに増加する.角化細胞へ受け渡されたMSの大
度は弱い.第3期は照射6日目から7日日の期間で,
きさを測定した.コント・=・−ルとして,尾部皮膚MS
DOPA陽性MCはこの時期に急速に増加する.第4期
を用いた.これ等尾部表皮内には,背部,足根部と異な
は照射8日目から14日目迄で,MCの数的増加がわずか
りUV照射の有無にかかわらず,活性MCが存在す
に認められるに過ぎない.しかし,個々のMCの胞体
る.照射前に存在する尾部MSと照射後に出現する背
は大きくなり,樹枝状突起も著明に発達し,DOPA,反
部,足根部MSの大きさを比較すると,有意な差が
応の程度も強い.類似の所見は垂直DOPA標本にても
認められなかった.又,背部,足根部のMSは,照射
得られた.この際注目すべき事は背部,足根部共真皮内
回数を増してもその大きさに変化が認められなかった
にDOPA陽性MCが認められない事である.しかし,
(Table
背部毛包部ではDOPA陽性MCは存在する(図12−
一方,第3期即ち照射7日日に電顕下でMCの分裂
a, b, 13―a, b, 14―a, b,,15―a, b).
l),
像を確認した.図22に示すニポン包埋1μ薄切片では表
UV-Melanogenesis
Table 1. Comparison of Melanosomal
Before and After UV-Exposure
location
Epidermis of Tail skin
before
exposure
Size
697
今回の実験では
(a) C 57BL/6マウス背部及び足根部では照射前に
long axis
(nm)
short axis
(nm)
429土99
219土32*
453士86
228士45
486土96
301士57
489土118
276士51
は活性MCは光顕,電顕下で認められなかった.
(b)UV照射後初めて活性MCが出現した.
(c)活性MCは抜毛などの機械的刺激により出現し
at day 3
Epidermis of
Back skin
at day 7
after eχposure
at day 14
なかった.
(d)出現する活性MCはU.V照射により直接現わ
れ,そ0数的増加は照射6∼7日目に急速に増加した.
(e)電顕下にて照射前表皮基底層に不活性,チロジ
* Standard
deviation
ナーゼ陰性MCと考えられる細胞が存在し,これ等は
UV照射後に種々の活性化段階を示した.
皮基底層に角化細胞と異なり,淡明な細胞質を示す細胞
(f)DOPA陽性MCの細胞分裂像は照射5日目,
が2個存在する.これ等細胞質内に多数のMSと思われ
10日目でその分裂率において大差がなく,
る穎粒が存在しており,光顕上MCと思われる.これ等
あった.以下これ等実験結果につき考察を試みる.
1.7∼2.2%で
のうち1個はクロマチンが分裂期の像を呈している(矢
1, UV照射後出現するMCの起原及び数的増加の
印).同一部位の連続超薄切片を作製し,電顕下で観察
機序について コ
すると核クロマチンはクロモソームに分離し,細胞質内
UV照射後出現するDOPA陽性MCの数的増加に関
では限界膜により被われずに存在する.細胞質内には種
しては前述した4つの仮説が考えられている.しかし,
々の発達段階を示すMSが存在し,個々のMSは単一
著者の実験モデルでは(a)照射前に表皮及び真皮内に
で存在する.さらに,ミトコンドリア,小胞体が比較的
DO.PA陽性MCは存在せず,(b)足根部には毛包,
よく観察されるが,ゴルジ装置は明らかでない.特異な
汗腺を欠き,七かも(OUV照射により直接DOPAI易
事は細胞質内にDOPA陽性の小空胞が存在する事であ
性MCが出現する事より,既存の不活性,
り,この事は分裂期MCはチロジナーゼ活性とMS産
DOPA陰性
MCの活性化及びMCの直接の分裂・増殖が問題とな
生能を有する分化したMCである事を示唆する.この
る,
分裂期MC と隣接角化細胞間に一部デスモソーム様構
1)既存の不活性,
造が認められる(図23―a,
性:増谷2s)はhairlessマウスの表皮基底層に存在する
b). 犬
4)オートラジオグラフィー所見:3H−チミジン・オ
DOPA陰性MCの形態¥的特
indeterminate dendritic cell(IDC)を電顕下にて観察
ートラジオグラフィー標本では表皮基底層にDOPA陽
した. IDCの特徴は核膜の切れ込みが比較的少なく,細
性MCが存在し,その一部は核に一致してMSと異な
胞質内要素も少数のミトコンドリア,滑面小胞体,リボ
る黒化度を示す銀粒子が確認できる.これ等粒子を6個
ソーム,小空胞を認めるのみで,樹枝状構造の発達が悪
以上有する細胞をS期・分裂MCと同定し,その数を
い細胞であるとし,本細胞がamelanotic
かぞえた.なおS期以外のMCおよび角化細胞には
れると報告した.
ほとんど銀粒子の取り込みは認められなかった.照射
のUV被照射皮膚に認められるIDCは通常核の切れ
3日目ではDOPA陽性MCはほとんど認めがたく,
込みを認めるが,細胞質内にはラングルハンス穎粒。
DOPA反応も弱い為算定不能であった.結果は照射5
MS,低電子小体を欠き,ミクロフィラメソト,時に小
日目で標識されたDOPA陽性MCはMC総数のう
空胞が存在するのみであるとした.著者はC
ち2j5±1.45%,10日日で1.65±1.20%を占めた(図
マウス・UV照射前の表皮内・非角化細胞を4型に分け
24―a, b).
た.第1型はラングルハンス細胞,第Ⅱ型はラソゲルハ
Erickso
MCと考えら
「4)によると rhesus monkey
57 1!L/6
工V.考 按
ソス細胞ないし組織球系細胞,第皿型はリy祁球様細胞
皮膚にUV・連続照射を行なうと色素沈着が生ずる.
と考えられた.第IV型は恐らく不活性,
この色素沈着の機序に関しては表皮内MCの数的,機
考九られる細胞である.これ等第Ⅳ型細胞の特徴は(a)
能的変化,及びMCと角化細胞とのsymbiosisが問題
表皮基底層に存在し,(b)樹枝状を呈し,(c)核は第
,となる, ..
dormant MC
皿型に比し真正染色質に富み,(d)細胞内小器官の発
と
上杉 孝
698
達は悪いが,リボソーム,小胞体,小空胞が少数存在
性化チロジナーゼの活性化によるものではなく,これ等
し,かつ100Åフィラメントを有し,
細胞の活性化過程で新たに産生されたものと推測され
Ce)照射第4期
(8日から14日目)においてこれ等細胞がほとんど認めら
る.しかし,これ等の具体的解明に関して,著者は電顕
れない事であった.しかも,これ等第IV型細胞には細胞
的・酵素抗体法にて検索中である.
内小器官,樹枝状突起の発達程度に種々の差があった.
3)MC分裂増殖の動態及び超微構造的特性:UV照
従い,UV照射後第Ⅳ型細胞が同時に一斉に活性化する
射によるMCの直接の分裂及びその超微構造的特性は
のではなく,個々の細胞の活性化に多少時期的ずれがあ
現在不明の点が多い.正常皮膚MCでは極めて稀に細
る事が考えられた.
胞分裂が起こり,その分裂率は0.7%以下と推定されて
2) UV照射による活性化の動態:UV照射による不
いる=≫. uv照射皮膚におけるMCの分裂に関しては
活性MCの活性化過程の超微構造的変化に関する詳細
幾つかの報告がある.
な報告は極めて少ない.MC活性化機転は細胞質内MS
膚にUV照射を試み,その際出現するMCの分裂率は
が出現する前・後で大きく2つに分け得た.MS出現
照射3日目で0.2∼0.4%,5日月で0.6∼0.7%, 7∼14
前,即ち第1,2期における変化は(a)リボソームが
日目では1.0∼1.3%であり,この分裂率のみでは増加す
増し,一部ポリソームを形成する事,(b)ゴルジ装置
るMCの機序は説明できないとした.一方,
が発達し,(c)まれにこれ等細胞の一部にチロジナー
等34)はC
ゼ活性(DOPA反応)を有する小胞体が出現し始め,
照射2日目より毎日3H−チミジンを投与し,
Sato等32) 33!ぱhairlessマウス皮
Rhosdahl
57 BL/6マウス耳介部にUV照射を行ない,
DOPA陽性
(d)しかし,未だ明らかなMS形成が認められない.
MCの分裂率を検索した.その結果は約70∼85%のMC
一方,MS出現後(第3,4期に相当)では(a)細胞
が陽性を示した.従いUV照射後のMCの増加はMC
内小器官の発達が非常に著明となり,(b)DOPA陽性
の直接の分裂・増殖によるものと推定した.著者の結果
小空胞も増加し,(c)核クロマチンはほとんど真正染
ではMCは照射5日目でたかだかその総数のうち2.2
色質となり,かつ(d)MS産生が活発となり,
%,
(e)樹
10日日で1.1%チミジソ取り込みを示し,5日日と
枝突起の発達した細胞ではこれ等突起内にU00Åフィ
10日目とではその取り込みに有意の差がなかった.つま
ラメントを認められる様になる事である.これ等100Å
り,UV照射後のMqの数的増加はMC自身の分裂増
フィラjントの分布・拡散の変化はMSの細胞内移動
殖のみでは説明でき得なかった.又,分裂期MCは電
及び角化細胞への受け渡しと関連していると推測されて
顕下にてチロジナーゼ活性を証明し得,しかも種々の
いる25〉2!)
27)
MS産生過程を示した35)
本実験にてチロジナーゼ(DOPA・酸化酵素)陰性
従い,本実験モデルにおけるUV照射後に出現する
MCがUV照射後,チgジナーゼ活性を有すMCに
MCの起原及びその増加の殴序は.
分化する事が明らかとなったが,問題はこのチロジナー
(a)まず不活性MCの活性化が起こり.
ゼが新しく作られたものか,あるいは不活性状態のチロ
(b)そのピークは照射6∼7日目であり,又
ジナーゼがUV照射により活性化されたものであるか
(c)同時期以後,活性化したMCの少数は細胞分裂
である.後者に関してはSH基が重要視されている.
を起こす事によるものと考えられた.
従来SH基はチロシンの酸化→メラニソ生成という過
2, 活性化MCIと周囲角化細胞とのsymbiosis
程を阻害すると考えられていたか28)最近SH基がチ
色素沈着を決定する要素のりち,MC自身の活性化の
ロジナーゼ活性に直接働くのではなく,DOPA→メラニ
程度のみならず,周囲角化細胞とのsymbiosisが重要で
ンの中間生成物と結合してメラニソ生成を阻害するとい
ある.殊に,角化細胞へ受け渡されたMSの絶対数及
われている29)30)_ 一方,超微構造的には電顕組織化学法
びその分布様式である36)
37)・Jimbow等38)はヒト皮膚に
(DOPA反応)で活性化初期のMCはゴルジ装置の一
UV照射を行なった際の色素沈着をtanning
部にDOPA反応陽性を示した.不活性MCではゴル
表現しimmediate
ジ装置は認め難い.この事はUV照射によるチロジナ
た.彼等によるとimmediate
tanning, delayed
reaction と
tanning
tanning
とに分け
における主たる
ーゼ産生は細胞内小器官とくにゴルジ装置の発達と直接
変化は(a)MSの酸化九進によるメラニソ化の増加,
関係が深い事を示唆すると考えられる.従い,UV照射
(b) MC内のMSの樹枝状突起への移動及びそれに
後DOPA反応陽性を示すMCのチロジナーゼは不活
伴なうMSの角化細胞への移動,更には(c)角化細
UV-Melanogenesis
699
胞内MSの分布様式の変化によるものである.一方,
説と相反する結果が出はじめている.例えば,
delayed
又はmethoxy
tanning
では(a)
MCの数の増加,(b)MSの
産生の増加,(c)角化細胞へのMS受け渡しの増加で
trimethyl
psoralen 内服後UV照射を行なうと,肉
眼的に著明な色素沈着を起こす.この際,MC内のメラ
ある.本実験のUV連続照射における活性化MCと角
ニソ産生能の充進が認められるが,MSの大きさ及び角
化細胞との関係はMCの数的増加を伴なう故,
delayed
化細胞内の分布様式には本質的に差がなかった15)4°).
tanningのそれと類似していた.具体的には(a)照射
又,今回の実験でもMSの大きさとその角化細胞内分
3日日より少数のMSの受け渡しが観察され始め,(b)
布様式には一定の傾向が認められ得なかった.従い,角
照射回数が増すにつれ‘,MS受け渡しが増加し,(c)受
化細胞内MSの分布様式は,MSの大きさのみならず,
け渡されたMSの角化細胞内分布様式は単一体と複合
角化細胞への生物学的活性,殊に,貪食能の程度にも依
体の両方が認められ,(d)角化細胞内の単一MSの大
存する事が分かる.
きさは照射回数に変化なく一定しているという事に表現
され得た.
本研究の.一部は文部省科学研究費袖助(がん特別研究
角化細胞へ受け渡されたMSの分布様式はヒト皮膚
N0. 101576,
一般研究(B)
No.
148206,
研究(C)No. 257281,
人・蒙古人ではMSの大きさは0,8×0.3μm以下であ
生省がん研究助成金(悪性黒色腫の集学的multidiscip-
り,複合体になっている.黒人ではその大きさは0.8
皮膚科学会学術大会(昭和52.
うと,MSの大きさは0.8×0.3μm以上になり単一分布
深謝致します.
文
献
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1973.
3)
4)において発表した.
本研究に際し,御協力頂いた当皮膚科教室の諸先生に
をとるようになると報告された39)しかし,最近これ等
Lerner, A.B.: Neural control
177295),厚
成金によるものである.なお本論文の要旨は第76回日本
psoralenを塗布し,その後単一UV照射を行な
cells,BiolofびびNormal
No.
linary治療の研究),および日本リディアオリリー研究助
×0.3μm以上あり,単一形態である.白人皮膚にtrimethyl
奨励研究(A)
348224,一般
ではMSの大きさに一部依存していると思われる.白
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effect of
ultraviolet ・irradiation on
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histo-
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Fly UP