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第9回 「ポスト処理」 レンダリング

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第9回 「ポスト処理」 レンダリング
2009 年度 春学期 火曜日 4 時限目 λ11 教室
デザイン戦略(コンピュータアニメーション)
担当:中村 太戯留
第9回 「ポスト処理」
■ レンダリング
レンダリングとは、作成したシーンをコンピュータの計算によって画像として出力する処理のことで
ある。このレンダリングの設定が最終的な作品のクオリティを大きく左右するため、シーンにあった
適切な設定をする必要がある。図 9-1 は同じシーンを Maya の異なるレンダリング方法でレンダリン
グした結果である。Maya Software は標準のレンダラで、パラメータも少なくコントロールしやす
いという特徴がある。通常は、この Maya Software で十分である。Mental Ray は、光を物理的に
シミュレートして処理を行うレンダラである。ファイナルギャザリング、グローバルイルミネーショ
ン、コースティクスといった Maya の標準のレンダラにはない処理が可能で、高いクオリティの画像
を作成できるが、扱うパラメータが多いため扱いが難しく、レンダリングに長時間要するという難点
がある。Maya Hardware は、画質は劣るがレンダリングは高速であり、アニメーションの確認の際
に使用される場合が多い。Maya Vector は、アニメのセル画調や線画にしたい場合に使用される。
Maya Software
Mental Ray
Maya Hardware
図 9-1:Maya のレンダリングの種類
Maya Vector
○ Maya Software でよく使用する設定
[Window] – [Rendering Editors] – [Render Global Settings]を開き、[Maya Software]のタブ
を選択するとオプションの設定ができる。その中で、制作段階では、Quality = Preview Quality にし
ておくのが良いが、出力時には、Quality = Production Quality にすると高精度でレンダリングをす
るための設定に変更してくれる。影を描くには、[Raytracing Quality]の項の Raytracing にチェッ
クを入れる。動画で動きのある映像の場合は、ぼかしを入れることで滑らかな動きに見せるために、
[Motion Blur]の項の Motion Blur にチェックを入れ、Motion Blur Type = 2D を選択する。
○ Mental Ray、Maya Vector を使用するための準備
Mental Ray、Maya Vector はオプションのレンダラであるため、使用するためにはプラグインをロ
ードする 必要 がある 。[Window] – [Settings/Preferences] – [Plug-in Managere]を 開き 、
Mayatomr.mll、VectorRender.mll の欄の[loaded]および[auto load]にチェックを入れる。
Mental Ray
Maya Vector
図 9-2:Maya のオプショナルなレンダラの起動
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2009 年度 春学期 火曜日 4 時限目 λ11 教室
デザイン戦略(コンピュータアニメーション)
担当:中村 太戯留
○ Mental Ray のオプション
[Window] – [Rendering Editors] – [Render Global Settings]を開き、[Render Using] = mental
ray に切り替え、[mental ray]のタブを選択するとオプションの設定ができる。Quality Presets で目
的に合わせた設定値を選び、その後必要な微調整を行う。
ファイナルギャザリング オブジェクトに当たって跳ね返る光も考慮するレンダリング方法で、オブ
ジェクト自体を光源とみなし光を発するので、ライトがなくてもレンダリングが可能である。全体
として明るめのレンダリング結果になる。[Final Gather]の項の Final Gather をオンにする。図
9-3 は、
[Render Global Settings]の[Common]タブ内の Enable Default Light = オフ、
persp
カメラの Attribute Editor で[Environment]の項の Background Color = 白に設定した上で、
Final Gather をオフの場合とオンの場合でそれぞれレンダリングした結果である。
図 9-3:Final Gather オフ(左)、オン(右)(デフォルトライトはオフ)
グローバルイルミネーション オブジェクトに直接当たる光のみではなく、地面や他のオブジェクト
に 当 た っ た 光 が 反 射 し て 与 え る 色 の 影 響 を 描 く た め に 用 い る 。 [Caustics and Global
Illumination]の項の Global Illumination をオンにする。図 9-4 は、persp カメラの Attribute
Editor で[mental ray]の[Caustic and Global Illumination]の項の Emit Photons = オン、
[Environment]の項の Background Color = 黒に設定した上で、Global Illumination をオフの
場合とオンの場合でそれぞれレンダリングした結果である。
図 9-4:Global Illumination オフ(左)、オン(右)(スポットライトを斜め 45 度から照射)
コースティクス ライトからの光源が反射や屈折などによって発生する集光現象のことで、グラスや
金属の表面、半透明なオブジェクトを光が通過する際に発生する現象を描くために用いる。
[Caustics and Global Illumination]の項の Caustics をオンにする。図 9-5 は、persp カメラ
は前項と同様に設定した上で、Caustics をオフの場合とオンの場合(精度:Caustic Accuracy =
32 or 512)でそれぞれレンダリングした結果である。
図 9-5:Caustics オフ(左)、オン精度 32(中) or 512(右)(スポットライトを斜め 45 度から照射)
演習1:自分のグラスにライティングをしてこれらの効果を加えてみなさい。
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2009 年度 春学期 火曜日 4 時限目 λ11 教室
デザイン戦略(コンピュータアニメーション)
担当:中村 太戯留
■ 合成
実写映像や 3DCG にエフェクトなどを合成する場合、Maya でレンダリングする際にαチャンネルを
オンにして TIFF 連番として出力し、After Effects などの映像編集ソフトで合成を行う。例えば、以
前に作成した雪のエフェクトを銃で撃たれた映像に合成する手順は次のようになる。
手順:
1. 雪のエフェクトのシーンファイルを読み込む(作成方法は図 7-5 とその直前の説明参照)
2. [Window] – [Render Editors] – [Render Global Settings]で、File Name Prefix = snow、
Frame/Animation Ext = name.#.ext、Image Format = Tiff (tiff)、Start Frame = 300、End
Frame = 450、By Frame = 1、Frame Padding = 3、Alpha Channel (Mask) = オンに設定
する。なお、レンダーラは[Maya Hardware]を選択しておく。
3. [Render] – [Batch Render]で TIFF 連番を作成する
4. After Effects を起動する
5. [コンポジション] – [新規コンポジション]を選択し、幅 = 640、高さ = 480、フレームレート =
30、デュレーション = 0:00:05:00(5秒)に設定して[OK]を押す
6. [ファイル] – [読み込み] – [ファイル]で「shot.avi」を読み込む。
7. 次に「snow.300.tif」~「snow.450.tif」の150個の連番ファイルを指定し、「TIFF シーケ
ンス」のチェックをオンに設定して、[開く]を押して読み込む。アルファチャンネルについて確
認画面が出るので、「ストレート – マットなし」を選択して[OK]を押す。
8. プロジェクト画面から、shot.avi と snow.{300...450}.tif をタイムラインにドラッグする。但し、
より上に重ねるもの(この場合は雪)の映像が上に来るようにおくこと。図 9-6 参照。
9. 映像の AVI 出力の方法は図 2-14 を参照のこと。合成後の画像をさらに加工する場合には、AVI
ではなく TIFF 連番として出力しておき、最終的な出力の際に AVI にするのが良い。
図 9-6:After Effects のタイムラインへの shot.avi と snow.{300-450}.tif の配置の例
図 9-7:After Effects での shot.avi と snow.{300-450}.tif の合成結果の例
演習2:これまでに自分が作成した CG アニメーション、或いは撮影した映像(shot.avi でも良い)
に雪などのエフェクトを合成してみなさい。
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■ 編集と出力
制作した複数のカットを並べて一つの映像に仕上げる作業を編集と呼び、After Effects や Premiere
などの映像編集ソフトを用いて行う。編集の理論について詳しくは参考書を参照のこと。
○ ショットとカット
実写撮影の場合、カメラで撮影を開始してからその撮影を終了するまでの映像をショットと呼ぶ。こ
のショットから必要な部分のみを切り出した映像をカットと呼ぶ。アニメや CG を用いた映像制作の
場合には必ずしもこのショットという概念を用いないこともあるが、実写と CG との合成を考える際
には、このショットとカットを明確に分けて理解しておくことが必要となる。例えば、図 9-8 の場合、
2つのショットが撮影され、そこから3つのカットが切り出されて、それらをつなげて映像作品にし
ている様子を模式的に描いた例である。編集の際には、最終的に出来上がる映像を見ながら、どの範
囲をカットとして切り出してどのようにつなげるかを試行錯誤していくことになる。
ストーリ上の時間の流れ
ショット1
カット1
カット3
ショット2
カット2
編集された映像の時間の流れ
カット1
カット2
カット3
図 9-8:ショットとカットの関係の例
3DCG を用いた映像制作の主な流れを記すと図 9-9 のようになる。最初にシーンを構成するオブジ
ェクトやキャラクタを制作して別々のファイルに保存しておく。そして、これらを統合したシーンフ
ァイルを作り動きやライティングなどを仕上げる。その後、シーンファイルを複数コピーして、ショ
ット(カット)ごとに別のファイルとしてカメラワークを制作する。これは、次の編集工程の都合で、
カットを修正したり、追加削除したりする際に不用意な影響を他に与えることを避けるためである。
ショット1の作成
オブジェクトの制作
シーンの構成
ショット2の作成
キャラクタの制作
ショットNの制作
エフェクト等の作成
図 9-9:CG による映像制作の主な流れの例
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カットの編集
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担当:中村 太戯留
○ イマジナリライン
シーンの中で、いくつかのショットに分けて撮影あるいは CG 制作をして、編集の段階でそれらをカ
ットしてつなげる場合、カメラ配置において越えてはならない基準線のことをイマジナリライン、ま
たはアクションラインと呼ぶ。図 9-10 の場合、上から見て二人のキャラクタを結ぶ線がイマジナリ
ラインとなり、カメラを配置する場合には、片側のみに配置しなければならない。ここでは、3つの
ショットを設定しているが、いずれも画面の下側のみに設定してあるため、カットをつなげた場合に
でも映像の視聴者は混乱することなくシーンの状況を理解することが可能となる。なお、カメラを片
側の 180 度内に配置することから、この規則を 180 度ルールと呼ぶこともある。
イマジナリライン
ショット2
ショット3
ショット1
カット1
カット2
カット3
図 9-10:イマジナリラインを越えていないカットをつないだ映像の例
また、会話シーンなどで、横顔ショットのみでは位置関係を把握しづらいため、手前にいる登場キャ
ラクタの肩や頭の一部をショットに入れ、キャラクタ同士の位置関係をつかみやすくするために図
9-11 の左のような「肩ナメショット」を活用する場合がある。また、イマジナリラインの限界点、
すなわち図 9-11 の右のような主観視点(POV: Point of View)にカメラを配置することで、登場キャ
ラクタの主観で相手を捉えたような表現をすることができる。なお、体全体を映すフルショットは配
置関係、腰から上を映すミディアムショットはアクション、胸から上を映すクローズショットは会話、
そして顔のアップを映すエクストリームクローズアップショットは心理の描写に使われることが多い。
肩ナメショット
横顔ショット
主観視点(Point Of View)
図 9-11:二人の位置関係を明確にするためのショットの例
演習3:自分のキャラクタを2つ配置して3つのカットで会話シーンを構成してみなさい。
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デザイン戦略(コンピュータアニメーション)
担当:中村 太戯留
○ ストーリボード(絵コンテ)
カットの編集を行って最終的にどのような映像になるのかをデザインする際にストーリボード(絵コ
ンテ)がよく用いられる。図 9-12 はストーリボードの例であるが、
「シーン」の欄にはシーン番号、
「カット」の欄にはカット番号、「映像」の欄ではそのカットの映像を絵で、「内容説明」の欄ではそ
のカットの内容や、動きの説明、注意事項など、
「セリフ」の欄にはそのカットでのセリフ、そして「長
さ」の欄ではそのカットが何秒なのかをそれぞれ記すようになっている。ここで、「映像」の欄には、
絵自体はラフなものでよいが、カメラにキャラクタやオブジェクトがどのように写るのかを正確に記
す必要がある。また、キャラクタの動きやカメラの動きも矢印や「内容説明」での補足説明も加えて
詳しく記しておく必要がある。また、映像の縦横比も正確に記す必要があるため、最終的な作品が 4:3
なのか、16:9 なのか、その他なのか調べ、枠線自体もその比率になるように調整しておく必要がある。
図 9-12:ストーリボードの例(映像は 16:9 を想定)
○ シナリオ(台本)
プロの映像制作においては、ストーリボードを描く前に、シナリオを文字で記す場合が多い。通常は
専門のシナリオライターがシナリオを描き、ディレクタがストーリボードを描き、ディレクタの指示
に従って専門のスタッフが撮影や CG 制作を行うという流れとなる。図 9-13 はシナリオの例である
が、タイトル、登場キャラクタのリスト、シーンの内容から構成されている。登場キャラクタは正式
名称の他に略称を決めておき、セリフの見出しやト書き内の説明ではこの略称を用いる。シーンは番
号、名称、場所と時間を「柱」と呼ばれる一行に記し、目立つように枠で囲っておく。シーンの内容
は「ト書き」と呼ばれる状況説明と、
「セリフ」から構成され、シーン内でのストーリの進行順に記す。
図 9-13:シナリオの書式の例(日本の場合、実際には縦書きで記す場合が多い)
■ チャレンジ
演習4:最終課題のシナリオを作成し、それを元にストーリボードを作成してみなさい。なお、映像
の部分には、手書きしたものを貼り付けることのほか、ラフなモデルを配置して位置関係がわかる
シーンを CG で構成して貼り付けても良い。
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