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「脳科学研究戦略推進プログラム」課題Gの概要

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「脳科学研究戦略推進プログラム」課題Gの概要
資 料 3-2
脳科学研究戦略推進プログラム
課題Gの概要について
プログラムスーパーバイザー 三品昌美
「脳科学研究戦略推進プログラム」(課題G)の概要及び予算
概 要
課題Gは、平成23年度から開始しており、 我が国の脳科学研究を支え、研究者が必要とする情報を提供するため、網羅的・系
統的計測により収集したデータから脳機能の解明に必要な最適な手法を用いて抽出し、多種類・多階層情報を集約化・体系化し
た情報基盤の構築を目指した研究を実施する。
・様々な動物種の様々な脳機能のうち、動物種を超えても共有されている機能(視覚、嗅覚、動機づけ等)に着目し、その脳機能をシステム・
神経回路・細胞・シナプス・分子に至るまでの階層を繋いだ全体システムとして捉えることにより、その脳機能の解明を目指すため、必要
な動物種の必要な階層データを統合する。
・解明すべき特定の脳機能に着目し、脳全体の活動をシナプスレベルから行動、記憶、経験、発達あるいは疾患に至る全体像として捉えるた
め、脳機能の解明を目指す研究者のニーズも把握した上で、収集すべきデータ及び収集に必要な最適な手法を検討する。
・多くの研究者が利用可能な標準化されたデータを集約化するため、既存データでは不足している部分については、最新の計測技術を用い
て網羅的シナプスの計測、網羅的神経回路の計測、網羅的神経活動計測等を実施し、必要なデータを最適な手法を用いて抽出する。
・集約化したデータを用いて特定の脳機能を解明するため、シミュレーションにより解析できる手法の開発を目指した研究を実施する。
予
算
(単位:百万円)
平成23年度
平成24年度
脳科学研究戦略推進プログラ
ム (全体予算)
3,522
3,450
3,434
2,508
2,652
課題G(神経情報基盤)
脳科学研究を支える集的・
体系的な情報基盤の構築
357
327
356
352
348
※
(単位:億円)
平成25年度 平成26年度
平成27年度
課題Gの予算は、「脳科学研究戦略推進プログラム」全体予算の内数
2
「脳科学研究戦略推進プログラム」(課題G)の体制
拠点長
PS・PO
立命館大学
三品 昌美
(PS)
東京医科歯科大学
名古屋大学
貝淵 弘三
田邊 勉
(PO)
研究グループ
「神経回路機能解析※」グループ
「モデル生物」グループ
グループリーダー名
理化学
研究所
岡本 仁
※:26年度より変更(旧)モデル生物グループ
参画機関名
理化学研究所
京都大学
名古屋大学
名古屋大学
東京大学
東京大学
東京大学
参画研究者名
岡本 仁
松尾 直毅
永井 拓
森 郁恵
河西 春郎
伊藤 啓
榎本 和生
「プロテオミクス」グループ
グループリーダー名
名古屋大学
貝淵 弘三
参画機関名
参画研究者名
―
―
「コンピュテーション」グループ
グループリーダー名
京都大学
石井 信
参画機関名
京都大学
沖縄科学技術大学院大学
理化学研究所
参画研究者名
石井 信
吉本 潤一郎
臼井 支朗
3
課題G:情動の制御機構を解明するための神経情報基盤の構築
プロテオミクスグループ (貝淵)
喜びや恐怖(情動)に伴い脳内で働く細胞内シグナル
(リン酸化シグナル)を網羅的に解析する
リン酸化
データ
データ駆動型
研究
意欲亢進
爽快感亢進
不安軽減
忍耐力向上
リン酸化シグナルのデータ
ベース (神経情報基盤)
3グループの連携
情報共有
データの検証
・実験データ
情動の発現と記憶機構の解明
データ駆動型
研究
神経回路機能解析グループ(岡本、森、榎本、
伊藤、永井、河西、松尾、Johansen)
様々なモデル生物の利点を生かし、
• モノアミンの細胞内シグナルを検証し、その作
用機構を解析する
• モノアミンが関与する神経回路を特定し、その
役割と働き方を解析する
データベース
実装・運用
検証用
データ
精神神経疾患の
病態解明、診断、
予防、治療法の
開発 (課題E,F)
コンピュテーショングループ
(石井、吉本、臼井)
•
•
•
データの効率的かつ正確な抽出
データベースを作成し運用する
情動の発現と記憶機構を再現するシミュ
レーションモデルを構築する
4
代表的な成果
D1RとD2R刺激でそれぞれ特異的にリン酸化される新規
基質を多数同定した。D1RがPKAを介してRap1 -> MAPK
-> K+ channelを制御し、中型有棘細胞の興奮性を高める
ことにより、快情動行動を促進することを明らかにした。
プロテオミクスグループ
データベース (神経情報基盤)
・情動の発現と記憶機構の解明
神経回路機能解析グループ
ドーパミンがD1R/cAMP/PKAを介してス
パイクとの時間枠を構成し、報酬シグ
ナルとしてシナプスの可塑性を起こす
メカニズムを初めて明らかにした。
線虫でリン酸化プロテオミクスを世界に
先駆けて行い、CaMK1の下流でRaf-キ
ナーゼが温度記憶に関わることを明ら
かにした 。
コンピュテーショングループ
日本発のリン酸化データベース
(KANPHOS)を完成し、試験公開を開始
した。このデータベースはクオリティコ
ントロールされた未発表データを多数
含んでおり、脳科学および診断・創薬
分野へ大きく貢献する可能性が高い。
5
3グループの連携によって得られた重要な成果
1)情動行動や情動記憶に関与するリン酸化基質を網羅的に同定し,リン酸化プロテオミクスのデー
タベース(KANPHOS※)を作成して脳プロ内で公開した。課題G終了後試験公開を開始した(Amano
et al. J Cell Biol 2016; Nagai et al. Trends Pharmacol Sci submitted (invited review))。
(※:Kinase Associated Neural Phospho Signaling)
2)KANPHOSの情報を利用し、D1RアゴニストがPKAを介してRap1 -> MAPK -> K+ channelを制
御し、中型有棘細胞の興奮性を調節するメカニズムを明らかにした。さらに、この細胞内シグナルが
中型有棘細胞の興奮性を高めることにより、快情動行動を促進することも示した (Nagai et al.
Neuron 2016)。
3)中型有棘神経細胞の発火から1-2秒以内に作用するドーパミンが、D1R/cAMP/PKAを介して報
酬シグナルとしてスパインを増大させ、LTPを成立させるメカニズムを明らかにした。さらに、ドーパミ
ンのタイミング依存的構造可塑性に関するモデルを開発した (Yagishita et al. Science 2014)。
4)世界に先駆けて線虫のリン酸化プロテオミクスを行い、CaMKIとPKCの特異的な基質を多数得、
CaMKIの下流でRaf-kinaseが温度記憶を制御することを見出した (Kobayashi et al. Cell Reports
2016)。また、ショウジョウバエにおいて、ドーパミン神経が嗅覚物質に対する嗜好性を変化させるこ
とを見出し、その変化にD1R/PKAの下流でDCLKなどのリン酸化酵素が働くことを示した(Koizumi
et al. J Neurosci 2016)。マウスにおいてもCaMKIとPKAはそれぞれRaf-kinaseとDCLKをリン酸化
することが明らかになり、これらの経路が種を越えて保存されている可能性がある。
6
リン酸化シグナルデータの取得とデータベースの構築
KANPHOS
(Kinase-Associated Neural PhosphoSignaling)
登録データの概要
(2015年10月末時点)
Kinaseの種類
目的
プロテオミクスGが同定した各種リン酸化酵素の基
質情報を世界に発信
関連するパスウェイ・機能・発現・疾患をワンストッ
プ検索
課題F等で同定された精神疾患の発症脆弱性遺伝
子を関連づけて実装
要求仕様
酵素名から基質一覧を検索
基質名から酵素一覧を検索
パスウェイ図から酵素を選択
→ その基質一覧を検索
関連機能・発現・疾患情報を提供している外部DBと
の紐付け
サイト数
※基質数
KISS
(rodent)
PKA, MAPK1, PKCe, CaMK1a,
CaMK1d, CaMK2a, CaMK4, Rhokinase, DCLK1, CDK5, PAK7, AKT, LYN,
FYN, GSK3B
3399
KISS
(nematode)
CaMK1, CaMK4, PKA, MAPK1, PKCe,
Rho-kinase
788
ProtoArray
(human)
PKA, MAPK1, CaMK2a , PKCa, CDK5,
AKT, LYN, Rho-kinase
※1725
PIKISS
PKA, MAPK, PKC, Rho-kinase
1725
D1R agonist D1R pathway phosphorylation
162
D2R agonist D2R pathway phosphorylation
86
Known
PKA, MAPK, CaMK1, CaMK2, CaMK4,
ROCK, PKCa, PKCe, Cdk5, GSK3b, Lyn,
AMPK, MARK1, LKB1, AurA, AurB
3933
7
リン酸化プロテオミクスとデータベースからドーパミン(D1R) シグ
ナルの全貌が推定できる(データ駆動型研究)
膜電位
GluR1
P
AMPA-Rの
トラフィック
S845
P
S831
KCNQ2/
CACNA1E
D1R
(A2AR)
P
Gs/olf
(吉本)
NR2B
P
SHANK3
(河西)
P
スパイン形態
Ca4CaM
AC
Rho-kinase
(松尾)
cAMP
(榎本)
P
CaMK2
P
ARHGEF2
P
T34
RasGRP2
DARPP32
Rap1
GTP
BRaf
MEK1/2
RhoA
PKA
DCLK1
(永井)
PP2B
P
多種類
の基質
PP1
Rap1
GDP
Rap1GAP
P
S54
8
MAPK
転写・長期記憶
P
S56
3
P
NPAS4
(松尾、Johansen)
Pol II
8
ドーパミンによるD1R-MSNの興奮性と可塑性の制御
コカイン投与によるRasgrp2のリン酸化亢進
D1R-MSN (mVenus)
Merge
Cocaine (30 mg/kg)
Saline
pS116/117 Rasgrp2
Rap1 によるD1R中型有棘細胞の興奮性の亢進
Rap1によるコカイン場所嗜好性の亢進
##
CPP score (S)
300
200
**
EGFP
EGFP
100
wtRap1
F28L Rap1
0
-100
Saline
Cocaine
(Nagai et al. Neuron 2016)
9
D1受容体発現 中型有棘細胞に対するドーパミン強化作用の解明
報酬作用時間枠
CS
Before
2
Cue induced lick (Hz)
ドーパミン作用時間枠
1
-1Reward delay (s)
-1
0
1
2
50 min
0
Yagishita et al., Science, 2014
ドーパミン作用時間枠の分子基盤
Hebbian plasticity
Glutamate
Action
potential
NMDAR
[Ca2+]i ↑↑
VDCC
[Ca2+]i ↑↑
Outcome (US)
Dopamine
D1R
CaMKII
PP-1
P
Cofilin
Action (CS)
Gs
Reinforcement plasticity
AC
cAMP
PDE
PKA
DARPP32
Protein synthesis
• 末梢樹状突起ではPDE活性が強いためドーパミンだけではPKAの活性化に至らない
• 細胞発火によるカルシウム上昇とドーパミンの同時性をACが検知し時間枠内でのみPKA活性を引き起こす
• PKAはDARPP32-PP1経路によりCaMKIIを脱抑制し可塑性を誘発する
10
向精神薬の作用を部位および時間特異的に評価
D1R発現神経細胞
アデノシン
ドーパミン
A1R
Gi
D1R
Gs/olf
D2Rアンタゴニスト投与によりD2RでPKAが
活性化されRasgrp2のリン酸化が亢進する
Eticlopride (mg/kg)
Saline
0.1
0.5
pS116/117 Rasgrp2
AC
pS554 Rasgrp2
cAMP
pS586 Rasgrp2
PKA
D2R発現神経細胞
ドーパミン
アデノシン
D2R
Gi
A2AR
Gs/olf
AC
cAMP
PKA
RasGRP2
pS116/117 Rasgrp2
GluR1
GluR1
Eticlopride (0.5 mg/kg, i.p.) Saline (i.p.)
RasGRP2
Rasgrp2
D2R-MSN
Merge
(Nagai et al. unpublished)
11
外部への研究成果等の発信状況
論文発表:57件
Science 3報、Neuron 4報、Nat Neurosci 1報、Cell Reports 2報、PNAS 1報、J
Neurosci 4報、Curr Biol 1報、Development 1報、J Cell Biol 1報、Schizophr Bull
2報、Scientific Reports 1報、など
外部への研究成果発信
プレスリリース : 7件
国内学会・会議:25件(招待講演)
国際学会・会議:20件(招待講演)
公開シンポジウムでの講演・ポスター展示 : 7件
一般向け講演会 : 7件
テレビ出演
: 1件
出張授業
: 0件(中学高校)
研究室公開
: 0件(高校生)
特許出願:0件(うち国外0件)
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