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平成27年度 成果報告書 - 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

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平成27年度 成果報告書 - 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
レーザー共同研究所
平成27年度 成果報告書
【平成 26 年 12 月~平成 27 年 11 月】
平成 27 年 11 月
国立研究開発法人
日本原子力研究開発機構
敦賀事業本部 敦賀連携推進センター
レーザー共同研究所
試験ブース
コンクリート試験片
排気ダクト
加工痕跡
レーザー光
カメラ
60mm
レーザーヘッド
(ファイバーレーザー)
表紙写真:レーザー光によるコンクリートの加工
表紙写真は、ファイバーレーザーを使用して、トンネルの天井を模擬したコンクリー
トの試験片の表面に下方向からレーザー光を当てている様子である。レーザー光の当て
方を変えることにより、コンクリートの表面付近から数センチメートルの広さ・深さを
自在に加工することができる。
※写真左:レーザー光が当たっているコンクリート表面の発光の様子
※写真右:照射試験に向けてレーザーヘッドの調整を行う Long 研究員
2
目次
1
成果報告書出版にあたって ................................................... 4
2
組織....................................................................... 5
3
活動状況................................................................... 6
3.1
研究開発の概要と研究紹介 ............................................... 6
3.1.1 レーザー技術の原子力保守保全・産業利用 .............................. 6
3.1.2 レーザー加工技術の高度化 ............................................ 7
3.1.3 レーザー溶接・切断技術の標準化 ...................................... 8
3.1.4 参考論文等の掲載 .................................................... 9
3.2
第5回レーザー共同研究所成果報告会の開催 .............................. 17
3.3
各種検討会・見学会の実施 .............................................. 20
3.3.1 レーザー共同研究所御視察・御見学 ................................... 20
3.4
レーザー技術の普及、人材育成への貢献 .................................. 23
3.4.1 夏期休暇実習生の受入 ............................................... 23
3.5
各種記事・表彰 ........................................................ 26
3.5.1 平成 26 年 11 月 21 日付福井新聞掲載記事 .............................. 26
3.5.2 プレス発表文【平成 26 年 11 月 21 日(金)】 ........................... 27
3.5.3 平成 26 年 11 月 22 日付日刊県民福井掲載記事 .......................... 31
3.5.4 平成 26 年 11 月 25 日付中日新聞掲載記 ................................ 32
3.5.5 平成 26 年 11 月 26 日付日刊工業新聞掲載記事 .......................... 33
3.5.6 平成 26 年 11 月 28 日付読売新聞掲載記事 .............................. 33
3.5.7 平成 26 年 12 月 17 日付福井新聞掲載記事 .............................. 34
3.5.8 平成 27 年 3 月 11 日付福井新聞掲載記事 ............................... 35
3.5.9 表彰 ............................................................... 36
4
研究発表等リスト.......................................................... 38
5
実験室整備状況............................................................ 44
巻末資料:日本原子力研究開発機構レーザー共同研究所の沿革
3
1 成果報告書出版にあたって
レーザー共同研究所は(公財)若狭湾エネルギー研究センターを始め
として福井県内外の企業、大学、研究機関との連携の下、レーザー技
術の原子力への貢献を目指して研究開発を進めている。本年はこれ
まで進めて来た原子力の保守保全技術および原子力に端を発する産
業技術開発で大きな進展があった。
原子力の保守技術として進めて来た振動や温度の測定に利用でき
る 500℃以上の高温下で使用可能な耐熱光ファイバーセンサーを昨年
所長:大道博行
度敦賀の白木地区に新設されたナトリウムループに取り付けた。本年
度、試験的に測定を開始したところである。今後、現場のスタッフと連携して長期にわたり試験を
継続する予定である。この技術は重工や核融合研究でも評価が高く、利用にあたっての意見交
換を行っている。このような成果が認められて本年度の原子力機構・理事長表彰・創意工夫功労
賞が授与された。この技術に並んでレーザーと光ファイバーを組み合わせ、狭い場所に生じた水
素を検知するための光を用いた水素検知技術の開発も進めている。細い管の中や部品の集中
した構造物の中にスムーズに入って行き、検知を行うことを目指している。一方、高出力レーザー
を用い、福島の事故で溶けた後、固まった核燃料と周辺の金属材料等の混じりあったもの(燃料
デブリ)の取り出しに資する基礎研究も行っている。レーザーを用いた処理の際、生じる粉塵の発
生をできるだけ少なくし、回収する技術の開発が重要な課題となっている。この一環として形がバ
ラバラな燃料デブリにレーザー光を当て、あたかも光で叩き割るような処理法を考案し、開発を進
めている。レーザーの照射の工夫により、どんな硬いものでも割ることができ、かつ破片の大きさ
の大まかな制御も可能である。福島第一原子力発電所への適用を目指した技術の多くは、極め
て過酷な環境下で役立つことが求められており、一面では新しい科学技術のフロントを提供して
くれているとも言える。安全・確実でかつ強靭な技術が必要とされる福島の廃炉技術の中で育っ
たレーザー技術の中から、原子力技術のみならず公共インフラや国土保全、さらには宇宙、海洋
開発に資する高度な技術が現れて来るのではないかと期待している。これら技術は地球規模で
重要課題となっている持続可能な社会に貢献する科学技術であり、この観点からも今後の発展
が期待される。
このような中で昨年、内閣府の主導する戦略的イノベーション創出プログラム(SIP)の一環で
経済産業省と文部科学省のプロジェクト 2 件が他機関、原子力機構の他部署との連携の下、採
択された。分担課題は、物づくりの中のレーザーコーティング技術と鉄道トンネルの健全性診断・
補修技術の研究開発に関するものであり、それぞれ成果が出始めている。原子力利用に向けた
研究開発とともに、ご意見を賜りたいと思っている。
レーザー共同研究所は本年 10 月より敦賀連携センターに統合されこれまでにも増して福井県
研究開発拠点化に貢献する中で、敦賀発の研究開発成果を発信し続ける所存である。皆様方の
一層の御支援、御指導を御願いする次第である。
敦賀事業本部 敦賀連携推進センター
レーザー共同研究所所長 大道博行
4
2 組織
日本原子力研究開発機構:敦賀事業本部
敦賀連携推進センター
計画管理室
所長:大道博行
国際協力室
産学連携推進室
レーザー共同研究所
研究主幹:
研究主幹:
村松壽晴
西村昭彦
平成 27 年 10 月 1 日現在
レーザー共同研究所 研究チーム

原子力保守保全チーム
リーダー :西村昭彦
研究テーマ :レーザー技術の原子力保守保全・産業利用

レーザー加工技術高度化チーム
リーダー :村松壽晴
研究テーマ :レーザーによる溶断・破砕、コーティング、適応制御等の加工技術

レーザー溶接・切断技術の標準化チーム
リーダー :村松壽晴
研究テーマ :計算科学と高精度実験
5
3 活動状況
3.1
研究開発の概要と研究紹介
3.1.1
レーザー技術の原子力保守保全・産業利用
研究チームリーダー:西村昭彦
これまでレーザーパルスの特性を活かした原子力の保守保全分野への応用を推進して
きた。レーザーのパルス幅と物質との相互作用を効果的に利用することで、幅広くプラン
トの保守保全技術に役立てることが出来る。関西光科学研究所で開始した超短パルスレー
ザーを用いた加工技術は、熱影響を極めて小さな領域に限定させることが可能である。こ
の超短パルスレーザー加工を利用した温度変化や歪変化を捉えることが出来るセンサシ
ステムの開発を行ってきた。ナノ秒領域では、効果的なプラズマ発生や衝撃波の発生が可
能であり、ミリ秒から連続発振の領域では、ファイバレーザーによる微小スポットの効果
的な加熱を最大限利用して、配管内部の減肉や溶接割れの箇所を補修できる。
これまでパルスレーザー加工技術を高度化して、光ファイバのコアに回折格子の描画
精度を向上させた。加工した光ファイバを炭化ケイ素繊維と複合的に編み合わせることで
機械的強度を向上させることに成功した。配管への実装方法として 200 度で固着力が発現
し 900 度まで耐えられる金属接着剤を採用した。これにより、振動する配管用鋼材の挙動
を捉えることが出来るセンサを完成させた。更にセンサ保護チューブの使用や取り付け手
法の改善を行い、2014 年 10 月に、敦賀白木地区の新型ナトリウム工学施設の配管エルボ
へ実装した。現在、施設の運転室において配管歪みの実時間監視が可能である。
ナノ秒レーザー領域では、対象物を把握し、且つ、その表面を観察しながら組成分析
できるレーザーブレークダウン分光(LIBS)分析技術の小型装置化に成功した。これは、配
管のような狭隘部の内部に挿入して観察できる光ファイバ技術を利用した専用スコープ
の開発による。
ミリ秒から連続発振領域では熱作用が主となる。重要な成果は、配管内壁の減肉補修
を行うレーザー肉盛り溶接装置の開発である。昨年度は実プラントへの適用を見据えて、
装置の制御系の統合を行い、溶接条件の最適化と駆動機構の堅牢化を進めた。その結果、
垂直に配置した 1 インチ伝熱管内壁の補修が可能な現場持ち込み型装置の開発に成功し
た。
現在、我が国では原子炉の再稼動が進められている。再稼動後の課題の一つは高経年
化への対処法である。配管の熱膨張や流れ場による振動は溶接部を务化させる。地震時に
は配管に加わる大きな外力も想定される。炉の形式を問わず冷却配管の常時監視や保守保
全から醸成される技術は原子炉安全性向上に役立つ。また、このような技術の中から産業
インフラ等の保守保全に役立つ技術が生まれてくることも期待される。
6
3.1.2
レーザー加工技術の高度化
研究チームリーダー:村松壽晴
レーザー光を用いた加工技術に係わる研究では、高出力レーザーを用いた厚板溶断技
術の高度化を進めている。厚板鋼材を、レーザー光を熱源として溶断する場合、その性能
はレーザー出力、アシストガス流量、スウィープ速度などの数多くのパラメータに支配さ
れる。この溶断性能を常に適切な状態に維持できるようにするため、レーザー光照射位置
近傍からの反射光をモニタし、その特性(信号レベルと信号振幅との比率)によって溶断状
況を判断した上で、必要に応じて回復動作を加える適応制御システム(下記スケッチ参照)
を開発中である。基本的な鋼材溶断試験より、反射光信号を用いた適応制御が可能である
との見通しを得ている。
レーザー溶断プロセスの適応制御システム
平成 22 年度から開始した共同研究「原子炉構造物を対象としたレーザー切断技術の確
立に向けた研究((公財)若狭湾エネルギー研究センター/レーザックス㈱/原子力機構)」の
連携を一層深め、切断性能高度化に向けた研究の更なる効率化を図るため、(公財)若狭湾
エネルギー研究センターより、平成 23 年 12 月に 10kW ファイバーレーザーシステムをレ
ーザー共同研究所に置き、平成 27 年度も継続して当該共同研究を進めている状況にある。
(現在は、6kW ファイバーレーザーシステム)また、平成 25 年度から開始した共同研究「高
出力レーザーを用いた材料加工技術等の高度化に関する研究((公財)若狭湾エネルギー研
究センター/原子力機構)」を平成 27 年度も継続した。
7
3.1.3
レーザー溶接・切断技術の標準化
研究チームリーダー:村松壽晴
レーザー加工において、意図した性能や製品を実現するためには、ここで発生する溶
融・凝固現象などを含む複合物理過程を把握した上で、レーザー照射条件などを適切に設
定する必要がある。しかしこの条件適切化作業は、繰返しによる膨大なオーバーヘッドを
伴うのが一般的であり、多品種尐量生産などを指向する産業分野へのレーザー加工技術の
導入を阻害する一因ともなっている。
レーザー溶接・溶断技術の標準化に係わる研究では、加工材料にレーザー光が照射さ
れてから加工が完了するまでの複合物理過程を定量的に取扱えるようにするため、ミクロ
挙動とマクロ挙動とを多階層スケールモデルにより接続した計算科学シミュレーション
コード SPLICE を開発中である。この SPLICE コードをレーザーコーティングプロセスに適
用し、設計空間の可視化、レーザー照射条件の設定などを通じて、コーティングプロセス
に係わるオーバーヘッドを効果的に低減させることが可能であるとの見通しを得ている。
(a)レーザーコーティングプロセスに影響を与える諸条件
【膜厚】
【溶け込み深さ】
(b)SPLICE コードを用いた設計空間(応答曲面)の可視化
8
3.1.4
参考論文等の掲載
業務に関する成果の内容をわかり易く紹介した論文および解説記事について、出版
社・関係者等の許諾を得た上で、次頁以降に掲載した。
Ⅰ. 戦略的イノベーション創造プログラム/革新的設計生産技術
高付加価値設計・製造を実現するレーザーコーティング技術の研究開発
国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) より受託
Ⅱ. 戦略的イノベーション創造プログラム/インフラ維持管理・更新・マネジメント技術
レーザーを活用した高性能・非破壊务化インフラ診断技術の研究開発
国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST) より受託
Ⅲ. レーザー共同研究所 研究成果を福島に
原子力機構 広報誌「つるがの四季」より転載
Ⅳ. 紫外線のナトリウム透過の確証
- 厚さ 8mm のナトリウムを透過した紫外線によるイメージングに成功 日本原子力研究開発機構 成果普及情報誌「原子力機構の研究開発成果 2014」大道博行
Ⅴ. Transparency of Sodium in the Ultra-Violet Spectral Range
- Imaging by Light Illumination through an 8-mm-Thick Sodium Sample 日本原子力研究開発機構 成果普及情報誌「JAEA R&D Review 2014」大道博行
Ⅵ. レーザー光を熱源として燃料デブリを溶断・破砕する
- 形状不定,高硬度,多成分,多孔質の特性を持つ燃料デブリへの対応 日本原子力研究開発機構 成果普及情報誌「原子力機構の研究開発成果 2014」村松壽晴
Ⅶ. Melting and Crushing of Fuel Debris with Laser Light as a Heat Source
- Countermeasures to Fuel Debris Characterized by Indefinite Shapes,
Higher Hardness, Multi-Ingredients, and Porous Bodies日本原子力研究開発機構 成果普及情報誌「JAEA R&D Review 2014」村松壽晴
9
Ⅰ. 戦略的イノベーション創造プログラム/革新的設計生産技術
高付加価値設計・製造を実現するレーザーコーティング技術の研究開発
SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)/革新的設計生産技術
高付加価値設計・製造を実現するレーザーコーティング技術の研究開発
目的:レーザークラッディング(肉盛溶接)技術から、高機能化のための「難加工材」のレーザー
コーティング技術を確立し、デライト設計実現を通じて、産業界の活性化を目指す。
①レーザー入熱制御技術の開発
(1)計算科学的手法によるレーザー
溶融凝固シミュレーション
(右図a参照)
(2)レーザーコーティング現象の解明
(右図b参照)
(3)難加工材の高品質レーザーコー
ティング技術の開発
(a)計算科学的手法による
(b)レーザーコーティング現象の解明
レーザー溶融凝固シミュレーション 「放射光X線を用いた時分割観察試験」
日本原子力研究開発機構、
大阪大学接合科学研究所
新基盤技術の
供給
技術課題の
抽出
新基盤技術の
供給
②モルテンプール型
レーザーコーティング技術の開発
技術課題の
抽出
③非モルテンプール型
レーザーコーティング技術の開発
レーザーコーティング膜高品質化技術の開発および
レーザーコーティング膜品質安定化のための生産技
術開発
高精度レーザーコーティングのための粉末供給制御
技術および高精度レーザーコーティングのためのレー
ザー制御技術の開発
村谷機械製作所、石川県工業試験場
大阪富士工業
レーザー
材料粉末
レーザー
材料粉末の供給
モルテンプール
凝固領域
コーティング膜
母材
レーザー
材料粉末が溶融
膜厚:1~2mm
母材
熱影響部
膜厚:1mm以下
技術連携
コーティング薄膜
難加工材等の材料粉末
難加工材・高融点材料等の材料粉末
材料粉末供給の制御
高度入熱制御したレーザーを照射
材料粉末の溶融凝固の制御
材料粉末の溶融凝固の制御
高品質コーティング膜の実現
高品質コーティング薄膜の実現
膜厚1mm以上の高精度厚膜コーティング
膜厚1mm以下の高精度薄膜コーティング
管理法人:国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構:NEDO
共同実施機関:大阪大学接合科学研究所、大阪富士工業株式会社、株式会社村谷機械製作所 他
10
Ⅱ. 戦略的イノベーション創造プログラム/インフラ維持管理・更新・マネジメント技術
レーザーを活用した高性能・非破壊务化インフラ診断技術の研究開発
SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)/インフラ維持管理・更新・マネジメント技術
レーザーを活用した高性能・非破壊务化インフラ診断技術の研究開発
コンクリート健全性評価技術開発
トンネルの形状把握
ひび割れ等の検出
表面形状
計測用
レーザー
(1)レーザーを用いた
表面形状計測車
理研担当
(1)
コンクリート表面の形状、ひび
割れ等の計測
表面付近の
コンクリート欠陥検出
コンクリート欠陥の除去
コンクリート
除去
検出用レーザー
による高速検出
(レーザー総研)
衝撃波励起用
5J,50Hz
パルスレーザー
(原子力機構)
高出力
ファイバー
レーザー
(2)レーザーを用いた
欠陥検出車
(音波領域)
捕集器
(3)レーザーを用いた
欠陥除去・補修車
レーザー総研
原子力機構担当
原子力機構担当
(2)
(3)
(1)計測のひび割れ近傍を計
測し、健全度判定を行う。
また、トンネル付帯物の検査
を行う。
(2)で欠陥の除去や補修等の
処理が必要と判断された箇所
を修繕する。
打音検査に代わる検査技術
(音波領域)
連続発振レーザー
シングルパルスレーザー、周
波数可変レーザー
ファイバーレーザー
管理法人:国立研究開発法人 科学技術振興機構:JST
共同実施機関:独立行政法人 理化学研究所、公益財団法人 レーザー技術総合研究所 他
11
Ⅲ. レーザー共同研究所 研究成果を福島に
広報誌「つるがの四季」No.107,P5 より転載
12
Ⅳ. 紫外線のナトリウム透過の確証
- 厚さ 8mm のナトリウムを透過した紫外線によるイメージングに成功 –
成果普及情報誌「原子力機構の研究開発成果 2014」P76 より転載
13
Ⅴ. Transparency of Sodium in the Ultra-Violet Spectral Range
- Imaging by Light Illumination through an 8-mm-Thick Sodium Sample -
成果普及情報誌「JAEA R&D Review 2014」P76 より転載
14
Ⅵ. レーザー光を熱源として燃料デブリを溶断・破砕する
- 形状不定,高硬度,多成分,多孔質の特性を持つ燃料デブリへの対応 -
成果普及情報誌「原子力機構の研究開発成果 2014」P24 より転載
15
Ⅶ. Melting and Crushing of Fuel Debris with Laser Light as a Heat Source
- Countermeasures to Fuel Debris Characterized by Indefinite Shapes,
Higher Hardness, Multi-Ingredients, and Porous Bodies-
成果普及情報誌「JAEA R&D Review 2014」P24 より転載
16
3.2
第5回レーザー共同研究所成果報告会の開催
平成 26 年 11 月 20 日、21 日の二日間にわたり、アトムプラザで「第5回レーザー共同
研究所成果報告会」を開催した。
平成 21 年 9 月に設立されたレーザー共同研究所の1年間の研究成果を中心に、これま
での5年間の事業運営の概要を報告するとともに、適切な評価を受け、事業の一層の発
展のための協力体制を構築する場とし、レーザー技術に関する基礎研究から産業展開に
わたり、積極的な意見交換、研究交流の場とすることを目的とした。
冒頭の主催者である原子力機構の吉田理事・敦賀事業本部長代理、共催者の若狭湾エ
ネルギー研究センター梅田専務理事の挨拶において、原子力機構、若狭湾エネルギー研
究センターの活動状況、最近のレーザー技術開発に関する取組状況等がそれぞれ述べら
れた。
講演セッションでは、主として当研究所と協力関係にある機構内外の講演者により二
日間で 23 件の講演が行われ、それぞれについて活発な質疑応答が行われた。また、昨年
12 月からの1年間の成果等を取りまとめたレーザー共同研究所成果報告書を配布すると
ともに、レーザー実験室の見学会を実施した。見学会では、ファイバーレーザー溶断・
破砕実験の映像紹介を行うとともに、FBGセンサー、肉盛溶接装置などの実験装置及
び研究成果の紹介を行った。さらに、見学会や情報交換会を活用して、企業や大学と実
施中の共同研究の進捗の確認や今後の取組み或いは外部ファンド応募に関する打ち合わ
せなどを行った。また、敦賀事業本部広報課のバックアップの下、本報告会に先立って
取材案内の送付などプレス対応を行った。
参加者の人数は、以下の通りである。
11 月 20 日:101 名 11 月 21 日:69 名
のべ参加者:118 名
若狭湾エネルギー研究センター
梅田専務理事の共催者挨拶
吉田理事の主催者挨拶
17
平成 26 年度 第5回レーザー共同研究所成果報告会
主催:独立行政法人 日本原子力研究開発機構
共催:公益財団法人 若狭湾エネルギー研究センター
後援:福井県、敦賀市、福井大学、敦賀商工会議所
場所:日本原子力研究開発機構 アトムプラザ 2階
実施概要報告
アトムホール
講演内容一覧
以下、敬称略
【福島関連】
座長:
(株)東芝 電力システム社 千田 格
1.福島第一発電所における遠隔調査技術の取組み
日立 GE ニュークリア・エナジー(株)/技術研究組合 国際廃炉研究開発機構
:木下 博文
2.放射性物質の分析・研究施設計画の現状
JAEA 福島廃炉技術安全研究所
:有井 祥夫
3.原子力機構における福島第1原子力発電所の廃止措置に関する研究開発の概要
JAEA 福島廃止措置技術開発センター
:武田 誠一郎
4.レーザー共同研究所における燃料デブリ取出しに係わる研究開発
JAEA レーザー共同研究所
:村松 壽晴
JAEA レーザー共同研究所
:羽成 敏秀
5.レーザー溶断時における光信号特性の評価
6.レーザ光を用いた不規則形状/金属-セラミックス混合体の溶断・破砕
JAEA レーザー共同研究所
:武部 俊彦
【廃止措置技術】
座長:福井大学 柳原 敏,
(公財)レーザー技術総合研究所 井澤 靖和
7.浜岡原子力発電所
1,2号機廃止措置の概要
中部電力(株)原子力安全技術研究所
:稲垣 博光
JAEA 原子炉廃止措置研究開発センター
:忽那 秀樹
8.「ふげん」廃止措置の状況
9.CO2レーザによるレーザ誘起現象を利用した水中岩石・金属加工技術
日本海洋掘削(株)
:小林 俊雄
10.若狭湾エネルギー研究センターにおけるレーザー除染及び切断技術開発
(公財)若狭湾エネルギー研究センター
:田村 浩司
11.100kW ファイバーレーザを用いた研究開発状況
(株)ナ・デックスプロダクツレーザR&Dセンター
18
:伊藤 晋吾
【保守・保全技術関連】
座長:三菱重工 横浜研究所
渡辺 俊哉,
(公財)若狭湾エネルギー研究センター 西尾 繁
12.ITER 遠隔保守に用いる冷却配管溶接ツールの技術開発
JAEA ITER プロジェクト部(那珂)
:角館 聡
13.原子力施設の保守保全におけるレーザー技術の貢献
JAEA レーザー共同研究所
:西村 昭彦
JAEA レーザー共同研究所
:下村 拓也
14.レーザー加工 FBG センサの生産性向上
15.ナトリウム中可視化用レーザー式超音波センサの感度特性
JAEA もんじゅ運営計画・研究開発センター
:猿田 晃一
16.鉄筋コンクリート構造体の中性子を用いた内部応力測定
JAEA 弾塑性材料評価研究グループ(東海)
:鈴木 裕士
JAEA レーザー共同研究所
:寺田 隆哉
17.小型補修機器の開発と適用例
【産業育成・科学技術振興】
座長:福井大学 金邉 忠
18.ナトリウム中透視技術及びレーザー研産業貢献の今後
JAEA レーザー共同研究所
:大道 博行
19.関西光科学研究所のレーザー応用研究の展開
JAEA 量子ビーム応用研究センター(木津)
:杉山 僚
20.レーザー技術による水素吸蔵合金の性能向上について
JAEA 環境・産業応用量子ビーム技術研究ユニット(高崎)
:阿部 浩之
21.炉内補修(常陽)報告と放射線計測機器開発
JAEA 大洗研究開発センター
:伊藤 主税
JAEA 環境・産業応用量子ビーム技術研究ユニット(高崎)
:山本 春也
22.水素検知材料開発と VB への展開
23.ファイバ技術を基礎とした VB の今後の展開
(株)OKファイバーテクノロジー
19
:岡 潔
3.3
各種検討会・見学会の実施
3.3.1
レーザー共同研究所 御視察・御見学
本年度も多数の方に研究所を御視察・御見学いただいた。その中から代表的なものを
抜粋して以下に紹介した。文中の肩書きは御視察・御見学当時のものである。
○文部科学省 研究開発局原子力課 岡村課長 御視察
・視察日:平成 27 年 8 月 27 日(木)11:30~
・視察者:文部科学省 研究開発局原子力課 岡村直子課長、
敦賀原子力事務所 山之内裕哉所長
○中部レーザ応用技術研究会 第 92 回研究会 御見学
・見学日:平成 26 年 11 月 26 日(水)14:00~
・見学者:中部レーザ応用技術研究会御一行 27 名
幹事:光産業創成大学院大学 坪井昭彦氏
20
○平成 26 年度 第 4 回多元技術融合光プロセス研究会 御見学
・見学日:平成 26 年 12 月 5 日(金)10:30~
・見学者:一般財団法人 光産業技術振興協会
多元技術融合光プロセス研究会御一行 31 名
代表幹事:慶應義塾大学 小原實氏
○原子力機構モニター見学会
・見学日:平成 27 年 3 月 12 日(木)、14 日(土)10:30~
・見学者:福井県内各地にお住まいの原子力機構モニターの方々
21
14 名/10 名
○第 12 回 日本加速器学会年会 施設見学会
・見学日:平成 27 年 8 月 4 日(火)13:30~
・見学者:日本加速器学会御一行 95 名
代表:実行委員 公益財団法人若狭湾エネルギー研究センター 遠山伸一氏
・公益財団法人 若狭湾エネルギー研究センターと見学会を共同開催
○Korean D&D Business Mission 御見学
・見学日:平成 27 年 10 月 6 日(火)9:00~
・見学者:韓国原子力産業会議(KAIF)御一行 29 名
代表:韓国原子力産業会議 Ho-Hyun Chang 氏
・原子炉廃止措置研究開発センター(ふげん)と見学会を共同開催
22
3.4
レーザー技術の普及、人材育成への貢献
3.4.1
夏期休暇実習生の受入
実習テーマ:レーザーによる精密加工技術の基礎技術の習得
実施日:(前半組)平成 27 年 8 月 3 日(月)~8 月 7 日(金) 計 5 日間
(後半組)平成 27 年 8 月 24 日(月)~8 月 28 日(金) 計 5 日間
時 間:9:00~17:00
場 所:日本原子力研究開発機構 敦賀事業本部 レーザー共同研究所
参加者:(前半組)東北大学生1名、福島工業高等専門学校生1名
(後半組)福井大学生10名
内 容:
レーザー加工技術は、レーザーパルスの長さと加工物の特性に応じて、溶融や蒸発
を主とした熱加工と非線形吸収や多価電離などの高強度超短パルス加工まで、幅広く
研究開発と実用化が進められており、原子力分野でもレーザー加工技術の適用・実用
化が進められている。
本実習は、1)レーザーの原理と装置概要、2)レーザー光の安全な取扱いと物質
との相互関係、3)レーザー加工のためのステージ制御の概要、4)レーザー加工の
基本習得、5)原子力分野で活躍するレーザー加工技術例の紹介について習熟し、レ
ーザー加工技術に関する理解を深めることを目的とした。特にレーザー加工の基本習
得では、グラスファイバ内部にレーザー精密加工を行い、回折格子を製作する。製作
した回折格子を用いて、金属の変形の計測を行った。レーザー加工技術例としては、
レーザー溶接・補修、地震センサ開発、水中レーザー切断などの基盤技術と応用分野
の融合例を紹介した。
スケジュール
月 日
時
間
実習内容
担当
8月3日
9:00
10:00
オリエンテーリング
労務課
(月)
10:00
12:00
レーザーに関する安全教育
西村
13:00
16:30
第1実験:光の基礎実験
下村
16:30
17:00
討論とまとめ
西村・下村
8月4日
9:00
12:00
第2実験:レーザー熱加工実験
中村・松永
(火)
13:00
16:30
実験室見学と調べ物
古山
16:30
17:00
討論とまとめ
古山
8月5日
9:00
12:00
第3実験:カルマン渦のレーザーによる可視化実験
羽成
(水)
13:00
16:30
第3実験:発熱体近傍に生じる自然対流の可視化実験
羽成
16:30
17:00
討論とまとめ
西村・羽成
23
月 日
時
間
実習内容
担当
8月6日
9:00
12:00
第4実験:短パルスレーザーを用いた微細加工試験
竹仲・下村
(木)
13:00
16:30
第4実験:FBGセンサを用いた歪み、振動計測実験
竹仲・下村
16:30
17:00
討論とまとめ
西村・竹仲
8月7日
9:00
12:00
第2実験:レーザー熱加工(続き)
中村・松永
(金)
13:00
15:00
発表準備・学習内容の発表
講師全員
超短パルスレーザーシステムの構造説明
スケジュール
月 日
時
間
実習内容
担当
8 月 24 日
9:00
10:00
オリエンテーリング
(月)
10:00
12:00
レーザーに関する安全教育
西村
13:00
16:30
第1実験:光の基礎実験
下村
16:30
17:00
討論とまとめ
西村・下村
8 月 25 日
9:00
12:00
第2実験:レーザー熱加工実験
中村・松永
(火)
13:00
16:30
第2実験:レーザー熱加工実験
中村・松永
16:30
17:00
討論とまとめ
西村・中村
8 月 26 日
9:00
10:00
講義:光・レーザー技術と原子力
羽成
(水)
10:00
12:00
第3実験:レーザープラズマ蛍光分光実験
古山
13:00
16:30
16:30
17:00
労務課
第4実験:短パルスレーザーを用いた微細加工実験
竹仲・下村
第3実験:防水スコープを使用した光吸収分光実験
古山
第4実験:FBGセンサを用いた歪み、振動計測実験
竹仲・下村
討論とまとめ
古山・竹仲
24
月 日
8 月 27 日
時
9:00
間
12:00
(木)
実習内容
第4実験:短パルスレーザーを用いた微細加工実験
第3実験:レーザープラズマ蛍光分光実験
13:00
16:30
担当
竹仲・下村
古山
第4実験:FBGセンサを用いた歪み、振動計測実験
竹仲・下村
第4実験:防水スコープを使用した光吸収分光実験
古山
16:30
17:00
討論とまとめ
竹仲・古山
8 月 28 日
9:00
12:00
発表準備
講師全員
(金)
13:00
17:00
学習内容の発表
講師全員
レーザー熱加工実験
レーザープラズマ蛍光分光実験
25
3.5
各種記事・表彰
3.5.1
平成 26 年 11 月 21 日付福井新聞掲載記事
平成 26 年 11 月 21 日(金)付
福井新聞
24 面
(平成 27 年 10 月 16 日 株式会社 福井新聞社より許諾済)
26
3.5.2
プレス発表文【平成 26 年 11 月 21 日(金)】
1/4 頁
平成 26 年 11 月 21 日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
国立大学法人大阪大学
レーザー加工時の金属の溶融・凝固の様子の観察に世界で初めて成功
~ 戦略的イノベーション創造プログラム (SIP) 推進で成果活用へ ~
(お知らせ)
【発表のポイント】

SPring-8 とレーザーを組み合わせた新しい観測手法と数値シミュレーションにより、レーザ
ー加工時の金属が溶融・凝固の様子の「その場観察」に世界で初めて成功。

今回の成果は、SIP 課題「革新的設計生産技術」に提案・採択された課題で活用することとな
っており、今後本格的な研究を開始予定。
独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 松浦 祥次郎。以下「原子力機構」という。)原子
力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター レーザー共同研究所 レーザー応用技術開発室の村松
壽晴 室長、山田 知典 研究員、同センター 量子ビーム材料評価・構造制御技術研究ユニット 弾塑
性材料評価研究グループの菖蒲 敬久 研究主幹、国立大学法人大阪大学接合科学研究所の小溝 裕一
教授らの研究グループは、レーザーにより金属材料を溶接する際に、レーザーが当たった部分が一旦
溶けて再び固化する様子やその時の溶けた部分の内部の流れを、大型放射光施設 SPring-8 の極めて
強い単色 X 線により、「その場観察」することに初めて成功しました。
レーザー溶接において溶接部分の強度低下を防ぎ、材料の加工品質を向上させるためには、レーザ
ーによって溶ける部分と周辺の溶けない部分との影響の及ぼしあい方を正しく把握する必要があり
ます。この影響の度合いは、溶けた部分の流れを調べることで予想できますが、これまで詳細に調べ
られた例はありませんでした。今回、本研究グループは、SPring-8 とレーザーを組み合わせた従来に
ない高精度の観察手法を開発し、更に数値シミュレーション技術と組み合わせることにより、レーザ
ー加工時に金属が溶融・凝固する様子を精密に観察することに世界で初めて成功しました。今回の成
果により、溶接時に溶けて液体化した金属部分が周辺部分から受ける影響を正しく把握できるように
なり、レーザー溶接の大幅な品質向上が期待されます。
本成果は、独国科学誌「Springer」のオンライン版に 6 月 15 日受理の上、掲載されました。
なお、大阪大学と共同提案した「高付加価値設計・製造を実現するレーザーコーティング技術の研
究開発(研究開発責任者:国立大学法人大阪大学接合科学研究所 塚本 雅裕 准教授)」が、内閣府の
SIP プログラム「革新的設計生産技術」に採択され、本成果を活用してゆく予定です。
【本件に関する問合せ先】
独立行政法人日本原子力研究開発機構
(研究内容について)
原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター
レーザー共同研究所 レーザー応用技術開発室長 村松 壽晴 TEL: 0770-21-5050, FAX:0770-25-5782
(報道担当)
広報部報道課長 中野 裕範 TEL:03-3592-2346, FAX:03-5157-1950
27
2/4 頁
【研究開発の背景と目的】
原子炉容器などの溶接構造物の設計・施工では、溶接に伴う強度低下などを的確に防止することが
求められます。この強度低下の主要因としては、欠陥の生成や引張り型の残留応力 1)の発生がありま
す。このためまずは、レーザー照射により固体金属が加熱し、溶けた後、固まってゆく一連の時間的
な変化を定量的に把握することが求められます。「その場観察」は、欠陥が生成する様子や、空間的
な温度分布に影響を与える溶けた領域内部の流れの把握を可能とします。この温度分布が、引張り型
残留応力を発生させる主要因であるため、流れの把握は、結果として残留応力の定量評価にも繋がり
ます。しかしながら従来では、このような流れの観察を可能にする実験環境や数値シミュレーション
を行う環境が十分に整っていなかったため、それを実現することができませんでした。
本研究は、SPring-8 放射光 X 線による高精度な「その場観察」と計算科学による数値シミュレーシ
ョン技術を併用することにより、レーザー照射による溶けた金属領域の拡大と収縮の時間的な変化と、
溶けた領域内部の流れを把握した上で、適切な残留応力を付与するための技術を確立しようとするも
のです。
【研究の方法と成果】
本研究は、大型放射光施設 SPring-8 の原子力機構専用ビームライン BL22XU にレーザー装置を持ち
込んで行いました。高輝度単色性 2)により特徴づけられる SPring-8 単色放射光 X 線は、材料に対する
透過性が非常に優れている上に、材料のわずかな重さの差が画像にくっきりと反映される優れた特徴
を有しています。この X 線をアルミニウム合金の表面に直径 0.05mm の炭化タンタル粒子を配置した
材料の上部より照射し、透過した X 線を CCD カメラで捉えることにより、材料を破壊することなく内
部の様子を時々刻々見ることができます(イメージング法)。実験ではこの技術を利用し、図 1 左上の
ように、レーザーの照射により溶けて液体化したアルミニウム合金の領域と固体アルミニウム合金の
領域の僅かな密度差(~8 %)から、溶けた領域と固体領域の界面(固液界面)の時間変化を 0.02 秒、空
間変化を 0.04 mm の精度で観測することに成功しました。他方、炭化タンタルは融点が高いために、
アルミニウム合金が溶ける状況でも粒子のままです。しかも密度がアルミニウム合金に比べてはるか
に大きいため、X 線が透過しにくく、図 1(a),(b)の点線で囲った部分のように影絵としてその位置を
観察することができます。
X線
レーザー光
CCDカメラ
溶融池
アルミニウム合金
1mm
時間分解能:15 ms
空間分解能:37.5 μm
図 1 SPring-8 放射光 X 線を用いた固液界面の時間変化と溶けたアルミニウム合金内部の対流の様子
の「その場観察」実験
(
:時間の進行とともに変化する炭化タンタルの位置)
28
3/4 頁
これによって、レーザー照射中この炭化タンタル粒子の動きを時々刻々追跡することにより、溶け
たアルミニウム合金内部での対流の様子を「その場観察」することに成功しました。これら固液界面
の時間変化と溶けたアルミニウム合金内部の対流の様子の同時かつ高精度な「その場観察」は、当研
究グループが世界に先駆けて達成したものです。
更に、レーザー溶接 3)プロセスに影響を及ぼす様々な物理現象を定量的に理解できるようにするた
め、計算科学シミュレーションコード SPLICE
4)
を新たに開発しました。この SPLICE コードは、レー
ザー光が材料に照射され、固体材料が溶けて液体になり、再び固まるまでの一連の物理現象を多階層
スケールモデル 5)などを利用して一気通貫で取扱うもので、これにより様々なスケールの物理現象が
複雑に絡み合うレーザー溶接プロセスを精度良く評価することを初めて可能にしています。
固液界面
1 mm
(a) アルミニウム本来の熱伝導度を設定した場合
1 mm
(b) 熱伝導度をアルミニウムの 1/100 に設定した場合
図 2 SPLICE コードによる溶融アルミニウム対流挙動の評価
図 2 には、熱の広がりの速さを規定する熱伝導度を人為的に変更し、この影響を SPLICE コードで
評価したものです。このような SPLICE コードによる解析結果を利用して現象を評価することで、レ
ーザー溶接プロセスに影響を与える様々なパラメータを分離して評価することができ、適切な残留応
力を付与するためのパラメータ設定のための検討を定量的に行うことができるようになりました。以
上の成果の詳細は、最近出版された下記原著論文に記述されています。
【今後の期待】
大阪大学と共同提案した溶接機器の革新的な生産・製造技術の確立を目的とする「高付加価値設
計・製造を実現するレーザーコーティング技術の研究開発」が、内閣府が推進する SIP プログラム「革
新的設計生産技術」6) に採択され、この中で本研究成果を積極的に活用してゆく予定です。
【原著論文】
1. 著者:T. Yamada, T. Shobu, S. Yamashita, A. Nishimura, T.
Muramatsu
and Y. Komizo
タイトル:Visualization technique for quantitative evaluation in laser welding processes 書
籍:In-situ Studies with Photons, Neutrons and Electrons Scattering Ⅱ
出版社:Springer (Heidelberg)
掲載ページ:pp.201-215 (2014).
29
4/4 頁
用語説明
1)引張り型残留応力:外力を除去した後や溶接加工の後に、物体内部に残る応力成分の一つであり、
機械的強度を低下させる要因。
2)高輝度単色 X 線:一つの波長のみから成る高輝度 X 線。
3)レーザー溶接:レーザー光を熱源として、材料を局所的に溶融・凝固させ接合する方法。加工中
の溶融金属の温度分布を適切に制御することにより、適切な残留応力分布を付与することが可能。
4)SPLICE コード:レーザー切断、溶接現象の解明に向けて開発した多次元コード。一流体モデルを
用いて統一的に気・液・固の挙動が解析可能であり、溶接時の残留応力制御を目標としているこ
とから、residual Stress control using Phenomenological modeling for Laser welding repair
process In Computational Environment とし、SPLICE と命名。
5)多階層スケールモデル:溶接過程では、熱源からの入熱により、加熱・溶融・対流・凝固・固相
変態が生じる。この一連のプロセスで生じるレーザー光と物質の相互作用、物質の溶融、気化、
凝固など複雑な相変化などは、原子レベルから目視可能な液体の運動レベルまで様々なスケール
の物理現象が複雑に絡まりあう物理過程であり、これを微視化および粗視化を通じて取扱うモデ
ル。
6) SIP プログラム「革新的設計生産技術」
:SIP 課題は、社会的に不可欠で、日本の経済・産業競争
力にとって重要な課題を総合科学技術・イノベーション会議が選定したもので、基礎研究から実
用化までを見据えて一気通貫で研究開発を推進するものです。当該研究開発の実施に当たっては、
上記研究により得られた定量評価技術などを積極的に活用して進めることになります。今後 4
年半に亘る研究開発により得られた成果は、新たなものづくりスタイルを広く普及・展開するこ
とで、地域発のイノベーションを実現し、グローバルトップを獲得できる新たな市場を創出し、
日本のものづくり産業の競争力強化に反映されます。
30
3.5.3
平成 26 年 11 月 22 日付日刊県民福井掲載記事
平成 26 年 11 月 22 日(土)付 日刊県民福井 3 面
(平成 27 年 10 月 21 日 株式会社 日刊県民福井より許諾済)
31
3.5.4
平成 26 年 11 月 25 日付中日新聞掲載記
平成 26 年 11 月 25 日(火)付 中日新聞(福井県版) 18 面
(平成 27 年 10 月 21 日 株式会社 中日新聞社より許諾済)
32
3.5.5
平成 26 年 11 月 26 日付日刊工業新聞掲載記事
平成 26 年 11 月 26 日(水)付 日刊工業新聞 25 面
(平成 27 年 10 月 16 日 株式会社 日刊工業新聞社より許諾済)
3.5.6
平成 26 年 11 月 28 日付読売新聞掲載記事
平成 26 年 11 月 28 日(金)付 読売新聞(福井県版) 32 面
(平成 27 年 10 月 19 日 株式会社 読売新聞東京本社より許諾済)
33
3.5.7
平成 26 年 12 月 17 日付福井新聞掲載記事
平成 26 年 12 月 17 日(水)付 福井新聞 2 面
(平成 27 年 10 月 16 日 株式会社 福井新聞社より許諾済)
34
3.5.8
平成 27 年 3 月 11 日付福井新聞掲載記事
平成 27 年 3 月 11 日(水)付
福井新聞
6面
(平成 27 年 10 月 16 日 株式会社 福井新聞社より許諾済)
35
3.5.9
表彰
本年度は、業務に関し以下の表彰を受けた。

国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構 理事長表彰【創意工夫功労賞】を受賞
受 賞 日 :平成 27 年 11 月 17 日 火曜日
受賞件名 :耐熱歪センサと配管への実装方法の考案
受 賞 者 :耐熱 FBG センサ原子力プラント実装技術開発グループ
西村昭彦,下村拓也,寺田隆哉
上田雅司(もんじゅ運営計画・研究開発センター)
佐々木和一(もんじゅ運営計画・研究開発センター)
竹仲佑介(エーテック株式会社)
古山雄大(エーテック株式会社)
鈴木宏和(株式会社熊谷組)
石橋久義(株式会社熊谷組)
(写真)ナトリウム配管への耐熱 FBG センサの取り付け
左から、寺田隆哉、竹仲佑介、西村昭彦
36

公益財団法人 レーザー技術総合研究所【第7回泰山賞 レーザー進歩賞】を受賞
受 賞 日 :平成 27 年 7 月 10 日 金曜日
受賞件名 :レーザー生成X線レーザーの開発とその応用に関する先駆的研究
受 賞 者 :大道博行,河内哲哉(量子ビーム応用研究センター)
(写真)左から、中塚正大副所長、河内哲哉、井澤靖和所長、
大道博行、松村宏治事務局長

一般社団法人 レーザー学会【レーザー学会フェロー】称号を受領
受 領 日 :平成 27 年 5 月 29 日 金曜日
受 領 者 :大道博行
レーザー学会フェロー認定証
37
4 研究発表等リスト

論文発表(平成 26 年 11 月 1 日~平成 27 年 10 月 31 日)…2 件
No
1
タイトルおよび掲載資料名
発行年月
発表者
共同発表者
“Demonstration of Heat Resistant Fiber Bragg Grating
2014 年
西村昭彦
西村昭彦、竹仲佑介、
Sensors Based on Femtosecond Laser Processing for
11 月
古山雄大、下村拓也、
Vibration Monitoring and Temperature Change”
寺田隆哉、大道博行
Journal of Laser Micro / Nanoengineering
Vol.9, No.3, p.221-224
2
「レーザー加工トーチを用いた配管表面肉盛溶接技術の
研究」
2015 年
寺田隆哉
1月
寺田隆哉、西村昭彦、
岡潔、森山拓、
松田宏康
保全学 Vol.13, No.4, p.87-94

No
1
会議等における論文発表(平成 26 年 11 月 1 日~平成 27 年 10 月 31 日)…8 件
タイトルおよび掲載資料名
“Evaluation of transient temperature characteristics in
high power fiber laser cutting of thick steel plate”
発表年月
発表者
2014 年
Nguyen,P.L.
11 月
共同発表者
Nguyen,P.L.、
武部俊彦、羽成敏秀、
山田知典、村松壽晴
Proceedings of International Symposium on Visualization in
Joining & Welding Science through Advanced
Measurements and Simulation(Visual-JW2014)
2
「冷却配管の保全のためのレーザ加工技術の応用」
2015 年
西村昭彦
西村昭彦
西村昭彦
下村拓也、西村昭彦、
1月
第 82 回レーザ加工学会講演論文集
3
“Fabrications of heat resistant FBG sensor and the
installation on a sodium circulation loop”
2015 年
5月
寺田隆哉、竹仲佑介、
大道博行
Proceedings of 7th International Congress on Laser
Advanced Materials Processing(LAMP 2015)
4
“Visualization and analysis of temperature characteristics
2015 年
in thick section steel cutting using high power fiber laser”
5月
Nguyen.P.L.
Nguyen,P.L.、
武部俊彦、松永幸大、
羽成敏秀、山田知典、
Proceedings of 7th International Congress on Laser
村松壽晴
Advanced Materials Processing(LAMP 2015)
5
“Development of laser cladding and non-destructive
inspection technology in heat exchanger tube”
2015 年
5月
寺田隆哉
寺田隆哉、橘内大輔、
西村昭彦、
伊東富由美
Proceedings of 7th International Congress on Laser
Advanced Materials Processing(LAMP 2015)
38
No
6
タイトルおよび掲載資料名
“Surface Modification Effects on Hydrogen Absorption
Property of a Hydrogen Storage Alloy by Short Pulse Laser
発表年月
発表者
共同発表者
2015 年
阿部浩之
阿部浩之、下村拓也、
5月
徳平真之介、大島武、
Irradiation”
島田幸洋、竹仲佑介、
古山雄大、西村昭彦、
Proceedings of 7th International Congress on Laser
内田裕久、大道博行
Advanced Materials Processing(LAMP 2015)
7
“Transmission Measurement for Highly Transparent
Metallic Sodium in the Extreme Ultraviolet Spectral Range :
2015 年
大道博行
6月
大道博行、鈴木庸氏、
河内哲哉、
New Application of an Intense Euv Sources”
Pirozhkov,A.S.
X-Ray Lasers 2014
8
“X-Ray characterization of short pulse laser illuminated
2015 年
hybrogen storage alloys having very high performance“
8月
大道博行
大道博行、阿部浩之、
菖蒲敬久、下村拓也、
徳平真之介、大島武、
SPIE Optics and Photonics 2015
竹仲佑介、古山雄大、
西村昭彦、内田裕久、

No
1
平成 26 年度下期 口頭発表(平成 26 年 11 月 1 日~平成 27 年 3 月 31 日)…9 件
タイトルおよび発表先会議名
「レーザー技術の原子力とその関連分野への貢献」
発表年月
発表者
共同発表者
2014 年
大道博行
大道博行
大道博行
大道博行
大道博行
大道博行
大道博行
大道博行
村松壽晴
村松壽晴
西村昭彦
西村昭彦
11 月
レーザー・光技術が拓く科学技術の新潮流調査委員会
2
「レーザーと放射光の連携による原子力工学への貢献」
2014 年
11 月
合同シンポジウム 2014 放射光と
レーザーの協働による新産業創成
3
「極端紫外線の金属ナトリウムの透過」
2014 年
12 月
平成 26 年度レーザー励起X線源とその応用研究会
4
「福島第一原子力発電所廃炉にむけたレーザー技術の開発」
2014 年
12 月
第1回東京大学人材育成セミナー
5
「レーザーコーティング現象の数値解析」
2015 年
2月
戦略的イノベーション創造プログラム
「ユーザー連携」推進会議
6
「新規ナトリウム循環施設への耐熱FBGセンサの実装とそ
の先進的展開」
2015 年
3月
平成 26 年度安全・安心な社会を築く
先進材料・非破壊計測技術シンポジウム
39
No
7
タイトルおよび発表先会議名
「配管熱ひずみ計測のための耐熱FBGセンサの実装」
発表年月
発表者
共同発表者
2015 年
西村昭彦
西村昭彦、下村拓也、
3月
竹仲佑介、寺田隆哉、
日本原子力学会 2015 年 春の年会
8
「狭隘部における酸化タングステン結晶を用いた水素検知
技術に関する研究」
大道博行
2015 年
橘内大輔
3月
橘内大輔、古山雄大、
西村昭彦、山本春也、
日本原子力学会 2015 年 春の年会
9
「レーザー光を用いた福島燃料デブリ取出し技術に関する研究
開発(13)レーザー溶断の適応制御に向けた光温度信号の特
2015 年
羽成敏秀
3月
羽成敏秀、山田知典、
武部俊彦、松永幸大、
性」
Nguyen,P.L.、村松壽晴
日本原子力学会 2015 年 春の年会

平成 27 年上期 口頭発表(平成 27 年 4 月 1 日~平成 27 年 10 月 31 日)…8 件
No
1
タイトルおよび発表先会議名
「高サイクル熱疲労評価とレーザー溶接研究」
発表年月
発表者
共同発表者
2015 年
村松壽晴
村松壽晴
西村昭彦
西村昭彦、古山雄大、
4月
溶接学会 溶接疲労強度研究委員会
2
“Multifunctional optical probe for the investigation in
radiation harsh conditions”
2015 年
5月
伊東富由美、
伊藤主税、内藤裕之、
23rd International Conference on
大場弘則、山本春也、
Nuclear Engineering (ICONE-23)
3
「レーザー技術を用いた配管検査補修装置の開発」
若井田育夫、杉山僚
2015 年
寺田隆哉
7月
岡潔、外山亮治、
日本保全学会第 12 回学術講演会
4
「レーザー技術の原子力保守保全・医療分野への貢献」
寺田隆哉、西村昭彦、
橘内大輔
2015 年
西村昭彦
西村昭彦
村松壽晴
村松壽晴
Nguyen,
Nguyen,P.L.、
P.L.
大道博行、松永幸大、
7月
木津川市立学校教員研究会研修会
5
「レーザー加工時の計算科学シミュレーションと加工条件
の導出」
2015 年
8月
高度情報科学技術研究機構 CAE 計算環境研究会
6
“Evaluation of pulsed laser irradiation on concrete using a
QCW laser system”
2015 年
9月
羽成敏秀、寺田隆哉、
2015 年秋季第 76 回応用物理学会学術講演会
40
山田知典、河内哲哉
No
7
タイトルおよび発表先会議名
「レーザー光を用いた福島燃料デブリ取出し技術に関する
発表年月
発表者
2015 年
羽成敏秀
研究開発(14)レーザー溶断適応制御システムを用いた厚板
9月
共同発表者
羽成敏秀、山田知典、
松永幸大、
金属溶断時の特性評価」
Nguyen,P.L.、
中村将輝、村松壽晴
日本原子力学会 2015 年秋の大会
8
「レーザー加工のシミュレーションの課題」
2015 年
大道博行
大道博行
9月
EUV 光源とレーザー核融合、着火固体のブレークダウン
までのレーザープラズマのシミュレーション研究会

コンピュータプログラム登録…1 件
プログラム名
レーザー加工時の計算科学シミュレーションコード SPLICE

登録年月
担当者
2015 年 7 月
村松壽晴
競争的資金の獲得状況…2 件
資金の区分
件名および概要
実施期間
担当者
戦略的イノベーショ
革新的設計生産技術/「高付加価値設計・製造を実現する
H26 年度~
村松壽晴
ン創造プログラム/
レーザーコーティング技術の研究開発」
国立研究開発法人 新
超軽量極薄なのに従来より高強度、といった高機能を付加
エネルギー・産業技術
する技術レーザーコーティング」を確立すれば、柔軟でデ
H26 年度~
大道博行
総合開発機構(NEDO) ライト設計に対応することができる。レーザーコーティン
グは、従来困難であった材料・構造体への高機能・難加工
材料によるコーティングを実現し、モノづくりの概念を根
底から覆す高付加価値を付与し、軽い・薄い・(価格が)
安い・強い・省エネ・長寿命といったユーザーニーズに応
えるデライト設計ベースのものづくりに大きく貢献する。
戦略的イノベーショ
インフラ維持管理・更新・マネジメント技術/「レーザー
ン創造プログラム/
を活用した高性能・非破壊务化インフラ診断技術の研究開
国立研究開発法人 科
発」
学技術振興機構(JST) レーザーによる表面および内部診断計測技術を開発する。
表面形状計測では、周波数シフト帰還型レーザーを導入
し、また内部観測法では、これまでの機械的な打診にかわ
る 3 次元の高速内部状態計測技術を開発する。 これによ
り、トンネル表面の亀裂、ひび割れや内部欠陥の高速検出、
トンネル・橋梁等の変形を正確に把握するとともに、これ
らのデータを3次元イメージ化し、予測診断を含めた計画
的なインフラ保守保全に資する。
41

平成 27 年度共同研究リスト…8 件
共同研究先
件名および概要
公益財団法人若
「原子炉構造物を対象としたレーザー切断技術の確立に向け
狭湾エネルギー
た研究」
研究センター,
レーザー照射条件などをパラメータとした実験において、試験
株式会社レーザ
片レーザー切断時の空間温度分布、溶融金属排出挙動などの状
ックス
態量測定を行うとともに、アシストガス噴流の3次元流動状況
実施期間
担当者
H22 年度~
村松壽晴
H22 年度~
寺田隆哉
H24 年度~
中村将輝
H24 年度~
下村拓也
H25 年度~
村松壽晴
を実験的に評価し、ここでの結果を踏まえてドロス挙動に影響
を及ぼす因子などの定量評価を行う。
株式会社豊田中
「レーザー微細加工によるナノ構造の創製と応用」
央研究所
これまでに開発した配管内でのレーザー肉盛り溶接技術の実用
化のため、豊田中央研究所は適用先を調査し、原子力機構は適
用先に応じた装置、技術の高度化を実施する。それにより、原
子力機構はインフラ技術の発展に、豊田中央研究所は基盤産業
の競争力強化に寄与することを目的とする。
新日鐵住金株式
「レーザー切断時溶融金属流動挙動の現象論的把握に係わる
会社
研究」
レーザー切断時の溶融金属流動現象の可視化実験、溶融金属流
動現象の物理モデリングなどを通じ、レーザー切断条件最適化
ツールとして期待される数値解析技術の高度化を図る。
公益財団法人若
「レーザー除染に関する研究開発」
狭湾エネルギー
原子炉廃止措置研究開発センターの放射線管理区域内におい
研究センター
て、放射能に汚染された実機材を用いてレーザー除染機の性能
試験を実施し、除染計数、除染速度、2次汚染率、2次廃棄物
発生量などのデータを採取する。このデータをもとにレーザー
除染の実用化を目指した実機装置の設計及び企業化への障害条
件を整理して解決策の検討を行う。
公益財団法人若
「高出力レーザーを用いた材料加工技術等の高度化に関する
狭湾エネルギー
研究」
研究センター
高出力レーザーを用いたレーザー照射条件等をパラメータとし
た実験により、材料加工性能に及ぼすレーザー出力の影響やそ
の適切化条件を定量化するとともに、光温度計等を用いて加工
時過度温度特性等の定量評価を行う。また、数値解析により、
加工時複合物理過程の定量的検討を行う。遠隔操作・位置制御
技術についても検討を実施する。
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共同研究先
株式会社 NESI
件名および概要
「計算科学シミュレーションコードのユーザビリティ向上に
実施期間
担当者
H25 年度~
村松壽晴
H27 年度~
村松壽晴
H27 年度~
寺田隆哉
係わる研究」
複雑物理現象を取扱う計算科学シミュレーションコードの多
分野での解析に対応できるよう SPLICE コードの汎用性につい
て検討する。更に、次年度以降の共同研究内容の策定を行う。
古河電気工業株
「パルスレーザーを用いた材料加工技術等の高度化に関する
式会社
研究」
パルスレーザーを用いた材料加工技術等の高度化に向け、パル
スレーザー照射条件等をパラメータとした実験により、材料加
工性能に及ぼすレーザー照射条件の影響やそれらの適切化条
件を定量化するとともに、加工時複合物理過程の定量的検討を
行って、数値解析モデルの検討を行う。
株式会社ベスト
「配管内壁へのレーザー溶接補修、検査技術の高度化」
マテリア
これまでに開発した配管内でのレーザー肉盛り溶接技術の実
用化のため、ベストマテリアは適用先を調査し、原子力機構は
適用先に応じた装置、技術の高度化を実施する。これにより、
原子力機構はインフラ技術の発展に、ベストマテリアは基盤産
業の競争力強化に寄与することを目的とする。
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5 実験室整備状況
アトムプラザにレーザー実験室を開設してから6年が経過した。敦賀事業本部をはじめと
する原子力機構内外のご支援の下、毎年設備の整備・拡充を図ってきた。とりわけ、
(公財)
若狭湾エネルギー研究センターとの共同研究体制のもと、原子力廃止措置技術、産業利用
等への貢献を目指した高出力ファイバーレーザーによるプラント構造物の溶接・切断試験
を実施するエリアの整備も進んでいる。これら施設のご見学、試験的なご使用、さらに共
同研究などに幅広くご利用いただけることを願っている。
Ⅰ.高出力ファイバーレーザー・溶接・切断汎用実験室
Ⅱ.粒子画像流速測定システム
Ⅲ.フェムト秒レーザーシステム
Ⅳ.ピコ秒レーザー装置
Ⅴ.ナノ秒レーザー装置
Ⅵ.伝熱配管内壁レーザー溶接補修装置
Ⅶ.軟X線・紫外線分光・顕微鏡試験装置
Ⅷ.低侵襲レーザー治療器
レーザー共同研究所実験室
ォメーション
ーナー
所長室
産学連携
倉庫
軟X線・
低侵襲
紫外線分光・
レーザー
治療器 顕微鏡試験
装置
フェムト秒
ナノ秒レーザー
レーザーシステム
ファイバーレーザー
発振器
装置
粒子画像流速
実験室
入口
測定システム
伝熱配管内壁
レーザー溶接
会議室
技術相談
エリア
居室
実験室1
溶接・切断汎用実験室
書 庫
実験室3
【保守保全関連】
配管補修:伝熱管肉盛補修装置
FBG製作:フェムト秒レーザーシステム
/ピコ秒レーザー装置
分光分析:QスィッチNd:YAGレーザー装置
30kWレーザー試験ブース
高出力ファイバーレーザー・
補修装置
装置
実験室4
アトムプラザ
玄関
ピコ秒
レーザー
実験室2
6kWレーザー試験ブース
【溶接・切断関連】
PIV:ダブルパルスNd:YAGレーザー装置
レーザー源:6kWファイバーレーザー/30kWファイバーレーザー
加工室:溶接・切断加工実験ブース
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Ⅰ.高出力ファイバーレーザー・溶接・切断汎用実験室
本研究エリアは、(公財)若狭湾エネルギー研究センターとの共同研究の取組みの下で、
レーザー装置等を共同利用している。レーザー切断は切断速度が速く、切断幅が狭いこと
から、工期の短縮化が望めるとともに二次廃棄物発生量が尐ないため、原子力施設の解体
作業へ適用する有力な工法の一つである。原子炉施設の水中厚板切断現象解明を目指し、
アシストガス噴流の高精度実験や気中・水中切断実験装置を設置する。また、熱影響部が
狭く、キーホールによる深溶込みが得られる特徴を活かした、レーザーによる同材・異材
溶接の試験も可能である。
45
Ⅱ.粒子画像流速測定システム
粒子画像流速測定(Particle Image Velocimetry:PIV)装置は、流れ場にトレーサ粒子
を注入し、粒子の運動が局所的な流体運動と同一であると仮定して、流体の速度場を計測
するシステムである。同システムは、光源としてレーザー発振器を2台備えたダブルパル
スNd:YAGレーザーを用いており、非常に短い時間間隔で流れ場を照らすことで粒子
の動きを捉えることができ、高速な流れの計測も可能となる。現在、PIVシステムを利
用してレーザー切断時に、溶融金属を排出するアシストガス噴流の流動特性を定量的に調
べている。
試験流路
アシストガス
ノズル
PIV により得られたアシストガス
噴流の速度分布
高速度カメラ
≪用途≫
PIV、レーザー切断時のアシストガス噴流特性の定量化に関する技術開発
≪構成≫
○ダブルパルスNd:YAGレーザー
波長:532nm,出力:50mJ/pulse,発振周波数:20Hz パルス幅:6~8ns
○高速度カメラ
フレームレート:3600fps@1024×1024pixels (最大 50000fps)
撮像素子:CMOS イメージングセンサ
46
Ⅲ.フェムト秒レーザーシステム
フェムト秒レーザーをはじめとする超短パルスレーザーは理科学分野での利用が主であ
るが、近年では材料を非加熱で加工できるという特徴などからシリコンウエハやサファイ
ア基盤のダイシングを目的とした専用レーザー加工機が市販されている。しかし、その産
業分野への応用は未だ開拓途上である。
当研究所で有するフェムト秒レーザーシステムは、元々理科学実験に用いられていた一
世代前の構成の装置群ではあるが、その一方で構造が判りやすく用途に応じて手を加えや
すいといったメリットもある。超短パルスレーザーを用いた基礎的なレーザー照射試験へ
の利用を主目的としつつも、学生の実習などにも積極的に活用されている。
局所空調機
パルス圧縮器
増幅器
パルス伸張器
発振器
フェムト秒レーザーシステム
精密加工テーブル
≪用途≫
レーザー光による非加熱加工や透明物質内部への加工に関する技術開発
≪構成≫
○フェムト秒レーザーシステム
中心波長:790nm,パルス幅:150fs,出力:5mJ,繰返し動作:10Hz
○加工ステージ
共焦点顕微鏡と 2 軸の直進ステージを組み合わせた精密加工ステージ
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Ⅳ.ピコ秒レーザー装置
一般にレーザーによる加工が加熱であるか非加熱であるかのパルス幅の目安は 20 ピコ
秒程度であるとされているが、近年では装置の小型化が進み、パルス伸張器や圧縮器など
を用いない単純な構造で、かつ非加熱加工が可能なレーザー光源として、10 ピコ秒前後の
パルス幅のレーザー発振器・加工機が様々なメーカーから発売されている。
当研究所では、フェムト秒レーザーシステムを用いて開発が進められた耐熱 FBG センサ
の性能を向上させ、さらに実用化や応用展開の各種試験にセンサを安定供給できるような
量産体制を確立するために、光ファイバー加工専用のピコ秒レーザー装置と高速位置決め
ステージを平成 26 年度に新たに導入し、これらを整備した。
制御用機材・モニター
クリーンブース付除振台
ピコ秒レーザー装置
光ファイバー加工用ステージ
≪用途≫
光ファイバーへのFBG加工に関する技術開発
≪構成≫
○ピコ秒レーザー
波長:1031nm,パルス幅:3ps,出力:平均 5W,繰返し動作:100~300kHz
○加工ステージ
共焦点顕微鏡と高速直進ステージを組み合わせた光ファイバー加工用ステージ
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Ⅴ.ナノ秒レーザー装置
Qスウィッチ発振方式の Nd:YAG レーザーは、パルスレーザーの代表格として産業分野で
も幅広く使われており、金属材料への精密穴あけ加工の他、金属表面に応力腐食割れ防止
効果を付加するレーザーピーニングと呼ばれる表面改質加工などにも役立てられている。
当研究所では、近赤外波長の基本波と可視波長の第二高調波の2波長のレーザー光を出
力可能な Nd:YAG レーザーに加え、ミラー・レンズなどの各種光学機器や位置決めステージ、
光ファイバーとのカップリング装置などを組み合わせることにより、ナノ秒のレーザーパ
ルスを使った精密加工やプラズマ分光分析に関する技術開発などを行っている。
出力調整・集光用光学機器
ナノ秒レーザー装置
光学定盤
光ファイバーカップリング装置
≪用途≫
精密加工,プラズマ分光分析に関する技術開発
≪構成≫
○ナノ秒レーザー
波長:基本波 1064nm/第二高調波 532nm,パルス幅:6ns,
出力:基本波 270mJ/第二高調波 130mJ,繰返し動作:10Hz
○光ファイバーカップリング装置 ○位置決めステージ
○出力調整用や集光用の各種光学機器
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Ⅵ.伝熱配管内壁レーザー溶接補修装置
レーザー加工機は機械製作の分野で幅広く使われているが、ここに紹介する伝熱配管内
壁レーザー溶接補修装置は、全く新しい利用法を開拓するものである。即ち、伝熱管に挿
入し、内部を観察しながら、レーザー溶接で損傷箇所を補修する装置である。レーザーの
発振モードの選択によって、配管減肉に対する肉盛り溶接や配管内壁からの突合せ溶接が
可能となる。
ワイヤ送給装置
レーザートーチ
複合型光ファイバ
手動による肉盛り溶接の様子
カップリング装置
肉盛り層
照射スポット
溶接ワイヤ
ファイバーレーザー
1mm
複合型光ファイバーによる溶接中の観察像
≪用途≫
金属その他配管の溶接補修、突合せ溶接等に関する技術開発
≪構成≫
○ファイバーレーザー
1)YLR-300-AC:波長 1,070nm,CW,出力 300W
2)YLR-150/1500/QCW:波長 1,070nm,パルス/CW,パルス幅 0.2-50ms,
出力 150W/250W(CW)
○カップリング装置:1kW まで導光可能、CCD カメラによる観察
○複合型光ファイバ:(コアファイバ)Φ0.2mm,(画像伝送ファイバ)約 20,000 本
○レーザートーチ:Φ15mm,長さ 120mm,ガスの噴射が可能
○ワイヤ送給装置:Φ0.4mm,ワイヤ使用,送給速度 0.5-20mm/s
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Ⅶ.軟X線・紫外線分光・顕微鏡試験装置
真空紫外域での分光器や軟X線領域での分光器が取り付けられているので、これらの波
長域での吸収特性の測定に使用することができる。真空紫外線による厚さ 8mm のナトリウ
ムの透過に成功した。
厚さ 8mm の
ナトリウム透過画像
1m
赤血球(直径 7μm)の
観察像例
≪用途≫
紫外線の金属ナトリウム中透過に関する基礎・応用研究開発等
≪構成≫
○軟X線顕微鏡
使用波長:20nm,4nm,光学系:シュバルトシルト,XY 方向への分解能:100nm,
Z 方向への分解能:30nm,観察領域:1mm×1mm,
撮像範囲:40×40μm~200×200μm,撮影時間:30μs/フレーム
○軟X線,紫外線分光装置
主真空容器:内径 560mm,真空紫外分光器:波長 100nm~300nm,
軟X線分光器:波長 0.5nm~5nm,5nm~30nm
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Ⅷ.低侵襲レーザー治療器
○胎児外科治療装置
止血を必要とする血管(双胎間輸血症候群の場合など)に対して、非接触で内視鏡的レ
ーザー照射を行い、同時にレーザードップラー血流計測による止血の定量的評価が可能で
ある。
レーザー源
カップリング装置
モニタ
≪用途≫
複合型光ファイバーを用いた、画像を診な
がら患部へレーザーを照射する研究開発
≪構成≫
照明用光源
・ファイバーレーザー:YLR-50-SMLP
波長 1,070nm,CW,出力 50W
・血流計測器
複合型光ファイバー
・カップリング装置:一定照射出力の制御
○膵臓内観察装置
膵臓などのX線レントゲンでは診断が困難な臓器に対して、低侵襲で観察を行い患者の
確定診断に使用することが可能である。極細径のファイバースコープを使用しているため、
十二指腸乳頭部を傷つけることなく診断することができる。
イメージファイバースコープの仕様
医療用液晶モニタ
Φ0.8mm
外観
Φ1.1mm
録画装置
端面
画像装置
全長 4.5m
先 端
≪用途≫
光ファイバーを膵臓等の内部に低侵襲で挿入し、
患部を観察する研究開発
≪構成≫
無停電電源装置
・無停電電源装置搭載
・画像観測装置
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国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構
敦賀連携推進センター レーザー共同研究所
〒914-8585 福井県敦賀市木崎 65 号 20 番地
電話番号(研究所代表番号)
:0770-21-5050
ホームページ:http://www.jaea.go.jp/04/turuga/laser/index.html
2015 年 11 月 26 日 木曜日
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