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知財ニュース ランドローバー社とチェリー社間の中国商標「陸虎」に係る

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知財ニュース ランドローバー社とチェリー社間の中国商標「陸虎」に係る
LINDA LIU GROUP
第59号
2012年3月
■
目次
◆ 知財ニュース
◆ ランドローバー社とチェリー社間の中国商標「陸虎」に係る紛争事件
知財ニュース
国家知識産権局令
(第63号)
『特許標識表記弁法』が国家知識産権局の局務会議にて採決されたため、ここに公布し、2012年5月1
日より施行するものとする。
局長 田 力普
2012年3月8日
特許標識表記弁法
第 1 条 特 許 標 識 の 表 記 方 式 を 規 範 化 し、正 常 な 市 場 経 済 秩 序 を 維 持 す る た め、『中 華 人 民 共 和 国 特
許法』(以下、特許法という)及び『中華人民共和国特許法実施細則』の関係規定に基づいて、本弁法を制
定する。
第2条 特許標識を表記するにあたり、本弁法にしたがって表記しなければならない。
第3条 特許事務管理部門は、その行政区域における特許標識の表記行為の監督管理を担当する。
第 4 条 特 許 権 付 与 後 の 特 許 権 の 存 続 期 間 内 に、特 許 権 者 又 は そ の 同 意 を 得 て 特 許 標 識 を 表 記 す る
権利を享有する被許可 者は、特許製品、特許方法によって直接得られた製品、その製品の包装又はその
製品の取扱説明書などの上に特許標識を表記することができる。
第5条 特許標識を表記するにあたり、次の内容を明記しなければならない。
(1)例えば、中国発明特許、中国実用新案特許、中国意匠特許など中国語で表記されている特許権の
種類。
(2)国家知識産権局によって権利付与された特許権の特許番号。
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上記内容以外に、その他の文字や図形標識を 表記してもよい。ただ
し、そ の 文 字、図 形 標 識 及 び そ の 表 記 方 法 が 公 衆 に 誤 解 を も た ら す も
のであってはならない。
第 6 条 特 許 方 法 に よ っ て 直 接 得 ら れ た 製 品、そ の 製 品 の 包 装 又 は
そ の 製 品 の 取 扱 説 明 書 な ど の 上 に 特 許 標 識 を 表 記 す る に あ た り、中
国 語 で そ の製 品 が 特 許方 法 に よ って 直 接 得 られ た も の であ る と 明 記し
なければならない。
第 7 条 特 許 権 付 与 前 に 製 品、そ の 製 品 の 包 装 又 は そ の 製 品 の 取
扱 説 明 書 な ど の 上 に 表 記 す る に あ た り、中 国 語 で 中 国 特 許 出 願 の 種
類、特 許 出 願 番 号 を 表 記 し、か つ「特 許 出 願 中、未 登 録」の 文 字 を 明
記しなければならない。
第 8 条 特 許 標 識 の 表 記 が 本 弁 法 第 5 条、第 6 条 又 は 第 7 条 の 規 定
に合致しない場合、特許事務管理部門は是正するよう命じる。
特許標識の 表記が適切 でなく、特許詐称行為 になる場合、特許事務 管理部門は 特許法第 63条の規 定
にしたがって処罰する。
第9条 本弁法は、国家知識産権局が解釈について責任を負う。
第 10 条 本 弁 法 は 2012 年 5 月 1 日 よ り 施 行 す る も の と す る。2003 年 5 月 30 日 に 国 家 知 識 産 権 局 令 第
29号により発布した『特許表記及び特許番号表記方法に関する規定』は同時に廃止する。
ソース:中国知識産権局
北京市高等裁判所 典型的な知的財産権10大判例を発表
北 京 市 高 等 裁 判 所 は 先 ご ろ、2011 年 北 京 市 に お け る 典 型 的 で 最 も 影 響 力 の あ る 知 的 財 産 権 10 大 判
例 を 発 表 し た。同 裁 判 所 知 的 財 産 権 庭 の 関 係 責 任 者 は、「今 回 発 表 し た 10 大 判 例 は、2011 年 に 北 京 市
各級裁 判所 が終審 判決 を下した知 的財産 権事 件から選ば れたものです。そのうち著作 権に関する もの は
5 件 と、文 化 産 業 の 急 速 な 発 展 に 伴 っ て 著 作 権 に 関 す る 紛 争 も 増 加 の 一 途 で あ り、新 た な 問 題 が 相 継 い
で 出 現 し、特 に 社 会 的 影 響 力 の 大 き か っ た 事 件 は 広 く 注 目 を 集 め ま し た。そ し て、残 り の 5 件 は、イ ン タ ー
ネ ッ ト に 直 接 的、間 接 的 に 係 る も の で、ネ ッ ト 産 業、ネ ッ ト 技 術 の 発 展 が 知 的 財 産 権 の 保 護 に 抜 本 的 な 影
響を与えたことがわかります」と述べた。
調 査 に よ る と、2011 年北 京 市 裁 判 所 に お け る 知 的 財 産 権 事 件 の 増 加 は、留 ま ると こ ろ を 知 ら な い 勢 い
である。昨 年1年の知 的財産権 事 件の新規 受 理件数は 約 9,600件で、前年比で 8.2%増え、うち著作 権に
関 す るも のは 約 6,100件 で、約63.2%を 占 めた。また、受 理 した 各種 事 件の 中で、ネ ット メ デ ィ ア に 係る 事
件 は、増 加 ス ピ ー ド が 最 も 速 く、新 奇 な 種 類 や 複 雑 な 内 容 の 事 件 も 多 く、社 会 的 影 響 力 も 大 き い な ど の 特
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徴を有していた。
判例1 プライバシーセキュリティツール「 360プライバシー保護器」不正競争事件
【事件の内容】
プライバシーセキュリティツール「360プライバシー保護器」は、奇智ソフトウェア(北京)有限公司によっ
て 開 発 さ れ、北 京 奇 虎科 技 有 限 公 司(Qihoo 360 Technology Co. Ltd.)(以下、奇 虎 360 と い う)を 通
して情報提供した「360安全センター」が発表したものである。同セキュリティツールは、 QQソフトだけを目
標 対 象 と し て 監 視 す る も の で あ る。こ れ に 対 し て、テ ン セ ン ト は、奇 虎 360 は 事 実 を 捏 造 し、明 ら か に 不 正
競争を引き起こすもので、同社の営業上の信用と名誉を損なう営業誹謗行為であると訴えた。
裁 判 所 は 審 理 を 経 て、「こ の 事 件 に お い て、原 告 側 と 被 告 側 は 競 争 関 係 を 有 し、『 360 プ ラ イ バ シ ー 保
護 器』に よ っ て 監 視 し た 結 果 の 評 価 は 客 観 的 に 公 正 な も の で は な く、ユ ー ザ ー を 不 合 理 な 方 向 へ 十 分 誘
導 で き、QQ ソ フ ト の 商品 名 誉 と 営業 上 の 信 用を 貶 め た」と し て、被告 側 に 権 利 侵 害 を 停 止し、信 用 を 回 復
さ せ る た め 謝 罪 広 告 を 発 表 し、損 害 賠 償 金 40 万 元 を 支 払 う 判 決 を 言 い 渡 し た。(詳 細 に つ い て は、2010
年11月17日第8版の報道をご参照下さい)
【事件の分析】
当該事件においては、不正競争防止法によって、業務の異なるネットワークプロバイダーの競争関係を
ど の よ う に 認 定 す る か、そ し て IT 業 界 の 規 則 が ま だ 完 備 さ れ て い な い 状 況 下 に お い て、不 正 競 争 防 止 法
の 限 界 を ど の よ う に 定 め る か と い う こ と が、重 要 な ポ イ ン ト と な っ た。当 該 事 件 の 判 決 は、中国 の 数 億 と い
わ れ る ネ ッ ト ユ ー ザ ー の 身 近 な 利 益 に 関 わ る た め、多 く の 反 響 を 呼 ん で、「3Q」大 戦 と 呼 ば れ た。当 該 事
件の判決を通して、ネット 業界の不正競争行為の認定と業界の競争行為を是正するという面において、裁
判所は方向性を示し、ネット業界の健全で秩序正しい発展に大きな影響を及ぼした。
判例2 詩「見与不見」の著作権侵害事件
【事件の内容】
「班 紮 古 魯 白 瑪 的 沈 黙」と い う 詩 は、原 告 で あ る 談 笑 靖 の 作 品 で、本 人 の ブ ロ グ で 発 表 さ れ た も の で あ
る。2008 年 10 月、談 笑 靖 が 著 作 権 を 主 張 す る 著 作 物 と、一 文 字 だ け が 意 味 の 類 似 す る 他 の 言 葉 に 変 え
られた「見与不見」」という詩が「読者」という雑誌に、倉央嘉措を作者として掲載された。さらに、 2010 年8
月、同作品が、被告である珠海出版社が出版した「那一天那一月那一年」という本に収められた。
裁判所は審理を経て、「ブログに発表された ものも知的成果であり、談笑靖女史はこの事件に係る著作
物 の 著作 権者 で あ る。『那 一 天那 一月 那 一 年』は、倉 央嘉措 氏 の生 涯と 作 品を 紹介 す るこ とを 主な 内 容と
する書籍で、『見与不見』は重要な位置を占 めず、且つ著作者の異 議に関する 声明も出した」として、珠海
出 版 社 が 故 意 に 侵 害 を し た 可 能 性 は 低 く、且 つ 審 査 に お い て も 注 意 義 務 を 果 た し た。こ れ に よ っ て、被 告
側に侵害行為を停止する判決を言い渡した。(詳細については、 2011年11月9日第11版の報道をご参照
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下さい)
【事件の分析】
ブ ロ グ は、伝 統 的 で 固 定 さ れ た 創 作 媒 体 と 比 べ る と、ネ ッ ト 技 術 を 駆 使 す る 斬 新 な 著 作 物 の 創 作 形 式
で、創作した著作物を広める新しいルートであるといえる。そのため、ネット上の著作物も著作権法に規定
さ れ る 創 作 性 な ど さ え 満 た し て い れ ば、認 可 さ れ、保 護 さ れ る べ き で あ る。当 該 事 件 は、理 論 的 に 知 的 財
産 権 の 権 利 者 を 保 護 す る 原 則 を 徹 底 し た だ け で は な く、実 践 面 で は、技 術 コ ン サ ル テ ィ ン グ、実 地 調 査、
実物の 電子 証拠 によ って互い に裏 付け られる などの効 果 的な調 査方 法も活用し、ネットの 仮 想性や ネット
情報が簡単に変更されるなどの障害を取り除き、社会利益の均衡を多方面から保った。
判例3 無形文化財「安順地劇」著作権事件
【事件の内容】
地 方 演 劇「安 順 地 劇」は 2006 年 6 月、国 務 院 に よ っ て 国 家 級 の 無 形 文 化 財 に 登 録 さ れ た。張 芸 謀 監 督
の 映 画『単 騎、千 里 を 走 る。』に も「安 順 地 劇」を 演 じ る シ ー ン が あ り、映 画 で は「雲 南 面 具 戯」と 呼 ば れ て
い た。原 告 で あ る 貴 州 省 安 順 市 文 化・体 育 局 は、張 芸 謀 な ど の 被 告 を「安 順 地 劇」を 歪 曲 し、氏 名 表 示 権
を侵害したとして訴えた。
裁 判 所 は 審 理 を 経 て、「張 芸 謀 な ど の 被 告 が『安 順 地 劇』を 文 芸 創 作 の 素 材 と し て 映 画『単 騎、千 里 を
走 る。』に 投 入 し た こ と は、映 画 創 作 の 一 般 的 な 手 段 で あ り、無 形 文 化 財 を 侵 害 し よ う と い う 故 意 も 過 失 も
な く、『安 順 地 劇』に 対 し て、法 律 で 禁 じ ら れ て い る 歪 曲、誹 謗 或 い は 関 係 公 衆 の 混 同、誤 認 を 招 く な ど の
マ イ ナ ス 影 響 を 与 え な か っ た」と し て、原 告 の 訴 訟 請 求 を 却 下 し た。(詳 細 に つ い て は、 2011 年 5 月 25 日
第9版の報道をご参照下さい)
【事件の分析】
当 該 事 件 は、無 形 文 化 財 と 民 間 文 芸 を ど の よ う に 司 法 保 護 す る か と い う 問 題 に 関 わ っ て お り、中 国 知
的財産権保護の新しい分野であるといえ
る。無 形 文化 財 に 対 す る 知 的 財 産権 保 護
に つ い て か な り 議 論 さ れ て い る が、当 該
事 件 は、無 形 文 化 財 を 司 法 保 護 す る た め
の 訴 訟 主 体、氏 名 表 示 権 及 び 侵 害 認 定
な ど の 面 に お い て、有 益 な 考 察 を 推 し 進
め、関 連 法 律 を 整 え、法 律 執 行 の レ ベ ル
を高めることに大きな役割を果たしたとい
える。
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判例4 「如意」たいまつのガスタンク・バルブ実用新案侵害事件
【事件の内容】
原告である北京動力機械研究所は、実用新案「リムーバブル・バルブ」の実用新案権者である。当該実
用 新 案 は、北 京 オ リ ン ピ ッ ク 聖 火 リ レ ー の た い ま つ「祥 雲」の 関 連 技 術 の 1 つ で あ る。ま た、被 告 で あ る 中
山 華 帝 燃 具 株 式 会 社 は、第 11 回 中 国 全 国 運 動 会 の 聖 火 リ レ ー の た い ま つ「如 意」の サ プ ラ イ ヤ ー で あ
る。原 告 は、「如 意」の た い ま つ 内 部 の 燃 焼 シ ス テ ム に 用 い ら れ て い る ガ ス タ ン ク・バ ル ブ が、同 社 の 実 用
新案権を侵害したと、被告を訴えた。
裁判所は技術対比を行い、審理を経て、「リムーバブル・バルブについては、実用新案主題の修飾用語
に対して本件実用新案権の権利範囲に入っていると認定できる。侵害物件には、バルブコアにおいて、直
孔 端 を 有 す る 頂 部 と 道 具 溝 の 間 に 案 内 斜 溝 を 設 置 し、こ の 案 内 斜 溝 と い う 構 成 要 件 に よ っ て ほ か の 技 術
的 効 果 が 生 じ た が、本 実 用 新 案 の『バ ル ブ コ ア は 直 孔 端 を 有 す る 頂 部 と 道 具 溝 の 底 部 を 有 し』と い う 必 須
要件が 侵害 物件 に利 用 されたこ と を否定できない」として、侵害物件 は実用 新案 権の権 利範 囲に入り、権
利侵害になる。よって、被告に侵害の差止め、損害賠償と合理的な支出 5万元の支払いを命じる判決を言
い渡した。
【事件の分析】
当該事件は、北京オリンピックの聖火リレーのたいまつ「祥雲」の関連技術をどのように保護するかとい
うことに係わるもので、多くの反響を呼んだ。発明の名称における修飾するための形容詞は発明を限定 す
る 構 成 要 件 に あ た る か、ま た、争 点 と な る 構 成 要 件 が 特 別 な 技 術 的 効 果 を 生 ず る 付 加 要 件 と 入 り 交 じ る
場 合、特 許 侵 害 を ど の よ う に 認 定 す る か と い う こ と は、特 許 権 侵 害 の 認 定 に 関 す る 新 た な 問 題 で あ る。こ
の事件の判決は、社会的にも法律面でも新たな一歩を踏み出したと言える。
判例5 バイドゥ( Baidu) MP3サーチエンジン公衆送信権事件
【事件の内容】
ユニバーサル社、ワーナー・ブラザーズ・エンターテインメント社及びソニーは、自社がレコード製作者の権利
を有する楽曲128曲がバ イ ド ゥ MP3 の サ ー チ ボ ッ ク ス、歌 リ ス ト な ど に リ ン ク さ れ、無 料 で 聞 い た り ダ ウ ン
ロ ー ド し た り す る サ ー ビ ス が 提 供 さ れ て い る の を 発 見 し た。同 三 社 は、「バ イ ド ゥ の 行 為 は、自 社 の 録 音 製
品に対する公衆送信権を侵害した」とバイドゥを訴えた。
一 審 裁判 所は 審 理を 経て、「バ イ ドゥ は、ネ ット ユ ー ザ ー の要 求 に従 って サー チ を 行 い、一 時的 にリ ン ク
をはっているものである。この種のサービス技術、自発性と受動性などの性質からみると、バイドゥがその
能力に相当 するだけの注意を払ったとしても、そのサービスに関する 情報が権利侵害にあた るかどうかを
認 定 す る こ と が で き な い」と し て、バ イ ド ゥ は、 同 三 社 の 公 衆 送 信 権 を 侵 害 し て い な い と い う 判 決 を 言 い 渡
した。
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そ れ に 対 し て、原 告 は 判 決 を 不 服 と し て、上 訴 し た。二 審 合 議 体 は、事 実 を 究 明 し た う え、中 国 イ ン
タ ー ネ ッ ト 協 会 仲 裁 セ ン タ ー の 協 力 の も と で、数 回 に わ た り 仲 裁 し た。そ の 結 果、双 方 は 著 作 権 許 諾 契 約
を 結 ん だ 上 で、紛 争 に 対 し て、6300 万 元 あ ま り で 和 解 に 達 し た。(詳 細 に つ い て は、 2011 年 7 月 29 日 第
11版の報道をご参照下さい)
【事件の分析】
当 該 案 件 で は、和 解 の 達 成 に よ っ て、
巨額の対価に係わる紛争が妥当に解決
さ れ た と い う だ け で は な く、権 利 者 と 著 作
物の利用者との間に長期にわたる協力
関 係 を 築 き、「ネ ッ ト 上 海 賊 版」の 伝 播 を
効 果 的 に コ ン ト ロ ー ル し、権 利 者 の 権 益
を 根 本 的 に守 り、創 作の 積 極 性 を 喚 起 す
る こ と に も プ ラ ス 面 の 影 響 を 及 ぼ し た。そ
れ と と も に、ネ ッ ト ユ ー ザ ー は 正 規 版 の
音 楽 を 楽 し み、権 利 者 と 一 般 公 衆 の 利 益 の 均 衡 化 を 実 現 す る こ と も で き、文 化 産 業 の 発 展 を 守 る 司 法 の
重要な役割を体現した。
判例6 ソーシャルネットワーキングサイト「開心網」商標権侵害及び不正競争事件
【事件の内容】
北京開心人信息技術有限公司(以下、開 心 社 と い う)は、第 42 類 の レ ス ト ラ ン に お け る 飲 食 物 及 び ホ テ ル
に お け る 宿 泊 施 設 の 提 供 を 指 定 役 務 と す る「開 心」商 標 を 有 し、ソ ー シ ャ ル ネ ッ ト ワ ー キ ン グ サ イ ト「開 心
網」(kaixin001.com)を 運営し て い る。ま た、千 橡 互 聯 公 司 と 千 橡 網 景 公 司 も ソ ー シ ャ ル ネ ッ ト ワ ー キ ン
グ サ イト「開心 網」(kaixin.com)を 運 営 して いた。そ のた め、開 心社は、千橡 互聯 公 司と 千橡 網 景公 司が
自社の商標権を侵害するとともに、不正競争にもなると訴えた。
裁判所は審理を経て、「『開心網』の提供するサービスは「開心」商標の指定役務とは同一も類似もしな
い た め、開 心 社 の 商 標 権 を 侵 害 す る と は い え な い。ま た、開 心 社 の『開 心 網』(kaixin001.com)の ソ ー
シ ャ ル ネ ッ ト ワ ー キ ン グ サ ー ビ ス は、2008 年 3 月 か ら 短 期 間 で 一 躍 有 名 に な り、『開 心 網』の 名 称 は 著 名
役 務 の特 有名 称 に な った。千橡 互聯 公 司が 著名 役 務の 特有 名 称を 自社 の サイ ト 名 称 に 使って、同 じ分野
と 業 界 に ソ ー シ ャ ル ネ ッ ト ワ ー キ ン グ サ ー ビ ス を 提 供 し た こ と は ネ ッ ト ユ ー ザ ー を 混 同 さ せ、不 正 競 争 に な
る」と し て、千 橡 互 聯 公 司 に 対 し て、原 告 の 特 有 名 称『開 心 網』と 同 一 又 は 類 似 の 名 称 の 使 用 を 差 止 め、
損害賠償金40万元を支払う判決を 言い渡した 。(詳細については、2011年2月25日第11版の報道をご参
照下さい)
【事件の分析】
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当該事 件は「ソーシャル ネット ワー キングサイ ト 競争 にお ける第 一号 事件」と称 された。知名度を有す る
ソ ー シ ャ ル ネ ッ ト ワ ー キ ン グ サ イ ト が 著 名 役 務 と な り、サ イ ト 名 称 が 著 名 役 務 の 特 有 名 称 と し て 不 正 競 争
防 止 法 に よ っ て 保 護 さ れ る 原 則 は、当 該 事 件 に よ っ て 確 立 さ れ た。当 該 事 件 の 判 決 に よ っ て、ソ ー シ ャ ル
ネットワー キングサイ トの競争秩序が是正され、インターネット業 界の競争制 度における 空白を埋めるとと
も に、ネ ッ ト 運 営 者 に 模 範 が 示 さ れ た。さ ら に、イ ン タ ー ネ ッ ト 業 界 の 合 法、公 平 競 争 を 促 進 す る 法 律 効 果
と社会効果を共に達成することもできた。
事例7 フォントソフト「方正倩体」をめぐる著作権侵害事件
【事件の内容】
原 告 で あ る 北 大 方 正 電 子 公 司 は、フ ォ ン ト ソ フ ト「方 正 倩 体」の 著 作 権 者 で あ る。 2008 年、被 告 で あ る
P&G 広 州 が 製 造 し、カ ル フ ー ル 北 京 公 司 が 販 売 す る シ ャ ン プ ー、石 鹸、生 理 用 ナ プ キ ン な ど、67 種 類 の
製品が侵害物件とされ、そのうち、フォントが倩体の「 飘柔」が使用された24種類の製品について、原告は
著作権侵害として裁判所に訴えた。
裁 判 所 は 審 理 を 経 て、「侵 害 物 件 に 使 用 さ れ た『飘 柔』は、NICE 公 司 が P&G 広 州 の 委 託 を 受 け、『 正
規版』の方正倩体フォントソフトを使って設計したものである。 NICE公司が北大方正電子公司から方正倩
体 フ ォ ン ト ソ フ ト を 購 入 し、正 規 の 方 法 で 使 用 し た 行 為 に 対 し て は、北 大 方 正 電 子 公 司 に よ る 黙 示 の 許 諾
があるとみ なすことが できる。北 大方正 電子 公司か らは っきり と制 限がされていない 場合、 NICE公司は、
倩体フォン トソフトを使用してその 中の文字で広告デザイ ンを行う権 利があり、そのデザイン成果の複 製、
発 行 を P&G 広 州 及 び カ ル フ ー ル に 許 諾 す る こ と が で き る は ず で あ る。そ の た め、 P&G 広 州 及 び カ ル フ ー
ル に よ る 複 製、発 行 は 北 大 方 正 電 子 公 司 に 許 諾 さ れ た と み な さ れ る の で、著 作 権 侵 害 に な ら な い」と し
て、北 大 方 正 電 子 公 司 の 訴 訟 請 求 を 却 下 し た。(詳 細 に つ い て は、2011 年 4 月 20 日 第 8 版 の 報 道 を ご 参
照下さい)
【事件の分析】
当 該 事 件 は、「フ ォ ン ト ソ フ ト」に 係 る 著 作 権 保 護 に 関 す る 典 型 的 な 判 例 で、現 在 中 国 に お け る 知 的 財
産 権 保 護 の 中 で も 非 常 に 難 し い 問 題 の 一 つ で あ る と い え る。フ ォ ン ト ソ フ ト の 中 の 文 字 を ビ ジ ネ ス に 利 用
す る こ と が 著 作 権 侵 害 に な る か ど う か と い う こ と は、侵 害 認 定 の 要 件 を 含 め て 全 面 的 に 考 慮 し な く て は な
ら な い こ と で あ る。し た が っ て、「フ ォ ン ト ソ フ ト」の 著 作 権 の 保 護 は、権 利 者 の 正 当 な 利 益 を 保 護 す る だ け
で な く、漢 字 に 関 す る 言 語 文 化 の 伝 播 や 一 般 公 衆 の 自 由 を 求 め る 選 択 な ど の 社 会 の 基 本 的 な 利 益 の 保
護にも係わってくる問題である。
判例8 「中超」商標審決取消請求事件
【事件の内容】
第 3383774 号 異 議 申 立 商 標 は、第 33 類 の 果 実 酒(ア ル コ ー ル 分 を 含 む)を 指 定 商 品 と す る も の で、商
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標 権 者 は 周 軍 氏 で あ る。原 告 で あ る 中 国 サ ッ カ ー 協 会 は、中 国 国 家 工 商 行 政 管 理 総 局 商 標 局 に 異 議 申
立 を し た。商 標 局 及 び 商 標 審 判 委 員 会 は、審 査 を 経 て、周 軍 氏 に よ っ て 自 分 の 先 使 用 に よ る 著 名 商 標
「中 超」を 模倣 さ れ、先取 り 出 願 され た と い う 中 国 サ ッ カ ー 協 会 の 主張 は、証 拠不 十 分 と し て、異 議 申立 商
標を登録した。これに対して、原告は審決取消訴訟を提起した。
裁 判 所 は 審理 を 経 て、「原 告 の 長 期間 に わ た る使 用 と 広 範な 宣 伝 活 動に よ っ て、『中 超』商 標は 高 い 知
名 度 と 商 業 的 価 値 を 持 っ て い る。大 手 マ ス メ デ ィ ア に よ っ て 行 わ れ た 宣 伝 に よ っ て、『中 超』と 中 国 サ ッ
カー協会とは、唯一の対応関係を 持つという意識を関係公衆に植えつけた。そ のため、周軍氏の出願した
『中超』商標は、中国サッカー協会が商品の出所、或いは両者の間に関連があるかのごとく関係公衆に混
同を生じさせて、関係公衆は商品の出所を誤認してしまい、損害を受ける場合がある」として、商標審判委
員会の審決が取消され、新たに判決を下した。(詳細については、 2011年7月20日第8版の報道をご参照
下さい)
【事件の分析】
当 該 事 件に係 る『中 超』商 標 は、「中 国 サ ッカ ー 協 会超 級リ ー グ」という 中 国 最大の 競 技大 会に 関 わ り、
影 響 力 が 非 常 に 大 き い も の で あ る。商 標
法 は、出 所 識 別 機 能 を 確 定 す る も の で、
生産経営者の利益を保護するばかり でな
く消費者の利益も保護するものである。し
た が っ て、あ る 商 標 に つ い て、市 場 経 済
の発展の過程において、すでに唯一の出
所 と 関 係 付 け が さ れ た 場 合、ほ か の 出 願
人 に 商 標 権 を 付 与 す べ き で は な い。こ れ
に 反 す る と、商 標 の 保 証 す る 信 用 と 独 占
的 商 標 権 の 持 ち 主 が 一 致 し な く な り、商 品 の 出 所 に つ い て 関 係 公 衆 に 誤 認、混 同 を 生 じ さ せ る こ と に な
る。
判例9 「鳥の巣」花火をめぐる著作権侵害事件
【事件の内容】
「国家体育場模型(The Model of National Stadium)」、「国家体育場夜景図(一)、(二)」の著作権
者は北京国家体育場である。侵害物件「盛放鳥の巣」という名の花火は、熊猫花火グールプの監督の下、
浏 陽 熊 猫 公 司 が 製 造 し、北 京 熊 猫 公 司 が 販 売 し た も の で あ る。ま た、そ の 設 計 は、中 国 香 港 新 興 公 司 が
担当し、浏陽熊猫公司に譲渡されたものである。
裁 判 所は 審理 を 経 て、「国 家 体育 場は、『著 作権 法 実施 条例』に 規定さ れ る建 築の 著 作物 に該 当 し、原
告 は 関 連 契 約 に 基 づ い て 本 件 建 築 の 著 作 財 産 権 を 取 得 し た。花 火 製 品『盛 放 鳥 の 巣』の 製 造 と 販 売 は、
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建 築 の 著作物 で あ る 国家 体 育 場 に対 す る複 製と 発 行を 行っ た こ と にな り、そ の著 作 権を 侵害 し た こ とに な
る」と し て、熊 猫 花 火 グ ー ル プ、瀏 陽 熊 猫 公 司 に 侵 害 を 差 止 め、損 害 賠 償 金 10 万 元 を 支 払 う こ と と、北 京
熊猫公司に侵害を差止める判決を言い渡した。
【事件の分析】
当 該 案 件 は、中 国 の 裁 判 所 が 工 業 設 計 を 建 築 の 著 作 物 と し て 著 作 権 で 保 護 し た 最 初 の 事 例 で、非 常
に 大 き な 意 義 を 有 し て い る。実 用 性 以 外 の 建 築 の 著 作 物 の 芸 術 的 な 美 感 は、建 築 の 著 作 物 の 保 護 対 象
であり、著作権者の許諾を得ず、建築の著作物の芸術的な美感を 無断に利用することは建築の著作物の
著作権の侵 害になる。利用するの は著作権法 にいう著作 物であっても、工業製品であっても、利用する際
の媒体に制限されない。
判例10 「杰克・ 琼斯」商標をめぐる侵害事件
【事件の内容】
「杰 克・琼 斯」は ベ ス ト セ ラ ー 社(Bestseller)の 登 録 商 標 で あ る。同 社 は 中 国 で 許 可 を 得 て
「JACK&JONES」の 商 品 を 製 造、販 売 し て い る。商 標 2 件 は、と も に 第 25 類 の 被 服 を 指 定 商 品 に し て い
た。ベストセラー社は、ドメイン名がjackjonescn.netで、「JACK&JONESの中国公式サイト」、「杰克・琼
斯の中国公 式サイト」と自称するサ イトを発見した。そして、当該サイトでは、上記の2つの 商標を利用 し、
SEM(検 索 エ ン ジ ン マ ー ケ テ ィ ン グ)を 行 い、ウ ェ ブ サ イ ト で 同 商 標 を 利 用 す る こ と で 被 服 が 大 量 に 販 売 さ
れ、専 門 店 の 物 だ と 詐 称 し て い る こ と が 分 か っ た。ま た、当 該 サ イ ト の 運 営 者 は 崔 焕 所 氏 で あ り、ド メ イ ン
名の登録者は杜興華氏であった。
裁判所は審理を経て、「被告は許諾を得ず、同一種類の商品を宣伝、紹介、販売すると同時に、登録商
標と同一または類似の商標を使うことで、登録商標の商標権を侵害する商品を販売した。それにより、ドメ
イン名の登録者、サイトの運営者及び被服の出所はベストセラー社だと関係公衆に混同、誤認させ、商標
権 を 侵 害 し た」と し て、被 告 二 人 に 対 し、侵 害 を 差 止 め、ベ ス ト セ ラ ー 社 の 信 用 を 回 復 し、損 害 賠 償 金 と 合
理 的 な 支 出 合 わ せ て 199 万 元 あ まり を 支 払 う判 決 を 言 い渡 し た。(詳細 に つ い て は、2010 年6 月 2 日 第 11
版の報道をご参照下さい)
【事件の分析】
当 該 事 件 は、電 子 商 取 引 で 商 標 権 を 侵 害 し た 代 表 的 な 事 件 で あ る。被 告 は 模 倣、ド メ イ ン 名 侵 害、公
式 サ イ ト 詐 称、SEM(検 索 エ ン ジ ン マ ー ケ テ ィ ン グ)な ど の 一 連 の 侵 害 行 為 を 行 っ た。そ し て、ネ ッ ト 販 売、
ネ ッ ト 決 済 な ど の 手 段 で 多 額 の 不 法 利 益 を 得 た。裁 判 所 は 審 理 に お い て、財 産 保 全、証 拠 保 全、電 子 商
取 引 記 録 を 取 り 寄 せ る な ど の さ ま ざ ま な 方 法 を 採 用 し た。最 終 的 に 200 万 元 近 く の 損 害 賠 償 金 が 認 定 さ
れ、商標権者の利益がしっかり守られたことで、社会的にも高く評価された。
ソース:中国知識産権局
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2015年 情報技術分野における累計特許出願件数 130万件に
中 国 工 業 情 報 部 は 先 ご ろ、「電 子 情 報 製 造 業『第 12 次 5 ヵ 年 計 画』発 展 計 画」を 発 表 し た。そ れ に よ る
と、2015 年ま で に 情報技 術 分野 にお け る累 計の 特 許出 願件 数 は 130 万 件 程度 に達 す るこ とを 目標 と して
いることである。
「第 11 次5ヵ 年 計 画」期 間 中、中 国 に お け る 電 子 情 報 製 造 業 に お け る 自 発 イ ノ ベ ー シ ョ ン の 能 力 が 格 段
と 強 化 さ れ た。そ の う ち、標 準 化 と 知 財 戦 略 に つ い て は 特 に 力 が 入 れ ら れ、 TD-LTE、AVS、DRA、
DTMB と フ ラ ッ シ ュ な ど の 知 的 財産 権 の 基 礎 に な る 技 術 が 確 立 さ れ た。 2010 年に は、全 国の 情 報 技 術 分
野における特許出願は、110万件に達し、業界としてトップに躍り出た。
ソース:中国知識産権局
ランドローバー社とチェリー社間の中国商標「陸虎」に係る紛争事件
商標弁理士 肖 暉
I. 係争商標の基本状況
係争商標:
備考:「陸虎」は「LANDROVER」を中国語で表記したもの
登録番号:第1535599号
出願日:1999年11月10日
登録日:2001年3月7日
商標権者:吉利集団有限公司
存続期間:2011年3月7日~2021年3月6日(更新済み)
II. 事件の基本状況
原告:ランドローバー社(中国語名称:路華公司)【イギリス自動車メーカー】
被告:中華人民共和国国家工商行政管理総局商標審判委員会
第三者:チェリー社(中国語名称:吉利集団有限公司)【中国自動車メーカー】
一審裁判所:北京市第一中等裁判所
一審開廷日:2011年3月17日
一審判決日:2011年4月22日
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現状: 二審中(チェリー社より提訴)
関連法律条文:「商標法」第31条
II. 事件の概要
吉利集団有限公司(以下「チェリー社」と
いう)は2001年3月7日、第1535599係争商
標「
」を 出 願 し、第 12 類 の 1203、
1208類似群の関連商品を指定した。具体
的 な 商 品 と し て、「オ ー ト バ イ、自 動 車(車
両)」などを含む。
それに対して、原告は2004年4月16日、
「陸虎」はランドローバー社の知名ブランド
「LANDROVER」の中国語音訳標識であり、チェリー社が自動車製造メーカーとして、1999年に「
」を先取り
した行為は、自動車業界の経済秩序に混乱をもたらし、消費者にブランド認知度の誤認を生じさせるとして、当該行
為は法により禁止すべきであるということを理由に、係争商標「
」について、商標審判委員会に不正登録取
消審判を提出した。
しかし、中国商標審判委員会は2010年7月19日、係争商標の出願日前に、ランドローバー社が、自発的に中国
市場において宣伝し、当該商標を使用したことにより、一定の影響力を有することを証明できる十分な証拠がないと
して、係争商標の登録を維持するという審決を下した。
その後、原告は当該審決を不服として、2010年8月30日に、北京市第一中等裁判所に行政訴訟を提起した。
2011年4月22日、北京市第一中等裁判所は一審判決を言い渡した。被告が下した審決を取消し、被告は当該不
正登録取消審決について改めて裁定を下すよう要求した。
【参考情報】
①1957 年 10 月 8 日、原 告 の ラ ン ド ロ ー バ ー 社 は、第 12 類 の 1202 類 似 群 に お い て 第 29228 号 引 用 商 標「
」を出願した。その登録が許可された後、更新を経て、現在の存続期間は、2008年12月1日から
2018年11月30日までである。指定商品は「各種の客車、車両」などである。
②チェリー社の先登録商標「
」が存在するため、ランドローバー社は2003年4月4日、「
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」の
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音訳漢字商標「
」(第12類、第3514202号商標)を出願した。当該商標は、異議申立及び異議不服審判を経
て、2011年9月7日(1278登録公報)に、ようやく登録された。当該商標の現在の存続期間は2004年10月14日から
2014年10月13日までである。
III. 一審訴訟段階における各方の主張
● 原告のランドローバー社の主張
① ランドローバー社は、60年以上の自動車製造の歴史を有する世界的に有名な自動車メーカーである。中国
で長年にわたり、商標「陸虎」を宣伝、広告してきた。したがって、新興自動車メーカーのチェリー社は、同業者と
して、「陸虎」を知らないわけがない。チェリー社は、それを知っていたうえで、且つ業界の人やメディア、及び消
費者が一般的には「陸虎」は、ランドローバー社のシリーズ商標として対応関係を有すると認めた状況下におい
て、商標「
」を出願登録したことになる。したがって、悪意を有することは明らかである。
② 係争商標だけではなく、チェリー社は、「
語訳である)、「
」(「宝馬」はドイツブランド「BMW」の中国
」(「捷豹」はイギリスブランド「JAGUAR」の中国語訳である)、「
」
(「汗馬」は、アメリカブランド「Hummer」の通常の中国語訳「悍馬」の発音「hanma」と同様である)などの自動車
業界の知名ブランドと同一又は類似する商標を出願、登録したことから見れば、同社が、他人馳名商標を冒認
出願する一貫的な悪意を有することが明らかである。
③ 「
」は、陸上の虎という意味があるため、最も適切に「LANDROVER」のSUV車が野山を越えていく
優れた性能を表現しているといえる。その上、「陸」も「LAND」の意訳でもある。チェリー社とランドローバー社
は、自動車業界における同業者であるため、一旦、チェリー社が商標「
使用されているランドローバー社の商標「
」をSUV車に使用したら、現在
」と誤認、混同を生じさせやすい。
④ ランドローバー社は1996年から、「陸虎」を「LANDROVER」の中国語訳商標として使用している。それを証
明するために、約40部のメディアー報道を証拠として提出した。
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⑤ 国家関連部門より発行された車両登記書類の写し(「陸虎」は「LANDROVER」の中国語商標と称した)を提
出した。
●
被告の商標審判委員会の主張
① ランドローバー社より提出された証拠は、全てメディアによる報道であり、ランドローバー社が自ら「陸虎」商
標に対して行った自発的な使用ではない。同社は、自発的に行った広告宣伝或いは活動企画の証拠を提出し
ていない。自発的宣伝について、ランドローバー社は、如何なる広告契約、インボイスなどを以って自分の宣伝
を証明することができない。
●
第三者のチェリー社の主張
① ランドローバー社より提出された証拠は、全てメディアによる報道であり、ランドローバー社が自ら「陸虎」商標に
対して行った自発的な使用ではない。同社は自発的に行った広告宣伝或いは活動企画の証拠を提出していない。
② 「LANDROVER」の中国語訳には、「蘭徳羅孚」、「路華」など数多くある。「陸虎」も、その中の一つであり、メディ
アや自動車愛用者にとっての「LANDROVER」に対する一種の言い方ともいえる。
IV. 一審裁判所の判断
① 原告より提出された41編のニュース報道或いは評論文書の中には、専門的な自動車新聞、刊行物及び雑誌が
含まれている。これにより、係争商標の出願日前に、漢字の「陸虎」は英語「LANDROVER」の中国語称呼として、中
国の関連公衆に広く認められていて、当時の権利者であるBMW社と唯一な対応関係を形成していたことを証明でき
る。
② 係争商標の出願日前に、関連公衆にお
いて、中国語「陸虎」が中国市場の使用に
おいて、既に一定の影響力を有したことに
鑑み、第三者のチェリー社は、専門的な自
動車生産メーカーとして、中国語「陸虎」と
「LANDROVER」の対応関係、及びその業
界における知名度を知っていたはずであ
る。したがって、チェリー社がそれを知って
いたうえで、中国語の「陸虎」を先取りした
行為は、不当性を有する。
第三者の行為は、商標法第31条「他人の先使用した且つ一定の影響力を有する商標を不正手段によって先取り
して登録出願しではいけない」に関る規定に違反している。
したがって、北京市第一中等裁判所は被告が下した審決を取消し、被告の商標審判委員会に改めて裁定を下す
ように命じた。
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【参考情報】
開廷審理後、本件主審裁判官の饒亜東氏は、以下のコメントを発表した。
① 本件のキーポイントは、チェリー社と商標審判委員会が主張した「イギリスのランドローバー社は自発的に『陸虎』
商標を使用していない」ことにある。
ニュース報道或いは評論文書は、「陸虎」は「LANDROVER」の中国語称呼として、中国の関連公衆に広く認められて
いて、当時の権利者のBMW社と唯一な対応関係を形成していたことを説明でき、商品出所、製品の品質を標識する役割
を果たしたと認めることができる。
② さらに、本件の他、チェリー社は「BMW」や「Hummer」など自動車業界の知名ブランドと同一または類似する商標
を出願登録した。これらの行為は明らかに悪意を有するので、法によって支持されるべきではない。
③法に基づき、新たな証拠及び理由がない限り、商標審判委員会は今回、以前と同じ審決を下すことができな
い。つまり、ランドローバー社は、「陸虎」の商標権を取得する可能性がある。
V. 二審の情報について
2011年6月11日の「銭江晩報」によれば、チェリー社は本件一審判決に指摘された悪意による先取る行為につい
て不服があり、上訴を提起したので、本件はいま二審の上訴段階にあるとのことである。
VI. 弊所のコメント
数年前の「偉歌」(「Viagra」の中国語訳の一つ)案件において、メディア報道は、原告が自ら広告宣伝したことを証
明できないため、その商標に対する実際的な使用をしたことを証明できないという判決が北京市第一中等裁判所よ
り言い渡された。今回の判決において、北京市第一中等裁判所は、数年前の「偉歌」事件と異なる観点を示した。つ
まり、「商標法」第31条の「使用」の主体について、ある程度、緩やかに適用されていることが分かった。また、本件に
おいて、自動車メーカーの同業者としてのチェリー社は、「BMW」や「Hummer」など自動車業界の知名ブランドと同
一または類似する商標を出願登録したことについて、冒認出願の主観的悪意があると認定された。この内容から見
れば、中国裁判所は、国際ブランドの中国への進出について、できるだけ保護を与える傾向にあると思われる。
なお、本件から得られる教訓として、中国において一旦自分の商標を他人により先取りされた場合、その登録の
阻止(異議申立)、登録された商標の取り消しには、多大な時間、費用、労力がかかることが分かったであろう。中国
市場に進出する予定があれば、外国語商標に対応する中国語商標を一日でも早く出願することが非常に重要であ
ると思う。
本件訴訟は、まだ二審中にある。今後の動向について、注意深くフォローして行きたい。
VII. 情報の出所
「土豆網」に転載した「CCTV13テレビニュース」の関連報道
http://www.tudou.com/programs/view/u-kPxpMVFj4/
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「中国商標網」
http://sbcx.saic.gov.cn/trade/SelectTdInfo/SelectTdInfo.jsp
「新聞晨報」
http://newspaper.jfdaily.com/xwcb/html/2011-03/03/content_522974.htm
[京華時報]
http://epaper.jinghua.cn/html/2011-03/18/content_641401.htm
「新華網」が転載した「北京晨報」のニュース
http://news.xinhuanet.com/fortune/2011-04/23/c_121339216.htm
「騰訊財経」が転載した「新京報」のニュース
http://finance.qq.com/a/20110423/000741.htm
「京華網」
http://epaper.jinghua.cn/html/2011-04/23/content_652635.htm
銭江晩報
http://zjdaily.zjol.com.cn/qjwb/html/2011-06/11/content_892821.htm?div=-1
中国知的産権情報資訊網
http://www.cipnews.com.cn/showArticle.asp?articleid=12605
( こ の I P ニ ュ ー ス に 掲 載 さ れ た 写 真 は 劉 新宇個 人 の 撮 影 作 品 で す 。 )
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社長 弁理士 劉 新宇(Linda LIU)
担当者: 所員 張 輝 (Ashley ZHANG)
蒋 煜欣 (Yuxin JIANG)
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