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LGBTを含む多様性教育に積極的な学校は生徒の成績が向上し心理的に

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LGBTを含む多様性教育に積極的な学校は生徒の成績が向上し心理的に
260.LGBT を含む多様性教育に積極的な学校は生徒の成績が向上し心理的にも健康になる
――エリザ・バイヤード GLSEN 代表インタビュー
DIAMOND Online 2012.8.31.
(傍線:吉田祐起引用)
アメリカの学校では、中学生のカミングアウトも増えている。そういった状況から、 LGBT の生徒
へのサポートを積極的に行う学校がある一方で、生徒によるいじめや嫌がらせ、教師から発せ
られる心ないコメントは後を絶たない。20年前に設立された GLSEN(グリセン=Gay, Lesbian and
Straight Education Network/ゲイ、レズビアン、ストレートのための教育ネットワーク)は、年少
の LGBT コミュニティーのためのサポート組織として活動し、学校環境 の向上にさまざまな面で
働きかけてきた全米でもよく知られる NPO である。GLSEN 代表のエリザ・バイヤード氏に LGBT
をめぐる学校環境の現状について聞いた。(聞き手/在米ジャーナリスト・瀧口範子)
自分と異なった人と交流できるかは人生の成功を左右する
エリザ・バイヤード(Eliza Byard)
GLSEN(グリセン=Gay Lesbian Straight Education Newtwork)のエグゼクティブ・ディレ
クター。2001年より GLSEN に属し、教育プログラムの拡充や調査機能の拡大に貢献してきた。
GLSEN 以前は、調査報道センターの開発ディレクターを務め、また映画のプロデューサーとし
て、多くの映画作品に関わっている。コロンビア大学で歴史学の博士号取得。GLSEN のサイト
は: http://www.glsen.org/
――GLSEN は、中学生から高校生までの LGBT の生徒をサポートする活動を行っている。その
内容を簡単に説明して欲しい。
GLSEN は20年前に創設され、それ以来、連邦、州、地元などさまざまなレベルの政府に対す
る働きかけや、中学生、高校生の LGBT コミュニティーの組織化、教師を対象とした LGBT 教
育、一般の人々に対する教育、そしてカリキュラムや教材の開発を行ってきた。
また、2年ごとに LGBT 生徒の学校生活に関する『全米学校環境調査』を実施している。これ
は、LGBT 生徒に回答してもらい、彼らに対するいじめや嫌がらせの程度はどうか、学校側のサ
ポートがあるかどうかといった点を調べている。調査を行う大きな理由は、学校での差別の実態
を調べることだが、同時にこれは、学校が次世代の生産的な大人を生み出しているかどうかを
確認するためのものだ。
現代社会はさまざまなものが密接にコネクトされた世界になっており、個人レベルでも自分と
は異なった人々、例えば自分と違う性的指向を持つ LGBT 当事者たちと一緒に仕事ができるか
どうかなどが、人生の成功を左右する。学校が、そうしたことを意識して未来の大人を育ててい
るかどうかは、非常に重要だ。また、一般生徒や教師、校長、小学生に対しても、LGBT に関連
した別の調査も行っている。
――LGBT に関して、学校環境ではどのような変化が起こっているのか。
-1-
調査結果を通して感じられるのは、非常にゆっくりしたペースではあるが、学校環境が変化し
てきたということだ。学校制度や全米の学校区が、LGBT に対する取り組みの重要性を表明す
るようになってきた。
偏見や暴力を防止するために学校内の規則を設けているか、LGBT を含めた多様性に関する
訓練や教育プログラムを行っている。あるいは生徒たちの中に LGBT を擁護するリーダーがい
るかどうかといった点で、以前より状況が向上している。そして、変化が大きな学校ほど生徒の
学校への愛着度が高く、成績もよく、生徒の心理面でもより健康な状態にあることがわかってい
る。
オンライン教材はダウンロード30万回超
――中学生や高校生など若い LGBT の生徒が、カミングアウトする件数は増えているのか。
最近は、LGBT が生徒にとっても日常的なものになっている。ほとんどの生徒の知り合いに誰
か LGBT の人がいる。そうした環境変化の影響もあり、生徒たちも早くから自分の在り方につい
て自問することが多くなっている。
現在は、中学生でカミングアウトする生徒が増えた。学校内のサポート体制もあって、安心し
てカミングアウトできるようなものになっていることも、増加の背景にあるだろう。学校内のサポ
ート体制を強めるのに効果を出しているのは、LGBT と特定したいじめ禁止の規則、先生のサ
ポート、LGBT を擁護する学生クラブ、LGBT に関連したカリキュラムがあることなどだ。
――GLSEN が開発する教材にはどのようなものがあるのか。
GLSEN は、学校教育に関わる教師、校長、親、生徒たちの協力を得て、さまざまな教材やツ
ールをつくってきた。たとえば、『Ready, Set, Respect!(さあリスペクトしよう!)』は小学生の教師
のために開発したもので、他の生徒への尊敬の気持ちを育てることを目的とした教材と授業計
画書から成り立っている。これは、GLSEN が全米小学校校長協会(NAESP)と全米乳幼児教育
協会(NAEYC)との協力の下につくった。
高校生を対象とした『Unheard Voices(聞こえない声)』は、LGBT の人々によるオーラルヒスト
リーで、やはり教材と授業計画書がある。教師を訓練するための教材も開発している。
――こうした教材を、実際にクラスに導入しようと決定するのは誰か。
学校のタイプによって異なる。私立の学校では独自に決定している。公立学校では学校区長
や校長レベルで決定されることもあれば、教師個人が導入する場合もある。GLSEN が主導する
『No Name Calling Week(悪口を言わない週間)』は、あらゆるタイプのいじめを排除するための
運動で、小学生、中学生を対象としているが、このオンライン教材は2004年から数年間で30万
回もダウンロードされたことがわかっている。誰がダウンロードしたのかはわからないが、かな
りの数だ。また、『Safe Space Kit(安全な学校環境キット)』は、校内に貼るステッカーのセット
で、これも全米の半数以上の中学校、高校で導入されている。
8つの州で LGBT を話題にすることはできない
――教材の導入は、現在のところ学校区や校長らの独自判断によって行われているようだが、
もっと州や連邦レベルで LGBT の生徒たちを保護する法律があった方が望ましいという声もあ
るが……。
州法では、いじめや嫌がらせに学校が対処することを取り決めた法律があり、そこには、
LGBT 生徒に対するものも含まれる。だが一方で、公立学校では LGBT について触れてはなら
ないと定めている州も8つある。
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これらの州では、どんな内容であっても学校で LGBT について話せないのだ。そうした環境で
は、LGBT 生徒の苦しみは大きく、また先生が LGBT に対して何らかの否定的なコメントをするこ
とも多い。
――そうした場合は、どんな方法で LGBT の生徒をサポートするのか。
LGBT の生徒に対するいじめを食い止めようという動きは方々にある。生徒たちが独自に組織
する支援クラブ(GSA=ゲイ・ストレート・アライアンス)も組織化されているし、教師が個人で何か
しようとするケースもある。違法行為に及ぶような動きには出てもらいたくないが、彼らは勇敢に
もこうしたことを行っている。
――GSA は、一般的にどのように組織されるのか。LGBT の生徒が中心になって始めるのか、
それともストレートな生徒が主宰しているのか。
いろいろなケースがあるが、最初に声を上げてリーダーになるのは、ストレートな生徒である
ことが多い。かつては、ゲイの友達がいるストレートな女子生徒が活発に動き出すことが多かっ
たが、今はちょっと変わってきているようだ。
――LGBT の生徒の学校生活については、地域的な違いもあるのか。
都市部に比べて、田舎の生徒はサポートを見つけくい。その場合は、GLSEN が直接学校にコ
ンタクトし、環境を改善するためのリソースがあるかどうかを確認する。また GLSEN には全米に
支部があるので、そこから働きかける。
企業の LGBT への理解は学校環境にも波及する
――これからやりたいことは何か。
どんな生徒も安心して通えるような学校環境をつくりたい。2009年に7261人の中学、高校レベ
ルの LGBT 生徒を対象に行った『全米学校環境調査』では、10人中9人の生徒が、暴力的なもの
ではないとしても、口頭や身体的な嫌がらせに遭っている。
また20%の生徒は身体的な攻撃を受けた。中学校での環境はもっと悪く、5人中4人が身体的
な攻撃に遭っている。こうしたことを撲滅しなければならない。
――アメリカ企業では LGBT への機会平等や待遇面での弊害を取り除く努力が見られる。企業
がやっていることは、学校生活にどんな影響があるか。
多くの企業が教育に投資しているが、GLSEN にも企業と提携がたくさんある。ゴールドマンサ
ックス、IBM、ペプシコ、デパートのターゲット、全米バスケットボール協会などは、GLSEN に協
力する常連だ。IBM の社員は、GLSEN の教材を使って各地の学校で教育したし、銀行のウェル
スファーゴも『Safe Space Kit』を社員自らが各地の学校に配って回った。
企業が LGBT に新しい理解を示すことは、学校環境にも非常に重要だ。それは社会で LGBT
が受け入れられていることの現れでもあり、それがまた広く社会全般へ影響を及ぼすからだ。
吉田祐起のコメント:
ダイヤモンド誌が「GLSEN」問題をしばしば報じることに深い意味があると考えます。本稿のタ
イトル「LGBT を含む多様性教育に積極的な学校は生徒の成績が向上し心理的にも健康にな
る」はその内容を表現して余りあるものがあると考えます。フィリピンでは全く偏見を持たれてい
ない社会的問題であることから、この種の記事を追って掲載している次第です。
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