...

郊外居住者における まちなか居住選好セグメントの分離と その特性分析

by user

on
Category: Documents
12

views

Report

Comments

Transcript

郊外居住者における まちなか居住選好セグメントの分離と その特性分析
まちなか居住促進のための
まちなか嗜好郊外居住者セグメントの
分離とその特性分析
熊本大学大学院 自然科学研究科
溝上 章志
内添 啓太
1.研究の背景
まちなかの現状
モータリゼーションの進行や郊外大型商業施設の出現により郊外化が加速
中心市街地・・・商業の衰退、居住人口の減尐
都市全体・・・・・スプロール化による社会基盤整備費の増加、自然環境の破壊
今後、人口減尐が見込まれる中で持続的なまちづくりにとって郊外化は非効率的
都心回帰(まちなか居住)を促すべき
メリット
• 職住近接
• 既存の都市機能の活用
• 医療・福祉施設や文化施設の充実
• 尐子高齢化社会への対応
• 中心市街地の活性化
デメリット
• 商業が空洞化している恐れ
• 急激な人口増大により学校など利便
施設の容量が足りなくなる可能性
• 居住スペースが狭小(地価が高い)
• 自動車の保有が厳しい
画一的にまちなか居住を促すのは難しい・・・
郊外に住むまちなか居住の可能性の高いセグメントを探す
そのセグメントが求める施設・サービスを明らかする
1.研究の背景
統計で見る熊本
校区別人口密度
8km
5km
熊本市
校区別人口増減
平成21年当時
人口密度の高い地域が郊外にも
広がっている
 まちなかにも人口が増加している
地域もある
 一部ではまちなか回帰の傾向あり

8km
5km
2.アンケート調査概要
調査対象地
まちなか…中心市街地付近の居住地
郊外…5~8km程度離れた団地・住宅
8km 5km
まちなかは単身世帯,郊外は夫婦のみ
世帯を中心に増加傾向がある
調査地域別人口増減(2000年~2005年)
500
その他
400
まちなか
郊外
夫婦と子供
300
夫婦のみ
200
単身
100
0
-100
-200
安 上 上 辛 北 草 桜 下 練 水 船 坪 通 南 南 山 城 千 中
政 通 林 島 千 葉 町 通 兵 道 場 井 町 千 坪 崎 東 葉 央
反 井 町 町 城 街
町 町 町 町 反 町
町 町 町
町
畑
畑 町
町
町
秋 楠 楡 武 麻 長 長 長 大 大
津
の 蔵 生 嶺 嶺 嶺 字 字
木 ケ 田 西 東 南 幾 豊
町
丘
秋
久 岡
田
富
八
景
水
谷
下 龍 御 上 小 健 若 高 城 川
硯 田 領 南 山 軍 葉 橋 山 尻
川
部
町
町
2.アンケート調査概要
まちなか居住者
配布対象
配布方法
回収数(配布数)
現在の住居
調査内容
熊本市中心市街地5162世帯
郊外居住者
第1回
第2回
秋津,楠,楡木,武蔵ヶ丘,麻生田,
長嶺,合志幾久富・豊岡
24958世帯
清水新地,下硯川,龍田,託麻,
健軍,若葉,高橋,城山,川尻
45039世帯
訪問聞き取り調査,訪問留め置き調査,個別配布・郵送回収
360 (1600)
283 (330)
306 (348)
住居の種類・所有形式・入居年代・床面積・購入価格(家賃)・現在の住居に対する満足度
周辺の環境
周辺環境や近所付き合いに対する満足度(5段階評価)・中心市街地に欲しい施設(最大5つ)
住居決定の理由
現在の住居への転居理由(最大3つ)・転居前の住居について・転居意向の有無
個人属性
世帯主の性別・年代・居住地・世帯構成・職業
居住地選択モデル
の推定
現在の住宅に転居する際
比較した物件
アンケートに用いた住宅条件(例)
家の購入価格
床面積
駐車場
住宅の位置
公共交通機関乗り場
日常品購入場所
総合病院
文化施設
小・中学校
水準1
水準2
2000万円 2500万円
70㎡
100㎡
有り(15000円/月)
1:草葉
2:練兵
50m
50m
500m
200m
700m
1500m
800m
300m
100m
1000m
実際に存在する物件に近い条件の提示による転居意向
3.居住地選択モデルの構築
2項ロジットモデルによる推定
説明変数
《世帯主属性》
年齢(歳)
通勤手段ダミー(自動車=1)
世帯構成ダミー(単身=1)
住宅形式ダミー(戸建=1)
《住宅条件》
購入価格/420もしくは家賃(万円)
《周辺環境条件》
最寄り公共交通までの距離(m)
最寄り総合病院までの距離(m)
最寄り学校までの距離(m)
最寄り日常品購入場所までの距離(m)
尤度比
的中率
サンプル数
推定値
t値
0.02023
-1.78039
0.86161
-6.11070
1.73
-3.51
1.38
-8.10
-0.76557
-7.54
-0.00094
0.00034
-0.00031
-0.00001
0.79
0.95
522
-3.02
1.71
-0.99
-0.04
居住環境に求めるものは人それぞれ
であり,選好の異質性を考慮せず,
一括してモデル化することが問題?
潜在クラスモデルによるクラスの分離
通常の離散選択モデルでは効用関数のパラメータは母集団の中で同一
一方、潜在クラスモデルでは潜在的な複数個のクラスに分け、クラスごと
に異なるパラメータを持つと仮定する
嗜好の多様性、消費者の異質性に対応できる
3.居住地選択モデルの構築
潜在クラスモデルの概略
住民
実際には・・・
?
車を持っている
まちなかに勤務
庭が欲しい
など、
個々で求めるものは異なるはず
3.居住地選択モデルの構築
潜在クラスモデルの概略
住民
まちなか志向
郊外志向
・
・
・
3.居住地選択モデルの構築
計算手法(EMアルゴリズム)
クラスsに属する個人nが
選択肢jを選ぶ確率
Ln  j  s  
個人nがクラスsに属する確率
exp  s  xnj 
 exp 
kC
s
 ns 
 xnk 
exp s  zn 
 exp s  zn 
s
個人nがある選択肢jを選択する確率
Pn  j s ,  s     ns  Ln  j  s 
E-STEP
(パラメータの代入)
s
 L  j s 
hns  ns n
Pn  j s ,  s 
選択確率の対数尤度関数
ln L   d ns ln Ln  d ns ln  ns
n
s
n
s
M-STEP
(尤度の最大化)
個人が選択肢jを選んだもとで
クラスsに属する条件付き確率
(ベイズの定理)
3.居住地選択モデルの構築
潜在クラスモデルによる推定結果
2項
ロジットモデル
説明変数
《世帯主属性》
家族構成ダミー(単身=1)
家族構成ダミー(夫婦のみ=1)
メンバーシップ
家族構成ダミー(子供と夫婦=1)
関数
年齢
(個人属性)
通勤先ダミー(中心市街地=1)
交通手段ダミー(自動車=1)
住居形式ダミー(戸建=1)
《住宅条件》
住宅費用
《環境条件》
説明変数
最寄り公共交通(km)
(効用関数パラ
メータ)
最寄り総合病院(km)
最寄り小・中学校(km)
最寄り日常買い物(km)
クラスサイズ
尤度比
サンプル数
パラメータ数
的中率
潜在クラスモデル
推定パラメータ
クラス1
パラメータ
クラス2
パラメータ
0.862
0.020
-1.780
-6.111
1.332
0.767
0.437
0.020
2.092
0.777
-1.255
0.460
1.092
0.682
0.030
-0.837
1.115
2.795
-0.766
-0.981
0.122
-0.937
0.338
-0.305
-0.012
0.79
522
9
0.95
-1.847
-1.735
-0.664
0.13
76.751
2.417
2.579
0.87
0.82
522
22
0.94
3.居住地選択モデルの構築
潜在クラスモデルによる推定結果
ま
ち
な
か
居
住
郊
外
居
住
まちなか志向
(クラス1)
郊外志向
(クラス2)
37
0
37
32
453
485
69
453
郊外に住む
まちなか志向者
4.セグメント分析
郊外居住者の中の
まちなか志向セグメントと郊外志向セグメントの比較
まちなか
まちなか
志向志向
まちなか
志向
女性の割合
高
郊外
郊外志向
志向
20%
40%
男性
60%
100%
女性
自動車以外
の交通
郊外
志向
郊外志向
0%
20%
徒歩
40%
60%
80%
自転車 バイク
自動車
バス
市電
鉄道
その他
世帯主の通勤移動手段
37
0
郊外
居住
32
453
単身
郊外
志向
20%
40%
60%
20代以下
30代
40代
60代
70代
80代以上
世帯主の性別
まちなか
まちなか
志向
志向
まち
なか
居住
30代
郊外
志向
80%
郊外
志向
まちなか
志向
0%
0%
まちなか
志向
80%
100%
50代
0%
単身
20%
夫婦のみ
居住地付近
もしくは
中心市街地
郊外
志向
100%
0%
居住地周辺
20%
40%
60%
80%
中心市街地
市内
県内
世帯主の通勤先
60%
夫婦と子供
80%
三世代
100%
その他
家族構成
世帯主の年代
まちなか
志向
40%
まちなか
志向
マンション
アパートのみ
郊外
志向
100%
県外
0%
20%
40%
戸建
マンション
60%
アパート
居住形態
80%
その他
100%
4.セグメント分析
現在の住宅に対する評価
上段がまちなか志向,下段が郊外志向
1.住宅の広さ
空
間
2.敷地の広さ
3.遮音性や断熱性
住
宅
性
能
4.日当たりや風通し
5.耐震性
6.共用部分の施設
施
設
7.高齢者への配慮
8.住居費
総合評価
0%
満足
20%
やや満足
40%
どちらでもない
60%
やや不満
80%
不満
100%
4.セグメント分析
現在の周辺環境に対する評価
上段がまちなか志向,下段が郊外志向
1.災害に対する安全性
環
境
安
全
性
2.騒音・大気汚染などの環境
3.日照・風通し
4.周辺街路の歩行安全性
5.治安
生
活
利
便
性
公
益
施
設
6.通勤・通学の利便性
7.日常の買い物の利便性
8.医療・福祉施設の利便性
9.子供の遊び場や公園の充実
10.公民館や集会場などの利用
11.図書館や美術館などの施設
テア
ィメ
ニ
12.緑や水辺などの自然
テコ
ィミ
ニ
14.近所の祭りやイベント
13.まちなみや景観
15.ご近所付き合い
総合評価
0%
満足
10%
やや満足
20%
30%
どちらでもない
40%
50%
やや不満
60%
不満
70%
80%
90%
100%
5.意識構造モデルの構築
住宅に対する意識構造モデル
項目
空間
1.住宅の広さ
2.敷地の広さ
3.遮音性や断熱性
住宅
性能
4.日当たりや風通し
5.耐震性
施設
6.共用部分の施設
7.高齢者への配慮
8.住居費
→空間
住宅に対する →住宅性能満足度
総合評価
まちなか
志向
郊外
志向
0.306
0.775
1.028
→施設満足度
1.007
→住宅費用
0.478
→
→
→
0.92 →
→
→
0.944
→
0.554
1.住宅の広さ
2.敷地の広さ
3.遮音性や断熱性
4.日当たりや風通し
5.耐震性
6.共用部分の施設
7.高齢者への配慮
まちなか
志向
0.699
1.334
0.455
0.553
0.961
0.933
0.968
郊外
志向
0.707
0.844
0.817
0.565
0.747
0.835
0.833
5.意識構造モデルの構築
周辺環境に対する意識構造モデル
項目
1.災害に対する安全性
2.騒音・大気汚染などの環境
環境安全性
3.日照・風通し
4.周辺街路の歩行安全性
5.治安
6.通勤通学の利便性
生活利便性
7.日常の買い物の利便性
8.医療・福祉施設の利便性
9.子供の遊び場や公園
公益施設
10.公民館や集会場の利用
11.図書館や美術館など
アメニティ
コミュニティ
まちなか志向 郊外志向
周辺環境に対する総
合評価
→環境安全性
0.749
0.732
→生活利便性
0.734
0.642
→公益施設
1.02
0.847
→アメニティ
1.155
0.819
→コミュニティ
0.72
0.805
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
→
1.災害に対する安全性
2.騒音・大気汚染に対する評価
3.日照・風通し
4.周辺街路の歩行安全性
5.治安
6.通勤・通学利便性
7.日常買い物の利便性
8.医療・福祉施設の利便性
9.子供の遊び場や公園の充実
10.公民館や集会場の利用
11.図書館や美術館などの施設
12.緑や水辺などの自然
13.まちなみや景観
14.近所の祭りやイベント
15.ご近所付き合い
12.緑や水辺などの自然
13.まちなみや景観
14.近所の祭り・イベント
15.近所付き合い
まちなか志向 郊外志向
0.509
0.58
0.208
0.649
0.703
0.53
0.729
0.719
0.883
0.775
0.44
0.474
0.795
0.777
0.782
0.862
0.73
0.77
0.734
0.858
0.616
0.513
0.87
0.812
0.786
0.906
0.582
0.922
0.459
0.645
6.まちなか居住促進MM
志向の特性を考慮した優先整備項目
満足度評価における満足度が低
評価構造における影響度が大
改善により,
転居が促進される可能性が高い
まちなか志向
空間
住宅
住宅性能
施設
環境安全性
生活利便性
周辺環境
公共施設
アメニティ
コミュニティ
郊外志向
2.敷地広さ
1.住宅広さ
5.耐震性
3.遮音性
7.高齢者への配慮
1.災害に対する安全性
4.通勤・通学利便性
7.日常買い物利便性
6.共用部分の施設
4.周辺街路の歩行安全性
12.緑や水辺などの自然
10.公民館や集会場の利用
13.まちなみや景観
15.ご近所付き合い
整備すべき施設・サービス
・遮音や耐震性を考慮した住宅設計
・バリアフリーの導入
・生鮮食品スーパーの充実
・白川・坪井川へのアクセス性向上,遊歩道の整備
6.まちなか居住促進MM
現況で丌十分な点(高齢者への配慮や緑地整備の拡充など)の改善により,
まちなか居住の魅力が向上!
また,現在のまちなかの環境でも
通勤・通学や日常買い物の利便性,水辺は十分に満足できるはず
→知ってもらうことが重要
重点ターゲット
・マンション・アパートに住む
・中心市街地に勤める
・20~30代
・単身か夫婦と子供の世帯
重点プロモーション項目
・通勤・通学,買い物の利便性が高い
・水辺へのアクセスの良さ
・住宅のバリエーションの豊富さ
6.まちなか居住促進MM
パンフレットによるPR例(新潟市)
7.まとめ
本研究により,以下のことを明らかにした
1. まちなか居住者と郊外居住者について個人属性や居住実態,転居意向,充実を望む施設,
住宅・周辺環境に対する満足度などを明らかにした.その結果,まちなか居住者と郊外居住
者の居住実態,通勤状況などに大きな違いがあることが明らかとなった.
2. 潜在クラスモデルにより,まちなかを選好する可能性の高いセグメント(まちなか志向)を分
離し,まちなか志向者69サンプル,郊外志向者453サンプルという結果を得た.さらに,両
志向者の特性を明らかにした.
3. 郊外居住者における両志向者の特性や住宅・周辺環境に対する満足度を明らかにした.そ
れにより,同じ郊外居住者でも,まちなか志向と郊外志向には居住実態や充実して欲しい施
設などに違いがあることがわかった.
4. 意識構造モデルを構築することで,総合評価に対する影響度から郊外居住のまちなか志向
者がまちなかに望むものを明らかにし,まちなか居住促進のための優先整備項目を挙げ,具
体的な整備すべき施設・サービスを明示した.
ご清聴ありがとうございました
熊本大学大学院 自然科学研究科
溝上 章志
内添 啓太
Fly UP