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Neighbors Vol.3

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Neighbors Vol.3
特集
地域社会の充実に向けて
Volunteering
ボランティア活動
Volunteer
Participation
ボランティア活動
トヨタでは、
「環境」
「交通安全」、
、
「人材育成」に加え、
「共生社会」や「芸術文化」
などの分野でボランティア活動や
資金、物的支援などの方法により、社会貢献活動を推進している。
特集では、
「ボランティア活動」
に焦点を当てて、紹介する。
Financial and Material
Assistance 資金や物的支援
Employees and Family Members
and Friends
2
V o l unt eers
特集:ボランティア活動/日本
トヨタボランティアセンター
トヨタボランティアセンターは、社員をはじめ、家族やOBが明るく・楽しく・安心し
てボランティア活動に参加できる環境をつくることを目的に、1993年にトヨタ自動
車(TMC)の社内に設置された。主に、ボランティア活動メニュー紹介などの情報
提供や、ボランティア活動への理解の促進を目的とする講演会・研修会の開催、活
動機関誌の発行などの啓蒙活動を通じて、ボランティア活動の定着・拡大に向けた
支援活動を行っている。2006年1月からは、それまでの総務部から新設された社
会貢献推進部の所属となり、TMCでの活動を一層充実していくとともに、グロー
バル本社のボランティアセンターとして、国内外での活動促進にも取り組んでいく。
▲
ボランティアセンター
によって毎年開催され
る、
「ボランティアフェ
スティバル」の人気イ
ベント「リングコ ーナ
ー」。子供も大人も各
種の工作活動を楽
しむ。
What & How
ボランティアセンターの専従スタッフは7名。社外の各種団体から協力要請を受けたボランティア活動メニュー
を、年間約700件程度そろえ、約3200名の社員が
「ボランティア活動に参加したい」
という思いでボランティア
登録している。なお、現在、20種のボランティアサークルも活動している。また、センター以外の団体や組織
が主体となる活動も紹介し、ボランティア派遣に協力している。
センター設置から13年、ボランティア派遣を要請する団体の多くは信頼関係で結ばれているリピーターだ。
要請案件は特に規定を設けないが、営利目的や危険が伴う作業など、センターの活動趣旨から大きくはず
れる活動は断る場合もある。ボランティア参加者の安全確保の観点などから、特に新規団体からの案件は、
活動概要を十分確認し、受け入れるようにしている。また、同センターから発信されるボランティア活動情報
は、情報誌、イントラ、メールなどを通じて社員に情報提供されている。
3
Volunteers
ボランティア活動の主体となる
「登録者」
については、
登録者の絶対数を増やす各種啓蒙活動を行う一方、
Why
「質」
の向上、すなわち、実際にボランティア活動に参加
TMCでは、従来、自主プログラムを除き、資金支援に
してくれる登録者の割合を増やすこと。センター所長の
よる社会貢献活動を中心としてきたが、1990年代に入
鈴木盈宏氏は、この登録者の質が重要であると言う。
ると、社会から、より
「社員の顔が見える」
活動を求めら
「ボランティアとはいえ、企業が率先してやる以上、定量
れるようになった。さらに、1992年に、ボランティア意識
的な実績が求められます。登録者数はその指標のひと
に関する社員アンケート調査を行ったところ、ボランティ
つですが、登録するだけで参加しないなら、意味があり
ア活動「未経験」
者が過半数を占めたが、その多くが、
ません。人事異動などもありますので、
『実質登録者』
の
「何らかの活動に参加したい」
との回答だった。この調
割合を100%にすることは無理。今の水準を少しでも高
査結果を受けて、当時の日本企業では初となる企業内
めたいと思っています。そのため、私たちは、できるだけ
ボランティアセンターを設置することになった。
多くの社員の方々がボランティア登録するよう促すことは
もちろん、すでに登録している方々にも、実際に活動参
加するよう呼びかけています」
When & Who
1993年に設置、活動を開始
登録者の質の向上を図るため、活動参加者への意
トヨタ自動車(TMC)
識調査を行っている。鈴木所長によれば、その回答結
果には、興味深い傾向が見られると言う。
「例えば、
『とよたクリーン活動』
という清掃活動に参加し
た人たちへの調査では、70%が
『たまたま友人に誘われ
Results
ボランティアメニューは年々充実し、支援対象領域も広
た、80%以上の人が『来年も参加したい』
と言っていま
がってきている。活動への参加者も年々増加。センター
した。参加した人のほとんどは何らかの達成感をつか
の存在が社会に認知されるにつれて、社外の団体から
みとっています。それが次のステップへの一歩になりま
の派遣引き合いも増加中。2006年には、新設された社
す。要するに、きっかけはともあれ、一人でも多くの方に
会貢献推進部の所属となり、今後は、グローバルトヨタ
まずは参加していただくことが大切だと思います」
各社を対象とした国際的な活動の展開も予定している。
▲
「ぬくもりの会」とトヨタボランティアセン
ター合同企画による、高橋地区在住の独り
暮らしの高齢者(65歳以上)25名を招待し
て、中部国際空港見学。発着する旅客機を見
物したり、お土産を買ったりなどの楽しい
日帰り旅行を体験していただいた。
「ぬくも
りの会」では、奇数月毎に、高橋地区で暮ら
す高齢者を招待して昼食会を開催している。
ボランティアへの登録
用紙。この用紙により
簡単に手続きできる。
写真右は、ボランティ
アセンターが発行して
いる機関誌。
▲
てきたが、参加してみたら意外に楽しかった』
と答え、ま
ボランティアセンター傘下のボランティアサークル
▲
▲
センター所長の鈴木盈宏氏。豊田市のセンターにて。
4
2006年6月の「矢作川クリーン活動」
。会社
休日の土曜日の朝の1時間、約900名の社員
と各 種 団 体・市 民 約 3 5 0 名 を 合 わ せ 総 勢
1250名が参加し、総重量990キロのゴミを
回収した。
●
JDRトヨタ
初めての人でも気軽に参加できる楽しいボランティアイベントを企画・実施
●
TOMORROW
視覚にハンディを持つ方のために、パソコンによる点訳や音訳テープのCD化
●
翻訳サークル
語学力を活かして、主にアジアの子供たちに送る絵本を翻訳
●
五WD
長野オリンピックをきっかけに誕生。ボランティアイベントの運営のお手伝い
●
家具転倒防止サークル ひとり暮らしのお年寄りのお宅で、地震に備えて家具の転倒防止対策
●
かたぐるま
肩もみやマッサージによるお年寄りの方々とのふれあい活動
●
大型車運転友の会
大型車の運転技術を活かし、地域イベントなどでシャトルバスなどを運転
●
ヒアツーハート
聴覚にハンディを持つ方をサポートする補助犬育成の応援とPR活動
●
むーびっつ
聴覚にハンディを持つ方のために、TV番組や映画の字幕スーパーを制作
●
ほっとハーモニー
子供会・敬老会や福祉施設などへの楽器演奏や演芸のお出かけボランティア
●
おもちゃシューリーズ
モノづくりの技術を活かし、おもちゃ図書館などで壊れたおもちゃを修理
●
スタジオフリーカム
トヨタボランティアセンター行事や地域イベントでのカメラ・ビデオ撮影と編集
●
トヨタDIY
ペットボトル工作や風船アートの技術を活かして各種のボランティアイベントに参加
●
衣浦農園サークル
農園を主にしたイベントを企画
●
収集サークル
社内で収集した古切手やベルマークの仕分けをしながら会員交流
●
通訳サークル
地域の方々と外国の方々との国際交流を通訳としてお手伝い
●
森林キーパーズ
山の役割を勉強しながら、森林の間伐や下草刈りなどの自然保護活動
●
田原企画サークル
田原工場内と地域でのボランティアイベントを企画・実施
●
東富士企画サークル
東富士研究所内と地域でのボランティアイベントを企画・実施
5
「あすて」
と
ボランティア活動
「あすて」
とは、各種のボランティア活
日本ルーテル教会の当時の牧師
動を促 進・支 援するための財 団 法
が、その状況を見かねて、青年たち
1966年、会社の支援により、
「憩
人。なかでも中心的な活動は、小学
が親睦を深める場をつくるよう、トヨタ
の家」
を開設。やがて、豊田市も都
生を対象とした、豊田市の歴史と
の経営陣に進言した。それに賛同し、
市化が進み、当初の目的を果たした
文化に密接な結びつきのある
「自動
すぐさま動き出したのが、現在、トヨ
「憩の家」
は、2001年に「あすて」
に
車」
「繊維」
「農業」
の知識を深めても
タ自動車の最高顧問を務める豊田
改名し、活動の中心を現在のような
らう参加型教育プログラムである。
英二氏の夫人、豊田寿子氏(故人)
ボランティア活動に移行している。
だった。
2003年にスタートし、2005年からは
「陶芸」
と
「造形(銅の鋳造)」
を加え、
現在は5 分野での教育プログラムを
実施している。トヨタグループ各社に
勤める社員や豊田市で活躍する陶
芸家や彫刻家がボランティア講師と
なって、毎週土曜日、子供たちに自
動車の組立や銅像の鋳造などを体
験してもらう。
「あすて」
は、かつては、
「憩の家」
の
名で親しまれた。高度経済成長期の
1960年代、トヨタは急成長し、九州
や北海道など遠隔地からの集団就
職組が豊田市にやってきた。その大
半にとっては、未知の街での心細い
新生活のスタートだった。さらに、当
時の豊田市は、娯楽施設がほとんど
なく、友達と出会う場も、休日を楽し
む場もなかった。
▲
モノづくり教室に参加した人たち。実際の車を組み立てるなど、モノづくりの楽しさを体
感できる。
▼
「あすて」の母体である豊田ボランティア協会の会長、豊田彬子
氏(現・アイシン精機の豊田幹司郎会長の夫人)
。
「私は、社会奉
仕とは、どなたかに何かを“してあげる”のではなく、
“させてい
ただく”
ことだと思っています。ボランティア活動に参加する人は、
その活動の対象となる方々と同じくらい報われ、ともに成長して
いけるからです。社会貢献活動は、
“見返り”を期待しないで取り
組んでこそ、真の社会奉仕になります」
(造形教室にて)
6
V o l u n t e e r s
特集:ボランティア活動/日本
わ
はあとねっと輪っふる
トヨタ販売店の埼玉トヨペットは、2002年に、
「はあとねっと輪っふる」
を発足した。
田植えの当日は、前年に植えて収穫した米や、畑で
はあとねっと輪っふるは、すべての人が、分け隔てなく、ともに働き、ともに学び、
実った新ジャガやトマト、スイカなど自然の恵みのご馳走
ともに暮らすことのできる「ノーマライゼーション」社会を、さまざまな立場の人たち
が一緒にいるなかからつくりあげていく活動。イベントやモノづくり、販売、社会参
加など各種の活動を通して、人の心と心をつなげていくことを目的としている。
を皆でワイワイほお張るのも楽しみのひとつ。渡辺氏は、
埼玉トヨペットでは、2001年から、本社ショールームで福
この和やかな雰囲気を大切にしたいと言う。
祉用車両の展示を開始。同社の平沼一幸社長は、こ
「これは、障害者のためとか、高齢者のためというので
れをきっかけに、展示スペースをより地域のために生か
はなく、純粋に近所づきあい。気の合う人たちが集まっ
すことはできないかと考え、福祉の関係者と話し合いを
て、楽しい時間をともに過ごす。それがいいんですね。
重ねた。その結果、ノーマライゼーションに着目し、その
友情の輪は自然に広がっていきます。はあとねっと輪っ
第一歩として、障害のある方、子育て中のお母さん、子
ふるの活動では、営業につながることは何もしませんが、
供からお年寄りまですべての人が、分け隔てなく交流で
クルマの販売は、そもそも地域密着型の商売です。販
きる場として開放しようということになった。
▲
「はあとねっと輪っふ
る」の田植え活動。
Why
売店が本来あるべき姿を、逆にこの活動から学ぶことも
多いんです」
When & Who
2001年より実施
▼
埼玉トヨペット株式会社
車椅子に座ったままで
“投げ植え”
。田植えも
工夫しだいでバリアフ
リーにできる。
Results
ノーマライゼーションの実現に向け、活動プログラムはさ
らに多彩になり、内容も充実。それに伴い、参加者の
参加者に田植えのコツ
を伝授する、輪っふる
担当の埼玉トヨペット
課長、渡辺新一氏。
What & How
▼
輪も大きく広がっている。
埼玉トヨペットは、本社ショールームをはあとねっと輪っふるの基地とし、身体の不自由な方の就労機会を促
進する活動や、福祉団体との連携によるイベント、講演会の実施など多彩な活動を展開している。例えば、
毎週木曜日と土曜日に行われる、身体の不自由な方の家族が作るパンの販売は、発足当初から続いてい
る活動のひとつ。参加者は、身体の不自由な方やその家族、子供からお年寄りまでさまざまだ。
「まあ、大人気とまではいきませんが、当社の社員や近所の方々に好評で、パンの販売を通じて人と人との
また、ショールームの一角を身体の不自由な方が描いた絵画などのギャラリースペースとして開放してきた
が、あるときから、活動は屋外に広がった。メンバーの一人からの
「田植えや稲刈りを体験したい」
という希望
▲
愛をたっぷり込めてつ
くった、はあとねっと
輪っふるフーズ。
を叶えようとしたことがきっかけだった。福祉車両のモニターの方が田んぼを提供してくださった。苗一株にひ
とかたまりの土がついた
“鉢苗”
と呼ばれる苗を使うことで、車椅子に座ったままで“投げ植え”
ができるように
するなど、色々な工夫によるバリアフリー化を進めてきた結果、4年目の2006年の田植えには、一般の方も
含めて約100人もの人々が参加した。
7
8
埼玉トヨペットの平沼一幸社長(右端)
。
▼
つながりが広がっています」
と語るのは、はあとねっと輪っふるの担当課長、渡辺新一氏。
Volunteers
写真左は、
植樹造林前。
右は、植樹造林後。
▲
特集:ボランティア活動/日本・中国
緑化活動に海を越えて参加
トヨタ自動車(TMC)は、グローバルに社会貢献活動を推進している。本誌12ペー
ジで紹介している「中国青年トヨタ環境保護賞」が、そうした活動の一例だが、ボラ
ンティア活動についても、TMCの従業員が、中国に活動の場を広げるプログラム
が現れた。
Why
▲
植 林 活 動に参 加 体 験
した、日・中のボラン
ティアたち。
▲
植 林 活 動に参 加 中 の
TMCI総経理の磯貝匡
志、TMC副社長の木
下光男、中国事務所総
代表の服部悦雄の各
氏。
(前列左から)
What & How
Results
トヨタ自動車(中国)投資有限会社(T M C I )では、
トヨタボランティアセンターが社内から参加者を募集。定
2003年より毎年、中国の全事業体及び事務所の従業
員15名を超える応募があったため、予定を変更して希
員に呼びかけ、植林作業のボランティア活動を実施。そ
望者全員の参加を認めることとなった。旅費の1 3 万
2006年7月、従来、中国で取り組まれている砂漠化防止のための植林活動に、TMCの従業員20名がボ
の活動にTMCが連携した。TMCは、グローバルトヨタ
5000円は自己負担。各自、有給休暇を使って参加した。
ランティアとして参加。植林活動の現場を見学するとともに、植林作業も体験した。
各社の社会貢献活動の充実を目指しているが、今回
充実度、楽しさ、ともにひとまわり大きなボランティア活動
の植林活動が、TMCにとっても初の海外事業体との
となったようで、再参加を希望する参加者も多く、同セ
連携によるボランティア活動となった。
ンターでは、継 続して実 施していくことを検 討して
中国での植林活動は、本誌創刊号ですでに紹介したとおり。TMCがNGO地球緑化センター
(本部・東
京)
と連携し、中国河北省豊寧満族自治県を砂漠化防止に向けた
「21世紀中国首都圏環境緑化モデル拠
いる。
点」
と位置づけ、2001年にスタートした当初3カ年計画のプロジェクト。中国科学院中日科技与経済交流協
When & Who
会を介し、TMCは資金とバイオ緑化事業部の持つ技術を提供し、地球緑化センターは一般市民のボラン
ティア派遣を行い、河北省政府林業局及び豊寧満族自治県林業局は植樹造林の作業を管理するなど、そ
2006年
れぞれが役割分担して活動を推進している。3カ年を終了した翌2004年に、さらに3カ年の延長を決め、現
トヨタ自動車(TMC)
、トヨタ自動車(中国)
投資有限会
在、2期目の活動に入っており、合計2500haの植林を達成する。
社(TMCI)
TMCでは、トヨタボランティアセンターを中心に、従業員のボランティア活動を支援してきたが、その活動
範囲が海外まで及ぶ例はこれまでなかった。従来、現地従業員がボランティア参加していた中国の植林活
動に、TMCのボランティア活力も取り込もうというアイデアは、2006年に新設された社会貢献推進部の発案
であり、同年、さっそく計画を実行した。
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