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復活節第3主日 礼拝 2016年4月17日 飯川 雅孝 牧師 招 詞 申命記5

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復活節第3主日 礼拝 2016年4月17日 飯川 雅孝 牧師 招 詞 申命記5
復活節第3主日 礼拝 2016年4月17日
招
詞
説教
申命記5:9-10節
聖
書
飯川
雅孝
牧師
マタイ5章13-20節
『すこしの迷いからの岐路』
メデイアの報道からは希望に満ちたことと悲しいことが洪水のように押し寄せます。大切なのは
これまでの経験を土台にして、問題の意味を考え、新しい世界観を創るためにエネルギーを投入して
行くことでしょう。そうでなければ時代に対応できない人間として魅力を失ってしまいます。キリス
ト者として標榜している者には、イエスを中心に問題を考え、日々新たにされて行くことが大切です。
今日の聖書の箇所はもったいないくらいです。まさにその場所で地の塩、世の光として用いられよう
としている。この祝福に応えて行くことが求められます。
しかし、最近の報道の中でも世のアイドルである有名なスポーツ選手や選ばれた議員の不祥事が目
に付きます。本来、青少年や支持者に希望を与えるものである人たちがなにか道を踏み外してしまっ
たことに心が痛みます。問題がすこし、社会に出た時、「その人は安心しろ、こうすれば、大丈夫だ
から。」といろいろ逃げる策を授けた。暗黒の中にいることを知り、「怖い人だと思った。」と告白
しております。高校野球、プロ野球と花形選手同士だった友人が相手との会話で、黒い噂を心配して
電話したところ、2年前を最後に「もう電話をしないでくれ。」と交友関係を断ち切られたと報道さ
れました。若い頃お互いに友情を築いても20年以上もすると社会に顔を向けることができない所に
落ち込んだ現実がある。これを他山の問題とすることなく、信頼してくれる先生や友人を裏切るよう
な生き方になっていないかを振り返る時でもあります。
今回の問題に対して、『第三の男』(The third man)が重なって見えました。友人と思っていた
男の裏切りがテーマです。初めに、これを書いたグリアム・グリーンについて触れてみたいと思いま
す。1904年にイギリスで生まれる。父は校長先生であったため「反抗的な少年」だった彼はスパ
イ小説を愛読し、父への「裏切り」も意識した結果そのテーマが植えつけられていたということです。
オックスフォード大学で国教徒からカトリックへと改宗し、共産党にも入党します。代表作に『第三
の男』、『落ちた偶像』など、カトリックの倫理をテーマに据えた作品を多く発表し、長年ノーベル
文学賞の有力候補と言われていました。「スパイの経験のある作家」としても有名で、オックスフォ
ード在学中の18歳にドイツ大使館に雇われ、対仏諜報を行った。晩年にはよからぬうわさも出てい
ます。この作品を作った44歳頃は、作家として有名になっており、安定的な社会生活を送っていた
と考えられます。彼のこの作品はカトリックの倫理を持つとは言え、闇の世界でうごめく人間模様を
呈しております。映画史上の名作の一つとの高い評価を得ていることは、撮影、音楽、人物の真理描
写を大衆的角度から描いているからと思います。
この映画の社会的背景となった第二次大戦後のウイーンは アメリカ、イギリス、フランス、ソ連
の国際警察がお互いに牽制して街の治安を守る。まだ安心とは言えない社会状況。貧困と闇の金持ち
の混在。不法難民も存在。犯罪も多発し、市民の社会倫理も欠如していた。登場人物は作者グレアム・
グリーンの手の内にあるわけですから、彼の経験や思いが入っています。わたし自身の想像を入れて
紹介したいと思います。
アメリカの売れない西部劇作家ホリー・マーチンズは、親友ハリー・ライムから仕事を依頼したい
と誘われ、ウィーンにやって来ます。しかし、たったの昨日、自動車事故で死亡したと聞かされ、公
共墓地でその葬儀に立ち合います。そこにはMP,謎の女他がいます。ライムの友人だと言う偽男爵
1
キ ャ ス ト
✱主人公のホ リ ー ・ マ ー チ ン ズ はアメリカから来た西部劇の
しがない小説家。ライムの昔からの親友。今回アメリカから
ウイーンに友人のライムにより呼び出された。グリーンは
自分をこの主人公に似せて、この世の悪に対抗する者
として描きたいのでしょう。
✱ ハ リ ー ・ ラ イ ム はこの映画の主人公の対抗相手、
表向きは当時の混乱した社会の国際難民救済の団体の
職員であり、医者の資格を持つが、ペニシリンの闇
の横流しと高利を得る悪玉。罪悪にも無関心にな
ってしまった冷酷性をもつが、
マーチンズは友情を棄てきれない。作家のグリーンは
自分に潜む悪魔性を彼に投影したと思わされる。
✱ハリーを取り巻く闇の男たち:
(偽男爵、悪徳医師、運転手)
✱ライムの愛人のハ ン ナ ・ シ ュ ミ ッ ト はハンガリーの難民
で偽造パスポートをライムに作ってもらった。
映画ではきちんとした女性として描かれている。
ライムが悪人と知ってからも彼への愛を棄てきれない。
というのは作家のグリーン自身が自分にある罪意識
を赦して欲しいという願いをこの女性に託して
いると感じられる。
✱イギリスからウイーンに派遣されている国 際 警 察 :
M P の 責 任 者 ( 少 佐 ) 、比較的物わかりが良い。
マーチンズとは信頼関係にある。彼にライム
の罪状をつたえ、逮捕の協力を求める。
✱ マーチンズを講師とした善良なキリスト教団体
(文化再教育)
☆観覧車:この高い車の中でマーチンズとライムは会話をする
が彼に頼まれたからと当面の金と帰りの飛行機代を渡す。一方でマーチンズマーチンズはイギリス
軍の憲兵の少佐と知り合う。少佐はライムが闇取引をしていた悪人だと告げるが、信じられないマ
ーチンズはライムへの友情から事件の真相究明を決意する。事件の関係者を調査すると、葬儀にも
来ていたライムの恋人女優のアンナ・シュミットに会う。アンナはハンガリー人で密航者であった
から、国際難民救済の顔を持つハリーの手助けで偽パスポートを得たことがきっかけで彼と親しく
なったと思われる。マーチンズと彼女はライムのお互いの友人ということで親しくなる。二人で事
件の目撃者である宿の門番に話を聞き、現場に未知の“第三の男”(the Third man)がいたこと
をつきとめる。しかし貴重な証言を残した門番は何者かに殺害され、マーチンズがその下手人だと
疑われ、その後危うい思いをする。国籍を偽っていたアンナもパスポート偽造の罪でソ連の憲兵に
連行されてしまう。どうしてよいかわからなくなったマーチンズは、アンナの下宿の近くで、なん
と交通事故で死んだと思われていた“第三の男”ライムを見る。しかし、彼はマーチンズに会おう
とせず、突然、幽霊のように消えてしまう。彼は、闇の中にあっても恋人のアンナのことを心配し
ていて、マーチンズがそこを訪れたことを知って近くで見張っていたようだ。ライムが水で薄めた
ペニシリンを密売し、多数の人々を害した悪漢であることを聞かされていたことを想い出す。ペニ
シリンは貴重で軍の病院でしか手に入らない。それを盗んで売れば巨額の金が入る。マーチンズは
イギリス憲兵の少佐に急報する。少佐は改めて墓を掘り出し、死人はライムではなく、行方不明に
なっていた、軍の病院からペニシリンを盗み出してライムに渡していた看護兵であったことが分か
る。ここで死人を検視したライムの主治医は偽男爵や運転手とグルになって嘘をついていたことが
分かる。さて、ライムが急にいなくなった場所が地下の下水溝に通ずることを警官たちは突き止め
2
る。少佐はアンナの釈放と引きかえにマーチンズにライムの逮捕の助力をするよう要請する。その
後、マーチンズは機会を得て、たった二人で公園の観覧車の上で話し合い、彼がすっかり変わって
しまい、凶悪な人間になってしまったことを悟り、親友を売るもやむを得ないように思う。しかし、
昔の友人を裏切れないとアメリカに帰国することを決意する。ソ連に送られそうになったアンナは
マーチンズがライムのことを警察にしゃべったと烈しく罵る。少佐はマーチンズを飛行場に送る途
中、一応見て行くがよいとハリーの流した害毒に苦しむ病院の子どもたちの患者や死体を見させる。
マーチンズはこの子どもたちの苦しみを見てライムの犯している罪悪を直視し、彼の逮捕に協力す
る決意をする。これがこの物語の分水嶺です。なぜその決意をしたか。それは、作者自身はカトリ
ックの信仰から離れている罪深さを感じながらも、ペニシリン密売という暗黒の中でその罪悪を裁
き、地の塩、世の光を求めようとしている。グリーンはマーチンズに託して自分はまだカトリック
の信仰をもっていると言いたかったとわたしには思えるのです。また犯罪人ライムのような心も自
分にはあるとの告白でもあります。彼をおびき出して、警官たちと地下の下水溝に追い込み、彼自
身が短銃でライムを撃つ。この映画のフィナーレの日、ライムの埋葬が行われた日、マーチンズは
墓地の路傍でアンナを待つが、彼女は表情をかたくしたまま一瞥もせず彼の前を歩み去って行く。
恋人のアンナがライムの犯罪を知っても心には共にいるとの思い、それを著者のグリーンは、自分
自身が否定されることがなく赦される者として残しておきたかったとそう思われる。この映画は現
実の醜い世界を描いていますが、その中で唯一、マーチンズを有名な小説家と勘違いした信仰団体
の責任者が彼を講師として招いたエピソードがあります。少しでも善良な人もいることをみせたか
ったのでしょう。
さて、今日の聖書と小説からみなさんは何を感じ取られたでしょうか。著者のグレアム・グリー
ンの問題提起には、神に従い切れない心を持つ自分もそこにいる。その暗闇の世界を描いている。
だからこそ、この世に神の律法、正義がこの世で全うされることをイエスは求められている。そこ
に、わたしたちは地の塩、世の光として派遣される。その原点は礼拝を大切にして神の前に集うこ
とにあるのではないでしょうか。ここに集う皆さんと共に福音のための意義ある場所、喜びに満ち
た場であるようお互いに真剣に努力したいと思います。
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